(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】戸挟み検知装置及びドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
B61D 19/02 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
B61D19/02 T
(21)【出願番号】P 2017224883
(22)【出願日】2017-11-22
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 健伸
(72)【発明者】
【氏名】田邉 和男
(72)【発明者】
【氏名】李 ダリン
(72)【発明者】
【氏名】牧平 郁夫
【審査官】米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-6469(JP,A)
【文献】特開2013-159215(JP,A)
【文献】特開2000-130018(JP,A)
【文献】特開2007-32119(JP,A)
【文献】特開2003-262072(JP,A)
【文献】特開2016-159847(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0011004(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015203589(DE,A1)
【文献】国際公開第2006/066535(WO,A1)
【文献】特開2008-8121(JP,A)
【文献】特開2001-55138(JP,A)
【文献】特開2012-76566(JP,A)
【文献】特開2013-63699(JP,A)
【文献】特開2011-16419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗降口を開閉する両開きのドアが戸挟み状態であるか否かを検知する戸挟み検知装置であって、
一方のドアの戸先に取り付けられた弾性部材の変形を検知する第1検知センサの出力信号と、他方のドアの戸先に取り付けられた弾性部材の変形を検知する第2検知センサの出力信号とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した、前記第1検知センサの出力信号と前記第2検知センサの出力信号との差である算出値を算出し、前記算出値に基づいて戸挟み状態であるか否かを判定する判定部と、を備える
戸挟み検知装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記算出値と判定値との比較により判定し、前記車両の走行状態に応じて異なる前記判定値を用いて判定する
請求項1に記載の戸挟み検知装置。
【請求項3】
前記第1検知センサ及び前記第2検知センサを備え、
前記第1検知センサ及び前記第2検知センサは、前記弾性部材の内部に形成されている中空部内の圧力を検知する圧力センサである
請求項1又は2に記載の戸挟み検知装置。
【請求項4】
車両の乗降口を開閉する両開きのドアを制御するドア制御装置を備え、
前記ドア制御装置は、
一方のドアの戸先に取り付けられた弾性部材の変形を検知する第1検知センサの出力信号と、他方のドアの戸先に取り付けられた弾性部材の変形を検知する第2検知センサの出力信号とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した、前記第1検知センサの出力信号と前記第2検知センサの出力信号との差である算出値を算出し、前記算出値に基づいて戸挟み状態であるか否かを判定する判定部と、を備える
ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗降口を開閉するドアの戸挟み検知装置及びドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗降口を開閉するドアによって、物が挟まれる戸挟みを検知する戸挟み検知装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の戸挟み検知装置では、ドアの戸先に取り付けられる弾性部材の変形を圧力スイッチが設けられている。そして、圧力スイッチの結果に基づいて戸挟みを検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の戸挟み検知装置では、車両の走行時の振動による圧力変化が圧力スイッチに検出されると、戸挟みの検知精度が低下するおそれがある。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、戸挟みの検知精度を高めることのできる戸挟み検知装置及びドア開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する戸挟み検知装置は、車両の乗降口を開閉する両開きのドアが戸挟み状態であるか否かを検知する戸挟み検知装置であって、一方のドアの戸先に取り付けられた弾性部材の変形を検知する第1検知センサの出力信号と、他方のドアの戸先に取り付けられた弾性部材の変形を検知する第2検知センサの出力信号とを取得する取得部と、前記取得部が取得した、前記第1検知センサの出力信号と前記第2検知センサの出力信号との差である算出値を算出し、前記算出値に基づいて戸挟み状態であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0006】
上記課題を解決するドア開閉装置は、車両の乗降口を開閉する両開きのドアを制御するドア制御装置を備え、前記ドア制御装置は、一方のドアの戸先に取り付けられた弾性部材の変形を検知する第1検知センサの出力信号と、他方のドアの戸先に取り付けられた弾性部材の変形を検知する第2検知センサの出力信号とを取得する取得部と、前記取得部が取得した、前記第1検知センサの出力信号と前記第2検知センサの出力信号との差である算出値を算出し、前記算出値に基づいて戸挟み状態であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0007】
車両の走行時には、検知センサの出力信号には車両の振動に伴う成分が含まれる。そして、両開きのドアのそれぞれの検知センサの出力信号は、車両の振動を検出した場合には正負が同じであり、戸挟みを検出した場合には正負が逆となることを発明者らは見出した。上記構成によれば、各出力信号に含まれる車両の振動に伴う成分は打ち消されるため、各検知センサの出力信号の差である算出値は小さくなる。一方、各出力信号に含まれる戸挟みに伴う成分は足し合わされるため、上記算出値は大きくなる。よって、この算出値に基づいて戸挟みを判定することで、車両の振動に起因する戸挟みの誤検知を抑制することができる。その結果、戸挟みの検知精度を高めることができる。
【0008】
上記戸挟み検知装置について、前記判定部は、前記算出値と判定値との比較により判定し、前記車両の走行状態に応じて異なる前記判定値を用いて判定することが好ましい。
車両の走行状態によって車両の振動が異なることがある。そこで、上記構成によれば、戸挟みの検知精度を更に高めることができる。
【0009】
上記戸挟み検知装置について、前記第1検知センサ及び前記第2検知センサを備え、前記第1検知センサ及び前記第2検知センサは、前記弾性部材の内部に形成されている中空部内の圧力を検知する圧力センサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、戸挟みの検知精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】戸挟み検知装置を備えるドア開閉装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図。
【
図2】同実施形態の戸挟み検知装置が取得する検知信号の一例を示すグラフ。
【
図3】同実施形態の戸挟み検知装置が取得する検知信号の一例を示すグラフ。
【
図4】(a)(b)は同実施形態の戸挟み検知装置が取得する検知信号の一例を示すグラフ。
【
図5】同実施形態の戸挟み検知装置による戸挟み検知処理を示すフローチャート。
【
図6】戸挟み検知装置を備えるドア制御装置の変形例を示す図。
【
図7】戸挟み検知装置による戸挟み検知処理の変形例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、
図1~
図4を参照して、戸挟み検知装置の第1の実施形態について説明する。戸挟み検知装置は、電車等の車両の乗降口を開閉する各ドアに対して設けられ、ドアに物等が挟まれる戸挟みを検知する装置である。
【0013】
図1に示すように、車両のドア30は、図中左側の第1ドア31と図中右側の第2ドア32とを備える両開きドアである。ドア30は、空気圧シリンダの動作によって開閉される。ドア30は、ドア制御装置2によって駆動制御される。ドア制御装置2は、空気圧シリンダを制御することでドア30を開閉する。なお、ドア30の駆動装置は、空気圧シリンダに限らず、電動モータ等も駆動装置であってもよい。
【0014】
ドア30には、ドア30に物等が挟まれたことを検知する戸挟み検知装置1が設けられている。戸挟み検知装置1は、ドア制御装置2と電気的に接続され、信号を相互通信している。また、ドア制御装置2は、車両を制御する運転室等に設置される車両制御盤4と電気的に接続され、信号を相互通信している。ドア制御装置2と戸挟み検知装置1とを備える装置をドア開閉装置3とする。
【0015】
ドア制御装置2は、ドア30の開閉の制御を行うドア開閉部21と、全閉時に減圧制御を行うドア減圧部22とを備える。ドア開閉部21は、図示しないコンプレッサの空気圧によって空気圧シリンダの駆動を制御して、ドア30を全開状態と全閉状態との間で移動させる。ドア減圧部22は、全閉状態のドア30において、全閉状態になってから所定期間のみ、空気圧シリンダの閉まる方向の駆動を弱める。これより、乗降者の物等が第1ドア31と第2ドア32との間に挟まった際に、挟まれた物を引き抜くことができ、戸挟みを解消することができる。なお、ドア減圧部22の構成を省略してもよい。
【0016】
車両制御盤4は、ドア制御装置2にドア30の開閉指令を行う開閉指令部41と、戸挟みの検知を許可する検知許可部42と、戸挟みを報知する戸挟み報知部43とを備える。開閉指令部41は、運転士や車掌等の乗務員によって操作され、開指令又は閉指令をドア制御装置2に出力する。ドア制御装置2は、開指令が入力されると、ドア開閉部21がドア30を開状態に移動させ、閉指令が入力されると、ドア開閉部21がドア30を閉状態に移動させる。検知許可部42は、乗務員によって操作され、戸挟みの検知を行うか否かを設定する。検知許可部42は、戸挟検知を行うときには検知指令を出力し、戸挟み検知を行わないときには検知指令を出力しない。戸挟み報知部43は、戸挟み検知装置1によって戸挟みが検知されたときに、車両制御盤4に設けられたランプを点灯させたり、戸挟みの情報を表示させたりする。
【0017】
第1ドア31の戸先には、ゴム等の弾性材料からなる第1弾性部材51が取り付けられている。第1弾性部材51は、内部に空間51Aを有する筒状部材である。第1弾性部材51は、ドア30に物が挟まったときには変形し、空間51Aの体積も変化する。第2ドア32の戸先には、ゴム等の弾性材料からなる第2弾性部材52が取り付けられている。第2弾性部材52は、内部に空間52Aを有する筒状部材である。第2弾性部材52は、ドア30に物が挟まったときには変形し、空間52Aの体積も変化する。
【0018】
第1ドア31には、第1弾性部材51の変形を検知する第1検知センサ53が設けられている。第1検知センサ53は、第1弾性部材51の空間51Aの圧力を検知する圧力センサである。第1検知センサ53は、ドア30が閉じた状態での圧力を基準圧力として、基準圧力に対する変動圧力を出力信号として出力する。第1検知センサ53は、第1ドア31の上部に取り付けられ、第1弾性部材51の空間51Aの上端部にチューブ53Aを介して接続されている。なお、第1検知センサ53を戸挟み検知装置1の構成の一部としてもよい。また、第1検知センサ53及び第1弾性部材51を戸挟み検知装置1の構成の一部としてもよい。
【0019】
第2ドア32には、第2弾性部材52の変形を検知する第2検知センサ54が設けられている。第2検知センサ54は、第2弾性部材52の空間52Aの圧力を検知する圧力センサである。第2検知センサ54は、ドア30が閉じた状態での圧力を基準圧力として、基準圧力に対する変動圧力を出力信号として出力する。第2検知センサ54は、第2ドア32の上部に取り付けられ、第2弾性部材52の空間52Aの上端部にチューブ54Aを介して接続されている。なお、第2検知センサ54を戸挟み検知装置1の構成の一部としてもよい。また、第2検知センサ54及び第2弾性部材52を戸挟み検知装置1の構成の一部としてもよい。
【0020】
ドア30には、ドア30が閉じられたことを検出する戸閉スイッチ23が設けられている。戸閉スイッチ23は、ドア30が閉じられることにより第2ドア32が所定位置に達すると、車両の本体に取り付けられる接触部60に接触するように、第2ドア32に取り付けられている。接触部60に接触した戸閉スイッチ23は、ドア30が閉じたことを示す戸閉信号をドア制御装置2に出力する。戸閉信号は、ドア制御装置2を介して車両制御盤4に出力される。なお、戸閉スイッチ23は、第1ドア31に取り付けられてもよい。
【0021】
戸挟み検知装置1は、第1検知センサ53及び第2検知センサ54からの出力信号を取得する取得部11と、戸挟みを判定する判定部12とを備える。
取得部11は、フィルタ11Aを備える。フィルタ11Aは、車両の振動の周波数成分が高周波数であることが多いので、ローパスフィルタが有効である。フィルタ11Aは、例えば6Hz以上の周波数の信号を除去する。取得部11は、第1検知センサ53から出力された第1出力信号を取得し、第1出力信号をフィルタ11Aに通過させて車両の振動の周波数成分を低減させた第1検知信号を判定部12に出力する。取得部11は、第2検知センサ54から出力された第2出力信号を取得し、第2出力信号をフィルタ11Aに通過させて車両の振動の周波数成分を低減させた第2検知信号を判定部12に出力する。
【0022】
判定部12は、取得部11が取得した、第1検知信号と第2検知信号との差である算出値を算出し、この算出値に基づいて車両が走行しているときに戸挟み状態であるか否かを判定する。判定部12は、算出値と判定値との比較によって戸挟み状態であるか否かを判定し、算出値が判定値よりも大きいときに戸挟み状態であると判定する。
【0023】
ここで、
図2及び
図3を参照して、算出値を算出することによる車両の振動に伴う成分の低減について説明する。なお、第1出力信号D1を出力する第1ドア31が車両の進行方向において後側に位置し、第2出力信号D2を出力する第2ドア32が車両の進行方向において前側に位置するとする。
【0024】
図2は、車両走行時に戸挟みが発生したときの第1出力信号D1、第2出力信号D2、算出値D3(=D1-D2)を示している。車両走行時に戸挟みが発生すると、車両の進行方向の後側のドアである第1ドア31の戸先が引っ張られて第1出力信号が正の値となり、車両の進行方向の前側のドアである第2ドア32の戸先が開放されて第2出力信号が負の値となる。算出値D3は、各出力信号に含まれる戸挟みに伴う成分は足し合わされるため、出力信号よりも大きな値となる。
【0025】
図3は、車両走行時の走行振動があるときの第1出力信号D1、第2出力信号D2、算出値D3(=D1-D2)を示している。車両走行時の走行振動があると、第1弾性部材51と第2弾性部材52とは同じように変形して、第1出力信号D1と第2出力信号D2とがほぼ同じ値として出力される。算出値D3は、各出力信号に含まれる車両の振動に伴う成分は打ち消されるため小さな値となり、車両の走行振動による影響を低減することができる。なお、算出値を用いて判定すれば、車両の走行振動による影響を低減することができるため、車両が走行しているときと車両が停止しているときで判定を切り替えずに、戸挟みを検知することができるようになる。
【0026】
ここで、
図4(a)(b)を参照して、フィルタ11Aによる車両の振動の周波数成分の低減について説明する。
図4(a)は、検知センサ53,54から出力された出力信号を示している。
図4(a)の左側には、車両が停止状態における戸挟みが発生したときの出力信号X1を示し、低周波の信号となる。
図4(a)の右側には、車両走行時の走行振動があるときの出力信号X2を示し、高周波の信号となる。走行振動を含む出力信号X2の振幅は第1振幅W1となるため、戸挟みを判定するための判定値は第1振幅W1よりも大きな第1判定値T1とせざるを得ない。第1判定値T1では、戸挟みにおける左側の山M1を検知することができず、戸挟みにおける右側の山M2のように左側の山M1よりも大きな値でないと検知することができない。そこで、検知センサ53,54から出力された出力信号をフィルタ11Aに通過させることで、
図4(b)に示す検知信号が得られる。
【0027】
図4(b)は、出力信号をフィルタ11Aに通過させた検知信号を示している。
図4(b)の左側には、車両が停止状態における戸挟みが発生したときの検知信号Y1を示している。
図4(b)の右側には、車両走行時の走行振動があるときの検知信号Y2を示している。走行振動を含む検知信号Y2の振幅は第1振幅W1よりも小さな第2振幅W2となるため、戸挟みを判定するための判定値は第1判定値T1よりも小さな第2判定値T2とすることができる。第2判定値T2では、戸挟みにおける右側の山M2よりも小さい左側の山M1を検知することができる。
【0028】
判定部12は、取得部11において第1出力信号と第2出力信号とをフィルタ11Aに通過させた第1検知信号と第2検知信号との差である算出値と判定値とを比較することによって戸挟みを判定する。
【0029】
次に、
図5を参照して、戸挟み検知装置1による戸挟み検知処理について説明する。
まず、戸挟み検知装置1は、ドア閉指令があるか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、戸挟み検知装置1は、ドア制御装置2を介して車両制御盤4から出力されたドア閉指令の入力があると、ドア30が閉まるので戸挟みがあるか否かの検知を開始する。なお、戸挟み検知装置1は、ドア閉指令がないとき(ステップS11:NO)には、ドア閉指令があるまで待機する。
【0030】
一方、戸挟み検知装置1は、ドア閉指令があるとき(ステップS11:YES)には、第1検知信号及び第2検知信号を取得する(ステップS12)。すなわち、取得部11は、第1検知センサ53から第1出力信号が入力すると、第1出力信号をフィルタ11Aに通過させて、車両の振動の周波数成分を低減させた第1検知信号として取得する。また、取得部11は、第2検知センサ54から第2出力信号が入力すると、第2出力信号をフィルタ11Aに通過させて、車両の振動の周波数成分を低減させた第2検知信号として取得する。そして、取得部11は、第1検知信号及び第2検知信号を判定部12に出力する。
【0031】
続いて、戸挟み検知装置1は、検知信号の差である算出値を算出する(ステップS13)。すなわち、判定部12は、第1検知信号と第2検知信号との差である算出値を算出することで、出力信号に含まれる車両の振動に伴う成分を低減することができる。
【0032】
続いて、戸挟み検知装置1は、算出値が判定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。すなわち、判定部12は、算出値が判定値よりも小さいと判定すると(ステップS14:NO)、終了条件があるか否かを判定する(ステップS18)。判定部12は、終了条件が成立しない場合には(ステップS18:NO)、ステップS12に移行して判定を継続する。また、判定部12は、終了条件が成立する場合には(ステップS18:YES)、ステップS17に移行する。ここで、終了条件は、車両が走行を開始して所定時間経過した、車両後端がホーム端を通過した、車両速度が所定速度を超えた等の戸挟み検知が不要となる条件である。
【0033】
一方、判定部12は、検知信号が判定値よりも大きいと判定すると(ステップS14:YES)、戸挟みありと判定する(ステップS15)。すなわち、判定部12は、車両の振動に対し、戸挟みによる圧力変動を相対的に大きな値にし、フィルタリング処理により、車両の振動による影響を低減させて、算出値に対して判定することで戸挟み検知を行うことができるようになる。
【0034】
ここで、ステップS12~S14、及びステップS18の処理を言い換えると、判定部12は、検知信号を継続して取得して、判定値よりも大きい算出値が存在するか終了条件が成立するまで判定を継続する。
【0035】
続いて、戸挟み検知装置1は、戸挟みありと判定したとき戸挟みを出力する(ステップS16)。判定部12は、戸挟みありと判定すると、戸挟みがあることをドア制御装置2に出力し、ドア制御装置2を介して車両制御盤4に戸挟みを出力する。
【0036】
続いて、戸挟み検知装置1は、判定部12にて終了条件が成立したとき検知信号の取得を停止して(ステップS17)、戸挟み検知処理を終了する。すなわち、取得部11は、出力信号が入力してきてもフィルタ11Aを通過させないようにしてもよいし、出力信号の入力自体を停止してもよい。また、取得部11は、第1検知センサ53及び第2検知センサ54からの出力信号の出力を停止させてもよいし、第1検知センサ53及び第2検知センサ54による圧力の検知を停止させてもよい。
【0037】
上記の戸挟み検知装置1では、第1検知センサ53及び第2検知センサ54を用いることで、従来技術の検知スイッチによって戸挟みを判定するものと異なり、第1弾性部材51及び第2弾性部材52の変形による圧力変動を用いて差をとることで、車両の振動に伴う成分を低減することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)各出力信号に含まれる車両の振動に伴う成分は打ち消されるため、検知センサ53,54の出力信号の差である算出値は小さくなる。一方、各出力信号に含まれる戸挟みに伴う成分は足し合わされるため、上記算出値は大きくなる。よって、この算出値に基づいて戸挟みを判定することで、車両の振動に起因する戸挟みの誤検知を抑制することができる。その結果、車両が走行しているときの戸挟みの検知精度を高めることができる。
【0039】
(2)算出値と判定値との比較により戸挟みを容易に判定することができる。
(3)フィルタ11Aを通過した検知信号に対して判定を行うことで、車両の振動に起因する周波数成分の信号を除去することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
以下、
図7を参照して、戸挟み検知装置の第2の実施形態について説明する。この実施形態の戸挟み検知装置は、車両の走行状態を加味して判定する点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0041】
戸挟み検知装置1は、車両の走行状態を示す走行状態情報を車両制御盤4からドア制御装置2を介して取得する。ここで、走行状態情報とは、車両の状態である停止、走行(力行)、及び制動(ブレーキ)、や車両速度を示す情報等である。
【0042】
戸挟み検知装置1の取得部11のフィルタ11Aは、車両の走行状態に応じて異なる周波数成分の信号を除去する。フィルタ11Aは、車両速度が上昇するほど、走行振動による出力信号の周波数は上昇するので、除去する周波数の下限が上昇される。また、フィルタ11Aは、車両の状態から車両速度が上昇すると考えられる場合には除去する周波数の下限が上昇され、車両の状態から車両速度が減少すると考えられる場合には除去する周波数の下限が減少される。
【0043】
戸挟み検知装置1の判定部12は、車両の走行状態に応じて異なる判定値を用いる。車両速度が上昇するほど戸挟みの可能性は減少するので、判定値が上昇される。また、車両の状態から車両速度が上昇すると考えられる場合には判定値が上昇され、車両の状態から車両速度が減少すると考えられる場合には判定値が減少される。
【0044】
図7に示すように、戸挟み検知装置1は、戸挟み検知装置1は、ドア閉指令があるとき(ステップS11:YES)には、走行状態情報を取得する(ステップS21)。すなわち、戸挟み検知装置1は、車両制御盤4からドア制御装置2を介して走行状態情報を取得する。
【0045】
続いて、戸挟み検知装置1は、走行状態に応じてフィルタ11Aを設定する(ステップS22)。すなわち、取得部11は、フィルタ11Aの除去する周波数の下限を走行状態に応じて変更する。また、戸挟み検知装置1は、走行状態に応じて判定値を設定する(ステップS23)。すなわち、判定部12は、走行状態に応じて判定値を変更する。なお、ステップS22とステップS23との順番は逆でも、同時でもよい。
【0046】
続いて、戸挟み検知装置1は、第1検知信号及び第2検知信号を取得する(ステップS12)。すなわち、取得部11は、第1検知センサ53から第1出力信号が入力すると、第1出力信号をフィルタ11Aに通過させて、車両の振動の周波数成分を低減させた第1検知信号として取得する。また、取得部11は、第2検知センサ54から第2出力信号が入力すると、第2出力信号をフィルタ11Aに通過させて、車両の振動の周波数成分を低減させた第2検知信号として取得する。そして、取得部11は、第1検知信号及び第2検知信号を判定部12に出力する。
【0047】
続いて、戸挟み検知装置1は、検知信号の差である算出値を算出する(ステップS13)。すなわち、判定部12は、第1検知信号と第2検知信号との差である算出値を算出することで、出力信号に含まれる車両の振動に伴う成分を低減することができる。
【0048】
続いて、戸挟み検知装置1は、走行状態に応じて設定されたフィルタ11Aを通過した検知信号の差である算出値と、走行状態に応じて設定された判定値とを比較することで、戸挟み状態であるか否かを判定する(ステップS14)。
以下、第1の実施形態と同様にステップS15~S18の処理を進め、戸挟み検知処理を終了する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態の(1)~(3)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(4)車両の走行状態によって車両の振動の周波数成分が異なることがあるため、車両の走行状態に応じた周波数成分を低減することで、戸挟みの検知精度を更に高めることができる。
【0050】
(5)車両の走行状態に応じて異なる判定値を用いることで、戸挟みの検知精度を更に高めることができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
【0051】
・上記各実施形態では、第1検知センサ53及び第2検知センサ54をドアの上部に取り付けたが、第1検知センサ53及び第2検知センサ54の取付位置は任意に設定可能である。
【0052】
・上記第2の実施形態では、車両の走行状態に応じて異なる周波数成分を除去するフィルタ11Aを備えるとともに、車両の走行状態に応じて異なる判定値を用いるようにした。しかしながら、車両の走行状態に応じて異なる周波数成分を除去するフィルタ11Aを備えることと、車両の走行状態に応じて異なる判定値を用いることとのいずれか一方のみでもよい。
【0053】
・上記各実施形態では、取得部11のフィルタ11Aが車両の振動の周波数成分の他、車両の振動以外の周波数成分の信号を除去した。しかしながら、取得部11のフィルタ11Aが車両の振動の周波数成分のみの周波数の信号を除去してもよい。
【0054】
・上記各実施形態の構成において、検知信号の差である算出値の算出によって、車両の振動の周波数成分を低減することができれば、フィルタ11Aの構成を省略してもよい。
・上記各実施形態において、フィルタ11Aを取得部11に備えたが、判定部12に出力信号に含まれる車両の振動に伴う周波数成分を低減するフィルタを備えてもよい。フィルタを備えた判定部は、フィルタによってフィルタリング処理を施した算出値に基づいて車両が走行しているときに戸挟み状態であるか判定する。
【0055】
・上記各実施形態では、検知センサとして圧力センサを採用したが、弾性部材51,52の変形量を直接的に計測するひずみセンサ等を採用してもよい。すなわち、「弾性部材の変形を検知する」とは、弾性部材の内部に設けられた中空部内の圧力の変化を検知することにより弾性部材の変形を間接的に検出する形態も、弾性部材の変形を直接的に検出する形態も含まれる。
【0056】
・上記各実施形態において、
図6に示すように、ドア制御装置2が戸挟み検知装置1の機能を備えてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…戸挟み検知装置、2…ドア制御装置、3…ドア開閉装置、4…車両制御盤、11…取得部、11A…フィルタ、12…判定部、21…ドア開閉部、22…ドア減圧部、23…戸閉スイッチ、30…ドア、31…第1ドア、32…第2ドア、41…開閉指令部、42…検知許可部、43…戸挟み報知部、51…第1弾性部材、51A…空間、52…第2弾性部材、52A…空間、53…第1検知センサ、53A…チューブ、54…第2検知センサ、54A…チューブ、60…接触部。