(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】レーザーによる材料除去により所定の輪郭に沿って平坦な工作物に破断線を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/359 20140101AFI20220113BHJP
B60R 21/2165 20110101ALI20220113BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20220113BHJP
【FI】
B23K26/359
B60R21/2165
B23K26/00 M
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017217154
(22)【出願日】2017-11-10
【審査請求日】2020-08-28
(31)【優先権主張番号】10 2016 121 644.5
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502122347
【氏名又は名称】イェーノプティク アウトマティジールングステヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター ルッツェ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン グリーベル
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ヴァイサー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ザイデル
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0352670(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0290075(US,A1)
【文献】特開平11-54885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/359
B60R 21/2165
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視面(4.2)及び当該可視面(4.2)と反対側の裏面(4.1)を有する平坦な工作物(4)上に材料除去により破断線を作製するための方法であって、
レーザー発生器(1)が、パルス振幅及びパルス幅により決定されるエネルギーのレーザーパルス(1.1)を有するパルスレーザービームを発生し、該レーザーパルスは、前記裏面(4.1)からそれぞれの除去箇所(a
1,…,a
n)に破断線のための所定の輪郭に沿って、機械加工サイクルにおいて繰り返し多数回連続的に導入され、材料除去はそれぞれ所定の残留壁厚まで行われ、残留壁厚はゼロであってもよく、前記それぞれの所定の残留壁厚に相関する非活性化基準に達すると、前記レーザーパルス(1.1)の導入が前記除去箇所(a
1,…,a
n)に対して空間分解式に
前記レーザービームの非活性化によって終了され、各々の機械加工サイクルのために、前記除去箇所(a
1,…,a
n)を介する測定信号(M
a)により形成される測定信号曲線が生成され、前記測定信号は、各々の前記除去箇所(a
1,…,a
n)のためのセンサのアレイ(3)の少なくとも1つのセンサ(3
1,…,3
m)による前記レーザーパルス(1.1)のうちの1つの前記パルス振幅の通過部分の検出によって生じる方法において、
前記機械加工サイクルは時間的に、前記除去箇所(a
1,…,a
n)を介して前記パルス振幅から生じる基準信号(R
a)により形成される基準信号曲線(f(R
a))を生成し記憶するための方法ステップの後で行われ、この方法ステップにおいて、前記レーザー発生器(1)と前記センサのアレイ(3)の間に平坦な工作物(4)は配置されておらず、前記レーザーパルス(1.1)の前記パルス振幅は、前記時間的に先行する方法ステップ及び前記機械加工サイクルにおいて一定に維持され、前記基準信号(R
a)のそれぞれの所定の割合の達成又は前記基準信号(R
a)から前記測定信号(M
a)の所定の距離の達成が、それぞれの除去箇所(a
1,…,a
n)のための
非活性化基準として使用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記レーザーパルス(1.1)が、機械加工サイクルのうちの第1機械加工サイクルの間、機械加工サイクルのうちの後続の機械加工サイクルよりも短いパルス幅を有し、それで前記レーザーパルス(1.1)のエネルギーが非常に低く、そのため材料除去が生じない、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準信号(R
a)に等しい測定信号(M
a)が、前記第1機械加工サイクルにおいて前記除去箇所(a
1,…,a
n)の幾つかのために既に生成され、更なるレーザーパルス(1.1)が前記後続の機械加工サイクルにおいてこれら除去箇所(a)に導入されない、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
それぞれの前記基準信号(R
a)のそれぞれの所定の割合よりも大きい測定信号(M
a)又は前記基準信号(R
a)からの距離が前記基準信号(R
a)から前記所定の距離よりも小さい測定信号(M
a)が、前記第1機械加工サイクルにおいて前記除去箇所(a
1,…,a
n)の幾つかのために既に
生成されている場合、更なるレーザーパルス(1.1)が前記後続の機械加工サイクルにおいて前記除去箇所(a
1,…,a
n)のうちのこれら除去箇所に導入されない、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
それぞれの前記基準信号(R
a)のそれぞれの所定の割合よりも小さい測定信号(M
a)又は前記基準信号(R
a)からの距離が前記基準信号(R
a)から前記所定の距離よりも
大きい測定信号(M
a)が、前記機械加工サイクルのうちの1つにおいて前記除去箇所(a
1,…,a
n)の幾つかのために生成され、前記後続の機械加工サイクルにおいて、測定信号(M
a)がこの1つの機械加工サイクルにおいてまだ形成されていない前記除去箇所(a
1,…,a
n)に導入されるものよりも短いパルス幅を有するレーザーパルス(1.1)が、前記除去箇所(a
1,…,a
n)のうちのこれら除去箇所に導入される、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記破断線のための同じ輪郭を備えた同じ種類の工作物(4)を機械加工するために、前記時間的に先行する方法ステップが一度だけ実行され、次いで同じ種類の別な工作物(4)に前記破断線を作るために使用される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の輪郭に沿って平坦な工作物(ワークピース)に破断線(引き裂き線)を作製するための方法に関し、当該輪郭は一連の除去箇所を示す。
【背景技術】
【0002】
今日では多数の適用分野において、統合された破断線を平坦な工作物に導入し、必要に応じて当該破断線に沿って工作物を開けることが一般的である。例は、包装材料、医療予備材料、文房具又は安全服における破断及び分割補助を含む。特に高い品質要件がエアバッグカバーの破断線に適用される。破断線は、一方で見えてはならず、他方でエアバッグを作動時に妨げられずに貫通させる。
【0003】
この特徴のために、破断線を作製する方法に関する従来技術は、ほとんどエアバッグカバーに関連してのみ記載されている。ゆえに、ここで開示する方法の記載も、エアバッグカバー又はエアバッグカバーの構成部品のそれぞれに関連して説明する。
【0004】
エアバッグカバーの高品質な実施形態では、安定した成形層が、カバー材料を構成する更なる層を具備し、この層により客室に面するカバー要素の表面が光学的且つ触覚的に改善される。これらカバー材料は通常、中間層又はスペーサー織物を形成する発泡材料、及び、プラスチックシート、レザーレット(模造革)、織物、マイクロファイバー不織布又は天然革などの装飾層として機能する柔軟で薄肉の材料である。エアバッグの安全な展開を保証するために、破断線が通常は成形層だけでなく、カバー材料にも導入される。破断線は、最終層構造の輪郭に沿って又は個々の層を設置する前にそられに導入されてもよい。平坦な工作物の以下になされる記載は単一の層又は層構造のいずれかに当てはまる。
【0005】
大多数の方法が、破断線がレーザーによってエアバッグカバーの最終層構造に又は層構造を形成するために後で組み立てられる個々の層(構成部品)のいずれかに導入される従来技術から知られている。
【0006】
特許文献1は、材料除去により所定の破断線をカバー材料に導入するための方法を記述しており、パルスレーザービームの直線案内が、除去箇所により形成された線に沿う走査移動の多数の繰り返しから成り、除去箇所当たり1つのレーザーパルスしか放出しない。この場合、レーザーパルスが、それぞれの除去箇所でのカバー材料をアブレーション閾値の上の温度に加熱させてしたがって材料除去をもたらすエネルギー入力を生じさせる一方、それぞれの除去箇所に隣接するカバー材料の領域における温度をカバー材料の構造の変化をもたらし得る限界温度より低く維持するように、レーザーパルスのパラメータは選択される。
【0007】
走査移動の多数の繰り返しは、破断線の下のセンサのアレイが通過したレーザー放射を検出する低い(薄い)残留壁厚が達成されるまで実行される。いずれかの単一の除去箇所で最小の可能な残留壁厚を達成することで、走査移動の間のレーザービームの空間分解非活性化(space-resolved deactivation)が生じる。最小の可能な残留壁厚の達成は、所定量の通過したレーザーパワーを検出することで決定される。
【0008】
除去箇所当たり1つのレーザーパルスのみが衝突するのを保証するために、走査移動の速度及びパルスレーザービームのパルス繰り返し周波数が互いに調節される。
【0009】
パルスレーザービームの代わりとして、連続的なレーザービームが使用されてもよく、それは有利には繰り返しの走査移動の間に固定の体制(レジーム)に従ってスイッチオン/オフされ、線に沿って導入される破断線は、スロットと架橋の交互配列を有するスロット-架橋線の形状を有する。
【0010】
除去箇所当たりの最小残留壁厚の達成を検知し、対応する空間分解非活性化を実行することにより、材料厚さのバリエーション(変化)にもかかわらず、その全長にわたって一定の引き裂き強さを示す破断線が作製できる。この場合、引き裂き抵抗レベルは、残りの残留壁厚を介してだけでなく、残留壁まで材料を貫く除去箇所の数又は形成される穿孔の数、及びそれらの間隔又は架橋長さを介してもそれぞれ調節される。
【0011】
特許文献2に記載の方法では、破断線は、パルスレーザービームにより多数の連続的に作られる穿孔から成るシーケンスをエアバッグカバーに形成することで作製される。穿孔は、互いに重なって又は残留架橋によって離間して導入されてもよい。レーザー照射の透過が検出されるとすぐに穿孔は完成される。穿孔に加えて、破断線、破断線の区分又は個々の穴が材料を完全に貫通することなく作製される。このような非貫通弱化部の深さが、穿孔を作製するのに必要となるパルス数及び/又はパルス幅に基づいて評価でき、調節できる。この特許は当該深さの調節に関して詳細を何ら開示していない。
【0012】
特許文献3から公知の方法は本発明と以下の点で異なる。すなわち、交互の方法で、第2セグメントよりも破断線の第1セグメントに、より高いエネルギー入力が行われ、通過したレーザー照射により信号が第1セグメントの残留壁を通過し、それより検出することなく第2セグメントの残留壁の厚さに関して結論が導かれる。
【0013】
前述した全ての方法に共通するのは、作製すべき破断線の輪郭に沿う除去がレーザーによって行われ、材料が除去され、それによりそれぞれの除去箇所の下の残りの残留壁が減少されることである。材料の透過率に依存して、残留壁が或る厚さ以下になるとすぐに、レーザー照射パワーは残留壁を通って伝達される。伝達されるレーザーパルスのレーザー照射パワーは、それがセンサの感度範囲の下限より上にあるときに検出され、それでセンサは信号を生成する。非常に低い透過率を有する材料に対しては、これは完全な突破の直前に生じるか、微小孔が形成されるまで生じない。比較的高い透過率を有する材料では、残留壁厚がまた非常に高い時に信号が生成されてもよい。この場合、信号のための閾値は、残留壁の所望の厚さに相関する先のテストによって見出されてもよい。
【0014】
前述した方法では、得られた信号がレーザーのための非活性化基準(遮断基準)として直接機能すると考えられる。
【0015】
得られたセンサの信号が積分され(upwardly integrated)、このようにして形成された積分値が、非活性化基準として所望の残留壁厚と相関する目標値と比較される方法が、特許文献4から知られている。しかしながら、この場合、破断線は、破断線を形成するめくら穴を連続的に完成させることにより作製される。積分値を形成することは、特に、めくら穴を形成する際に生成される不燃堆積物及び蒸発ガスを考慮した非活性化基準の創出を可能にすることである。
【0016】
特許文献5は、平坦な工作物に材料除去により破断線を作製する方法を開示しており、レーザービームが破断線の予め決定された輪郭に沿ってガイドされる。この場合、除去箇所当たりの材料除去は、それぞれ所定の残留壁厚まで発生される。高精度の残留壁厚を実現するために、基準測定値がセンサを介して基準工作物の測定又はテスト機械加工によって得られ、それぞれの機械加工箇所に割り当てられ、記憶される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】DE102013104138B3
【文献】EP0991551B1
【文献】DE102014108133B4
【文献】EP0827802B1
【文献】DE102007024510B3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、レーザーにより平坦な工作物に破断線を作製するための方法を改良することであり、通過したレーザー照射がセンサのアレイによって破断線の輪郭に沿って除去箇所で検出されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、平坦な工作物に材料除去による破断線を作製する方法によって達成される。明確な記述のために、平坦な工作物は、可視側と該可視側に対向する裏側を有する。この用語は、エアバッグカバーとしてのこのような工作物の一般的な使用から生じる。本方法を実行するために、パルスレーザービームがレーザー発生器から生成され、当該ビームは、パルス振幅及びパルス幅により決定されるエネルギーのレーザーパルスを有する。レーザーパルスはそれぞれ、裏側からそれぞれの除去箇所において破断線のための所定の輪郭に沿って、機械加工サイクルにおいて繰り返し多数回連続的に導入される。材料除去は、それぞれの除去箇所に対してそれぞれ所定の残留壁厚まで行われ、残留壁厚はゼロであってもよい。この場合、それぞれの所定の残留壁厚のための非活性化基準に達すると、レーザーパルスの導入が除去箇所に対して空間分解式に(空間解像式に)終了される。各々の機械加工サイクルのために、除去箇所を介する測定信号により形成される測定信号曲線が生成される。各々の測定信号は、除去箇所当たりセンサのアレイの少なくとも1つのセンサによるレーザーパルスのうちの1つのパルス振幅の通過部分の検出によって生じる。除去箇所のいずれかにおけるパルス振幅の通過部分が、センサの感度範囲の下限閾値より低いか、パルス振幅の部分が全く通過しない場合、測定信号はそれぞれの除去箇所に対して生成されない。
【0020】
本発明にとって本質的なことは、機械加工サイクルが、時間的に、基準信号曲線を生成し記憶する方法ステップの後で行われることである。基準信号曲線は、除去箇所を介してパルス振幅から生じる基準信号によって形成され、この方法ステップではレーザー発生器とセンサのアレイの間に工作物は存在しない。時間的に先行する方法ステップ及び機械加工サイクルにおいて、レーザーパルスのパルス振幅は一定に維持される。各々の除去箇所のための空間分解非活性化基準として、基準信号のそれぞれの所定の割合の達成又は測定信号による基準信号からの所定の絶対距離の達成がそれぞれの場合に使用される。
【0021】
特に有利には、レーザーパルスは、機械加工サイクルのうちの第1機械加工サイクルの間、後続の機械加工サイクルよりも短いパルス幅を有し、それでレーザーパルスのエネルギーが非常に低く、そのため材料除去が生じない。これは、まだ存在する残留材料が、非活性化基準が既に達成されている除去箇所でさらに減少されたり完全に除去されたりすることを防ぐ。
【0022】
基準信号に等しい測定信号が除去箇所の幾つかのために第1機械加工サイクルで既に生成されている場合、更なるレーザーパルスは、後続の機械加工サイクルにおいてこれらの除去箇所に導入されない。
【0023】
それぞれの基準信号のそれぞれの所定の割合よりも大きい測定信号が基準信号が、第1機械加工サイクルにおいて除去箇所の幾つかのために既に生成されている場合、又は、基準信号から前記測定信号までの距離が基準信号から所定の距離よりも小さい場合、レーザーパルスが後続の機械加工サイクルにおいてこれら除去箇所に導入されない。
【0024】
有利には、それぞれの基準信号のそれぞれの所定の割合よりも小さい測定信号が又は基準信号からの距離が基準信号から所定の距離よりも大きい測定信号が、機械加工サイクルのうちの1つにおいて除去箇所の幾つかのために生成され、測定信号がこの1つの機械加工サイクルにおいてまだ生成されていない除去箇所に導入されるものよりも短いパルス幅を有するレーザーパルスが、後続の機械加工サイクルにおいて当該除去箇所に導入される。
【0025】
有利には、破断線のための同じ輪郭を備えた同じ種類の工作物を機械加工するために、時間的に先行する方法ステップが一度だけ実行され、次いで同じ種類の別な工作物に破断線を作るために使用される。
【0026】
(削除)
【0027】
本発明を例示の実施形態及び関連する図面に則して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本方法を実行するための装置を示す図である。
【
図2】センサのアレイの上に工作物が存在しない間に、除去箇所を介する基準信号により形成される基準信号曲線を示す図である。
【
図3】未加工の工作物がセンサのアレイの上に存在する間に、除去箇所を介する測定信号により形成される第1測定信号曲線を示す図である。
【
図4】工作物がn番目の機械加工サイクルで機械加工されている間に、除去箇所を介する測定信号により形成される第n測定信号曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、
従来技術から公知の適切な装置
を実行するための概略図を示す。
本装置は、パルス振幅を有するレーザーパルス1.1(パルスレーザービーム)を放出するレーザー発生器1と、レーザーパルス1.1を作業場A内で除去箇所a
1,…,a
nにガイドするレーザースキャナー2と、センサのアレイ3とを有する。センサのアレイ3では、センサ3
1,…,3
mが作業場Aの下に行列の形式で配置され、センサ3
1,…,3
mの少なくとも1つのために十分大きい開口角をそれぞれ有し、作業場A内の除去箇所a
1,…,a
nのいずれかに衝突するレーザーパルス1.1のパルス振幅又はパルス振幅の一部を検出する。センサの特有の設計と配置によって、パルス振幅の通過部分が作業場A内の任意の位置から、したがってどの除去箇所a
1,…,a
nにおいても検出でき、それによりこの装置は、特定の破断線輪郭のために構成される必要なく使用できる。本発明に従う基準信号曲線f(R
a)を記憶するために、本装置は工作物4を挿入せずに操作され、レーザーパルス1.1が破断線の所定の輪郭に沿って除去箇所a
1,…,a
nに衝突するようにレーザースキャナー2が制御される。
【0030】
機械加工のために、その裏面4.1が作業場Aに一致し、その可視面4.2がセンサのアレイ3に向き合うように、裏面4.1及び可視面4.2を有する平坦な工作物4が本装置に配置される。
【0031】
最新技術では、平坦な工作物4に破断線を作製するための材料除去は一般的に、レーザーパルス1.1を平坦な工作物4の裏面4.1に向けるレーザービームであって、数回、すなわち数回の機械加工サイクルにおいて平坦な工作物4の上の破断線用の所定の輪郭に沿って、有利にはレーザースキャナー2によりガイドされるレーザービームによって行われる。この場合、それぞれの除去箇所a1,…,anに衝突するレーザーパルス1.1は、それぞれの除去箇所a1,…,anにて平坦な工作物4の材料のアブレーションをもたらすエネルギー入力を生じさせる。
【0032】
ゼロであってもよいそれぞれに所望の残留壁厚が全ての除去箇所a1,…,anに対して達成されるまで、走査移動の多数の繰り返しが行われる。所望の残留壁厚が達成されるまで、すなわち、レーザービームの空間分解非活性化が走査移動の間に生じるまで、レーザーパルス1.1が除去箇所a1,…,anに衝突するように、レーザーパルス1.1を生成するレーザー発生器1は制御される。非活性化基準は、それぞれの除去箇所a1,…,anで通過するレーザーパルス1.1のパルス振幅の一部の関数として生成される。この目的のために、センサのアレイ3は、レーザービームの作用の反対側の、平坦な工作物4の可視面4.2に配置される。これは、本方法が従来技術から知られている限りである。
【0033】
本発明に従う方法は、それがそれぞれに所望の残留壁厚と相関する非活性化基準を得られる限りにおいて新規である。本発明に従って非活性化基準を得ることにより、輪郭に沿う除去箇所a1,…,anを介して空間分解される残留壁厚のより狭い許容差が生じ、したがって破断線の再現可能な破断挙動が生じる。
【0034】
空間分解された基準信号曲線f(Ra)と測定信号曲線f1(Ma),…,fn(Ma)の比較によって得られる非活性化基準のために、センサ3の配置を破断線の輪郭に適合させる必要が無い。これにより、固定されたセンサのアレイ3を有する装置を用いて、作業場A内の異なる相対位置に位置する異なる輪郭を備えた工作物4又は同一の輪郭を備えた工作物4を作ることが可能になる。
この目的のために、本方法は以下のように変えられる。
【0035】
それぞれのレーザーパルス1.1に対して材料除去が一般的に除去箇所a1,…,anのうちの1つで生じる前述した機械加工サイクルは時間的に、基準信号曲線f(Ra)が例えば除去箇所a1,…,anを介してパルス振幅から生じる電圧の形式の基準信号Raから形成され、記憶される方法ステップの後で行われる。この目的のために、レーザービームが破断線の輪郭に沿って一度ガイドされ、除去箇所a1,…,an当たり1つのレーザーパルス1.1を放出する。しかしながら、センサのアレイ3の上の作業場Aには工作物4は無い。レーザーパルス1.1のパルス振幅がセンサ31,…,3mのダイナミックレンジ内にあるように、センサ31,…,3mの感度は例えば減衰器によって調節される。センサ31,…,3mに対する除去箇所a1,…,anのいずれか1つの位置に依存して、センサ31,…,3mのいずれか1つ又はセンサ31,…,3mの幾つかが、レーザーパルス1.1のパルス振幅又はパルス振幅の一部を検出し、それから基準信号Raが形成される。
【0036】
単純化のために、以下では、センサ31,…,3mの1つだけがパルス振幅又はパルス振幅の一部を検出し、単一の基準信号Ra又は測定信号Maがそれぞれそこから導かれるかどうか、又はセンサ31,…,3mの幾つかがそれぞれパルス振幅の一部を検出し、そこから複数の個々の基準信号Ra又は測定信号Maがそれぞれ導かれ、それらが例えば加法、ORリンク又は平均によって全基準信号又は全測定信号を形成するために使用されるかどうかにかかわらず、基準信号Ra又は測定信号Maをそれぞれ参照されたい。
【0037】
センサ31,…,3mは通常、破断線の輪郭に相関して配置される。しかしながら、本発明に従う方法を実行するに関連して、センサは、レーザービームが一般にガイドされる作業場Aを覆う行列の形式で配置されると有利であり、それにより作業場A内に位置する破断線の異なる輪郭がセンサのアレイ3の同じ構造によって作られる。
【0038】
レーザースキャナー2がレーザービームをガイドするために使用される場合、レーザービームの衝突角度は作業場Aにおける現在の除去箇所a1,…,anの位置に応じて中央での0°から縁での約20°まで変化する。これは、作業場Aにおける破断線のそれぞれの輪郭のために、除去箇所のための、したがってセンサ31,…,3mのための個々の放射方向を生じ、最も近いセンサ中央から除去箇所a1,…,anまでの個々の距離を生じる。信号検出のためのセンサ31,…,3mのそれぞれの開口角に依存して、また互いからのセンサ31,…,3mの距離に依存して、基準信号Raが、各々の除去箇所a1,…,anのために生じる。基準信号は、センサ31,…,3mから除去箇所a1,…,anまでのそれぞれの距離及びレーザービームの衝突角度に応じて異なってもよい。というのも、センサ中央からの距離が増大するにつれてセンサの感度が減少するからである。
【0039】
基準信号Raは、個々の除去箇所a1,…,anに割り当てられる信号として記憶される。
【0040】
機械加工サイクルに先行するこの方法ステップは、破断線のための異なる輪郭を備えた工作物4を機械加工するために繰り返されなければならない。センサのアレイ3のセンサ31,…,3mに対して同じ相対位置をも有する、同じ破断線の輪郭を備えた工作物4を機械加工するとき、一度記憶された基準信号曲線f(Ra)が使用できる。
【0041】
後続の機械加工サイクルのそれぞれにおいて、それぞれの測定信号曲線f1(Ma),…,fn(Ma)が形成され、基準信号曲線f(Ra)と比較される。測定信号Maはそれぞれ、レーザーパルス1.1のパルス振幅の通過部分によって生成され、例えば除去箇所a1,…,anに割り当てられる電圧の形式で検出され、記憶される。
【0042】
レーザーパルス1.1は、先行する方法ステップと機械加工サイクルの両方において同じ変わらないパルス振幅を有する。材料除去が行われるかどうか、またどれだけの材料が、たとえあったとしても、除去箇所a1,…,anのいずれかにおいてレーザーパルス1.1当たりに除去されるかは、パルス幅によって制御される。平坦な工作物4の特性のために、測定信号Maが第1機械加工サイクルで既に形成され、それらのレベルが基準信号Raにちょうど又は略対応することが期待される場合、材料除去がまだ全く生じない程度にエネルギー入力を減少させるために、レーザーパルス1.1のパルス幅は後続の機械加工サイクルにおけるよりもこの第1機械加工サイクルにおいて短くなるように選択されると有利である。
【0043】
このような工作物4は穿孔された構造を有する組織又は織物であってもよく、それでレーザーパルス1.1が、先の材料除去の無い除去箇所a1,…,anの幾つかで妨げられずに工作物4を既に通過できる。測定信号Maが、全ての除去箇所a1,…,an又は幾つかの除去箇所a1,…,anのために第1機械加工サイクルで検出されるか又はいずれの除去箇所a1,…,anに対しても第1機械加工サイクルで検出されないかにかかわらず、本方法は一般的にどんな工作物4にも適用可能である。決定的なことは、個々の除去箇所a1,…,anのために使用される非活性化基準がそれぞれ、所定の割合の基準信号Raであるか又は基準信号Raからの絶対距離であるか、また除去箇所a1,…,anのために初めて所定の非活性化基準以上である測定信号Maが形成される場合に機械加工がそれぞれの除去箇所a1,…,anで終了されることである。基準信号Raの割合がどれほど大きいか又は非活性化基準として選択される基準信号Raからの距離がどれだけ大きいかは、工作物4の材料特性に依存する。
【0044】
図2~4は、基準信号曲線f(R
a)、及び、第1及び第n測定信号曲線f
1(M
a),f
n(M
a)を示す。この場合、導入すべき破断線の輪郭を介して全ての除去箇所a
1,…,a
nにおいて全く材料除去無しで、それぞれに衝突するレーザーパルス1.1のパルス振幅の一部が通過する(伝達される)ように、透明な工作物4が機械加工された。
【0045】
図2は、それぞれが除去箇所a
1,…,a
nのうちの1つに割り当てられた個々の基準信号R
aから生じる基準信号曲線f(R
a)を示す。基準信号R
aは、理論目標値R
sollからいくぶんそれる。
【0046】
図3は、第1機械加工サイクルの間にそれぞれが除去箇所a
1,…,a
nのうちの1つに割り当てられた個々の測定信号M
aから生じる第1測定信号曲線f
1(M
a)を示す。測定信号M
aは、それぞれの基準信号R
aからいくぶんそれるか、又は幾つかの除去箇所a
1,…,a
nにおいて基準信号R
aに一致する。後者の場合、更なるレーザーパルス1.1は更なる機械加工サイクルにおいてこれらの除去箇所a
1,…,a
nのいずれにも導入されない。
【0047】
図4は、別な第n測定信号曲線f
n(M
a)を示す。第n測定信号曲線f
n(M
a)は、基準信号曲線f(R
a)に明らかに近づいている。
【0048】
一例として、除去箇所a1,…,anのうちの3つの異なる除去箇所、例えば破断線の輪郭を記述する例えば270の除去箇所a1,…,an(n=270)の総数からの3つ、すなわちa17,a113及びa241での機械加工を説明する。
【0049】
除去箇所a17では、測定信号M17は第1機械加工サイクルの間基準信号R17からまだ大きい距離にあるのに対して、第n機械加工サイクルにおけるその距離は境界的のみであり、この除去箇所a17のための機械加工は終了された。状況は、除去箇所a113で同様であり、ここでは機械加工がより早く終了された。除去箇所a241では、基準信号R241に対応する又は非活性化基準を満たす測定信号M241が第1機械加工サイクルにおいて既に生成された。それにより有利には除去が生じず、それはレーザーパルス1.1によるエネルギー入力が材料除去のための閾値より低い、第1機械加工サイクルにおけるこのような短いパルス幅を用いた加工によって実現可能である。
【0050】
透明な平坦な工作物4は例えば組織であってもよく、除去箇所a1,…,anは簡単に言って織り糸(woven thread)、織り糸の接合点又は織り糸によって境界を定められた穴の上に位置する。これは、パルス振幅の異なる大きさの部分が通過する除去箇所a1,…,anの3つの群があることを意味する。このような工作物4はまた織物であってもよく、透過性の異なる除去箇所a1,…,anが組織と同じ態様で生じる。
【符号の説明】
【0051】
1 レーザー発生器
1.1 レーザーパルス
2 レーザースキャナー
3 センサ31,…,3mのアレイ
31,…,3m (センサ31,…,3mのアレイの)センサ
4 工作物
4.1 裏面
4.2 可視面
A 作業場
a1,…,an 除去箇所
f(Ra) 基準信号曲線
f1(Ma) 第1測定信号曲線
fn(Ma) 第n測定信号曲線
Ma 測定信号
Ra 基準信号
Rsoll 目標値