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<図1>
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図1
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図2
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図3
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図4
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図5
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図6
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図7
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図8
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図9
  • 特許-枢支装置及びそれを使用した物干し器 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】枢支装置及びそれを使用した物干し器
(51)【国際特許分類】
   D06F 57/08 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
D06F57/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017076011
(22)【出願日】2017-04-06
(65)【公開番号】P2018175109
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000114617
【氏名又は名称】モリ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100121474
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】西川 文夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 あかね
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-122105(JP,A)
【文献】中国実用新案第203907162(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0299663(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0002159(US,A1)
【文献】米国特許第04317552(US,A)
【文献】特開平08-112493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 57/00-57/08
F16M 11/00-11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成された本体部(1a)と基端部(1b)とを有する第1の部材(1)を第2の部材(2)に対して第1の位置(X)と第2の位置(Y)との間で揺動切り換え可能に枢支した枢支装置であって、
前記第1の部材(1)には、互いに間隔をあけて配置された第1の壁(11)と第2の壁(12)とが設けられており、前記第2の部材(2)には、第1の溝(21)と、第2の溝(22)と、当該第1及び第2の溝(21)・(22)の間に形成された弾性変形可能な移動阻止部(23)とが設けられており、
前記第1の壁(11)は前記円筒状の本体部(1a)の軸線方向と交差するように傾斜して形成されているのに対して、前記第2の壁(12)は当該軸線方向と平行になるように形成されており、前記第1及び第2の溝(21)・(22)は互いに平行となるように形成されており、
前記第1の部材(1)が前記第1の位置(X)にあるときは、前記第1の壁(11)が前記第1の溝(21)に嵌合するようになっており、
前記第1の部材(1)が前記第2の位置(Y)にあるときは、前記第2の壁(12)が前記第2の溝(22)に嵌合するようになっており、
前記第1の部材(1)が前記第1の位置(X)から前記第2の位置(Y)に揺動して切り換えられるときには、前記第1の壁(11)が前記移動阻止部(23)を弾性変形させて前記第1の溝(21)から抜け出すとともに、前記第2の壁(12)が前記第2の溝(22)に嵌合するようになっており、
前記第1の部材(1)が前記第2の位置(Y)から前記第1の位置(X)に揺動して切り換えられるときには、前記第2の壁(12)が前記移動阻止部(23)を弾性変形させて前記第2の溝(22)から抜け出すとともに、前記第1の壁(11)が前記第1の溝(21)に嵌合するようになっている、
ことを特徴とする枢支装置。
【請求項2】
請求項1に記載の枢支装置において、
前記第1の部材(1)の基端部(1b)の外面に前記第1及び第2の壁(11)・(12)が設けられており、
前記第2の部材(2)は、前記基端部(1b)を収容する凹状の収容部(2a)を備えており、当該収容部(2a)の内部に前記第1及び第2の溝(21)・(22)並びに前記移動阻止部(23)が設けられている、ことを特徴とする枢支装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の枢支装置を使用した物干し器であって、
前記第1の部材(1)を当該物干し器の一部を構成するパイプ状部材(51a)・(51b)の一端に取り付けることにより、当該パイプ状部材(51a)・(51b)を前記第1の位置(X)と前記第2の位置(Y)との間で揺動切換え可能に構成した、ことを特徴とする物干し器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある部材を他の部材に対して2つの位置の間で揺動切り換え可能に枢支する枢支装置及びそれを使用した布団や洗濯物等の物干し器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の布団干し器等の物干し器として特許文献1及び2に示すものが知られている。特許文献1及び2に示す従来技術は、いずれも2つのコの字状の干し枠を備えており、これら2つのコの字状の干し枠をX字状に交差させて両者の交点を軸着することにより構成されていた。これにより、2つの干し枠をX字状に展開した展開状態(開状態)とそれを畳んだ収納状態(閉状態)とに開閉自在にすることができ、不使用時に嵩張らない、持ち運びに便利である等の利点があった。かかる従来の物干し器において、両干し枠の交点より下方の部位は脚部として機能し、当該交点より上方の部位は物を干し掛ける干し掛け部として機能するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-137183号公報
【文献】特開2016-007455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の物干し器は、単に2つのコの字状の干し枠をX字状に交差させて軸着するという単純な構成であったため、脚部と干し掛け部とは一体に動作し、脚部が開状態にあるときは干し掛け部も開状態となり、脚部が閉状態にあるときは干し掛け部も閉状態となるほかなかく、この結果、脚部を開状態にして干し掛け部のみを閉状態にする等、種々の展開状態をとることは不可能であった。また、干し掛け部同士の動作についても、物干し器自体を安定して立たせるためには、一体に開閉するほかなく、この結果、一方の干し掛け部のみを開状態にし、他方の干し掛け部は閉状態にする等の状態で使用することは不可能であった。
【0005】
もっとも、コの字状の干し枠をX字状に交差させて軸着するのではなく、各脚部及び各干し掛け部を別体に構成し、各脚部及び各干し掛け部を別々に枢支してそれぞれを単独で揺動自在に構成するということも考えられる。しかしながら、単に各部を枢支しただけでは各脚部及び各干し掛け部が自由に揺動し得ることになり、外力が少し作用しただけで脚部が閉じて転倒してしまったり、干し掛け部が不用意に開いて周囲の物にぶつかったりして、それぞれの位置で安定的に保持することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、ある部材を他の部材に対して2つの位置の間で揺動切り換え可能に枢支するとともに、各位置においてその状態を安定的に保持することができる枢支装置及びそれを使用した物干し器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下のように構成したことを特徴とする。
すなわち、本発明は、
第1の部材(1)を第2の部材(2)に対して第1の位置(X)と第2の位置(Y)との間で揺動切り換え可能に枢支した枢支装置であって、
前記第1の部材(1)又は第2の部材(2)のうちの一方には、互いに間隔をあけて配置された第1の壁(11)と第2の壁(12)とが設けられており、前記第1の部材(1)又は第2の部材(2)のうちの他方には、第1の溝(21)と、第2の溝(22)と、当該第1及び第2の溝(21)・(22)の間に形成された弾性変形可能な移動阻止部(23)とが設けられており、
前記第1の部材(1)が前記第1の位置(X)にあるときは、前記第1の壁(11)が前記第1の溝(21)に嵌合するようになっており、
前記第1の部材(1)が前記第2の位置(Y)にあるときは、前記第2の壁(12)が前記第2の溝(22)に嵌合するようになっており、
前記第1の部材(1)が前記第1の位置(X)から前記第2の位置(Y)に揺動して切り換えられるときには、前記第1の壁(11)が前記移動阻止部(23)を弾性変形させて前記第1の溝(21)から抜け出すとともに、前記第2の壁(12)が前記第2の溝(22)に嵌合するようになっており、
前記第1の部材(1)が前記第2の位置(Y)から前記第1の位置(X)に揺動して切り換えられるときには、前記第2の壁(12)が前記移動阻止部(23)を弾性変形させて前記第2の溝(22)から抜け出すとともに、前記第1の壁(11)が前記第1の溝(21)に嵌合するようになっている、
ことを特徴とする枢支装置である。
【0008】
本発明は、上記のように構成したので、第1の部材(1)を第2の部材(2)に対して第1の位置(X)と第2の位置(Y)との間で揺動させて切り換えることができるだけでなく、その切り換えには移動阻止部(23)を弾性変形させる必要があるので、それに必要な外力を作用させない限り、各部材(1)・(2)はその位置にとどまることになる。このため、各部材(1)・(2)を各位置(X)・(Y)で安定的に保持することができる。
【0009】
本発明の好適な実施態様の一つとして、前記第1の部材(1)を筒状の部材に構成し、当該筒状部材の先端部の外面に前記第1及び第2の壁(11)・(12)を設ける一方、前記第2の部材(2)には、前記筒状部材の先端部を収容する凹状の収容部(2a)が設けられており、当該収容部(2a)の内部に前記第1及び第2の溝(21)・(22)並びに前記移動阻止部(23)が設けられているようにすることができる。
【0010】
また、本発明の好適な実施態様の一つとして、上記枢支装置を物干し器に使用することができる。その一例として、前記第1の部材(1)を物干し器の一部を構成するパイプ状部材(51a)・(51b)の一端に取り付けることにより、当該パイプ状部材(51a)・(51b)を前記第1の位置(X)と前記第2の位置(Y)との間で揺動切換え可能に構成することができる。
【0011】
これにより、物干し器の脚部や干し掛け部を個別に揺動させることができるようになるため、様々な展開状態で使用することができ利便性が向上するとともに、各部を開状態及び閉状態において安定的に保持することができるため、各部が不用意に揺動することを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、2つの部材を単に揺動自在に枢支するだけでなく、各部材を2つの位置の間で安定的に保持することができるので、極めて利便性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る枢支装置Pの正面図(揺動部材1が開位置Xにある状態)。
図2】本発明の実施形態に係る枢支装置Pの正面図(揺動部材1が閉位置Yにある状態)。
図3】同枢支装置Pの断面図(揺動部材1が開位置Xにある状態)。
図4】同枢支装置Pの断面図(揺動部材1が閉位置Yにある状態)。
図5図5(A)は揺動部材1の左側面図、図5(B)は揺動部材1の正面図。
図6】支持部材2の斜め上方からみた斜視図。
図7】支持部材2を上方からみた平面図。
図8】本発明の実施形態に係る物干し器50の正面図。
図9】同物干し器の左側面図(揺動部材1が開位置Xにある状態)。
図10】同物干し器の左側面図(揺動部材1が閉位置Yにある状態)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1図7は、本発明の実施形態に係る枢支装置Pを示しており、図8~10は、それを物干し器に適用した一例を示す(なお、図1は、図9における枢支装置P付近の要部拡大図をも兼ねており、また、図2は、図10における枢支装置P付近の要部拡大図をも兼ねている)。
【0015】
図1~4に示すとおり、本実施形態の枢支装置Pは、揺動部材1と支持部材2とを備える。揺動部材1と支持部材2とはいずれも合成樹脂で形成されている。本実施形態では、揺動部材1は4つ設けられているが、ほぼ同様の構成を有するため、以下ではそのうちの一つ(図1~4において左上のもの)について説明する。なお、本実施形態では、揺動部材1が「第1の部材」に対応し、支持部材2が「第2の部材」に対応する。また、揺動部材1(第1の部材)が図1及び3に示す状態にある場合を「開位置X」といい、揺動部材1(第1の部材)が図2及び4に示す状態にある場合を「閉位置Y」という(この結果、例えば開位置Xが「第1の位置」に相当し、閉位置Yが「第2の位置」に相当することになる)。
【0016】
揺動部材1は、図5に示すとおり、円筒状に形成された本体部1aと基端部1bとを有する。基端部1bは、先窄まりの流線形に形成されており、その先端部の両側には、第1の壁11と第2の壁12とが形成されている。第1の壁11は、本体部1aの軸線方向(本体部1aの軸線を延長した方向)と交差するように傾斜して形成されており、第2の壁12は、当該軸線方向とほぼ平行になるように形成されている。揺動部材1の基端部1b寄りの位置には、枢支軸3が挿通される軸孔1cが形成されている。さらに、第1の壁11の一側面には支持面11aが形成されており、後述するように、揺動部材1が開位置Xにあるときに、当該支持面11aが第1の溝21の対向する側面に当接することにより、開位置Xにある揺動部材1を面で支持するようになっている。この支持面11aも第1の壁11と同様、本体部1aの軸線方向と交差する傾斜面となっている。
【0017】
支持部材2は、図1~4に示すとおり、揺動部材1の数に対応して4つの凹状の受部2a(「収容部」に対応)を有する。これら4つの受部2aの構成はほぼ同様であるため、以下では、そのうちの一つ(図1~4において左上のもの)について説明する。
【0018】
受部2aは、図6及び7に示すとおり、その内側の両側部に、第1の溝21と、第2の溝22と、これら第1及び第2の溝21・22の間に形成された移動阻止部23と、枢支軸3が挿通される軸孔2cとを有する。このうち、第1の溝21は、受部2aの内部を区画する一隔壁を第1のストッパー壁24として、この第1のストッパー壁24と移動阻止部23との間の溝部として構成されている。また、第2の溝22は、受部2aの内部において互いに対向する壁面から受部2aの内方に向けて延びるように形成された第2のストッパー壁25と移動阻止部23との間の溝部として構成されている。
【0019】
移動阻止部23は、揺動部材1を揺動させたときに第1及び第2の壁11・12の押圧を受けてその上部が受部2aの内壁側に弾性変形(撓み変形)し易いように、受部2aの底壁から立設されるとともに、その上部が基部よりも薄肉に形成されている。また、移動阻止部23は、第1のストッパー壁24側に、第1の溝21内に嵌合された第1の壁11が揺動動作時に弾性変形(受部2aの内壁側に撓み変形)させて乗り越え可能な第1の山部23aを有するとともに、第2のストッパー壁25側に、第2の溝22内に嵌合された第2の壁12が揺動動作時に弾性変形(受部2aの内壁側に撓み変形)させて乗り越え可能な第2の山部23bを有する。
【0020】
本実施形態では、第1及び第2の山部23a・23bにはアールが付けられており、これにより所定の力以上の力を加えて揺動動作させたときに第1及び第2の壁11・12を案内しやすくしている。換言すれば、かかる構成は、所定の力以上の力を加えて揺動部材1を揺動動作させたときに第1及び第2の壁11・12を案内する案内部ないし案内面として機能するものである。但し、かかる構成は必須ではなく、また、案内部ないし案内面を設けるにしても、アール形状に限らず、角を面取りした面取り部その他の形状であってもよい。
【0021】
さらに、移動阻止部23には、第1及び第2の山部23a・23bの間に凹入部23cが形成されている。この凹入部23cは、後述するように、揺動部材1(第1の部材)が開位置X(第1の位置)にあるときに第2の壁12が位置するようになっているとともに、揺動部材1(第1の部材)が閉位置Y(第2の位置)にあるときに第1の壁11が位置するようになっているものである。つまり、揺動部材1(第1の部材)が開位置X(第1の位置)にあるときは、第1の壁11は第1の溝21内に嵌合するようになっているが、このとき、第2の壁12が位置するのが凹入部23cということである。また、揺動部材1(第1の部材)が閉位置Y(第2の位置)にあるときは、第2の壁12は第2の溝22内に嵌合するようになっているが、このとき、第1の壁11が位置するのが凹入部23cということである。
【0022】
このように、揺動部材1を一方の位置から他方の位置に揺動させて切り換える場合に、第1又は第2の溝21・22から抜け出た第1又は第2の壁11・12は凹入部23c内に退避することになる。また、凹入部23cに位置していた第1又は第2の壁11・12は、当該凹入部23cから第1又は第2の山部23a・23bを乗り越えて第1又は第2の溝21・22に嵌合することになる。これにより、揺動部材1が開位置X又は閉位置Yに到達したときに、第1又は第2の壁11・12が第1又は第2の溝21・22内に嵌合することを手応えとして感じることができるようになっている。
【0023】
受部2aに設けられた軸孔2cには、揺動部材1を枢支する枢支軸3が挿通されるようになっており、この枢支軸3を揺動部材1の軸孔1c及び受部2aの軸孔2cに挿通させて両者を組み付けることにより、揺動部材1は受部2aに対して開位置Xと閉位置Yとの間で揺動自在に枢支されることになる。
【0024】
以上のように構成された本実施形態に係る枢支装置Pは、以下のように動作する。
まず、揺動部材1が開位置Xにあるときには、図3に示すように、第1の壁11は第1の溝21内に嵌合し、第2の壁12は凹入部23c内に位置する。この場合、第1の壁11が第1の溝21から抜け出るためには移動阻止部23の第1の山部23aを弾性変形させる必要があるため、それに要する外力が作用するまでは第1の壁11は第1の溝21内に(したがって揺動部材1は開位置Xに)とどまることになる。これにより、揺動部材1を開位置Xに安定的に保持することができる。
【0025】
次に、揺動部材1を開位置Xから閉位置Yに揺動させて切り換えるときには、図4に示すとおり、第1の壁11が移動阻止部23の第1の山部23aを弾性変形させて第1の溝21から抜け出て凹入部23c内に移動するとともに、凹入部23c内に位置していた第2の壁12が第2の溝22内に嵌合する。この状態において、第2の壁12が第2の溝22から抜け出るためには移動阻止部23の第2の山部23bを弾性変形させる必要があるため、それに要する外力が作用するまでは第2の壁12は第2の溝22内に(したがって揺動部材1は閉位置Yに)とどまることになる。これにより、揺動部材1を閉位置Yに安定的に保持することができる。
【0026】
さらに、揺動部材1を閉位置Yから開位置Xに揺動させて切り換えるときには、上記とは逆に、第2の壁12が移動阻止部23の第2の山部23bを弾性変形させて第2の溝22から抜け出て凹入部23c内に移動するとともに、凹入部23c内に位置していた第1の壁11が第1の溝21内に嵌合することになる。
【0027】
以上のとおり、本実施形態に係る枢支装置Pによれば、揺動部材1を開位置Xと閉位置Yとの間で揺動させて切り換えることができるとともに、各位置X・Yにおいて揺動部材1を安定的に保持することができるため、各位置X・Yにある揺動部材1が不用意に揺動して切り換えられることを防止することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る枢支装置Pによれば、移動阻止部23に第1及び第2の山部23a・23b並びに凹入部23cが設けられているため、凹入部23cに位置していた第1又は第2の壁11・12は当該凹入部23cから第1又は第2の山部23a・23bを乗り越えて上記いずれかの溝21・22に嵌合することになる。これにより、使用者は、揺動部材1が開位置X又は閉位置Yに到達したことを手応えとして実感することができるので、望む位置に揺動部材1が到達したことを容易に認識することができる。
【0029】
図8~10は、上記のように構成された枢支装置Pを物干し器の枢支部に適用した例を示している。以下、本発明の実施形態に係る物干し器について説明する。
【0030】
本実施形態に係る物干し器50は、図8~10に示すとおり、その全体的形状が前後及び左右に対称に構成されており、複数の金属製の円筒状のパイプ状部材51a~51gと、これらパイプ状部材を連結する合成樹脂製のジョイント部材52a・52bと、前記の枢支装置Pとを有する。
【0031】
このうち、パイプ状部材51aは、前述した揺動部材1を介して枢支装置Pの下側の受部2aに枢支されることにより、開閉自在な脚部として機能するようになっている。また、2本のパイプ状部材51bと、その上端の間にほぼ水平に差し渡された1本のパイプ状部材51cとがジョイント部材52aによって連結されることにより全体としてコの字状の第1の干し枠61及び第2の干し枠62が構成されており、各パイプ状部材51bの下端が揺動部材1を介して枢支装置Pの上側の受部2aに枢支されることにより、各パイプ状部材51bは、開閉自在に構成された第1及び第2の干し枠61・62の腕部として機能するようになっている。他方、ほぼ水平に差し渡されたパイプ状部材51cは、布団や洗濯物等を干し掛ける第1及び第2の干し掛け部として機能するようになっている。パイプ状部材51dは、左右の枢支装置Pを連結する連結部であり、これにより物干し器50の左右両側を固定している。
【0032】
本実施形態の物干し器50は、さらに、第3の干し枠63を有する。第3の干し枠63は、枢支装置Pの上部にほぼ鉛直方向に立設された立設部51eと、両立設部51eの間に差し渡された第3の干し掛け部51fと、これら立設部51eと第3の干し掛け部51fとを連結するジョイント部材52bと、2つの補助棒51gとを備えている。両立設部51e、第3の干し掛け部51f及び補助棒51gは、いずれも金属製のパイプ状部材によって構成されている。
【0033】
立設部51eを構成するパイプ状部材は、枢支装置Pの内部を上下方向に挿通しており、枢支装置Pの挿入口部2bに螺合されたジョイント用ネジキャップ53を緩めることにより枢支装置Pの内部を自由に摺動させることができる一方、同ネジキャップ53の螺合を締めることにより任意の位置で固定することができるようになっている。これにより、第3の干し枠63の高さ位置を適宜調整することができる。
【0034】
2つの補助棒51gは、それぞれ、ジョイント部材52bの内部を通ってさらに第3の干し掛け部51fの内部に挿通されており、第3の干し掛け部51fとは反対側に伸縮自在に構成されている。2つの補助棒51gは、例えば布団のような大きな物を干し掛けるときに、それを伸張させて使用し、不要なときは収納させて全体をコンパクトにすることができる。
【0035】
本実施形態に係る物干し器50は、以上のように構成されているので、各脚部51a並びに第1及び第2の干し枠61・62を独立して自由に揺動させることができる。このため、周囲のスペースや掛物の種類・大きさに応じて第1及び第2の干し枠61・62をいずれも開状態(開位置X)にして使用してもよいし、いずれか一方のみを開状態(開位置X)にし、他方は閉状態(閉位置Y)にして使用してもよい。
【0036】
また、本実施形態に係る物干し器50では、第1及び第2の干し枠61・62を個別に揺動させることができるだけでなく、各位置X・Yにおいて各脚部51a並びに第1及び第2の干し枠61・62を安定的に保持することができるため、脚部が意図せず閉じて転倒してしまったり、干し掛け部が不用意に開いて周囲の物にぶつかったりすることを防止することができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係る物干し器50は、第3の干し掛け部63及び補助棒51gを有しているので、様々な展開状態で使用することができ、極めて利便性が高い。
【0038】
以上、本発明の実施形態に係る枢支装置及びそれを適用した物干し器について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0039】
上記実施形態に係る枢支装置では、揺動部材1を第1の部材として当該第1の部材に第1及び第2の壁11・12を設けるとともに、支持部材2を第2の部材として当該第2の部材に第1及び第2の溝21・22並びに移動阻止部23を設けたが、第1及び第2の壁を設けるのは第1の部材に限定されず、また、第1及び第2の溝並びに移動阻止部を設けるのも第2の部材に限定されない。上記とは逆に、第2の部材に第1及び第2の壁を設け、第1の部材に第1及び第2の溝並びに移動阻止部を設けてもよい。
【0040】
上記実施形態に係る枢支装置では、支持部材2に4つの受部2aを設けたが、受部2aの個数は4つに限定されない。必要に応じて適宜の個数にすることができる。同様に揺動部材1の個数も限定されない。
【0041】
上記実施形態に係る枢支装置では、揺動部材1(第1の部材)に支持面11aを形成したが、支持面11aは必須ではない。
【0042】
上記実施形態に係る枢支装置では、揺動部材1(第1の部材)の両側部に第1及び第2の壁11・12を設けたが、必ずしも両側部に設ける必要はなく、一方の側にのみ設けてもよい。同様に、上記実施形態に係る枢支装置では、受部2a内部の対向する側壁に第1及び第2の溝21・22並びに移動阻止部23を設けたが、必ずしも両側壁に設ける必要はなく、一方の側壁にのみ設けてもよい。
【0043】
上記実施形態に係る枢支装置では、移動阻止部23に第1及び第2の山部23a・23b並びに凹入部23cを設けが、移動阻止部の構成はかかる構成に限定されず、それ以外の構成であってもよい。
【0044】
上記実施形態に係る物干し器では、第1及び第2の干し枠61・62を設けたが、必ずしもその両方を設ける必要はなく、いずれか一方のみを設けてもよい。
【0045】
上記実施形態に係る物干し器では、伸縮自在な第3の干し枠63を設けたが、第3の干し枠63は必須ではなく、それを省略してもよい。
【0046】
上記実施形態に係る物干し器では、パイプ状部材として全体が直線状のものを示したが、必ずしも全体が直線状である必要はなく、コの字状又はくの字状に折り曲げ形成されたものであってもよい。
【0047】
上記実施形態に係る物干し器では、X字状に展開される物干し器の枢支部について本発明を適用したものを示したが、本発明を適用できるものはX字状に展開される物干し器に限られず、他の展開態様の物干し器についても適用することができる。
【0048】
上記実施形態では、本発明を物干し器に適用した場合を示したが、本発明が適用できるものは物干し器に限られず、それ以外の物品であってもよい。本発明は、種々の物品の枢支部に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 揺動部材(第1の部材)
2 支持部材(第2の部材)
2a 受部(収容部)
11 第1の壁
12 第2の壁
21 第1の溝
22 第2の溝
23 移動阻止部
50 物干し器
51a パイプ状部材(脚部)
51b パイプ状部材(腕部)
P 枢支装置
X 開位置(第1の位置)
Y 閉位置(第2の位置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10