(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 5/38 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
B65D5/38 C
(21)【出願番号】P 2017250908
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】500303847
【氏名又は名称】株式会社三和
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】細淵 雅邦
(72)【発明者】
【氏名】永井 康行
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-007030(JP,A)
【文献】特開2010-116186(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013776(JP,U)
【文献】実公昭46-013493(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/38
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの開放された引き出し口を備えた外箱と、
前記外箱内に収容され、前記引き出し口からスライドして出し入れ可能な内箱と、を有し、
前記内箱は、合成樹脂製のインナー部材を含み、
前記インナー部材は、上面を開放し、内包物を収容可能なトレー部と、前記トレー部上をスライド移動可能で、前記内箱を前記外箱内に収容したときに、前記トレー部の開放上面を覆う中蓋部とを少なくとも備え、
前記中蓋部と前記外箱との間で生じる摩擦力をaとし、
前記中蓋部と前記トレー部との間で生じる摩擦力をbとしたときに、
a>bの関係を有することを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
前記トレー部は、前記引き出し方向と直交する方向に位置する側面の上端面に、前記内箱のスライド方向に連続した所定長さのスライド溝部が形成されており、
前記中蓋部は、前記トレー部の側面の上端面に位置する側縁に、前記スライド溝部に摺接可能な案内突出部を備えて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
前記案内突出部には、係止部が設けられており、
前記スライド溝部には、前記係止部が係止可能な被係止部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の包装用容器。
【請求項4】
前記係止部は、前記案内突出部における前記スライド溝部対向面に凹状に設けられており、
前記被係止部は、前記スライド溝部における前記案内突出部対向面に凸状に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の包装用容器。
【請求項5】
前記案内突出部は、スライド方向に所定長さを持って長尺突条に形成され、
前記係止部は、前記長尺突条の案内突出部において、スライド方向の両端にそれぞれ一つずつ設けられており、
前記被係止部は、前記スライド溝部において、スライド方向の両端にそれぞれ一つずつ設けられていることを特徴とする請求項4に記載の包装用容器。
【請求項6】
前記中蓋部には、前記外箱の上部内面と対向する上面側に、前記外箱の上部内面と接触可能な凸部が備えられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外箱から内箱を引き出して内包物を取り出すことが可能な包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の包装用容器としては、例えばアーモンドチョコなどの粒状のチョコレート菓子(内包物)の包装用容器が知られている。
例えば、この種のチョコレート菓子の包装用容器は、端面を開放した矩形状の外箱と、上面を開放した矩形状で、前記外箱内に収容され、かつ前記外箱の開放された端面からスライドして出し入れ可能な内箱と、前記内箱に一端側を固着するとともに、内箱に内包されるチョコレート菓子上を覆うようにして配されるグラシン紙からなるシート状の中蓋部と、で構成されている。
この中蓋部は、内包されているチョコレート菓子を外方から受ける衝撃から保護する目的と、チョコレート菓子から出る油分が外箱に滲むのを防ぐ目的と、から採用されている。
【0003】
ところで、この種の包装用容器に内包されているチョコレート菓子を食するには、外箱から内箱をスライドさせて引き出した後、内箱の上面を覆っているシート状の中蓋部を摘んで捲り上げてから取り出さなければならない。すなわち、このシート状の中蓋部は、自重によって常時チョコレート菓子の上方に覆い被さっているからである。
しかし、チョコレート菓子が、例えば転がり易い粒状のものであると、シート状の中蓋部を捲りあげようとしても、内包されているチョコレート菓子が内箱内で転がってしまい、シート状の中蓋部を摘み上げ難いといったことがある。
また、チョコレート菓子を食べていくに従って、内包されているチョコレート菓子の量が少なくなっていき、必然的に、シート状の中蓋部を支えているチョコレート菓子が少なくなる。そのような状態となると、シート状の中蓋部の端部(内箱引き出し側に位置する遊端側の端部)が、自重により、内箱の内底面側に下がって位置してしまうこととなり、さらに捲り上げ難いといった課題も有していた。
さらに、捲り上げていた中蓋部から指を離してしまうと、中蓋部は、再びチョコレート菓子上に覆い被さってしまうため、その都度、中蓋部を捲りあげる必要があった。
【0004】
そこで、上述した課題を解決するために特許文献1に開示されているような構造を有する包装用容器が提案されている。
特許文献1に開示の包装用容器によれば、シート状の中蓋部の一端(遊端)側を、外箱に接着し、内箱を引き出すと、シート状の中蓋部が捲れ上がり、チョコレート菓子が現れる、と言った構造を有している。
このような構造を備えた包装用容器であれば、別途、シート状の中蓋部を捲るといった作業が不要となり、チョコレート菓子の取り出しが容易となる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような先行技術の場合、包装用容器の製造工程において、シート状の中蓋部の一端(遊端)側を、接着剤を介して外箱に接着する工程等、多数の工程を要し、製造時間が余分に掛かると言った課題を有していた。また、シート状の中蓋部の一端(遊端)側を、接着剤を介して外箱に接着する作業は、機械的に行ない難いため、作業者が従事して行なわなければならず、労力が掛かると共に人件費も嵩むと言った課題を有していた。
【0007】
本発明は、この問題を解決するためになされており、その目的は、外箱から内箱を引き出すと、内箱内が開放されて内包物が容易に取り出し得る簡単かつ安価な新規構造を備えた包装用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、第1の発明は、少なくとも一つの開放された引き出し口を備えた外箱と、
前記外箱内に収容され、前記引き出し口からスライドして出し入れ可能な内箱と、を有し、
前記内箱は、合成樹脂製のインナー部材を含み、
前記インナー部材は、上面を開放し、内包物を収容可能なトレー部と、前記トレー部上をスライド移動可能で、前記内箱を前記外箱内に収容したときに、前記トレー部の開放上面を覆う中蓋部とを少なくとも備え、
前記中蓋部と前記外箱との間で生じる摩擦力をaとし、
前記中蓋部と前記トレー部との間で生じる摩擦力をbとしたときに、
a>bの関係を有することを特徴とする包装用容器としたことである。
【0009】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記トレー部は、前記引き出し方向と直交する方向に位置する側面の上端面に、前記内箱のスライド方向に連続した所定長さのスライド溝部が形成されており、
前記中蓋部は、前記トレー部の側面の上端面に位置する側縁に、前記スライド溝部に摺接可能な案内突出部を備えて形成されていることを特徴とする包装用容器としたことである。
【0010】
第3の本発明は、第2の本発明において、前記案内突出部には、係止部が設けられており、
前記スライド溝部には、前記係止部が係止可能な被係止部が設けられていることを特徴とする包装用容器としたことである。
【0011】
第4の本発明は、第3の本発明において、
前記係止部は、前記案内突出部における前記スライド溝部対向面に凹状に設けられており、
前記被係止部は、前記スライド溝部における前記案内突出部対向面に凸状に設けられていることを特徴とする包装用容器としたことである。
【0012】
第5の本発明は、第4の本発明において、前記案内突出部は、スライド方向に所定長さを持って長尺突条に形成され、
前記係止部は、前記長尺突条の案内突出部において、スライド方向の両端にそれぞれ一つずつ設けられており、
前記被係止部は、前記スライド溝部において、スライド方向の両端にそれぞれ一つずつ設けられていることを特徴とする包装用容器としたことである。
【0013】
第6の本発明は、第1の本発明乃至第5の本発明のいずれかにおいて、前記中蓋部には、前記外箱の上部内面と対向する上面側に、前記外箱の上部内面と接触可能な凸部が備えられていることを特徴とする包装用容器としたことである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、箱から内箱を引き出すと、内箱内が開放されて内包物が容易に取り出し得る簡単かつ安価な新規構造を備えた包装用容器を提供し得た。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の包装用容器を構成するインナー部材の平面図で、中蓋部が閉じている状態を示す。
【
図2】本実施形態の包装用容器を構成するインナー部材の平面図で、中蓋部が開いている状態を示す。
【
図6】(a)は
図3の部分拡大図、(b)は(a)の状態からトレー部をスライドさせて引き出し、トレー部と中蓋部との間に開放領域が形成されている状態の部分拡大図である。
【
図9】中蓋部の正面図で、案内突出部を拡大して示す。
【
図13】本実施形態の包装用容器の動作状態を示す概略断面図で、(a)は外箱内に内箱が収容されている状態、(b)は内箱をスライドさせて引き出した状態、(c)は(b)の状態からさらに内箱を引き出した状態をそれぞれ示す。
【
図14】
図13の(a)の部分拡大図で、内包されているチョコレート菓子を仮想線で示す。
【
図15】本実施形態の包装用容器の引き出し口側部分を拡大して示す概略斜視図で、外箱から内箱を引き出す状態を仮想線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る包装用容器について、添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、アーモンドチョコなどの粒状のチョコレート菓子を内包物とする食品用の包装用容器を想定している。
なお、本実施形態は、本発明の一実施形態にすぎず、何等これに限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0017】
本実施形態の包装用容器1は、紙製の外箱3と、外箱3内に収容される内箱5と、で構成されている。
なお、図示しないが、チョコレート菓子(内包物)21を内包した後、外箱3全体を外装フィルム(図示省略)にて包装している。
【0018】
外箱3は、両側の端面を開放した平面視で矩形状の角筒形状に形成されている。
本実施形態では、左右の端面を開放し、一方の開放した端面を引き出し口3aとしている。また、引き出し口3a側であることをわかり易くするため、外箱3における側面の引き出し口3a側の端部には、所定の切り欠き領域3bが設けられている(
図15参照。)。
この切り欠き領域3bは、引き出し口3a側であることを示すだけではなく、切り欠き領域3bから内箱5の一部が露出する構造となっているため、内箱5を引き出す際に、切り欠き領域3bから露出している内箱5を持って引き出すことにより、引き出し操作(スライド操作)が容易となる。
少なくとも一つの開放された引き出し口を備えていればよいため、左右いずれか一方の端面は開放されず閉じている形態であってもよい。
外箱3は、本実施形態に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
【0019】
内箱5は、外箱3内に収容されるとともに、引き出し口3aからスライドして出し入れ可能な構成を有しており、例えば、本実施形態では、紙製の内箱本体6と、内箱本体6内に収容される合成樹脂製のインナー部材7とを含んで構成されている。
内箱本体6は、上面を開放した平面視矩形状で、インナー部材7を内装可能な高さ(深さ)を有する凹状の収容空間を有して形成されている。
内箱本体6の長さL1は外箱3の長さL2と略同一に設定されるとともに、幅W1と高さH1は、それぞれ外箱3の内面に摺接するように設定されている。
なお、各図中、S1は内箱5(若しくはトレー部9)の引き出し方向(スライド方向)を示し、X1は内箱5の引き出し方向と直交する方向を示す。
【0020】
インナー部材7は、合成樹脂製のトレー部9と、合成樹脂製の中蓋部13とで構成されている。
【0021】
トレー部9は、上面を開放し、チョコレート菓子(内包物)21を収容可能な凹状の内包部9bを有した平面視矩形状に形成されている。
また、本実施形態では、トレー部9の内包部9bの内底面に、凹凸部9gを形成している。
この凹凸部9gは、内包されるチョコレート菓子21を衝撃から保護するためのクッションとしての役割を有するとともに、チョコレート菓子21の接触面積を減らし、チョコレート菓子21が内底面にくっついてしまうことを防止する役割を有している。本実施形態では、内箱5の引き出し方向S1と直交する方向X1、すなわち、トレー部9の側壁(側面)9c,9c間にわたって架け渡されるようにして形成される凹条部9hと凸条部9iとが交互に並設されている。凹凸部9gは、本実施形態のように、凹条部9hと凸条部9iが交互に並設されている形態ではなく、例えば、半球状に窪む凹部と、半球状に突出する凸部とが多数形成されてなる形態などであってもよく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
トレー部9の長さL3は、内箱本体6の長さL1よりも短く設定され、幅W3は内箱本体6の幅W1よりも狭く設定され、高さH3は内箱本体6の高さH1と略同一若しくは僅かに低く設定され、内箱本体6内に内装される。
【0022】
トレー部9の側壁(側面)9cの上端面9d、すなわち、内箱5の引き出し方向(スライド方向)S1と直交する方向X1に位置する側壁(側面)9cの上端面9dには、内箱5の引き出し方向S1に所定範囲で連続した所定長さ・所定深さのスライド溝部11が凹状に形成されている。
【0023】
スライド溝部11は、上端面9dより一段低く形成されている高所スライド面11aと、高所スライド面11aより内側で、高所スライド面11aから連続して一段低く形成されている低所スライド面11bと、で構成された段差状に形成されている。
この高所スライド面11aは、後述する中蓋部13に設けられる案内突出部15の外側案内突出部15aが対向して摺接する第一の対向面として機能し、低所スライド面11bは、前記案内突出部15の内側案内突出部15bが対向して摺接する第二の対向面として機能する。
【0024】
低所スライド面(第二の対向面)11bには、凸状の被係止部11e,11fが設けられている。
被係止部11e,11fは、低所スライド面11bからなだらかな曲面をもって湾曲凸状に設けられている。
本実施形態では、低所スライド面(第二の対向面)11bにおいて、スライド方向S1の両側の端部11c(引き出し口側),11d(反引き出し口側)にて、両側の端部11c,11dからそれぞれ僅かに所定距離をあけ、かつ両被係止部11e,11fが所定距離離れた位置に、それぞれ一つずつ設けられている。
引き出し口側の被係止部11eを第一の被係止部といい、反引き出し口側の被係止部11fを第二の被係止部という。
【0025】
本実施形態にて、スライド溝部11は、側壁(側面)の上端面全体長さの約1/2程度の長さで、反引き出し口側に寄った状態で形成されており、スライド溝部11を除いた側壁(側面)9cの上端面9dは、引き出し口側の領域9eの方が、反引き出し口側の領域9fよりも広く(長く)形成されている。
【0026】
中蓋部13は、内箱5を外箱3内に収容したときに、トレー部9の開放上面全域を覆う程度の大きさの平面視矩形状の薄肉シート状に形成されている。
また、本実施形態では、引き出し口側の端部13aに反引き出し口側に窪んだ指掛け用切り欠き部23が形成されている。さらに、指掛け用切り欠き部23に近接させて、中蓋部13が相対的に移動する方向を示す矢印25を設けている。
【0027】
中蓋部13は、トレー部9の側壁(側面)9cの上端面9dにて、トレー部9上を引き出し方向S1にスライド移動可能に構成されている。
例えばその一例を説明すると、トレー部9の側壁(側面)9cの上端面9dと摺接する中蓋部13の縁部内面(側縁の内面)には、トレー部9のスライド溝部11に摺接し、トレー部9の引き出し方向S1の移動を案内する案内突出部15を備えて形成されている。
【0028】
本実施形態の案内突出部15は、引き出し方向S1に所定長さを持って長尺突条に形成されている。具体的には、中蓋部13の内面から一段下がって形成され、トレー部9の高所スライド面11aに対向して摺接可能な外側案内突出部15aと、外側案内突出部15aから連続して一段下がって形成され、トレー部9の低所スライド面11bと対向して摺接可能な内側案内突出部15bとで構成されている。
また、本実施形態の案内突出部15は、スライド溝部11全体長さの約1/2程度の長さで、かつ中蓋部13の長さ方向(引き出し方向S1)で、多少、反引き出し口側に寄った状態で形成されている。
すなわち、案内突出部15が、スライド溝部11の端部(引き出し口側)11cに突き当たったとき、中蓋部13の端部(引き出し口側)13aが、トレー部9の端部(引き出し口側)9aと重なる位置(
図1、
図3に示す中蓋部閉鎖位置A1)となるように案内突出部15の位置が設定される。
【0029】
内側案内突出部15bの外側面15cは、高所スライド面11aから低所スライド面11bに向かって連続して垂設されるそれぞれの垂設壁11gと摺接している。従って、内箱5をスライドさせて引き出す際に、中蓋部13が外方へとずれることなく案内可能である。
【0030】
トレー部9の低所スライド面11bと対向する内側案内突出部15bの摺接面には、引き出し方向S1の両端にそれぞれ一つずつ、低所スライド面11bに設けられている被係止部(第一の被係止部)11eと被係止部(第二の被係止部)11fに係止可能な係止部15f,15gが凹状に設けられている。
第一の被係止部11eに係止可能な引き出し口側の係止部15fを第一の係止部といい、第二の被係止部11fに係止可能な反引き出し口側の係止部15gを第二の係止部という。
【0031】
第一の係止部15fと第二の係止部15gは、なだらかな曲面をもって湾曲凸状に設けられている第一の被係止部11eと第二の被係止部11fに嵌って係止可能なように、それぞれがなだらかな曲面をもって湾曲凹状に設けられている。
【0032】
また、本実施形態の中蓋部13には、外箱3の内面(上部内面3c)と対向する上面側に、外箱3の内面(上部内面3c)と軽接触可能な凸部17が備えられている。
【0033】
凸部17は、中蓋部13の上面側で、側縁間にわたって連続した所定長さの突条で、引き出し方向(スライド方向)S1に一定間隔をあけて複数本突設されている。
【0034】
また、凸部17は、トレー部9の側壁9cの上端面9dに掛からない程度の長さに設定されている。
さらにこの凸部17は、中蓋部13をトレー部9の上方に配設したときに、内箱5(内箱本体6)の高さH1よりも僅かに突出するように高く形成され、内箱5を外箱3内に組み入れたときに、凸部17が外箱3の上部内面3cに軽く接触するように設定されている。
【0035】
すなわち、凸部17が外箱3の上部内面3cと軽接触するように設定することにより、中蓋部13と外箱3の上部内面3cとの間には摩擦が生じるため、内箱5をスライドさせて外箱3から引き出そうとすると、中蓋部13を残した状態で内箱本体6とトレー部9だけが引き出されていくこととなる。
このような作用を発揮するために、本実施形態では、インナー部材7を構成するトレー部9と中蓋部13とが、摩擦力の低い合成樹脂材料を用いて成形されるものとした。すなわち、トレー部9のスライド溝部11と中蓋部13の案内突出部15との間で生じる摩擦力をbとし、中蓋部13の上面の凸部17と外箱3の上部内面3cとの間で生じる摩擦力をaとしたとき、a>bの関係を有するように構成する。このように、トレー部9のスライド溝部11と中蓋部13の案内突出部15との間で生じる摩擦力bが、中蓋部13の上面の凸部17と外箱3の上部内面3cとの間で生じる摩擦力aよりも小さいものとすることにより、内箱5をスライドさせて引き出す際に中蓋部13が取り残されるといった作用が発揮される。
【0036】
凸部17は、本実施形態のように複数本の突条からなるものと異なり、多数の半球状の凸部からなるものなど、所定形状に突出し、外箱3の上部内面3cとの間で軽い摩擦を生じさせ得る形態であれば本発明の範囲内であって任意に設計変更可能である。
【0037】
本実施形態の包装用容器1によれば、次のような作用効果が発揮される。
【0038】
内箱本体6内にトレー部9を収容し、チョコレート菓子21を所定容量充填した後、案内突出部15をトレー部9のスライド溝部11に摺接させてトレー部9上を覆うように中蓋部13を配設すると、内箱本体6の高さ方向にて、内箱本体6の側壁6aの上端から、中蓋部13の上面の凸部が僅かに突出する(
図3、
図9(a)、
図13(a)、
図14。)。
また、このとき、中蓋部13の案内突出部15に形成されている第一の係止部15fは、トレー部9のスライド溝部(低所スライド面)11に形成されている第一の被係止部11eに嵌って係止状態である(
図3、
図9(a)、
図13(a)。)。
そして、この状態で外箱3内に収容すると、外箱3の上部内面に、中蓋部13の上面の凸部が軽く摺接している状態となる(
図13(a)、
図14。)。
【0039】
従って、チョコレート菓子21を食べようとして内箱5を引き出すと、トレー部9のスライド溝部11と中蓋部13の案内突出部15との間で生じる摩擦力が、中蓋部13の上面の凸部と外箱3の上部内面との間で生じる摩擦力よりも小さいため、内箱5をスライドさせて引き出す際に中蓋部13が取り残される(
図13(b)。)。
これにより、中蓋部13の案内突出部15に形成されている第一の係止部15fと、トレー部9のスライド溝部(低所スライド面)11に形成されている第一の被係止部11eとの係止状態が解除され、スライド溝部11が案内突出部15に摺接しながら内箱本体6とトレー部9だけがスライド移動して引き出され、中蓋部13は外箱3内に取り残される。
そして、案内突出部15に形成されている第二の係止部15gが、トレー部9に形成されている第二の被係止部11fに係止するまで内箱5(トレー部9)を引き出す(中蓋部開口位置A2を示す
図13(b)。)。
中蓋部13が内箱本体6(トレー部9)と共に引き出されていかないため、内箱本体6の端部(トレー部9の端部)と中蓋部13の端部との間には、所定の開口領域が自動的に形成される。これにより、中蓋部13に触れることなく、自由に内包されているチョコレート菓子を取り出して食することができる(
図13(b)。)。
【0040】
なお、
図13(c)は、
図13(b)の状態から、さらに内箱5をスライドさせて引き出した状態を示す。このとき、案内突出部15に形成されている第二の係止部15gが、トレー部9に形成されている第二の被係止部11fに係止され、案内突出部15の端部(反引き出し口側)が、スライド溝部11の端部(反引き出し口側)に突き当たっているため、中蓋部13は外箱3内から内箱本体6(トレー部9)と共に引き出されてくる。このような状態まで引き出すことにより、中蓋部13の一部(引き出し口側の端部)が現れているため、中蓋部13の一部(引き出し口側の端部)を摘んで捲り上げることもでき、このようにすれば
図13(b)の状態よりもさらに開口領域を大きくすることができる。
【0041】
内箱5をスライドさせて引き出したときの、中蓋部13の開口領域は、任意に設計変更可能である。
例えば、案内突出部15の大きさ(長さ)を、スライド溝部11の大きさ(長さ)に対して小さく(短く)すればするほど、内箱本体6(トレー部9)の引き出し方向の移動距離が長くなるため、中蓋部13の端部(引き出し口側)がトレー部9の端部(引き出し口側)から離れる距離が長くなる。すなわち、開口領域が広くなる。また、スライド溝部11を長く形成することであっても同様の作用効果が発揮し得る。
また、係止部は、内側案内突出部の摺接面に一つだけ形成されるものであってもよい。
【0042】
さらに、図示はしないが、係止部は、内側案内突出部の摺接面に三つ以上形成し、そして、スライド溝部11の第一の被係止部11eと第二の被係止部11fの中間位置あたりに、第三の被係止部を凸状に設け、第一の被係止部11eに第一の係止部15fが係止する中蓋部閉鎖位置A1と、第二の被係止部11fに第二の係止部15gが係止する中蓋部開口位置A2との間で、前記開口位置よりも小さく開口する第二の開口位置を形成するように構成するものであってもよく任意である。
「他の実施形態」
【0043】
上述した本実施形態の構成と異なり、図示は省略するが、インナー部材7を構成するトレー部9と中蓋部13とを次のように構成することも可能である。
【0044】
例えば、トレー部のスライド溝部は、側壁の上端面より一段低く形成されている高所スライド面と、高所スライド面より外側で、かつ高所スライド面から連続して一段低く形成されている低所スライド面と、で構成された段差状に形成されていてもよい。すなわち、高所スライド面と低所スライド面との位置が、上述した本実施形態と外内で反対位置に形成するものとする。
そして、中蓋部の案内突出部は、中蓋部の内面から一段下がって形成され、トレー部の高所スライド面に対向して摺接可能な内側案内突出部と、内側案内突出部よりも外側で、かつ内側案内突出部から連続して一段下がって形成され、トレー部の低所スライド面と対向して摺接可能な外側案内突出部とで構成されているものとする。すなわち、内側案内突出部と外側案内突出部との位置が、上述した本実施形態と外内で反対位置に形成するものとする。
このように構成することとしても、上述した本実施形態と同様の作用効果が発揮される。
さらに、本実施形態では、トレー部9にスライド溝部11を形成し、中蓋部13に、スライド溝部11に摺接する案内突出部15を形成した実施の一形態を示したが、中蓋部の縁部内面(側縁の内面)に本実施形態と同様のスライド溝部を形成し、トレー部の側壁(側面)の上端面に本実施形態と同様、前記スライド溝部に摺接する案内突出部を形成する形態とすることも可能で、本発明の範囲内である。
また、本実施形態では、紙製の内箱本体6と、内箱本体6内に収容される合成樹脂製のインナー部材7と、で内箱5を構成しているが、紙製の内箱本体6を省略して合成樹脂製のインナー部材7のみで内箱5を構成することも可能で本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、チョコレート菓子以外の食品用の包装用容器にも利用可能であり、さらには食品以外の包装用容器にも利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 包装用容器
3 外箱
3a 引き出し口
5 内箱
7 インナー部材
9 トレー部
9c 側面(側壁)
9d 上端面
11 スライド溝部
13 中蓋部
15 案内突出部
S1 引き出し方向
X1 引き出し方向と直交する方向