(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/20 20180101AFI20220214BHJP
F21S 41/50 20180101ALI20220214BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20220214BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220214BHJP
【FI】
F21S41/20
F21S41/50
F21V9/32
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2017193315
(22)【出願日】2017-10-03
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】金森 昭貴
(72)【発明者】
【氏名】中林 政昭
(72)【発明者】
【氏名】伏見 美昭
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3040839(JP,U)
【文献】特開2004-079259(JP,A)
【文献】特表2016-539466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/20
F21S 41/50
F21V 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から出射された光を灯具の前方に向けられた第1の面から出射させる透光体とを備える車両用灯具であって、前記透光体は前記第1の面と交差する第2の面を有し、当該第2の面に対面して蓄光体が設けられ
、さらに当該蓄光体が灯具の前方から観察されることがないように遮蔽する遮蔽部材を備えていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第2の面は、前記
第1の面に直交する面である請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記蓄光体は前記第2の面に接している請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記蓄光体は前記第2の面に間隙をおいて対向配置されている請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記透光体は光源から出射された光を導光する断面形状が矩形をした導光体であり、当該矩形の一つの辺に対応する面が灯具の前方に向けられて前記第1の面として構成され、当該第1の面に隣接する面が第2の面として構成される請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項6】
ランプハウジング内に少なくとも1つのランプユニットが配設されており、前記透光体は当該ランプユニットを構成している投影レンズであり、当該投影レンズの前面が前記第1の面として構成され、当該投影レンズの周面が前記第2の面として構成される請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両の灯具に関し、特に蓄光を利用して灯具の意匠効果を高めた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のランプにおいて、蓄光材を利用して灯具の意匠効果を改善する技術が提案されている。特許文献1には、ランプを囲むように装飾用リングを配設して当該ランプの外観上の見栄えを改善し、意匠効果を高める技術が提案されている。この装飾用リングは、透明部材で形成した基板部を備え、この基板部の表面に蓄光塗料を塗布した構成である。この蓄光塗料が発光することにより、装飾用リングが発光状態となり、ランプの意匠効果を高めるというものである。
【0003】
また、特許文献2には、ランプの一部に光を導光する導光部を設け、この導光部の後端面に蓄光材を塗布する技術が提案されている。蓄光材に蓄光した光を発光してランプ周囲を照明することにより、ランプの消灯時における光源の取り替え作業等を容易に行うことが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3124538号公報
【文献】特許第4616795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、基板部の表面、すなわちランプの前方から見た正面に蓄光塗料が塗布されている。一般に蓄光塗料は白色、黄白色、緑白色等の有色塗料で構成されているので、装飾用リングの基板部はこれらの色彩を有する部材として観察されることになる。そのため、基板部を透明部材で構成しても、その透明感が失われ、意匠効果が低下されてしまう。
【0006】
特許文献2の技術は、光源の取り替え時におけるランプ周囲の照明を目的としているため、ランプの意匠効果を高めることは難しい。また、仮に意匠効果を高める目的で構成した場合でも、導光部の後端面に蓄光材を塗布した技術であるので、ランプの前方から導光部を透かして蓄光材が観察されることになる。したがって、特許文献1の場合と同様に、導光部は蓄光材の色を有する部材として観察されることになり意匠効果が低下されてしまう。
【0007】
本発明の目的は、蓄光体を設けた構成において、蓄光体が外部から観察されないようにすることで意匠効果を高めた車両用灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光源と、前記光源から出射された光を灯具の前方に向けられた第1の面から出射させる透光体とを備える車両用灯具であって、前記透光体は前記第1の面に交差する第2の面を有し、当該第2の面に対面して蓄光体が設けられ、さらに当該蓄光体が灯具の前方から観察されることがないように遮蔽する遮蔽部材を備えている。例えば、第2の面は、前記第1の面に直交する面で構成されている。また、蓄光体は第2の面に接していてもよく、あるいは間隙をおいて対面配置されてもよい。
【0009】
本発明の第1の形態は、前記透光体は光源から出射された光を導光する断面形状が矩形をした導光体であり、当該矩形の一つの辺に対応する面が灯具の前方に向けられて前記第1の面として構成され、当該第1の面に隣接する面が第2の面として構成される。
【0010】
本発明の第2の形態は、ランプハウジング内に少なくとも1つのランプユニットが配設されており、前記透光体は当該ランプユニットの投影レンズであり、当該投影レンズの前面が第1の面として構成され、当該投影レンズの周面が前記第2の面として構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透光体の第2の面、すなわち前面に交差する面に対面して蓄光体が設けられるので、蓄光体により透光体を発光状態にして灯具の意匠効果を高める一方で、蓄光体が灯具の前方に露見されることによる意匠効果の低下が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を自動車のヘッドランプに適用した実施形態1の正面図。
【
図3】ランプユニットの
図1のIII-III線に沿う縦断面図。
【
図4】実施形態1のランプユニットの要部の拡大斜視図。
【
図5】導光体における光の透光状態を示す導光体の一部の正面図と横断面図。
【
図8】実施形態2の投影レンズの要部の拡大縦断面図。
【
図9】実施形態2の変形例の投影レンズの要部の拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を適用した自動車の左ヘッドランプHLの正面図である。
図1に示すように、自動車の車体左前部に装備される左ヘッドランプHLのランプハウジング1内にプロジェクター型のランプユニット2が内装されている。このランプユニット2は、ハイビーム配光とロービーム配光の切り替えが可能である。なお、図示しない右ヘッドランプは、左ヘッドランプHLと左右対称に形成されており、基本的な構造はほぼ同じである。
【0014】
前記ランプハウジング1内には、ランプユニット2の左右両側(以下、前後、左右、上下については自動車及び
図1のヘッドランプを基準にしている)の領域から下側の領域にわたってほぼU字状をした導光体3が延設されている。この導光体3は、ここではクリアランスランプ、あるいは昼間時に点灯するデイライトランニングランプとして機能することが可能である。
【0015】
前記ランプハウジング1内には、前記ランプユニット2と導光体3を除く領域が露呈されることを防止するために、これらの領域を遮蔽して、ヘッドランプHLの外観上の意匠効果を高めるための疑似反射鏡として構成されるエクステンション4が配設されている。
【0016】
図2は
図1のII-II線に沿うヘッドランプHLの縦断面図であり、
図3は
図1のIII-III線に沿うランプユニット2の縦断面図である。前記ランプハウジング1は、ランプボディ11と、透光部材からなる前面カバー12を有している。前記ランプユニット2と導光体3は、図示を省略する支持部材により前記ランプボディ11に支持されている。
【0017】
前記ランプユニット2は、前記ランプボディ11に固定支持されてヒートシンクを兼ねるユニットベース21を備えており、このユニットベース21の上面に光源としてのLED22が搭載されている。また、このLED22の上方を覆うようにドーム状のリフレクタ23が前記ユニットベース21に取り付けられている。さらに、このリフレクタ23の前方位置に投影レンズ24が配置されており、当該投影レンズ24は円周部241においてレンズホルダー25により保持された状態で前記ユニットベース21に取り付けられている。
【0018】
また、前記ユニットベース21には、投影レンズ24の後方位置に可変シェード26が配設されている。この可変シェード26の詳細は省略するが、一体的に設けられているアクチュエータによりシェードが移動制御され、このシェードの移動位置の変化により投影レンズ24に入射される光を制限し、ハイビーム配光とロービーム配光を切り替えることが可能とされている。
【0019】
このランプユニット2は、ヘッドランプHLの点灯時にLED22が発光される。LED22から出射された光はリフレクタ23で反射され、可変シェード26によりその一部が遮光された上で投影レンズ24に入射され、投影レンズ24を透過して自動車の前方に照射される。このとき、可変シェード26での遮光領域の切り替えにより、ロービーム配光とハイビーム配光に制御される。
【0020】
前記導光体3は、透光性のある樹脂、あるいはガラスにより形成されており、前記したようにランプユニット2の左右両側から下側の領域にわたって延長されたほぼU字状に形成されている。
図4は当該導光体3の一端部の拡大斜視図であり、
図5(a),(b)は前記導光体3の正面図と横断面図(水平断面図)である。導光体3は、断面形状が矩形、ここではランプ前面側から見て横長の長方形に形成され、ランプ前方に向けられている第1の面、すなわち導光体3の前面3aがヘッドランプHLの前方に向けられている。
【0021】
前記導光体3のランプ後方に向けられている後面3cには光を反射する光反射素子31、例えば、いわゆる点刻と称する微小凹部等からなる多数の反射ステップや、シボ加工あるいは粗面加工のような微細ステップ形成されている。
【0022】
前記導光体3の第2の面、すなわち前記前面3aと交差する方向、ここでは前面3aと直交する外側面3bに、蓄光材が塗布された膜状の蓄光体5が形成されている。この蓄光体5は、光が照射されたときに光を蓄光し、かつ蓄光した光を表面から出射して発光することが可能であり、一般には白色、黄白色、緑白色を呈している。この蓄光体5は、テープ状に形成された蓄光テープを導光体の外側面3bに貼り付けるようにしてもよい。
【0023】
あるいは、蓄光体5は、図示は省略するが、ヘッドランプHLの内側に向けられている導光体3の内側面3dに形成されてもよく、外側面3bと内側面3dの両側面に形成されてもよい。この内側面3dも第1の面としての前面3aと交差している。いずれの構成の場合でも、蓄光体5はヘッドランプHLの側方に向けられているので、ヘッドランプHLの前方に露呈され難い状態にある。また、実施形態1では、これに加えて前記エクステンション4によって遮蔽されることにより、前方に露呈されないようになっている。
【0024】
前記導光体3の湾曲した延長方向の両端の各端面3iには、それぞれ補助光源6が対向配設されている。この補助光源6は前記ランプハウジング1に内装支持された基板61を有し、この基板61に補助LED62が搭載されている。この補助LED62が発光したときに出射される光が導光体3の各端面3iに入射される。なお、前記した光反射素子31は、この補助LED62の光が入射される端面3iには形成されていない。
【0025】
実施形態1のヘッドランプHLによれば、補助LED62を発光させると、補助LED62から出射された光は、
図5(a)に示すように、導光体3の両端面3iから導光体3の内部に入射される。入射された光は導光体3で内面反射を繰り返しながら後面3cに設けた光反射素子31により前方に向けて反射され、導光体3の前面3aから前方に向けて出射される。これにより、導光体3の前面3aが発光され、ほぼU字状の発光面を有するクリアランスランプあるいはデイライトランニングランプとして機能させることができる。
【0026】
補助LED62が発光して導光体3が発光状態を呈しているときには、
図5に実線矢印で示すように、補助LED62から導光体3に入射されてその内部を導光される光は、導光体3の外側面3bに投射されたときに、当該外側面3bに形成されている蓄光体5に照射され、蓄光体5に蓄光される。
【0027】
そして、補助LED62が消灯されたときには、
図5に破線矢印で示すように、蓄光体5に蓄光された光は蓄光体5から出射され、導光体3の外側面3bから内部に入射される。入射された光の一部は導光体3を透過して前面3aから出射される。また、他の一部の光は導光体3の後面3cの光反射素子31により反射された上で前面3aから出射される。これにより、導光体3は恰も発光して点灯状態にあるような疑似点灯の状態となり、ヘッドランプHLの意匠効果を高めることができる。
【0028】
ここで、補助LED62が消灯されたとき、あるいは導光体3が疑似点灯していない状態のときに、ヘッドランプHLを前方から観察すると、蓄光体5は前記したように白色、黄白色、緑白色のような有色を呈しているが、蓄光体5は導光体3の前面3aに対して直角方向の外側面3bに形成されているので、ヘッドランプHLの前方から直接観察され難い。さらにこれに加えてエクステンション4によって遮蔽されているので、ヘッドランプHLの前方から直接観察されることはない。これにより、導光体3は透明感のある外観となり、意匠効果が向上される。
【0029】
また、導光体3の内部反射によって蓄光体5が導光体3の前面3aを透して観察されることがあるが、蓄光体5が形成されている外側面3bは前面3aに対して直角に交わるので、導光体3の内部における当該前面3aでの全反射が生じ易く、当該前面3bを透して観察される蓄光体5はごく一部である。したがって、導光体3を観察したときに、蓄光体5が有色物体として観察されることはなく、ヘッドランプHLの意匠効果に影響を与えることは殆どない。
【0030】
なお、
図5に示すように、導光体3の外側面3b、すなわち蓄光体5を塗布している面にしぼ加工や粗面加工等の光拡散素子32を形成しておけば、蓄光体5から出射された光は拡散状態で導光体3に入射される。したがって、導光体3の前面3aから出射される光も拡散状態となり、当該前面3aの全領域において均一な明るさでの発光状態となる。また、このようにすることで、蓄光体5が導光体3の前面3aを透して観察され難くなる。
【0031】
ここで、蓄光体5を形成している導光体3の外側面3bと、当該導光体3の前面3aとがなす角度(
図5(b)のθ)を直角(90度)以上の角度、例えば、(直角)+(導光体3の臨界角)以上の角度となるように導光体3を形成すると、導光体3の内部における前面3aでの全反射がさらに生じ易くなり、前面3aを透して蓄光体5がより観察され難くなる。なお、このようにしても、蓄光体5から導光体3に入射される光は光拡散素子32により拡散されるので、導光体3の前面3aにおいて全反射されることは少なく、好適な導光体での疑似点灯が行われる。
【0032】
なお、前記したように導光体3の内側面3d、すなわちランプユニット2の周面に沿った側の面3dに蓄光体を形成した場合には、当該蓄光体はランプユニット2の陰になって遮蔽された状態となり、ヘッドランプHLの前方から直接観察されることはない。
【0033】
実施形態1では、ランプユニット2の点灯、非点灯にかかわらず、導光体3を点灯あるいは疑似点灯とすることができる。また、ランプユニット2が点灯しているときに、LED22から出射された光の一部を導光体3に入射させるように構成してもよい。このようにすれば、ランプユニット2の点灯時に導光体3を透して蓄光体5を蓄光さることができ、蓄光量を増大し、導光体3の疑似点灯時における明るさを高めることができる。
【0034】
(実施形態2)
図6は実施形態2のヘッドランプHLの正面図である。ランプハウジング1内にロービームランプユニット2Lとハイビームランプユニット2Hが左右に並んで配設されている。
図7は
図6のVII-VII線に沿うロービームランプユニット2Lの縦断面図であり、基本的には実施形態1のランプユニット2と同じ構成であり、等価な部分には同一符号を付してある。このロービームランプユニット2Lは、可変シェードは備えておらず、固定シェード26Aによりロービーム配光を得るようになっている。また、前記ハイビームランプユニット2Hの構造も、リフレクタや投影レンズの構成が一部において相違しているが、ほぼロービームランプユニット2Lと同じであり、ハイビーム配光を得るようになっている。
【0035】
前記ロービームランプユニット2Lは、LED22から出射されて、リフレクタ23で反射された光を投影レンズ24の前方に向けられた第1の面、すなわち球面あるいは非球面等の所要の曲面に形成された前面24aから出射する。また、この投影レンズ24は円周部241のレンズ光軸方向の寸法が実施形態1の投影レンズ24よりも大きくされている。
図8は投影レンズ24の円周部241の近傍領域を説明するための拡大断面図であり、円周部241の光軸方向の寸法を大きくすることにより、当該投影レンズ24の第2の面、すなわち前記前面24aに交差する円周面(外周面)24bはレンズ光軸方向の寸法が実施形態1の投影レンズ24よりも長く形成されている。
【0036】
その上で当該投影レンズ24の円周面24b、前記したように投影レンズ24の前面24aに交差する面には蓄光材が塗布されて膜状の蓄光体5が形成されている。また、投影レンズ24は円周部241において円環状をしたレンズホルダー25により前記ベース体21に支持されている。このレンズホルダー25は円環状をした円筒部25aと、この円筒部25aの前端に全円周にわたって延長される前面フランジ部25aと、円筒部25aの後端に円周方向の複数箇所に内径方向に突出された後面爪部25cを有しており、これらで投影レンズ24の円周部241を保持している。
【0037】
そして、これら円筒部25aと前側フランジ部25bで蓄光体5の前面側と周面側を遮蔽しており、少なくとも蓄光体5がヘッドランプHLの前方に露呈されないようになっている。なお、実施形態1と同様にエクステンションが設けられ、このエクステンションによって蓄光体5を遮蔽するようにしてもよい。
【0038】
前記ハイビームランプユニット2Hの構成、特に投影レンズ24の円周面24bに蓄光体5が形成されている構成はロービームランプユニット2Lと同じである。ここで、実施形態2の変形例として、蓄光体5はハイビームランプユニット2Hにのみ形成し、ロービームランプユニット2Lには蓄光体5を形成しないようにしてもよい。
【0039】
実施形態2のヘッドランプHLは、ロービームランプユニット2Lが点灯されると、ロービーム配光での照明が行われる。これに加えてハイビームランプユニット2Hが点灯されると、両ランプユニット2L,2Hの配光が重畳されてハイビーム配光での照明が行われる。これら両ランプユニット2L,2Hの少なくとも一方が点灯されたときには、LED22から出射されて投影レンズ24に入射される光の大部分は前面24aから出射されるが、その一部は、投影レンズ24の円周面24bにまで導光され、蓄光体5に蓄光される。あるいは、蓄光体5の後面側はレンズホルダー25の後面爪部25cによって円周方向の複数箇所においてのみ遮光されるので、遮光されない部位においてLED22からの光が直接蓄光されることもあり、効率の良い蓄光が確保される。
【0040】
ヘッドランプHLの消灯時、すなわち両ランプユニット2L,2Hが消灯されたときには、各ランプユニット2L,2Hでは蓄光体5に蓄光された光が出射され、遠周面24bから投影レンズ24に入射される。入射された光は投影レンズ24の内部を透過され、投影レンズ24の前面24aから出射される。これにより、各ランプユニット2L,2Hは投影レンズ24が明るく発光された疑似点灯の状態となり、ヘッドランプHLの意匠効果を高めることができる。
【0041】
ここで、各ランプユニット2L,2Hが非点灯のとき、あるいは疑似点灯していないとき、ヘッドランプHLの前方から各ランプユニット2L,2Hを観察しても、投影レンズ24の円周面24b及びこれに形成されている蓄光体5は各ランプユニット2L,2Hの前方から見て側方に向けられているので、蓄光体5はヘッドランプHLの前方から直接観察され難い。さらに、ここでは蓄光体5はレンズホルダー25によって遮蔽されているので、蓄光体5がヘッドランプHLの前方から直接観察されることはない。
【0042】
また、蓄光体5は投影レンズ24の前面24aに対し直角な面、換言すればレンズ光軸に沿った方向の円周面24bに形成されているので、投影レンズ24の前面24aを透して蓄光体5が観察されることがあっても、観察される領域はごく一部であり、投影レンズ24の透明感が損なわれることはなく、ヘッドランプHLの意匠効果に影響を与えることは殆どない。
【0043】
実施形態2においても、図示は省略するが、投影レンズ24の円周面24bに実施形態1の光拡散素子32のような光拡散素子を形成することにより、蓄光体5から投影レンズ24に入射される光を拡散し、投影レンズ24の前面24aが均一な明るさの疑似点灯が行われる。また、前面24aと円周面24bのなす角度を投影レンズ24の臨界角に基づいた角度に形成することにより、投影レンズ24の前面24aを透して蓄光体5が観察されることをより有効に防止できる。
【0044】
図9は実施形態2の変形例における
図8と同様の断面図であり、
図8と等価な部分には同一符号を付してある。この変形例では、レンズホルダー25の前記円筒部25aの内周面には所要の厚みを有する蓄光体5が形成されており、この蓄光体5の内周面は投影レンズ24の円周面24bに対して径方向に所要の間隙(空隙)dをおいて対向配置されている。
【0045】
この変形例では、実施形態2と同様に、ヘッドランプHLの点灯時に蓄光体5において蓄光される。また、ヘッドランプHLの消灯時に蓄光体5に蓄光された光が出射され、投影レンズ24に入射されて疑似点灯の状態となり、ヘッドランプHLの意匠効果を高めることができる。その他の作用効果についても実施形態2と同じである。
【0046】
また、この変形例では、蓄光体5と投影レンズ24の円周面24bとの間に間隙dが設けられているので、円周面24bの内面での全反射によって、投影レンズ24の前面24aを透して蓄光体5が観察され難くなる。さらに、蓄光体5はレンズホルダー25の円筒部25aの内周面に形成すればよいので、実施形態2のように投影レンズ24の円周面24bに接した状態で蓄光体5を形成する構成に比較して製造が容易になる。
【0047】
本発明の実施形態1においては、導光体の断面形状が長方形の場合について説明したが、三角形あるいは五角形以上の多角形断面形状の導光体を用いてもよい。この場合には、導光体の前面(第1の面)とこれに交差する面(第2の面)の角度を適切に設定することにより、疑似点灯に際しての導光体の明るさを向上し、その一方で導光体を透して蓄光体が外部から観察されることを抑制することができる。
【0048】
本発明の実施形態2においては、投影レンズは正面視で円形に形成されているが、非円形の投影レンズで構成されてもよく、この場合には投影レンズの前面(第1の面)に交差する周縁に沿った外側面(第2の面)に蓄光体が形成されることになる。
【符号の説明】
【0049】
HL ヘッドランプ(車両用灯具)
1 ランプハウジング
2 ランプユニット
3 導光体(透光体)
3a 前面(第1の面)
3b 外側面(第2の面)
4 エクステンション(遮蔽部材)
5 蓄光体
6 補助光源
21 ベース体
22 LED(光源)
23 リフレクタ
24 投影レンズ(透光体)
24a 前面(第1の面)
24b 円周面(第2の面)
31 光反射素子
32 光拡散素子