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特許7002108樹脂付着ガラス繊維織物、該樹脂付着ガラス繊維織物にグラビア印刷が施された印刷物、及び該印刷物を含む建築内装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】樹脂付着ガラス繊維織物、該樹脂付着ガラス繊維織物にグラビア印刷が施された印刷物、及び該印刷物を含む建築内装材
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20220128BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220128BHJP
   D03D 15/513 20210101ALI20220128BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20220128BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20220128BHJP
   B41M 1/10 20060101ALI20220128BHJP
   B41M 1/34 20060101ALI20220128BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20220128BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20220128BHJP
   D06M 101/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
D06M15/263
D03D1/00 Z
D03D15/513
D06M15/333
B41M3/06 A
B41M1/10
B41M1/34
E04B1/94 R
E04F13/07 C
D06M101:00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017171292
(22)【出願日】2017-09-06
(65)【公開番号】P2019044309
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋山 芳広
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-046472(JP,A)
【文献】特開2002-326842(JP,A)
【文献】特開2005-053999(JP,A)
【文献】特開2003-041486(JP,A)
【文献】特開2016-098135(JP,A)
【文献】特開2001-316979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/714
D03D 1/00-27/18
B41M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス糸によって構成されるガラス繊維織物と、
前記ガラス糸を構成するガラス繊維表面の少なくとも一部に付着する樹脂と、を含む、樹脂付着ガラス繊維織物であって、
前記ガラス糸の番手が20~70texであり、
前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さが0.08mm以上であり、
前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さ(mm)と質量(g/m)から計算される前記樹脂付着ガラス繊維織物の見掛け密度が1.05~1.50(g/cm)であり、
JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される前記樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量が0.8~10質量%であり、前記樹脂が、アクリル酸-スチレン共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む、樹脂付着ガラス繊維織物。
【請求項2】
ガラス糸によって構成されるガラス繊維織物と、
前記ガラス糸を構成するガラス繊維表面の少なくとも一部に付着する樹脂と、を含む、樹脂付着ガラス繊維織物であって、
前記ガラス糸の番手が20~70texであり、
前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さが0.08mm以上であり、
前記樹脂付着ガラス繊維織物の質量が70~450g/mであり、
前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さ(mm)と質量(g/m)から計算される前記樹脂付着ガラス繊維織物の見掛け密度が1.05~1.50(g/cm)であり、
JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される前記樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量が0.8~10質量%である、グラビア印刷の被印刷物として使用される、樹脂付着ガラス繊維織物。
【請求項3】
ガラス糸によって構成されるガラス繊維織物と、
前記ガラス糸を構成するガラス繊維表面の少なくとも一部に付着する樹脂と、を含む、樹脂付着ガラス繊維織物であって、
前記ガラス糸の番手が20~70texであり、
前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さが0.08mm以上であり、
前記樹脂付着ガラス繊維織物の質量が70~450g/mであり、
前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さ(mm)と質量(g/m)から計算される前記樹脂付着ガラス繊維織物の見掛け密度が1.05~1.50(g/cm)であり、
JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される前記樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量が0.8~10質量%である、樹脂付着ガラス繊維織物(ただし、粒子が体積百分率で10%以上で保持固着され、該粒子が二酸化ケイ素或いはシロキサン結合を主鎖とする化合物群から選択された少なくとも1種であるガラス繊維織物、を除く。)。
【請求項4】
前記樹脂付着ガラス繊維織物の経糸及び緯糸の織密度が15~120本/25mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
【請求項5】
質量が70~450/mである、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
【請求項6】
通気性が0.1~50cm/cm/秒である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
【請求項7】
前記樹脂が、アクリル酸-スチレン共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
【請求項8】
前記アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量とエチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量との比(エチレン-酢酸ビニル共重合体の質量(g/m)/アクリル酸-スチレン共重合体の質量(g/m)が1.0~3.0である、請求項7に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
【請求項9】
一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/mの輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
【請求項10】
グラビア印刷の被印刷物として使用される、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物にグラビア印刷が施された、印刷物。
【請求項12】
請求項11に記載の印刷物を含む、建築内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂付着ガラス繊維織物に関し、特に、例えばグラビア印刷等の印刷適性が良好な樹脂付着ガラス繊維織物、該樹脂付着ガラス繊維織物にグラビア印刷が施された印刷物、及び該印刷物を含む建築内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁、住宅の玄関扉などの建築部材、自動車の外装・内装、車両・船舶の外装・内装などの意匠性を高めるために、着色などの化粧が施された化粧シートを貼付することがある。そして、不燃性が求められる場合、ガラス繊維織物を基材とした化粧シートを用いることがある。
【0003】
化粧ガラス繊維シートとして、ガラス繊維織物の表面に、宣伝広告又は装飾用の絵画や文字を、塗料を吹付け又は刷毛塗りすることにより着色された化粧ガラス繊維シートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該化粧ガラス繊維シートは、都度塗料を吹付け又は刷毛塗りする必要があり、生産性、再現性に劣るものであった。
【0004】
ガラス織布からなる層を表層に有する基体の前記ガラス織布側の面に、第1の平滑化層を介してグラビア印刷によって形成された印刷層を有し、前記第1の平滑化層は樹脂フィルムである化粧シートが知られている(例えば、特許文献2参照。)。該化粧シートは、薄く軽量でありながら、不燃性の基板等に貼り合わせなくてもそれ自体が極めて優れた不燃性能を有することができ、可撓性、柔軟性に優れることが開示されている。また、グラビア印刷による絵柄模様の有する高い意匠性を保持することができることも開示されている。
【0005】
また、印刷表面にアクリル系樹脂または/およびPVA系樹脂に顔料を添加したものを塗布した印刷用ガラスクロスが知られている(例えば、特許文献3参照。)。該文献には、目止め処理をおこなうことが好ましく、目止め処理剤としてアクリル系樹脂とウレタン系樹脂の配合物が好ましいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-93347号公報
【文献】特開2014-117850号公報
【文献】特開2002-326842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されている化粧シートは、インクを受容する平滑化層を設けるために樹脂フィルムをガラス織布に貼り合わす工程が必要となり、コストが高くなるという問題がある。
【0008】
特許文献3に開示されている印刷用ガラスクロスは、上記特許文献2に開示されている化粧シートのように樹脂フィルムを含まない一方、グラビア印刷によって印刷した場合に鮮明な図柄等を現すことができない場合があるという問題がある。また、アクリル系樹脂または/およびPVA系樹脂に顔料を添加したインク受容層と、目止め処理剤からなる層と、を設けるものであるため、工程数及び樹脂量が多くなり、やはりコストが高くなる場合があるという問題がある。また、ガラス繊維織物種によっては、印刷したガラス繊維織物を壁等に貼り付けた場合に、ガラス繊維織物が壁等の色や柄を透し、印刷した図柄の視認性に影響する場合がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決し、インク受容層としてフィルム等を貼り付けたり厚い樹脂層を設けたりすることなく、例えばグラビア印刷によって印刷した場合にも鮮明な図柄等を現すことができ、かつ、貼り付けた壁等の色や柄を透しにくくすること(裏映りを低減させること)が可能な、新規な樹脂付着ガラス繊維織物、該樹脂付着ガラス繊維織物にグラビア印刷が施された印刷物、及び該印刷物を含む建築内装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明者は、まず、特許文献3に開示されている印刷用ガラスクロスについて、アクリル系樹脂または/およびPVA系樹脂に顔料を添加したインク受容層を省き、当該文献に開示されている目止め処理剤のみ付着させることを検討した。しかしながら、該印刷用ガラスクロスから該インク受容層を省くとコストは良くなるものの、例えばグラビア印刷によって印刷した場合に鮮明な図柄を現すことができなかった。
【0011】
本発明者は、上記鮮明な図柄を現すことができない原因について鋭意検討し、基材となるガラス繊維織物の構成に原因があることを知得した。そして、印刷適性を良好なものとするためには、樹脂付着ガラス繊維織物の平滑性を向上させつつ、厚さ及び見掛け密度を特定範囲とすることが有効であることを突き止めた。
【0012】
具体的に、本発明者は、例えば、ガラス糸が太すぎる(番手が大きすぎる)場合、樹脂付着ガラス繊維織物の凹凸が大きくなり、グラビア印刷の版胴の凹部に溜まったインクが十分転写されず、鮮明な図柄等を現すことができなくなることを知得した。すなわち、ガラス繊維織物は、経糸及び緯糸が浮沈を繰り返すところ、経糸又は緯糸の一方が他方に対して浮いている部分に、よりインクが転写されやすいこと、そして、ガラス糸が太すぎると、沈む程度が大きくなるばかりでなく、沈む1箇所あたりの面積が大きくなるため、グラビア印刷機のロールとの接触が不十分となり、鮮明な図柄等を表すことができなくなることを知得した。また、樹脂付着ガラス繊維織物の厚さ及び見掛け密度が小さすぎると、樹脂付着ガラス繊維織物のインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透してしまい、インク受容層側から見たときに樹脂付着ガラス繊維織物に付与した図柄等の視認性に影響する場合があることを知得した。さらに、樹脂付着ガラス繊維織物の見掛け密度が低すぎる場合、平滑性が劣る場合があるだけでなく、印刷時に版胴の凹部及び非凹部との接触が繰り返されることで樹脂付着ガラス繊維織物が厚さ方向等にわずかに動き、これに起因して鮮明な図柄等を現すことができなくなることを知得した。
【0013】
そして、本発明者は、最小限の樹脂をガラス繊維表面に付着させ、ガラス糸の番手及び見掛け密度を特定範囲とすることによって、平滑性を向上させつつ印刷時に版胴の凹部非凹部との接触が繰り返されても樹脂付着ガラス繊維織物が厚さ方向に動くことを低減させ、さらに厚さ及び見掛け密度を特定範囲とすることによりインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透さないようにすることを想起した。本発明は、かかる知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の樹脂付着ガラス繊維織物、該樹脂付着ガラス繊維織物にグラビア印刷が施された印刷物、及び該印刷物を含む建築内装材を提供するものである。
項1.ガラス糸によって構成されるガラス繊維織物と、前記ガラス糸を構成するガラス繊維表面の少なくとも一部に付着する樹脂と、を含む、樹脂付着ガラス繊維織物であって、前記ガラス糸の番手が20~70texであり、前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さが0.08mm以上であり、前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さ(mm)と質量(g/m)から計算される前記樹脂付着ガラス繊維織物の見掛け密度が1.05~1.50(g/cm)であり、JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される前記樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量が0.8~10質量%である、樹脂付着ガラス繊維織物。
項2.前記樹脂付着ガラス繊維織物の経糸及び緯糸の織密度が15~120本/25mmである、項1に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
項3.質量が70~450/mである、項1又は2に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
項4.通気性が0.1~50cm/cm/秒である、項1~3のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
項5.前記樹脂が、アクリル酸-スチレン共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む、項1~4のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
項6.前記アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量とエチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量との比(エチレン-酢酸ビニル共重合体の質量(g/m)/アクリル酸-スチレン共重合体の質量(g/m)が1.0~3.0である、項5に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
項7.一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/mの輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下である、項1~6のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
項8.グラビア印刷の被印刷物として使用される、項1~7のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物。
項9.項1~8のいずれか1項に記載の樹脂付着ガラス繊維織物にグラビア印刷が施された、印刷物。
項10.項9に記載の印刷物を含む、建築内装材。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インク受容層としてフィルム等を貼り付けたり厚い樹脂層を設けることなく、例えばグラビア印刷によって印刷した場合に鮮明な図柄等を現すことを可能とし、また、貼り付けた壁等の色や柄を透しにくくすることが可能な新規な樹脂付着ガラス繊維織物、該樹脂付着ガラス繊維織物にグラビア印刷が施された印刷物、及び該印刷物を含む建築内装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、ガラス糸によって構成されるガラス繊維織物と、前記ガラス糸を構成するガラス繊維表面の少なくとも一部に付着する樹脂と、を含む、樹脂付着ガラス繊維織物であって、前記ガラス糸の番手が20~70texであり、前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さが0.08mm以上であり、前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さ(mm)と質量(g/m)から計算される前記樹脂付着ガラス繊維織物の見掛け密度が1.05~1.50(g/cm)であり、JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される前記樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量が0.8~10質量%であることを特徴とする。以下、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物について詳細に説明する。
【0017】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、ガラス糸によって構成されるガラス繊維織物を含む。これにより不燃性に優れやすくすることができる。
【0018】
ガラス糸を構成するガラス繊維のガラス材料については、特に制限されず、公知のガラス材料を用いることができる。ガラス材料としては、具体的には、無アルカリガラス(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス(Cガラス)、高強度・高弾性率ガラス(Sガラス、Tガラス等)、耐アルカリ性ガラス(ARガラス)等が挙げられる。これらのガラス材料の中でも、好ましくは汎用性の高い無アルカリガラス(Eガラス)が挙げられる。ガラス糸を構成するガラス繊維は、1種類のガラス材料からなるものであってもよいし、異なるガラス材料からなるガラス繊維を2種類以上組み合わせたものであってもよい。
【0019】
本発明において、樹脂付着ガラス繊維織物を構成するガラス糸の番手は20~70texである。20tex以上とすることにより、樹脂付着ガラス繊維織物の厚さを0.08mmとしやすくなり、後述する樹脂付着ガラス繊維織物のインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透しにくくすることが可能となる。また、70tex以下とすることにより、得られる樹脂付着ガラス繊維織物の平滑性が向上し、グラビア印刷の版胴の凹部に溜まったインクが十分に転写されやすくなり、鮮明な図柄等を現すことが可能となる。平滑性の向上と、後述する樹脂付着ガラス繊維織物のインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透しにくくすることと、をより一層両立させるという観点から、上記番手は、10~30texが好ましく、20~30texがより好ましく、20~25texが特に好ましい。なお、番手は、JIS R 3420:2013 7.1に順じ測定、算出する。
【0020】
ガラス糸を構成するガラス繊維(単繊維)の直径は特に制限されないが、例えば、3~10μmが挙げられ、平滑性を一層向上させ、後述する見掛け密度をより高めやすくするという観点から3~8μmが好ましい。上記観点と、樹脂付着ガラス繊維織物のインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透しにくくするという観点から、6~8μmがより好ましく、6.5~7.5μmが特に好ましい。なお、単繊維直径は、JIS R 3420:2013 7.6 A法に準じ、測定、算出する。ガラス糸における単繊維の本数は、特に制限されないが、例えば、30~1000本が挙げられる。平滑性の向上と、見掛け密度をより高めやすくすることと、樹脂付着ガラス繊維織物のインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透しにくくすることと、をより一層並立させるという観点から、上記単繊維の本数は、100~400本が好ましく、150~250本がより好ましい。
【0021】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物において、織組織としては特に制限されないが、例えば、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織などが挙げられる。中でも、均一性を優れたものとする観点から、平織とすることが好ましい。なお、平織は、均一性に優れるものの、経糸と緯糸の組織点が多く、後述する見掛け密度が比較的高いものにしづらい組織である。この場合、同じく後述する好ましい製造方法を採用すること等により、後述する見掛け密度とすることが可能となる。
【0022】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、厚さが0.08mm以上である。これにより、樹脂付着ガラス繊維織物のインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透しにくくなり、インク受容側から見たときに樹脂付着ガラス繊維織物に付与した図柄等の視認性が優れたものとなる。樹脂付着ガラス繊維織物のインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透しにくくしつつ、平滑性をより一層向上させるという観点から、上記厚さは0.08~0.3mmが好ましく、0.08~0.20mmがより好ましく、0.08~0.10mmが特に好ましい。なお、樹脂付着ガラス繊維織物の厚さは、JIS R 3420 2013 7.10.1A法に従い、マイクロメータを用いて0.01mm(10μm)の桁まで測定し、これを5か所についておこない、該5か所の平均値をJIS Z 8401規則Bによって数値を丸め、0.01mm(10μm)の桁まで算出する。
【0023】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、上記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さ(mm)と、JIS R 3420:2013 7.2に従い、測定及び算出される樹脂付着ガラス繊維織物の質量(g/m)と、から計算される見掛け密度(g/cm)が1.05~1.50(g/cm)である。例えば、特許文献3に実施例1として記載されているH170のガラスクロスは、厚さ0.21mm、質量170(g/m)であり、該厚さ及び該質量から計算される見掛け密度は0.8(g/cm)である。従って、該ガラスクロスは、印刷時に版胴の凹部及び非凹部との接触が繰り返されることでガラスクロスが厚さ方向等にわずかに動き、これに起因して鮮明な図柄等を現すことができなくなるものであった。一方、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物によれば、上記見掛け密度であることから、樹脂付着ガラス繊維織物の平滑性を向上させつつ印刷時に版胴の凹部非凹部との接触が繰り返されても樹脂付着ガラス繊維織物が厚さ方向に動くことを低減させることが可能となる。上記見掛け密度は、1.10~1.30g/cmが好ましく、1.15~1.25g/cmがより好ましい。なお、樹脂付着ガラス繊維織物の見掛け密度は、以下の式(A)により算出される。
見掛け密度(g/cm)=樹脂付着ガラス繊維織物の質量(g/m)/(樹脂付着ガラス繊維織物の厚さ(mm)×1000)・・・式(A)
【0024】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物の織密度は特に制限されないが、例えば、経糸密度は、15~120本/25mmが挙げられ、20~70本/25mmがより好ましく挙げられ、40~70本/25mmがさらに好ましく挙げられ、50~70本が特に好ましく挙げられる。また、緯糸密度は、15~90本/25mmが挙げられ、15~70本/25mmがより好ましく挙げられ、40~70本がさらに好ましく挙げられ、50~70本が特に好ましく挙げられる。また、見掛け密度をより高くしやすくするという観点から、経糸密度のほうが緯糸密度よりも大きいものとすることができ、具体的に、経糸密度と緯糸密度との比(=経糸密度/緯糸密度)は、例えば、1.01~1.40とすることが挙げられ、1.05~1.40とすることが好ましく挙げられ、1.05~1.10とすることがより好ましく挙げられる。なお、樹脂付着ガラス繊維織物の織密度は、JIS R 3420 2013 7.9に従い、測定、算出する。
【0025】
また、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物の質量(g/m)は特に制限されないが、例えば、70~450g/mが挙げられ、80~250g/mが好ましく挙げられ、90~120g/mがより好ましく挙げられる。なお、上記質量は、JIS R 3420:2013 7.2に従い、測定及び算出する。
【0026】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、ガラス繊維表面の少なくとも一部に付着する樹脂を含む。これにより、樹脂付着ガラス繊維織物の平滑性を向上させつつ印刷時に版胴の凹部非凹部との接触が繰り返されても樹脂付着ガラス繊維織物が厚さ方向に動くことを低減させることが可能となる。
【0027】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物において、JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される強熱減量が0.8~10質量%である。前記したように、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、ガラス糸によって構成され、前記ガラス糸の番手が20~70texであり、厚さが0.08mm以上であり、厚さ(mm)と質量(g/m)から計算される見掛け密度が1.05~1.50g/cmであることから、インク受容層としてフィルム等を貼り付けたり厚い樹脂層を設けたりすることなく、最小限の樹脂を付着させることでグラビア印刷によって印刷した場合に鮮明な図柄等を現すことが可能となる。そして、上記最小限の樹脂量として、JIS R 3420に準じ測定される強熱減量が0.8~10質量%と規定する。なお、強熱減量が多くなりすぎると、タック性が強くなる傾向にある。タック性が強すぎる場合、例えば、樹脂付着ガラス繊維織物をロール製品とし、これを巻き返す際、樹脂付着ガラス繊維織物を構成するガラス繊維が損傷して毛羽が発生したり、樹脂付着ガラス繊維織物の目が荒れたりする虞がある。そして、毛羽や目荒れの発生が多くなりすぎると、印刷を施す際に鮮明な図柄等を表せないことがある。従って、タック性も良好なものとし、さらに鮮明な図柄等を表すことを可能とするという観点から、上記強熱減量は、好ましくは1.0~8.0質量%、より好ましくは1.0~5.0質量%、さらに好ましくは2.0~5.0質量%が挙げられる。
【0028】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物において、ガラス繊維表面の少なくとも一部に付着する樹脂種としては特に制限されない。例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリル酸-スチレン共重合体等が挙げられる。中でも、例えば溶剤系インクを用いたグラビア印刷によって印刷した場合により一層鮮明な図柄等を現すという観点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び/又はアクリル酸-スチレン共重合体を含むものとすることが好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びアクリル酸-スチレン共重合体を含むことがより好ましい。
【0029】
本発明者の検討によれば、例えば印刷インクとして溶剤系インクを用いた場合、ガラス繊維表面に含まれる樹脂種をエチレン-酢酸ビニル共重合体とすると、インク定着性により一層優れていることを見出した。一方で、本発明者は、例えば溶剤系インクを用いた場合、ガラス繊維表面の少なくとも一部に付着する樹脂が溶剤による影響を受ける場合があり、結果、樹脂による樹脂付着ガラス繊維織物の目止め効果が低下したり、樹脂が膨潤したりして印刷した図柄の鮮明さに影響が出る場合があることを知得した。そして、耐溶剤性に優れ、かつ、樹脂付着ガラス繊維織物の目がよりずれにくくするには、ガラス繊維表面の少なくとも一部に含まれる樹脂種をアクリル酸-スチレン共重合体とすることが特に有効であることも見出した。そこで、本発明者が、さらに検討したところ、インク定着性と、印刷した図柄の鮮明さをより一層並立させるという観点から、ガラス繊維表面に含まれる樹脂種として、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びアクリル酸-スチレン共重合体を含むものとすることが好ましいことを見出したのである。
【0030】
エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、下記化学式(1)に示すものが好ましく挙げられる。また、アクリル酸-スチレン共重合体としては、アクリル酸2-エチルヘキシル・スチレン共重合体、アクリル酸メチル・スチレン共重合体、アクリル酸エチル・スチレン共重合体、アクリル酸ブチル・スチレン共重合体、スチレン・α-メチルスチレン・アクリル酸共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体、下記化学式(2)に示すもの、及び下記化学式(3)に示すものからなる群より選ばれる1種以上が好ましく挙げられる。エチレン-酢酸ビニル共重合体及びアクリル酸-スチレン共重合体を含む場合、より好ましくは、下記化学式(1)、(2)及び(3)の化合物を混合してなる樹脂組成物とすることが挙げられる。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
エチレン-酢酸ビニル共重合体及びアクリル酸-スチレン共重合体を含む場合、両者の不揮発成分の質量比(エチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量/アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量)としては、インク定着性、耐溶剤性、及び目ずれ防止性をより一層並立させるという観点の観点から、1.0~3.0が好ましく挙げられ、2.0~3.0がより好ましく挙げられる。なお、本発明における不揮発成分とは、常圧下、105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0035】
上記樹脂からなる樹脂組成物には、他の成分が含有されていても良い。例えば、架橋結合性を有するエチレン・酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合物や、モノマー成分(酢酸ビニル系モノマー、リン酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、スチレンモノマー等)や、各種添加剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、難燃剤、防虫剤、化学物質吸着剤、吸放湿性物質、香料、顔料、着色剤、触媒、光触媒、蓄光剤、蛍光剤、光輝性顔料、界面活性剤等)を含むものとすることもできる。
【0036】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、ガラス糸によって構成されるガラス繊維織物と、前記ガラス糸を構成するガラス繊維表面の少なくとも一部に付着する樹脂と、を含む、樹脂付着ガラス繊維織物であって、前記ガラス糸の番手が20~70texであり、前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さが0.08mm以上であり、前記樹脂付着ガラス繊維織物の厚さ(mm)と質量(g/m)から計算される前記樹脂付着ガラス繊維織物の見掛け密度が1.05~1.50(g/cm)であり、JIS R 3420:2013 7.3に準じ測定される前記樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量が0.8~10質量%であることから、インク受容層として、樹脂フィルムを積層しないものとすることが可能である。
【0037】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物において、樹脂の質量としては、特に制限されないが、例えば、1~30g/mが挙げられ、1~10g/mが好ましく挙げられる。なお、上記樹脂の質量は、以下の式(B)により算出される。
樹脂の質量(g/m)=(JIS R 3420:2013 7.2に準じ測定される樹脂付着ガラス繊維織物の質量(g/m))×(前述した樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量(質量%))÷100 ・・・式(B)
【0038】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物の通気性としては、見掛け密度をより高めやすくするという観点と、樹脂付着ガラス繊維織物のインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透しにくくするという観点から、0.1~100cm/cm/秒が好ましく、0.1~50cm/cm/秒がより好ましく、5~30cm/cm/秒が特に好ましい。なお、上記通気性は、JIS R 3420:2013 7.13に準じ、測定、算出される。
【0039】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物の製造方法としては特に限定されない。好ましい例として、例えば、(1)ガラス繊維織物を製織する工程、(2)製織したガラス繊維織物に必要に応じてヒートクリーニング処理を施すヒートクリーニング工程、(3)ヒートクリーニングしたガラス繊維織物に必要に応じてシランカップリング剤等を付与する表面処理工程、(4)(1)、(2)又は(3)で得られたガラス繊維織物に必要に応じて開繊処理を施す開繊処理工程、(5)(1)~(4)のいずれかの工程で得られたガラス繊維織物を樹脂溶液に含浸させる樹脂含浸工程、(6)(5)樹脂含浸工程の直後に樹脂溶液を含んだガラス繊維織物をプレス圧0.05~0.5MPaでプレスするプレス工程、(7)プレス工程の直後にプレスしたガラス繊維織物に含まれる樹脂溶液を乾燥させる乾燥工程、を含む製造方法が挙げられる。
【0040】
中でも、(1)ガラス繊維織物を製織する工程、(2)(1)の工程で得られたガラス繊維織物をヒートクリーニングを施さずに樹脂溶液に含浸させる樹脂含浸工程、(3)(2)樹脂含浸工程の直後に樹脂溶液を含んだガラス繊維織物をプレス圧0.05~0.5MPaでプレスするプレス工程、(4)プレス工程の直後にプレスしたガラス繊維織物に含まれる樹脂溶液を乾燥させる乾燥工程、を含む製造方法がより好ましい。すなわち、ヒートクリーニング処理を施さない場合(すなわち、ガラス繊維織物に澱粉等のサイジング剤成分が付着している場合)、当該処理を施したものに比して、ガラス繊維織物は柔軟性に優れたものとなりやすい。そして、柔軟性に優れた状態で、樹脂溶液を含浸させ、プレスし、直後に乾燥させることにより、見掛け密度をより一層高めやすくなる。
【0041】
(樹脂付着ガラス繊維織物の特性)
【0042】
(不燃性)
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、ガラス糸から構成され、かつ、強熱減量が0.8~10質量%であることから、不燃性に優れる。本発明の樹脂付着ガラス繊維織物の持つ不燃性をより一層優れたものとする観点から、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物が以下の要件を満足することが好ましい。
<要件>
一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/mの輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下である。
【0043】
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物が上記要件を満足するものとする方法としては、例えば、樹脂の量の調整、種類の選択をしたり、難燃剤を含有する樹脂組成物としたりすることができる。
【0044】
また、本発明の膜材料は、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/mの輻射熱を照射する発熱性試験において、加熱開始後20分間、0.5mm四方以上の貫通孔がないものであることがより好ましい。この要件を満足しやすくする方法としては、例えば、樹脂付着ガラス繊維織物を構成する経糸間の隙間間隔及び緯糸間の隙間間隔を0.5mm以下となるよう、織密度及び経糸構成及び緯糸構成を調整、選択すること等が挙げられる。
【0045】
(引張強さ)
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物の引張強さとしては、特に制限されないが、例えば、経方向が200~1200N/25mmが挙げられ、500~1200N/25mmが好ましく挙げられる。また、緯方向が、100~1000N/25mmが挙げられ、300~1000N/25mmが好ましく挙げられる。なお、引張強さは、JIS R 3420:2013 7.4.2に準じ、定速伸長型引張試験機(インテスコ株式会社製)を用い、試験片長さを250mm、試験片の幅(両端部から糸をほぐす前の幅)を40mm、つかみ間隔を100mm、試験片の幅(両端部から糸をほぐした後の幅)を25mm、定速引張速度を50mm/minとし、樹脂付着ガラス繊維織物の経糸方向(経方向)及び緯糸方向(緯方向)について、それぞれ5回測定し、その平均値を経方向及び緯方向それぞれの引張強さ(N/25mm)とする。
【0046】
(樹脂付着ガラス繊維織物の用途)
本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、文字、記号、図柄等の模様をグラビア印刷によって印刷するのに適した特性を備えており、グラビア印刷の被印刷物として利用できる。中でも、溶剤に樹脂を溶解させ顔料を分散させた、樹脂系インクを用いたグラビア印刷の被印刷物としてより好適に利用可能である。適当な樹脂系インクとしては、特に限定されないが、塩化ビニル系インク、アクリル系インク、ウレタン系インク等が挙げられる。また、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物は、グラビア印刷に限らず、その他の印刷方式、例えば溶剤インクジェット印刷やフレキソ印刷等の被印刷物としても好適に用いることができる。
【0047】
また、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物のグラビア印刷が施された印刷物は、不燃性にも優れることから、当該印刷物を含む建築内装材とするのに好適である。
【実施例
【0048】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0049】
(実施例1)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECE225 1/0 1Z(番手22.5tex、単繊維直径7μm、単繊維本数200本)を用い、経糸密度が60本/25mm、緯糸密度が57本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0050】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度180℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は60本/25mm、緯糸密度は57本/25mmであり、厚さが0.09mm、質量108g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.20g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は3.8質量%であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物における、アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量とエチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量との比は、2.4であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、25cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(1)に示すエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発成分56%):174質量部
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):100質量部
純水:726質量部
【0051】
(実施例2)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECE225 1/0 1Z(番手22.5tex、単繊維直径7μm、単繊維本数200本)を用い、経糸密度が60本/25mm、緯糸密度が57本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0052】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度180℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は60本/25mm、緯糸密度は57本/25mmであり、厚さが0.10mm、質量109g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.09g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は4.5質量%であった。また、アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量とエチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量との比は、1.2であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、22cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(1)に示すエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発成分56%):174質量部
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):200質量部
純水:626質量部
【0053】
(実施例3)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECE225 1/0 1Z(番手22.5tex、単繊維直径7μm、単繊維本数200本)を用い、経糸密度が60本/25mm、緯糸密度が57本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0054】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度180℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は60本/25mm、緯糸密度は57本/25mmであり、厚さが0.10mm、質量110g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.10g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は5.6質量%であった。また、アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量とエチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量との比は、2.4であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、14cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(1)に示すエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発成分56%):296質量部
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):170質量部
純水:534質量部
【0055】
(実施例4)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG75 1/0 0.7Z(番手67.5tex、単繊維直径9μm、単繊維本数400本)を用い、経糸密度が44本/25mm、緯糸密度が32本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0056】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度200℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は44本/25mm、緯糸密度は32本/25mmであり、厚さが0.18mm、質量213g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.18g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は3.6質量%であった。また、アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量とエチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量との比は、1.2であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、3cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(1)に示すエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発成分56%):217質量部
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):250質量部
純水:533質量部
【0057】
(実施例5)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECE225 1/0 1Z(番手22.5tex、単繊維直径7μm、単繊維本数200本)を用い、経糸密度が60本/25mm、緯糸密度が57本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0058】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度180℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は60本/25mm、緯糸密度は57本/25mmであり、厚さが0.09mm、質量108g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.20g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は3.4質量%であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、25cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(1)に示すエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発成分56%):174質量部
純水:826質量部
【0059】
(実施例6)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG75 1/0 0.7Z(番手67.5tex、単繊維直径9μm、単繊維本数400本)を用い、経糸密度が44本/25mm、緯糸密度が32本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0060】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度200℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は44本/25mm、緯糸密度は32本/25mmであり、厚さが0.18mm、質量211g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.17g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は2.5質量%であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、7cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):100質量部
純水:900質量部
【0061】
(実施例7)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG75 1/0 0.7Z(番手67.5tex、単繊維直径9μm、単繊維本数400本)を用い、経糸密度が44本/25mm、緯糸密度が32本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0062】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度200℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は44本/25mm、緯糸密度は32本/25mmであり、厚さが0.18mm、質量213g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.18g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は3.2質量%であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、5cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):200質量部
純水:800質量部
【0063】
(実施例8)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECE225 1/0 1Z(番手22.5tex、単繊維直径7μm、単繊維本数200本)を用い、経糸密度が60本/25mm、緯糸密度が57本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0064】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度180℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は60本/25mm、緯糸密度は57本/25mmであり、厚さが0.10mm、質量110g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.10g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は4.0質量%であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、20cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):377質量部
純水:623質量部
【0065】
(実施例9)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG75 1/0 0.7Z(番手67.5tex、単繊維直径9μm、単繊維本数400本)を用い、経糸密度が32本/25mm、緯糸密度が25本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0066】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.2MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度200℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は32本/25mm、緯糸密度は25本/25mmであり、厚さが0.15mm、質量160g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.07g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は3.5質量%であった。また、アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量とエチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量との比は、1.2であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、70cm/cm/秒であった。
(処方)
化学式(1)に示すエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発成分56%):174質量部
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):200質量部
純水:626質量部
【0067】
(実施例10)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG75 1/0 0.7Z(番手67.5tex、単繊維直径9μm、単繊維本数400本)を用い、経糸密度が31本/25mm、緯糸密度が25本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0068】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.2MPaで2回プレスし、2回プレスしたガラスクロスを温度200℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は31本/25mm、緯糸密度は25本/25mmであり、厚さが0.11mm、質量155g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.41g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は2.8質量%であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、95cm/cm/秒であった。
(処方)
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):416質量部
純水:584質量部
【0069】
(実施例11)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG75 1/0 0.7Z(番手67.5tex、単繊維直径9μm、単繊維本数400本)を用い、経糸密度が44本/25mm、緯糸密度が32本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0070】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度200℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は44本/25mm、緯糸密度は32本/25mmであり、厚さが0.19mm、質量225g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.18g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は10.0質量%であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、2cm/cm/秒であった。
(処方)
アクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン(アクリル酸-アクリル酸ブチル-スチレン共重合体エマルジョン、不揮発成分50%):850質量部
純水:150質量部
【0071】
(比較例1)
経糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG150 1/0 1Z(番手33.7tex、単繊維直径9μm、単繊維本数200本)を用い、緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG75 1/0 0.7Z(番手67.5tex、単繊維直径9μm、単繊維本数400本)を用い、経糸密度が30本/25mm、緯糸密度が20本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0072】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度200℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は30本/25mm、緯糸密度は20本/25mmであり、厚さが0.11mm、質量98g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は0.89g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は4.5質量%であった。また、アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量とエチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量との比は、1.2であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、170cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(1)に示すエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発成分56%):174質量部
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):304質量部
純水:522質量部
【0073】
(比較例2)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG150 1/0 1Z(番手33.7tex、単繊維直径9μm、単繊維本数200本)を用い、経糸密度が39本/25mm、緯糸密度が32本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0074】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度180℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は39本/25mm、緯糸密度は32本/25mmであり、厚さが0.11mm、質量100g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は0.91g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は4.0質量%であった。また、アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量とエチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量との比は、1.2であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、130cm/cm/秒であった。
(処方1)
化学式(1)に示すエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発成分56%):174質量部
化学式(2)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン及び化学式(3)に示すアクリル酸-スチレン共重合体エマルジョンの混合物(不揮発成分40%):200質量部
純水:626質量部
【0075】
(比較例3)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECD450 1/0 1Z(番手11.2tex、単繊維直径5μm、単繊維本数200本)を用い、経糸密度が60本/25mm、緯糸密度が47本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。得られたガラスクロスは、厚さが0.06mm、質量49g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は0.82g/cmであった。
【0076】
(比較例4)
経糸及び緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG37 1/0 0.7Z(番手135tex、単繊維直径9μm、単繊維本数800本)を用い、経糸密度が33本/25mm、緯糸密度が30本/25mmとなるように朱子織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0077】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度200℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は33本/25mm、緯糸密度は30本/25mmであり、厚さが0.30mm、質量370g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.23g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は8.0質量%であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、5cm/cm/秒であった。
(処方)
アクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン(アクリル酸-アクリル酸ブチル-スチレン共重合体エマルジョン、不揮発成分50%):850質量部
純水:150質量部
【0078】
(比較例5)
経糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG37 1/0 0.7Z(番手135tex、単繊維直径9μm、単繊維本数800本)を用い、緯糸として、ユニチカグラスファイバー株式会社製ECG75 1/0 0.7Z(番手67.5tex、単繊維直径9μm、単繊維本数400本)を用い、経糸密度が50本/25mm、緯糸密度が40本/25mmとなるように平織組織で製織し、生機ガラスクロスを得た。
【0079】
得られた生機ガラスクロスを、ヒートクリーニング処理をせずに、そのまま下記処方の樹脂溶液に含浸させ、次いでニップロールで圧力0.1MPaでプレスし、プレスしたガラスクロスを温度200℃、5分の条件で乾燥させ、本発明の樹脂付着ガラス繊維織物を得た。得られた樹脂付着ガラス繊維織物の経糸密度は50本/25mm、緯糸密度は40本/25mmであり、厚さが0.36mm、質量415g/mであり、該厚さと該質量から計算される見掛け密度は1.15g/cmであった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の強熱減量は8.5質量%であった。また、得られた樹脂付着ガラス繊維織物の通気性は、6cm/cm/秒であった。
(処方)
アクリル酸-スチレン共重合体エマルジョン(アクリル酸-アクリル酸ブチル-スチレン共重合体エマルジョン、不揮発成分50%):850質量部
純水:150質量部
【0080】
(評価方法)
1.強熱減量(質量%)
各実施例、比較例で得られた樹脂付着ガラス繊維織物について、JIS R 3420:2013 7.3に準じ、測定、算出した。
【0081】
2.不燃性
各実施例、比較例で得られた樹脂付着ガラス繊維織物について、一般財団法人建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」(平成26年3月1日変更版)における4.10.2 発熱性試験・評価方法に従って測定される、輻射電気ヒーターからシートの表面に50kW/mの輻射熱を照射する発熱性試験において、(1)加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、(2)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、(3)加熱開始後20分間、0.5mm四方以上の貫通孔がないものを○、上記(1)~(3)の3つの要件のうち、一つでも満足しないものがある場合は×として評価した。
【0082】
3.通気性(cm/cm/秒)
各実施例、比較例で得られた樹脂付着ガラス繊維織物について、JIS R 3420:2013 7.13に準じ、測定、算出した。
【0083】
4.引張強さ(N/25mm)
JIS R 3420:2013 7.4.2に準じ、定速伸長型引張試験機(インテスコ株式会社製)を用い、試験片長さを250mm、試験片の幅(両端部から糸をほぐす前の幅)を40mm、つかみ間隔を100mm、試験片の幅(両端部から糸をほぐした後の幅)を25mm、定速引張速度を50mm/minとし、おこなった。樹脂付着ガラス繊維織物の経糸方向(経方向)及び緯糸方向(緯方向)について、それぞれ5回測定し、その平均値を経方向及び緯方向それぞれの引張強さ(N/25mm)とした。
【0084】
5.印刷適性
得られた樹脂付着ガラス繊維織物を被印刷物として、印刷局式グラビア印刷試験機(熊谷理機社製)により、インクとして青色のトーヨーカラー株式会社製溶剤系ポリウレタン樹脂インクを用い、網点印刷の版を用いて試験片に単色印刷をおこない、下記(1)~(3)について5人のパネラーにより目視で評価をおこない、評価した。
(1)印刷の鮮明さ
印刷物を50cm離した状態で、下記基準にて評価した。3点以上を合格とした。
5点・・・印刷部の輪郭が極めてはっきりしており、画像の色合いは設計どおりであって鮮明さが特に優れていた。
4点・・・印刷部の輪郭がややぼやける部分があるものの、画像の色合いはほぼ設計どおりであり鮮明さに優れていた。
3点・・・印刷部の輪郭がぼやける部分があり、画像の色合いも設計よりやや薄くなることが認められるものの、鮮明さは実用上問題ないレベルであった。
2点・・・印刷部の輪郭がぼやける部分が多く、画像の色合いも設計より薄くなることが認められ、鮮明さは実用上やや問題あるレベルであった。
1点・・・印刷部の輪郭がぼやけており、画像の色合いも設計よりかなり薄くなり、鮮明さは実用上問題あるレベルであった。
(2)裏映りの程度
千円札を机の上に設置し、千円札から約50cm上方に上記印刷をおこなった樹脂付着ガラス繊維織物を設置して、当該樹脂付着ガラス繊維織物から10cm上方から、当該樹脂付着ガラス繊維織物を透して千円札を観察し、千円札の存在が視認できるか、また、千円札の存在が視認で着たとして「千円」、「日本銀行券」、及び通し番号の文字が明瞭に読めるか否かで評価した。評価基準は、以下の通りである。実用性の観点から、本発明においては、3点以上を合格とした。
5点・・・千円札の存在自体が見られず、裏映りが全く無いものであった。
4点・・・千円札の存在は薄く確認できるが、「千円」、「日本銀行券」、及び通し番号の文字は確認できず、裏映りは十分防止できたものであった。
3点・・・千円札の存在は確認でき、「千円」の文字が薄く見られるものの、「日本銀行券」、及び通し番号の文字は確認できず、裏映りの程度は印刷面の視認性には問題無いレベルであった。
2点・・・千円札の存在は確認でき、「千円」及び「日本銀行券」の文字が薄く確認され、裏映りの程度は印刷面の視認性にやや問題あるレベルであった。
1点・・・千円札の存在は確認でき、「千円」、「日本銀行券」、及び通し番号の文字が薄く確認され、裏映りの程度は印刷面の視認性に問題あるレベルであった。
(3)インク定着性
印刷後、70℃で30秒乾燥した樹脂付着ガラス繊維織物の印刷面に、白色の不織布を接触させて軽くこすりつけた前後の、樹脂付着ガラス繊維織物の印刷画像とこすりつけた不織布について、下記基準により評価した。3点以上を合格とした。
5点・・・不織布には樹脂付着ガラス繊維織物に付着しているインクの青色は全く写らず、樹脂付着ガラス繊維織物の印刷画像に変化は全く見られなかった。
4点・・・不織布には樹脂付着ガラス繊維織物に付着しているインクの青色が極わずかに写ったものの、樹脂付着ガラス繊維織物の印刷画像に変化は見られなかった。
3点・・・不織布には樹脂付着ガラス繊維織物に付着しているインクの青色がやや写ったものの、樹脂付着ガラス繊維織物の印刷画像はやや不織布がこすれた部分がわずかに変色した程度であり、実用上問題無いレベルであった。
2点・・・不織布には樹脂付着ガラス繊維織物に付着しているインクの青色が写り、樹脂付着ガラス繊維織物の印刷画像はやや不織布がこすれた部分が変色し、実用上やや問題あるレベルであった。
1点・・・不織布には樹脂付着ガラス繊維織物に付着しているインクの青色がかなり写り、樹脂付着ガラス繊維織物の印刷画像はやや不織布がこすれた部分がかなり変色し、実用上問題あるレベルであった。
【0085】
実施例1~11及び比較例1~5の樹脂付着ガラス繊維織物の物性等について、表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例1~11の樹脂付着ガラス繊維織物は、ガラス糸によって構成されるガラス繊維織物であって、該ガラス糸の番手が20~70texであり、該ガラス繊維織物の厚さが0.08mm以上であり、該ガラス繊維織物の厚さ(mm)と質量(g/m)から計算される見掛け密度が1.05~1.50(g/cm)であり、該ガラス糸を構成するガラス繊維表面に樹脂を含み、JIS R 3420に準じ測定される該ガラス繊維織物の強熱減量が0.8~10質量%であることから、グラビア印刷によって印刷した場合に鮮明な図柄等を現すことを可能とし、貼り付けた壁等の色や柄を透しにくくすることが可能なものであった。
【0088】
実施例1と、実施例5又は実施例8と、を比較すると、実施例1は、ガラス繊維表面に含まれる樹脂がアクリル酸-スチレン共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体を含むものであることから、インク定着性により優れつつ、かつ、耐溶剤性に優れ、樹脂付着ガラス繊維織物の目がよりずれにくくなるものであり、印刷画像の鮮明性により優れるものであった。また、ガラス繊維表面に含まれる樹脂がアクリル酸-スチレン共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む実施例1~4及び9の中でも、実施例1及び3は、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びアクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量比(エチレン-酢酸ビニル共重合体の不揮発成分の質量/アクリル酸-スチレン共重合体の不揮発成分の質量)が2.0~3.0であることから、鮮明さに一層優れつつ、インク定着性がより一層優れたものであった。また、実施例4、6又は7と、実施例10とを比較すると、実施例4、6又は7は、強熱減量が1.0~5.0質量%であったことから、タック性も良好なものであり、さらに鮮明な図柄等を表すことを可能とするものであった。
【0089】
一方、比較例1及び2は、樹脂付着ガラス繊維織物の見掛け密度が1.05(g/cm)未満であることから、印刷時に版胴の凹部及び非凹部との接触が繰り返されることで樹脂付着ガラス繊維織物が厚さ方向等にわずかに動き、これに起因して鮮明な図柄等を現すことができなくなるものであった。
【0090】
比較例3は、ガラス繊維織物の見掛け密度が1.05(g/cm)未満であることから、印刷時に版胴の凹部及び非凹部との接触が繰り返されることでガラス繊維織物が厚さ方向等にわずかに動き、これに起因して鮮明な図柄等を現すことができなくなるものであった。また、比較例3は、ガラス糸の番手が20tex未満のものを含み、ガラス繊維織物の厚さが0.08mm未満であることから、ガラス繊維織物のインク受容側とは反対側にある物の色や柄を透しにくくなり、インク受容側から見たときにガラス繊維織物に付与した図柄等の視認性に問題あるものであった。
【0091】
比較例4及び5は、ガラス糸の番手が70texを超えるものを含むことから、得られる樹脂付着ガラス繊維織物の平滑性が劣り、グラビア印刷の版胴の凹部に溜まったインクが十分に転写されず、鮮明な図柄等を現すことができなかった。