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特許7002117製鉄ダスト塊成化物の製造方法、及び塊成化助剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】製鉄ダスト塊成化物の製造方法、及び塊成化助剤
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/244 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
C22B1/244
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017221134
(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2019090095
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川口 敬司
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-236427(JP,A)
【文献】特開2010-047819(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0076139(KR,A)
【文献】特開2003-247026(JP,A)
【文献】特開2000-178662(JP,A)
【文献】特開平03-053029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-1/26
C22B 7/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄ダストを用いて塊成化物を製造する方法であって、
前記製鉄ダストを含有する材料と、ポリビニルアルコール水溶液とを混合することを含み、
前記製鉄ダスト含有材料は、該材料の乾燥重量に対する重量割合で0.2重量%以上の油分を含有
前記ポリビニルアルコール水溶液を、前記製鉄ダスト含有材料中の製鉄ダスト(乾燥重量)に対するポリビニルアルコールの重量割合が0.001~0.046重量%(固形分換算)となるように、前記製鉄ダスト含有材料と混合することを含む、
製鉄ダスト塊成化物の製造方法。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールは、けん化度が85%以上である、請求項1に記載の製鉄ダスト塊成化物の製造方法。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールは、重合度が1,000~3,500である、請求項1又は2に記載の製鉄ダスト塊成化物の製造方法。
【請求項4】
前記製鉄ダスト含有材料は、粉末である、請求項1からのいずれかに記載の製鉄ダスト塊成化物の製造方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の製鉄ダスト塊成化物の製造方法に使用するための製鉄ダストの塊成化助剤であって、
ポリビニルアルコール水溶液を含む、塊成化助剤。
【請求項6】
製鉄ダストを再利用する方法であって、
ポリビニルアルコール水溶液を、前記製鉄ダストを含有する材料と混合することを含み、
前記製鉄ダスト含有材料は、該材料の乾燥重量に対する重量割合で0.2重量%以上の油分を含有
前記ポリビニルアルコール水溶液を、前記製鉄ダスト含有材料中の製鉄ダスト(乾燥重量)に対するポリビニルアルコールの重量割合が0.001~0.046重量%(固形分換算)となるように、前記製鉄ダスト含有材料と混合することを含む、製鉄ダストの再利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製鉄所等で発生する製鉄ダストの塊成化物を製造する方法、及びそれに使用する塊成化助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、製鉄工程において様々な製鉄ダストが発生する。製鉄ダストは酸化鉄や有価金属を含むことから、製鉄ダストを回収し、製鉄用原料の副原料としてリサイクルすることが行われている。回収された製鉄ダストは、還元処理することにより再利用される。すなわち、回収して必要に応じて乾燥させた製鉄ダストに、バインダー及び必要に応じてコークブリーズや微粉炭等の副原料を加えて得られた粉体原料を必要に応じて水と混合し、ペラタイジング法又はブリケット法等によって造粒(塊成化)する。得られた造粒物(塊成化物)を高温下で急速に加熱して還元することによって、還元鉄として回収することができる。
【0003】
特許文献1には、重量平均分子量が1,000~5,000,000の高分子原料を必須成分とする造粒処理剤が開示されている。特許文献2には、カルボキシメチルセルロース塩等のバインダー成分を含有する粉末金属原料用造粒剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-76130号公報
【文献】特開2000-178662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、製鉄ダストが一定の量以上の油分を含有する結果、製鉄ダストの塊成化に使用する材料中の油分が所定の量を超える場合、従来のバインダーでは、得られる塊成化物の強度が不十分で割れやすく、搬送や保管時における塊成化物の割れや粉化によりダストの発生や生産効率の低下につながるという問題がある。
【0006】
本開示は、製鉄ダストの塊成化に使用する材料が所定の含有量以上の油分を含有する場合であっても、十分な強度が有する製鉄ダストの塊成化物を製造可能な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、製鉄ダストを用いて塊成化物を製造する方法であって、前記製鉄ダストを含有する材料と、ポリビニルアルコール水溶液とを混合することを含み、前記製鉄ダスト含有材料は、該材料の乾燥重量に対する重量割合で0.2重量%以上の油分を含有する、製鉄ダスト塊成化物の製造に関する。
【0008】
本開示は、その他の態様において、本開示の製鉄ダストの塊成化方法に使用するための製鉄ダストの塊成化助剤であって、ポリビニルアルコール水溶液を含む塊成化助剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、所定の含有量以上の油分を含有する材料を用いても、十分な強度を有する製鉄ダストの塊成化物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、製鉄ダストを含む材料がある一定の量以上の油分を含有する場合、従来一般的に使用されているバインダーでは十分な強度を有する塊成化物を得られないが、水溶液の状態のポリビニルアルコールと混合して塊成化することによって、十分な強度が保持された塊成化物を得ることができる、との知見に基づく。
【0011】
本開示において「製鉄ダスト」とは、製鉄所といった製鉄工程で発生するあらゆる種類のダスト、スラッジ及びミルスケールをいい、特に限定されない一又は複数の実施形態において、高炉、電気炉、転炉、又は合金鉄製造炉等の製鉄工程で発生するダスト、スラッジ及びミルスケールを含みうる。本開示において「ある一定の量以上の油分を含有する製鉄ダスト」としては、一又は複数の実施形態において、製鉄ダスト(乾燥重量)に対する油分の重量割合が、0.2重量%以上である製鉄ダストが挙げられる。製鉄ダストに含まれる油分の含有量の上限としては、特に制限されない一又は複数の実施形態において、5重量%以下である。製鉄ダストの油分の含有量は、一又は複数の実施形態において、ソックスレー抽出法により測定できる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0012】
本開示において「製鉄ダストを含有する材料(製鉄ダスト含有材料)」とは、製鉄ダストを塊成化するために使用される材料であって、主成分(主原料)として製鉄ダストを含む。本開示における製鉄ダスト含有材料としては、一又は複数の実施形態において、製鉄ダストの塊成化に使用される原料であれば、製鉄ダスト以外の物質を含んでいてもよい。製鉄ダスト以外の物質としては、一又は複数の実施形態において、石炭粉、消石灰及びコークブリーズ等の副原料、並びに粉末バインダー等が挙げられる。製鉄ダスト含有材料における製鉄ダストの含有量は、一又は複数の実施形態において、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、91重量%以上、92重量%以上、93重量%以上、94重量%以上、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、若しくは98重量%以上であり、又は99.5重量%以下若しくは99重量%以下である。製鉄ダスト含有材料は、一又は複数の実施形態において、粉体(粉末)の形態であってもよいし、製鉄ダスト等に水等が添加された形態であってもよい。製鉄ダスト含有材料は、一又は複数の実施形態において、粗大粒子を除去したものでもよい。粗大粒子は、一又は複数の実施形態において、篩又はフィルター(例えば、φ500μm)等を用いて除去することができる。
【0013】
本開示における製鉄ダスト含有材料は、該材料の乾燥重量に対する重量割合で0.2重量%以上の油分を含有する。製鉄ダスト含有材料の油分含有量は、一又は複数の実施形態において、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下又は2重量%以下である。製鉄ダスト含有材料の油分の含有量は、一又は複数の実施形態において、ソックスレー抽出法により測定できる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0014】
本開示において「十分な強度を有する」こととしては、直径30mmの塊成化物5個をIS R 5201:2015で規定されたフローテーブル上に乗せ、1cmの落下衝撃を50回加えた場合に、割れなかった塊成化物の個数が4個以上であることをいう。強度評価は、一又は複数の実施形態において、製鉄ダスト含有材料とポリビニルアルコール水溶液を混合して得られた混合物9.8gを内径30mmの円筒容器(型枠)に入れ、その混合物の上に加圧棒を乗せて成型機で40kg/cm2の圧力を加えて錠剤に成型し、105℃で一晩乾燥した後、デシケーターで放冷することにより得られた塊成化物を使用して行うことができる。
【0015】
本開示において「塊成化する」こととしては、一又は複数の実施形態において、塊状に成型することが挙げられる。塊状としては、一又は複数の実施形態において、ブリケット状、ペレット状、タブレット状、又は粒状等が挙げられる。本開示における塊成化物は、一又は複数の実施形態において、ブリケット、ペレット、又はタブレット等ということもできる。
【0016】
[製鉄ダスト塊成化物の製造方法]
本開示は、一態様において、製鉄ダストを用いて塊成化物を製造する方法(本開示の製鉄ダスト塊成化物の製造方法)に関する。本開示の製鉄ダスト塊成化物の製造方法は、製鉄ダストを含有する材料と、ポリビニルアルコール水溶液とを混合することを含み、該製鉄ダスト含有材料は、該材料の乾燥重量に対する重量割合で0.2重量%以上の油分を含有する。
【0017】
ポリビニルアルコールのけん化度は、塊成化物の強度をより向上させる点から、一又は複数の実施形態において、85%以上、86%以上、87%以上又は88%以上である。けん化度の上限としては、特に制限されない一又は複数の実施形態において100%以下である。
【0018】
ポリビニルアルコールの重合度は、塊成化物の強度をより向上させる点から、一又は複数の実施形態において、1,000以上、1,500以上又は2,000以上であり、同様の点から、3,500以下又は3,000以下である。
【0019】
製鉄ダスト(乾燥重量)に対するポリビニルアルコールの重量割合は、一又は複数の実施形態において、0.001重量%以上、0.007重量%以上、0.01重量%以上、0.05重量%以上若しくは0.1重量%以上であり、又は、1重量%以下、0.7重量%以下若しくは0.5重量%以下である。
【0020】
製鉄ダスト含有材料(乾燥重量)に対するポリビニルアルコールの重量割合は、一又は複数の実施形態において、0.001重量%以上、0.007重量%以上、0.01重量%以上、0.05重量%以上若しくは0.1重量%以上であり、又は、1重量%以下、0.7重量%以下若しくは0.5重量%以下である。
【0021】
混合するポリビニルアルコール水溶液の濃度としては、特に限定されるものではなく、適宜設定できる。濃度は、特に限定されない一又は複数の実施形態において、2%以上であり、塊成化に要するコストを低減する点から、4%以上、5%以上又は6%以上であり、水溶液の取り扱いの点からは、10%以下である。
【0022】
ポリビニルアルコール水溶液は、一又は複数の実施形態において、加温した状態で混合してもよい。混合時のポリビニルアルコール水溶液の温度は、一又は複数の実施形態において、30℃以上若しくは50℃以上であり、又は100℃以下、95℃以下、90℃以下若しくは80℃以下である。
【0023】
製鉄ダスト含有材料は、一又は複数の実施形態において、製鉄ダスト以外に、石炭粉、消石灰、コークブリーズ等を含んでいてもよい。
【0024】
製鉄ダスト含有材料は、一又は複数の実施形態において、ポリビニルアルコール水溶液の効果を損なわない範囲で、ポリビニルアルコール水溶液以外のバインダーを含んでいてもよい。該バインダーとしては、一又は複数の実施形態において、アラビアガム、トラガカントガム、キサンタンガム、アルギン酸、天然水溶性高分子、生石灰、ショ糖、グラニュー糖、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、粉末のポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、グアーガム、タマリンドガム、デンプン、リン酸、リグニンスルホン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム12水和物、及びリン酸三カリウム1~12水和物等が挙げられる。
【0025】
製鉄ダスト含有材料は、一又は複数の実施形態において、上記の通り、粉体(粉末)であってもよい。本開示における製鉄ダスト含有材料とポリビニルアルコール水溶液との混合は、一又は複数の実施形態において、粉体(粉末)の製鉄ダスト含有材料と、ポリビニルアルコール水溶液とを混合することを含む。
【0026】
本開示の製鉄ダスト塊成化物の製造方法は、一又は複数の実施形態において、ポリビニルアルコール水溶液と製鉄ダスト含有材料とを混合して得られた混合物を塊成化(造粒)することを含む。塊成化(造粒)は、一又は複数の実施形態において、ペラタイジング法又はブリケット法等により行うことができる。
【0027】
本開示の製鉄ダスト塊成化物の製造方法は、一又は複数の実施形態において、塊成化(造粒)して得られた塊成化物(造粒物)を乾燥させることを含んでいてもよい。
【0028】
[製鉄ダストの塊成化方法]
本開示は、一態様において、製鉄ダストを塊成化する方法(本開示の製鉄ダストの塊成化方法)に関する。本開示の製鉄ダストの塊成化方法は、製鉄ダストを含有する材料と、ポリビニルアルコール水溶液とを混合することを含み、該製鉄ダスト含有材料は、該材料の乾燥重量に対する重量割合で0.2重量%以上の油分を含有する。本開示の製鉄ダストの塊成化方法は、本開示の製鉄ダスト塊成化物の製造方法と同様に行うことができ、ポリビニルアルコール、製鉄ダスト含有材料、及び製鉄ダスト含有材料における油分含有量等は、上述の通りである。
【0029】
本開示の製鉄ダスト塊成化物の製造方法及び塊成化方法によって得られる塊成化物は、一又は複数の実施形態において、還元鉄として再利用することができる。このため、本開示の塊成化方法は、一又は複数の実施形態において、製鉄ダストの還元処理のプロセスにおいて使用することができる。
【0030】
[製鉄ダストの再利用方法]
本開示は、その他の態様において、製鉄ダストを再利用する方法(本開示の製鉄ダストの再利用方法)に関する。本開示の製鉄ダストの再利用方法は、ポリビニルアルコール水溶液を、製鉄ダストを含有する材料と混合することを含み、前記製鉄ダスト含有材料は、該材料の乾燥重量に対する重量割合で0.2重量%以上の油分を含有する。本開示の製鉄ダストの再利用方法におけるポリビニルアルコール、製鉄ダスト含有材料、及び製鉄ダスト含有材料における油分含有量は、上述の通りである。
【0031】
[塊成化物の還元方法]
本開示は、その他の態様において、塊成化物を還元する方法(本開示の塊成化物の還元方法)に関する。本開示の塊成化物の還元方法は、ポリビニルアルコール水溶液を、製鉄ダストを含有する材料と混合することを含み、前記製鉄ダスト含有材料は、該材料の乾燥重量に対する重量割合で0.2重量%以上の油分を含有する。本開示の鉄鉱石の還元方法におけるポリビニルアルコール、製鉄ダスト含有材料、及び製鉄ダスト含有材料における油分含有量は、上述の通りである。
【0032】
[塊成化助剤]
本開示は、その他の態様において、本開示の製鉄ダスト塊成化物の製造方法、塊成化方法、再利用方法及び還元方法に使用するための製鉄ダストの塊成化助剤(本開示の塊成化助剤)に関する。本開示の塊成化助剤は、主成分としてポリビニルアルコール水溶液を含む。ポリビニルアルコールとしては、上述の通りである。
【0033】
以下、実施例及び比較例を用いて本開示をさらに説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例
【0034】
(実施例1)
[製鉄ダスト含有材料の調製]
某製鉄所で採取した製鉄ダスト及び石炭粉は、105℃で1晩乾燥させた後、500μm未満に篩分けした。篩分けした製鉄ダスト及び石炭粉と、粉末バインダーとを下記表1に示す配合比で混合して製鉄ダスト含有材料を調製した。
調製した製鉄ダスト含有材料に含まれる油分の量を下記方法により測定した。製鉄ダスト含有材料の油分は0.24重量%であった。なお、この油分は、実質的に製鉄ダスト由来の油分であるといえる。
【0035】
[製鉄ダスト含有材料の油分の測定]
製鉄ダスト含有材料に含まれる油分量の測定はソックスレー抽出法で行なった。測定は、下記の条件で行った。得られた抽出物の重量を用いて下記式から抽出率を算出し、得られた抽出率を油含有量とした。
抽出方法 : ソックスレー抽出法
使用機器 : ソックスレー抽出機 Soxtec Avanti 2050 (Foss社製)
使用溶媒 : ジクロロメタン
抽出温度 : 130℃
抽出時間 : 1時間 (溶媒中への試料浸漬30分+還流溶媒でのリンス30分)
【数1】
【0036】
【表1】
【0037】
[塊成化物の調製]
調製した製鉄ダスト含有材料46gをビニール袋に入れ、ビニール袋の口を閉じて手で振って混合し、ビニール袋にいれたまま恒温槽で60℃30分間加温し、加温した製鉄ダスト含有材料を含むビニール袋を恒温槽から取り出した。ポリビニルアルコール(けん化度:98、重合度:2400)を0.5重量%含有する水4.0gを、恒温槽から取り出した製鉄ダスト含有材料を含むビニール袋に添加した(製鉄ダストに対するポリビニルアルコール固形分濃度:0.046重量%)。再び袋の口を閉じて90秒間手で振って混合し、その後室温で10分間放冷し、放冷した混合原料9.8gを分取して内径30mmの円筒容器(型枠)に入れ、混合原料の上に加圧棒を乗せて、成型機で40kg/cm2の圧力を加えて錠剤に成型した(5つ)。得られた錠剤を105℃で一晩乾燥し、デシケーターで放冷したものを塊成化物とした。
【0038】
[塊成化物の強度評価確認試験]
得られた5つの塊成化物を、JIS R 5201:2015で規定されたフローテーブル上に乗せ、1cmの落下衝撃を50回加えた後、割れずに残った塊成化物の数で強度評価を実施した。その得られた結果を下記表2に示す。なお、目視確認で、塊成化物の10%程度以上の体積が欠けた塊成化物を割れたと判定した。
【0039】
(実施例2)
重合度が1700であるポリビニルアルコールを使用した以外は、実施例1と同様に塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表2に示す。
【0040】
(実施例3及び4)
製鉄ダスト含有材料に添加するポリビニルアルコール水溶液のポリビニルアルコールの濃度を0.25重量%又は0.13重量%とした以外は、実施例2と同様に塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表2に示す。
【0041】
(実施例4~9)
下記表2に示すけん化度及び重合度のポリビニルアルコールを使用した以外は、実施例1と同様に塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表2に示す。
【0042】
(比較例1及び2)
実施例1と同じ製鉄ダスト含有材料46gを入れたビニール袋に、さらに下記表2に示す粉末のポリビニルアルコールを0.25g加えた。袋の口を閉じて手で振って混合した後、恒温槽で60℃30分間加温した。加温した製鉄ダスト含有材料を含むビニール袋を恒温槽から取り出し、水4.0gを添加した。再び袋の口を閉じて90秒間手で振って混合し、その後室温で10分間放冷し、放冷した原料9.8gを分取し、内径30mmの円筒容器(型枠)に入れ、混合原料の上に加圧棒を乗せて、成型機で40kg/cm2の圧力を加えて錠剤に成型した(5つ)。得られた錠剤を105℃で一晩乾燥し、デシケーターで放冷したものを塊成化物とした。
得られた塊成化物について、実施例1と同様の強度評価確認試験を行った。その結果を下記表2に示す。
【0043】
(比較例3及び4)
粉末のポリビニルアルコールに代えて、下記表2の比較例3又は4の薬剤を使用した以外は、比較例1と同様に塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表2に示す。
【0044】
(比較例5~9)
ポリビニルアルコール水溶液に代えて、下記表2の比較例5~9に示す薬剤成分(バインダー)の水溶液を使用した以外は、実施例と同様に塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
比較例3~9では、製鉄ダストのバインダーとして一般的に知られている薬剤を使用した。表2に示すように、比較例3~9の塊成化物は、強度評価確認試験で割れずに残った錠剤数が3個以下であり、塊成化物の強度を十分に保持する効果が得られなかった。これに対し、ポリビニルアルコール水溶液を混合した実施例1~9の塊成化物は、強度評価確認試験で割れずに残った錠剤数が4個又は5個であり、塊成化物の強度を十分に保持する効果が得られた。
また、粉末のポリビニルアルコールを使用した比較例1及び2では、塊成化物の強度を十分に保持する効果が得られなかった。さらに、実施例2及び8では、比較例1及び2と同一の重合度及びけん化度のポリビニルアルコールを使用したにもかかわらず、ポリビニルアルコールを添加する形態を水溶液とすることによって、塊成化物の強度を十分に保持することができた。
以上の結果、ポリビニルアルコール水溶液と混合して塊成化することにより、油分含有量が0.24重量%である製鉄ダスト含有材料から、十分な強度を有する塊成化物が得られることが確認できた。
なお、上記比較例1及び2では、加温及び温水の添加前に粉末のポリビニルアルコールを製鉄ダスト含有材料に加えたが、温水添加時に粉末のポリビニルアルコールを添加した場合であっても、比較例1及び2と同様に、十分な強度を有する塊成化物が得られることはできなかった。
【0047】
(実施例10)
実施例1とは異なる油分含有量の製鉄ダストを使用した以外は、実施例2と同様に、塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表3に示す。なお、製鉄ダスト含有材料の油分含有量は0.21重量%であった。
【0048】
(実施例11及び12)
製鉄ダスト含有材料に添加するポリビニルアルコール水溶液のポリビニルアルコールの濃度を0.25重量%又は0.13重量%とした以外は、実施例10と同様に塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表2に示す。
【0049】
(実施例13~16)
下記表3に示すけん化度及び重合度のポリビニルアルコールを使用した以外は、実施例2と同様に塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表3に示す。
【0050】
(比較例11~16)
実施例10で使用した製鉄ダスト含有材料を使用した以外は、比較例1-3、6、9又は10と同様に、塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3に示す通り、ポリビニルアルコール水溶液と混合して塊成化することにより、油分含有量が0.21重量%である製鉄ダスト含有材料から、十分な強度を有する塊成化物が得られることが確認できた。
【0053】
(参考例1~12)
実施例1とは異なる油分含有量の製鉄ダストを使用した以外は、上記実施例1、5及び8並びに比較例1~8と同様に、塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表4に示す。なお、製鉄ダスト含有材料の油分含有量は0.18重量%であった。
【0054】
【表4】
【0055】
(参考例13~18)
実施例1とは異なる油分含有量の製鉄ダストを使用した以外は、上記実施例5及び8並びに比較例2、4、6及び10と同様に、塊成化物の調製及び強度評価確認試験を行った。その結果を下記表5に示す。なお、製鉄ダスト含有材料の油分含有量は0.01重量%であった。
【0056】
【表5】
【0057】
表4及び5に示す通り、製鉄ダスト含有材料の油分含有量が0.2重量%未満であれば、油分含有量が0.2重量%以上の製鉄ダスト含有材料では十分な強度の塊成化物が得られない薬剤成分(バインダー)を使用した場合でも、十分な強度を有する塊成化物が得られることができた。