IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーテーハー チューリヒの特許一覧

特許7002144生体組織及び合成材料の粘弾性特性を測定するための吸引装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】生体組織及び合成材料の粘弾性特性を測定するための吸引装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220113BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61B5/00 101M
A61B5/00 101N
G01N3/00 K
A61B5/00 ZDM
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019523670
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017077236
(87)【国際公開番号】W WO2018082978
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】16197195.7
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508092576
【氏名又は名称】エーテーハー チューリヒ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドアルド マッツア
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ フェイジョ デルガド
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス クラウゼン
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-285838(JP,A)
【文献】特開2014-087695(JP,A)
【文献】特表2008-536552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0130683(US,A1)
【文献】特開2012-050490(JP,A)
【文献】特開平02-134131(JP,A)
【文献】Sabrina Badir, et al.,A novel procedure for the mechanical characterization of the uterine cervix during pregnancy,Journal of the mechanical behavior of biomedical materials,Volume 27,2012年12月11日,Pages 143-153
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-1/32
A61B5/00-5/01
G01N3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織及び合成材料(16;116)の粘弾性変形能を測定するための吸引装置であって、キャビティ(11)、側壁(37)及び底壁(38,39)を有するカップの形態を有するプローブヘッド(1)と、第1のプローブチャネル(22)と、圧力ユニットと、制御ユニットとを備え、前記第1のプローブチャネル(22)は、前記圧力ユニットを前記プローブヘッド(1)に接続するように構成され、前記圧力ユニットは、前記第1のプローブチャネル(22)の内側を真空にし、かつ前記制御ユニットによって制御され、前記第1のプローブチャネル(22)は、前記底壁(38,39)を通って前記キャビティ(11)内に通じ、選択自在に前記キャビティ(11)内へ少なくとも部分的に延びる、遠位端(14,17)を有する前記吸引装置において、
前記吸引装置は、第2のプローブチャネル(23)を備え、前記第2のプローブチャネル(23)は、前記底壁(38,39)を通って前記キャビティ(11)内に至る遠位端(24)を有し、かつ圧力センサに接続され、前記圧力センサは、前記キャビティ(11)の圧力を測定して、その圧力を前記制御ユニットに通信するように設けられ、前記制御ユニットは、2つのプローブチャネル(22及び23)の圧力差に基づいて、変形した組織又は材料(116)が前記第1のプローブチャネル(22)の前記遠位端(14,17)を塞ぐ時点を判定し、
前記2つのプローブチャネル(2;22,23)は、中空スリーブ(30,31,32,33)の中をゆるく通過する柔軟なチューブ(2)であり、プローブヘッド(1)と中空スリーブ(30,31,32,33)との間の本質的に自由な相対運動を可能にすることを特徴とする、吸引装置。
【請求項2】
前記スリーブ(30,31,32,33)の前縁部(110,231)は、前記プローブヘッド(1)の底壁(38,39)を支持するように構成され、ユーザは前記プローブヘッド(1)と前記スリーブ(30,31,32,33)とを単一のユニットとして移動させることができる、請求項記載の装置。
【請求項3】
前記プローブヘッド(1)の前記底壁(38)は、前記プローブヘッド(1)の長手方向軸線(55)を前記スリーブ(30,31,32,33)の長手方向軸線(50)と平行ではない方向に向けるために丸みを帯びた近位外面(18)を有する、請求項記載の装置。
【請求項4】
前記柔軟なチューブ(2)は、前記プローブヘッド(1)の長手方向軸線(55)を前記スリーブ(30,31,32,33)の長手方向軸線(50)の方に向けるためのボーデンケーブルとして使用することができる、請求項記載の装置。
【請求項5】
前記プローブヘッド(1)は、前面(15)まで0.78マイクロリットル~4ミリリットルで測定される容積を有するキャビティ(11)を有する、請求項1~のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記プローブヘッド(1)は、前面(15)まで6マイクロリットル~3.5ミリリットルで測定される容積を有するキャビティ(11)を有する、請求項記載の装置。
【請求項7】
前記プローブヘッド(1)は、前面(15)まで0.1~1ミリリットルで測定される容積を有するキャビティ(11)を有する、請求項記載の装置。
【請求項8】
直径又は長さ又は幅それぞれの寸法と、高さの寸法とが、前記プローブヘッド(1)のアスペクト比が1/4~2になるように予め決められている、請求項記載の装置。
【請求項9】
直径又は長さ又は幅それぞれの寸法と、高さの寸法とが、前記プローブヘッド(1)のアスペクト比が1/2~1になるように予め決められている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記プローブヘッド(1)の前記壁(37,38,39)の厚さが、0.3~2ミリメートルであり、前記プローブヘッド(1)はプラスチック材料で作られ、かつ前記プローブヘッドの重量は2グラム未満である、請求項5~9のいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
記プローブヘッドの重量は1グラム未満である、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記プローブヘッド(1)は、本質的に、閉じられた内部キャビティ(49)を有する中空シリンダの形態をなし、かつその遠位端(15)の領域には少なくとも1つの凹部(29)を備え、前記少なくとも1つの凹部(29)は、第3のプローブチャネル(28)を介して、前記圧力ユニットに接続している、請求項1~11のいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記プローブヘッド(1)は、その遠位端(15)の領域に4~16個の凹部(29)を備えている、請求項12記載の装置。
【請求項14】
記少なくとも1つの凹部(29)は、前記プローブヘッド(1)の内側の傾斜壁部分(37)に設けられている、請求項12又は13記載の装置。
【請求項15】
前記圧力ユニットは、少なくとも100ミリバール(75mmHg)の負圧を提供するように構成される、請求項1~14のいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
前記圧力ユニットは、250ミリバール(187mmHg)~750ミリバール(562mmHg)の範囲内で動作するようになっている、請求項1~14のいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
前記圧力ユニットは、少なくとも500ミリバール(375mmHg)の負圧レベルに達するように構成されている、請求項1~14のいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
皮膚及びプロセス制御のための合成材料(16)の粘弾性変形能を、請求項1~13のいずれか1項に記載のプローブヘッド(1)を用いて、低圧を組織又は合成材料に付与することによって測定する方法であって、
前記スリーブ(30,31,32,33)と、チューブ(2;22,23;28)を介してゆるく接続され、又は前記スリーブ(30,31,32,33)の前記前縁部(110,231)に位置決めされた前記プローブヘッド(1)とを移動させる工程と、
- 前記プローブヘッド(1)と前記組織又は合成材料(16)との接触が行われる前の少なくともある時点で低圧を付与する工程と、
- 前記プローブヘッド(1)の遠位端(15)が前記組織又は合成材料(106)に接触し、キャビティ(11)において保持低圧(phold)が達成されるまで前記スリーブ(30,31,32,33)を長手方向(50)に沿って変位させる工程と、
- 前記保持低圧(phold)の付与を継続しながら、又は低圧を単調に増加させながら、前記スリーブ(30,31,32,33)を長手方向(50)に沿って引き込む工程と、
- センサユニットが2つのチューブ(22,23)間の圧力差を検出するまで低圧を単調に増加させ、遠位端(14,24)の閉鎖を信号で伝える工程と、
- 前記プローブチャネル(22又は23)の一方の遠位端(14,24)が閉じられたら低圧を中断し、前記組織又は合成材料(116)の変形能を、初期位置と最終位置との間の圧力差として測定する工程と
を有する、方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法であって、
前記スリーブ(30,31,32,33)と前記プローブヘッド(1)とを移動させる工程の前に、前記プローブヘッド(1)をスリーブ(30,31,32,33)の前縁部(110,231)の初期位置に配置する、方法。
【請求項20】
請求項18又は19記載の方法であって、請求項18において記載される初期サイクルの後、更なるいくつかのサイクルを含み、前記サイクルは、
- 低圧を、保持低圧(phold)の値又は前記保持低圧(phold)よりもわずかに大きい値にまで減少させ、
中間時間が0値を含む、所定の中間時間の間、前記低圧を付与し、
- センサユニットが2つのチューブ(22,23)間の圧力差を検出するまで低圧を単調に増加させ、遠位端(14,24)の新たな閉鎖を信号で知らせ、
- 前記プローブチャネル(22又は23)の一方の遠位端(14,24)が閉じられたら低圧を中断し、前記組織又は合成材料(116)の変形能を、初期位置と最終位置との間の圧力差として測定すること
を有する、方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法であって、
続のサイクルは、低圧の異なる増加速度を有し、すなわち、より遅くなったり若しくはより速くなったり、又は所定のパターンであったりする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質の組織及び非常に軟質の組織、生体組織及び合成材料の弾性及び/又は粘弾性特性を測定するための吸引装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織の機械的特性を測定する一般的な方法は、通常は、内部に負圧を発生させたキャビティを有するプローブを用いた試験組織の吸引に依存している。これにより組織表面が変位し、ある体積の組織がこのキャビティ内に変形して入り込む。機械的特性は、設定圧力値に対する変位量を分析することによって、又は設定変位状態を得るのに必要な圧力を分析することによって測定することができる。
【0003】
Schiavone P, F. Chassat, T. Boudou, E. Promayon, F. Valdivia, Y. Payanは、Analysis 13(2009)673-678の「In vivo measurement of human brain elasticity using a light aspiration device Medical Image(光吸引装置Medical Imageを用いたヒトの脳弾性のin vivo測定)」において軟部組織のin vivo測定用の軽量吸引装置について述べている。最新情報が、Schiavone P, Promayon E, Payan Y.により、Lecture Notes in Computer Science 5958 (2010) p. 1-10に、「LASTIC:a light aspiration device for in vivo soft tissue characterization」の題目で掲載された。in vivo測定用及び滅菌に耐えるように設計されているが、この装置は露出した組織に使用するのに限って実用的であり、非常に軟質の組織には重すぎ、体内組織測定には依然として嵩張る。そのうえ、それはプローブヘッド内に組み込まれたカメラにより変位量を測定し、このことは装置の複雑さ及びコストを上昇させ、使い捨て器具の開発についてそれを非実用的なものにする。
【0004】
Badir, S., Bajka, M., Mazza, E.は、J Mech Behav Biomed Mater, 27 (2013) 143-153に一定の組織変位距離を使用し、そのような変位を達成するために必要な負圧を測定する子宮頸管吸引装置に関する「A novel procedure for the mechanical characterization of the uterine cervix during pregnancy.(妊娠中の子宮頸部の機械的な特性評価のための新規手順)」を掲載している。この負圧は、変位した組織が内管を封止したときに生じ、相対測定によって検出され、内管の内側及び外側の圧力が遠隔操作ユニットの2つのセンサによって測定される。体内で容易に使用することができる小断面積の吸引プローブにおいて高い圧力感度の検出を達成するが、それには、装置の位置修正を可能にし、プローブとセンサとの接触がいつ生じるかについてのフィードバックをユーザに与える内視鏡が必要である。
【0005】
特許文献1は、組織を変形させるために負圧が付与される吸引カップを有する、ヒトの皮膚の弾性を測定するための装置に関する。後に、圧力はゼロに戻され、皮膚によって示された残留変形に相当する、置換された空気の体積がシリンジ内で測定される。仕組みは簡単であるが、このシステムは測定された体積の精度に関して厳しい制限を有し、システム全体の完全な気密性を必要とする。このシステムの吸引手段は、目盛りを備えたプランジャ型吸引手段としての市販のシリンジを意味する。当業者は、そのようなシリンジを1~100ミリリットルの容積のものとみなす。それゆえ、このような機器を用いた測定の精度は、シリンジのサイズ及びシステムの気密性にもよるが、せいぜい0.1~10ミリリットルの皮膚変形である。ユーザは、シリンジの動作が起こる前に封止接触が達成されるようにしなければならない。特許文献1によるシステムは、吸引段階で10mmHgの負圧に到達し、次いで圧力計がゼロ値を示すまで負圧を減少させて、シリンジの目盛りを読取ることにより皮膚の変形を評価する、と述べている。
【0006】
特許文献2は、軟部組織の粘弾性特性を評価するための吸引方法及び装置を開示し、装置は一定の組織変位距離を使用し、そのような変位を達成するのに必要な負圧を測定する。吸引はキャビティの1つの開口を通して行われ、変位を達成するのに必要な負圧値は、吸引量の著しい変化による吸引速度の変化によって検出される:変位した組織が内部吸引管を封止するとき、チャンバの主容積がポンプから隔離されているので、容積の著しい変化が発生する。この結果、排気量は大幅に減少し、ポンピングが続くにつれて負圧の増加速度が不連続になる。わずかな誤差が得られるように、この方法は、キャビティと内部管との著しい容積比を作るために、十分に大きなキャビティが存在する必要がある(この比は2~10の範囲で示される)。プローブの先端部は小型化することができるが、これでも依然として全体的に嵩張ったプローブヘッドになる。
【0007】
特許文献3は、表層、特に皮膚の弾性を測定するための方法及び装置に関し、装置は一定の組織変位距離を使用し、そのような変位を達成するのに必要な負圧を測定する。キャビティ内の圧力変化は、1つのアパーチャを通して監視され、この変化は、キャビティの空気が排出されている、そのアパーチャ開口からある距離にある別のアパーチャを組織が閉じる瞬間に停止する。しかしながら、提示された解決策では、圧力測定安定性の理由から、大きな内部空気チャンバを必要とし、これがプローブを大きくして嵩張らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第0255809号明細書
【文献】米国特許第7,955,278号明細書
【文献】米国特許第4,976,272号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Schiavone P, F. Chassat, T. Boudou, E. Promayon, F. Valdivia, Y. Payan “In vivo measurement of human brain elasticity using a light aspiration device Medical Image” in Analysis 13 (2009) 673-678
【文献】Schiavone P, Promayon E, Payan Y. “LASTIC: a light aspiration device for in vivo soft tissue characterization” in Lecture Notes in Computer Science 5958 (2010) p. 1-10
【文献】Badir, S., Bajka, M., Mazza, E. “A novel procedure for the mechanical characterization of the uterine cervix during pregnancy.” in J Mech Behav Biomed Mater, 27 (2013) 143-153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この先行技術に基づいて、本発明の目的は、軟質及び非常に軟質の生体組織ならびに合成材料の粘弾性特性を定量的に評価するための新規な装置及び方法を提供することによって従来技術の制限を克服することである。
【0011】
信頼できる測定のために重要な要件は、分析中の組織の動揺していない初期状態の確立である。これは、分析吸引キャビティの内部に発生させた負圧以外の外力によって組織が圧縮又は変形されるべきではないことを意味する。特に、軟質の生体組織を測定するときに組織の静止状態を不必要に乱すことがある2つの要因は、1)器具を組織上に位置決めして保持している間にユーザが発生させる接触力の影響と、2)組織と測定プローブとの相対位置を変化させる試験対象の不随意運動とである。
【0012】
これらの要因は、特に、ゆっくりとした負圧の付与、又はいくつもの負荷サイクルを伴う試験のような、より長期間の測定の信頼性に影響を与える。これは、組織の時間依存的挙動、即ち、それらの粘弾性特性を特性評価する可能性を強く制限する。
【0013】
非常に軟質の組織は非常に変形しやすく、したがって、ユーザが発生させる全体的な接触力は、測定全体に亘って最小限(本質的にゼロ)であるべきである。そのうえ、そのような測定が非露出面で行われる場合、上述の最小限の接触力要件を維持しながら、吸引プローブをこの内面に配置する方法があるべきである。さらに、ある組織又は体の位置が、装置が無菌であることを必要とする場合があり、このため、様々な滅菌方法に適合する測定システムが必要不可欠である。最後に、医学的状況においてそのような装置をうまく使用することができるように、上記の機能を提供する装置は、高コスト、低精度、又は高度熟練オペレータの必要性を防ぐために過度のメカニズム及び有用性複雑性を持つべきではない。
【0014】
本発明は、簡単な機構を有し、低コスト、安全であり、かつ操作が容易でありながら、材料の粘弾性特性の精密、正確かつ再現可能な特性評価を提供することのできる、軟質及び非常に軟質の生体組織又は合成材料の機械的特性を測定するための測定システムと一緒の装置のための技術的解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
軟部組織の弾性変形能を測定するための装置は、キャビティ、側壁及び底壁を有するカップの形態を有するプローブヘッドと、第1のプローブチャネルと、圧力ユニットと、制御ユニットとを備え、第1のプローブチャネルは、圧力ユニットをプローブヘッドに接続するように構成され、圧力ユニットは、第1のプローブチャネルの内側を真空にし、かつ制御ユニットによって制御され、第1のプローブチャネルは、底壁を通ってキャビティ内に通じ、選択自在にキャビティ内へ少なくとも部分的に延びる遠位端を有し、この装置は、第2のプローブチャネルを備え、この第2のプローブチャネルは、底壁を通ってキャビティ内に至る遠位端を有し、かつ圧力センサに接続され、この圧力センサは、キャビティの圧力を測定して、その圧力を制御ユニットに通信するように設けられ、前記制御ユニットは、2つのプローブチャネルの圧力差に基づいて、変形した組織が第1のプローブチャネルの遠位端を塞ぐ時点を判定し、2つのプローブチャネルは中空スリーブの中をゆるく通過する柔軟なチューブであり、プローブヘッドと中空スリーブとの間の本質的に自由な相対運動を可能にする。
【0016】
本発明の一実施形態では、スリーブの前縁部は、プローブヘッドの底壁を支持するように形成され、ユーザがプローブヘッドとスリーブとを単一のユニットとして移動させることを可能にする。その点で、プローブヘッドの底壁が、プローブヘッドの長手方向軸線をスリーブの長手方向軸線と平行ではない方向、すなわち斜めに向けるために丸みを帯びた近位外面を有するとき、面白いかもしれない。
【0017】
ゆるく挿入されたチューブは、スリーブの長手方向軸線の方に向けてプローブヘッドの長手方向軸線の向きを与えるボーデンケーブルとして使用することができる。
【0018】
減衰要素をスリーブの前端に固定的に取り付けることができる。そのような減衰要素は、中空エラストマー又は蛇腹でもよい。
【0019】
スリーブを包囲し、又はスリーブ内へ挿入されたブッシュを設けることができ、ここで、外側のブッシュ又はスリーブの内径と、内側のスリーブ又はブッシュの外径とは、わずかな摩擦接触の下で一方を他方の中に収容するように選択される。
【0020】
減衰要素は、ブッシュとスプリングとの組合せを備えることができ、スプリングは、スリーブ又はブッシュの一方の端壁に固定的に取り付けられ、又は当接しており、かつ他方のブッシュ又はスリーブの相補接続された肩部に固定的に取り付けられ、又は当接している。
【0021】
プローブヘッドは、前面まで0.78マイクロリットル~4ミリリットル、好ましくは6マイクロリットル~3.5ミリリットル、好ましくは0.1~1ミリリットルの正確に測定した容積を有するキャビティを有することができる。直径又は長さ又は幅それぞれの寸法と、高さの寸法とは、プローブヘッドのアスペクト比が1/4~2、より好ましくは1/2~1になるように予め決められている。
【0022】
プローブヘッドの壁の厚さは0.3~2ミリメートルであり、そのためプローブヘッドはプラスチック材料で作られ、プローブヘッドの重量は2グラム未満、より好ましくは1グラム未満である。
【0023】
プローブヘッドは本質的に中空シリンダの形であり、真空クランプ用の追加の閉じた内部キャビティを有することができ、その遠位端の領域に少なくとも1つの凹部、好ましくは4~16個の凹部を備え、少なくとも1つの凹部は、第3のプローブチャネルを介して圧力ユニットに接続され、選択自在に、少なくとも1つの凹部はプローブヘッドの内側の傾斜壁部分に設けられる。
【0024】
プローブヘッドを用いて低圧を軟部組織に適用することによって軟部組織の弾性変形能を測定する方法が提供され、
- 選択自在に、プローブヘッドをスリーブの前縁部の初期位置に配置する工程と、
- スリーブと、チューブを介してゆるく接続され、又はスリーブの前縁部に位置決めされたプローブヘッドとを移動させる工程と、
- プローブヘッドと組織との接触が行われる前の少なくともある時点で低圧を付与する工程と、
- プローブヘッドの遠位端が軟部組織に接触し、キャビティにおいて保持低圧が達成されるまでスリーブを長手方向に沿って変位させる工程と、
- 保持低圧の付与を継続しながら、又は低圧を単調に増加させながら、スリーブを長手方向に沿って引き込む工程と、
- センサユニットが2つのチューブ間の圧力差を検出するまで低圧を単調に増加させ、これにより遠位端の閉鎖を信号で伝える工程と、
- プローブチャネルの一方の遠位端が閉じられたら低圧を中断し、軟部組織の変形能を、初期位置と最終位置との間の圧力差として測定する工程と
を有する。
【0025】
上述の初期サイクルの後、更なるいくつかのサイクルを続けてよく、このサイクルは、
- 低圧を、保持低圧の値又は保持低圧(phold)よりもわずかに大きい値にまで減少させること、
- 選択自在に、所定の中間時間の間、前記低圧を付与すること、
- センサユニットが2つのチューブ間の圧力差を検出するまで低圧を単調に増加させ、これにより遠位端の新たな閉鎖を信号で知らせること、
- プローブチャネルの一方の遠位端(14,24)が閉じられたら低圧を中断し、軟部組織の変形能を、初期位置と最終位置との間の圧力差として測定すること
を含む。
【0026】
後続のサイクルは、低圧の異なる増加速度を有することができ、すなわち、より遅くなったり若しくはより速くなったり、又は所定のパターンであったりする。
【0027】
プローブヘッドは、1~20ミリメートル、好ましくは6~16ミリメートルの直径を有するシリンダ状キャビティとすることができ、キャビティの高さは、1~10ミリメートル、好ましくは2~6ミリメートルとすることができる。好ましくは、直径及び高さの寸法は、アスペクト比が1/4~2、より好ましくは1/2~1になるように選択される。シリンダが、例えば正方形の底面を有する場合、正方形の一辺の長さは、上記の値の約0.78倍である。こうして、キャビティの容積は0.785マイクロリットル~20mlとなる。
【0028】
プローブヘッドは、十分な剛性を提供する0.5~3ミリメートルの壁厚を有するが、同時に軽量である。
【0029】
本発明は、軟質の組織及び非常に軟質の組織の弾性及び/又は粘弾性特性を高精度かつ低変動性で測定するための超軽量吸引装置を提供する。組織は、生体組織又は合成材料であり得る。
【0030】
この新しいシステムの特別な利点は、軟質及び非常に軟質の生体組織(例えば、子宮頸部、皮膚、腹部臓器、心血管組織、脳)、高弾性エラストマー(highly compliant elastomers)又は他の合成材料、ハイドロゲル、組織工学スキャホールド、脱細胞化細胞外マトリックス、セルロース系材料又は軟質インプラントに機械的な特性評価の適用を可能にすることである。このシステムの利点の1つは、それがそのままの状態で、すなわち機械的試験用の材料サンプルの採取を必要とせずに、粘弾性特性の信頼性のある特性評価を提供することができるという事実である。
【0031】
本発明の更なる実施形態は、従属請求項に規定される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して以下に記載するが、それらは本発明の好ましい実施形態を例示する目的のためであり、これらの実施形態を限定する目的のためではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係る装置の斜視図を示す。
図2】アプリケータを有する図1に係る装置の斜視図を示す。
図3】二重スリーブアプリケータ内の、図1に係る装置の斜視図を示す。
図4】別の多重スリーブアプリケータ内の、図1に係る装置の斜視図を示す。
図5】減衰要素を備えた改良アプリケータを有する図2に係る装置の斜視図を示す。
図6】蛇腹緩衝器を備えた改良アプリケータを有する図2に係る装置の斜視図を示す。
図7】コイル型緩衝器を備えた図3と同様の装置の斜視図を示す。
図8】別のコイル型緩衝器を備えた図7と同様の装置の斜視図を示す。
図9A】異なる使用位置における図8に係る装置の斜視図を示す。
図9B】異なる使用位置における図8に係る装置の斜視図を示す。
図9C】異なる使用位置における図8に係る装置の斜視図を示す。
図10】子宮頸部などの体腔内の生体組織の機械的特性を測定する用途の概略図を示す。
図11】特に図10の測定に関連して使用することができる装置を示す図である。
図12A図1に示したプローブヘッドの断面図及び斜視図を示す。
図12B図1に示したプローブヘッドの断面図及び斜視図を示す。
図13A】本発明の一実施形態と関連し、その範囲内で使用可能なプローブヘッドの異なる形態を示す図である。
図13B】本発明の一実施形態と関連し、その範囲内で使用可能なプローブヘッドの異なる形態を示す図である。
図13C】本発明の一実施形態と関連し、その範囲内で使用可能なプローブヘッドの異なる形態を示す図である。
図14A】組織への接着性を高めるための底面又はリム開口を有する吸引プローブヘッドの断面側面図を示す。
図14B】組織への接着性を高めるための底面又はリム開口を有する吸引プローブヘッドの部分断面斜視図を示す。
図15】典型的な圧力対時間のプロットを示す図である。
図16】同様の又は異なる吸引速度の逐次測定に基づいて、組織粘弾性特性を調べるための別の種類の圧力対時間のプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明による軟部組織の弾性変形能を測定するための装置100が、本発明の実施形態による装置100の軽量プローブヘッド1の斜視部分断面図を提供する図1に示される。図1は、実際の吸引が開始される前(図12A)、及び1回の測定サイクルの終了時(図12B)の、図1に示されるプローブヘッド1の断面図及び斜視図をそれぞれ示す図12A及び図12Bに関連して説明される。
【0035】
そのようなプローブヘッド1は、例えば直径D=8mm、高さH=4mmのシリンダ状キャビティ11を収容することができる。直径2mmの外側リム12は、全体直径12mmのシリンダ型プローブになる。次いで、プローブヘッドの中実部分の全容積(プローブヘッドの上壁38、39内のチューブ容積を含む)は、壁厚0.3mmで477mm又は486mmである。例えばプラスチック材料の容積質量密度は、一般的に0.8~2.2g/cmである。したがって、そのようなプローブヘッドは、0.4~1グラムの重さがある。そのようなプローブヘッド1は、ポリエーテルエーテルケトン(Polyether ether ketone, PEEK)又はポリカーボネート(Polycarbonate, PC)のような軽量な滅菌可能な材料で作ることができ、全重量は、2グラム未満、さらには1グラム未満さえ可能である。これは、先行技術と比較してプローブの重量及び大きさの一桁の相当な減少を表している。
【0036】
そのようなプローブヘッド1は、環状の平坦な底端部15によって囲まれた前面開口部13と、キャビティ11の反対側に非常に柔軟な軽量の2つのチューブ2に接続された2つの開口部14及び24とを有し(図1)、チューブ2は他方の端部で、ポンプ及び圧力センサが設置された遠隔操作装置(図示せず)に接続している。
【0037】
チューブ2には、それらの機能に応じて参照番号22及び23が付与されている。ポンプは気道22に接続され、両方の気道22及び23は、圧力センサ(図示せず、図15及び16において測定された圧力値がP1及びP2として示される)で終端する。ポンピング用気道は、キャビティ11の上部内面26の中央に位置する開口又はアパーチャ14で終端する。第2の気道23の他の開口又はアパーチャ24は、移動する組織によって塞がれない限り、キャビティ内のどこにでも配置することができる。それは上部内面26に中央アパーチャ14から半径方向の距離に配置される。
【0038】
ポンプは、少なくとも100ミリバール(75mmHg)の負圧を提供するようになっており、好ましくは250ミリバール(187mmHg)から、例えば750ミリバール(562mmHg)の間の範囲内で動作するように、好ましくは少なくとも500ミリバール(375mmHg)の負圧レベルに達するようになっている。
【0039】
組織16がプローブに気密接触すると、閉じられた空気の容積(キャビティ11の容積にバルブ又はセンサまでのチューブ2の容積を加えたものが規定され、この空気が排出されるにつれて、この容積の内部に発生した負圧は、組織が中央アパーチャに触れるまで、組織をキャビティ内に変形して入り込ませる。この時点で、図12bに示すように、組織16は気道22のアパーチャ14を気密接触することになる。この瞬間に、Badirらによる前述の記載のとおり(先行技術の引用を参照)、圧力センサは異なった圧力を測定し、これにより閉鎖圧力、又は変位Hに必要な圧力を精密に測定することが可能になる。そのような測定方法は、吸引速度の変化に依存しないので、米国特許第7,955,278号明細書に記載されているような、容積の著しい変化の必要性がなくなり、これにより全体として小さなプローブヘッド1が可能になる。
【0040】
さらに、吸引速度の変化による変曲点の検出は、センサによる離散測定及び測定ノイズによる不確実性に因って実際上は困難であるが、2つの異なる圧力を区別することは、弁別閾値を用いてより容易に実施される。さらに、そのような方法は、厳密に線形の吸引曲線の適用に依存しない。
【0041】
小さく非常に軽量のプローブヘッドは、分析中の組織に適用される最小の重量を有すること、組織の最小限の予変形が起こることを保証すること、滑りを回避するのに必要なだけの大きさの小接触面積のフットプリントを有することによって先行技術の制限を克服し、体腔又は他のアパーチャに容易に挿入することを可能にする。さらに、弁別測定法、組織への最小限の影響、及び、所与の変位に必要な応力の正確な測定により、このシステムはより高精度の測定となる。
【0042】
気道2、又は22、23はそれぞれ非常に柔軟であり、プローブヘッド1の制約、制限のない配置ができる。これは、外力が接触部からほとんど伝達しないことを保証し、従って、測定に影響を与える唯一の外力がプローブヘッド1の極端に低い重量である。
【0043】
プローブヘッド1を配置する前に、吸引が開始され、センサで負圧が検出されると、封止接触が検出できる。数秒後、負圧は、外力を必要とせずに、組織表面16に気密に取り付けられたプローブヘッド1を保持するのに十分な程になる。力のあらゆる伝達を更に最小にするために、プローブユーザと組織16との剛性の機械的接触を回避して、柔軟な気道2を機械的に支持することができる。プローブは組織16に自己接着し、ユーザの動きはもはや組織に伝達されない。さらに、組織16とプローブヘッド1とは互いに接合されるので、組織16のいかなる動きもプローブヘッド1によって随伴される(例えば、測定対象の不随意運動)。
【0044】
上で説明したように、そのような設定は、プローブヘッド1と組織16との間の力をプローブヘッド1の重量に限定する。この力の影響は、重力に対するシステムの相対的な向きに依存する。この結果、ねじり力又は曲げ力として、圧縮力、引張力、又は組合せが生じる。最小限の力を達成するために、プローブヘッド1は、前述のように、超軽量(<2g)であり、プローブヘッド1が横方向に接触されたときに負荷を最小限にするために、低いアスペクト比を有する。上記の例におけるアスペクト比は、直径12mmと、高さ8mmである。アスペクト比は2/3である。それは通常、2未満、好ましくは1未満になるように選択される。下限の閾値は、必ずしも結び付けられている必要はないものの、1/4又は1/2である。したがって、好ましいアスペクト比は、1/4~2、より好ましくは1/2~1である。
【0045】
図13A図13b及び図13Cは、本発明の一実施形態に関連し、その範囲内で使用可能なプローブヘッドの異なる形態を示す。上図は断面図を示す一方で、下図は部分断面斜視図を示す。図13A及び図13Cに示されるキャビティ11の平坦な上部内面26は、変位した組織116(図12B参照)をいかなる鋭利な端部にもさらさないが、内部キャビティの幾何学的形状は、異なる使用のニーズ又は吸引の安全性要件に適合させることができる。例えば、プローブヘッド1はまた、不規則なトポグラフィーを有する組織16が気道を密封する前にキャビティの上部内面に接触するのを防ぐために、図13Bに示されるように、キャビティ11の上部内面26に突出した中央ステム17を提供することもできる。プローブヘッド1は、図13Cのドーム型プローブヘッド18で例示されるように、全構成材料、したがって重量及びコストを削減し、アスペクト比を改善するために複数の方法で成形することができる。3つの実施形態のアスペクト比は、6/13、5/9及び4/9である。アスペクト比の高さは、底端部15と、可撓性チューブ22、23が、好ましくは継ぎ目なくプローブヘッド1内に入り込む上面19との間で測定される。
【0046】
ここで、プローブヘッド1は、チューブが中に取り付けられる突出ソケットを有することも可能である(ステム17と同様であるが、ソケットは面19から外側に向かって上向きになっている)。その場合、プローブヘッドの上壁38又は39は前記ソケットで終わる貫通孔を有する。
【0047】
アスペクト比の幅は、リング形リム12の直径として測定される。長方形のプローブヘッドベースについては、幅は、一方の寸法が他方の寸法の2倍よりも長くならない条件で、当該プローブヘッドベースの平均幅として定義され、そしてその条件は、寸法が等しいから、リング形プローブヘッド1については、自動的に達成される。
【0048】
プローブ開口D及び吸引変位Hは、それぞれの特定の用途及び材料に適切にフィットするように選択することができる。mm単位での典型的な範囲は、1<D<20かつ1<H<10であり、D≧Hである。
【0049】
図14Aは側断面図を示し、図14Bは組織16への付着(真空クランプ)を高めるために底面又はリム開口29を有する吸引プローブヘッド1の部分断面斜視図を示す。プローブヘッド1は、そのようなアパーチャ29に吸引を使用することによってプローブヘッド1の付着を高めるために、第3の気道28に接続された、底面15に沿って追加のアパーチャ29を含むことができる。図14Bは、プローブヘッド壁の直径方向反対側の部分に2つのアパーチャ29を示す。もちろん、2つのアパーチャ29の間に90、60、及び45度の等角度間隔で4、6、8つなどのより多くのアパーチャがあってもよく、この場合、チューブ28への接続部はプローブヘッド1の壁に設けられる。
【0050】
子宮頸部などの内面に到達するように体腔又は開口の内側にプローブヘッド1を適用するために、アプリケータ又はスリーブ30を有する最適化されたプローブハンドルが、図2による装置101の斜視図に例示されるものとして使用される。
【0051】
そのようなプローブ装置101は、ユーザがプローブヘッド1を遠隔位置に位置決めすることができるようにする中空の保持要素又はスリーブ30からなる。この保持要素30は中空であり、2つの気道チューブ2のための通路を含む。プローブヘッド1が組織16に気密接続され、ユーザが保持要素30を引き戻すと、チューブ2は支障なくホルダを通過し、プローブヘッド1がホルダ30から自由に外れることを可能にする。この単純な実施形態は、接触力を減衰させる機能性を有さないが、依然として、その後の取り外しを伴う、先端部の遠隔適用を可能にする。
【0052】
図3は、二重スリーブアプリケータ提供装置102の内部の図1に係る装置100の斜視図を示す。プローブヘッド1は、全ての実施形態において、例えば図12図13又は図14に示されるように提供され得る。装置102に係る保持要素は、調整摩擦を有する2つの同軸シリンダ31及び131を備えている。これは、最初に外側シリンダ31を保持することにより内側シリンダ131が先端側まで押し込まれているとき、内側スリーブ131の前面231に対して維持された先端部(プローブヘッド1の背面18又は19)によるいくらかの抑制力はあるものの、2つのシリンダ間の摩擦が要素を1つのユニットとして維持するように定められる。ユーザが接触すると、スリーブ31と131との間の摩擦は十分な接触力を提供するのに十分であるが、力が大きすぎると、それは滑動し、過剰な力を防ぐ。装置102に係る保持要素31、131は複合アプリケータスリーブを形成し、次いでこれは、2つのスリーブ31と131との間で摩擦が起こるということを考慮して、1つのユニットとして引き戻すことができ、そして先端部、すなわちプローブヘッド1が分離する。
【0053】
図4は、外側スリーブ32を有する別の多重スリーブアプリケータの内側の図1に係る更なる装置を示す。この実施形態もまた、図3の実施形態と同様に調整摩擦に基づく。しかしながら、内側シリンダは、ここでは2つのシリンダ36を含み、それらの各々は気道としても働く。それゆえ、外側シリンダスリーブ32は、剛性気道シリンダ36を収容するために2つの平行な貫通孔132を有する。調整摩擦は、チップ又はプローブヘッド1を意図した位置に配置することを可能にするのに、かつ図3と同様に過剰な力を防ぐのに十分な程高い。ここでの特徴は、プローブヘッド1が組織に接続されたとき、摩擦が、内側気道36に沿ったホルダ及び外側スリーブ32の自由な直線運動を可能にするのに十分な程低く、角度自由度が剛性シリンダ36の前面にある柔軟なチューブ2によって得られることである。この前進及び後退動作を可能にするために、剛性チューブ36の長さがスリーブ32の長さよりも長いことは指摘されるべきである。長さの差は、例えば3~7cmである。摩擦調整のために、低摩擦材料と幾何学的制限との組合せを使用することができる。材料混合物は、例えば、PEEK/PEEK又はPEEK/フルオロポリマー(例えば、フッ素化エチレンプロピレン(fluorinated ethylene propylene, FEP)又はポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene, PTFE))である。幾何学的な実現により、外径1.8mm及び直径2.0mmの孔の内側チューブ36に対して、36と132との間の空隙が0.05~0.3mm、好ましくは0.2mmであることがわかる。
【0054】
図5は、減衰要素7を備えた改良アプリケータを有する図2に係る装置の斜視図を示す。プローブヘッド1とスリーブ30との改良された接続を提供するために、アプリケータスリーブ30の「バンパ」として高柔順なエラストマー(high-compliance elastomer)を使用する接触力減衰要素7が、スリーブ30の前面に取り付けられている。したがって、プローブヘッド1が取り付けられた状態でのスリーブ30の移動及び接触の瞬間の変動は、より少ない接触力しか組織に加えない。
【0055】
図6は、蛇腹緩衝器8を備えた改良アプリケータ30を有する図2に係る装置の斜視図を示す。図8による解決策は、接触力減衰の変動を伴った図5に提供された解決策と同様であり、圧縮可能な蛇腹がスリーブ30の前端部に取り付けられている。
【0056】
図7は、コイルスプリング9式のダンパを備えた図3と同様の装置の斜視図を示す。ここで、図3の実施形態と同様に、内側シリンダ20が設けられ、チューブ2を覆ってスリーブ33の前端部側から導入されている。しかしながら、図3とは異なり、この内側シリンダ20は、弾性スプリング9によって支持されている。このスプリング9は一方の側で内側シリンダ20の内端部に当接し、他方の側では、例えば、内側肩部により、スリーブの内径を縮小させて、スプリング9に対する当接面をなす内側当接部が、スリーブ33内に設けられている。
【0057】
図8は、別のコイル9式のダンパを備えた図7と同様の装置の斜視図を示す。それは、内側シリンダ20とは対照的に、外側シリンダ又はシース10としてスプリング付可動部品を備えている。図7と本質的に同一であるが、機能的には、可動シース10によって被覆されたホルダスリーブ30に目盛り尺を印刷することができ、ユーザは有益なフィードバック、例えばユーザがどれくらいの力を加えているかのより良い感覚、を得ることを可能にする。外側シリンダ10は、その前端部付近に、シースの内径を縮小させてスプリング9に対する当接面をなす内側肩部を備えている。
【0058】
図9A図9B及び図9Cは、いろいろな使用位置における図8に係る装置の斜視図を示す。装置103による保持要素は、ユーザが最小限の力の相互作用で、プローブヘッド1と組織106との間に気密接触を作り出すことを可能にする、スプリング9に取り付けられた中空チューブ10のような他の機械的要素を含むことができる。実際、最小量の力が最初に必要とされるはずであり、スプリング付スライドチューブ10は、ユーザによって精密に制御された動きの必要性をなくす十分な変位を可能にしながら、ユーザによって加えられる力を最小限に抑える手段を提供する。別の例として、高柔順なスプリング9の代わりに、エラストマー、弾性膜又は可動部品間の調整摩擦が、最大圧縮力を減衰又は制限するようにプローブヘッド1を送り出す同様の方法を提供することができる。そのようなプローブはまた、合成材料のプロセス制御のための自動化システムに取り付ける場合もあり得る。
【0059】
図9Aは開始位置を示し、プローブヘッド1の上面19は、装置103の前縁部110の表面に対してチューブ22及び23をわずかに引っ張ることにより維持されている。真空ポンプ装置は作動している。次いで、ユーザが被試験表面の方向に装置103を前向きに押し、最初の接触後の瞬間が図9Bに示されている。組織にわずかな圧力が与えられている間、スプリング9は圧縮される。プローブヘッド1の重量が2グラム未満であることに留意されたい。次いで、図9Cは、分離した位置である次のステップを示す。プローブヘッド先端部1は組織と接触したままである(図示せず)。しかし、ユーザは、スリーブ30を引き戻すことによりプローブヘッド1を切り離している。スプリング9が最初に延張し、シース10も同様に引き戻される。プローブヘッド1はチューブ22及び23を介してのみ接続されたままである。
【0060】
子宮頸部のような体腔内の生体組織106の機械的特性を測定するためのプローブの使用例が図10に示される。図10に示すように使用される装置33は、図7の装置33である。プローブハンドルを使用してこのプローブを遠隔組織で使用する方法が図11に例示される。図11に示されるように使用される装置103は、図8の装置103である。ここで、チューブ22及び23は、ユニット150を通過して、スリーブ30の近位端を出るチューブ22及び23のループ151を作る。ユニット150は、空気チューブをプローブに「クリップ留め」して固定するために使用され、それらを固定し、かくして、結果として長いチューブの重量がプローブヘッド1に直接伝達されることを防止する。ケーブルの重量は30によって支持されており、プローブヘッド1は、チューブ30での摩擦を除いて、プローブ引込み中に引張力を受けない。ループ151は、先端ヘッドの取外し及びチューブ延張に必要な余分なチューブのたるみである。こうして、同様の結果を得るのにスリーブ及びプローブホルダ30に付加的に提供される様々な特徴を取り替えることができると認められる。プローブヘッド1を検査領域140の近くに配置した状態で、ポンプが作動して吸引を発生させる。接触を生じさせて視覚的に検出することができるまで、プローブはユーザ40によって組織に向かって前向きに移動される。組織216によるプローブヘッド1の封止は、プローブ内の負圧の増加によって、例えば、負圧閾値が検出されたときに発せられる音声信号で検出することができる。最初の接触が封止をもたらさなければ、ユーザ40は、図9Bに示すようにプローブヘッド1を考慮してスリーブの位置をもたらす接触力を増加させるために、プローブハンドルを更に内方に押すことができる。一旦、音声信号が発せられると、ユーザはこの前向きの押す運動を止める。より大きな負の値で、別の閾値圧力に達した後、ユーザは、プローブハンドルを後方に引っ張るように指示する第2の音声信号を受ける。負圧が、プローブハンドルの引込みによって、真空度が弱すぎてプローブヘッドを組織から脱落させない程度となるように、この閾値は決定される。プローブハンドルが引き込まれた後、内側吸引管22を塞ぐ組織の変位、及び管22と23との間のセンサによる圧力差の引き続く検出について、測定手順が実行される。負の保持圧力閾値が低いと見なされれば、2つの閾値をただ1つに組み合わせることができる。
【0061】
図15は、典型的な圧力162対、時間164のプロット165を示し、2つのセンサP1及びP2によって測定されたキャビティ内の真空圧の増加を示す。組織が密閉した瞬間に、ポンプ及びセンサP1に接続された気道22は、増加し続けるP1と、気道23を通して測定される一定のままであるP2との間の圧力値の差をもたらす。換言すれば、気道22及び23にそれぞれ接続されたセンサP1及びP2が、同じ圧力P1=P2を検知する共通のプロット部分165がある。図12Bに示すように気道22の閉鎖時に、2つのプロットは、気道22についてP1によって測定されるプロット166の増加する負圧と、気道23についてP2によって測定されるプロット167の一定の負圧とに分離する。
【0062】
図16は、測定間の可変緩和期間、又は非線形圧力履歴を用いた、同じ又は異なる吸引速度の逐次測定に基づいて、組織粘弾性特性を調べるための別の種類の圧力対時間のプロファイルを示す図である。
【0063】
この測定は、事前の較正工程によって、既知の粘弾性特性のサンプルとの比較だけでなく、未知の粘弾性特性の材料間の機械的特性の相対的な差を測定するのに使用することができる。典型的な圧力対時間のプロットは、図8図9及び図11に示すような一実施形態に係る装置を使用することによって得られ、所与の吸引速度で設定変位量Dを得るのに必要な負圧の測定を可能にする。外力の影響が最小限に抑えられているおかげで、測定の全期間(必要な期間、すなわち数秒、数分、又はそれ以上の期間まで)にわたって、この装置を使用して、試験材料の機械的挙動の時間依存性及び負荷履歴依存性を確実に特性評価することができる。このために、装置は、異なる空気吸引速度の下で、又は吸引測定間の可変緩和間隔を与えることによって、連続変位測定に適用するために使用することができる。プローブの位置変更による潜在的な不確実性又は変動性を最小限に抑え、またアクセスできない位置での使用を容易にするために、真空圧を完全に取り除かないが、プローブヘッドを組織に付着したままにさせる設定保持圧力までそれを下げて、連続測定を行うことができる。連続測定のいくつかの例が図9に示される。プローブの軽量化のおかげによる最小限の外力での、吸引間のプローブヘッドの位置の維持と、圧力センサの相対測定によって可能になった閉鎖圧力の正確な測定は、クリープ又は組織の弛緩への応答のような、サンプル組織の基礎となる粘弾性特性の信頼できる説明を与えることができる。特定の負荷プロトコル及び対応する出力パラメータをこの目的のために定義することができる。
【0064】
図16のプロット171は、小さな保持低圧値pholdの中間時間181を伴った、閉鎖に必要な低圧pclを超える一連の等しい吸引サイクルに関する。図15と同様に、プロット171は、Pclでのみ分離する2つの曲線のものである(図15ではP1についての部分166及びP2についての部分167として分岐している)。したがって、真空圧がPclに達すると、低圧は、ポンプに接続されて開口14が塞がれた気道22についてのP1の値を示すプロット部分186において増加し、キャビティ11に接続された気道23についての値Pclのプロット部分187において安定したままである。2つのプロット部分186と187とが再び結合するのは、ポンプ作動が停止し、プロット部分186がPcl「未満」に低下する負圧によってこれを反映したとき、開口14でのキャビティ11の閉鎖が解除されて両方の気道22及び23が再び開いたときであり、これは2つのプロット部分が、結合したプロット線171においてP1及びP2の値の圧力に差がないことを示す図面に反映されている。
【0065】
プロット172は、閉鎖に必要な低圧pclを超え、小さな保持低圧値pholdへ後退するが、次の吸引サイクルをやり直す一連の等しい吸引サイクルに関する。圧力損失はプロット171ほど顕著ではなく、例えば、ポンプはより低い吸引レベルで作動している。相違プロット部分は、図16の8つの全ての図面において同一の参照番号186及び187が付与されている。
【0066】
プロット173はプロット171と同様であるが、小さな保持低圧値pholdの中間時間を有する、閉鎖に必要な低圧pclを超える一連の等しい吸引サイクルを開始する前に、pholdでの初期保持時間183の最初の平坦域がある。
【0067】
プロット174はプロット173と同様であるが、吸引サイクルは各サイクルごとにより長くなり、すなわちpclに達するまでの時間がより長くなるようにポンプが減速される。
【0068】
図16のプロット175は、振幅が低下した一連の吸引サイクルに関連し、閉鎖圧力pcl1、pcl2、pcl3が後続のサイクルごとに減少するので、これは、長期保持時間181があるものの、変形した組織116が非弾性性状を有することを意味する。
【0069】
プロット176は、プロット175の結果と同様のシーケンスを示すが、吸引サイクル間に保持時間181はない。
【0070】
プロット177は、プロット175と同様だが、初期接触ステップ181を有し、吸引負圧の初期増加後、最初に到達した接触がシステムによって検出されたとき、保持低圧pholdが維持される。
【0071】
プロット178は、閉鎖圧力pclに達するまで指数関数的に増加する負圧による1つの単一サイクルを示す。
【0072】
プローブヘッド1とプローブハンドル30、31、32、33等との間のインターフェースの有利な実現は、ハンドル上に配向可能なプローブヘッドカップリングを使用することによるものである。そのようなカップリングは、プローブハンドルの角度調整を必要とせずに、プローブヘッドを回転させて組織表面の形状に適合させるために使用することができる。これは、図13Cに記載されたような丸みを帯びたドーム18を用いて特に達成することができる。その場合、エラストマー7及び蛇腹8の前端部を含む、任意のスリーブ20、30、31、32、33の前縁部110と同様に中空のスリーブは、配向したプローブヘッド1を有することを可能にする。プローブヘッド1の方向は、プローブヘッド1の下面底端部15が組織16に接触するときに定めることができるか、又はボーデンケーブルの場合のようにチューブ22及び23を引っ張ることにより予め定めることができる。なぜなら、少なくとも1つはプローブヘッド1のドーム形状18の裏側の中心の外側に設けられているからである。
【符号の説明】
【0073】
1 プローブヘッド/吸引先端部
2 可撓性の気道
3 ホルダスリーブ
4 連結部
5 摩擦スライダースリーブ
6 剛性摩擦気道
7 軟質エラストマー
8 蛇腹
9 スプリング
10 シース
11 キャビティ
12 外側リム
13 前面開口部
14 開口
15 底端部
16 組織
17 中央ステム
18 ドーム型
19 上面
20 内側シリンダ
22 チューブ、第1の気道
23 チューブ、第2の気道
24 開口部
26 上部内面
28 追加の第3の気道
29 追加のアパーチャ
30 スリーブ
31 外側スリーブ
32 外側スリーブ
33 外側スリーブ
36 気道シリンダ
37 側壁
38 (丸みを帯びた)底壁
39 底壁
40 手/ユーザ
49 内部キャビティ
50 スリーブの長手方向軸線
55 プローブヘッドの長手方向軸線
100 デバイス
101 デバイス
102 デバイス
103 デバイス
110 前縁部
113 前縁部
116 変位した組織
121 内側端部
131 内側スリーブ
132 貫通孔
140 検査領域
150 張力緩和
162 圧力
164 時間
165 曲線/プロット
166 P増加
167 P=Pcl
171 プロット
172 プロット
173 プロット
174 プロット
175 プロット
176 プロット
177 プロット
178 プロット
181 保持時間
183 初期保持時間
186 P増加
187 P=Pcl
216 組織
231 前面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16