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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】抗CD10抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220214BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220214BHJP
   C12N 5/20 20060101ALI20220214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220214BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/20
A61K39/395 N
A61P35/00
C12P21/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019524814
(86)(22)【出願日】2017-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2017023104
(87)【国際公開番号】W WO2018235247
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-06-01
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02489
(73)【特許権者】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】水谷 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雅明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 周二
(72)【発明者】
【氏名】樋野 興夫
(72)【発明者】
【氏名】大辻 奈穂美
(72)【発明者】
【氏名】波多野 良
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】BURNOR KJ et al.,Expression of renal cell carcinoma-associated markers erythropoietin, CD10, and renal cell carcinoma,Archives of pathology & laboratory medicine, 2006, Vol. 130, No. 6, pp. 823-827
【文献】MIZUTANI N. et al.,Establishment of anti-mesothelioma monoclonal antibodies.,BMC research notes, 2016, vol. 9, article no. 324
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号NITE BP-02489のハイブリドーマにより産生される抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、抗CD10抗体。
【請求項2】
悪性腫瘍細胞の増殖を抑制する、請求項1に記載の抗CD10抗体。
【請求項3】
受託番号NITE BP-02489のハイブリドーマにより産生される抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、請求項1又は2に記載の抗CD10抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体である、請求項1~3いずれかに記載の抗CD10抗体。
【請求項5】
抗原結合性断片を含む、請求項1~4いずれかに記載の抗CD10抗体。
【請求項6】
請求項1~5いずれかに記載の抗CD10抗体を含む、悪性腫瘍の治療用医薬組成物。
【請求項7】
前記悪性腫瘍が、悪性中皮腫である、請求項6に記載の治療用医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~5いずれかに記載の抗CD10抗体をコードするポリヌクレオチド又はベクター。
【請求項9】
請求項1~5いずれかに記載の抗CD10抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項10】
受託番号NITE BP-02489のハイブリドーマである、請求項9に記載の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CD10抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
CD10は、細胞の表面に発現する膜蛋白質である。臨床的には、例えば、B細胞白血病の腫瘍マーカーとして利用されている。CD10に関する研究報告としては、例えば、非特許文献1には、小児急性リンパ芽球性白血病患者の白血病性芽球においてCD10が発現していたことが記載されている。この文献では、CD10を検出する抗体としてNL-1が使用されている。また、非特許文献2には、パラフィン包埋組織のCD10を認識する新たな抗体としてNCL-CD10-270を作製したことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】"Differential prognosis detected by immunophenotyping in acute lymphoblastic leukemia of childhood with poor prognostic factors." Hirata et al., Jpn J Clin Oncol. 1987 Sep;17(3):229-35.
【文献】"NCL-CD10-270: A New Monoclonal Antibody Recognizing CD10 in Paraffin-Embedded Tissue" Gary et al., Am J Pathol. 1999 Jan; 154(1): 77-82.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CD10の臨床的意義は未解明な部分が多く、抗CD10抗体に関しても上記非特許文献1及び2に記載されているような一部の抗体が報告されているに過ぎなかった。特に、悪性腫瘍治療用の抗CD10抗体に関しては、十分な研究成果が得られていなかった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、悪性腫瘍の治療に優れた効果を示す抗CD10抗体を提供すること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、後述の実施例に記載の通り、抗CD10抗体であるNEP1抗体を担がんマウスに投与する実験を行った。その結果、驚くべきことに、担がんマウスの生存期間が延長していた。そして、この結果に基づき、本願発明を完成させた。
【0007】
即ち本発明の一態様によれば、受託番号NITE BP-02489のハイブリドーマにより産生される抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、抗CD10抗体が提供される。この抗体を用いれば、悪性腫瘍の治療ができる。
【0008】
また本発明の一態様によれば、上記抗CD10抗体を含む、悪性腫瘍の治療用医薬組成物が提供される。この医薬組成物を用いれば、悪性腫瘍の治療ができる。
【0009】
また本発明の一態様によれば、上記抗CD10抗体をコードするポリヌクレオチド又はベクターが提供される。このポリヌクレオチド又はベクターを用いれば、上記抗CD10抗体を生産することができる。
【0010】
また本発明の一態様によれば、上記抗CD10抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、細胞が提供される。この細胞を用いれば、上記抗CD10抗体を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ウェスタンブロットの結果を表した図である。
図2図2は、FACS解析の結果を表した図である。
図3図3は、担がんマウス治療実験の結果を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
【0013】
本発明の一実施形態は、新規の抗CD10抗体である。本発明の一実施形態に係る抗CD10抗体は、例えば、NITE BP-02489のハイブリドーマにより産生される抗体の重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、抗CD10抗体である。この抗CD10抗体は、後述する実施例で実証されているように、担がんマウスの生存期間を延長することができる。この抗CD10抗体は、動物実験において治療効果を示すことから、悪性腫瘍治療における臨床的な貢献が大きい。またこの抗CD10抗体は、予想外に顕著に高い悪性腫瘍の治療効果を有している。
【0014】
CD10は、細胞の表面に発現する膜蛋白質として知られている。CD10には、構造が実質的に同じであれば、CALLA、Neprilysinなどの他の呼び名のものも含まれる。CD10のアミノ酸配列は、例えば、NCBI Accession No. NP_009220.2、又はUniProtKB Accession No. P08473で示される蛋白質のアミノ酸配列であってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において「抗CD10抗体」は、CD10に結合性を有する抗体を含む。この抗CD10抗体の生産方法は特に限定されないが、例えば、受託番号NITE BP-02489のハイブリドーマを用いて生産してもよい。受託番号NITE BP-02489のハイブリドーマから生産される抗CD10抗体の可変領域(CDR含む)をコードする核酸の塩基配列の解析は、例えば、以下の工程を経て行うことができる。(i)ハイブリドーマからtotal RNAを調整する工程、(ii) total RNAを用いて、5'-RACE PCRにより、H鎖、L鎖それぞれの可変領域を含むcDNAを増幅する工程、(iii)増幅産物をプラスミドベクターにクローニングし塩基配列を解析する工程。また、塩基配列は、実験受託会社(例えば、タカラバイオ(株))に委託して解析することもできる。このようにして得られた塩基配列情報に基づき、抗CD10抗体の可変領域のアミノ酸配列情報を得ることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において「抗体」は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる分子又はその集団を含む。抗体は、様々な形態で存在することができ、例えば、全長抗体(Fab領域とFc領域を有する抗体)、Fv抗体、Fab抗体、F(ab')2抗体、Fab'抗体、diabody、一本鎖抗体(例えば、scFv)、dsFv、多価特異的抗体(例えば、二価特異的抗体)、抗原結合性を有するペプチド又はポリペプチド、キメラ抗体、マウス抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、又はそれらの同等物(又は等価物)からなる群から選ばれる1種以上の形態であってもよい。また抗体は、抗体修飾物又は抗体非修飾物を含む。抗体修飾物は、抗体と、例えばポリエチレングリコール等の各種分子が結合していてもよい。抗体修飾物は、抗体に公知の手法を用いて化学的な修飾を施すことによって得ることができる。また抗体は、融合蛋白質であってもよい。融合蛋白質は、抗体のN又はC末端に、ポリペプチド又はオリゴペプチド(例えば、Hisタグ)が結合したものであってもよい。また融合蛋白質は、マウス又はヒト等の抗体部分配列を融合したものであってもよい。また抗体は、薬物が結合した抗体であってもよい。薬物は、例えば、細胞傷害性薬剤又は抗癌剤であってもよい。そのような抗体修飾物、融合蛋白質、抗体薬物複合体も、抗体の一形態に含まれる。抗体のアミノ酸配列、クラス、又はサブクラスは、例えば、ヒト、又はヒトを除く哺乳類(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル等)等由来であってもよい。抗体クラスは特に限定されないが、例えばIgG、IgA、IgM、IgD、又はIgEであってもよい。また、抗体サブクラスは特に限定されないが、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、又はIgA2であってもよい。また抗体は、例えば、単離抗体、精製抗体、又は組換抗体を含む。また抗体は、例えば、in vitro又はin vivoで使用できる。
【0017】
本発明の一実施形態において「ポリクローナル抗体」は、例えば、哺乳類(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル等)等に、目的の抗原を含む免疫原を投与することによって生成することが可能である。免疫原の投与は、1つ以上の免疫剤、又はアジュバントを併せて注入してもよい。免疫プロトコルは当該技術分野で公知であり、選択する宿主生物等に合わせて、免疫応答を誘発する任意の方法によって実施される(タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):86-91.)。
【0018】
本発明の一実施形態において「モノクローナル抗体」は、集団を構成する個々の抗体が、実質的に同じエピトープに反応する場合の抗体を含む。又は、集団を構成する個々の抗体が、実質的に同一(自然発生可能な突然変異は許容される)である場合の抗体であってもよい。モノクローナル抗体の作製方法は特に限定されないが、例えば、"Kohler G, Milstein C., Nature. 1975 Aug 7;256(5517):495-497."に掲載されているようなハイブリドーマ法と同様の方法によって作製してもよい。あるいは、モノクローナル抗体は、米国特許第4816567号に記載されているような組換え法と同様の方法によって作製してもよい。又は、モノクローナル抗体は、"Clackson et al., Nature. 1991 Aug 15;352(6336):624-628."、又は"Marks et al., J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3):581-597."に記載されているような技術と同様の方法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。又は、"タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):92-96."に掲載されている方法によって作製してもよい。
【0019】
本発明の一実施形態において「Fv抗体」は、抗原認識部位を含む抗体である。この領域は、非共有結合による1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体を含む。この構成において、各可変ドメインの3つのCDRは相互に作用してVH-VL二量体の表面に抗原結合部位を形成することができる。
【0020】
本発明の一実施形態において「Fab抗体」は、例えば、Fab領域及びFc領域を含む抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体が一部のジスルフィド結合を介して結合した抗体である。Fabは、例えば、Fab領域及びFc領域を含む上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体を、蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。
【0021】
本発明の一実施形態において「F(ab')2抗体」は、例えば、Fab領域及びFc領域を含む抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabに相当する部位を2つ含む抗体である。F(ab')2は、例えば、Fab領域及びFc領域を含む上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体を、蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。また、例えば、下記のFab'をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させることで、作製することができる。
【0022】
本発明の一実施形態において「Fab'抗体」は、例えば、F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断して得られる抗体である。例えば、F(ab')2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。
【0023】
本発明の一実施形態において「scFv抗体」は、VHとVLとが適当なペプチドリンカーを介して連結した抗体である。scFv抗体は、例えば、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、VH-ペプチドリンカー-VLをコードするポリヌクレオチドを構築し、そのポリヌクレオチドをベクターに組み込み、発現用の細胞を用いて生産できる。
【0024】
本発明の一実施形態において「diabody」は、二価の抗原結合活性を有する抗体である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。diabodyは、例えば、scFvをコードするポリヌクレオチドをペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、得られたポリヌクレオチドをベクターに組み込み、発現用の細胞を用いて生産できる。
【0025】
本発明の一実施形態において「dsFv」は、VH及びVL中にシステイン残基を導入したポリペプチドを、上記システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させた抗体である。システイン残基に導入する位置はReiterらにより示された方法(Reiter et al., Protein Eng. 1994 May;7(5):697-704.)に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。
【0026】
本発明の一実施形態において「抗原結合性を有するペプチド又はポリペプチド」は、抗体のVH、VL、又はそれらのCDR1、2、もしくは3を含んで構成される抗体である。複数のCDRを含むペプチドは、直接又は適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。
【0027】
上記のFv抗体、Fab抗体、F(ab')2抗体、Fab' 抗体、scFv抗体、diabody、dsFv抗体、抗原結合性を有するペプチド又はポリペプチド(以下、「Fv抗体等」と称することもある)の生産方法は特に限定されない。例えば、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体におけるFv抗体等の領域をコードするDNAを発現用ベクターに組み込み、発現用細胞を用いて生産できる。又は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBOC法(t-ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって生産してもよい。
【0028】
本発明の一実施形態において「キメラ抗体」は、例えば、異種生物間における抗体の可変領域と、定常領域とを連結したもので、遺伝子組換え技術によって構築できる。マウス-ヒトキメラ抗体は、例えば、"Roguska et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973."に記載の方法で作製できる。マウス-ヒトキメラ抗体を作製するための基本的な方法は、例えば、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及び可変領域配列を、哺乳類細胞の発現ベクター中にすでに存在するヒト抗体定常領域をコードする配列に連結する。又は、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及び可変領域配列をヒト抗体定常領域をコードする配列に連結した後、哺乳類細胞発現ベクターに連結してもよい。ヒト抗体定常領域の断片は、任意のヒト抗体のH鎖定常領域及びヒト抗体のL鎖定常領域のものとすることができ、例えばヒトH鎖のものについてはCγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4を、L鎖のものについてはCλ又はCκを各々挙げることができる。
【0029】
本発明の一実施形態において「ヒト化抗体」は、例えば、非ヒト種由来の1つ以上のCDR、及びヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域、さらにヒト免疫グロブリン由来の定常領域を有し、所望の抗原に結合する抗体である。抗体のヒト化には、当該技術分野で既知の種々の手法を使用してもよい(例えば、Almagro et al., FRont Biosci. 2008 Jan 1;13:1619-1633.)。例えば、CDRグラフティング(Ozaki et al., Blood. 1999 Jun 1;93(11):3922-3930.)、Re-surfacing (roguska et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973.)、又はFRシャッフル(Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.)などが挙げられる。抗原結合を改変又は改善するために、ヒトFR領域のアミノ酸残基を、CDRドナー抗体からの対応する残基と置換してもよい。このFR置換は、当該技術分野で周知の方法によって実施可能である(Riechmann et al., Nature. 1988 Mar 24;332(6162):323-327.)。例えば、CDRとFR残基の相互作用のモデリングによって抗原結合に重要なFR残基を同定してもよい。又は、配列比較によって、特定の位置で異常なFR残基を同定してもよい。
【0030】
本発明の一実施形態において「重鎖」は、典型的には、全長抗体の主な構成要素である。重鎖は、通常、軽鎖とジスルフィド結合及び非共有結合によって結合している。重鎖のN末端側のドメインには、同種の同一クラスの抗体でもアミノ酸配列が一定しない可変領域(VH)と呼ばれる領域が存在し、一般的に、VHが抗原に対する特異性、親和性に大きく寄与していることが知られている。例えば、"Reiter et al., J Mol Biol. 1999 Jul 16;290(3):685-98."にはVHのみの分子を作製したところ、抗原と特異的に、高い親和性で結合したことが記載されている。さらに、"Wolfson W, Chem Biol. 2006 Dec;13(12):1243-1244."には、ラクダの抗体の中には、軽鎖を持たない重鎖のみの抗体が存在していることが記載されている。
【0031】
本発明の一実施形態において「CDR(相補性決定領域)」は、抗体において、実際に抗原に接触して結合部位を形成している領域を含む。一般的にCDRは、抗体のFv(可変領域:重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む)上に位置している。また一般的にCDRは、5~30アミノ酸残基程度からなるCDR1、CDR2、CDR3が存在する。そして、重鎖のCDRが抗体の抗原への結合に特に寄与していることが知られている。またCDRの中でも、CDR3が抗体の抗原への結合における寄与が最も高いことが知られている。例えば、"Willy et al., Biochemical and Biophysical Research Communications Volume 356, Issue 1, 27 April 2007, Pages 124-128"には、重鎖CDR3を改変させることで抗体の結合能を上昇させたことが記載されている。CDR以外のFv領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれ、FR1、FR2、FR3及びFR4からなり、抗体間で比較的よく保存されている(Kabat et al.,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and Human Services, 1983.)。
【0032】
CDRの定義及びその位置を決定する方法は、例えば、Kabatの定義 (Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))、又はChothiaの定義(Chothia et al., J. Mol. Biol.,1987;196:901-917)を採用してもよい。本発明の一実施形態においては、Kabatの定義が好適な例として採用される。また、場合によっては、Kabatの定義とChothiaの定義の両方を考慮して決定しても良く、例えば、各々の定義によるCDRの重複部分を、又は各々の定義によるCDRの両方を含んだ部分をCDRとすることもできる。そのような方法の具体例としては、Kabatの定義とChothiaの定義の折衷案である、Oxford Molecular's AbM antibody modeling softwareを用いたMartinらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989;86:9268-9272)がある。
【0033】
本発明の一実施形態において「アミノ酸」は、アミノ基とカルボキシル基を持つ有機化合物の総称である。本発明の実施形態に係る抗体が「特定のアミノ酸配列」を含むとき、そのアミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸が化学修飾を受けていてもよい。また、そのアミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸が塩、又は溶媒和物を形成していてもよい。また、そのアミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸がL型、又はD型であってもよい。それらのような場合でも、本発明の実施形態に係る抗体は、上記「特定のアミノ酸配列」を含むといえる。蛋白質に含まれるアミノ酸が生体内で受ける化学修飾としては、例えば、N末端修飾(例えば、アセチル化、ミリストイル化等)、C末端修飾(例えば、アミド化、グリコシルホスファチジルイノシトール付加等)、又は側鎖修飾(例えば、リン酸化、糖鎖付加等)等が知られている。
【0034】
本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体をコードするポリヌクレオチド又はベクターである。このポリヌクレオチド又はベクターを細胞に導入することによって、形質転換体を作製できる。形質転換体は、ヒト又はヒトを除く哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ウシ、サル等)の細胞であってもよい。哺乳動物細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、サル細胞COS-7、ヒト胎児由来腎臓細胞(例えば、HEK293細胞)などが挙げられる。又は、形質転換体はEscherichia属菌、酵母等であってもよい。上記ポリヌクレオチド又はベクターは、抗CD10抗体を発現可能に構築されていてもよい。上記ポリヌクレオチド又はベクターは、例えば、プロモーター、エンハンサー、複製開始点、又は抗生物質耐性遺伝子など、蛋白質発現に必要な構成要素を含んでいてもよい。
【0035】
上記のベクターとしては、例えば大腸菌由来のプラスミド(例えばpET-Blue)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110)、酵母由来プラスミド(例えばpSH19)、動物細胞発現プラスミド(例えばpA1-11、pcDNA3.1-V5/His-TOPO)、λファージなどのバクテリオファージ、ウイルス由来のベクターなどを用いることができる。ベクターは発現ベクターであってもよく、環状であってもよい。
【0036】
上記のポリヌクレオチド又はベクターの細胞への導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、アデノウイルスによる方法、レトロウイルスによる方法、又はマイクロインジェクションなどを使用できる(改訂第4版 新 遺伝子工学ハンドブック, 羊土社(2003):152-179.)。細胞を用いた抗体の生産方法としては、例えば、"タンパク質実験ハンドブック,羊土社(2003):128-142."に記載の方法を使用できる。
【0037】
本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係るポリヌクレオチド又はベクターを含有する細胞を増殖させる工程を含む、抗CD10抗体の生産方法である。上記増殖させる工程は、培養する工程を含む。またこの生産方法は、抗CD10抗体を回収する工程を含んでいてもよい。またこの生産方法は、細胞培養液を調製する工程を含んでいてもよい。またこの生産方法は、抗CD10抗体を精製する工程を含んでいてもよい。
【0038】
本発明の一実施形態において、抗体の精製は、例えば、硫酸アンモニウム、エタノール沈殿、プロテインA、プロテインG、ゲルろ過クロマトグラフィー、陰イオン、陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、又はレクチンクロマトグラフィーなどを用いることができる(タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):27-52.)。
【0039】
本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体を含む、組成物である。この組成物を用いれば、悪性腫瘍の治療をすることができる。この組成物に対して、後述の医薬組成物に係る種々の実施形態(例えば、担体を含有可能なこと等)の1つ以上が適用可能である。
【0040】
本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体を含む、医薬組成物である。この医薬組成物を用いれば、悪性腫瘍を治療することができる。医薬組成物は、薬理学的に許容される1つ以上の担体を含んでいてもよい。医薬組成物は、例えば、悪性腫瘍の治療用医薬組成物を含む。
【0041】
本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体(又は抗CD10抗体を含む医薬組成物)を患者に投与する工程を含む、悪性腫瘍の治療方法である。本発明の一実施形態は、医薬組成物を生産するための、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体の使用である。
【0042】
本発明の一実施形態において「悪性腫瘍」は、例えば、正常な細胞が突然変異を起こして発生する腫瘍を含む。悪性腫瘍は全身のあらゆる臓器や組織から生じ得る。この悪性腫瘍は、例えば、中皮腫、又は悪性リンパ腫を含む。上記中皮腫は、中皮細胞由来の腫瘍を含む。また中皮腫は、例えば、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫、精巣中皮腫を含む。上記悪性リンパ腫は、例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫を含む。
【0043】
本発明の一実施形態において「治療」は、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果、抑制効果、再発抑制効果、又は予防効果を発揮しうることを含む。本発明の一実施形態において「医薬組成物」は、例えば、有効成分と薬理学的に許容される1つ以上の担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造してもよい。また医薬組成物は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体又は液体(例えば、緩衝液)であってもよい。上記担体の含有量は、例えば、製剤学上有効量であってもよい。この有効量は、例えば、有効成分の製剤学的な安定性又は送達のために十分量であってもよい。例えば、緩衝液は、バイアル中における有効成分の安定化に有効である。
【0044】
医薬組成物の投与経路は、治療に際して効果的なものを使用するのが好ましく、例えば、静脈内投与であってもよい。投与形態としては、例えば、注射剤であってもよい。注射用の水溶液は、例えば、バイアルで保存してもよい。また注射用の水溶液は、例えば、生理食塩水、又は緩衝剤(例えばリン酸塩緩衝液)を配合してもよい。
【0045】
投与量、投与間隔、投与方法は特に限定されないが、患者の年齢や体重、症状、対象臓器等により、適宜選択できる。また医薬組成物は、治療有効量、又は所望の作用を発揮する有効量の有効成分を含むことが好ましい。
【0046】
医薬組成物の治療効果は、例えば、担がんマウスの生存期間の延長により評価してもよい。この場合、例えば、7匹の担がんマウスについて試験を行い、投与開始日より35日目にPBS投与群では全て死亡し、抗CD10抗体群では5匹以上が生存していた場合に、治療効果があると判断してもよい。また治療効果は、画像診断で評価してもよい。
【0047】
本発明の一実施形態において「患者」は、ヒト又はヒトを除く哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、又はチンパンジー等の1種以上)を含む。また患者は、悪性腫瘍を発症していると診断された患者、又は治療を必要としている患者であってもよい。
【0048】
本発明の一実施形態に係る抗CD10抗体は、モノクローナル抗体を含む。モノクローナル抗体の場合、ポリクローナル抗体に比べて、効率的にCD10に対して作用させることができる。
【0049】
本発明の一実施形態に係る抗CD10抗体は、CD10結合活性を有する抗体断片(以下、「抗原結合性断片」と称することもある)を含む。この場合、安定性又は抗体の生産効率が上昇する等の効果がある。抗原結合性断片は、上述のFv抗体等の1種以上であってもよい。
【0050】
本発明の一実施形態に係る抗CD10抗体は、例えば、受託番号NITE BP-02489のハイブリドーマにより産生される抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有していてもよい。また抗CD10抗体は、例えば、受託番号NITE BP-02489のハイブリドーマにより産生される抗体の重鎖FR1、2、3、4、軽鎖FR1、2、3、4、重鎖Fab、軽鎖Fab、Fc領域、重鎖、又は軽鎖のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有していてもよい。
【0051】
本発明の一実施形態に係る抗CD10抗体は、悪性腫瘍細胞の増殖を抑制する、抗CD10抗体を含む。後述のNEP1抗体は、悪性腫瘍細胞の増殖を抑制する機能を有する。本発明の一実施形態に係る抗CD10抗体は、悪性中皮腫細胞又は悪性リンパ腫細胞の増殖を抑制する、抗CD10抗体を含む。後述のNEP1抗体は、悪性中皮腫細胞又は悪性リンパ腫細胞の増殖を抑制する機能を有する。悪性腫瘍細胞は、CD10を発現していてもよい。
【0052】
本発明の一実施形態に係る抗CD10抗体は、悪性腫瘍細胞で発現しているCD10を認識する、抗CD10抗体を含む。また本発明の一実施形態に係る抗CD10抗体は、CD10の野生型又は変異型に結合する抗体を含む。変異型は、SNPsのように、個体間のDNA配列の差異に起因するものを含む。
【0053】
本発明の一実施形態は、抗CD10抗体を含む、悪性腫瘍の治療用医薬組成物である。この医薬組成物を用いれば、悪性腫瘍の治療ができる。本発明の一実施形態は、抗CD10抗体を含む、悪性腫瘍の増殖抑制剤である。この増殖抑制剤を用いれば、悪性腫瘍の治療ができる。
【0054】
本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体を含む、悪性腫瘍の診断薬である。この診断薬を用いれば、効率的に悪性腫瘍を診断できる。本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体と、患者サンプルを接触させる工程を含む、悪性腫瘍の診断方法である。本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体を含む、CD10の検出試薬である。この試薬を用いれば、効率的にCD10を検出できる。本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体と、試験サンプルを接触させる工程を含む、CD10の検出方法である。本発明の一実施形態は、上記の本発明の実施形態に係る抗CD10抗体を含む、キットである。このキットを用いれば、例えば、疾患の治療、診断、又はCD10の検出ができる。このキットは、例えば、上記の本発明の実施形態に係る組成物、医薬組成物、診断薬、又は検出試薬を含んでいてもよく、取扱説明書、緩衝液、容器(例えば、バイアル、又はシリンジ)、又は包装を含んでいてもよい。
【0055】
本明細書において引用しているあらゆる刊行物、公報類(特許、又は特許出願)は、その全体を参照により援用する。
【0056】
本明細書において「CDR1~3」は、CDR1、CDR2、及びCDR3を意味する。本明細書において「又は」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。本明細書において「A~B」は、A及びBを含む。
【0057】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記実施形態に記載の構成を組み合わせて採用することもできる。
【実施例
【0058】
以下、実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>ウェスタンブロットによる解析
HUH-7細胞(肝細胞癌、RIKEN Cell Bank(つくば市、茨城県)より入手)と、そのCD10トランスフェクタント(ヒトCD10分子をトランスフェクトしたHuH-7細胞)のそれぞれから回収した蛋白質をSDS-PADEで分離しPVDFメンブレンに転写した。メンブレンをPierce Fast Blocking Buffer (Pierce Biotechnology Inc.、東京)で処理した後、メンブレン2枚の一方はNEP1抗体を用いて、もう一方は抗CD10抗体(NCL-CD10, Leica Microsystems, 東京)を用いて室温で2時間反応させた。さらに、Anti-mouse HRP Labelled Polymerで室温30分反応させた。ECL Detection Kit (Amersham Biosciences) にて発色させ、撮影した。なお、上記NEP1抗体は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8-122)に受託番号NITE BP-02489として国際寄託(受託日:2017年6月12日)されたハイブリドーマから産生されるマウス抗ヒトモノクローナル抗体である。
【0060】
ウェスタンブロットの結果を図1に示す。NEP1抗体を反応させたCD10トランスフェクタントのレーンにおいて、110~120KDaのbandが出現した。このことから、NEP1抗体はCD10分子と結合することが示された。
【0061】
<実施例2>FACS解析
HuH-7細胞及びそのCD10トランスフェクタント(ヒトCD10分子をトランスフェクトしたHuH-7細胞)に対して、それぞれ1次抗体として、Control mouse Ig G1抗体(クローン名MOPC-21、TONBO bioscience サンディエゴ、カリフォルニア)、NEP1抗体、抗CD10抗体(クローン名B-E3、GEN-PROBE、サンディエゴ、カリフォルニア)、陽性コントロールの抗HLA-A,B,C抗体(クローン名W6/32, abcam ケンブリッジ、英国)を用いて、氷冷下で30分反応させた。2次抗体としてAlexa 647-conjugated rat anti-mouse IgGを用いて氷冷下で30分反応させた。BD LSRFortessa cell analyzer (BD Bioscience)で解析した。
【0062】
FACS解析の結果を図2に示す。NEP1抗体は、HuH-7と結合せず、HuH-7にCD10をtransfectした細胞とは結合した。このことから、NEP1抗体は細胞表面上のCD10分子と結合することが示された。
【0063】
<実施例3>担がんマウス治療実験
NCI-H226細胞(悪性中皮腫細胞、American Type Culture Collection (ATCC)(マナサス、ヴァージニア)より入手)をBALB/c nuマウス1匹あたり、8×10個ずつ腹腔内へ注入した。9日後より、1匹あたりNEP1抗体100μg/ml、又はPBS(対照群)の投与を開始し、図3に示した間隔(2から3日おき)で投与し続けた。各群7匹よりスタートして生存曲線を求めた。
【0064】
担がんマウスモデル実験の結果を図3に示す。抗体投与35日目において、NEP1抗体投与群は7匹中5匹が存命で、対照群は全7匹が死に絶えた。このことから、NEP1抗体は有意に悪性中皮腫担がんマウスの生存を延長させることが明らかになった。
【0065】
以上、実施例を説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
図1
図2
図3