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特許7002148アクチュエータ及びワイヤボンディング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】アクチュエータ及びワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20220113BHJP
   H02N 2/04 20060101ALI20220113BHJP
   H02K 41/02 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H01L21/60 301K
H02N2/04
H02K41/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019569186
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003217
(87)【国際公開番号】W WO2019151340
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2018013321
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】平良 尚也
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-039375(JP,A)
【文献】特開2005-218203(JP,A)
【文献】特開2005-218202(JP,A)
【文献】特開2010-283614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-607
H01L 21/67-687
H01L 41/09
H02K 41/02-035
H02N 2/02-16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿った正方向に向かう力、及び、前記第1方向に沿った前記正方向とは逆向きの負方向に向かう力を生じさせる第1力発生部と、
前記第1力発生部に対して前記第1方向と直交する第2方向に離間して配置され、前記正方向に向かう力、及び、前記負方向に向かう力を生じさせる第2力発生部と、
前記第1力発生部及び前記第2力発生部が生じさせる力の向きと大きさとを制御する制御部と、
前記第1力発生部及び前記第2力発生部に掛け渡された移動体と、を備え、
前記制御部は、
前記第1力発生部が生じさせる力の方向と、前記第2力発生部が生じさせる力の方向と、を一致させることにより、前記移動体を前記第1方向に沿って並進させ、
前記第1力発生部が生じさせる力の方向を、前記第2力発生部が生じさせる力の方向に対して逆向きにすることにより、前記移動体の重心まわりに回転させ、
前記第1力発生部及び前記第2力発生部は、
前記制御部に接続されて、前記制御部による制御を受ける超音波発生部と、
前記第1方向に延び、前記移動体と接触する接触部を有すると共に、前記超音波発生部に固定されて前記超音波発生部が生じさせる超音波振動を受ける駆動軸と、を有する、アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1力発生部及び前記第2力発生部は、前記第2方向に沿って前記移動体の重心を挟んで配置される、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記移動体は、主面及び裏面を有し、
前記主面及び前記裏面の一方は、前記駆動軸の前記接触部と接触する部分を含む、請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
キャピラリを着脱可能に保持するボンディングツールと、
前記ボンディングツールに対して前記キャピラリを取り付け又は取り外すキャピラリ交換部と、を備え、
前記キャピラリ交換部は、請求項1~3のいずれか一項に記載のアクチュエータを有する、ワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータ及びワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ワイヤボンディング装置を開示する。ワイヤボンディング装置は、ボンディングツールであるキャピラリを有する。ワイヤボンディング装置は、当該キャピラリを用いてワイヤに対して熱あるいは超音波振動などを付与することにより、電極にワイヤを接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-6731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示するワイヤボンディング装置といった製造装置は、複数の移動機構を要する。例えば、製造装置の動作は、処理対象となる被処理部品の移動と、被処理部品に対するツールの移動と、を含む。従って、製造装置は、被処理部品及びツールのそれぞれに要求される移動態様を実現するためのアクチュエータを要する。
【0005】
製造装置の分野においては、高機能化が検討されている。高機能化によれば、要求される移動態様が増加する。さらに、要求される移動態様は複雑化する。その結果、移動態様ごとにアクチュエータを準備する必要が生じるので、移動態様が増加するごとにアクチュエータの数も増加してしまう。
【0006】
そこで上記の事情に鑑み、本開示は、複数の動作が可能なアクチュエータ及びワイヤボンディング装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係るアクチュエータは、第1方向に沿った正方向に向かう力、及び、第1方向に沿った正方向とは逆向きの負方向に向かう力を生じさせる第1力発生部と、第1力発生部に対して第1方向と直交する第2方向に離間して配置され、正方向に向かう力、及び、負方向に向かう力を生じさせる第2力発生部と、第1力発生部及び第2力発生部が生じさせる力の向きと大きさとを制御する制御部と、第1力発生部及び第2力発生部に掛け渡された移動体と、を備え、制御部は、第1力発生部が生じさせる力の方向と、第2力発生部が生じさせる力の方向と、を一致させることにより、移動体を第1方向に沿って並進させ、第1力発生部が生じさせる力の方向を、第2力発生部が生じさせる力の方向に対して逆向きにすることにより、移動体の重心まわりに回転させる。
【0008】
アクチュエータは、第1力発生部及び第2力発生部を備えている。それぞれの力発生部が発生させる力は、制御部によって制御される。この構成によれば、第1力発生部の力の向きと第2力発生部の力の向きとを一致させることにより、移動体を第1方向に沿って移動させることが可能になる。さらに、第1力発生部の力の向きに対して第2力発生部の力の向きを逆向きにすることにより、移動体に重心まわりのトルクを提供できる。その結果、移動体を、重心まわりに回転させることが可能になる。その結果、アクチュエータは、移動体に対して、第1方向に沿う並進及び重心まわりの回転という複数の動作を提供できる。
【0009】
上記アクチュエータにおいて、第1力発生部及び第2力発生部は、第2方向に沿って移動体の重心を挟んで配置されてもよい。この構成によれば、移動体を効率よく回転させることができる。
【0010】
上記アクチュエータにおいて、第1力発生部及び第2力発生部は、制御部に接続されて、制御部による制御を受ける超音波発生部と、第1方向に延び、移動体と接触する接触部を有すると共に、超音波発生部に固定されて超音波発生部が生じさせる超音波振動を受ける駆動軸と、を有してもよい。第1力発生部及び第2力発生部が生じさせる力は、接触部における摩擦力であってよい。摩擦力は、超音波の周波数により制御されてもよい。この構成によれば、第1力発生部の構成及び第2力発生部の構成を簡易にすることができる。
【0011】
上記アクチュエータにおいて、テーブルは、主面及び裏面を有してよい。主面及び裏面の一方は、接触部を含んでもよい。この構成によれば、第1力発生部及び第2力発生部は、移動体に対して力を確実に提供することが可能になる。その結果、移動体の並進及び回転を確実に行うことができる。
【0012】
本開示の別の態様に係るワイヤボンディング装置は、キャピラリを着脱可能に保持するボンディングツールと、ボンディングツールに対してキャピラリを取り付け又は取り外すキャピラリ交換部と、を備え、キャピラリ交換部は、上記のアクチュエータを有する。このワイヤボンディング装置は、上記のアクチュエータを備えたキャピラリ交換部を備える。このアクチュエータは、並進と回転との二つの動作を行い得る。従って、ワイヤボンディング装置にキャピラリの交換機能を付与しつつ、キャピラリ交換部の大型化を抑制することが可能である。従って、ワイヤボンディング装置の高機能化と小型化とを両立することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、複数の動作が可能なアクチュエータ及びワイヤボンディング装置が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係るワイヤボンディング装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すワイヤボンディング装置が有するキャピラリ交換部を拡大して示す斜視図である。
図3図3は、キャピラリ保持部の一部を断面視して示す斜視図である。
図4図4は、キャピラリ保持部の動作を説明する図である。
図5図5は、キャピラリ案内部の一部を断面視して示す斜視図である。
図6図6は、キャピラリ保持部及びキャピラリ案内部によって奏されるキャピラリのガイド機能を示す図である。
図7図7は、キャピラリ保持部及びキャピラリ案内部によって奏されるキャピラリの別のガイド機能を示す図である。
図8図8は、図2に示すキャピラリ交換部が有するアクチュエータの要部を示す平面図である。
図9図9は、アクチュエータの動作原理を説明する図である。
図10図10は、アクチュエータの具体的な制御を説明する図である。
図11図11は、アクチュエータの具体的な制御を説明する図である。
図12図12は、キャピラリ交換部の主要な動作を示す図である。
図13図13は、図12に続くキャピラリ交換部の主要な動作を示す図である。
図14図14は、図13に続くキャピラリ交換部の主要な動作を示す図である。
図15図15は、図14に続くキャピラリ交換部の主要な動作を示す図である。
図16図16は、変形例に係るキャピラリ保持部の断面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本開示のアクチュエータ及びワイヤボンディング装置を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示すワイヤボンディング装置1は、例えば、プリント基板などに設けられた電極と、当該プリント基板に取り付けられた導体素子の電極と、を細径の金属ワイヤを用いて電気的に接続する。ワイヤボンディング装置1は、ワイヤを電極に接続するために、ワイヤに対して熱、超音波又は圧力を提供する。ワイヤボンディング装置1は、ベース2と、ボンディング部3と、搬送部4と、を有する。ボンディング部3は、上記接続作業を行う。搬送部4は、被処理部品であるプリント基板などをボンディングエリアに搬送する。
【0017】
ボンディング部3は、ボンディングツール6を含む、ボンディングツール6の先端には、超音波ホーン7が設けられる。超音波ホーン7の先端には、キャピラリ8が着脱可能に設けられる。キャピラリ8は、ワイヤに対して熱、超音波又は圧力を提供する。
【0018】
以下の説明において、超音波ホーン7が伸びる方向をX軸とする。搬送部4によってプリント基板が搬送される方向をY軸(第2方向)とする。キャピラリ8がボンディング動作を行う際に移動する方向(Z軸の方向、第1方向)をZ軸とする。
【0019】
キャピラリ8は、定期的な交換を要する。そこで、ワイヤボンディング装置1は、キャピラリ交換部9を有する。キャピラリ交換部9は、作業者による操作を介することなく、キャピラリ8を自動的に交換する。
【0020】
キャピラリ交換部9は、超音波ホーン7に取り付けられたキャピラリ8を回収する。さらに、キャピラリ交換部9は、超音波ホーン7に対してキャピラリ8を装着する。キャピラリ8の交換作業とは、キャピラリ8を回収する作業と、キャピラリ8を装着する作業と、を含む。キャピラリ8の交換作業は、予め設定された条件を満たした場合に、自動的に実施される。例えば、当該条件は、ボンディング作業の回数としてもよい。すなわち、所定回数のボンディング作業を実施するごとに、キャピラリ8を交換する作業を行うものとしてよい。
【0021】
図2に示すように、キャピラリ交換部9は、主要な構成要素として、キャピラリ保持部11と、キャピラリ案内部12と、アクチュエータ13と、を有する。また、付加的な構成要素として、キャピラリ交換部9は、着脱治具15及び着脱治具15を駆動する治具駆動部20を有する。
【0022】
<キャピラリ保持部>
キャピラリ保持部11は、キャピラリ8を保持する。キャピラリ保持部11は、ホルダ14を介してアクチュエータ13に取り付けられる。キャピラリ保持部11の形状は、Z軸の方向に延びる円柱である。キャピラリ保持部11の下端は、ホルダ14に保持されている。キャピラリ保持部11の上端には、キャピラリ8が着脱可能に挿し込まれる。
【0023】
図3に示すように、キャピラリ保持部11は、主要な構成要素として、上ソケット16と、コイルバネ17(弾性部)と、下ソケット18(キャピラリベース部)と、オーリング19(拘束部)と、を有する。上ソケット16、コイルバネ17及び下ソケット18は、共通する軸線上に配置される。具体的には、上から順に上ソケット16、コイルバネ17及び下ソケット18の順に配置される。
【0024】
上ソケット16の形状は、略円筒である。上ソケット16は、上端面16aから下端面16bに至る貫通孔16hを有する。上ソケット16は、キャピラリ8のテーパ面8aを保持する。従って、貫通孔16hの内径は、キャピラリ8のテーパ面8aの外径に対応する。例えば、貫通孔16hの内径は、キャピラリ本体8bの外径より小さい。貫通孔16hの上端面16a側には、オーリング19のための座繰り部16cが設けられる。座繰り部16cは、オーリング19を収容可能な寸法を有する。座繰り部16cの深さは、オーリング19の高さと同程度である。座繰り部16cの内径は、オーリング19の外径と同程度である。
【0025】
オーリング19の形状は、いわゆるトーラスである。オーリング19は、キャピラリ8のテーパ面8aと直接に接触する。つまり、キャピラリ保持部11のオーリング19は、キャピラリ8を保持している。この保持は、オーリング19の表面に形成される粘着層によってなされる。オーリング19の内径は、貫通孔16hの内径と略同程度である。オーリング19には、キャピラリ8のテーパ面8aが挿し込まれる。
【0026】
上ソケット16は、外周面に設けられた段差16dを有する。従って、上ソケット16の上端面16a側の外径は、上ソケット16の下端面16b側の外径と異なる。具体的には、下端面16b側の外径は、上端面16a側の外径よりわずかに小さい。下端面16b側の細径部16eには、コイルバネ17がはめ込まれる。
【0027】
下ソケット18の形状は、略円筒である。下ソケット18の上端面18aは、上ソケット16の下端面16bと対面する。下ソケット18の外形形状は、上ソケット16の外形形状と同様である。下ソケット18の外周面には、段差18dが設けられる。上ソケット16とは逆に、下ソケット18の上端面18a側は、細径部18eである。この上端面18a側の細径部18eには、コイルバネ17がはめ込まれる。下ソケット18の下端面18b側の太径部18fは、ホルダ14によって挟持されている。
【0028】
コイルバネ17は、圧縮バネである。コイルバネ17の上端側は、上ソケット16の細径部16eにはめ込まれる。コイルバネ17の下端側は、下ソケット18の細径部18eに挿し込まれる。上ソケット16とコイルバネ17とは、可撓部10を構成する。従って、上ソケット16と下ソケット18とは、コイルバネ17によって連結されている。コイルバネ17は、軸線17Aの方向に沿った弾性及び軸線17Aと交差する方向に沿った弾性を有する。その結果、上ソケット16は、下ソケット18に対する相対的な位置を変更することができる。
【0029】
上記の構成を有するキャピラリ保持部11は、図4に示す保持態様を有する。図4の(a)部は、初期態様におけるキャピラリ保持部11を示す。図4の(b)部は、第1の変形態様におけるキャピラリ保持部11を示す。図4の(c)部は、第2の変形態様におけるキャピラリ保持部11を示す。
【0030】
図4の(a)部に示すように、第1の保持態様に係るキャピラリ保持部11は、上ソケット16の軸線16Aが下ソケット18の軸線18Aと重複している。さらに、キャピラリ8の軸線8Aも当該軸線16A、18Aに重複する。
【0031】
図4の(b)部に示すように、第2の保持態様に係るキャピラリ保持部11は、上ソケット16の軸線16Aが下ソケット18の軸線18Aに重複しない。具体的には、下ソケット18は、ホルダ14に保持されており、その位置が維持されている。このような下ソケット18に対して、上ソケット16がX軸及びY軸の方向に移動する。上ソケット16の軸線16Aは、下ソケット18の軸線18Aに対して平行である。
【0032】
図4の(c)部に示すように、第3の変形態様に係るキャピラリ保持部11は、上ソケット16の軸線16Aが下ソケット18の軸線18Aに重複している。つまり、これらの構成は、第1の保持態様と同じである。一方、キャピラリ8の軸線8Aは、上ソケット16の軸線16Aに対して傾いている。オーリング19は、トーラスの形状を有する。従って、キャピラリ8のテーパ面8aが挿し込まれる内周面は、曲面である。例えば、Z軸に平行な断面におけるオーリング19の断面形状は、円形である。オーリング19にテーパ面8aが挿し込まれた状態を断面視すると、オーリング19とテーパ面8aとは、2つの接触部C1、C2で接触する。つまり、オーリング19とキャピラリ8との接触態様は、環状の接触線CL(図3参照)において接触する線接触である。このような接触状態によれば、オーリング19の軸線19Aに対してキャピラリ8の傾きが許容される。
【0033】
<キャピラリ案内部>
再び図2に示すように、キャピラリ案内部12は、超音波ホーン7の孔7h(キャピラリ保持孔)にキャピラリ8を挿入するときにキャピラリ8を案内する。キャピラリ案内部12は、アクチュエータ13に設けられる。従って、キャピラリ案内部12とアクチュエータ13を構成する部品との相対的な位置関係は、保存される。キャピラリ案内部12は、アクチュエータ13から超音波ホーン7に向けて伸びる片持ち梁である。
【0034】
図5は、キャピラリ案内部12の主要部分を断面視した斜視図である。図5に示すように、キャピラリ案内部12の自由端部には、ガイド孔12hが設けられている。ガイド孔12hは、キャピラリ8のキャピラリ本体8bを受け入れる。そして、ガイド孔12hは、超音波ホーン7の孔7hへキャピラリ8を導く。ガイド孔12hは、貫通孔である。ガイド孔12hは、キャピラリ案内部12の上面12aから下面12bに至る。ガイド孔12hは、キャピラリ案内部12の前端面12cにも開口している。ガイド孔12hは、下面12b及び前端面12cからキャピラリ8を受け入れることができる。
【0035】
ガイド孔12hは、テーパ孔部12tと、平行孔部12pと、を含む。テーパ孔部12tの下端は、下面12bに開口する。平行孔部12pの上端は、上面12aに開口する。下面12bにおけるテーパ孔部12tの内径は、上面12aにおける平行孔部12pの内径よりも大きい。この内径は、キャピラリ8の上端における外径よりも大きい。つまり、ガイド孔12hは、下面12bから上面12aに向かって次第に内径が小さくなる。そして、ガイド孔12hの内径は、テーパ孔部12tと平行孔部12pとが連結された位置において最小である。この内径は、キャピラリ8の上端における外径と略同じである。そして、平行孔部12pの内径は、一定である。
【0036】
図6は、キャピラリ案内部12によってキャピラリ8が案内される様子を示す。図6の(a)部に示す状態では、超音波ホーン7の孔7hの軸線7Aは、キャピラリ案内部12のガイド孔12hの軸線12Aに重複する。一方、キャピラリ保持部11に保持されたキャピラリ8の軸線8Aは、軸線7A、12Aに対してX軸の方向に平行にずれている。
【0037】
図6の(a)部に示す状態から、キャピラリ保持部11をZ軸の方向に移動させる。図6の(b)部に示すように、キャピラリ8の上端は、テーパ孔部12tの壁面に接触する。キャピラリ保持部11を上に移動させると、キャピラリ8は、壁面に沿って移動する。この移動は、上向き(Z軸方向)の成分に加えて、水平方向(X軸方向)の成分も含む。キャピラリ保持部11は、コイルバネ17によって上ソケット16が下ソケット18に対して移動する。つまり、下ソケット18を上方向に移動させると、上ソケット16は、上方向に移動しながら、コイルバネ17によって水平方向へも移動する。
【0038】
この移動によれば、キャピラリ8の軸線8Aは、孔7hの軸線7Aへ次第に近づく。そして、キャピラリ8の上端が平行孔部12pに達すると、キャピラリ8の軸線8Aは孔7hの軸線7Aに重複する。従って、キャピラリ8は、超音波ホーン7の孔7hへ挿し込まれる。
【0039】
図6の(a)部に示す例は、超音波ホーン7とキャピラリ案内部12との位置関係が理想的な状態である。一方、図7の(a)部に示す例は、キャピラリ案内部12の軸線12Aに対して、超音波ホーン7の孔7hの軸線7Aが傾いている。
【0040】
図7の(a)部に示す状態において、キャピラリ8を挿し込む動作を説明する。図7の(b)部に示すように、キャピラリ8の軸線8Aは、孔7hの軸線7Aに対して相対的に傾いている。この状態では、キャピラリ8の上端は、孔7hの壁面に接触する。従って、キャピラリ8を孔7hにそれ以上挿し込むことができない。孔7hに対してキャピラリ8を挿し込むためには、キャピラリ8の軸線8Aを孔7hの軸線7Aに対して平行にする必要がある。さらに、軸線8Aを軸線7Aに重複させることが必要である。
【0041】
キャピラリ保持部11は、上ソケット16が下ソケット18に対してずれることが可能である。さらに、キャピラリ8は上ソケット16の軸線16Aに対して傾くことが可能である。これらの作用によれば、図7の(c)部に示すように、キャピラリ保持部11を上昇させるにつれて、キャピラリ8の軸線8Aは、孔7hの軸線7Aに次第に近づく。そして、最終的にキャピラリ8を孔7hに挿し込むことができる。つまり、キャピラリ保持部11はキャピラリ8を柔軟に保持している。その結果、キャピラリ8とキャピラリ案内部12とのずれを吸収することができる。さらに、キャピラリ8と超音波ホーン7の孔7hとのずれを吸収することができる。従って、キャピラリ保持部11とキャピラリ案内部12とによれば、キャピラリ8を超音波ホーン7へ確実に装着することができる。
【0042】
<アクチュエータ>
アクチュエータ13は、交換対象となるキャピラリ8及び新規なキャピラリ8を移動させる。また、アクチュエータ13は、キャピラリ8を所定の位置及び姿勢において保持する。アクチュエータ13は、キャピラリ8を所定の並進軸(Z軸)の方向に沿って往復移動させる。本実施形態において、並進軸は、鉛直方向(Z軸)に沿う。従って、アクチュエータ13は、鉛直方向に沿ってキャピラリ8を上方向及び下方向に移動させる。さらに、アクチュエータ13は、キャピラリ8を回転軸(X軸)のまわりに回転させる。本実施形態において、回転軸は鉛直方向(Z軸)と直交する。つまり、回転軸は水平方向(X軸)に沿う。従って、アクチュエータ13は、水平方向のまわりにキャピラリ8を回転させる。
【0043】
アクチュエータ13は、アクチュエータベース21(ベース部)と、一対のリニアモータ22A、22B(第1力発生部、第2力発生部)と、リニアガイド24と、キャリッジ26(移動体)と、制御装置27(制御部、図1等参照)と、を有する。
【0044】
アクチュエータベース21の形状は、平板である。アクチュエータベース21は、主面21aを有する。主面21aの法線方向は、水平方向(X軸の方向)に沿う。主面21a上には、リニアモータ22A、22B、リニアガイド24及びキャリッジ26が配置される。
【0045】
リニアモータ22Aは、キャリッジ26を移動させる。リニアモータ22Aは、いわゆるインパクト駆動方式を原理とする超音波モータである。リニアモータ22Aは、駆動軸28Aと、超音波素子29A(超音波発生部)と、を有する。駆動軸28Aは、金属製の丸棒である。駆動軸28Aの軸線は、アクチュエータベース21の主面21aに対して平行である。キャリッジ26は、駆動軸28Aに沿って移動する。従って、駆動軸28Aの長さは、キャリッジ26の移動範囲を決定する。駆動軸28Aの下端は、超音波素子29Aに固定される。駆動軸28Aの上端は、ガイド31により支持される。ガイド31は、アクチュエータベース21の主面21aから突出する。駆動軸28Aの上端は、ガイド31に対して固定されてもよい。また、駆動軸28Aの上端は、ガイド31に対して接触してもよい。つまり、駆動軸28Aの下端は、固定端である。また、駆動軸28Aの上端は、固定端又は自由端である。
【0046】
超音波素子29Aは、駆動軸28Aに対して超音波振動を提供する。超音波振動が提供された駆動軸28Aは、Z軸に沿って僅かに振動する。超音波素子29Aは、例えば、圧電素子であるピエゾ素子を採用してよい。ピエゾ素子は、加えられた電圧に応じて変形する。従って、ピエゾ素子は、高周波電圧を与えられると、その周波数と電圧の大きさに応じて変形を繰り返す。つまり、ピエゾ素子は、超音波振動を生じる。超音波素子29Aは、アクチュエータベース21から突出するガイド32に固定される。
【0047】
超音波素子29Aには、制御装置27が電気的に接続される。超音波素子29Aは、制御装置27が発生する駆動電圧を受ける。制御装置27は、超音波素子29Aに提供される交流電圧の周波数と振幅とを制御する。
【0048】
リニアモータ22Bの単体の構成は、リニアモータ22Aと同じである。リニアモータ22Bは、Z軸に交差するY軸の方向へリニアモータ22Aから離間して配置される。リニアモータ22Bの駆動軸28Bは、リニアモータ22Aの駆動軸28Aに対して平行である。リニアモータ22Bの上端の高さは、リニアモータ22Aの上端の高さと同じである。同様に、リニアモータ22Bの下端の高さは、リニアモータ22Aの下端の高さと同じである。
【0049】
キャリッジ26は、移動体である。移動体は、リニアモータ22A、22Bによって並進及び回転する。キャリッジ26の形状は、円盤である。キャリッジ26は、リニアモータ22A、22Bの間に掛け渡されている。アクチュエータベース21とキャリッジ26との間には、キャリッジ26をZ軸の方向に導くリニアガイド24が設けられる。キャリッジ26は、リニアガイド24によって、Z軸の方向に案内される。リニアガイド24は、キャリッジ26の移動方向を規制するものである。リニアガイド24は、Z軸の方向への駆動力をキャリッジ26に提供しない。
【0050】
キャリッジ26は、前円盤33と、与圧円盤34と、後円盤36と、を有する。これらの円盤の外径は、互いに同じである。また、これらの円盤は、共通する軸線に沿って積層される。前円盤33と与圧円盤34との間には、軸体37が挟み込まれる。軸体37の外径は、前円盤33及び与圧円盤34の外径よりも小さい。従って、前円盤33の外周部と与圧円盤34の外周部の間には、隙間が形成される。同様に、後円盤36と与圧円盤34との間にも、軸体38が挟み込まれる。この軸体37の外径も、後円盤36及び与圧円盤34の外径よりも小さい。従って、後円盤36の外周部と与圧円盤34の外周部の間にも、隙間が形成される。
【0051】
後円盤36は、リニアガイド24のテーブル24aに連結される。後円盤36は、テーブル24aに対して回転可能に連結される。一方、与圧円盤34及び前円盤33は、後円盤36に対して機械的に固定される。従って、与圧円盤34及び前円盤33は、後円盤36に対して回転しない。従って、前円盤33、与圧円盤34及び後円盤36を含むキャリッジ26の全体が、リニアガイド24のテーブル24aに対して回転可能である。
【0052】
図8に示すように、駆動軸28A、28Bは、与圧円盤34と後円盤36との隙間G1に挟み込まれる。一対の駆動軸28A、28Bは、キャリッジ26の重心を挟む。駆動軸28A、28Bは、与圧円盤34の裏面34bと後円盤36の主面36aとに接触する。駆動軸28A、28Bは、軸体38の外周面38aに接触しない。隙間G1の外径は、与圧円盤34の外径及び後円盤36の外径よりも小さい。また、隙間G1の外径は、軸体38の外径よりも大きい。軸体38の外径と後円盤36の外径との差分は、駆動軸28Aの外径と駆動軸28Bの外径の差分よりも大きい。同様に、軸体37の外径と与圧円盤34の外径との差分は、駆動軸28Aの外径と駆動軸28Bの外径の差分よりも大きい。
【0053】
隙間G1の間隔は、駆動軸28Aの外径及び駆動軸28Bの外径よりも僅かに小さい。前円盤33と与圧円盤34との間には隙間G2が形成されている。その結果、与圧円盤34と後円盤36との間に駆動軸28A、28Bを配置したときに、与圧円盤34は前円盤33側に僅かにたわむ。このたわみは、駆動軸28A及び駆動軸28Bを後円盤36に押圧する力を発生する。
【0054】
以下、図9を参照しつつ、アクチュエータ13の動作原理について説明する。図9の(a)部、図9の(b)部及び図9の(c)部は、アクチュエータ13の動作原理を示す。説明の便宜上、図9では、一方のリニアモータ22Aとキャリッジ26とを示し、他方のリニアモータ22B等の図示を省略する。
【0055】
図9の(a)部は、キャリッジ26の位置を保持する態様を示す。キャリッジ26の駆動軸28Aは、与圧円盤34と後円盤36との間に挟み込まれる。キャリッジ26の位置は、この挟み込みに起因する与圧によって維持される。より詳細には、キャリッジ26の位置は、与圧を垂直抗力とする摩擦抵抗力によって維持される。制御装置27は、超音波素子29Aに対して電圧を提供しない。つまり、電圧E1に示すように、電圧値はゼロである。なお、制御装置27は、所定の電圧値を有する直流電流を超音波素子29Aに提供してもよい。
【0056】
キャリッジ26の位置は、駆動軸28Aとの間の摩擦抵抗力によって維持される。ここで、駆動軸28Aを移動させる態様として、キャリッジ26が駆動軸28Aに伴って移動する第1の態様と、キャリッジ26が駆動軸28Aに伴わず、その慣性によって位置を維持し続ける第2の態様と、がある。駆動軸28Aを移動させる態様は、駆動軸28Aを移動させる速度によって、第1の態様又は第2の態様を選択できる。駆動軸28Aを移動させる速度は、超音波振動の周波数に関連する。従って、駆動軸28Aを移動させる態様は、超音波振動の周波数によって、第1の態様又は第2の態様を選択できる。例えば、超音波振動の周波数が比較的低い周波数(15kHz~30kHz)であるとき、キャリッジ26は、駆動軸28Aに伴って移動する。例えば、超音波振動の周波数が比較的高い周波数(100kHz~150kHz)であるとき、キャリッジ26は、駆動軸28Aに伴わず位置を維持する。
【0057】
例えば、図9の(b)部に示すように、駆動軸28Aを上方向(正方向)へ移動させるときに、駆動軸28Aの移動に応じて、キャリッジ26を移動させる。この場合、駆動軸28Aとキャリッジ26との相対な位置関係は、変化しない。駆動軸28Aを下方向(負方向)へ移動させるときに、駆動軸28Aの移動に応じて、キャリッジ26を移動させない。この場合、駆動軸28Aとキャリッジ26との相対な位置関係は、変化する。これらの動作を繰り返すと、キャリッジ26は、次第に上方へ移動する。つまり、駆動軸28Aを上方向へ移動させる電圧(電圧E2における符号E2a)の周期を、駆動軸28Aを下方向へ移動させる電圧の周期(電圧E2における符号E2b)よりも長くする。その結果、キャリッジ26は上方へ移動する。
【0058】
逆に、図9の(c)部に示すように、駆動軸28Aを下方向へ移動させるときに、駆動軸28Aの移動に応じて、キャリッジ26を移動させる。この場合、駆動軸28Aとキャリッジ26との相対な位置関係は、変化しない。そして、駆動軸28Aを上方向へ移動させるときに、駆動軸28Aの移動に応じて、キャリッジ26を移動させない。この場合、駆動軸28Aとキャリッジ26との相対な位置関係は、変化する。これらの動作を繰り返すと、キャリッジ26は、次第に下方へ移動する。つまり、駆動軸28Aを上方向へ移動させる電圧(電圧E3における符号E3a)の周期を、駆動軸28Aを下方向へ移動させる電圧の周期(電圧E3における符号E3b)よりも短くする。その結果、キャリッジ26は下方へ移動する。
【0059】
なお、キャリッジ26を下方向へ移動させる場合には、上記制御の他に、駆動軸28Aの上方向への移動及び下方向への移動動の両方に応じて、キャリッジ26が移動しないようにしてもよい。つまり、見かけ上、キャリッジ26と駆動軸28Aとの間に作用する摩擦抵抗力がキャリッジ26に作用する重力よりも小さくなる。その結果、キャリッジ26が落下するように見える。この態様では、キャリッジ26を下方向に移動させる力として、キャリッジ26に作用する重力を利用する。
【0060】
次に、図10及び図11を参照しつつ、アクチュエータ13の具体的な動作について説明する。
【0061】
図10の(a)部は、キャリッジ26の位置を維持する動作を示す。キャリッジ26の位置を維持する場合には、制御装置27は、超音波素子29A及び超音波素子29Bのそれぞれに一定の電圧(図10の(a)部における電圧E4、E5参照)を提供する。
【0062】
図10の(b)部は、キャリッジ26を上方向へ移動させる動作を示す。このとき、制御装置27は、一方の超音波素子29Aに、図10の(b)部における電圧E6に示す交流電圧を提供する。駆動軸28Aを上方向へ移動させる電圧の周期は、駆動軸28Aを下方向へ移動させる電圧の周期よりも長い。同様に、制御装置27は、他方の超音波素子29Bにも図10の(b)部における電圧E7に示す交流電流を提供する。駆動軸28Bを上方向へ移動させる電圧の周期は、駆動軸28Bを下方向へ移動させる電圧の周期よりも長い。つまり、制御装置27は、超音波素子29A及び超音波素子26Bに同じ交流電圧を提供する。制御装置27は、一方の駆動軸28Aを上方向に移動させるタイミングと、他方の駆動軸28Bを上方向に移動させるタイミングと、を一致させる。つまり、制御装置27は、一方の超音波素子29Aに提供する電圧の位相と、他方の超音波素子29Aに提供する電圧の位相と、を互いに同位相の関係とする。従って、接触部P1及び接触部P2は、同じ距離だけ上方に移動する。ここで、接触部P1は、一方の駆動軸28Aにおいて、与圧円盤34及び後円盤36に押圧される部分である。また、接触部P2は、他方の駆動軸28Bにおいて、与圧円盤34及び後円盤36に押圧される部分である。その結果、接触部P1及び接触部P2は、平行状態を維持した状態で、上方向に移動する。つまり、キャリッジ26は、重心のまわりに回転することなく、上方向に並進する。
【0063】
図10の(c)部は、キャリッジ26を下方向へ移動させる動作を示す。このとき、制御装置27は、一方の超音波素子29Aに、図10の(c)部における電圧E8に示す交流電流を提供する。駆動軸28Aを上方向へ移動させる電圧の周期は、駆動軸28Aを下方向へ移動させる電圧の周期よりも短い。同様に、制御装置27は、他方の超音波素子29Bにも、図10の(c)部における電圧E9に示す交流電圧を提供する。駆動軸28Bを上方向へ移動させる電圧の周期は、駆動軸28Bを下方向へ移動させる電圧の周期よりも短い。その結果、一方の駆動軸28Aにおける接触部P1及び他方の駆動軸28Bにおける接触部P2は、同じ距離だけ下方向に移動していく。その結果、接触部P1及び接触部P2は、平行状態を維持した状態で、下方向に移動する。つまり、キャリッジ26は、重心のまわりに回転することなく、下方向に並進する。
【0064】
上記の制御によれば、キャリッジ26を下方向に移動させるときには、キャリッジ26と駆動軸28A、28Bとの間には摩擦抵抗力が作用している。つまり、キャリッジ26と駆動軸28A、28Bとの相対的な位置は変わらない。従って、キャリッジ26は、重心のまわりに回転しない。例えば、キャリッジ26に保持されたキャピラリ8の姿勢に起因して、キャリッジ26を回転させるようなトルクが生じる場合があり得る。この場合であっても、アクチュエータ13は、キャリッジ26の回転を抑制した状態で、キャリッジ26を下方向に移動させることができる。
【0065】
キャリッジ26を上方向及び下方向へ移動させる並進は、1個のリニアモータ22Aで実現することもできる。実施形態に係るアクチュエータ13は、2個のリニアモータ22A、22Bを有するので、1個のリニアモータ22Aを有する構成よりも推進力を高めることができる。
【0066】
図11の(a)部は、キャリッジ26を時計方向に回転させる動作を示す。このとき、制御装置27は、一方の超音波素子29Aに図11の(a)部における電圧E10に示す交流電流を提供する。駆動軸28Aを上方向へ移動させる電圧の周期は、駆動軸28Aを下方向へ移動させる電圧の周期よりも短い。一方、制御装置27は、他方の超音波素子29Bに図11の(a)部における電圧E11に示す交流電流を提供する。駆動軸28Bを上方向へ移動させる電圧の周期は、駆動軸28Bを下方向へ移動させる電圧の周期よりも長い。つまり、超音波素子29Aに提供する電圧は、超音波素子29Bに提供する電圧と異なる。そして、制御装置27は、一方の駆動軸28Aを上方向に移動させるタイミングと、他方の駆動軸28Bを下方向に移動させるタイミングと、を一致させる。つまり、一方の超音波素子29Aに提供する電圧の位相は、他方の超音波素子29Bに提供する電圧の位相に対して逆位相である。そうすると、一方の駆動軸28Aの接触部P1が下方向に移動すると共に他方の駆動軸28Bの接触部P2が上方向へ移動する。接触部P1及び接触部P2は、互いに逆方向へ移動する。これらの移動量が一致するならば、キャリッジ26は、Z軸の方向における位置を維持した状態で、時計方向に回転する。
【0067】
図11の(b)部は、キャリッジ26を反時計方向に回転させる動作を示す。このとき、制御装置27は、一方の超音波素子29Aに、図11の(b)部における電圧E12に示す交流電圧を提供する。駆動軸28Aを上方向へ移動させる電圧の周期は、駆動軸28Aを下方向へ移動させる電圧の周期よりも長い。一方、制御装置27は、他方の超音波素子29Bには、図11の(b)部における電圧E13参照に示す交流電圧を提供する。駆動軸28Bを上方向へ移動させる電圧の周期は、駆動軸28Bを下方向へ移動させる電圧の周期よりも短い。そうすると、一方の駆動軸28Aの接触部P1が上方向に移動し、他方の駆動軸28Bの接触部P2が下方向へ移動する。つまり、接触部P1、P2は、互いに逆方向へ移動する。これらの移動量が一致するならば、キャリッジ26は、Z軸の方向における位置を維持した状態で反時計方向に回転する。
【0068】
<交換動作>
続いて、上記のキャピラリ交換部9によって行われるキャピラリ交換動作について説明する。
【0069】
図12の(a)部は、超音波ホーン7に取り付けられたキャピラリ8Uを交換する直前の状態を示す。キャピラリ交換部9は、上記のキャピラリ保持部11、キャピラリ案内部12及びアクチュエータ13に加えて、付加的な構成要素としてキャピラリストッカ39と、キャピラリ回収部41と、を有する。キャピラリストッカ39は、複数の交換用のキャピラリ8Nを収容する。キャピラリ回収部41は、使用済みのキャピラリ8Uを収容する。
【0070】
図12の(a)部は、例えば、超音波ホーン7に取り付けられたキャピラリ8Uによってワイヤボンディング作業が行われている状態を示す。キャピラリ交換部9は、当該ワイヤボンディング作業を妨げない位置に退避してもよい。
【0071】
図12の(b)部は、交換動作における第1ステップの状態を示す。キャピラリ交換部9は、制御装置27によってキャリッジ26を時計方向に回転させる。この回転は、図11の(a)部に示した動作に対応する。この回転によって、ワイヤボンディング作業を妨げない位置に退避していたキャピラリ保持部11がキャピラリ8Uの下方に位置する。
【0072】
図13の(a)部は、交換動作における第2ステップの状態を示す。キャピラリ交換部9は、制御装置27によってキャリッジ26を上方向に移動させる。この移動は、図10の(b)部に示した動作に対応する。この移動によって、キャピラリ保持部11は、超音波ホーン7に取り付けられたキャピラリ8Uを保持する。
【0073】
図13の(b)部は、交換動作における第3ステップの状態を示す。キャピラリ交換部9は、制御装置27によってキャリッジ26を下方向に移動させる。この移動は、図10の(c)部に示した動作に対応する。この移動によって、キャピラリ保持部11に保持されたキャピラリ8Uは、超音波ホーン7から取り外される。
【0074】
図14の(a)部は、交換動作における第4ステップの状態を示す。キャピラリ交換部9は、制御装置27によってキャリッジ26を時計方向に回転させる。この移動は、図11の(a)部に示した動作に対応する。この移動によって、キャピラリ保持部11に保持されたキャピラリ8Uは、キャピラリ回収部41に搬送される。その結果、キャピラリ8Uは、使用済みのものとして回収される。
【0075】
図14の(b)部は、交換動作における第5ステップの状態を示す。キャピラリ交換部9は、制御装置27によってキャリッジ26を反時計方向に回転させる。この移動は、図11の(b)部に示した動作に対応する。この移動によって、キャピラリ保持部11は、交換用の新規なキャピラリ8Nを保持する。
【0076】
図15の(a)部は、交換動作における第6ステップの状態を示す。キャピラリ交換部9は、制御装置27によってキャリッジ26を時計方向に回転させる。この移動は、図11の(a)部に示した動作に対応する。この移動によって、キャピラリ保持部11に保持された新規なキャピラリ8Nは、超音波ホーン7の孔7hの下方に位置する。
【0077】
図15の(b)部は、交換動作における第7ステップの状態を示す。キャピラリ交換部9は、制御装置27によってキャリッジ26を上方向に移動させる。この移動は、図10の(b)部に示した動作に対応する。この移動によって、キャピラリ保持部11に保持された新規なキャピラリ8Nは、超音波ホーン7の孔7hに挿し込まれる。この挿し込みでは、図6及び図7に示されたキャピラリ保持部11及びキャピラリ案内部12の作用によって、キャピラリ8Nとキャピラリ案内部12とのずれ、及び、キャピラリ8Nと超音波ホーン7の孔7hとのずれが解消される。その結果、キャピラリ8Nを孔7hへ確実に装着することができる。
【0078】
以下、実施形態に係るアクチュエータ13及びワイヤボンディング装置1の作用効果について説明する。
【0079】
アクチュエータ13は、一対のリニアモータ22A、22Bを備えている。それぞれのリニアモータ22A、22Bが発生する力は、制御装置27によって制御される。この構成によれば、一対のリニアモータ22A、22Bが発生する力の向きを一致させることにより、キャリッジ26を並進させることが可能になる。さらに、リニアモータ22A、22Bが発生する力の向きを互いに逆向きにすることにより、キャリッジ26に重心まわりのトルクを提供できる。その結果、キャリッジ26を、重心まわりに回転させることが可能になる。従って、アクチュエータ13は、並進及び回転という複数の動作をキャリッジ26に提供することができる。
【0080】
本開示に係るアクチュエータ13は、並進と回転とを行うことが可能である。さらに、アクチュエータ13は、並進のためのだけの駆動機構及び回転のためだけの駆動機構をそれぞれ準備する必要がない。従って、並進用駆動機構及び回転用駆動機構のそれぞれを準備する構成に比べて、アクチュエータ13を小型化することができる。
【0081】
ワイヤボンディング装置1は、アクチュエータ13を備えたキャピラリ交換部9を備える。このアクチュエータ13は、並進と回転との二つの動作をキャリッジ26に提供できる。従って、ワイヤボンディング装置1にキャピラリ8の交換機能を付与すると共に、キャピラリ交換部9の大型化を抑制することが可能である。従って、ワイヤボンディング装置1の高機能化と小型化とを両立することができる。
【0082】
ワイヤボンディング装置1では、キャピラリ保持部11に保持されたキャピラリ8は、キャピラリ案内部12に導かれながら孔7hに挿入される。従って、孔7hに対してキャピラリ8がずれていても、キャピラリ案内部12によってずれが修正される。キャピラリ保持部11は、アクチュエータ13に固定された下ソケット18に対して、上ソケット16及びコイルバネ17を含む可撓部10がキャピラリ8の位置を相対的に変位可能に保持する。その結果、孔7hに対するキャピラリ8のずれに加えて、孔7hに対してキャピラリ案内部12がずれている場合にも、キャピラリ8がキャピラリ案内部12及び孔7hに倣うように、キャピラリ8の姿勢を変化させながら挿入することができる。従って、作業者の手によらず、新規なキャピラリ8をワイヤボンディング装置1に自動的に取り付けることができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施してよい。
【0084】
<変形例1>
本開示では、第1の力発生部及び第2力発生部として、慣性の法則を利用したインパクト駆動方式を原理とする超音波駆動モータを例示した。しかし、第1力発生部及び第2力発生部は、この構成に限定されず、所定方向に沿う力を発生し得る仕組みを第1力発生部及び第2力発生部として採用してもよい。例えば、第1力発生部及び第2力発生部として、ボールねじを利用したリニアガイドを採用してもよい。
【0085】
<変形例2>
キャピラリ保持部は、キャピラリ8の姿勢を柔軟に変更し得る態様でキャピラリ8を保持できればよい。従って、上記キャピラリ保持部の構成に限定されない。図16は、変形例に係るキャピラリ保持部11Aを示す。
【0086】
キャピラリ保持部11Aは、主要な構成要素として、金属製のパイプ42と、シリコーン樹脂製のチューブ43と、キャップ44と、を有する。パイプ42の形状は、筒状である。パイプ42は、その内部にチューブ43を収容する。パイプ42の一端は、キャップ44によって閉鎖される。チューブ43の一端は、キャップ44によって閉鎖される。キャップ44は、ホルダ14によって保持される。チューブ43の上端43a(上端開口縁)は、パイプ42の上端42aと略一致する。チューブ43の外径は、パイプ42の内径よりも小さい。つまり、チューブ43の外周面とパイプ42の内周面との間には、僅かな隙間が形成される。チューブ43の上端43aは、キャピラリ8のテーパ面8aを保持する。
【0087】
キャピラリ保持部11Aのチューブ43は、所定の可撓性を有する。従って、キャピラリ保持部11Aは、チューブ43の外周面とパイプ42の内周面との間に形成された隙間の分だけ、キャピラリ8の姿勢変更を許容できる。具体的には、キャピラリ保持部11Aは、パイプ42の軸線42Aと交差する方向への偏心及び傾きを許容できる。
【0088】
キャピラリ保持部11Aがチューブ43のみを備える場合、チューブ43の剛性が不足するため、キャピラリ8の姿勢によってはキャピラリ8を保持できない場合が生じる。しかし、チューブ43の外側には、チューブ43よりも剛性の高いパイプ42が存在する。従って、チューブ43の剛性が不足する場合であっても、パイプ42によってキャピラリ8の変位を許容範囲に収めることができる。
【0089】
チューブ43にキャピラリ8が挿し込まれた状態において、上端43aの内周縁とテーパ面8aとの接触状態は、線接触である。従って、本開示に係るキャピラリ保持部11Aと同様に、キャピラリ8を傾けて保持することもできる。
【符号の説明】
【0090】
1…ワイヤボンディング装置、2…ベース、3…ボンディング部、4…搬送部、6…ボンディングツール、7…超音波ホーン、7h…孔、8…キャピラリ、8a…テーパ面、8b…キャピラリ本体、9…キャピラリ交換部、11…キャピラリ保持部、12…キャピラリ案内部、12h…ガイド孔、12t…テーパ孔部、12p…平行孔部、13…アクチュエータ、14…ホルダ、16…上ソケット、16c…座繰り部、16d…段差、16e…細径部、16h…貫通孔、17…コイルバネ、18…下ソケット、18d…段差、18e…細径部、18f…太径部、19…オーリング、21…アクチュエータベース(ベース部)、22A…リニアモータ(第1力発生部)、22B…リニアモータ(第2力発生部)、24…リニアガイド、26…キャリッジ、27…制御装置(制御部)、28A,28B…駆動軸、29A,29B…超音波素子、31,32…ガイド、33…前円盤、34…与圧円盤、36…後円盤、37,38…軸体、39…キャピラリストッカ、41…キャピラリ回収部、G1,G2…隙間、P1,P2,C1,C2…接触部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16