(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20220128BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20220128BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20220128BHJP
C08K 7/18 20060101ALI20220128BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20220128BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220128BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220128BHJP
C08K 3/28 20060101ALN20220128BHJP
C08K 5/09 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550K
C08L29/04 A
C08L71/00 Y
C08K7/18
C08K5/053
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C08K3/28
C08K5/09
(21)【出願番号】P 2018012852
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】田鶴 美佳
(72)【発明者】
【氏名】杉田 規章
(72)【発明者】
【氏名】松下 隆幸
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0066102(US,A1)
【文献】国際公開第2009/131133(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/143579(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/013226(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/069202(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221660(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/212874(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/084091(WO,A1)
【文献】特開2016-023209(JP,A)
【文献】特開2016-023210(JP,A)
【文献】特開2018-044046(JP,A)
【文献】特開2015-109423(JP,A)
【文献】特開2014-041978(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104530987(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103740280(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102766406(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/12
H01L 21/304
H01L 21/463
B24B 3/00 - 3/60
B24B 21/00 - 39/06
B24D 3/00 - 99/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカ砥粒と、
塩基性化合物と、
10万以下の重量平均分子量及び次の化学式(1)で表される構造単位を有するポリビニルアルコール類、又は10万以下の重量平均分子量及び次の化学式(2)で表される構造単位を有するポリグリセリン類を含む水溶性高分子と、
有機酸及び有機酸塩からなる群から選択される1種以上と、
水とを含
み、
pHが9.0~12.0である、シリコンウェーハ研磨用組成物。
【化1】
【化2】
【請求項2】
請求項1に記載の
シリコンウェーハ研磨用組成物であって、さらに、
非イオン性界面活性剤を含む、
シリコンウェーハ研磨用組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の
シリコンウェーハ研磨用組成物であって、
前記非イオン性界面活性剤は多価アルコールを含む、
シリコンウェーハ研磨用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研磨用組成物に関し、さらに詳しくは、シリコンウェーハに適した研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CMP(Chemical Mechanical Polishing)によるシリコンウェーハの研磨は、3段階又は4段階の多段階で行われ、これにより高精度の平坦化を実現している。特に最終段階の仕上げ研磨では、スラリーとして、シリコンウェーハの表面欠陥を低減したりウェーハ表面に濡れ性を付与したりするために、一般的に、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等の水溶性高分子が用いられている。
【0003】
特許第6029895号公報(特許文献1)は、重量平均分子量が1000000以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される分子量分布が5.0以上、8.0以下の水溶性高分子を含有することにより、研磨速度を高める効果及び研磨面の濡れ性を高める効果のいずれも発揮させることの容易なシリコン基板研磨用組成物を開示する。しかし、同公報は、表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ)への影響については何ら言及していない。
【0004】
国際公開WO2012/102144号公報(特許文献2)は、ヒドロキシエチルセルロース、アンモニア、砥粒及び水を含む組成物(A)と、有機酸及び有機酸塩から選ばれる少なくとも一種とを含む研磨用組成物であって、研磨用組成物の電気伝導度が組成物(A)の電気伝導度の1.2倍以上8倍以下である研磨用組成物を開示する。この研磨用組成物によれば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含む研磨液に有機酸を加えることにより電気伝導度が上昇して研磨面の親水性が向上するが、基板表面のヘイズは悪化している。また、分子量の大きいHECはLPD及びヘイズを低減する効果が小さく、研磨後の表面品質に関する近年の要求レベルには十分に対応できない。なお、同公報は、HEC以外の水溶性高分子(ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロースなど)については何ら言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6029895号公報
【文献】国際公開WO2012/102144公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、LPD及びヘイズを十分に低減できる研磨用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る研磨用組成物は、砥粒と、塩基性化合物と、10万以下の重量平均分子量及び次の化学式(1)で表される構造単位を有するポリビニルアルコール類、又は10万以下の重量平均分子量及び次の化学式(2)で表される構造単位を有するポリグリセリン類を含む水溶性高分子と、有機酸及び有機酸塩からなる群から選択される1種以上と、水とを含む。
【0008】
【0009】
【発明の効果】
【0010】
本実施形態に係る研磨用組成物は、LPD及びヘイズを十分に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態による研磨用組成物は、砥粒と、塩基性化合物と、10万以下の重量平均分子量及び次の化学式(1)で表される構造単位を有するポリビニルアルコール類、又は10万以下の重量平均分子量及び次の化学式(2)で表される構造単位を有するポリグリセリン類を含む水溶性高分子と、有機酸及び有機酸塩からなる群から選択される1種以上と、水とを含む。
【0012】
【0013】
【0014】
本実施形態による研磨用組成物は、10万以下の重量平均分子量を有する水溶性高分子と有機酸又は有機酸塩を含んでいるため、ウェーハ表面の親水性が向上し、HECでは解決できないナノスケールのLPD及びヘイズを低減することができる。
【0015】
研磨用組成物はさらに、非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。サブポリマーとして非イオン性界面活性剤を加えることにより、ウェーハ表面の親水性を維持しつつ、LPD及びヘイズをさらに低減することができる。
【0016】
砥粒は、この分野で常用されるものを使用できる。砥粒は例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルアルミナ、ヒュームドアルミナ、酸化セリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等である。これらのうち、コロイダルシリカが好適に用いられる。
【0017】
砥粒の含有量は、特に限定されないが、例えば研磨用組成物全体の0.1~10重量%である。砥粒の含有量は、研磨速度を大きくする観点からは多い方が好ましく、研磨傷や異物残りを低減するという観点からは少ない方が好ましい。砥粒の含有量の下限は、好ましくは0.5重量%であり、さらに好ましくは1重量%である。砥粒の含有量の上限は、好ましくは8重量%であり、さらに好ましくは5重量%である。
【0018】
塩基性化合物は、ウェーハの表面をエッチングして化学的に研磨する。塩基性化合物は、例えば、アミン化合物、無機アルカリ化合物等である。
【0019】
アミン化合物は、例えば、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム及びその塩、複素環式アミン等である。具体的には、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、ピペラジン塩酸塩、炭酸グアニジン等が挙げられる。
【0020】
無機アルカリ化合物は、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸水素塩等が挙げられる。無機アルカリ化合物は、具体的には、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等である。
【0021】
上述した塩基性化合物は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。塩基性化合物の合計の含有量は、特に限定されないが、例えば研磨用組成物全体の0.1~5重量%である。塩基性化合物の含有量の下限は、好ましくは0.5重量%である。塩基性化合物の含有量の上限は、好ましくは3重量%である。
【0022】
水溶性高分子は、例えば、上記化学式(1)で表される構造単位を分子構造内に有するポリビニルアルコール類である。ポリビニルアルコール類として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルホルムアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA等が挙げられる。
【0023】
変性PVAは、上記化学式(1)で表される構造単位に加えて、次の化学式(3)で表される1,2-ジオール構造単位を有する。
【0024】
【0025】
化学式(3)中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を示し、Xは単結合又は結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を示す。
【0026】
あるいは、水溶性高分子は、上記化学式(2)で表される構造単位を分子構造内に有するポリグリセリン類である。ポリグリセリン類として、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、例えば、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンカプリル酸エステル、ポリグリセリンミリスチン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。ポリグリセリンアルキルエーテルとして、例えば、ポリグリセリル4ラウリルエーテル等が挙げられる。
【0027】
ポリグリセリンは、上記化学式(2)で表される構造単位に加えて、次の化学式(4)で表される構造単位を有していてもよい。
【化6】
【0028】
化学式(4)中、Rは水素原子又は有機基を示す。
【0029】
水溶性高分子は1種類を単独で配合しても、2種以上を配合しても、いずれでもよい。ただし、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は含まれない。
【0030】
有機酸は、炭素を主成分とする有機化合物であって、酸性を有するものであり、例えば、乳酸、アミノ酪酸、りんご酸、クエン酸、又はヒドロキシプロリンである。
【0031】
有機酸塩は、有機酸と金属イオンが結合してなる化合物であり、例えば、酢酸アンモニウムである。
【0032】
本実施形態で用いる有機酸又は有機酸塩には、1~4価の金属イオン(カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、ニッケルイオンなど)とキレート錯体を形成し、カルボン酸、カルボン酸ナトリウム又はホスホン酸を含み、かつ、第三級アミンを含むキレート剤は含まれない。キレート剤を添加すると、砥粒が凝集しやすくなるからである。
【0033】
有機酸又は有機酸塩に含まれないキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1,-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸等が挙げられる。
【0034】
非イオン性界面活性剤としては、例えば多価アルコールが挙げられる。多価アルコールは、1分子中に2以上のヒドロキシ基を含むアルコールである。多価アルコールとしては、例えば、糖と糖以外の有機化合物とがグリコシド結合した配糖体(グリコシド)、グリセリン及びその誘導体(グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、多価アルコールには、配糖体(グリコシド)、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコールにアルキレンオキシドが付加した多価アルコールアルキレンオキシド付加物等も含まれる。配糖体としては、例えば、メチルグルコシドのアルキレンオキシド誘導体(ポリオキシアルキレンメチルグルコシド)等が挙げられる。
【0035】
メチルグルコシドのアルキレンオキシド誘導体(ポリオキシアルキレンメチルグルコシド)としては、例えば、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等が挙げられる。これらの化合物の中でも、ポリオキシプロピレンメチルグルコシドが特に好適である。
【0036】
多価アルコールの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば100~30000である。多価アルコールの重量平均分子量の下限は、好ましくは200であり、さらに好ましくは500である。多価アルコールの重量平均分子量の上限は、好ましくは10000であり、さらに好ましくは1000である。多価アルコールは、1種類を単独で配合してもよく、2種類以上を配合してもよい。
【0037】
多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、例えば研磨用組成物全体の0.003~0.3重量%である。多価アルコールの含有量の下限は、好ましくは0.005重量%であり、さらに好ましくは0.01重量%である。多価アルコールの含有量の上限は、好ましくは0.25重量%であり、さらに好ましくは0.15重量%である。
【0038】
グリセリン誘導体(グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル)としては、例えば、ジグリセリンモノカプリレート、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル等が挙げられる。これらの化合物の中でも、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルが特に好適である。
【0039】
多価アルコールの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば100~30000である。多価アルコールの重量平均分子量の下限は、好ましくは200であり、さらに好ましくは500である。多価アルコールの重量平均分子量の上限は、好ましくは10000であり、さらに好ましくは2000である。多価アルコールは、1種類を単独で配合してもよく、2種類以上を配合してもよい。
【0040】
多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、例えば研磨用組成物全体の0.003~0.3重量%である。多価アルコールの含有量の下限は、好ましくは0.005重量%であり、さらに好ましくは0.05重量%である。多価アルコールの含有量の上限は、好ましくは0.25重量%であり、さらに好ましくは0.15重量%である。
【0041】
多価アルコールとしては、具体的には、N,N,N’,N’-テトラキス・ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・エチレンジアミン(ポロキサミン)、ポロキサマー、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0042】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられる。ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等が挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルアミンとしては、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000~30000である。非イオン性界面活性剤の重量平均分子量の下限は、好ましくは5000であり、さらに好ましくは6000である。非イオン性界面活性剤の重量平均分子量の上限は、好ましくは10000あり、さらに好ましく9000である。非イオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、例えば研磨用組成物全体の0.003~0.3重量%である。非イオン性界面活性剤の含有量の下限は、好ましくは0.005重量%であり、さらに好ましくは0.01重量%である。非イオン性界面活性剤の含有量の上限は、好ましくは0.25重量%であり、さらに好ましくは0.15重量%である。非イオン性界面活性剤は、1種類を単独で配合してもよく、2種類以上を配合してもよい。
【0043】
本実施形態による研磨用組成物は、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。研磨用組成物を塩基性側に調整するための化合物としては、例えば上述した塩基性化合物が挙げられる。研磨用組成物を酸性側に調整するための化合物としては、例えば塩酸類、硫酸類、硝酸類、リン酸類等が挙げられる。本実施形態による研磨用組成物のpHは、好ましくは9.0~12.0である。
【0044】
本実施形態による研磨用組成物は、上記の他、研磨用組成物の分野で一般に知られた配合剤を任意に配合することができる。
【0045】
本実施形態による研磨用組成物は、砥粒、非イオン性界面活性剤、その他の配合材料を適宜混合して水を加えることによって作製される。本実施形態による研磨用組成物は、あるいは、砥粒、非イオン性界面活性剤シリカ、その他の配合材料を、順次、水に混合することによって作製される。これらの成分を混合する手段としては、ホモジナイザー、超音波等、研磨用組成物の技術分野において常用される手段が用いられる。
【0046】
以上で説明した研磨用組成物は、適当な濃度となるように水で希釈した後、シリコンウェーハの研磨に用いられる。
【実施例】
【0047】
以下、本実施形態の効果を確認するため、表1~5に示される実施例1~15及び比較例1~9の研磨用組成物を作製し、超純水で31倍に希釈して研磨評価を行った。
【0048】
【0049】
実施例1~4及び比較例1は、水溶性高分子として、変性PVAを含む。変性PVAは、上記化学式(1)で表される構造単位と、上記化学式(3)で表される1,2-ジオール構造単位とを有する。ただし、化学式(3)中、R1~R6は全て水素原子であり、Xは単結合である。変性率(=1,2-ジオール構造単位の数/構造単位の全数)は、10%以下である。後述する実施例5~12並びに比較例2及び3もこれと同様である。
【0050】
比較例1は、9.5重量%のシリカ砥粒と、0.27重量%のアンモニア水溶液と、水溶性高分子として、0.07重量%の変性PVA(重量平均分子量2万;以下、同じ。)と、非イオン性界面活性剤として、0.01重量%の多価アルコールA(ポリオキシエチレンメチルグルコシド)と、非イオン性界面活性剤として、0.01重量%の多価アルコールB(ポリオキシプロピレンメチルグルコシド)とを含む。実施例1~3は、比較例1に、有機酸塩として、酢酸アンモニウムを添加したものである。実施例1~3の酢酸アンモニウムの含有量は、それぞれ、1.0重量%、0.1重量%、0.02重量%である。実施例4は、比較例1に、有機酸として、0.1重量%の乳酸を添加したものである。実施例及び比較例の各残部は水である(以下、同じ。)。
【0051】
【0052】
比較例2は、3.5重量%のシリカ砥粒と、0.05重量%のアンモニア水溶液と、水溶性高分子として、0.05重量%の変性PVAと、非イオン性界面活性剤として、0.0075重量%の多価アルコールBと、非イオン性界面活性剤として、0.0113重量%の多価アルコールD(ポロキサミン;N,N,N‘,N’-テトラキス・ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・エチレンジアミン)とを含む。一方、実施例5~8は、比較例2に、多価アルコールDの代わりに、有機酸として、それぞれ、乳酸、アミノ酪酸、りんご酸、及びヒドロキシプロリンを添加したものである。実施例5~8の有機酸の含有量は、比較例2の多価アルコールDと同じ0.0113重量%である。
【0053】
【0054】
実施例9は、比較例2に、有機酸塩として、0.0113重量%の酢酸アンモニウムを添加したものである。実施例10及び11は、比較例2に、有機酸として、それぞれ、0.0113重量%の乳酸及び0.0113重量%のアミノ酪酸を添加したものである。比較例3は、9.5重量%のシリカ砥粒と、0.17重量%のアンモニア水溶液と、水溶性高分子として、0.07重量%の変性PVAと、非イオン性界面活性剤として、0.01重量%の多価アルコールAと、0.01重量%の多価アルコールBと、0.01重量%の多価アルコールC(ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル)とを含む。実施例12は、比較例3に、有機酸として、0.2重量%のクエン酸を添加したものである。
【0055】
【0056】
実施例13~15及び比較例4~6は、水溶性高分子として、変性PVAに代えて、ポリグリセリンを含む。ポリグリセリンは、上記化学式(2)で表される構造単位と、上記化学式(4)で表される構造単位とを有する。ただし、化学式(4)中、Rは水素原子である。
【0057】
比較例4は、0.3重量%のシリカ砥粒と、0.005重量%のアンモニア水溶液と、水溶性高分子として、1.8重量%のポリグリセリン(阪本薬品工業株式会社製:重量平均分子量2000)と、非イオン性界面活性剤として、0.045重量%の多価アルコールBとを含む。一方、実施例13は、比較例4に、有機酸として、0.045重量%のアミノ酪酸を添加したものである。
【0058】
比較例5は、0.3重量%のシリカ砥粒と、0.045重量%のアンモニア水溶液と、水溶性高分子として、1.8重量%のポリグリセリンとを含む。ただし、比較例5は、界面活性剤(多価アルコール)を含まない。比較例6は、比較例5に、界面活性剤として、0.045重量%の多価アルコールBを添加したものである。
【0059】
一方、実施例14は、比較例5に、有機酸塩として、0.045重量%の酢酸アンモニウムを添加したものである。実施例15は、比較例6に、有機酸として、0.045重量%のアミノ酪酸を添加したものである。
【0060】
【0061】
比較例7は、3.5重量%のシリカ砥粒と、0.05重量%のアンモニア水溶液と、水溶性高分子として、0.05重量%のHEC(重量平均分子量:100万)とを含む。比較例8は、比較例7に、有機酸塩として、0.0113重量%の酢酸アンモニウムを添加したものである。比較例9は、比較例7に、有機酸として、0.0113重量%の乳酸を添加したものである。
【0062】
次に、上記の実施例1~15及び比較例1~9の研磨用組成物を使用し、次の条件1又は2で研磨を行った。
【0063】
[研磨条件1]
研磨装置:SPP800S(株式会社岡本工作機械製作所製)
ウェーハ:直径300mm;P型シリコンウェーハ(100)面
研磨パッド:SUPREME(登録商標)RN-H(ニッタ・ハース株式会社製)
研磨時間:4分
定盤の回転速度:40rpm
ヘッドの回転速度:39rpm
研磨用組成物の供給速度:0.6L/分
【0064】
[研磨条件2]
研磨装置:SPP800S(株式会社岡本工作機械製作所製)
ウェーハ:直径300mm;P型シリコンウェーハ(100)面
研磨パッド:IK2010H(Dow Chemical Company製)
研磨時間:3分
定盤の回転速度:40rpm
ヘッドの回転速度:39rpm
研磨用組成物の供給速度:0.6L/分
【0065】
研磨後、上記の実施例及び比較例について、ウェーハ欠陥検査・レビュー装置(レーザーテック株式会社製「MAGICS M5640」)を用い、シリコンウェーハ表面の欠陥数を測定した。測定時の感度を最高のD37mVに設定した。また、ウェーハ表面検査装置(日立エンジニアリング社製「LS6600」)を用い、シリコンウェーハ表面のヘイズ値を測定した。測定した欠陥数及びヘイズ値をそれぞれ表1~5中の「Defect」及び「Haze」の欄に示した。また、実施例の欠陥数及びヘイズ値は比較例を「1」とした場合の比率で示した。ただし、比較例5~7については、研磨後のウェーハが完全撥水となり、「MAGICS」で欠陥数を測定した際に欠陥数過多でオーバーフロー(OF)となった。
【0066】
実施例を用いると欠陥数及びヘイズが低減する原因は必ずしも明らかではないが、おそらく次の通りと考えられる。
【0067】
有機酸を添加することによって有機酸の所有するカルボキシ基が電離し、H+が発生する。そのため、pHが低下する傾向になり、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位が変化する。その結果、砥粒がウェーハに近接しやすくなり、研磨が進行しやすくなる、と考えられる。
【0068】
また、塩基性下でカルボキシ基のC=Oの酸素原子の孤立電子対では水分子が水素結合を形成する。そのため、研磨パッドやウェーハ上の水分保持力が高まることによって親水性が向上する。その結果、研磨用組成物のポリマー保護効果との相乗効果により欠陥数及びヘイズが低減する。サブポリマーのみでも欠陥数及びヘイズの低減効果はあるが、重量平均分子量が小さく、水分保持力が少ないので、撥水起因で悪化する場合がある。
【0069】
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。