(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】工作機械及び原点復帰方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/00 20060101AFI20220113BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B23Q15/00 309B
G05B19/18 A
(21)【出願番号】P 2017219517
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】井上 広士
(72)【発明者】
【氏名】高松 登
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-301733(JP,A)
【文献】特開平5-237781(JP,A)
【文献】特開昭61-9704(JP,A)
【文献】特開2010-131722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00-15/28
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物に対して加工を行う工作機械であって、
当該工作機械は、
前記工作物に対して処理を行う工作物処理部と、
前記工作物処理部に設定された
複数の軸に対して原点復帰処理を行う原点復帰処理部
と、
当該工作機械の作業者が軸を指示して原点復帰処理を指示するための個別指示部と、
当該工作機械の作業者が前記複数の軸に対して一括して原点復帰処理を指示するための一括指示部を備え、
前記一括指示部は、当該工作機械の作業者によって前記個別指示部とは別に操作されるものであり、
前記原点復帰処理部は、
当該工作機械の作業者によって前記個別指示部
が操作され
て軸が指示されて原点復帰処理が指示された場合に、指
示された軸に対して原点復帰処理を行う個別原点復帰処理部と、
当該工作機械の作業者によって前記一括指示部
が操作された場合に、前記工作物処理部に設定された複数の軸の全部に対して原点復帰処理を行う一括原点復帰処理部を備える、工作機械。
【請求項2】
前記一括指示部は、前記個別指示部とは異なるボタンであって、当該工作機械の作業者が前記ボタンを押下することにより前記複数の軸に対して一括して原点復帰処理を指示する、請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記工作物処理部は、同じ前記工作物に対して処理を行う第1処理部と第2処理部を備え、
前記第1処理部に複数の軸が設定され、前記第2処理部には、前記第1処理部に設定された複数の軸とは原点が異なる複数の軸が設定され、
前記第1処理部に設定された複数の軸の一部と、前記第2処理部に設定された複数の軸の一部は平行であり、
前記第1処理部に設定された複数の軸の他の一部は、前記第2処理部に設定された複数の軸のいずれとも平行でなく、
前記第2処理部に設定された複数の軸の他の一部は、前記第1処理部に設定された複数の軸のいずれとも平行でなく、
前記一括原点復帰処理部は、
前記第2処理部に設定されたいずれの軸とも平行でない前記第1処理部の軸、及び、前記第1処理部に設定されたいずれの軸とも平行でない前記第2処理部の軸に対して、個別に原点復帰処理を行い、その後に、
平行な前記第1処理部及び前記第2処理部に設定された軸に対して同時に原点復帰処理を行う、請求項2記載の工作機械。
【請求項4】
前記工作機械は、前記第1処理部と前記第2処理部の組み合わせを複数備え、
前記原点復帰処理部は、前記一括指示部が指示された場合に、
加工処理を行っている前記第1処理部と前記第2処理部の組み合わせに対しては原点復帰処理を行わず、
加工処理を行っていない前記第1処理部と前記第2処理部の組み合わせに対して原点復帰処理を行う、請求項3記載の工作機械。
【請求項5】
工作物に対して加工を行う工作物処理部を備える工作機械における原点復帰方法であって、
前記工作機械は、
前記工作物に対して処理を行う工作物処理部と、
前記工作物処理部に設定された
複数の軸に対して原点復帰処理を行う原点復帰処理部
と、
前記工作機械の作業者が軸を指示して原点復帰処理を指示するための個別指示部と、
前記工作機械の作業者が前記複数の軸に対して一括して原点復帰処理を指示するための一括指示部を備え、
前記一括指示部は、前記工作機械の作業者によって前記個別指示部とは別に操作されるものであり、
前記工作機械が備える原点復帰処理部において、
前記工作機械の作業者によって前記個別指示部
が操作され
て軸が指示されて原点復帰処理が指示された場合に、個別原点復帰処理部が指
示された軸に対して原点復帰処理を行い、
前記工作機械の作業者によって前記個別指示部とは別に操作される前記一括指示部
が操作された場合に、一括原点復帰処理部が複数の軸の全部に対して原点復帰処理を行うステップを含む原点復帰方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及び原点復帰方法に関し、特に、工作物に対して加工を行う工作機械等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、工作機械に異常等が発生して運転を再開させるときには、通常、各部を移動させるために設定された軸に対して、各部を原点位置(機械基準点)まで復帰させる処理(以下、「原点復帰処理」という。)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原点復帰処理の効率を上げるためには、例えば特許文献1に記載されているように、各部に設定された複数の軸に対して、同時に移動させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、この場合には、各部が干渉し、破損してしまう可能性がある。そのため、従来は、作業者が、軸を指定し、干渉が生じないように移動させていた。また、特許文献1記載の背景技術では、プログラムにより、事前に加工の段階に応じて移動経路を設定する必要があった。
【0006】
よって、本発明は、事前に作業者が移動経路を指定する必要がなく、効率のよい原点復帰処理を実現することに適した工作機械等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1の観点は、工作物に対して加工を行う工作機械であって、当該工作機械は、前記工作物に対して処理を行う工作物処理部と、前記工作物処理部に設定された複数の軸の一部を指定して原点復帰処理を指示する個別指示部と、前記工作物処理部に設定された複数の軸の全部に対して一括して原点復帰処理を指示する一括指示部と、前記工作物処理部に設定された軸に対して原点復帰処理を行う原点復帰処理部を備え、前記原点復帰処理部は、前記個別指示部が指示された場合に、指定された軸に対して原点復帰処理を行う個別原点復帰処理部と、前記一括指示部が指示された場合に、前記工作物処理部に設定された複数の軸の全部に対して原点復帰処理を行う一括原点復帰処理部を備える。
【0008】
本願発明の第2の観点は、第1の観点の工作機械であって、前記一括原点復帰処理部は、複数の軸の一部に対して個別に原点復帰処理を行い、他の一部である複数の軸に対して同時に原点復帰処理を行う。
【0009】
本願発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の工作機械であって、前記工作物処理部は、同じ前記工作物に対して処理を行う第1処理部と第2処理部を備え、前記第1処理部に複数の軸が設定され、前記第2処理部には、前記第1処理部に設定された複数の軸とは原点が異なる複数の軸が設定され、前記第1処理部に設定された複数の軸の一部と、前記第2処理部に設定された複数の軸の一部は平行であり、前記第1処理部に設定された複数の軸の他の一部は、前記第2処理部に設定された複数の軸のいずれとも平行でなく、前記第2処理部に設定された複数の軸の他の一部は、前記第1処理部に設定された複数の軸のいずれとも平行でなく、前記一括原点復帰処理部は、前記第2処理部に設定されたいずれの軸とも平行でない前記第1処理部の軸、及び、前記第1処理部に設定されたいずれの軸とも平行でない前記第1処理部の軸に対して、個別に原点復帰処理を行い、その後に、平行な前記第1処理部及び前記第2処理部に設定された軸に対して同時に原点復帰処理を行う。
【0010】
本願発明の第4の観点は、第3の観点の工作機械であって、前記工作機械は、前記第1処理部と前記第2処理部の組み合わせを複数備え、前記原点復帰処理部は、前記一括指示部が指示された場合に、加工処理を行っている前記第1処理部と前記第2処理部の組み合わせに対しては原点復帰処理を行わず、加工処理を行っていない前記第1処理部と前記第2処理部の組み合わせに対して原点復帰処理を行う。
【0011】
本願発明の第5の観点は、工作物に対して加工を行う工作物処理部を備える工作機械における原点復帰方法であって、前記工作機械が備える原点復帰処理部が、前記工作物処理部に設定された複数の軸の一部が指定されて原点復帰処理が指示された場合には、指定された軸に対して原点復帰処理を行い、前記工作物処理部に設定された複数の軸の全部に対して一括して原点復帰処理が指示された場合には、前記工作物処理部に設定された複数の軸の全部に対して原点復帰処理を行うステップを含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の各観点によれば、従来と同様に作業者が個別指示部を指示して軸を指定して原点復帰処理を行うこともでき、作業者が一括指示部を指示して全部の軸に対する原点復帰処理を行うこともできる。そのため、作業者は、簡易な操作により、複数の軸の原点復帰処理を指示することができる。
【0013】
さらに、第2の観点によれば、一部の軸について個別に原点復帰処理を行うことにより干渉を防ぎ、他の一部の軸について同時に原点復帰処理を行うことにより効率のよい原点復帰処理を実現することができる。特に、第3の観点によれば、同時に原点復帰処理を行う軸を原点の異なる各部の平行な軸とすることにより、事前に、平行でない軸を個別に原点復帰処理して干渉を防ぎ、平行な軸を同時に原点復帰処理することにより効率を向上させることができる。
【0014】
さらに、第4の観点によれば、自動加工処理を行っているか否かを考慮することにより、異常等が発生して停止した箇所のみを対象にして原点復帰処理を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願発明の実施の形態に係る工作機械の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】(a)
図1の工作機械1の具体的な構成の一例と、(b)各部に設定される軸を示す。
【
図3】
図2(a)の工作機械の具体的な動作の一例を説明するための図である。
【
図5】
図1の原点復帰処理部11の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
図1は、本願発明の実施の形態に係る工作機械の構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
工作機械1は、工作物保管部31,…,3N(Nは2以上の自然数)(以下、添え字は、省略する場合がある。)と、複数の加工処理部51,…,5Nと、移載部61,…,6N-1と、操作部9と、原点復帰処理部11を備える。加工処理部5i(iは、N以下の自然数)は、ローダ部13iと、本体部15iを備える。
【0019】
工作物保管部3は、工作物を保管する。工作物に対する加工は、複数の加工処理部51.…,5Nにおいて、工作物保管部31が保管する工作物に対して、加工処理部5の間を移載部6により移動させつつ、順に加工してもよい。また、各工作物保管部3が保管する工作物を、加工処理部5において並行して加工してもよい。また、例えば、一部の加工処理部5では個々に並列して工作物に対する加工処理を行い、他の複数の加工処理部5では工作物を移動させつつ順に加工してもよい。
【0020】
工作物保管部3iは、各加工処理部5iに対応して設けてもよく、例えば、両端の加工処理部5に対応して工作物保管部31と3Nを設けるように、一部の加工処理部5に対応して設けてもよい。
【0021】
まず、N個の加工処理部5により順に加工する場合について説明する。各加工処理部5iにおいて、ローダ部13iは上流から工作物を移動し、本体部15iは工作物を保持して加工を行う。
【0022】
ローダ部131は、工作物保管部31の工作物を本体部151に移動し、本体部151は工作物を保持して加工を行う。移載部61は、本体部151による加工後の工作物を次の加工処理部52に移動する。
【0023】
Nが3以上である場合、ローダ部13j(jは、2以上N-1以下の自然数)は移載部6j-1の工作物を本体部15jに移動し、本体部15jは工作物を保持して加工を行う。移載部6jは、本体部15jによる加工後の工作物を次の加工処理部5j+1に移動する。
【0024】
ローダ部13Nは移載部6N-1の工作物を本体部15Nに移動し、本体部15Nは工作物を保持して加工を行う。加工処理部5Nによる加工後の工作物は、工作物保管部3Nが保管する。
【0025】
工作機械1において、工作物は、複数の加工処理部5により順に処理される。同じ加工処理部5が備えるローダ部13及び本体部15は、各時点で同じ工作物に対して処理を行う。異なる加工処理部5は、各時点で異なる工作物に対して処理を行う。
【0026】
次に、個々の加工処理部5iが、工作物保管部3iが保管する工作物に対して加工を行う場合について説明する。ローダ部13iは、工作物保管部3iの工作物を本体部15iに移動し、本体部15iは工作物を保持して加工を行う。加工後の工作物は、工作物保管部3iに移動する。
【0027】
図2は、(a)
図1の工作機械の具体的な構成の一例と、(b)各部に設定される軸を示す。
図3は、
図2(a)の工作機械の具体的な動作の一例を説明するための図である。レーン33に、ローダ部31及び39が存在する。本体部として、工作物を設置する設置部35及び41と、工具を設置する加工部37及び43が存在する。
【0028】
図2(b)を参照して、ローダ部31及び39は、レーン33に沿って水平方向にB軸が、鉛直方向にY軸が設定されている。これにより、ローダ部31及び39は、それぞれ、B軸に沿ってレーン上を水平方向に移動し、Y軸に沿って上下動を行うことにより、上流から工作物を移動させて設置部35及び41に設置する。
【0029】
加工部37及び43は、Y軸と垂直にX軸が設定されている。設置部35及び41は、X軸と垂直で、水平に(すなわち、Y軸と垂直に)Z軸が設定されている。設置部35及び41がZ軸に沿って移動し、加工部37及び43はX軸に沿って移動することにより、相対的な位置を変更しつつ、工作物に対する加工が行われる。
【0030】
図2及び
図3を参照して具体的な動作の一例を説明する。
図3の3つの矢印は、右から、ローダ部31、移載部38及びローダ部39による工作物の移動範囲を示す。
【0031】
まず、2か所の加工処理部により順に加工する場合について説明する。ローダ部31が、B軸によりレーン33に沿って図の右側に移動し、Y軸により下降して、工作物保管部45から加工前の工作物を保持して上昇する。そして、B軸によりレーン33に沿って図の左側に移動して設置部35の上方に移動し、Y軸により下降して工作物を設置部35に設置して上昇する。設置部35と加工部37は、それぞれ、Z軸及びX軸に沿って移動して相対的な位置を変更しつつ、加工部37は、加工処理を行う。加工後の工作物は、移載部38により図の右から左へと移動する。
【0032】
ローダ部31及び39は、B軸に沿って図の右側に移動し、それぞれ、移載部38及び工作物保管部45の上方に位置する。ローダ部31は、Y軸に沿って下降して工作物保管部45から加工前の工作物を保持して上昇する。ローダ部39は、Y軸に沿って下降し、移載部38から工作物を保持して上昇する。
【0033】
ローダ部31及び39は、B軸に沿って図の左側に移動し、それぞれ、Y軸に沿って下降して工作物を設置部35及び41に設置して上昇する。設置部35と加工部37は、それぞれ、Z軸及びX軸に沿って移動して相対的な位置を変更しつつ、加工部37は、加工処理を行う。加工後の工作物は、移載部38により図の右から左へと移動する。設置部41と加工部43は、それぞれ、Z軸及びX軸に沿って移動して相対的な位置を変更しつつ、加工部43は加工処理を行う。加工後の工作物は、工作物保管部47に移動する。
【0034】
同様にして、工作物に対して複数の加工処理部により順に加工することができる。なお、移載部38は、反転機能があってもよい。
【0035】
次に、個々の加工処理部により加工する場合について説明する。ローダ部31及び39は、それぞれ、B軸に沿って図の右側及び左側に移動し、Y軸に沿って下降して、工作物保管部45及び47から工作物を保持して上昇する。そして、B軸に沿って図の左側及び右側に移動し、Y軸に沿って下降して工作物を設置部35及び41に設置して上昇する。設置部35と加工部37は、それぞれ、Z軸及びX軸に沿って移動して相対的な位置を変更しつつ、加工部37は、加工処理を行う。設置部41と加工部43は、それぞれ、Z軸及びX軸に沿って移動して相対的な位置を変更しつつ、加工部43は加工処理を行う。加工後の工作物は、それぞれ、工作物保管部45及び47に移動する。
【0036】
図1を参照して、操作部9は、個別指示部17と、一括指示部19を備える。個別指示部17は、モード設定部21と、軸設定部23と、系統設定部25を備える。
【0037】
図4は、
図1の操作部9の一例を示す図である。作業者は、操作部を操作することにより、工作機械に対して様々な指示をすることができる。
【0038】
ダイヤル51は、動作のモードを切り替えるためのものである。「EDIT」は、プログラムを編集するためのものである。「AUTO」は、自動加工処理を行うためのものである。「RETURN」は、従来と同様に、個別に軸を指定して原点復帰処理を行うためのモードを指示するためのものである。
【0039】
作業者は、ダイヤル51を「RETURN」とすると、ボタン53を操作することにより、系統を切り替えたり、軸を指定して原点復帰処理を指示したりすることができる。例えば、上の矢印のボタンを押すことによりZ軸の原点復帰処理を、B/Lボタンと下の矢印のボタンを押すことによりY軸の原点復帰処理を、右の矢印のボタンを押すことによりX軸の原点復帰処理を、G/Lボタンと左の矢印のボタンを押すことによりB軸の原点復帰処理を指示することができる。また、左右の系統ボタン(LEFT M/CとRIGHT M/Cのボタン)を押すことにより、系統切替を指示することができる。作業者は、従来と同様に、系統及び軸を個別に指定して、原点復帰処理を指示することができる。
【0040】
図4では、新たに、ORIGINボタン55を設けている。作業者は、このORIGINボタン55を長押しすることにより、2つの系統に対して、複数の軸の原点復帰処理を指示することができる。ここで、原点復帰処理は、まず、2つの系統のZ軸に対して行い、次にY軸に対して行い、続いて、平行なX軸及びB軸に対して同時に行われる。各軸において原点に復帰したことは、例えば、原点復帰信号により確認することができる。原点復帰信号により原点復帰が確認された軸に対応して、原点位置ランプが点灯する。すべての軸で原点に復帰したときには、すべての原点位置ランプが点灯する。これにより、ローダ部31及び39と、本体部との干渉を防ぎつつ、複数の軸に対する原点復帰処理を簡易に指示して実現することができる。
【0041】
なお、例えば予期せぬ障害物などがあった場合のために、作業者がORIGINボタンから手を離すと、その場で、ORIGINボタン55による原点復帰処理が解除されるようにしてもよい。作業者は、個別指示部により軸及び系統を指示して、障害物等に対応して原点復帰処理を行い、改めてORIGINボタン55による原点復帰処理を行うことができる。
【0042】
図1を参照して、原点復帰処理部11は、個別原点復帰処理部27と、一括原点復帰処理部29を備える。
図5は、原点復帰処理部11の動作の一例を示すフロー図である。異常から復旧すると(ステップST1)、原点復帰処理部11は、作業者が個別指示部17を操作して、軸及び系統を指示した個別の軸の原点復帰処理を指示したか否かを判断する(
図4のダイヤル51による「RETURN」モードの指示を参照。)(ステップST2)。個別の軸の原点復帰処理を指示した場合には、ステップST3に進み、そうでなければステップST7に進む。
【0043】
ステップST3において、個別の軸の原点復帰モードに切り替える。そして、個別原点復帰処理部27は、作業者の指示により、指定された系統に対して、指示された軸の個別の原点復帰処理を行う(ステップST4)。軸の指定の順の例は、Z軸、Y軸、X軸、B軸である。指定された系統に対してすべての軸の原点復帰処理が行われると、作業者の指示により系統を切り替え(ステップST5)、指定された軸の個別の原点復帰処理を行う(ステップST6)。すべての系統のすべての軸に対して原点復帰処理が行われ、すべての原点位置ランプが点灯しているならば、処理を終了する。
【0044】
ステップST7において、原点復帰処理部11は、作業者が一括指示部19を操作して、系統及び軸に対して一括して原点復帰処理を指示したか否かを判断する(
図4の「ORIGIN」ボタンが所定の設定時間以上継続して押されたか否かによる指示を参照)。原点復帰処理を一括して指示したならば、ステップST8に進む。そうでないならば、ステップST2に戻る。なお、長押しによる判断は誤動作を避けるためであり、必要がなければ、単にボタンの押下のみで判断してもよい。
【0045】
ステップST8において、一括原点復帰処理部29は、2つの系統に対して、Z軸の原点復帰処理、次にY軸の原点復帰処理、続いてX軸及びB軸の同時の原点復帰処理を行う。ただし、一方にのみ異常が発生し、他方が自動運転を行っている場合には、自動運転を行っているものは原点復帰処理を行わず、自動運転を行っていないもののみ原点復帰処理を行う。すべての系統のすべての軸に対して原点復帰処理が行われ、すべての原点位置ランプが点灯しているならば、処理を終了する。これにより、多数の系統があり、さらに、各系統に多数の軸がある場合でも、簡易に原点復帰処理を指示して異常復旧を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 工作機械、3,45,47 工作物保管部、5 加工処理部、6,38 移載部、9 操作部、11 原点復帰処理部、13,31,39 ローダ部、15 本体部、17 個別指示部、19 一括指示部、21 モード設定部、23 軸設定部、25 系統設定部、27 個別原点復帰処理部、29 一括原点復帰処理部、33 レーン、35,41 設置部、37,43 加工部