(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
B23B 31/171 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
B23B31/171
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018008685
(22)【出願日】2018-01-23
【審査請求日】2020-02-14
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596007164
【氏名又は名称】エスエムヴェー アウトブローク シュパンジステーメ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】エックハルト マウラー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン マルクヴァルト
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-308910(JP,A)
【文献】特開2006-095613(JP,A)
【文献】特公昭48-006070(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-31/42
B23Q 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工される工作物(2)を工作機械(4)の工具テーブル(3)に保持するための固定具であって、
-クランプハウジング(10)であって、前記工作物(2)を前記クランプハウジング(10)上に支持するためにクランプピン(12)が挿入される通路開口部(11)を有するクランプハウジング(10)と、
-
前記クランプハウジング(10)に回転可能に取り付けられ、
前記クランプハウジング(10)に挿入された駆動スピンドル(20)
に接続して駆動される駆動リング(15)と、
-
前記クランプハウジング(10)内に半径方向へ移動可能に取り付けられ、前記通路開口部(11)の長手方向軸(11’)に面し、前記駆動リング(15)にそれぞれ
接続して駆動される少なくとも2つのロックピン(18)とを備え、
前記駆動リング(15)は前記駆動スピンドル(20)によって、前記通路開口部(11)の前記長手方向軸(11’)の周りに所定の角度範囲(α)内で調節可能
であり、
前記クランプピン(12)は、前記少なくとも2つのロックピン(18)が前記長手方向軸(11’)に向かって半径方向内側に移動すると、前記少なくとも2つのロックピン(18)によって前記クランプハウジング(10)の前記通路開口部(11)内に固定され、前記少なくとも2つのロックピン(18)が前記長手方向軸(11’)から半径方向外側に移動すると、前記クランプハウジング(10)の前記通路開口部(11)から解放される固定具において、
少なくとも2つの異なるピッチ(22、23)を有する制御面(21)又は制御カムが、前記ロックピン(18)の各領域において前記駆動リング(15)の
内壁(16)に加工され、
U字形断面を有する収容ポケット(19)が対応する前記ロックピン(18)に加工され、
前記収容ポケット(19)に前記駆動リング(15)
が挿入され、
前記駆動リング(15)の前記内壁(16)に面する前記ロックピン(18)の壁に、接触面(25)が加工されるか、又は設けられ、
前記接触面(25)が、前記駆動リング(15)の前記制御面(21)又は制御カムと接触し、前記駆動リング(15)の回転方向に応じて対応する前記ロックピン(18)を半径方向内向き又は外向きに移動
するように構成されていることを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記通路開口部(11)に係合している
固定ねじ(13)が、
前記クランプハウジング(10)を前記工具テーブル(3)へ方向づけられた位置に固定し、
前記ロックピン(18)は、クランプ状態にあるとき、
前記クランプハウジング(10)の前記通路開口部(11)内に前記クランプピン(12)を固定し、
かつ、初期状態にあるとき、前記クランプピン(12)を解除することを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
U字形断面を有する案内溝(31)が前記通路開口部(11)
に隣接する側に設けられ、前記駆動リング(15)が前記案内溝(31)内に挿入され、その中に回転配置で取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定具。
【請求項4】
通路孔(33)が、
前記クランプハウジング(10)内で、前記通路開口部(11)の前記長手方向軸(11’)に対向する前記案内溝(31)の
壁(32)に1つずつ設けられ、それらは互いに同一平面上に伸び、
前記ロックピン(18)のそれぞれは、前記クランプハウジング(10)及び前記案内溝(31)の2つの対向する前記通路孔(33)内で移動可能に保持されていることを特徴とする請求項3に記載の固定具。
【請求項5】
前記駆動スピンドル(20)は、
前記クランプハウジング(10)内に加工されたポケット(34)内に回転配置で配置され、
前記通路開口部(11)の前記長手方向軸(11’)に平行に伸びるペグ(35)が前記駆動リング(15)に形成されているか、又は取り付けられ、
前記駆動スピンドル(20)に連結して駆動され、
前記駆動スピンドル(20)の回転は、前記駆動リング(15)が
前記通路開口部の前記長手方向軸(11')の周りを回転できることを意味することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項6】
対応する前記ロックピン(18)は、前記駆動リング(15)によって前記案内溝(31)に保持され、
前記駆動リング(15)は、カバー(36)によって
前記クランプハウジング(10)に支持されることを特徴とする
請求項3又は4に記載の固定具。
【請求項7】
前記クランプハウジング(10)に雌ねじ(37)が加工され、前記カバー(36)に雄ねじ(38)が設けられ、
前記カバー(36)は、
前記クランプハウジング(10)の前記雌ねじ(37)に螺合されたとき、前記駆動リング(15)を前記案内溝(31)内に締め付けることを特徴とする請求項6に記載の固定具。
【請求項8】
各々の
前記ロックピン(18)は、傾斜したクランプ面(41)を有し、
円周クランプ溝(42)又はいくつかの個々のクランプ溝(42)が前記クランプピン(12)内に加工され、これらのクランプ溝(42)は、下方及び外側に傾斜する接触面(43)を有し、
前記ロックピン(18)の対応する前記クランプ面(41)は、クランプされた状態のとき、前記クランプピン(12)の
前記接触面(43)と接触し、
前記接触面(43)と共同して張力を生成し、前記張力により、前記クランプピン(12)は前記通路開口部(11)の前記長手方向軸(11’)と平行に保持されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項9】
前記工作物(2)に対向する前記クランプピン(12)の
面(12’)に、リング状又は多角形のセンタリング突起(39)が設けられ、
このセンタリング突起(39)は、前記工作物(2)に加工された接触面(40)と相互作用して、
前記クランプハウジング(10)の前記長手方向軸(11’)に対して前記工作物(2)を整列させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項10】
前記クランプハウジング(10)と前記工具テーブル(3)との間にセンタリングスリーブ(44)が設けられ、
前記センタリングスリーブ(44)により、前記クランプハウジング(10)と前記工具テーブル(3)との間の
固定ねじ(13)が、前記通路開口部(11)の前記長手方向軸(11’)と同一平面上に整列することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項11】
前記駆動リング(15)の
前記制御カム又は制御面(21)は、前記駆動リング(15)の内側に面する輪郭を有し、
前記制御カム又は制御面(21)の輪郭が、前記駆動リングの前記内壁(16)の領域において線形として構成され、
対応する前記ロックピン(18)の前記接触面(25)が、前記制御カム又は制御面(21)の輪郭に適合し、かつ、
前記輪郭に接触することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項12】
前記駆動リング(15)の
外壁(17)と、前記外壁(17)に隣接する対応する前記ロックピン(18)の
前記収容ポケット(19)の
側壁との間に隙間(24)が設けられ、
前記隙間(24)によって前記駆動リング(15)が回転可能になることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項13】
前記ロックピン(18)の少なくとも1つに、前記クランプピン(12)
と接触してその周りを少なくとも幾つかの領域で把持する、弓形又は湾曲した成形突起が設けられ、
前記成形突起が、前記クランプピン(12)を前記通路開口部(11)内に固定することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項14】
使用される前記ロックピン(18)のうちの2つが、互いに同一平面上に対向して位置するか、又は、前記ロックピン(18)のうちの3つが、互いに対して120°の角度
で配置されているか、又は、
使用されるロックピン(18)が4つ以上の場合において、前記クランプピン(12)の円周に沿って
互いに均等に配置されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項15】
前記長手方向軸(11’)から離れて面する前記駆動リング(15)の
前記制御面(21)は、外向きの湾曲を有し、
前記ロックピン(18)の前記接触面(25)は、
前記制御面(21)内に突き出ており、
前記制御面(21)は、前記接触面(25)を介して前記駆動リング(15)から対応する前記ロックピン(18)に前進力を伝達することを特徴とする請求項1又は12に記載の
固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の特徴の前部を前提とし、機械加工される工作物を工作機械の工具テーブルに保持する固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、いわゆるゼロ点クランプシステムを開示している。それにより、機械加工される工作物は工作機械の領域に取り付けられ、工作機械又はその工具テーブルへの設置及び撤去をこれらの手順に多大な変更時間を必要とせずに実施できる。この目的のために、この種のクランプ固定具は、通路開口部が加工されるハウジングを有する。通路開口部の内径は、工具テーブルから始まって上方に向かって寸法が増加する、異なる寸法の小区分からなり、固定具が固定ねじによって工具テーブルに固定される。その結果、クランプハウジングは固定具の構成要素であり、工具テーブルに適切に位置決めされると、もはや交換できない。むしろ、機械加工される工作物は、固定具に迅速かつ容易に交換されるべきである。
【0003】
工作物と固定具のクランプハウジングとの間の迅速な接続又は連結を達成するために、工作物は、固定具のハウジングの通路開口部内に挿入される設置前段階において、クランプピンに接続される。このようにして挿入されたクランプピンは、3つのクランプスライド又は複数のロックピンによってハウジングの通路開口部に固定される。それらロックピンは、半径方向に移動可能にハウジングに取り付けられ、軸方向に移動可能なアクチュエータピストンなどの駆動手段によって回転可能な駆動リングの駆動力によって移動される。駆動リングの回転運動は、ロックピンに形成されたカム又は突起によってロックピンに伝えられる。この場合、それらロックピンには、突起又はカムを収容するための溝が加工されている。
【0004】
そこにあるロックピン各々の駆動接続のために駆動リング上に突起が設けられ、これにより駆動リングと対応するロックピンとの間に力又は形状ロックの能動的接続が確立されることは、不利である。駆動リングのこのような設計の実施形態、及び駆動リングと対応するロックピンとの間の駆動接続は、製造に非常なコストが掛かり、組み立てに多くの時間を要する。その理由は、1つ目に、それら突出部は非常に狭い公差帯域内で製造されなければならなく、一方、2つ目に、使用される構成要素は、組み立て時に相当量の作業を伴う幾つかの接合部分からなるためである。さらに、駆動リングの回転及びその運動の半径方向の前進運動への変換の間、芯ずれが生じ得るので、駆動リングの回転運動及びロックピンの半径方向の調整は、障害を受けやすい。
【0005】
このようなゼロ点クランプシステムは、機械加工される多数の工作物をクランプピンに予め設置することができるので、そのようなものとして言及されている。工作物を機械加工するためには、工作機械の作業領域に対して1番目の工作物を測定するだけでよい。クランプ固定具の位置に対する工作物の位置が既知であり、事前に定義されているので、機械加工される各々の更なる工作物は、さらに測定することなく工作機械によって直ちに機械加工され得る。
【0006】
しかし、駆動リングと挿入されたロックピンとの間の駆動接続が対応する遊び量を有する場合、これは、クランプピンが固定具のクランプハウジングをクランプする間に誤差許容値が生じるという事態に不可避的に繋がる。そして結果的に、工作物の機械加工における誤差に繋がる。したがって、この種のクランプ固定具は、機械加工される工作物の所定のクランプ位置に誤差を生じる。また、そのような誤差許容値ができるだけ低く保たれるようにするには、時間のかかる再測定が必要となり、これはかなりのコストを必要とする。
【0007】
さらに、開示されたクランプ固定具において、駆動リングの回転運動が比率なしにロックピンの半径方向運動に変換されることは、特に不利である。クランプ手順の間に、クランプピンができるだけ迅速にロックピンに接触されることが必要である。これは、駆動スピンドルの回転をできる限り少なく、又はピストンの軸方向の前進移動をできる限り少なくしてロックピンとクランプピンとの間で接触が生じるように、ロックピンの前進運動が速い動きで行われるべきであることを意味する。それに続くクランプストロークでは、クランプピンがロックピンによって方向付けられた位置に確実にクランプされるように、ロックピンはクランプピンと能動接触すべきである。しかし、開示されたクランプ固定具は、駆動リングとロックピンの駆動接続の間にいかなる比、又は歯車装置も有しておらず、駆動リングの回転が、同一の輪郭又は同等の量でロックピンの半径方向の前進運動に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、上述の種類のクランプハウジングを有する固定具の構成を発展することである。第1に、使用されるロックピンのための、駆動リングの回転運動から半径方向の前進運動への変換は、遊びがなく、高速及びクランプストロークを可能にする少なくとも2つの異なる比で行われるべきである。第2に、駆動リング及びロックピンの製造及び組立ては、追加時間の要請無く、安価に実施できるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明によれば、特許請求の範囲の請求項1の特徴部分の構成によって達成される。
【0011】
本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項から導き出すことができる。
【0012】
少なくとも2つの異なるピッチ(勾配)を有する制御面又は制御カムが、ロックピンの各領域において駆動リングの内側に加工され、U字形断面を有する収容ポケットが、対応するロックピンに加工され、そこに駆動リングが係合され、駆動リングの内壁に面するロックピンの接触面に、制御輪郭が取り付けられるか又は設けられる。その制御輪郭は、駆動リングの制御面又は制御カムと接触し、駆動リングの回転方向に応じて、対応するロックピンを半径方向内側又は外側に回転させる。これにより、ロックピンを高速及びクランプストロークの両方で移動させることができ、その結果、工作物を運ぶと共にハウジングの通路開口部に挿入されるクランプピンが、駆動スピンドルのわずかな回転を伴って、確実にかつ方向付けられた位置に取り付けられる。
【0013】
U字型断面を有する案内溝が通路開口部に設けられ、その案内溝に駆動リングが挿入され、その中に回転配置で取り付けられている場合、駆動リングは回転運動中に内方及び外方に保持されることが保証され、駆動リングの芯ずれが生じない。
【0014】
それらロックピンは、ハウジング内及び案内溝の壁内で、軸方向又は半径方向の移動を可能にするよう方向付けられた位置に取り付けられる。その結果、それらは、信頼性があり問題のない移動を達成するように、互いに離間した2つの位置に支持される。
【0015】
対応するロックピンにU字形凹部が設けられ、この凹部に駆動リングが挿入される。その結果として、ハウジングに接続されたカバーによってロックピンだけでなく駆動リングも案内溝内に保持され、それらの対応する動作が可能となる。
【0016】
工作物を固定具上にセンタリングすることで、工作物及びクランプピンを含む各々予め組み立てられた構造ユニットが、工作機械のクランプ状態に対して同一の向きを有するように、1つ又は複数のセンタリング突起がクランプピンの上側に設けられるか又は形成され、工作物に加工された接触面と相互作用する。この結果、工作物はクランプピン上で方向付けられた位置に位置決めされ、工作機械に対する機械加工位置に関して工作物の繰り返し測定の必要がない。なぜなら、固定具は工作機械の工具テーブルに固定位置で接続されており、新しい工作物を対応する固定ピンで固定具のクランプハウジングに取り付けるだけでよいからである。結果として、本発明による固定具は、ユーザにゼロ点クランプシステムを提供する。
【0017】
クランプピンに円周クランプ溝又は幾つかの個々のクランプ溝が加工され、そこへクランプピンの各々の自由端がクランプ状態で係合すると、特に有利である。なぜかというと、傾斜角度をなすクランプ面(水平面に対して外側から内側に上向きの勾配で傾斜して構成されている)が、対応するロックピンの自由端に設けられ、その一方、クランプ溝のピッチは、ロックピンのクランプ面の輪郭と揃っている(これは、クランプ面の接触部として機能することを意味する)ためである。ロックピンがクランプピンのクランプ溝に係合するとすぐに、クランプ面がロックピンを案内溝の接触面に押し付け、けん引力が通路開口部の長手方向軸に平行に生成される。その結果、クランプピンがハウジングの内部に引っ張られる。これにより、クランプピンとハウジングとの間で遊びゼロの配置となり、その結果、機械加工される工作物は、同様に予め定められた位置に向けられて保持される。
【0018】
高速ストロークの間、ロックピンは可能な限り速い前進速度でクランプピンに向かって移動されなければならない。ロックピンのこの前進移動には、低い力が必要である。ロックピンがクランプピンと能動接触するとすぐに、高速ストロークギアをクランプストロークギアに切り替える必要がある。クランプストロークギアは、ロックピンが非常に低い前進速度であるが、高いクランプ力を必要とすることを特徴とする。これを達成するために、制御経路と、ロックピン上でそれと相互作用する接触面とに、少なくとも2つの異なるピッチが設けられる。高速ストロークのピッチは、より急峻な勾配、例えば、放物線形状又は正弦曲線形状を有する一方、クランプストロークギアは、非常に平坦なピッチを有する。クランプストロークと高速ストロークとの間の遷移領域は、1つ又は複数の半径によって達成され、駆動リングが2つの回転方向のうち一方に動かされるとき、ロックピンの接触面は、駆動リングの制御面に沿って芯ずれすることなく摺動する。
【0019】
図面は、本発明にしたがって構成された固定具及びそのクランプハウジングを示している。これにより、機械加工される工作物が工作機械の工具テーブルに保持される。その詳細が以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】通路開口部が加工されたクランプハウジングを斜視図で示す。
【
図1b】
図1aによるクランプハウジングを分解図で示し、駆動リングとこれに接続された3つのロックピンとが駆動配置にあり、これらはカバーによってハウジングの通路開口部内に方向付けられた位置に保持されている。
【
図2】工作機械の工具テーブルに固定ねじによって取り付けられた、
図1bによる固定具及びクランプハウジングを断面図で示し、それにより、機械加工される工作物が、クランプピンでハウジングに固定される。
【
図3】
図2による駆動リングの拡大図を示し、3つのロックピンと駆動リングに接続された駆動スピンドルとが駆動配置にある。
【
図4a】
図3による駆動リングとロックピンの1つとの間の拡大断面図を示し、初期位置において、駆動リングの内側に設けられた制御面と、駆動リングの回転中に駆動リングの制御面と相互作用し、それに沿って摺動するロックピンに割り当てられた接触面とを示す。
【
図4b】高速ストローク中の、
図4aによる駆動リング及びロックピンを示す。
【
図4c】クランプストローク中の、
図4bによる駆動リング及びロックピンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1a、
図1b及び
図2は固定具1を示し、それにより工作物2が工作機械4の工具テーブル3に交換可能な配置で取り付けられる。工具5は工作機械4に取り付けられ、それにより工作物2が工作機械4で機械加工される。本発明によるクランプ固定具1は、工作機械4上の工作物2の各交換において、工作物2を機械加工する位置を再確立する必要性を回避する目的を有する。これは、各工作物2を工具テーブル3上の工作機械4に対し、ほぼ同一の位置で機械加工する連結システム(以下に、より詳細に説明する)を提供するからである。
【0022】
さらに、固定具1は、工具2を交換するときに、工作機械4の停止時間をできるだけ短く保つための迅速なクランプシステムを提供すべきである。これの主な特徴は、工作機械4の工具テーブル3上にある工作物2のためのセンタリング及び保持要素として機能する固定具1である。
【0023】
図2は、特に、工具テーブル4上の工作物2の空間的な向きが、共通のX-Y-Z座標系6を用いて表されることを示している。したがって、固定具1は、工作物2と、接続される工具テーブル3と、円筒形状を有する固定具1に割り当てられたクランプハウジング10とを備える。ハウジング10は、その中に加工された通路開口部11を有し、その長手方向軸は符号11’で示される。長手方向軸11’及びハウジング10の回転軸は、したがって、同一平面上に互いに位置合わせされる。また、通路開口部11は、示された設置状況に関して、座標系6のY方向に増加する異なる寸法の部分を有する。それら部分は、底部から頂部に向かってより大きくなる。
【0024】
工具テーブル3にハウジング10を取り付けるために、固定ねじ13が設けられている。それは通路開口部11に挿入され、工具テーブル3に加工されたねじ山14に係合可能である。ハウジング10を工具テーブル3の中心に保持するため、固定ねじ13を取り囲み、ハウジング10及び工具テーブル3に加工された対応する凹部に挿入されるセンタリングスリーブ44が設けられている。それ故これは、センタリング補助具として機能する。これは、ハウジング10を工具テーブル3上の所定の位置に正確に固定できることを意味する。また、ハウジング10は、工具テーブル3に取り外せないように取り付け可能であり、機械加工される工作物2のみが、対応する連結システム(以下、より詳細に説明する)によって迅速かつ正確な位置に交換される。
【0025】
工作物2のための連結システムは、主に、クランプピン12からなり、それは、さらなる固定ねじ13によって予備組立工程において工作物2に取り付けられる。その固定ねじ13は、工作物2を完全に貫通し、クランプピン12の中心に加工されたねじ山14に係合している。その結果、固定ねじ13は、クランプピン12を工作物2に接続し、クランプピン12は、固定具のハウジング10に接続するためのセンタリング及び保持要素として利用可能であるか、又はそのように使用できる。
【0026】
クランプピン12の上面12’から突出した成形ピース又はセンタリング突起39と相互作用するクランプピン12の領域において、リング状成形が工作物2に加工されている。したがって、工作物2の凹部は接触面40として機能し、工作物2とクランプピン12とを共に所定の向きに正確に取り付ける。これは、センタリングスリーブ44と、工作物2の接触面40で係合するクランプピン12上のセンタリング突起39とによって、工作物2が工具テーブル3上の既知で所定の位置に保持されることを意味する。そして、工作物2及びクランプピン12は、以下でより詳細に説明するように、ハウジング10の通路開口部11から引き出され得るか、又はハウジング10の中に挿入され得ることを意味する。
【0027】
別のセンタリング補助具として機能するジャケット面が、クランプピン12の外周に形成され、その場合、ジャケット表面は工作物2に直接隣接して伸び、通路開口部11の内側と相互作用することにより、クランプピン12が通路開口部11内で中心に配置された状態で支持される。
【0028】
図2は、クランプピン12の通路開口部11への取り付けを示す。この目的のために、通路開口部11に隣接する側にU字形の案内溝31が加工され、その中に駆動リング15が挿入されている。駆動リング15は、3つのロックピン18に駆動配置で接続されている。ロックピン18は、同一平面上で互いに対向して離間した2つの通路孔33に挿入されており、(通路孔33の)一方は案内溝31の壁32に加工され、他方はハウジング10の壁内に加工されている。したがって、ロックピン18は半径方向に延び、長手方向軸11’又は通路開口部11の方を向いている。座標系6のY軸に関して、3つのロックピン18が駆動リング15の下に配置され、ロックピン18が駆動リング15によって覆われている。駆動リング15及びロックピン18を含む可動部品の確実な取り付けを達成するために、雄ねじ38を有するカバー36を設けなければならない。雌ねじ37が通路開口部11の側壁に加工され、カバーの雄ねじ38がその中に見える。その結果、カバー36は、ハウジング10の雌ねじ37にねじ込むことによって工具テーブル3に向かって移動させることができ、その結果、駆動リング15及び3つのロックピン18が案内溝に保持される。
【0029】
図2及び
図3に示すように、駆動リング15は、案内溝31内に回転可能に保持されている。なぜなら、Y軸の反対側に位置するピン35が駆動リング15上に形成され、駆動スピンドル20と駆動的に能動接続しているからである。駆動スピンドル20は、ハウジング10内に加工されたポケット34に回転可能に取り付けられ、その結果、駆動スピンドル20は、駆動リング15に作用するその回転運動中に前進力を生成する。したがって、ピン35は、駆動スピンドル20に加工されているねじ山ピッチによって直線的に移動されると、その結果、駆動リング15は、長手方向軸11’を中心に回転させられる。
【0030】
駆動リング15と3つのロックピン18との間の駆動接続の結果として、駆動リング15の回転は、同期して発生するロックピン18の半径方向への移動にその都度伝達又は変換される。このことは、駆動リング15の回転方向に応じてロックピン18が長手方向軸11’の方向に移動し、それによって通路開口部11の寸法を縮小するか、又はロックピン18がこの開口部11から引き出されることを意味する。クランプピン12は通路開口部11内に配置され、ロックピン18はクランプピン12の方向に移動されることで、これは、ロックピン18が、ロックピン18とクランプピン12との間の力及び形状ロック接続を形成することを意味する。追加の引っ張り力をクランプピン12に伝達できるように、クランプピン12及び工作物2をハウジング10の自由端面に押し付ける必要があり、クランプピン12内に加工された円周クランプ溝42がある。この場合、クランプ溝42は斜めに伸びる接触面43を有する。接触面43は、外側から内側に向かって上方に傾斜しており、各ロックピン18の自由端面にはクランプ面41が加工されている。そのピッチ(勾配)は、クランプピン12の接触面43のピッチ(勾配)に適合されている。その結果、クランプ面41を有するロックピン18がクランプピン12の接触面43に能動的に接触するとすぐに、座標系6のY軸の反対ベクトルに引っ張り力が生成され、これによりクランプピン12及び、したがって工作物2が通路開口部11又はハウジング10の自由端面に押し付けられる。
【0031】
図3、
図4a、
図4b及び
図4cは、それぞれのロックピン18が、その中に加工されたU字形断面を有する収容ポケット19を有することを示している。収容ポケット19の輪郭は、駆動リング15の輪郭に適合されているか、又はその逆も同様であり、駆動リング15をロックピン18の収容ポケット19のそれぞれに挿入できる。駆動リング15の内壁16は、2つのピッチ(勾配)を具備する2部分の制御面21を有し、高速歯車及びクランプストローク歯車を生成できる。駆動リング15と特定のロックピン18との間の接続は、接触面25がこの制御面21に形状ロック配置で係合しているので、一種の伝動装置である。
【0032】
図4aに示す、駆動リング15及びロックピン18の位置は、開始位置に対応する。これは、ロックピン18が通路開口部11を完全に開放することを意味し、クランプピン12を開口部11に挿入、又は引き抜くことができる。駆動リング15上の駆動スピンドル20を介して作動力が作用するとすぐに、駆動リング15が反時計方向に回転する。駆動リング15のこの回転運動は、ロックピン18の各々を半径方向に通路開口部11内に移動させ、ロックピン18がクランプピン12の接触面43と能動的に接触する。
【0033】
駆動リング15の内壁16に対向するロックピン18の収容ポケット19側には、接触面25が加工又は設けられている。この接触面25は、正弦波形状の制御面21に係合し、そして恒久的にそれと接触している。その制御面21は、高速ストローク面22及びクランプストローク面23として定義される異なる傾きの2つのピッチ(勾配)を有する。ロックピン18の各々がクランプピン12に向かって、又はクランプピン12から離れる方向へ可能な限り速い前進速度で動かされることを確実にする目的で、高速ストローク面22は、クランプストローク面23の小さ目のピッチ(勾配)よりもはるかに大きなピッチ(勾配)で構成されている。これは、駆動リング15が駆動スピンドル20によって一定の回転速度で駆動され、駆動リング15と特定のロックピン18との間に少なくとも2つの比を有する歯車ユニットが設けられることになる。高速ストローク面22によって生成される高速ギアにおいて、ロックピン18はできるだけ迅速に動かされ、前進力は低く保たれるべきである。
【0034】
図4bは、ロックピン18の中間位置(この位置では、通路開口部11内に部分的に突出している)を示している。ロックピン18の接触面25は、高速ストローク面22として示される領域において制御面21に沿って摺動する。
【0035】
駆動リング15の反時計回り方向への回転及びそれに続く高速ストローク面22の配置は、前進力が接触面25に作用することを意味し、力は小さいにも関わらず、大きなピッチ(勾配)は高い前進速度に達することを可能にする。
【0036】
高速ストローク面22とクランプストローク面23との間の移行部分は、特定の半径を有する。クランプピン12をクランプするための既知で支配的な幾何学的関係の結果として、この領域のロックピン18は、クランプピン12の接触面43との接触より前に直接動かされる。ロックピン18の高速ストロークは、この点から前方へクランプストローク面23に置き換えられなければならない。
【0037】
図4cに見られるように、接触面25は、高速ストローク面22よりも低いピッチ(勾配)又は傾斜を有するクランプストローク面23上を摺動する。ロックピン18の前進移動は短くなければならない。しかし、ロックピン18をクランプピン12と確実に能動接触させるために高いクランプ力が必要とされる。
【0038】
接触面25に対向して伸びる収容ポケット19の壁は、駆動リング15の外壁17に対して隙間24を有して配置されており、隙間24によって駆動リング15の回転運動が解放され、したがって駆動リング15及びロックピン18の移動が妨げられることがない。
【0039】
ロックピン18が駆動リング15と駆動接続にある各領域において、駆動リング15は、結果として、内壁16に設けられた対応する制御面21と、接触面25とを有し、それにより駆動リング15の一定の回転運動の割合がロックピン18の2つの半径方向の運動に変換される。すなわち、それらは高速ストロークギアとクランプストロークギアで操作される。高速ストロークギアは、低い力で高速前進移動を特徴とし、クランプストロークギアは、高い力で遅い又は低速の移動速度で、2つの高速ストローク面22及びクランプストローク面23のピッチ(勾配)によって達成されることを特徴とする。
【0040】
カバー36が最初にロックピン18を押圧し、そして駆動リング15を案内溝31内に押し込むように、駆動リング15及びロックピン18の順序を案内溝31内で反転させることも考えられる。
【0041】
この目的のために、U字形の収容ポケット19を駆動リング15内に加工し、ロックピン18をこのポケット19に挿入することができる。
【0042】
駆動リング15は、駆動スピンドル20によって限定された調整角度αだけ回転させられる。この場合、角度αは、駆動スピンドルに加工されたねじ山の長さによって決まる。
【0043】
駆動スピンドル20を4~6回転さえすれば、ロックピン18を前進させるだけでなく、クランプピン12を掴んでクランプするのに十分である。
【0044】
2つのロックピン18のみを使用し、それらを互いに平面上に対向して配置し、クランプピン12を把持することが、更なる複雑化を伴わずに技術的に可能である。2つのロックピン18とクランプピン12との間の接触面の寸法を大きくするために、リング状又は湾曲形状を具備する成形突起をロックピン18の自由端に設けることができる。その結果、特に、クランプピン12が、自身に加工された円周クランプ溝42を有する場合、その成形突起はクランプピン12を把持し、特定の成形突起による接触面又は支持面として使用できる。その結果、ロックピン18とクランプピン12との間の接触面の大きさは、成形突起によって大きくなるので、ロックピン18の数を減らすことができる。
【0045】
3つのロックピン18が使用されるとき、それらは互いに対し120°の角度で配置される。複数のロックピン18がある場合、クランプピン12の円周に沿って均等に分布されて配置される。
【符号の説明】
【0046】
1 固定具
1 クランプ固定具
2 工作物
3 工具テーブル
4 工作機械
5 工具
6 座標系
10 ハウジング
11 通路開口部
11’ 長手方向軸
12 クランプピン
12’ 上面
13 固定ねじ
14 ねじ山
15 駆動リング
16 内壁
17 外壁
18 ロックピン
19 収容ポケット
20 駆動スピンドル
21 制御面
22 高速ストローク面
23 クランプストローク面
24 隙間
25 接触面
31 案内溝
32 壁
33 通路孔
34 ポケット
35 ピン
36 カバー
37 雌ねじ
38 雄ねじ
39 センタリング突起
40 接触面
41 クランプ面
42 円周クランプ溝
43 接触面
44 センタリングスリーブ
α 調整角度