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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】受信機試験
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/29 20150101AFI20220128BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20220128BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20220128BHJP
   H04B 7/08 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
H04B17/29 100
G01R31/00
H04B1/16 R
H04B7/08 982
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017174664
(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公開番号】P2018088671
(43)【公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】16201004.5
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507219491
【氏名又は名称】エヌエックスピー ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】NXP B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 60, NL-5656 AG Eindhoven, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】キケロ ヴォシェール
(72)【発明者】
【氏名】アントニウス デ グラーウー
(72)【発明者】
【氏名】エルウィン ジャンセン
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0111072(US,A1)
【文献】国際公開第2016/043905(WO,A1)
【文献】特開2013-150238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/29
G01R 31/00
H04B 1/16
H04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線システム用の受信機(100,300)であって、前記受信機は、
複数の受信機チャネル(110,130)を備え、各受信機チャネルはそれぞれのアンテナ(111,113)からの信号を受信する増幅器(112,132)及び前記増幅器の下流に配置されたミキサ(116,136)を含み、各増幅器は前記増幅器をターンオン又はオフするための制御信号(114,134)を受信する入力端を有し、
試験信号を発生するように構成された試験信号発生回路(150,350)を備え
前記試験信号発生回路と前記複数の受信機チャネルの各受信機チャネルを接続する信号路を備え
前記信号路は各受信機チャネルにそれぞれの増幅器とそれぞれのミキサとの間の結合部(192,194,370,372)で結合し、各受信機チャネルの前記増幅器がターンオフされたとき、前記試験信号発生回路からの試験信号を前記複数の受信機チャネルの各々に対して前記受信機チャネルの前記増幅器より下流の部分に注入できるように構成されており、
前記信号路は各受信機チャネルにそれぞれの増幅器の上流の他の結合部(184,182,366,368)で結合し、各受信機チャネルの増幅器がターンオンされたとき、前記試験信号発生回路(150,350)からの試験信号を前記複数の受信機チャネルの各々に対して前記受信機チャネルの全体に注入できるように構成されている、受信機(100,300)。
【請求項2】
前記信号路は、前記受信機チャネルの各々に結合された第1の伝送線路(180,360)を備える請求項1に記載の受信機(100,300)。
【請求項3】
前記第1の伝送線路(360)は複数のスイッチ(362.364)を含み、前記複数のスイッチの各々は前記複数の受信機チャネルのそれぞれに対して設けられ、各スイッチは前記第1の伝送線路(360)を前記結合部(370,372)又は前記他の結合部(366,368)に選択的に接続するように配置されている請求項2に記載の受信機(100,300)。
【請求項4】
前記信号路は更に前記受信機チャネルの各々に結合された第2の伝送線路(190)を備え、前記第1の伝送線路(180)が各受信機チャネル用に前記他の結合部(182,184)を含み、前記第2の伝送線路(190)が各受信機チャネル用に前記結合部(192,194)を含む請求項2に記載の受信機(100,300)。
【請求項5】
前記試験信号発生回路(150)は、前記第1の伝送線路に接続された第1の出力及び/又は前記第2の伝送線路に接続された第2の出力を含む請求項4に記載の受信機(100,300)。
【請求項6】
前記試験信号発生回路(150,350)は単側波帯変調信号を発生するように構成されている請求項1から5のいずれかに記載の受信機(100,300)。
【請求項7】
前記試験信号発生回路(150,350)は単側波帯変調器及び/又は同相及び直交直接ディジタル周波数合成器を含む請求項6に記載の受信機(100,300)
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の受信機(100,300)を提供するように構成された集積回路を含むパッケージ。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の受信機又は請求項8に記載のパッケージを含む無線システム。
【請求項10】
前記無線システムはレーダシステムである請求項9に記載の無線システム。
【請求項11】
前記無線システムはミリ波長ラジオシステムである請求項9に記載の無線システム。
【請求項12】
複数の受信機チャネルを備え、各受信機チャネルはそれぞれアンテナからの信号を受信する増幅器及び前記増幅器の下流に配置されたミキサを含んでいる受信機を試験する方法であって、前記方法は、各受信機チャネルに対して、
前記受信機チャネル内の前記増幅器をターンオフすること(202,402)、
前記増幅器がターンオフされている間に試験信号を前記受信機チャネルに前記増幅器と前記ミキサとの間で注入すること(204,404)
前記受信機チャネルにダウン伝送された信号の振幅及び位相を決定すること、
前記受信機チャネル内の前記増幅器をターンオンすること(206,406)、
前記増幅器がターンオンされている間に他の試験信号を前記受信機チャネルに前記増幅器の上流で注入すること(308,408)、及び
前記受信機チャネルにダウン伝送された信号の振幅及び位相を決定すること、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受信機試験、特に無線受信機システムの受信機チャネルの試験に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のアンテナを備えた無線受信機システムは一般に知られており、様々な用途に幅広く使用されている。例えば、一部の無線受信機及び一部のレーダ受信機は様々な理由から複数のアンテナを備えている。精巧なレーダシステムは検出目標の距離の決定のみならず、検出目標の方向も決定することができる。
【0003】
例えば、一部のレーダシステムは、検出目標に関する到着情報の角度を得るために複数の受信機チャネルに基づくディジタルビームフォーミングを使用するかもしれない。角度精度及び分解能を高めるためには、アンテナ開口を増大すると同時に、画角を減少させる必要がある。これらの競合する要件の兼ね合いをとる一つの方法は、電子ビームフォーミング及びビームステアリング技術をアナログ又はディジタル領域のいずれかにおいて利用するものである。このような電子技術は、より高価であり且つ製品寿命中に故障し易い機械的なステアリング技術よりも好ましい。
【0004】
ディジタル受信機ビームフォーミングにおいて、複数の受信機チャネルが使用可能であり、各チャネルは受信機アンテナからディジタル出力信号に至るまで完全な受信チェーンを構成する。異なる受信機チャネルにおける初期位相及び振幅差は無線システムのアセンブリ中に測定することができ、これらの差は無線システムのディジタル信号処理段による適切なデータ処理によって「較正」することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、受信機の振幅及び/又は位相応答の変化がその製品寿命中に起こる場合には、初期較正係数はもはや正確でなく、無線システムの角度測定性能の低下を生じる。
【0006】
更に、機能的安全性が要求される用途で使用される無線システムに対しては如何なる性能の低下もシステムで検出しなければならない。性能の十分な低下の検出後に、システムのエンドユーザはその問題の通知を受け、解決策を導入することができる。この解決策としては受信機チャネルを含むセンサの交換又は再較正処理の実行などがあり得る。
【0007】
従って、無線システムの受信機チャネルの振幅及び位相の変化を測定する信頼できる技術は有益である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、無線システム用の受信機が提供され、該受信機は、
複数の受信機チャネルを備え、各受信機チャネルはそれぞれのアンテナからの信号を受信する増幅器及び前記増幅器の下流に配置されたミキサを含み、各増幅器は前記増幅器をターンオン又はオフするための制御信号を受信する入力端を有していること、
試験信号を発生するように構成された試験信号発生回路を備えること、
前記試験信号発生回路と前記複数の受信機チャネルの各受信機チャネルを接続する信号路を備えること、及び
前記信号路は各受信機チャネルにそれぞれの増幅器とそれぞれのミキサとの間の結合部で結合し、各受信機チャネルの前記増幅器がターンオフされたとき、前記試験信号発生回路からの試験信号を前記複数の受信機チャネルの各々に対して前記受信機チャネルの前記増幅器より下流の部分に注入できるように構成されている、
ことを特徴とする。
【0009】
増幅器がターンオフされたとき各受信機チャネルのミキサの入力端に試験信号を注入することは各受信機チャネルの信号の振幅及び/又は位相の測定の信頼度を高めるのに役立つ。
【0010】
一つ又は複数の実施形態において、前記信号路は各受信機チャネルにそれぞれの増幅器の上流の他の結合部で結合し、各受信機チャネルの増幅器がターンオンされたとき、前記試験信号発生回路からの試験信号を前記複数の受信機チャネルの各々に対して前記受信機チャネルの全体に注入できるように構成されている。
【0011】
一つ又は複数の実施形態において、前記信号路は前記受信機チャネルの各々に結合される第1の伝送線路を備えてもよい。
【0012】
一つ又は複数の実施形態において、前記第1の伝送線路は複数のスイッチを含み、前記複数のスイッチの各々は前記複数の受信機チャネルのそれぞれに対して設けられ、各スイッチは前記第1の伝送線路を前記結合部又は前記他の結合部に選択的に接続するように配置されてもよい。
【0013】
一つ又は複数の実施形態において、前記信号路は更に前記受信機チャネルの各々に結合される第2の伝送線路を備え、前記第1の伝送線路が各受信機チャネル用に前記他の結合部を含み、前記第2の伝送線路が各受信機チャネル用に前記結合部を含む構成にしてもよい。
【0014】
一つ又は複数の実施形態において、前記試験信号発生回路は、前記第1の伝送線路に接続された第1の出力及び/又は前記第2の伝送線路に接続された第2の出力を含む構成にしてもよい。
【0015】
一つ又は複数の実施形態において、前記試験信号発生回路は単側波帯変調信号を発生するように構成してよい。
【0016】
一つ又は複数の実施形態において、前記試験信号発生回路は単側波帯変調器及び/又は同相及び直交直接ディジタル周波数合成器を含んでもよい。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、集積回路を含むパッケージが提供され、前記集積回路は前記第1の態様の受信機及びその任意の好ましい特徴も提供するように構成される。
【0018】
一つ又は複数の実施形態において、前記パッケージはラジオ受信機集積回路としてよい。前記無線受信機はミリ波長ラジオ受信機であってもよい。
【0019】
一つ又は複数の実施形態において、前記パッケージはレーダセンサ集積回路であってもよい。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、前記第1の態様の受信機又は前記第2の態様のパッケージを含む無線システムが提供される。前記無線システムはラジオシステム又はレーダシステムであってもよい。
【0021】
一つ又は複数の実施形態において、前記レーダシステムは自動車レーダシステムであってもよい。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、複数の受信機チャネルを備え、各受信機チャネルはそれぞれアンテナからの信号を受信する増幅器及び前記増幅器の下流に配置されたミキサを含んでいる受信機を試験する方法が提供され、前記方法は、各受信機チャネルに対して、前記受信機チャネル内の前記増幅器をターンオフするステップ、前記増幅器がターンオフされている間に試験信号を前記受信機チャネルに前記増幅器と前記ミキサとの間で注入するステップ、及び前記受信機チャネルにダウン伝送された信号の振幅及び位相を決定するステップを備える。
【0023】
一つの又は複数の実施形態において、前記方法は更に、各受信機チャネルに対して、前記受信機チャネル内の前記増幅器をターンオンするステップ、前記増幅器がターンオンされている間に他の試験信号を前記受信機チャネルに前記増幅器の上流で注入するステップ、及び前記受信機チャネルに伝送された信号の振幅及び位相を決定するステップを備える。
【0024】
前記第1の態様の特徴は第4の態様の特徴に対応してもよい。
【0025】
次に、本発明の実施形態を、ほんの一例として、添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】無線システムの受信機部の第1の実施形態の概略ブロックを示す。
図2図1に示す無線システムの受信機部を動作させる方法の第1の実施形態を示す概略プロセスフロー図である。
図3】無線システムの受信機部の第2の実施形態の概略ブロックを示す。
図4図2に示す無線システムの受信機部を動作させる方法の第2の実施形態を示す概略プロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
異なる図中の類似の要素は、特に指示のない限り、同じ符号で示されている。
【0028】
無線システムの受信機チャネル又はチェーンを確実に試験する装置及び方法を以下で説明する。以下の説明は特定の一例としてレーダシステム用のレーダ受信機を用いる。しかしながら、複数の受信機チャネル又はチェーンを含む無線システム、例えばミリ波ラジオシステムなどの様々なラジオシステム、用の任意のタイプの受信機にも同じ解決策を適用し得る。以下において、例示的なシステムとして自動車レーダシステムを用いるが、本解決策は他のレーダシステム及び概して他の無線システムにも適用することができることは理解されるであろう。また、以下の説明は集積回路形態のレーダセンサの関連で行われているが、この解決策は無線受信機の他の特定の実装に適用することもできることは理解されるであろう。
【0029】
図1を参照すると、無線システム100の一部分の第1の実施形態の概略ブロック図が示されている。無線システム100のこの部分は複数の受信機チャネルRX1~RXNを含む。図1には2つの受信機チャネルのみが示されているが、点々115で示すように、もっと多くの受信機チャネルを設けることができることは理解されるであろう。
【0030】
各受信機チャネルは概して同じ構成を有する。第1の受信機チャネル110,RX1、は第1の受信機アンテナ111に装着(接続)される。受信機チャネル又はチェーン110は、制御信号114でオン又はオフし得る低雑音増幅器112を含む。低雑音増幅器112はミキサ116の第1の入力端に接続され、ミキサ116の第2の入力端は局部発振器信号118を受信するように構成される。ミキサ116から中間周波数信号がフィルタ120へ出力され、フィルタ120はバンドパスフィルタとし得る。フィルタ120の出力は可変利得増幅器122に接続され、この増幅器122の出力はアナログ-ディジタル変換器124に接続され、この変換器124ディジタル信号126をシステムの残部へ出力する。
【0031】
当業者なら理解されるように、例えば無線システム又はレーダシステムなどの無線システムの応用分野に応じて、様々な他のコンポーネント、例えば受信機チャネルから受信されたディジタルデータにデータ処理演算を実行する1以上のデータ処理装置などが一般に設けられる。特に、データ処理装置は、製品の継続使用中に受信機チャネルの更なる較正を可能にするために、適切なソフトウェアによって、無線システムの全動作を制御し、受信機チャネルの初期試験及びその後の各受信機チャネルにおける信号の振幅及び位相の測定を実行するように構成することができる。また、アンテナ111、131は、例えば波長、偏光、変調などを検出するために、電磁信号の特性に適合するように構成される。
【0032】
各RXチャネルの受信データのアレイをベースバンドディジタルプロセッサにおいて高速フーリエ変換(FFT)を用いて捕捉し処理し、試験信号発生回路150で与えられる共通試験信号を用いて各RXチャネルで低周波数変換されたIF信号の位相及び振幅情報を得ることができる。各チャネルで計算された振幅及び位相の値はその後ベースバンドプロセッサ装置において各チャネルのエンドオブライン測定で得られた基準値と比較される。エンドオブライン基準値に対して所定の値より大きい偏差はセンサディジタルプロセッサによって不安全状態としてシステムコントローラに合図することができる。
【0033】
複数の受信機チャネルの各々は一般的に同じ構成を有する。例えば、第n受信機チャネルRXN130は同様に受信機アンテナ131に接続され、次にこのアンテナ131は低雑音増幅器132に接続され、この増幅器132も制御信号134によりターンオン及びオフされ得る。低雑音増幅器132の出力はミキサ136の入力端に接続され、このミキサ136もその第2入力端138に局部発振器信号を受信する。ミキサ136の中間周波数出力はバンドパスフィルタ140へ通され、このフィルタ140の出力は可変利得増幅器142へ通され、この増幅器142の出力はアナログ-ディジタル変換器144へ通され,その出力ディジタルデータ146はシステムのデータ処理構成要素へ通される。
【0034】
試験信号発生回路150も設けられる。試験信号発生回路150は単側波帯(SSB)試験信号を発生し、SSB変調器及び同相/直角位相直接ディジタル周波数合成器(I/QDDFS)を中心として構築される。DDFSは、例えば所望の同相(I)及び直交(Q)信号を直交ミキサ158,160へ出力するように構成されたカスケードプログラマブル分周器によって実装し得る。試験信号の周波数は分周器の分周比を変化させることによって変更することができる。
【0035】
具体的には、試験回路150はレーダシステムの局部発振信号(例えば26GHz)を受信する第1の入力端152を有する。周波数逓倍器ブロック154は局部発振信号の周波数を3倍に逓倍し、それを位相シフト素子156に供給し、位相シフト素子156はそれぞれの出力信号の間に90°の位相シフトを導入するよう構成されている。第1の出力信号は第1のミキサ158に供給され、第1の出力信号に対して90°位相シフトされた第2の出力信号は第2のミキサ160に出力される。同相/直交ダイレクトディジタル周波数合成器(I/QDDFS)162は入力端でシステムクロック信号164を受信し、同相及び直交信号をそれぞれの出力端に出力する。I/Q DDFS162の出力はマルチプレクサ又はスイッチング装置166に供給され、この装置166は第1の入力として1/Q DDFS162から同相(I)及び直交(Q)信号を受信し、第2の入力として外部ソースから第1同相正弦波信号168及び第2直交正弦波信号169を受信する。
【0036】
1/Q DDFS162の2つの出力又は2つの外部正弦波信号168及び169はマルチプレクサ166においてSPI選択ビットによって選択することができる。I/Q DDFS162の出力は一般的に方形波であり、寿命試験中に使用し得るが、正弦波入力168及び169は受信機チャネル110,130の直線性評価に関するレーダICの最終試験中に使用される。従って、スイッチング装置166は、最終試験段階中に同相(I)及び直交(Q)正弦波168及び169をミキサ158及び160に供給するように動作し、その後スイッチング装置166はBIST中にDDFS162からのI及びQ信号を供給するように動作し得る。
【0037】
同相信号Iは第1のミキサ158に供給され、直交信号Qは第2のミキサ160に供給される。
【0038】
試験信号発生器150は第1の可変利得増幅器170も含み、この増幅器170は制御信号172によってターンオン又はオフすることができ、その入力端は第1のミキサ158と第2のミキサ160の合成出力を受信する。
【0039】
試験信号発生回路150はシリアルペリフェラルインタフェース(SPI)178も含み、試験信号発生回路150はこのインタフェース178を介してレーダシステムの他の部分とシリアルペリフェラルインタフェースバスで通信することができる。
【0040】
第1の伝送線路180は試験信号発生回路150の第1の出力端に接続され且つ受信機チャネル110,130の各々に、それぞれの低雑音増幅器112,132より前のアンテナ接続線において結合される。伝送線路180は結合部182,184において、例えばS21(約-26dB)の弱い結合レベルで容量結合される。
【0041】
第2の伝送線路190が設けられ、試験信号発生回路150の第2の出力端に接続され且つ受信機チャネル110,130の各々に結合される。第2の伝送線路190は受信機チャネルに、その低雑音増幅器の下流でミキサより前のミキサ入力端で結合される。同様に、第2の伝送線路190も結合部192,194において、例えばS21(約-26dB)の弱い結合レベルで容量結合される。第1及び第2の伝送線路は、試験信号を受信機チャネル110,130の各々に各受信機チャネルの同じ位置で注入し得る信号路を提供する。
【0042】
従って、試験信号発生回路150は試験信号を発生することができ且つ2つの切り替え可能な増幅器170,174により駆動され、2つの別個の出力を受信機チャネル110へ向けて2つの別個の分配伝送線路に出力する。第1の試験信号は、低雑音増幅器の前で、アンテナ接続線に結合され、第2の試験信号は、低雑音増幅器とミキサ116,136との間で、ミキサ入力端で結合される。試験信号発生回路150は、後に詳しく記載されるように、ビルトインセルフテスト(BIST)機能を提供する。
【0043】
これから図1に示す装置100を動作させる方法について、図2を更に参照して説明する。図2図1に示す受信機装置100の動作方法200を示すフローチャートを示す。
【0044】
いかなるアンテナ反射信号又は外部妨害も高感度受信機位相測定を妨害する。従って、ステップ202において、低雑音増幅器112,132が各受信機チャネル内でアサート制御信号114,134によりターンオフされる。可変利得増幅器170がアサート制御信号172によりターンオフされ、可変利得増幅器174がアサート制御信号176によりターンオンされる。従って、ステップ204において、試験信号が試験信号発生回路150から伝送線路190により伝送され、受信機チェーンに低雑音増幅器112,134の下流のミキサ116,136の入力端で注入される。受信機チャネル110,130の残部にダウン伝送された試験信号の位相及び振幅が測定され、その後受信機チャネル110,130における位相差及び振幅差が伝送された試験信号に基づいてベースバンド信号プロセッサによって決定され得る。低雑音増幅器112,132はスイッチオフされるため、それらはアンテナ方向の逆方向分離を提供し、よってアンテナ反射又は例えば他の外部妨害源により生じる信号が低減又は除去される。また、試験信号はミキサ116,136の入力端に直接注入される。
【0045】
ステップ206において、各受信機増幅器内の低雑音増幅器112,132がアサート制御信号114,134によりターンオンされる。可変利得増幅器174がアサート制御信号176によりターンオフされ、可変利得増幅器170がアサート制御信号172によりターンオンされる。試験信号発生回路150が、ステップ208において、ステップ204で使用された試験信号と同様の特性を有する試験信号(場合により増幅器170の利得及び制御信号172により異なる振幅に制御されるかもしれない)を出力するように制御される。ステップ208では、低雑音増幅器112,132がオンであり、この試験信号が各受信機チャネルの入力端182,184に供給されるので、受信機チャネル全体を機能的に試験することができる。各受信機チャネルの全体にダウン伝送された試験信号の位相及び振幅が測定され、位相及び/又は振幅の差が決定され得る。
【0046】
伝送線路180によって低雑音増幅器112,132の入力端に供給される試験信号は事実上ミキサ116,136の第2の入力端に供給される信号118,138に対して周波数オフセットを有する。ミキサ116,136に入力される信号118,138は局部発振器信号152と同じである。ミキサ116,136のそれぞれの出力信号はI/Q DDFS信号発生器162によって切替可能なマルチプレクサ166を介してミキサ158及び160に供給される信号の周波数に等しい周波数を有する。ミキサ116,136のそれぞれの出力信号はその後それぞれのADC124,144によりディジタル化され、システムのベースバンド信号プロセッサに転送される。ベースバンド信号プロセッサはその後ADC124,144により供給された一組のデータ点に高速フーリエ変換(FFT)システム解析を実行する。伝送線路180からRXチャネル110,130に供給される試験信号は一貫した振幅及び位相関係を有するので、いくつかのRXチャネルへの連続的なFFT解析は製品寿命中一貫した安定な結果を提供するはずである。そうでなければ、ベースバンド信号プロセッサは初期較正振幅及び位相応答又は予測振幅及び位相応答からの偏差を知らせるために合図又は他のエラーメッセージを発生し得る。
【0047】
更に、すべての受信機チャネル110,130を試験するために同じ単一の試験信号を使用するため、ランダムな位相誤差源は試験ネットワークに導入されない。系統的位相誤差及び場合により若干の振幅誤差が、受信機チャネルの各々に対して結合位置192,194が異なることによる伝送線路の長さの差によって生じるのみである。
【0048】
従って、この方法は、受信機の寿命中における異なる受信機チャネル間の利得及び振幅の整合又は不整合を評価するために、より正確に使用することができる。異なる受信機チャネルの初期系統的位相及び振幅誤差は、受信機及びシステムがエンドユーザに提供される前に、パイロット試験信号を用いて決定することができる。その後、システムの寿命中、各受信機チャネルの利得及び位相挙動の変化を評価するために試験信号発生回路150をBIST回路として使用することができる。
【0049】
他の実施形態において、ステップ206及び208はステップ202及び204の前に実行してもよいことは理解されるであろう。
【0050】
図3は、無線システムの受信機部300の第2の実施形態の概略ブロック図を示し、この実施形態は概して図1に示す第1の実施形態100に類似する。多くの部分が類似し、同様の番号が付されている。
【0051】
しかしながら、いくつかの相違が試験信号発生回路350に、及び試験信号を複数の受信機チャネル110,130に分配するために使用する信号路にも存在する。
【0052】
試験信号発生回路350は単一の可変利得増幅器352のみを含み、この増幅器352は制御信号354によりターンオン又はオフされ得る。増幅器352は通常システム動作中ターンオンされ、BISTセルフテスト動作中ターンオンされる。
【0053】
試験信号路は、試験信号発生回路350の出力端に接続され且つ試験信号を複数の受信機チャネル110,130に分配する単一の伝送線路360により与えられる。信号伝送線路360は各受信機チャネル110,130と関連するそれぞれのスイッチング装置362,364と通信する。各スイッチング装置362,364は低雑音増幅器の上流に結合された第1及び第2の伝送線路区分366,368及びミキサの入力端にそれぞれ結合された第1及び第2の伝送線路区分370,372を含む。
【0054】
従って、本システムは概して、スイッチング装置362,364を用いて、試験信号発生回路350から単一伝送線路で伝送される試験信号を受信機チャネル110,130の各々に対して低雑音増幅器の上流側及びミキサの入力端に選択的に交互に切り替える以外、図1に示すシステムに類似する。
【0055】
この実施形態はハードウェアの観点から図1に示す実施形態よりコンパクトである。しかしながら、スイッチ362,364は系統的差異を導入し、測定誤差の原因になるため、図1に示す実施形態より好ましくなくなり得るが、依然として他の解決策に比較して大きな利益がある。従って、図3に示す実施形態300は実装の精度よりも実装のサイズが重要である場合により適切であり得る。
【0056】
図3に示す装置を動作させる方法は図4に示すフローチャートで示されている。この動作方法400は概して図2に示す動作方法200に類似する。
【0057】
ステップ402において、低雑音増幅器112,132がアサート制御信号114,134によりターンオフされる。スイッチ362,364は、必要に応じ、試験信号を各受信機チャネル内のミキサ116,136の入力端に直接注入するために、伝送線路360を結合部370,372に接続する第1の構成に切り替えるように動作される。その後、試験信号発生回路50がステップ404において試験信号を伝送線路360に出力するように動作し、試験信号が各受信機チャネル110,130に、それぞれのミキサ116,136の入力端において各受信機チャネルの残部沿って注入される。受信機チャネルの残部にダウン伝送された試験信号の位相及び振幅がステップ404においてベースバンド信号プロセッサによって測定され、決定される。
【0058】
従って、第1の動作方法と同様に、低雑音増幅器のスイッチオフはアンテナ方向の逆方向分離をもたらし、アンテナ反射信号又は他の外部妨害源が低減又は除去されて位相測定の精度の向上に役立つ。
【0059】
ステップ406において、各受信機チャネル110,130内の低雑音増幅器112,132がターンオンされる。ステップ408において、スイッチ362,364は第2の構成に切り替えるように動作され、この構成では試験信号は試験信号発生回路350の増幅器352によって共通の単一伝送線路360で受信機チャネルの各々に伝送され、各受信機チャネルの全体にダウン伝送された試験信号の位相及び振幅がステップ408においてベースバンド信号プロセッサ408で測定され、決定される。
【0060】
図2に示す方法と同様に、他の実施形態では、方法400のステップ406及び408はステップ402及び404より前に実行してもよい。
【0061】
上述した装置及び方法は、複数の受信機チャネルの性能評価に他の方法を使用した場合に生じ得るいくつかの問題に対処するのに役立ち得る。
【0062】
試験信号が受信機チャネルのRF入力ノードに直接に結合され、アンテナにも直接結合される場合には、アンテナポートにおける不完全な整合状態によって試験信号がアンテナからミキサへ反射されて戻る。従って、試験信号はもはや正確でなく、所定の試験信号と試験信号の反射成分との合成になる。この合成試験信号は振幅誤差及び位相誤差を有する合成信号になり、測定精度を低下し、よって受信機チャネル測定の信頼レベルを低下する。
【0063】
また、試験信号はアンテナから環境内へ「漏洩」し、レドームにより反射されて戻る、又は受信機アンテナ間の有限の受信機分離のために他の受信機アンテナポートに結合することがあり、これは一般的に30dBの程度であり得る。従って、各受信機ポートは他の受信機ポートのせいで複数の望ましくない信号を受信し、受信機チャネルの振幅及び位相測定の精度を低下する。
【0064】
更に、受信機チャネルの測定中、アンテナが試験信号注入中にミキサに直接結合された場合、外部レーダ又は他の伝送無線信号源が測定妨害源になり得る。この影響も測定を妨害し、検出アルゴリズムに偽陽性をもたらし得る。例えば、位相又は振幅偏差が合図されるかもしれないが、その偏差は受信機チャネルに関する問題以外の外部妨害信号のせいであり得る。
【0065】
従って、本明細書に記載された受信機チャネル試験回路及び方法は、無線システム内の受信機チャネルの振幅及び位相性能をより正確に測定する方法を提供し得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、図1及び図3に示すビルトインセルフテスト(BIST)を備えた受信機はパッケージ内の集積回路の形態で提供することができる。特に、受信機はRFレーダシステム用に特に適したレーダセンサ集積回路として提供してもよい。
【0067】
本明細書において、いくつかの例示的な実施形態は選択した一組の詳細記述で提示されている。しかしながら、当業者であれば、異なる選択した一組の詳細記述を含む多くの他の例示的な実施形態を実施可能であることは理解できよう。後記の請求項は可能な例示的実施形態のすべてをカバーすることが意図されている。
【0068】
如何なる命令及び/又はフローチャートステップも、特定の順序が明記されていない限り、任意の順序であってよい。また、当業者であれば、例示的な一組の命令/方法を説明したが、本明細書中の資料は様々に組み合わせて他の例を生み出すこともできことは認識でき、それらはこの詳細な説明により与えられる背景に含まれることは理解できよう。
【0069】
本発明は様々な変更例及び代替例を受け入れるものであるが、その特定の例が一例として図面に示され、詳細に記載されている。しかしながら、記載された特定の実施形態の範囲を超える他の実施形態も可能であることを理解すべきである。添付の請求項の範囲内に入る変更、同等及び代替実施形態もすべて本発明によりカバーされる。
図1
図2
図3
図4