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特許7002194無縫合人工弁搬送装置およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】無縫合人工弁搬送装置およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2016503057
(86)(22)【出願日】2014-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2016-06-09
(86)【国際出願番号】 US2014029315
(87)【国際公開番号】W WO2014153152
(87)【国際公開日】2014-09-25
【審査請求日】2017-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】61/784,973
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520426346
【氏名又は名称】ジェーシー メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ、ブランドン・ジー
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】井上 哲男
【審判官】加藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-521854(JP,A)
【文献】特表2007-514455(JP,A)
【文献】特表2004-535851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工弁を搬送する搬送装置であって、
人工弁の第一の構成部分(component)を収容する様に構成された第1シースを備え、前記第一の構成部分は弁把握器または拡張可能な支持フレームの内の一つを有し;
前記人工弁の第二の構成部分(component)を収容する様に構成された第2シースを備え、前記第二の構成部分は前記弁把握器または前記拡張可能な支持フレームの内の他の一つを有し;及び
前記第1シース及び第2シースと動作可能に結合された制御ユニット、を備え、
長手方向軸に沿って、前記第1シースは第2シースの遠位にあり、そして第2シースは前記制御ユニットの遠位にあり、及び
前記第2シースは、(i)約5度から約60度の角度の曲がった構成を備え、及び(ii)前記人工弁の配送中及び前記搬送装置の回収中に外に応じて前記角度±5度の範囲で曲がるように構成されている、
前記搬送装置。
【請求項2】
前記第2シースが約30度から約50度の角度で曲げられている、請求項1の搬送装置。
【請求項3】
前記第2シースの曲がった構成が、曲げる立体構造要素を介して制御され、前記曲げる立体構造要素は、シース構成ケーブルの近位端に取り付けられ、前記シース構成ケーブルは前記第2シースに取り付けられている、請求項2の搬送装置。
【請求項4】
前記シース構成ケーブルは前記第2シースの内腔に位置し、前記シース構成ケーブルの遠位端は、前記第2シースの遠位端またはその近辺において、前記第2シースの内面に取り付けられている、請求項3の搬送装置。
【請求項5】
前記第1の構成部分(component)が心臓人工弁の拡張可能な支持フレームを備え、前記拡張可能な支持フレームは前記第1シースに収容され、及び
前記第2の構成部分(component)が前記心臓人工弁の弁把握器を備え、前記弁把握器は前記第2シースに収容され、及び
前記弁把握器は前記拡張可能な支持フレームに結合されている、請求項1乃至4の何れか1項の搬送装置。
【請求項6】
前記弁把握器はU字状部材を備え、前記第2シースの近位端への移動により前記U字状部材が露出される、請求項5の搬送装置。
【請求項7】
前記弁把握器に対して半径方向外向きの力を及ぼす様に構成された形状記憶材料を含むロック部材をさらに備える、請求項5または6の搬送装置。
【請求項8】
前記ロック部材が少なくとも部分的に前記第1シース内に配置される、請求項7の搬送装置。
【請求項9】
前記第1の構成部分(component)が、心臓人工弁の弁把握器を備え、前記弁把握器は前記第1シースに収容され、
前記第2の構成部分(component)が、前記心臓人工弁の拡張可能な支持フレームを備え、前記拡張可能な支持フレームは前記第2シースに収容され、及び
前記弁把握器は前記拡張可能な支持フレームに結合される、請求項1乃至4の何れか1項の搬送装置。
【請求項10】
前記弁把握器に対して半径方向外向きの力を及ぼす様に構成された形状記憶材料を含むロック部材をさらに備える、請求項9の搬送装置。
【請求項11】
人工弁を搬送する搬送装置であって、
心臓人工弁の拡張可能な支持フレームを収容する様に構成された第1シース;
前記心臓人工弁の弁把握器を収容する様に構成された第2シースであり、前記弁把握器は拡張可能な支持フレームに結合され;及び
前記第1シース及び前記第2シースと動作可能に結合された制御ユニット、を備え、
長手方向軸に沿って、前記第1シースは前記第2シースの遠位にあり、そして前記第2シースは前記制御ユニットの遠位にあり、及び
前記第2シースは、(i)約5度から約60度の角度の曲がった構成を備え、及び(ii)前記人工弁の配送中及び前記搬送装置の回収中に外に応じて前記角度±5度の範囲で曲がるように構成されている、前記人工弁搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月14日に出願された米国特許出願、出願番号61/784,973の35USC119(e)の下の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の主題は、低侵襲性手順を用いて無縫合人工弁構造体の移植のための医療機器及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人工心臓弁は、損傷または疾患のある心臓弁を置換するために使用される。脊椎動物において、心臓は、4つのポンプチャンバ、すなわち、左心房と右心房と左心室と右心室を持つ筋肉器官であり、それぞれに独自の一方向弁が設けられている。自然の心臓弁は、大動脈弁、僧帽弁(または二尖)、三尖弁及び肺動脈弁として識別される。弁は、圧力が最大である心臓の左側に存在するので、大動脈弁または僧帽弁の修復または交換はより一般的であるが、人工心臓弁は、これらの自然に存在する弁のいずれかを取り換えるために使用することができる。
【0004】
従来の心臓弁置換手術は、胸の縦方向の切開を通して患者の胸腔内の心臓にアクセスすることが含まれる。例えば、胸骨正中切開は胸骨を切断し、胸郭の対向する二半分を広げて、内部の胸腔及び心臓へのアクセスを可能にすることが必要である。患者は、内部チャンバへのアクセスを可能とするために、心臓を停止させることを含む心肺バイパス状態に置かれる。このような心臓切開手術は特に侵襲的であり、長く困難な回復期間を必要とする。
【0005】
低侵襲手術手技が進化しつつあり、そこでは人工弁は、例えば、大腿動脈または直接心臓へのアクセスを提供する小さな切開を介して導入されたカテーテルを用いて患者に導入することができる。これらの移植技術は、切開手術候補者に余り適していない患者のための治療の選択肢を提供することに有望な結果を示している。それにもかかわらず、人工弁のようなカテーテルベースの搬送においてまだ課題は残っている。血管を通して管状搬送装置を前進させると血管壁にストレスを与え、血管壁を損傷するリスクがある。例えば、大腿動脈を介する弁の逆行性搬送は、大動脈大腿動脈損傷/破裂に関連し、そして搬送が大動脈弓を横断するので、脳卒中の潜在的なリスクを伴う。したがって、また、移植手順の侵襲的性格を最小限に抑えながら、装置の搬送路に沿う損傷を最小限に抑える人工弁搬送システムを設計することは有利である。
【0006】
本明細書に記載の一の実施形態では、人工心臓弁搬送装置は、欠陥のある大動脈弁を修復するために大動脈人工弁の移植を可能にする。この装置は、人工弁を導入器を介して心臓の左心室に導入する(経尖搬送(transapical))。本明細書に開示される他の実施形態では、人工弁搬送装置は、心臓に直接通じる動脈および静脈の比較的大きな直径を利用するように設計される。この装置は、例えば、経皮的にこれらの動脈および静脈にアクセスすることができるように、外科医が使用することができる様に設計されるので、搬送装置の導入は、血管のより大きな直径を利用するために、心臓の比較的近くで行われる。
【0007】
関連技術およびそれに関連する制限についての上記の例は例示的なものであり、排他的ではないことが意図されている。関連技術の他の制限は、明細書を参照しそして図面を検討することにより当業者に明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0008】
以下に記載され及び説明される態様及びその実施形態は、例示的かつ説明のためのものであり発明の範囲を制限するものではない。
【0009】
一の態様では、人工弁および搬送装置からなる移植技術が提供される。人工弁は、弁把握器及びコンパクト状態と拡張状態の間で半径方向に拡張可能な支持フレームを備え、支持フレームは外部表面を有し、そして流入流出方向に沿った軸の周りに中央開口を規定する。一の実施形態では、支持フレーム及び弁把握器は移動可能に結合されている。搬送装置は、制御ユニット、制御ユニットに取付けられた近位端及び弁把握器と可逆的結合されている遠位端よりなる少なくとも一つのトラックワイヤ、そのコンパクトな状態で人工弁の支持フレームの少なくとも一部分を収容する第1シース、及び弁把握器の少なくとも一部分を収容する第2シースを備える。一の実施形態において、搬送装置は大動脈人工弁の尖端(apical)搬送に有用である。
【0010】
一の実施形態では、搬送装置は人工弁を収容する。
【0011】
一の実施形態では、第1シースは第2シースの遠位にあり、第2シースは長手方向軸に沿って制御ユニットの遠位にある。他の実施形態において、搬送装置は搬送装置の長手方向軸に沿って中央管腔を備える。
【0012】
一の実施形態では、弁把握器は、支持フレームの外面と入れ子になる位置、と係合位置との間の軸に沿って移動可能である。
【0013】
一の実施形態では、弁把握器は2つ、3つ、または4つの脚部材と、2つ、3つ、または4つのU字状部材から構成されている。他の実施形態において、各U字状部材は直線部と湾曲部を備える。さらに他の実施形態では、脚部材の各々は第1及び第2の端部を持つ。一の実施形態では、脚部材の第1の端部は脚部材の遠位端であり、脚部材の第2の端部は脚部材の近位端である。さらに他の実施形態では、脚部材のそれぞれの近位端は孔を有している。
【0014】
一の実施形態では、弁把握器は形状記憶材料から構成されている。他の実施形態において、弁把握器は単一部品として製作される。
【0015】
一の実施形態では、支持フレームは長さLを有し、脚部材の各々は少なくともLの長さがある。他の実施形態において、支持フレームは長さLを有し、脚部材の各々はL未満の長さである。さらに他の実施形態では、支持フレームは長さLを有し、脚部材の各々はほぼLの長さを持つ。
【0016】
他の実施形態では、支持フレームはその拡張された状態で半径rを有し、支持フレームがその拡張状態にあるとき、少なくとも一つ弁把握器は、支持フレームと同心に入れ子となる様な寸法である。
【0017】
一の実施形態では、支持フレームは形状記憶材料から構成される。他の実施形態では、支持フレームは、少なくとも部分的にカバーによって覆われている。特定の実施形態では、カバーは布である。他の実施形態では、支持フレームは、バルーンにより拡張可能である。
【0018】
一の実施形態では、支持フレームは、支持フレームがその拡張状態にあるとき、オリフィスにおいて一方向弁を提供するために、支持フレームに取り付けられた複数の柔軟な弁尖を備える。他の実施形態では、複数の柔軟な弁尖は生物材料から構成されている。特定の実施形態において、生物材料はブタまたはウシのものである。
【0019】
一の実施形態では、搬送装置はさらに弁搬送体を含む。他の実施形態では、弁搬送体は、遠位ディスク部、中央ステム部分および近位ディスク部を備える。他の実施形態では、弁搬送体は十分に第1シースに収容される。一の実施形態では、弁搬送体は支持フレームの径方向の拡張を実行するために膨張させることができるバルーンを含む。
【0020】
一の実施形態では、支持フレームは、十分に第1シースによって収容されている。他の実施形態では、十分に第1シースによって収容されている支持フレームは、弁搬送体の遠位ディスク部、と近位ディスク部の間の位置にある。
【0021】
一の実施形態では、弁把握器は少なくとも部分的に第2シースにより収容されている。他の実施形態では、U字状部材は部分的にまたは十分に第2シースによって収容されている。さらに他の実施形態では、弁把握器の遠位端は、十分に第1シースに収容されている。
【0022】
一の実施形態では、第1または第2シースは曲げることができる材料で構成され、前記シースは次の様な曲がった構成に曲げることができ、その場合曲げ角度は、約5度~60度、10度~50度、20度~40度、30度~50度、10度~40度、10度~30度、5度~20度、10度~20度、15度~30度、40度~60度、50度~60度、または30度~60度の範囲である。他の実施形態では、第1または第2シースは人工弁の搬送と搬送装置の取り除く間に曲がった形状を維持する。
【0023】
一の実施形態では、第1または第2シースは金属支持構造体と保護層を備える。他の実施形態では、金属支持構造体は形状が管状である。さらに他の実施形態では、金属支持構造体は金属ワイヤメッシュを含む。さらに他の実施形態では、金属支持構造体は、1または複数の薄壁、フラットワイヤ、金属螺旋コイルから製作される。一の実施形態では、第1または第2シースは曲がった形状に曲げることができる長い管を形成するために、一体に製造される金属及びポリマーの両方で構成され、これは一部または全搬送手順の間において曲がった形状を維持することができる。
【0024】
一の実施形態では、第1または第2シースの壁は0.04mmから1.0mm、0.05mmから0.7mm、0.05mmから0.1mm、0.05mmから0.3mm又は0.04mmから0.6mmの厚さを有している。
【0025】
一の実施形態では、第1又は第2シースはポリマー材料を含む。さらに他の実施形態では、ポリマー材料は、Pebax、Teflon、または類似のポリマーである。他の実施形態では、ポリマーは、ポリエーテルベースのポリアミドである。さらに他の実施形態では、ポリマー材料は、Pebax、Teflon、または他の類似のポリマーである。
【0026】
一の実施形態では、第1または第2シースのポリマー材料は、金属支持構造体を覆う保護カバーである。他の実施形態では、保護カバーは、管状金属支持構造体の外面上に存在する。さらに他の実施形態では、保護カバーは、管状金属支持構造体の管腔面上に存在する。
【0027】
一の実施形態では、第1または第2シースは、ポリマー材料に埋め込まれた又はポリマー材料で含浸された金属支持構造体を含む。
【0028】
一の実施形態では、トラックワイヤの数は脚部材の数に等しい。さらに他の実施形態では、各トラックワイヤの遠位端は脚部材の近位端の穴に通される。さらに他の実施形態では、各把握器コネクタケーブルの近位端は、制御ユニットと動作可能に接触している。
【0029】
一の態様では、無縫合人工弁を搬送するための方法が提供され、前記記搬送装置は、上記した様に第1シース、第2シースと、無縫合人工弁を搬送するための制御ユニットとを含む。
【0030】
一の実施形態では、この方法は、導入器を介して、被験者の心臓の左心室に搬送装置を導入することを含む。
【0031】
一の実施形態では、この方法は、第1シースが自然の大動脈弁の遠位に配置するまで、左心室を通して血流の方向に搬送装置の遠位部を前進させることをさらに含む。
【0032】
一の実施形態では、この方法は、弁把握器を露出させるためにさらに、第2シースを近位方向に動かすことを含む。本実施形態では、収容された支持フレームを有する第1シース、弁把握器及び制御ユニットは、静止状態に保持することができる。他の実施形態では、U字状部材が露出された後、弁把握器のU字状部材は半径方向に伸長する。
【0033】
一の実施形態では、この方法はさらに、弁把握器のU字状部材が自然の弁尖と血管壁との間の自然の弁の洞に接触するまで、近位方向に搬送装置を移動させることを含む。本実施形態では、この方法はさらに、支持フレームを弁把握器と位置あわせする様に、収容された支持フレームを持つ第1シースを近位方向に移動させることを含む。一の実施形態では、支持フレームの近位端は、U字状部材の近位端に略位置合わせされる。
【0034】
他の実施態様では、弁把握器が露出された後、収容された支持フレームを持つ第1シースが近位方向に移動され、一方弁把握器は、支持フレームが弁把握器と位置合わせされるまで、長手方向軸に沿って静止状態に保持される。一の実施形態では、第1シースは、支持フレームの近位端がU字状部材の近位端と略位置合わせされるまで、近位方向に移動される。一の実施形態では、この方法はさらに、弁把握器のU字状部材が、自然の弁尖と血管壁との間の自然の弁の洞に接触するまで、搬送装置を近位方向に移動させることを含む。
【0035】
一の実施形態では、この方法はさらに、長手軸に沿って支持フレームを静止状態に保持しながら、第1シースを遠位方向に前進させることを含む。
【0036】
一の実施形態では、この方法はさらに、各々のトラックワイヤの遠位端を、弁把握器の脚部材のそれぞれ近位端から切り離すことを含む。
【0037】
一の実施形態では、この方法はさらに、遠位シースの遠位端が、第1シースの近位端に略隣接し、および/または接触するまで第2シースを遠位方向に移動させることを含む。
【0038】
一の実施形態では、この方法はさらに、被験者から搬送装置を取り除くために搬送装置を近位方向に移動させる方法を含む。
【0039】
一の態様では、無縫合弁の順行性搬送のための無縫合人工弁搬送装置が提供される。
【0040】
一の態様では、搬送装置及び人工弁を備えた移植装置が提供される。一の実施形態では、搬送装置は、第1シース、第2シース及び制御ユニットを備える。他の実施形態では、第1シースは第2シースに対して遠位であり、第2シースは、制御ユニットに対して遠位にある。他の実施形態では、搬送装置は、搬送装置の長手方向軸に沿って中央管腔を備える。
【0041】
人工弁は、弁把握器と、コンパクトな状態と拡張状態の間に半径方向に拡張可能な支持フレームを備え、支持フレームは外面とを有し、流入流出方向に沿った軸の周りに中央オリフィスを規定する。弁把握器は、中央管腔を持つ円形の軸を有しており、2つ、3つ、または4つの脚部材と、2つ、3つ、または4つのU字形部材を備える。一の実施形態では、弁把握器と支持フレームを移動可能に結合されている。
【0042】
一の実施形態では、頂部部材は2つのU字型部材の間に存在する。他の実施形態では、頂部部材は、1のU字状部材と1と脚部材の間に配置され、そして1のU字状部材1と脚部材に結合されている。他の実施形態では把握器ユニットは3個のU字状部材と3個の脚部材から製作される。他の実施形態において、把握器ユニットは、形状記憶材料から構成される。
【0043】
一の実施形態では、人工弁は支持フレームと弁把握器と接触している少なくとも一つの縫合糸ループを含む。他の実施形態では、少なくとも一つの縫合糸ループの各々は移動可能に弁把握器に取り付けられている。さらに他の実施形態では、少なくとも一つの縫合糸ループのそれぞれは、弁把握器の脚部材の一つに取り付けられている。他の実施形態では、縫合糸ループは、脚部材の長手方向軸に沿って脚部材に沿って摺動することができる。さらに他の実施形態では、縫合糸ループは支持フレームに固定され、脚部材に移動可能に取り付けられている。
【0044】
一の実施形態では、人工弁は、支持フレームが拡張状態にある時、オリフィスに一方向弁を提供するために、支持フレームに取り付けられた複数の柔軟な小尖を含み、そして、弁把握器は、支持フレームの外面と入れ子となっている位置と、係合位置との間で軸に沿って可動である。一の実施形態では、支持フレームは形状記憶材料から構成される。
【0045】
一の実施形態では、支持フレームは長さLを有し、U字状部材の直線部のそれぞれは少なくとも長さLを有する。他の実施形態では、支持フレームは長さLを有し、U字状部材の直線部のそれぞれの長さはLよりも短い。さらに他の実施形態では、支持フレームは長さLを有し、U字状部材の直線部のそれぞれは、その長さが略Lである。さらに他の実施形態では、支持フレームは、少なくとも部分的にカバーによって覆われている。特定の実施形態では、カバーは布である。一の実施形態では、支持フレームは自己拡張型ではなく、例えば、当技術分野で知られているようにバルーンカテーテルを使用して、拡張することができる。
【0046】
一の実施形態では、搬送装置は、制御ユニット、弁把握器脚部材の遠位部分を収容する第1シース、およびそのコンパクトな状態で、人工弁の支持フレームを収容する第2シース、及び少なくともコンパクトな状態の弁把握器のU字状部材を備える。
【0047】
一の実施形態では、搬送装置は、少なくとも部分的に第1シースによって収容されるロック部材を備えている。他の実施形態では、脚部材のそれぞれの遠位端の少なくとも一部は、ロック部材と第1シースの内壁との間に配置される。さらに他の実施形態では、ロック部材は円板状である。他の実施形態において、把握器の遠位部分がロック部材の外面と第1シースの内面との間に位置するとき、ロック部材は把握器を静止状態に保持する様に機能し、一方、第2シースは長手方向軸に沿って近位方向に移動される。
【0048】
一の実施形態では、人工弁は大動脈弁の人工弁、肺動脈弁の人工弁、僧帽弁の人工弁、または三尖弁の人工弁である。
【0049】
一の実施形態では、第2シースは柔軟な材料で構成されている。他の実施形態において、第2シースは、金属線の編組、ワイヤメッシュ及び/又はワイヤコイルの金属支持構造を備える。他の実施形態において、第2シースは、血管を通って搬送装置が前進されるその血管の湾曲に適合するように十分に曲がることができる。第2シースのワイヤ支持構造体は、搬送装置が患者に導入される前に、第2シースが特定の角度に曲げることができるように製作される。曲げられたら、第2シースは人工弁の搬送と、搬送装置の回収を通して前記の曲げ角度を維持する。曲げ角度は、人工弁の自然の弁輪への搬送に一致する又は適合することができるので、搬送により弁置換の点に近い部分の自然組織に損傷を与えることがなく、又はもし第2シースが直線状またはその曲げ角度が約5度以下又は約3度以下である場合に起きる損傷に比べて、損傷を減らすことができる。
【0050】
第2シースは、上述の金属支持構造を覆うことができるポリマー材料または他の適切な材料を含むことができる。代替的に、金属支持構造体は、ポリマー材料中に埋め込まれ又はまたはポリマー材料を含浸させても良い。いくつかの好適なポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えば、デュポンから入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテル-エステル(例えば、ARNITEL(登録商標)、DSMエンジニアリングプラスチックスから入手可能)、エーテルまたはエステル系共重合体(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレートおよび/またはデュポン社から入手可能なHYTREL(登録商標)などの他のポリエステルエラストマー)、ポリアミド(例えば、バイエルから入手可能なDURETHAN(登録商標)又はエルフアトケムから入手可能なCRISTAMID(登録商標))、弾性ポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば、商品名PEBAX(登録商標)で入手可能)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、マーレックス(Marlex)高密度ポリエチレン、マーレックス低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(例えばREXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン‐12(例えば、EMSアメリカングリロンから入手可能なGRILAMID(登録商標))、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ(スチレン-£-イソブチレン-£-スチレン)(例えば、SIBSおよび/またはSIBS50A)、ポリカーボネート、アイオノマー、生体適合性ポリマー、他の適切な材料、またはそれらの混合物、それらの組み合わせ、それらのコポリマー、ポリマー/金属複合材料などを含む。いくつかの実施形態では、シースは液晶ポリマー(LCP)とブレンドすることができる。例えば、混合物を約6%までのLCPまで含有することができる。
【0051】
他の実施形態において、第1シースは、第2シースについて説明したように金属支持構造体および/またはポリマーから構成されてもよい。
【0052】
他の態様では、逆行性アプローチを用いた無縫合人工弁を搬送する方法が提供され、前記方法は、上記したような搬送装置を備える移植装置の使用を含み、前記移植装置は制御ユニット、搬送装置及び人工弁を含み、そして、支持フレーム及び弁把握器は第2シースに収容される。心臓につながる血管を介する人工弁の経皮搬送に有用な本装置においては、小胞は外科的手段を介してアクセスされる。例えば、この装置は、人工器官の逆行性搬送による、自然の肺または心房弁を置換するための人工弁を提供することができる。
【0053】
一の実施形態では、本方法は、血管内に作られた切開部に装置を挿入することにより、患者の血管内に搬送装置の遠位端を挿入することを含む。この装置は、その後、弁輪への血流と反対の方向に前進する。一の実施形態において、搬送装置は、第1シースが修復される弁輪内に略位置するまで、前進される。第2シースは、その後、弁把握器のU字状部材が搬送装置の長手方向軸から半径方向に拡張できるようになるまで、近位方向に移動される。一の実施形態では、第2シースが近位方向に移動されるとき、第1シース及び弁把握器は静止状態に保持される。
【0054】
一の実施形態では、本方法は、その後、第1シース及び弁把握器が長手方向軸長手方向軸に沿って静止状態に保持されながら、第2シースを遠位方向に移動させることを含む。
【0055】
一の実施形態では、本方法は、その後、支持フレームが弁把握器に位置合わせされるまで、第2シースを遠位方向に動かすことを含む。
【0056】
一の実施形態では、本方法は、その後、弁把握器のU字型部材が自然の弁尖と血管壁との間の自然弁の洞に接触するまで、搬送装置を遠位方向に移動させることを含む。
【0057】
一の実施形態では、本方法は、その後、支持フレームが半径方向に拡張され、そして自然の弁尖に接触するまで、支持フレームを長手方向軸に沿って静止状態に保持しながら、第2シースを近位方向に動かすことを含み、その場合、弁把握器のU字型部材は血管壁と自然の弁尖の間に位置し、自然の弁尖はU字型部材と支持フレームの外面の間に位置する。
【0058】
一の実施形態では、本方法は、その後、搬送装置を近位方向に移動させることを含む。他の実施形態において、搬送装置は患者から取り除かれる。
【0059】
一の実施形態では、本方法は、搬送装置を患者に挿入する前に、置換される自然弁の位置を画像化することを含む。他の実施形態では、搬送装置の第2シースは、自然弁構造体の角度と互換性のある角度を持つ曲がった形態を形成するように曲げられる。さらに他の実施形態では、搬送装置の第2シースは人工弁の搬送前または搬送中に曲がった形態または構造を形成するように曲げられる。
【0060】
本発明の装置および方法の更なる実施形態等は、以下の説明、図面、実施例、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。前述および以下の説明から理解される様に、本明細書に記載のすべての特徴、および2以上のそのような特徴の各組み合わせは、そのような組合せに含まれる特徴が相互に矛盾しない限りにおいて本開示の範囲内に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組み合わせは、特に、本発明の任意の実施形態から除外されてもよい。本発明の更なる特徴及び利点は、以下の説明および特許請求の範囲に記載されているが、特に、実施例および図面と併せて考慮されると明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1及び図2は、支持フレームに動作可能に結合された弁把握器の実施形態を示す。
【0062】
図3A及び図3Bはそれぞれ、支持フレームを持たず及び支持フレームを持つ弁搬送体の実施形態を示す。
【0063】
図3Cは、弁把握器の脚部材に可逆的に結合されたトラックワイヤの実施形態を示す。
【0064】
図4-7は、無縫合人工弁の順行性搬送のための搬送装置の実施形態を示す。
【0065】
図8-10は、無縫合人工弁の逆行性搬送のための搬送装置の実施形態を示す。
【0066】
図11-12は、無縫合人工弁を搬送するために可撓性シースの実施形態を示す。
【0067】
図13は、バネ機構を備えた無縫合人工弁移植装置の実施形態を示す。
【発明の詳細な説明】
【0068】
以下に、種々の態様が、より詳細に説明される。しかし、このような態様は、多くの異なる形式で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が十分かつ完全になるように、及び当業者に十分にその範囲を伝達される様に提供される。
1.弁把握器及び支持フレーム
【0069】
本明細書に記載の移植装置は、患者の欠陥のある心臓弁に人工弁を搬送するように構成された搬送装置を備える。人工弁は、人工弁尖を含む、半径方向に拡張可能な支持フレームに動作可能に結合された弁把握器を含む。本明細書に記載の弁把握器は、支持フレームの長手方向軸に対して及びそれに沿って移動可能である。弁把握器が支持フレームからオフセット(off-set)されている場合、例えば、弁把握器のU字状部材が支持フレームの近位又は遠位位置にあり、および/またはほぼ十分には支持フレームと重複していない場合には、この位置は、係合位置と呼ばれる。この位置では、弁把握器のU字状部材は、脚部材と、そのコンパクトな状態にある支持フレームの長手方向軸から、半径方向に伸長してもよい。支持フレームがコンパクトな状態で静止状態で保持されているときに、U字形部材はまた、長手方向軸に沿って近位または遠位方向に移動することができる。弁把握器が入れ子位置にあるとき、把握器の頂点は、自然弁の洞の床と位置合わせされた支持フレームの端にほぼ隣接する。代替的に、U字型部材の少なくとも一部が自然の洞の床又は弁の自然弁尖の交連に接触しているか、隣接したときに、弁把握器は、その入れ子位置にある。無縫合弁は、さらに例えば、米国特許8,366,768に記載されており、その内容の全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
弁把握器は円形の軸を有しており、脚部材によって分離される2つ、3つまたは4つのU字状部材で構成される。いくつかの実施形態では、各脚部材は脚部材の長手方向軸に沿って内腔を持つ、この内腔は、例えば、脚部材に結合されたまま、脚部材の長手方向軸に沿って移動可能な縫合糸ループまたは他の手段の取り付けを可能にする。従って、縫合糸ループは、内腔に沿って摺動することができる。記載された人工弁においては、縫合糸はまた支持フレームに取り付けられている。支持フレームへの取り付けは不動であってもよいし、又は支持フレームに対して限られた可動性を持っても良い。縫合糸ループが、支持フレーム及び弁把握器の脚部材の内腔の両方に取り付けられたこの構成では、支持フレームと弁把握器は移動可能に取り付けられることを可能にする。
【0071】
弁把握器が移動可能に支持フレームに結合されている(代替的に、「移動可能に取付けられている」)ので、弁把握器は、支持フレームの近位または遠位位置から支持フレームと同心位置に移動することができる。人工弁の搬送の間、弁把握器を支持フレームから直列に配置することが有利である。これにより、ユーザは、例えば、動脈と静脈を通って前進されねばならない装置の半径を最小化することができる。弁把握器が、支持フレームから直列に変位することができる距離は大きく変わり得るので、搬送手順の間弁把握器は支持フレームに隣接しているか、又は支持フレームからインチ又はフィート動ける位置に離れていても良い。いくつかの実施形態では、弁把握器のどの部分も物理的に、例えば、溶接または他の方法で接着するなどによって、支持フレームに固定されていない。重要なことは、弁把握器の部分は、支持フレームから半径方向に動くことができることである。いずれにしても、弁把握器は支持フレームに移動可能に結合された状態にある。当業者は、支持フレームと把握器を移動可能に結合する手段は、図1及び2に示す縫合糸ループに限定されないことを理解するであろう。
【0072】
支持フレームに移動可能に取り付けられた弁把握器の例を図1,2に示す。
支持フレーム5に移動可能に取り付けられた弁把握器は、弁把握器10、拡張可能な支持フレーム15及び縫合糸ループ60を含む。弁把握器10は、3つの脚部材30を備え、この各々は、縫合糸ループ60がその長手方向軸に沿ってスライド可能な内腔50を有している。図1は、本明細書に記載の「係合位置」を表す。図2は、支持フレーム15の配置前に、弁把握器10と支持フレーム15が、自然の弁輪内に適切に配置される(本明細書中に記載の「入れ子位置」)場合の様に、支持フレーム15が弁把握器10と位置合わせされる実施態様を示す。
【0073】
欠陥のある自然の弁輪に人工弁を搬送する前に、弁把握器と支持フレームは、お互いの間でほとんど、あるいは全く重なることなく、長手方向軸に沿って互いに隣接して配置される(例えば、図1)。また、両者は、第1および/または第2の円筒形のシース又は管内でコンパクトな状態にある。人工弁の移植の間に、支持フレームは、弁把握器と同心に及びその内部にある様にすることができる(例えば、図2を参照)。支持フレームの配置後、各自然の弁尖は脚部材と拡張された支持フレームとの間に配置される。支持フレームの半径方向の力との組み合わせの構成により、人工弁を自然の弁輪内に確保する。
【0074】
支持フレームは、外側または外部表面を有し、軸(長手方向軸)の周りに中央オリフィスを規定する。長手方向軸は流入流出軸に対応する。いくつかの実施形態では、人工弁は、さらに、支持フレームの内面に取り付けられた複数の人工弁尖を含む。弁尖は、人工弁を通る一方向の液体の流れを可逆的に封止可能な開口部を規定する表面を有する。人工弁は3つの小尖構成のための3つの弁尖を含むことができる。理解されるように、単一小尖、2小尖、および/または多小尖の構成も可能である。例えば、弁尖は、人工弁の内腔を通る流体の流れを橋渡しし、且つ制御するように弁フレームに結合させることができる。弁尖は、合成材料、工学的生体組織、生物弁膜尖組織、心膜組織、架橋された心膜組織、またはそれらの組み合わせを含む。他の実施形態では、心膜組織は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヒト組織、またはそれらの組合せからなる群から選択されるが、それらに限定されるものではない。
【0075】
支持フレームは、自己拡張型またはバルーンにより拡張することができる。いくつかの実施形態では、自己拡張型支持フレームは、指定された温度または温度範囲で形状を変更することができる形状記憶金属からなるものでも良い。代替的に、自己拡張型フレームは、バネバイアスを持つものを含むことができる。支持フレームが製作される材料は、配置されたとき支持フレームが自動的にその機能するサイズおよび形状に拡張することを可能にするだけでなく、支持フレームが、患者の血管系を介して搬送することができる様に、半径方向により小さい形状に圧縮されることを可能にするものである。本明細書に記載のように、自己拡張型コンポーネント(例えば、支持フレーム、弁把握器、ロック部材)に好適な材料の例としては、医療グレードのステンレス鋼、チタン、タンタル、白金合金、ニオブ合金、コバルト合金、アルギン酸塩、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。形状記憶材料の例としては、形状記憶プラスチック、ポリマー、及び体内で不活性である熱可塑性材料を含む。通常ニチノールとして知られているニッケルとチタンのある比率を持つものから一般に作られる超弾性特性を有する形状記憶合金は好ましい材料である。代替的実施形態では、支持フレームは、自己拡張型ではなく、当技術分野で良く知られているように、例えば、バルーンカテーテルを使用して、拡張することができる。
【0076】
支持フレームの配置の前に、支持フレームは、弁搬送体を用いて第1シース内に静止状態に保持することができる。弁搬送体は図3A(支持フレームなし)および図3B(支持フレーム付き)に示されている。弁搬送体270の近位端274および遠位端275は、各端部を第1シースの壁に半径方向に押しつけることができる円周を持つ。図3Bに示す支持フレーム280は、近位端274と遠位端275の間に位置している。中央ステムは、弁搬送体の近位端と遠位端との間に長手方向に走る。一の実施形態では、中央ステムは、支持フレームの配置を実行するために、第1シースから支持フレームを移動させた後に膨張させることができるバルーンを含んでもよい。その様な実施形態は、支持フレームが形状記憶金属でない場合に、使用されうる。
II.大動脈人口弁を搬送するための人口弁搬送装置
【0077】
本開示は、哺乳類の心臓の左心室の頂点を通して無縫合人工弁を、例えば、経尖搬送することができる搬送装置について記載する。このような方法は、患者の胸部を介して搬送通路を提供するためにトロカールを使用することを含む。しかし、以下に記載された装置は大動脈弁の修復に限られない。
【0078】
「順行性」搬送装置は、血管又は血液チャンバを通る血液の流れの方向に血管(静脈または動脈)または血液チャンバ(例えば、心室または心房)を通って患者に搬送される装置を指す。
【0079】
「逆行性」搬送装置は、血管を通る血液の流れと反対方向に血管(静脈または動脈)を通って患者に搬送される装置を指す。
【0080】
搬送弁及び人口弁を備えた移植装置は、図4-7と以下に記載される。
【0081】
この装置とそれの変形は人工弁の順行性搬送のために使用することができる。換言すれば、この装置および方法は、人工弁の搬送及び移植にとり有用であり、この場合装置の遠位端(ノーズコーン)は、血流の方向に自然の弁輪に向かって前進される。この搬送装置は、大動脈、僧帽弁、肺動脈弁または三尖弁の修復のために使用することができる。また、この装置及び方法は、循環系の他の部分の弁の治療に使用することが想定される。
【0082】
本明細書において説明するように、無縫合人工弁は、図1及び2に示される弁把握器10の様な弁把握器を備える。弁把握器は、あるいは洞ロケータ、バルブポジショナ、またはバルブハンガーと呼ぶことができる。図1及び図2は、把握器が移動可能に支持フレームに取り付けられた人工弁を形成するために、縫合糸ループ60が把握器脚部材30内の管腔50に通されている典型的な実施形態を示す。弁把握器の各々は、縫合糸、織物および/または可撓性部材、または他の同等の機構又は構造によって人工弁の支持フレームに結合することができる。
【0083】
無縫合人工弁は、例えば、心尖搬送(apical delivery)を用いて欠陥のある自然弁に搬送されるが、その場合人工弁を収容する搬送装置は、胸壁に穴を開けた導入器を介して心臓の左心室に導入される。典型的な搬送装置100を図1に示す。
【0084】
搬送装置100の遠位端には、支持フレーム170をコンパクトな状態で収容する第1シース110(代替的に、ノーズコーン)がある。弁把握器140(拡張した状態を、図5に示す)は、第2シース120内に収容され、人工弁の搬送および配置前に移動可能に支持フレーム170に結合される。図6に示すように、弁把握器140のU字状部材弁150は、最終的に自然の弁尖80及び血管壁70の間に配置される。搬送装置100はまた、その遠位端において弁把握器140の脚部材160の近位端と一時的に結合される少なくとも1つのトラックのワイヤ180を含む。弁把握器の各脚部材には1つのトラックワイヤを備える。トラックワイヤ180は脚部材160及び制御ユニット260の間で動作可能な結合を形成する。制御ユニット260は、互いに独立して動作する又は互いに組み合わされて動作する複数の部品で構成することができる。例えば、制御ユニット260としては、ノーズコーン制御ユニット、シース制御ユニット、リリースユニット、及びハンドルを含むが、これらに限定されない、個々のユニットを含むことができる。ハンドルは、医師が搬送装置100を保持するための場所を提供する制御ユニットの一部であり得るが、必ずしも他の機能を持つ必要はない(例えば、図4及び5のハンドル部分266を参照)。なお、本明細書に記載の任意の搬送装置は、搬送装置の様々なコンポーネントを制御するための制御ユニットを有することが理解される。このような制御ユニットは、当業者によって理解されるものである。制御ユニットは、互いに独立にまたは互いに協調して、搬送装置の様々なコンポーネントを制御するために、それらの操作を可能にする任意の方法で配置することができる独立した制御要素で構成される。独立した制御ユニットは、例えば、レバー、ノブ、または第1シース、第2シース、人工弁、各々またはすべての弁把握器、及び各々またはすべてのトラックワイヤの動きを制御するための他の類似の構造を含む。一の実施形態では、1または複数の独立した制御要素は、図4-5に示す264、266、及び268のような、独立して回転させることができる制御ユニット260の部分として現れる。これらの独立した制御要素のそれぞれは、任意の方法で注文することができる。一の実施形態において、ハンドル部分は、独立した制御要素の動きに対して静止したままである。
【0085】
第2シース120は、心臓及び置換される欠陥のある弁の位置の近くの関連する血管、の自然な湾曲に適合する曲がった構成を維持することができる様に第2シース120を曲げることができる材料で構成することができる。移植手順を実行する前に、患者についての画像化が、欠陥のある弁の領域で行われる。画像化は、例えば、超音波、X線、および/または磁気共鳴画像法(MRI)によって、実施することができる。このような画像化は、医師に、第2シース120を画像化によって見られる略湾曲の角度である角度に曲げることを可能にする。第2シース120を曲げることにより、搬送装置100と血管の管腔表面、または、心室の内部表面との間の問題のある接触を防止または減少させることができる。その様な接触な、例えば、血管の穿刺や心臓組織への損傷を引き起こすことがある。本明細書中で意図されるような互換性のある曲がった形態は、搬送手順の間に、血管または心臓組織への損傷を引き起こすことなく、装置100を用いて人工弁の搬送を可能にする角度をいう。代替的に、互換性のある曲がった形態は、第2シース120が剛性である場合、または第2シース120が、直線状または曲がった形態を維持することができない場合(ソフトチューブなど)に発生する可能性がある損傷に比べて、搬送手順中に、いずれの血管または心臓組織への損傷をも低減させる角度を言う。
【0086】
第2シースの柔軟性は、金属支持構造を用いて第2シースを製造することによって達成され、その場合、金属は、金属を曲げた後に外力が存在しない場合に曲がった形状を維持するものであることである。したがって、第2シースは、搬送装置を患者に導入する前に、または搬送中に特定の角度に曲げることができ、そして曲げられた後は、第2シースは人工弁の搬送を通して、及び必要に応じて搬送装置の回収中に曲げ角度(立体構造) を維持するものである。このような金属の非限定的な例はステンレス鋼である。金属支持構造体は、金属ワイヤの編組、ワイヤメッシュおよび/または金属ワイヤのコイルであってもよい。ワイヤは、フラットであっても、そうでなくてもよい。線の太さは、ワイヤ編組、メッシュやコイルの密度が変わり得ると同様に変えることができる。換言すれば、シースの可撓性は、単位面積当たりのワイヤの数が増加すれば増加する。この実施形態では、第2シース120は、他人やツールの支援なしに医師が、第2シース120を手動で曲げることが可能である材料である限り、任意の材料を用いて製作することができる。代替的に、医師は、互換性のある曲がった構成にするように、第2シース120を曲げるためにツールを使用することができる。一の実施形態において、移植装置が、搬送手順の前またはその間に、第2シースを曲げるために使用することができるシース構成ケーブルを含むように製作される。一の実施形態において、シース構成ケーブルは、第2シースの内腔内に及びそれを通って配置される。シース構成ケーブルは、第2シースの遠位端に、またはその近くに取り付けてもよく、その場合この結合は第2シースの遠位端に、またはその近くに配置される。構成ケーブルの近位端は自由であってもよいし、搬送装置の構成要素に結合させてもよい。一の実施形態において、構成ケーブルの近位端は、制御ユニットに取り付けられる。他の実施形態では、構成ケーブルの近位端は独立構成制御レバーに取り付けられる。第2シース120が曲がった形態に曲げられた後、搬送手順の間に、曲がった構成は、その角度の±1、±2、±3、±4度、または±5の角度に維持することができることを想定されている。これらの実施形態の例が図11-12に示される。
【0087】
トラックワイヤ180と弁把握器10の脚部材160との間の可逆的な結合の一例を図3Cに示す。人工弁の搬送及び配置の前に、トラックのワイヤ180の遠位端は、脚部材内腔50を縫って、そして約180度後方に曲げられる。トラックのワイヤ180の曲げられた部をシースから抜いて、トラックワイヤ180を伸ばし、脚部材内腔50を通して縫合を解くことができる様に、トラックワイヤシース250が近位方向に引かれるまで、トラックワイヤシース250は、曲げられたトラックワイヤ180を収容し、トラックワイヤ180と脚部材160との結合を維持する。当業者は、多くの標準的な方法および装置は、人工弁を配置して移植した後に、トラックワイヤの弁把握器から制御された開放を可能にするような方法により、可逆的にトラックワイヤを人工弁に結合するために使用することができることを理解する。
【0088】
搬送装置100は、さらに図3A及び図3Bに示すように弁搬送体を備える。図3A図3B及び図4に示すように、弁搬送体270は、人工弁の搬送の前に第1シース110内に位置する。弁搬送体270は近位ディスク部材272及び遠位ディスク部材274とそれを結合する中央ステム276を備える。図3に示すように、支持フレーム280は、支持フレーム280が第1シース110内でコンパクトな状態にあるとき、近位ディスク部材272及び遠位ディスク部材274の間に位置する。弁搬送体は、人工弁を欠陥のある弁輪に搬送する間に、支持フレームを第1シース内にコンパクトな状態で静止状態に保持する様に機能する。第1シースが弁搬送体に対して遠位方向に移動するとき、支持フレームは、弁輪内で半径方向に拡張することができ、その時、弁搬送体は配置された支持フレームの内腔を通って移動する配置とすることができ、それによって搬送装置により患者の体内から取り除かれる。
【0089】
また、図4-7に制御ユニット260を示す。制御ユニット260は、下記の搬送方法について記載するように、ユーザが搬送装置の動作および人工弁の異なる部分の動作を個々に制御できるように設計される。したがって、第1シース、第2シース、弁把握器、トラックワイヤと弁搬送体は個々に制御されており、このことは、これら各々は人工弁および搬送装置の他の部分から独立して近位または遠位方向に移動することができることを意味する。本明細書に記載されるような、搬送に関する部分を個々に制御することができる制御ユニットの設計と使用は、当業者に周知である。
搬送の方法
【0090】
搬送装置100は、血管又は心臓を通って血流の方向に、弁輪へ前進させることができる。搬送装置100を用いた搬送方法を、図4-7を参照して以下に説明する。
【0091】
一の実施形態では、トロカールが胸壁を介して挿入され、搬送装置はガイドワイヤに沿って、欠陥のある弁を通って、及びそれを過ぎて前進される。搬送前及び搬送装置が欠陥のある弁まで前進されたとき、支持フレーム170は、コンパクトな状態にあり、十分に第1シース110内に収容されている。また、上述の様に、及び図3A及び3Bに示されるように、弁搬送体は第1シース110内に収容されている。弁把握器140は、コンパクトな状態にあり、十分に第2シース120内に収容されている。図1及び2に示すように、支持フレーム110と弁把握器140は、例えば、可動に、縫合糸ループにより取り付けられている。弁把握器140のそれぞれの脚部材160は、その遠位端において可逆的にトラックワイヤ180に取り付けられており、トラックワイヤ180は次に、その近位端において制御ユニット260に取り付けられている。搬送装置100も、上に述べた様にトラックワイヤ180を収容するトラックワイヤシース(図示せず)を含む(図3Cを参照)。
【0092】
第1シース110と第2シース120がガイドカテーテル265を用いて、ガイドワイヤに沿って欠陥のある弁輪にまたはそれを超えて前進されると、U字状部材150もまた、欠陥のある弁輪に対して遠位位置にあり、第2シース120は、少なくとも弁把握器140、第1シース100と支持フレーム130とは独立に近位方向に移動される。これによりU字状部材150を露出し、図5に示すようにそれらを半径方向に拡張することを可能にする。
【0093】
このとき、第1シース110は、支持フレーム170がU字状部材150の近位端と位置あわせされるまで、第2シース120とは独立に近位方向に移動される。搬送装置100は、その後U字状部材150が各欠陥のある弁尖280と血管壁290との間の交連に接触するまで、近位方向に移動される(図6を参照)。代替的な方法においては、装置100は、U字状部材150が各欠陥のある弁尖280と血管壁290との間の交連に接触するまで、近位方向に引っ張られ、その時第1シース110は、支持フレーム170の近位端がU字状部材150の近位端に位置合わせされるまで、第2シース120に独立に近位方向に移動される。
【0094】
U字状部材150が、支持フレーム130と位置合わせされ、U字状部材150が各欠陥のある弁尖280と血管壁290との間の交連内に着座されると(図6参照)、支持フレーム130を十分に半径方向に拡張することを可能にするため、第1シース110は、少なくとも支持フレーム130、弁搬送体及び弁把握器140から独立に移動される。配置された支持フレーム130が図7に示される。弁搬送体はこの図には示されない。トラックワイヤ180はまだ弁把握器140及び制御ユニット260に結合されていることに留意願いたい。
【0095】
前述したように、例えば、制御ユニット260はトラックワイヤ180を開放するように操作される。ここで搬送装置100は、患者から装置を取り除くために、近位方向に移動させることができる。一の実施形態では、搬送装置100を取り除く前に、第2シース120は、それが第1シース110に略隣接するまで、遠位方向に独立して移動される。
III. 人工心臓弁のカテーテルベースの搬送のための外科用搬送装置
【0096】
本明細書は、損傷した心臓弁を修復するための人工弁の経皮搬送に適した無縫合人工弁搬送装置を記載する。この装置は、特に大動脈弁、肺動脈弁、僧帽弁または三尖弁を修復するために有用である。この観点から、人工弁尖が取り付けられている拡張可能な支持フレームは、搬送のため柔軟性を持つ管に収容されており、この柔軟性のため、装置が欠陥のある心臓弁に比較的近いアクセスポイントから心臓弁につながる血管を容易に移動することができ、その一方血管壁への損傷を最小又は皆無に抑えることができる。
【0097】
この装置は、切開が心臓に近い血管で行われる外科的手順に特に有用であることが想定される。そのような大動脈、頸動脈、鎖骨下動脈、腕頭動脈、上大静脈、肺動脈および静脈のようなこれらの血管は、例えば、人工弁の経皮搬送に最も利用される経路である大腿動脈の直径よりも大きい、比較的大きな直径を有している。従って、この装置は、例えば、搬送装置がそこを通って前進される血管の内壁への損傷を低減することにより無縫合人工弁の搬送及び移植において、種々の改善を提供する。
【0098】
人工心臓弁の逆行性搬送用の搬送装置を備えた移植装置が以下に記載される。移植装置は搬送装置および人工弁を含む。搬送装置は、血管またはチャンバ壁を通過するために外側シースを備える。シースは、ポリマー材料又はポリマーと金属材料で構成されてもよい(例えば、追加の強度、耐捩れ性等を提供するために編組されまたはコイル状である)。搬送シースは、人工弁の弁把握器及び弁フレームを開放するように後退させることができる。
【0099】
欠陥のある弁の搬送中及び支持フレームの配置後の本装置の構成が図8-10に示される。搬送装置400は、上記のように、第1シース410と、第2シース420と、人工弁を備え、第1シース410は第2シース420の遠位に位置し、第2シース420は制御ユニット(図8-10には示さず)の遠位に位置し、人工弁尖を備える支持フレームが弁把握器に移動可能に結合される。搬送装置の遠位先端は、自然の解剖学的構造において、より整列された配置とするために角度を持っていても良い。角度は、約1度から45度、又は5度から30度までとすることができる。
【0100】
図10は、縫合糸ループ350を示す。上述したように、支持フレームに対して移動可能な取り付けを提供するために、弁把握器の各脚部材のための縫合糸ループが存在する。搬送の前は、支持フレーム430および弁把握器440(U状部材450を含む)の近位部分の両方が、第2シース420内でコンパクトな状態にある。搬送装置400は、さらに、第1シース(ノーズコーン)内に配置されているロック部材480を含む。弁把握器脚部材460のそれぞれの遠位端のそれぞれは、ロック部材480と第1シース410の内面の間の第1シース410内配置される。ロック部材480はニチノールなどの形状記憶材料から製作することができるので、第1シース410に把握器脚部材460の近位端を固定するために必要な半径方向の力を提供する。支持フレーム430は、支持フレーム430の配置前に、弁把握器440と必要に応じて位置合わせされるので、搬送装置400は、さらに、支持フレーム430の位置を第2シース420内にコンパクトな位置に維持するための反力として機能することができる安定部材490を備えることができる。
【0101】
第2シース420は、第2シース420に人工弁を心臓弁に搬送するために適切な柔軟性と強度を備えることを可能とする材料であると共に、他方、搬送装置が移動する血管に損傷を与えない又は損傷を最小にする材料から構成される。一の実施形態では、第2シース420は、編組であるか又は十分な柔軟性を提供できる様な方法で構成されるか、又は当業者に公知の他の方法を用いて製造するようにすることができるプラスチック、またはポリマーと金属ワイヤを含むことができるが、これについては上でさらに詳細に説明した。他の実施形態では、第2シース420は、米国出願公報、第2010/0274088で説明したように製作される。この出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
第2シースの柔軟性を示す例を図11-12に示す。図11及び12は、第1シース510、第2シース520及び制御ユニット530を有する移植装置500の一の実施形態を示す。図11は、第1の曲げられた立体構造において520aとして示され、及び第2の曲げられた立体構造において520bとして示される、第2シース520の2つの立体構造を示している。一の実施形態では、第2シース520の曲がりは、第2シース520に取り付けられたシース構造ケーブルの近位端に取り付けられた曲げる立体構造要素540を介して制御される。これは、第2シース520の内腔に位置するシース構造ケーブル550を示す図12においてさらに示される。シース構成ケーブル550の遠位端は、第2シース520の遠位端において、またはその近くにおいて、第2シース520の内面に取り付けられる。シース構成ケーブル550の近位端部は自由であるか、又はシース構成ケーブル550の制御を可能にする制御ユニット530の可動要素に取り付けられても良い。例えば、曲げる立体構造540及び/又はシース構造ケーブル550を引っ張ることにより、第2シース520が曲がる。移植装置の他の実施形態は図13に示される。図13は、移植装置700の典型的な実施形態を示しており、そこでは患者に移植装置を挿入する前に、上述の人工弁と弁把握器が、十分にまたは部分的に第1シース内に収容される。図13に示すように、人工弁710と弁把握器は720a、720b、及び720cは、十分に第1シース720内に収容される。本実施形態では、弁把握器720abc のU字状部材は人工弁710の遠位に位置する。U字状部材は第1シースにより十分にまたは部分的に覆われる。いくつかの実施形態では、人工弁は十分に第1シースにより収容される。図13は、ここで制御ユニット750として示される制御ユニットの一実施形態を示す。この実施形態では、制御ユニット750はバネ制御要素(バネ制御要素740として示される)、シース制御要素(シース制御要素780として示される)、解除ノブ(解除ノブ770として示される)、及びハンドル760(ハンドル760として示される)を備える。移植装置はまた、ノーズコーンと呼ぶことができる第2シースを備える。第2シースの直径は、第2シース(ノーズコーンの形状の第2シースを提供する)の中央部分に比べて、第2シースの遠位端に向かって減少する。第2シースの直径はまた、第2シースの中央部分に比べて、第2シースの遠位端に向かって減少しても良く、それによって、人工弁の搬送前、搬送中及び搬送後に第2シースの近位端を第1シースによって収容させ又は覆うことができる。第2シースの近位端のこの特徴は部分的には有利であり、その理由はこの特徴により、人工弁の搬送中及び/又は患者から移植装置の回収中に、ノーズコーンの近位端によって血管壁又は周囲の組織に起きる損傷を減少させ、またはを防止するからである。第2シースの特定の実施形態が第2シース730として図13に示されている。第2シースは、中心管腔を有する中身のある(非中空)ものであってもよく、または中空であっても良い。第2シースは、その近位端および遠位端に孔または開口部を持つであろう。第2シースシャフトは第2シースに取り付けることができる。第2シースシャフトは第2シースの一部として製作することができ、又は第2シースシャフトの遠位端は第2シースの中央部分に取り付けることができる。第2シースシャフトの実施形態が、第2シースシャフト730として図13に示される。
【0103】
図13に示し、そして上述した様に、移植装置はさらに一以上のトラックワイヤを含む。一以上のトラックワイヤの各々の遠位端は支持フレームの各々に取り付けられる。一の実施形態では、一以上のトラックワイヤの各々の遠位端は支持フレームの近位端取り付けられる。複数のトラックワイヤの実施形態が725a、725b、および725cとして図13に示される。
【0104】
一の実施形態では、移植装置はさらに、バネが第2シースの近位端及び制御ユニット内の第1シース制御要素に取り付けされるバネを備えたバネ機構を備える。第1シース制御要素が、第1シースの遠位と近位の動きを制御するために使用され、その場合、第1シースは人工弁を収容し、そして弁把握器を十分にまたは部分的に収容することができる。移植前に、バネは、部分的または十分に圧縮された状態にある。移植装置の遠位端が欠陥のある弁輪に向けて回送され、移植装置の遠位端が、いったん欠陥のある弁輪の近くにあり、その中にあり又はそれを通過した場合には、第1シース制御要素が操作され(例えば、回転され及び/又は左右、上下に移動される)、把握器を部分的または十分に露出する方向に第1シースを移動させる。第1シース制御要素が操作されると、第2シースシャフトを介してバネに結合された第2シースの近位端は、第1シースの遠位端の近くに留まり、第2シースの近位端は、第1シースの遠位端から約2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、1cm、1.5cm内に留まる。いくつかの実施形態では、第2シースの比較的狭い近位端は、第1シースの遠位端の管腔内にあってもよい。ハードストップ(hard stop)部分に当たるまで第1シース制御要素が操作され、第2シースの近位端は最早第1シースの遠位端の近くに維持されない(第2シースの近位端は、第1シースの遠位端から約2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、1cm、1.5cm以上離れた距離に維持されることはない)。ハードストップ部分に当たるのは、バネと第2シースに関してのみである。このハードストップ部分に当たる場合、弁把握器のU字状部材は、少なくとも部分的又は十分に第1シースから露出している。第1シースは、まだ第1シース制御要素の操作により遠位および近位方向の両方に移動可能である。
【0105】
ハードストップ部分に当ったら、第1シース制御要素は、第1シースを近位方向に移動するためにさらに操作することができる。したがって、弁把握器の少なくともU字状部材がもはや第1シースで覆われておらず、半径方向に拡張した後は、それぞれの弁把握器が欠陥のある弁輪内に適正に配置されるまで、移植装置は、上述のように、欠陥のある弁輪の方向に向けて移動される。弁把握器が適正に欠陥のある弁輪内に配置されると、上記の様に、人工弁の支持フレームを覆いから出して自然の弁輪内に人工弁を配置するために、第1シース制御要素は第1シースを近位方向に移動させるように操作される。この場合、自然の弁尖は拡張された支持フレームと弁把握器の間に圧縮される。
【0106】
バネ機構を備えるこの移植装置の特定の実施形態が図13に示される。第2シース730は、移植装置700の遠位端にある。この実施形態では、第2シース730は、第2シース730の遠位端と近位端の直径が第2シースの中間の直径よりも小さくなるような形状を持つ。さらに、第2シース730の近位端は、少なくとも部分的に第1シース720によって収容される。第1シース720は、人工弁710及び複数の弁把握器720a、b、cを十分収容する。各弁把握器720a、b、cは、縫合糸、織物、または可撓性部材によって人工弁710の支持フレームに結合されている。各リリースケーブル725a、b、cの近位端は、制御ユニット750の一部であるリリース制御要素770に直接又は間接的に取り付けられる。制御ユニット750は、当業者により理解される様に様々な方法で構成することができ、図13は、特定の構成に限定することを意図するものではない。制御ユニット750は、人工弁搬送装置の部分を独立にまたは協調して操作するための制御要素を有する移植装置の制御ユニットの一例を提供するが、搬送装置は第1及び第2シース、人工弁、トラックワイヤ及びバネが存在する場合はバネを含むがこれらに限定されるものではない。図13は、また制御ユニット750が第2シース自動制御要素745を含む実施形態を示す。自動制御要素745は、バネがその遠位端で第2シースシャフト730に、及びその近位端で自動制御要素745に取り付けられている、前記スプリング740の少なくとも一部を収容する。図13に示す第1シースの制御要素780は、第1シース720の近位および遠位の移動を制御するように操作することができ、上述のように、バネ740の部分的な伸張をもたらし、それは次に、上述のように、第2シース730が第1シース720の遠位端の近くに留まることを可能にする。図13に示す実施形態では、第1シース制御要素780の回転はハードストップをもたらし、この場合、バネ740は、もはや伸張せず、そして人工弁710を露出するために第1シース720を近位方向に移動させるために第1シース制御要素780をさらに回転させることによって、第1シース720は第2シース730とは独立に移動することになるであろう。人工弁710が十分に露出され、そして配置されると、リリースノブ770は、トラックワイヤ790a、b、cを弁把握器720a、b、cから開放する様に操作することができ、第1シース制御要素780は、第2シース730の近位端を第1シース720の遠位端の近接範囲に持って来るために逆方向に回転させることができる。移植装置700は、その後、患者の血管壁または組織に、全くまたは殆ど損傷を与えることなく、患者から取り除くことができる。
搬送のための方法
【0107】
搬送装置400は、人工弁を逆行で搬送する、すなわち、欠陥のある弁を通る血液の流れと反対方向に搬送することを可能にするように設計される。搬送装置400および上述の移動可能に取り付けられた人工弁を備えた移植装置を用いて搬送するための方法を、図8-10を参照して説明する。第1シース410が略欠陥のある弁輪内にあり、第2シース420が自然の弁尖370に近接するまで、搬送装置の遠位端は、ガイドカテーテル390を使用して部分的にガイドワイヤに沿って前進される。第2シース420は、その後、近位方向に移動され、他方、弁把握器440は長手方向軸に沿って静止状態で維持される。弁把握器440のU字状部材450は露出され、U字状部材450は半径方向に拡張する。
【0108】
このとき、第2シース420は遠位方向に移動し、一方弁把握器440は長手方向軸に沿って静止状態で維持される。第2シース420のこの動きは、支持フレーム430を弁把握器440と位置合せする様に機能し、それによって支持フレーム440及びそれに関連する人工弁を弁輪内において適切に位置合わせする。重要なことは、支持フレーム430は弁把握器440と同心になるために弁把握器440に対してその長手方向軸に沿って移動することである。この運きは、人工弁に可動に結合された側面によって部分的に可能であり、そして、この特定の例では、次に縫合糸ループ350によって提供される。支持フレーム430が遠位方向に移動するにつれて、縫合糸ループ350は、上述のように弁把握器440の脚部材に沿ってスライドする。その後搬送装置400は、U字状部材450が各欠陥のある弁尖370と血管壁360との間の交連に接触するまで、遠位方向に移動する。
【0109】
他の方法では、U字状部材450が露出され、半径方向に拡張された後に、U字状部材450が各欠陥のある弁尖370と血管壁360の間の交連に接触するまで、装置400は遠位方向に前進され、その時点で第1シース420は、支持フレーム430の遠位端がU字状部材450と位置合わせされ、それにより支持フレーム430が適切に自然の弁輪に位置合せされるまで、第1シース410とは独立に遠位方向に移動される。
【0110】
第2シース420を遠位方向に前進させ、その場合、弁把握器440を静止状態に保持されることにより、第1シースからロック部材480を開放することになる。その結果、弁把握器440の脚部材は、もはや第1シース410内にロックされず、それによって、後の、支持フレーム430の半径方向の拡張を許容することができる。
【0111】
U字状部材450が適切に支持フレーム430と位置合せされ、U字状部材が各欠陥のある弁尖370と血管壁360との間の交連内に着座されると(図9参照)、第1シース420は、支持フレーム430の半径方向への十分な拡張を可能にする様に、少なくとも支持フレーム430及び弁把握器440から独立に、長手方向軸に沿って近位方向に移動する。配置された、支持フレーム430は図10に示す。支持フレーム430が十分に配置されると、自然の弁尖370をU字状部材450と支持フレーム430の間に挟み、それによって自然の心臓弁輪内の適切かつ機能的な位置に人工弁を固定する。この時点で、搬送装置400は、患者から取り除かれる。
【0112】
ここで説明する移植装置は、制御ユニットを備える(図8-10には図示されない)。制御ユニットは、当業者に一般に利用可能な方法に従って設計および製造され、少なくとも第1シース、第2シース、弁把握器、支持フレーム、ロック部材、及び安定化部材を独立して制御する様に機能する。
【0113】
多くの例示的な態様および実施形態について、上で説明してきたが、当業者は、その改変、置換、追加およびサブコンビネーションを認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲の内容及び今後導入される特許請求の範囲の内容は、それらの真の精神および範囲内にあるような全てのそのような変更、置換、追加およびサブコンビネーションを含むと解釈されることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13