(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】スポイラおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20220113BHJP
B62D 65/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B62D37/02 C
B62D65/00 Z
(21)【出願番号】P 2018001160
(22)【出願日】2018-01-09
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 建介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏幸
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522225(JP,A)
【文献】特開2007-186023(JP,A)
【文献】特開2004-352002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
B62D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方に露出する意匠面が塗膜で構成された第1パーツと、
前記第1パーツと組み合わせて設けられると共に、該第1パーツの前記意匠面と連続するように外方に露出する意匠面を有し、該意匠面が該第1パーツと同じ塗膜で構成された第2パーツと、
前記第1パーツにおいて、前記第2パーツと互いの意匠面が連続するように揃う第1見切り部位の近傍位置に、該第1パーツの長手方向に離して複数設けられ、前記第2パーツに向けて突出する取付部と、
前記第2パーツにおいて、前記第1パーツと互いの意匠面が連続するように揃う第2見切り部位の近傍位置に、前記取付部に対応して設けられ、該取付部を受け入れ可能な受部と、
前記取付部に設けられ、前記第1パーツの意匠面と前記第2パーツの意匠面が互いに連続するように揃う完成位置よりも、前記第1見切り部位と前記第2見切り部位とが離れる塗装位置で、前記受部に引っ掛かる第1係止部と、
前記取付部に設けられ、前記完成位置で前記受部に引っ掛かる第2係止部と、を備え
、
前記第2パーツは、前記第2見切り部位から延びて、前記第1見切り部位を越えて前記第1パーツの内側に重ねて嵌め込まれる重合部を有し、
前記第1パーツと前記第2パーツの重合部との間には、前記塗装位置であく該第1パーツと該重合部との間を塞ぐ一方で、前記完成位置で潰れて該第1パーツと該重合部との近接配置を許容する弾性部材が設置されている
ことを特徴とするスポイラ。
【請求項2】
外方に露出する意匠面が塗膜で構成された第1パーツと、
前記第1パーツと組み合わせて設けられると共に、該第1パーツの前記意匠面と連続するように外方に露出する意匠面を有し、該意匠面が該第1パーツと同じ塗膜で構成された第2パーツと、
前記第1パーツにおいて、前記第2パーツと互いの意匠面が連続するように揃う第1見切り部位の近傍位置に、該第1パーツの長手方向に離して複数設けられ、前記第2パーツに向けて突出する取付部と、
前記第2パーツにおいて、前記第1パーツと互いの意匠面が連続するように揃う第2見切り部位の近傍位置に、前記取付部に対応して設けられ、該取付部を受け入れ可能な受部と、
前記取付部に設けられ、前記第1パーツの意匠面と前記第2パーツの意匠面が互いに連続するように揃う完成位置よりも、前記第1見切り部位と前記第2見切り部位とが離れる塗装位置で、前記受部に引っ掛かる第1係止部と、
前記取付部に設けられ、前記完成位置で前記受部に引っ掛かる第2係止部と、を備え、
前記第2パーツは、前記第2見切り部位と反対側に、前記第1パーツの内側に重ねて嵌め込まれる嵌込部を有し、
前記嵌込部に対面する前記第1パーツの内側または該第1パーツの内側に対面する該嵌込部の面から突出して、前記取付部の前記受部への嵌め込み方向に沿って延在するリブを備えている
ことを特徴とするスポイラ。
【請求項3】
前記第1係止部は、前記受部との引っ掛かりにより前記第1パーツと前記第2パーツとが互いに近づいたり離れたりする方向の移動を規制し、
前記第2係止部は、前記受部との引っ掛かりにより前記第1パーツと前記第2パーツとが互いに離れる方向の移動のみを規制する請求項1または2記載のスポイラ。
【請求項4】
第1パーツの第1見切り部位近傍に該第1パーツの長手方向に離して複数設けられた取付部を、第2パーツの第2見切り部位近傍に該取付部に対応して設けられた受部に嵌め込んで、該第1パーツと該第2パーツとを組み合わせ、
前記取付部に設けられた第1係止部を前記受部に引っ掛けて、前記第1見切り部位と前記第2見切り部位との間において前記第1パーツの意匠面と前記第2パーツの意匠面が互いに連続するように揃う完成位置よりも、該第1見切り部位と該第2見切り部位とが離れる塗装位置で、該第1パーツと該第2パーツとを保持し、
前記第1パーツにおいて前記完成位置で外方に露出することになる意匠面と第2パーツにおいて該完成位置で外方に露出することになる意匠面とを併せて塗装することで、第1パーツの意匠面と第2パーツの意匠面とに共通する塗膜を形成し、
前記第1パーツと前記第2パーツとを互いの見切り部位が近づくように相対的に移動して、前記取付部に設けられた第2係止部を前記受部に引っ掛けて、前記完成位置で該第1パーツと該第2パーツとを保持して、スポイラを得る際に、
前記第1パーツの内側に、前記第2パーツにおける前記第2見切り部位から延びる重合部を嵌め合わせて、該第1パーツと該第2パーツとを組み合わせる前に、該第1パーツと該第2パーツの重合部との間に弾性部材を設置し、
前記塗装位置であく前記第1パーツと前記重合部との間を前記弾性部材により塞いだ状態で塗装し、
前記弾性部材を潰して、前記第1パーツと前記第2パーツとを前記完成位置とするように組み合わせる
ことを特徴とするスポイラ
の製造方法。
【請求項5】
第1パーツの第1見切り部位近傍に該第1パーツの長手方向に離して複数設けられた取付部を、第2パーツの第2見切り部位近傍に該取付部に対応して設けられた受部に嵌め込んで、該第1パーツと該第2パーツとを組み合わせ、
前記取付部に設けられた第1係止部を前記受部に引っ掛けて、前記第1見切り部位と前記第2見切り部位との間において前記第1パーツの意匠面と前記第2パーツの意匠面が互いに連続するように揃う完成位置よりも、該第1見切り部位と該第2見切り部位とが離れる塗装位置で、該第1パーツと該第2パーツとを保持し、
前記第1パーツにおいて前記完成位置で外方に露出することになる意匠面と第2パーツにおいて該完成位置で外方に露出することになる意匠面とを併せて塗装することで、第1パーツの意匠面と第2パーツの意匠面とに共通する塗膜を形成し、
前記第1パーツと前記第2パーツとを互いの見切り部位が近づくように相対的に移動して、前記取付部に設けられた第2係止部を前記受部に引っ掛けて、前記完成位置で該第1パーツと該第2パーツとを保持して、スポイラを得る際に、
前記第2パーツにおいて前記第2見切り部位と反対側に設けられた嵌込部、または該嵌込部に対面する前記第1パーツの内側に、相手側に突出して前記取付部の前記受部への嵌め込み方向へ延在するように設けられたリブで支持したもとで、前記第1パーツと前記第2パーツとを前記塗装位置で保持し、該第1パーツと該第2パーツとを互いの見切り部位が近づくように相対的に移動する
ことを特徴とするスポイラの製造方法。
【請求項6】
前記第1係止部と前記受部との引っ掛かりにより、前記第1パーツと前記第2パーツとが互いに近づいたり離れたりする方向の移動を規制し、
前記第2係止部と前記受部との引っ掛かりにより前記第1パーツと前記第2パーツとが互いに離れる方向の移動のみを規制する請求項
4または5記載のスポイラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に取り付けられるスポイラおよびスポイラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のルーフエンドやトランクリッドには、走行時の空気の整流や、車体のドレスアップなどを目的として、スポイラが取り付けられることがある。スポイラは、合成樹脂からなる成形品が多く用いられ、外方に露出する意匠面を塗装により仕上げることが行われている。スポイラは、車体に取り付けられる第1部品と、第1部品に取り付けられる第2部品との2つの部品を組み合わせて構成されており、第1部品と第2部品とがビスおよびナットによって取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のスポイラは、第1部品の全体が第2部品の内側に収納されて隠れる構成ではなく、第1部品の上面の一部が外方へ露出し、露出した上面が第2部品の上面に連なっている。このように、2つの部品で構成されるスポイラの上面には、第1部品の見切り部位と第2部品の見切り部位とにより継ぎ目ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗装品であるスポイラは、第1部品と第2部品とを別々に塗装すると、第1部品と第2部品とを組み合わせた後に1回で塗装する場合と比べて、手間およびコストが著しくかかる。また、第1部品と第2部品とを別々に塗装すると、第1部品と第2部品とで色ブレが生じるおそれがあり、色管理が難しくなる。
【0006】
第1部品と第2部品とを組み合わせた後に1回で塗装すると、第1部品と第2部品との継ぎ目において、塗装がのらない「スケ」と呼ばれる塗装不良や、塗料が溜まって凸凹になる「溜まり」と呼ばれる塗装不良などが発生することがある。前述したように、上面を2つの部品で構成するスポイラにおいて、2つの部品の継ぎ目で塗装不良が発生することは、外観品質を著しく悪化させることから問題である。
【0007】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、2つのパーツが向かい合う見切り部位においても塗膜が良好に形成されているスポイラおよびこのスポイラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のスポイラは、
外方に露出する意匠面が塗膜で構成された第1パーツと、
前記第1パーツと組み合わせて設けられると共に、該第1パーツの前記意匠面と連続するように外方に露出する意匠面を有し、該意匠面が該第1パーツと同じ塗膜で構成された第2パーツと、
前記第1パーツにおいて、前記第2パーツと互いの意匠面が連続するように揃う第1見切り部位の近傍位置に、該第1パーツの長手方向に離して複数設けられ、前記第2パーツに向けて突出する取付部と、
前記第2パーツにおいて、前記第1パーツと互いの意匠面が連続するように揃う第2見切り部位の近傍位置に、前記取付部に対応して設けられ、該取付部を受け入れ可能な受部と、
前記取付部に設けられ、前記第1パーツの意匠面と前記第2パーツの意匠面が互いに連続するように揃う完成位置よりも、前記第1見切り部位と前記第2見切り部位とが離れる塗装位置で、前記受部に引っ掛かる第1係止部と、
前記取付部に設けられ、前記完成位置で前記受部に引っ掛かる第2係止部と、を備えていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、第1パーツおよび第2パーツを、互いの見切り部位を離した塗装位置とすることができるので、見切り部位を介して連続する第1パーツおよび第2パーツの意匠面に共通する塗膜をきれいに形成することができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記第2パーツは、前記第2見切り部位から延びて、前記第1見切り部位を越えて前記第1パーツの内側に重ねて嵌め込まれる重合部を有し、
前記第1パーツと前記第2パーツの重合部との間には、前記塗装位置であく該第1パーツと該重合部との間を塞ぐ一方で、前記完成位置で潰れて該第1パーツと該重合部との近接配置を許容する弾性部材が設置されていることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、塗装位置で第1パーツと第2パーツの重合部との間に生じる隙間を塞いでいた弾性部材が、完成位置において潰れるので、第1パーツと第2パーツとを組み合わせた際に邪魔にならない。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記第2パーツは、前記第2見切り部位と反対側に、前記第1パーツの内側に重ねて嵌め込まれる嵌込部を有し、
前記嵌込部に対面する前記第1パーツの内側または該第1パーツの内側に対面する該嵌込部の面から突出して、前記取付部の前記受部への嵌め込み方向に沿って延在するリブを備えていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、取付部と受部との嵌め合いと反対側が、嵌込部とリブを介した第1パーツとの嵌め合いにより支持されているので、第1パーツと第2パーツとを塗装位置においてもガタツキなく組み合わせることができる。
【0011】
請求項4に係る発明では、前記第1係止部は、前記受部との引っ掛かりにより前記第1パーツと前記第2パーツとが互いに近づいたり離れたりする方向の移動を規制し、
前記第2係止部は、前記受部との引っ掛かりにより前記第1パーツと前記第2パーツとが互いに離れる方向の移動のみを規制することを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、塗装位置において第1パーツと第2パーツとの位置関係を適切に維持できる。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項5に係る発明のスポイラの製造方法は、
第1パーツの第1見切り部位近傍に該第1パーツの長手方向に離して複数設けられた取付部を、第2パーツの第2見切り部位近傍に該取付部に対応して設けられた受部に嵌め込んで、該第1パーツと該第2パーツとを組み合わせ、
前記取付部に設けられた第1係止部を前記受部に引っ掛けて、前記第1見切り部位と前記第2見切り部位との間において前記第1パーツの意匠面と前記第2パーツの意匠面が互いに連続するように揃う完成位置よりも、該第1見切り部位と該第2見切り部位とが離れる塗装位置で、該第1パーツと該第2パーツとを保持し、
前記第1パーツにおいて前記完成位置で外方に露出することになる意匠面と第2パーツにおいて該完成位置で外方に露出することになる意匠面とを併せて塗装することで、第1パーツの意匠面と第2パーツの意匠面とに共通する塗膜を形成し、
前記第1パーツと前記第2パーツとを互いの見切り部位が近づくように相対的に移動して、前記取付部に設けられた第2係止部を前記受部に引っ掛けて、前記完成位置で該第1パーツと該第2パーツとを保持して、スポイラを得ることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、第1パーツおよび第2パーツを、互いの見切り部位を離した塗装位置とする状態で一緒に塗装してから、第1パーツと第2パーツとを完成位置に組み合わせるので、見切り部位を介して連続する第1パーツおよび第2パーツの意匠面に共通する塗膜をきれいに形成することができる。
【0013】
請求項6に係る発明では、前記第1パーツの内側に、前記第2パーツにおける前記第2見切り部位から延びる重合部を嵌め合わせて、該第1パーツと該第2パーツとを組み合わせる前に、該第1パーツと該第2パーツの重合部との間に弾性部材を設置し、
前記塗装位置であく前記第1パーツと前記重合部との間を前記弾性部材により塞いだ状態で塗装し、
前記弾性部材を潰して、前記第1パーツと前記第2パーツとを前記完成位置とするように組み合わせることを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、塗装位置で第1パーツと第2パーツの重合部との間に生じる隙間を弾性部材で塞いだ状態で塗装するので、第1パーツと第2パーツとの内側を通って意図しない部分に塗料が回ることを防止でき、塗膜をきれいに形成することができる。しかも、弾性部材が完成位置で第1パーツと重合部に挟まれて潰れるので、第1パーツと第2パーツとを組み合わせた際に邪魔にならない。
【0014】
請求項7に係る発明では、前記第2パーツにおいて前記第2見切り部位と反対側に設けられた嵌込部、または該嵌込部に対面する前記第1パーツの内側に、相手側に突出して前記取付部の前記受部への嵌め込み方向へ延在するリブが設けられ、
前記リブで支持したもとで、前記第1パーツと前記第2パーツとを前記塗装位置で保持し、該第1パーツと該第2パーツとを互いの見切り部位が近づくように相対的に移動することを要旨とする。
請求項7に係る発明によれば、塗装位置において取付部と受部との嵌め合いと反対側が、嵌込部とリブを介した第1パーツとの嵌め合いにより支持されているので、第1パーツと第2パーツとを、適切な姿勢で保持することができる。また、完成位置においても、第1パーツと第2パーツとをガタツキなく組み合わせることができる。
【0015】
請求項8に係る発明では、前記第1係止部と前記受部との引っ掛かりにより、前記第1パーツと前記第2パーツとが互いに近づいたり離れたりする方向の移動を規制し、
前記第2係止部と前記受部との引っ掛かりにより前記第1パーツと前記第2パーツとが互いに離れる方向の移動のみを規制することを要旨とする。
請求項8に係る発明によれば、塗装位置において第1パーツと第2パーツとの位置関係を適切に維持できるので、第1パーツおよび第2パーツに共通する塗膜をきれいに形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスポイラによれば、2つのパーツが向かい合う見切り部位においても塗膜が良好に形成されている。
本発明に係るスポイラの製造方法によれば、2つのパーツが向かい合う見切り部位においても塗膜が良好に形成されたスポイラを簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の好適な実施例に係るスポイラを示す概略斜視図である。
【
図2】実施例のスポイラを分解して示す概略斜視図である。
【
図5】実施例のスポイラの製造工程を示す説明図であり、第1パーツと第2パーツとを組み合わせる前である。
【
図6】実施例のスポイラの製造工程を示す説明図であり、第1パーツと第2パーツとが塗装位置にある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係るスポイラおよび該スポイラの製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。実施例では、車両のルーフ部に連なるバックドア(リアウインド)の上部に設置され、該ルーフ部の後方に位置すると共にバックドアの後方へ延出するよう設けられるリアスポイラを例に挙げて説明し、車両を基準としてスポイラの方向を指称する。実施例では、スポイラの長手方向が左右方向に対応すると共に、スポイラの短手方向が前後方向に対応する。
【実施例】
【0019】
実施例に係るスポイラ10は、車両においてバックドアS(
図3参照)の上部の左右幅(ルーフ部の後縁の左右幅)と略同サイズの横長に形成され、
図1に示すように、前後寸法が左右寸法と比べて短尺に形成されている。
図1~
図3に示すように、スポイラ10は、該スポイラ10の外観の大部分を構成する第1パーツ12と、この第1パーツ12を支持すると共にバックドアSに取り付く第2パーツ14とを備えている。第1パーツ12と第2パーツ14とは、ネジ等の締結手段や接着などによって組み付けられている。スポイラ10は、外方に露出する意匠面が、耐候性塗料などからなる塗膜16(
図4参照)で構成されており、意匠面が塗膜16で適宜の色で仕上げられている。なお、スポイラ10は、第2パーツ14に設けられた図示しない締結部に、ネジ等の締結手段をバックドアS側から取り付けて、バックドアSに固定される。
【0020】
図3に示すように、第1パーツ12は、スポイラ10の上面を構成する第1上板部18と、第1上板部18の後端から下方へ折れ曲がって、下方へ向かうにつれて前方へ傾いた下板部20とから、前方に開放した断面「く」の字状に形成されている。第1パーツ12は、スポイラ10において外方に露出する意匠面が塗膜16で構成されている。
【0021】
図3に示すように、第2パーツ14は、スポイラ10の上面を構成する第2上板部22と、第2上板部22の後側に設けられ、第1上板部18の下側に重ねて第1パーツ12の内側に配置される重合部24と、下板部20の上側に重ねて第1パーツ12の内側に配置される嵌込部26とを有している。第2パーツ14は、第2上板部22を除いて、第1パーツ12の内側に収納されており、第1パーツ12の第1上板部18の上面と、第2パーツ14の第2上板部22の上面とが連続するように揃っている。そして、第2パーツ14は、第1パーツ12の意匠面と連なるように外方に露出して意匠面となる第2上板部22の上面が、第1パーツ12と同じ塗膜16で構成されている。
【0022】
図3に示すように、スポイラ10は、第1上板部18の上面と第2上板部22の上面とによって、上部の意匠面が構成されており、第1上板部18の前端と、第2上板部22の後端とが、互いの上面が連なるように突き合わせて対向配置されている。スポイラ10は、第1パーツ12と第2パーツ14との組み合わせで構成される上部の意匠面において、第1上板部18の意匠面の前端が第1パーツ12の見切り部位(以下、第1見切り部位18aという。)となり、第2上板部22の意匠面の後端が第2パーツ14の見切り部位(以下、第2見切り部位22aという。)となる。
図4に示すように、塗膜16は、上部の意匠面となる第1上板部18の上面および第2上板部22の上面を覆うだけでなく、第1上板部18および第2上板部22の上面から、第1上板部18および第2上板部22において互いに相対する端面に亘って、塗膜16が形成されている。
【0023】
図3に示すように、第1パーツ12は、第1見切り部位18aの近傍位置に、第2パーツ14に向けて突出する取付部28を備えている。
図2に示すように、第1パーツ12には、該第1パーツ12の長手方向(左右方向)に離して、複数の取付部28が設けられている。取付部28は、第1見切り部位18aを越えて第1上板部18から前方へ突出しており、第1上板部18における前後の延在方向に対して斜め下方へ延びている。
【0024】
図3に示すように、第2パーツ14は、第2見切り部位22aの近傍位置に、取付部28を受け入れ可能な受部30を備えている。
図2に示すように、第2パーツ14には、該第2パーツ14の長手方向(左右方向)に離して、複数の取付部28のそれぞれに対応して、受部30が設けられている。受部30は、第2上板部22と重合部24とが形作る段部を貫通するように形成された開口であり、取付部28の突出方向に合わせて、並行する第2上板部22および重合部24に対して交差するように斜めに貫通している。スポイラ10は、取付部28を受部30に挿入するにつれて、第1見切り部位18aと第2見切り部位22aとが離れた位置から近づくと共に、並行する第1上板部18と重合部24とが隙間をあけた位置から近づくように構成されている。
【0025】
取付部28には、第1上板部18の上面(意匠面)と第2上板部22の上面(意匠面)が互いに連続するように揃う完成位置(
図3および
図4)よりも、第1見切り部位18aと第2見切り部位22aとが離れる塗装位置(
図6および
図7)で、受部30に引っ掛かる第1係止部32が設けられている。また、取付部28には、完成位置において、受部30に引っ掛かる第2係止部34が設けられている。第1係止部32と第2係止部34とは、取付部28の第1上板部18からの突出方向に離して設けられている。
【0026】
図4および
図7に示すように、第1係止部32は、受部30への挿入方向と直交する方向へ取付部28から突出する2つの爪32a,32bで構成されており、それぞれの爪32a,32bが、例えば、断面円弧形状に形成されている。第1係止部32の2つの爪32a,32bは、塗装位置において、受部30を内外から挟むように配置されている。第1係止部32は、取付部28の先端側に位置する前爪32aが、受部30の内側開口縁に引っ掛かって、取付部28が受部30から抜けないように規制する。また、第1係止部32は、取付部28の根元側に位置する後爪32bが、受部30の外側開口縁に引っ掛かって、取付部28が受部30に挿入し難くなるように規制している。このように、第1係止部32は、受部30との引っ掛かりにより第1パーツ12と第2パーツ14とが互いに近づいたり離れたりする方向の移動を規制するよう構成されている。
【0027】
図4および
図7に示すように、第2係止部34は、取付部28における受部30への挿入方向と直交する方向へ突出する爪である。第2係止部34は、例えば、先端から根元に向かうにつれて取付部28から突出するテーパ面と取付部28の突出方向と略直交するように延在する係止面とを有する断面三角形状に形成されている。第2係止部34は、完成位置において、受部30の内側開口縁に係止面が引っ掛かって、取付部28が受部30から抜けないように保持する。第2係止部34は、受部30との引っ掛かりにより第1パーツ12と第2パーツ14とが互いに離れる方向の移動のみを規制するよう構成されている。なお、第2係止部34を第1係止部32よりも突出させる構成などにより、第2係止部34が、第1係止部32よりも受部30から抜け難くしてある。
【0028】
図3に示すように、第2パーツ14は、第2見切り部位22aから延びて、第1見切り部位18aを越えて第1パーツ12の第1上板部18の下側(内側)に重ねて嵌め込まれる重合部24を有している。第1パーツ12の第1上板部18と第2パーツ14の重合部24との間には、塗装位置であく第1上板部18と重合部24との間を塞ぐ一方で、完成位置で潰れて第1上板部18と重合部24との近接配置を許容する弾性部材36が設置されている。弾性部材36は、例えば、ポリウレタンフォームなどの軟質発泡体を用いることができる。弾性部材36としては、塗膜16を形成する塗料を吸収させることができるので、気泡が互いに連通する連通気泡構造の発泡体が好ましく、この中でも密度が低いものがより好ましい。
【0029】
図3、
図5および
図6に示すように、第2パーツ14は、第2見切り部位22aと反対側に、第1パーツ12の下板部20の内側に重ねて嵌め込まれる嵌込部26を有している。嵌込部26および該嵌込部26に対向する下板部20の下部は、取付部28と並行に延在しており、取付部28と受部30とを嵌めた際に、嵌込部26が下板部20の内側に嵌まるようになっている。嵌込部26において下板部20に相対する下面には、取付部28の受部30への挿入方向に沿って延在するリブ38が、スポイラ10の長手方向に離して複数設けられており、リブ38が下板部20に当たる。なお、塗装位置において嵌込部26と下板部20との間にできる隙間に、当該隙間を塞ぐように弾性部材36を設置し、完成位置で嵌込部26と下板部20とで弾性部材36を潰すようにしてもよい。
【0030】
次に、前述したスポイラ10の製造方法について説明する。まず、第1パーツ12および第2パーツ14を、それぞれ型成形して用意する(
図5)。第1パーツ12の第1見切り部位18a近傍に第1パーツ12の長手方向に離して複数設けられた取付部28を、第2パーツ14の第2見切り部位22a近傍に取付部28に対応して設けられた受部30に嵌め込んで、第1パーツ12と第2パーツ14とを組み合わせる。取付部28を受部30に挿入するように、第1パーツ12と第2パーツ14とを近づけて、第1係止部32の前爪32aを受部30に通して、第1係止部32を受部30に引っ掛ける(
図6)。これにより、第1パーツ12と第2パーツ14とが、完成位置よりも、第1見切り部位18aと第2見切り部位22aとが離れる塗装位置において、第1係止部32と受部30との引っ掛かりにより保持される。このとき、第1係止部32の前爪32aおよび後爪32bが、受部30を挟むように配置されて、前爪32aと受部30との引っ掛かりによる取付部28の抜け出しだけでなく、後爪32bと受部30との引っ掛かりにより取付部28の挿入も規制される。
【0031】
図6に示すように、塗装位置において、第1パーツ12の第1上板部18とこの第1上板部18の下側に差し込まれた第2パーツ14の重合部24との間には隙間があいているが、第1上板部18と重合部24との間に設置された弾性部材36によって、当該隙間を左右方向に亘って塞いでいる。また、第1パーツ12および第2パーツ14は、下部が、下板部20の上側に差し込まれた嵌込部26がリブ38を介して下板部20で支持され、上部が、取付部28と受部30との嵌め合いにより支持されて、塗装位置で姿勢保持される。更に、下板部20と嵌込部26との間にあいた隙間は、下板部20と嵌込部26との間に設置した弾性部材36によって塞がれている。
【0032】
スプレー塗装などの適宜の塗装方法により、塗装位置で保持された第1パーツ12および第2パーツ14の外面に塗料を塗布して、第1パーツ12において完成位置で外方に露出することになる意匠面と第2パーツ14において完成位置で外方に露出することになる意匠面とを併せて塗装する。これにより、第1パーツ12の意匠面と第2パーツ14の意匠面とに共通する塗膜16が形成される。
【0033】
第1パーツ12と第2パーツ14とを互いの見切り部位18a,22aが近づくように相対的に移動して、取付部28に設けられた第2係止部34を受部30に引っ掛けて、完成位置で第1パーツ12と第2パーツ14とを保持する(
図3)。これにより、第1見切り部位18aと第2見切り部位22aが突き合わさると共に、第1上板部18の上面と第2上板部22の上面が互いに連続するように揃ったスポイラ10が得られる。このとき、第1上板部18と重合部24との隙間を塞いでいた弾性部材36が、第1上板部18と重合部24とに挟まれて圧縮されることで潰れて、第1上板部18と重合部24とが重なるように、第2パーツ14が第1パーツ12の内側に嵌まり込む。同様に、下板部20と嵌込部26との隙間を塞いでいた弾性部材36が、下板部20と嵌込部26とに挟まれて圧縮されることで潰れて、下板部20と嵌込部26とが重なるように、第2パーツ14が第1パーツ12の内側に嵌まり込む。
【0034】
前述したように、第1パーツ12および第2パーツ14を、互いの見切り部位18a,22aを離した塗装位置で一緒に塗装することで、塗装が1回で済み、第1パーツ12と第2パーツ14とを別々に塗装するよりも塗装コストを抑えることができる。また、色管理も簡単になり、第1パーツ12と第2パーツ14との間で色ブレは生じない。しかも、第1見切り部位18aと第2見切り部位22aとを離した塗装位置で塗装するので、見切り部位18a,22aの間に塗料が溜まることもなく、それぞれの上板部18,22の上面から見切り部位18a,22aの端面までに亘って塗膜16を形成することができる。第1パーツ12と第2パーツ14とを同時に塗装することができると共に、第1パーツ12と第2パーツ14との見切り部位18a,22aをきれいに塗装することができる。
【0035】
第1パーツ12と第2パーツ14とを完成位置に組み合わせることで、両見切り部位18a,22aが近接して向かい合い、両見切り部位18a,22aを介して連続する第1パーツ12および第2パーツ14の上面に共通する塗膜16がきれいに形成されることになる。例えば、別々に塗装した後に、複数の取付部28を対応の受部30に挿入することは、個々の取付部28が受部30からずれて塗膜16を傷つけるおそれがあるが、取付部28を対応の受部30に嵌め合わせた状態で塗装するので、塗装位置から完成位置に移動する際に取付部28などで塗膜16を傷つけることはない。そして、見切り部位18a,22aの近傍に設けられた取付部28と受部30との嵌め合いによって、見切り部位18a,22a近傍を互いに近づくように引き付けることができるので、見切り部位18a,22aを精度良くきれいに突き合わせることができる。
【0036】
塗装位置で第1パーツ12の第1上板部18と第2パーツ14の重合部24との間に生じる隙間、下板部20と嵌込部26との間に生じる隙間のそれぞれを、弾性部材36で塞いだ状態で塗装するので、第1パーツ12と第2パーツ14との内側を通って意図しない部分に塗料が回ることを防止できる。これにより、スポイラ10の意匠面に、塗膜16をきれいに形成することができる。しかも、弾性部材36が完成位置で第1パーツ12と第2パーツ14に挟まれて潰れるので、第1パーツ12と第2パーツ14とを組み合わせた際に邪魔にならない。
【0037】
第1パーツ12および第2パーツ14を塗装位置において、上部を、取付部28と受部30との嵌め合いにより支持すると共に、下部を、嵌込部26と下板部20との嵌め合いにより支持しているので、第1パーツ12および第2パーツ14の間に隙間があいた状態であっても、姿勢を保持したもとで塗装を行うことができる。そして、嵌込部26と下板部20との間には、リブ38が介在しているので、嵌込部26と下板部20との摺接負荷を軽減することができ、第1パーツ12と第2パーツ14とをスムーズに組み付けることができる。取付部28と受部30との嵌め合いと反対側が、嵌込部26とリブ38を介した第1パーツ12との嵌め合いにより支持されているので、第1パーツ12と第2パーツ14とをガタツキなく組み合わせることができる。
【0038】
第1係止部32と受部30との引っ掛かりにより、第1パーツ12と第2パーツ14とが互いに近づいたり離れたりする方向の移動を規制されるので、塗装位置において第1パーツ12と第2パーツ14との位置関係を適切に保つことができる。これにより、第1パーツ12および第2パーツ14に共通する塗膜16を、きれいに形成することができる。そして、第2係止部34と受部30との引っ掛かりにより、第1パーツ12と第2パーツ14とが互いに離れる方向の移動のみを規制すれば、第1パーツ12と第2パーツ14が完成位置で保持することができる。
【0039】
(変更例)
前述した実施例の構成に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)実施例では、第1係止部32を2つの爪32a,32bで構成したが、
図8に示すように、第1係止部32を1つの爪で構成してもよい。この場合、第1係止部32および第2係止部34は、塗装位置において、受部30を内外から挟むように配置することで、第2係止部34と受部30の引っ掛かりにより、第1パーツ12と第2パーツ14とが相対的に近づく移動を規制することができる。
(2)第1係止部および第2係止部は、爪形状に限らず、取付部に開口状に形成される態様など、受部との引っ掛かりにより取付部を位置決めし得る構成であればよい。
(3)リブは、第2パーツ側でなく、第1パーツ側に設けてもよい。また、第1パーツと第2パーツとの両方にリブを設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 スポイラ,12 第1パーツ,14 第2パーツ,
18a 第1見切り部位,22a 第2見切り部位,24 重合部,
26 嵌込部,28 取付部,30 受部,32 第1係止部,
34 第2係止部,36 弾性部材,38 リブ