(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】フィルムバッグおよびフィルムバッグの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
A61J1/10 331A
A61J1/10 335
(21)【出願番号】P 2017134912
(22)【出願日】2017-07-10
【審査請求日】2020-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591016334
【氏名又は名称】大塚テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 裕信
(72)【発明者】
【氏名】鈴江 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藪内 宏幸
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-4313(JP,A)
【文献】特開2008-18063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、外層と、前記内層と前記外層との間の中間層とを含む複層フィルムを用いて形成され、液剤が収容される収容部を有するバッグ本体と、
前記バッグ本体にヒートシールによって固定され、前記収容部内の液剤を取り出すための口部材とを含み、
前記外層および前記中間層の樹脂が架橋しており、前記内層の樹脂が未架橋であ
り、
前記外層および前記中間層の前記樹脂のゲル分率は、10~100%であり、
前記内層の前記樹脂のゲル分率は、0~5%である、フィルムバッグ。
【請求項2】
前記中間層の前記樹脂は、当該樹脂100質量部に対して、50質量部を超えるベース樹脂としてエチレン-α-オレフィン共重合体と、20質量部以上のオレフィン系エラストマーとを含有している、請求項
1に記載のフィルムバッグ。
【請求項3】
前記口部材の固定位置における前記複層フィルムの前記内層の厚さが、前記収容部における前記複数フィルムの前記内層の厚さの50%~85%である、請求項
1または2に記載のフィルムバッグ。
【請求項4】
前記口部材の固定位置における前記複層フィルムの前記中間層および前記外層の厚さが、それぞれ、前記収容部における前記複数フィルムの前記中間層および前記外層の厚さの50%~90%である、請求項
1または2に記載のフィルムバッグ。
【請求項5】
ヒートシール性を有する第1層と、第2層と、前記第1層と前記第2層との間の中間層とを含む複層フィルムに対して、前記第1層に当たらないように前記第2層側から前記第2層および前記中間層に放射線を照射することによって、前記複層フィルムの前記第2層および前記中間層の樹脂を選択的に架橋する放射線照射工程と、
前記放射線照射工程後、前記複層フィルムの前記第1層が内層となるように前記第1層同士を向かい合わせてヒートシールすることによって、一部に口部材取付部を有するフィルムバッグを形成する工程と、
前記口部材取付部に、ヒートシールによって口部材を取り付ける工程とを含
み、
前記放射線照射工程は、前記第2層および前記中間層の前記樹脂のゲル分率が10~100%となるように、かつ前記第1層の樹脂のゲル分率が0~5%となるように、前記放射線を照射する工程を含む、フィルムバッグの製造方法。
【請求項6】
前記放射線照射工程は、前記複層フィルムに電子線を照射する工程を含む、請求項
5に記載のフィルムバッグの製造方法。
【請求項7】
前記中間層の前記樹脂は、当該樹脂100質量部に対して、50質量部を超えるベース樹脂としてエチレン-α-オレフィン共重合体と、20質量部以上のオレフィン系エラストマーとを含有している、請求項
5または6に記載のフィルムバッグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液剤を収容するフィルムバッグおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば医療用バッグ等に使用されるフィルムの樹脂を、放射線照射によって架橋させることが提案されている。放射線照射によって、フィルムの耐熱性を向上できるためである。
例えば、特許文献1は、厚み100~800μ、密度0.890~0.935g/cm3、メルトフローインデックス(MFR)0.1~8.0g/10分を有するポリエチレンフィルムまたはシートをゲル分率10~50%の範囲に架橋させることにより、1.0kg/15mm幅以上のヒートシール強度を有することを特徴とする医療用フィルムまたはシートを提案している。
【0003】
また、特許文献2は、エチレンと炭素数3~12のα-オレフィンを共重合させて得られる(a)密度が0.850~0.920g/cm3、(b)GPC(ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3以下、(c)GPCにより分画した高分子量領域30重量%の平均分岐数に対する低分子量領域30重量%の平均分岐数の比が0.8以上1.2以下である直鎖状エチレン・α-オレフィン共重合体からなる成形体を放射線及び/又は電子線照射により20%以上に架橋してなる体液、薬液の排出又は保存用の医療用器具を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2956244号公報
【文献】特許第3584556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、複層フィルムをヒートシールすることによって形成されたフィルムバッグに関して、バッグが落下等による衝撃を受けたときに、バッグのポート部材およびその周辺から液漏れが生じるという事象が見受けられる。これは、ポート部材をヒートシールによってバッグに固定する際に、フィルムのポート部材との接触部分およびその周辺部が溶融によって肉薄化し、この肉薄部がバッグ内部からの液圧によって破壊するためである。
【0006】
この対策として、特許文献1および2に記載のように、複層フィルムに放射線を照射して樹脂を架橋させることによって、樹脂の耐熱性を強化し、ヒートシール時の肉薄化を抑制することが考えられる。しかしながら、単に複層フィルム全体に放射線を照射したのでは、ヒートシールに寄与する内層の耐熱性まで高まり、ヒートシール性(強度)を十分に確保できないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ヒートシール性を損なうことなく、ポート部材の取付部でのフィルム破れを抑制することができるフィルムバッグを提供することである。
また、本発明の他の目的は、ヒートシール性を損なうことなく、ポート部材の取付部でのフィルム破れを抑制することができるフィルムバッグを生産性よく製造することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフィルムバッグは、内層と、外層と、前記内層と前記外層との間の中間層とを含む複層フィルムを用いて形成され、液剤が収容される収容部を有するバッグ本体と、前記バッグ本体にヒートシールによって固定され、前記収容部内の液剤を取り出すための口部材とを含み、前記外層および前記中間層の樹脂が架橋しており、前記内層の樹脂が未架橋である。
【0009】
本発明のフィルムバッグでは、前記外層および前記中間層の前記樹脂のゲル分率は、10~100%であり、前記内層の前記樹脂のゲル分率は、0~5%であってもよい。
本発明のフィルムバッグでは、前記中間層の前記樹脂は、当該樹脂100質量部に対して、50質量部を超えるベース樹脂としてエチレン-α-オレフィン共重合体と、20質量部以上のオレフィン系エラストマーとを含有していてもよい。
【0010】
本発明のフィルムバッグでは、前記口部材の固定位置における前記複層フィルムの前記内層の厚さが、前記収容部における前記複数フィルムの前記内層の厚さの50%~85%であってもよい。
本発明のフィルムバッグでは、前記口部材の固定位置における前記複層フィルムの前記中間層および前記外層の厚さが、それぞれ、前記収容部における前記複数フィルムの前記中間層および前記外層の厚さの50%~90%であってもよい。
【0011】
本発明のフィルムバッグの製造方法は、ヒートシール性を有する第1層と、第2層と、前記第1層と前記第2層との間の中間層とを含む複層フィルムに対して、前記第1層に当たらないように前記第2層側から前記第2層および前記中間層に放射線を照射することによって、前記複層フィルムの前記第2層および前記中間層の樹脂を選択的に架橋する放射線照射工程と、前記放射線照射工程後、前記複層フィルムの前記第1層が内層となるように前記第1層同士を向かい合わせてヒートシールすることによって、一部に口部材取付部を有するフィルムバッグを形成する工程と、前記口部材取付部に、ヒートシールによって口部材を取り付ける工程とを含む。
【0012】
本発明のフィルムバッグの製造方法では、前記放射線照射工程は、前記複層フィルムに電子線を照射する工程を含んでいてもよい。
本発明のフィルムバッグの製造方法では、前記中間層の前記樹脂は、当該樹脂100質量部に対して、50質量部を超えるベース樹脂としてエチレン-α-オレフィン共重合体と、20質量部以上のオレフィン系エラストマーとを含有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内層の樹脂が未架橋であるため、当該内層の溶融によって十分な強度でヒートシールすることができる。一方、口部材取付部においては、架橋された中間層および外層の肉薄化を抑えることができ、中間層および外層を比較的厚く維持できる。また、当該口部材取付部において、内層の肉薄化も抑制することができる。これにより、口部材取付部におけるフィルム全体としての肉薄化を抑制することができる。その結果、フィルムバッグが落下等によって衝撃を受けても、口部材取付部でのフィルム破れを抑制することができる。
【0014】
また、中間層および外層の樹脂を架橋させるための放射線照射が、バッグ形成後ではなく、フィルムの状態で行われる。そのため、複層フィルムの第2層側(外層側)から所定の条件で放射線を照射するだけで、複層フィルムの第1層(内層)よりも第2層側の部分の樹脂を選択的に、簡単に架橋させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る医療用バッグの模式的な平面図である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、それぞれ、前記医療用バッグの周縁ヒートシール部およびポート取付部の要部断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施形態に係る医療用バッグの模式的な斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明のさらに他の実施形態に係る医療用バッグの模式的な平面図である。
【
図10】
図10は、プラスチックフィルムのシール温度とシール強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<バッグの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る医療用バッグ1の模式的な平面図である。
医療用バッグ1は、周縁部2がヒートシールによって溶着された扁平な矩形状のバッグ本体3と、バッグ本体3に取り付けられ、液剤を排出するための本発明の口部材の一例としてのポート部材4とを含む。
【0017】
バッグ本体3は、周縁部2のほぼ全周に連続して形成された周縁ヒートシール部5と、周縁部2の1辺の中央部に形成された本発明の口部材取付部の一例としてのポート取付部6と、周縁ヒートシール部5によって区画された収容部7とを有している。収容部7には、例えば、生理食塩液、リンゲル液等の基礎輸液をはじめとする輸液製剤、腹膜透析液等の医療用液剤が収容される。
【0018】
周縁ヒートシール部5は、バッグ本体3の縦方向に沿う一対の縦シール51と、バッグ本体3の横方向に沿う一対の横シール52とを含む。ポート取付部6は、一方の横シール52に形成されている。
ポート部材4は、この実施形態では舟形ポートであり、ヒートシールによってポート取付部6に固定される舟形のベース部材10と、キャップ14(例えば、プルトップ型キャップ)が取り付けられる頭部9と、ベース部材10と頭部9とを連結する丸形の筒部8とを含む。ベース部材10、頭部9および筒部8は、一体成形されていてもよいし、別体品として互いに連結されていてもよい。ポート部材4は、ポート取付部6に挿入されたベース部材10にバッグ本体3をヒートシールすることによって、バッグ本体3に固定されている。
また、バッグ本体3において、ポート取付部6に相対する他方の横シール52には、吊掛孔11が形成されている。また、当該横シール52には、吊掛孔11を挟んで横方向両側に、ヒートシールが施されていない非シール部15が1つずつ設けられていてもよい。
【0019】
<フィルムの層構成>
図2Aおよび
図2Bは、それぞれ、医療用バッグ1の周縁ヒートシール部5およびポート取付部6の要部断面図である。
図2Aおよび
図2Bを参照して、バッグ本体3を構成するフィルムの層構成について説明する。
バッグ本体3は、例えば、互いに重なる複層フィルム12のヒートシールによって構成されている。複層フィルム12は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、例えば、3層フィルムで構成されている。3層の複層フィルム12は、収容部7側から順に積層された、内層13、中間層18および外層17を含む。
【0020】
内層13、中間層18および外層17は、いずれも、放射線が照射されることによって架橋反応を示す高分子構造を有する樹脂(放射線架橋型樹脂)からなっていてもよい。そのような樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリテトラフルオロエチレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-テトラシクロドデセン等のポリ環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等のビニル系重合体樹脂、ナイロン-6、ナイロン-12、ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0021】
この実施形態に係るバッグ本体3では、外層17および中間層18の樹脂が架橋構造をとっており、内層13の樹脂は未架橋となっている。ここで、「未架橋」とは、内層13の樹脂を構成する高分子が架橋構造を一つも有していないということではない。例えば、後述する電子線の照射(
図4Aおよび
図4B)によって架橋反応を積極的に起こさなくても、内層13の製造過程で意図することなく高分子の架橋が若干起こることがある。その場合でも、本発明のヒートシール性を損なうことなく、ポート取付部6でのフィルム破れを抑制できるという効果を発現できるのであれば、内層13が多少の架橋構造を有していてもよい。
【0022】
樹脂の架橋度は、例えば、JIS K 6769に準拠して測定されたゲル分率によって比較することができる。例えば、この実施形態で架橋している外層17および中間層18の樹脂の架橋度(ゲル分率)は、例えば、10%~100%であり、未架橋の内層13の樹脂の架橋度(ゲル分率)は、例えば、0%~5%である。
また、この実施形態のバッグ本体3では、複層フィルム12のヒートシールされた部分の厚さが、複層フィルム12のヒートシールされていない部分よりも薄くなっている。
【0023】
例えば、
図2Bに示すポート部材4の固定位置(ヒートシール部)における内層13の厚さは、
図2Aに示す収容部7(非ヒートシール部)における内層13の厚さの85%の厚さ以下、好ましくは、50%の厚さ以上となっている。一方、
図2Bに示すポート部材4の固定位置(ヒートシール部)における外層17および中間層18の厚さは、
図2Aに示す収容部7(非ヒートシール部)における外層17および中間層18の厚さの90%以下、好ましくは、50%の厚さ以上(さらに好ましくは、70%の厚さ以上)である。
【0024】
より具体的には、ヒートシール部における内層13の厚さは、20μm~40μmであり、非ヒートシール部における内層13の厚さは、30μm~50μmであってもよい。また、ヒートシール部における外層17の厚さは、5μm~25μmであり、非ヒートシール部における外層17の厚さは、10μm~30μmであってもよい。また、ヒートシール部における中間層18の厚さは、90μm~130μmであり、非ヒートシール部における中間層18の厚さは、120μm~160μmであってもよい。
【0025】
<フィルムの層構成(好ましい形態)>
次に、中間層18に使用される樹脂の好ましい形態について説明する。
ここでは、中間層18の樹脂の好ましい形態のみ説明し、内層13および外層17の樹脂についての説明は省略する。すなわち、内層13および外層17の樹脂については、中間層18とは異なり、特に好ましいという樹脂があるわけではなく、公知の樹脂から適宜選択することができる。具体的には、内層13は、電子線等による架橋処理の対象物ではないので、放射線架橋型樹脂である必要はなく、例えば、耐ブロッキング性等、複層フィルムの内層として必要な諸特性を有する樹脂であれば、特に制限されない。一方、外層17は、医療用バッグ1に要求される耐熱性を発現できる程度の高い融点を有し、かつ架橋する樹脂(例えば、ポリエチレン等)であれば、特に制限されない。
【0026】
中間層18は、0.945g/cm3~0.965g/cm3の密度を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、オレフィン系エラストマー、およびシングルサイト触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンを含有していることが好ましい。
使用されるLLDPEとしては、例えば、チーグラー触媒で重合されたエチレン-α-オレフィン共重合体が挙げられる。チーグラー触媒としては、ポリエチレンの製造に用いられている各種のチーグラー触媒(チーグラー・ナッタ触媒)が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンなどの炭素数3~12のα-オレフィンが挙げられる。これらα-オレフィンは、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。また、α-オレフィンは、上記例示のなかでも、好ましくは、プロピレン、1-ブテンであり、さらに好ましくは、1-ブテンである。エチレン-α-オレフィン共重合体中のα-オレフィンの含有割合を適宜設定することによって、上記0.945g/cm3~0.965g/cm3の範囲の密度とすることができる。すなわち、エチレン-α-オレフィン共重合体中のα-オレフィンの含有割合は、エチレン-α-オレフィン共重合体に要求される密度に合わせて適宜設定される。
【0027】
また、当該LLDPEのMFRは、好ましくは、0.8g/10分(190℃)~1.4g/10分(190℃)である。
使用されるオレフィン系エラストマーとしては、例えば、直鎖状ポリエチレンエラストマー、エチレン-α-オレフィン共重合体エラストマー、プロピレン-α-オレフィン共重合体エラストマー等が挙げられる。また、オレフィン系エラストマーにおけるα-オレフィンとしては、前述のαオレフィンが挙げられる。
【0028】
また、オレフィン系エラストマーの密度は、好ましくは、0.875g/cm3~0.895g/cm3であり、MFRは、好ましくは、0.4g/10分(190℃)~0.6g/10分(190℃)である。
使用されるシングルサイト触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、メタロセン触媒で重合されたエチレン-α-オレフィン共重合体(m-LLDPE)が挙げられる。当該エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンとしては、前述のα-オレフィンが挙げられる。
【0029】
また、m-LLDPEの密度は、好ましくは、0.895g/cm3~0.915g/cm3であり、MFRは、好ましくは、0.8g/10分(190℃)~1.2g/10分(190℃)である。
また、中間層18に含有される各樹脂の配合割合は、例えば、中間層18の樹脂全体100質量部に対して、エチレン-α-オレフィン共重合体(LLDPEおよびm-LLDPE)がベース樹脂として50質量部を超え、オレフィン系エラストマーが20質量部以上(好ましくは、30質量部~40質量部)である。
【0030】
以上、中間層18に使用される樹脂の好ましい形態について説明したが、上記の樹脂は、あくまでも中間層18に使用される樹脂の一例に過ぎない。中間層18は、架橋することで耐熱性を向上可能な樹脂であれば、上記の樹脂の他、上記したように、ポリプロピレン等のポリエチレン以外のポリオレフィン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂、およびこれらの組み合わせからなる樹脂であってもよい。
【0031】
<医療用バッグの製造方法>
次に、医療用バッグ1の製造方法を説明する。
医療用バッグ1を製造するには、まず、
図3Aおよび
図3Bに示すように、例えば、原料樹脂をインフレーション成形することによって、複層フィルム12が作製される。より具体的には、3層フィルム押出機22から空気が導入されながら成形された、内層13を構成する第1層19と、外層17を構成する第2層20と、中間層18を構成する中間層23とを備える複層フィルム12が、一対の成形ローラ21(ニップロール)へ供給される。一対の成形ローラ21では、筒状の複層フィルム12に圧力が加えられ、
図3Bに示すように、第1層19(内層13)同士が向かい合うように扁平な形状に成形される。そして、得られた複層フィルム12が巻取りローラ24で回収される。
【0032】
次に、
図4Aおよび
図4Bに示すように、巻取りローラ24から引き出されて流れる扁平な複層フィルム12の一方面31および他方面32のうち、まず一方面31に対して、第1層19(内層13)に当たらないように、第2層20(外層17)側から第2層20および中間層23に放射線が照射される。ここで、
図4Aおよび
図4Bに示すMD(Machine Direction)は、複層フィルム12の流れ方向である。照射される放射線としては、例えば、電子線、ガンマ線等が挙げられ、好ましくは、電子線が照射される。この場合、電子線の照射条件は、第2層20および中間層23の厚さ等を考慮して適宜設定されるが、例えば、第2層20(外層17)の厚さが10μm~30μmであり、中間層23(中間層18)の厚さが120μm~160μmである場合、つまり、第2層20および中間層23のトータル厚さが130μm~190μmである場合、加速電圧を100kV~150kV、吸収線量を70kGy~200kGyの範囲に設定してもよい。具体的には、複層フィルム12が厚ければ厚いほど、加速電圧を高く設定することによって、電子線の浸透深さを深くし、第2層20(外層17)から中間層23(中間層18)まで電子線を十分に当てることができる。また、吸収線量を高く設定することによって、電子線照射による架橋度を上げることができる。なお、例えば加速電圧が大きすぎると、内層13までもが電子線に晒され、内層13のシール特性に影響が出るおそれがある。また、吸収線量を高くし過ぎても、特に際立った効果が得られるわけでもなく、フィルム処理スピードを下げなくてはならないため、生産性の低下も懸念される。
【0033】
そして、適切な電圧および吸収線量条件で電子線を照射することによって、複層フィルム12を構成するフィルムのうち、第2層20(外層17)および中間層23(中間層18)の樹脂が選択的に架橋する。
この後、複層フィルム12を裏返して、再度電子線照射装置に流し、複層フィルム12の一方面31に対して行った電子線照射を、他方面32に対しても行う。これにより、複層フィルム12の一方面31側および他方面32側の両方の側において、第2層20(外層17)および中間層23(中間層18)の樹脂の架橋が完了する。
【0034】
次に、
図5Aおよび
図5Bに示すように、流れる複層フィルム12(インフレーションフィルム)を選択的にヒートシールすることによって、MD方向に沿って間隔を空けて連なる複数のバッグ本体3が形成される。なお、複数のバッグ本体3は、MD方向に沿って1列だけ形成されていてもよいし、
図5Aに示すように、2列さらにはそれ以上並んで形成されていてもよい。
【0035】
具体的には、MDに沿う縦シール51と、MDに垂直なTD(Transverse Direction)に沿う横シール52とが同時に形成される。なお、縦シール51および横シール52は、必ずしも同時に形成しなければならないわけではなく、別々の工程で形成されてもよい。これにより、周縁ヒートシール部5が形成されると共に、当該周縁ヒートシール部5で囲まれた領域に収容部7が形成される。また、一方の横シール52の中央部には、複層フィルム12の未溶着部分が向かい合って形成された貫通孔からなるポート取付部6が形成される。ポート取付部6は、ポート部材4のベース部材10よりも若干大きな開口として形成される。なお、このときのヒートシールの条件は、例えば、シール温度=120℃~150℃、シール時間=0.5秒~10秒であってもよい。そして、ヒートシール後の複層フィルム12から、バッグ本体3が1つずつ打ち抜かれる。
【0036】
次に、
図6Aおよび
図6Bに示すように、各バッグ本体3のポート取付部6にポート部材4が挿入され、ヒートシールによってポート部材4に複層フィルム12が圧着されると共に、ポート部材4の周辺部のヒートシール未処理であった部分が、この段階でヒートシールによって閉じられる。なお、このときのヒートシールの条件は、例えば、シール温度=120℃~150℃、シール時間=0.5秒~10秒であってもよい。
その後、収容部7に液剤が注入されることによって、医療用バッグ1が得られる。
【0037】
<医療用バッグの効果>
得られた医療用バッグ1によれば、内層13の樹脂が未架橋であるため、当該内層13の溶融によって十分な強度でヒートシールすることができる。一方、ポート取付部6において、ポート部材4の固定部29(ポート部材4の圧着部分)、および当該ポート固定部29の周辺部であって、
図6Aおよび
図6Bの工程でポート部材4が熱圧着されるときに横シール52としてヒートシールされる部分25(ポート周辺部)においては、架橋された中間層18および外層17の肉薄化を抑えることができ、中間層18および外層17を比較的厚く維持できる。また、ポート固定部29およびポート周辺部25において、内層13の肉薄化も抑制することができる。これにより、ポート固定部29およびポート周辺部25におけるフィルム全体としての肉薄化を抑制することができる。その結果、医療用バッグ1が落下等によって衝撃を受けても、ポート固定部29の下辺27(ポート部下辺)およびポート周辺部25の下辺26(シール部下辺)でのフィルム破れを抑制することができる。
【0038】
また、
図4Aおよび
図4Bに示すように、中間層18および外層17の樹脂を架橋させるための放射線照射が、バッグ本体3の形成後ではなく、複層フィルム12の状態で行われる。そのため、複層フィルム12の第2層20側(外層17側)から所定の条件で放射線を照射するだけで、複層フィルム12の第1層19(内層13)よりも第2層20側の部分の樹脂を選択的に、簡単に架橋させることができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
例えば、前述の実施形態では、フィルムバッグの一例として、医療用の液剤を収容する薬液バッグについて説明したが、本発明は、栄養剤、ドリンク等の食品を収容するバッグ等にも用いることができる。
【0040】
また、前述の実施形態では、フィルムバッグの一例として、収容部7一つのみの単室バッグについて説明したが、本発明は、例えば、収容部7が弱シール部(イージーピール部)によって複数に仕切られた複室バッグにも用いることができる。
また、前述の実施形態では、複層フィルム12として、インフレーション成形によって得られる複層フィルム12のみを例示したが、複層フィルム12は、例えば、Tダイ共押出し成形によって作製してもよい。
【0041】
また、前述の実施形態では、ポート部材4として、舟形ポートを挙げたが、例えば
図7および8に示すように、ポート部材4は、丸形ポートであってもよい。丸形のポート部材4では、頭部9の内部に、ゴム栓16がはめ込まれていてもよい。
また、医療用バッグ1において、周縁ヒートシール部5は、バッグ本体3の全周に亘って形成されていなくてもよい。例えば、
図9に示すように、横シール52のみが選択的に形成されていてもよい。バッグ本体3の長辺側(
図1において、縦シール51が形成されている部分)は、重なり合う複層フィルム12が連続的に繋がった折れ線部28として形成されている。これにより、収容部7は、折れ線部28および横シール52,52によって区画されている。
【0042】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
(1)複層フィルムの製造
下記表1に示す配合割合(質量部)に基づいて溶融混合することにより外層、中間層および内層のそれぞれを構成する樹脂材料を作製した。そして、これらの樹脂材料を、インフレーション成形することによって、表1に示す層構成の3層フィルム(フィルム1~5)を作製した。なお、表1に記載の中間層の樹脂材料の情報は次の通りである。また、外層および内層の樹脂については詳細を省略するが、フィルム1~5の全てにおいて、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂として50質量部を超える量で含有する共通の樹脂(外層:PE1、内層PE2)を使用した。
・m-LLDPE(密度=0.905g/cm3、MFR=1.0g/10分(190℃))
・オレフィン系エラストマー(密度=0.885g/cm3、MFR=0.5g/10分(190℃))
・LLDPE(密度=0.957g/cm3、MFR=1.1g/10分(190℃))
(2)電子線の照射
フィルム1~5の外層側から電子線を照射することによって、フィルム1~5の外層および中間層の樹脂を架橋させた。電子線の照射は、岩崎電気株式会社製の電子線照射装置を使用して、加速電圧=125kV、吸収線量=100kGyとなるように行った。
【0044】
また、この電子線の照射前後の各フィルム1~5を使用して、先の記述に倣って医療用バッグを作製し、高温蒸気滅菌(121℃)を施した。その滅菌前後のヤング率を、JIS K 7161に準拠して測定したところ、表1のとおりであった。また、電子線の照射前後での各フィルム1~5の各層の引張破断伸びおよび引張破断応力(いずれもJIS K 7127準拠)を測定したところ、表1の通りであった。
【0045】
【0046】
(3)フィルムバッグの製造
<実施例1~5>
上記で得られたフィルム1~5(電子線照射済み)を用いて、
図1に示したフィルムバッグを製造した。フィルムバッグのサイズは、収容部の収容量を約250mLとし、収容部の縦方向の長さ(L)を20cm、横方向の幅(W)を15cmとした。フィルム1で製造されたバッグを実施例1、フィルム2で製造されたバッグを実施例2、フィルム3で製造されたバッグを実施例3、フィルム4で製造されたバッグを実施例4、フィルム5で製造されたバッグを実施例5とした。また、周縁ヒートシール部形成時およびポート取付時のヒートシールの条件は、シール温度=160℃/160℃、シール時間=5秒とした。フィルムバッグの作製後、各バッグに液剤を250mLずつに注入した。
【0047】
<比較例1~5>
一方、電子線を照射する前のフィルム1~5を用いて、
図1に示したフィルムバッグを製造した。フィルム1(電子線未照射)で製造されたバッグを比較例1、フィルム2(電子線未照射)で製造されたバッグを比較例2、フィルム3(電子線未照射)で製造されたバッグを比較例3、フィルム4(電子線未照射)で製造されたバッグを比較例4、フィルム5(電子線未照射)で製造されたバッグを比較例5とした。また、周縁ヒートシール部形成時およびポート取付時のヒートシールの条件は、シール温度=150℃/150℃としたこと以外は全て、実施例1~5と同じとした。フィルムバッグの作製後、各バッグに液剤を250mLずつに注入した。
【0048】
(4)フィルムバッグの評価試験
<フィルム厚さ>
実施例1~5および比較例1~5のフィルムバッグの収容部およびポート部固定位置におけるフィルムの各層の厚さを測定した。結果を表2および表3に示す。
<落板強度>
実施例1~5および比較例1~5のフィルムバッグの落板強度を測定した。具体的には、まず、各フィルムバッグを0℃の恒温室に24時間放置し、十分冷えた状態で取り出した。次いで、フィルムバッグを鉄板の上に置き、その上から6.8kgの金属板(大きさ約37cm×37cm、厚さ0.5cm)を、金属板の面がフィルムバッグバッグの表面に対して平行となるように落下させた。そして、フィルムバッグが破裂したり、液漏れが発生したりする金属板の高さ(落下高)を測定することにより、落板強度を求めた。結果を表2および表3に示す。
【0049】
表2および表3において、板の高さ「0」は、10cm以下の高さから金属板を落下させたときに、フィルムバッグが破裂したり液漏れが発生したりしたことを示している。また、板の高さ「100+cm」は、100cmの高さから金属板を落下させても、フィルムバッグが破裂したり液漏れが発生したりしなかったことを示している。また、破壊箇所の「破裂」は、フィルムバッグのヒートシール部が剥離して、その剥離個所から液剤が流出したことを示している。
【0050】
【0051】
【0052】
(5)評価
表2および表3に示すように、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4、および実施例5と比較例5を、それぞれ比較すると、フィルムの内層となる層に当たらないように電子線を照射しておくことによって、ヒートシール後の内層、中間層および外層の肉薄化が抑えられている。その結果、実施例1~5では、落板強度30cm以上を達成できる比率が明らかに増加している。つまり、実施例1~5のフィルムバッグでは、30cm程度の高さから金属板を落下させても、シール部下辺(
図1の下辺26)およびポート部下辺(
図1の下辺27)におけるフィルム破れの発生する確率が低くなっている。しかも、実施例3~5のように、中間層におけるオレフィン系エラストマーの割合を20質量部以上とすることによって、高強度なフィルムバッグを高い確率で安定して得られることが分かった。特に、中間層におけるオレフィン系エラストマーの割合を30質量部以上の実施例4および5では、全てのサンプルについて、落板強度30cm以上を達成することができた。
【0053】
(6)ゲル分率の測定
次に、前述のフィルム1~5の架橋度を把握するため、以下の測定を行った。
まず、フィルム4の中間層と同じ組成を有し160μmの厚さを有する第1フィルムと、2種のLLDPEをブレンドした組成を有し40μmの厚さを有する第2フィルムとを準備した。つまり、ゲル分率測定用の試料フィルムとして、フィルム1~5において架橋すべき中間層および外層のトータル厚さ(140μm+20μm)と同じ厚さを有する第1フィルムと、未架橋とすべき内層の厚さ(40μm)と同じ厚さを有する第2フィルムとを別々に準備した。
【0054】
次に、第1フィルム(外層+中間層)と第2フィルム(内層)とを重ね合わせ、6パターンの加速電圧および吸収線量の条件で、第1フィルム側から電子線を照射した。
電子線の照射後、各フィルムのゲル分率を、以下の試験装置、試験条件および試験方法に従って、別々に測定した。
<試験装置>
1Lガラス製フラスコ、冷却コンデンサー、オイルバス、スターラー一式
<試験条件>
溶媒:p-キシレン 500mL
加熱条件:130℃、4時間
乾燥条件:140℃、3時間、真空
<試験方法>
まず、各試料フィルム(第1フィルムおよび第2フィルム)を小片にカットし、約2g精秤した。これを、試料仕込み量とした。次に、106μm厚さの金網(140mm×120mm)で試料フィルムを包み込み、総量を精秤した。次に、ガラス製フラスコにp-キシレンを500mL入れ、130℃のオイルバスにセットした。液温130℃を確認し、試料入り金網をガラス製フラスコに挿入し、4時間、攪拌した。そして、ガラス製フラスコから金網を取り出し、140℃、3時間、真空乾燥した。乾燥した金網を冷却後、試料フィルムを精秤した。
【0055】
そして、式:ゲル分率(wt%)=(p-キシレン不溶解分量/試料仕込み量)×100によって、ゲル分率を求めた。結果を表4に示す。
【0056】
【0057】
表4において、ゲル分率3の照射条件(加速電圧(kV)および吸収線量(kGy))が、前述の実施例1~5で使用したフィルム1~5の照射条件と同じである。ゲル分率3の照射条件であれば、フィルム1~5の中間層および外層のトータル厚さと同じ厚さを有する第1フィルムのゲル分率が33.1wt%であり、内層の厚さと同じ厚さを有する第2フィルムのゲル分率が0.5wt%であった。これから、フィルム1~5においても、内層が未架橋で、中間層および外層が選択的に架橋されていることが証明される。また、フィルム1~5の厚さであれば、ゲル分率4の照射条件でも、内層を未架橋にし、中間層および外層を選択的に架橋できることがわかる。
【0058】
一方、ゲル分率5および6の照射条件では、加速電圧が大きすぎ、内層の樹脂まで架橋する結果となった。また、ゲル分率2の照射条件では、吸収線量が小さすぎ、中間層および外層の樹脂が十分に架橋されないこともわかる。
(7)シール曲線
次に、ゲル分率の変化に伴い、シール温度とシール強度との関係がどのように変化するかを、プラスチックフィルムのシール曲線を作成することで評価した。
【0059】
より具体的には、前述の「(6)ゲル分率の測定」で準備した試料フィルム(電子線未照射)、ゲル分率3、ゲル分率5およびゲル分率6の電子線照射フィルムを、それぞれ一対ずつ準備し、ヒートシール機を使用し、シールバーの方向がフィルムのTD方向(横方向)となるように(後述する剥離試験でMD方向(フィルムの流れ方向)に剥離できるように)ヒートシールした。このときのヒートシールの条件は、次の通りである。
・温度:100℃~150℃までの5℃きざみ
・シール圧力:0.64MPa
・加圧時間:4.1秒
・シールバーの大きさ:幅×長さ=20mm×190mm
そして、各温度のヒートシール部を、直角方向に幅15±0.1mmの短冊状に5枚ずつ切り取り、これをサンプルとした。その後、サンプルを、23±2℃、50±5%RHの環境下に4時間以上放置した。
【0060】
次に、各サンプルの剥離試験を行った。剥離試験では、まず、サンプルを取り、ヒートシール部を中心に180°の角度となるように開き、サンプルの両端を引張り試験機の治具(治具間隔50mm)に設置した。次に、ヘッドスピード300±20mm/minで剥離試験を行い、そのときの最大負荷をシール強度として記録した(破断の場合は破断と記録した)。そして、得られた剥離試験のデータに基づいて、横軸にシール温度、縦軸にシール強度(剥離強度)を設定してシール曲線としてグラフ化した。そのグラフを
図10に示す。
【0061】
図10に示すように、ゲル分率3のフィルム(つまり、外層および中間層のゲル分率が10~100%であり、内層のゲル分率が0~5%であるフィルム)であれば、ゲル分率5およびゲル分率6のフィルムに比べて優れたシール強度が得られることが分かった。
また、ゲル分率3のフィルムのシール曲線は、ゲル分率5およびゲル分率6のフィルムのシール曲線に比べて、電子線未照射のフィルムのシール曲線に対する高温側へのシフト量が少なく、形状も近似することが分かった。したがって、電子線未照射のフィルムとほぼ同じ製造条件(シール条件、滅菌条件等)でフィルムバッグを製造できるので、同じ仕様のバッグの製造が容易となる。
【符号の説明】
【0062】
1 医療用フィルムバッグ
2 周縁部
3 バッグ本体
4 ポート部材
5 周縁ヒートシール部
6 ポート取付部
7 収容部
12 複層フィルム
13 内層
17 外層
18 中間層
19 第1層
20 第2層
23 中間層
25 ポート周辺部
26 シール部下辺
27 ポート部下辺
29 ポート固定部