(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/00 20060101AFI20220113BHJP
G01H 3/00 20060101ALI20220113BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20220113BHJP
G08B 21/16 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
G08B21/00 Z
G01H3/00 A
G08B25/00 510Z
G08B25/00 510M
G08B21/16
(21)【出願番号】P 2018019272
(22)【出願日】2018-02-06
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168907
【氏名又は名称】本田 太久
(72)【発明者】
【氏名】小林 真澄
(72)【発明者】
【氏名】今野 実
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-250156(JP,A)
【文献】特開2002-123878(JP,A)
【文献】特開2009-111506(JP,A)
【文献】特開平04-297994(JP,A)
【文献】特開2006-235996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H1/00-17/00
G08B13/00-31/00
G10L15/00-17/26
H04N7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域に対応して配置され、前記監視領域で発生した音である領域音を検出する音検出部と、
前記領域音を検出した前記音検出部から出力される音信号に基づいて前記領域音の音情報を算出する音情報算出部と、
前記監視領域に対応した暗騒音の音情報を記憶する記憶部と、
前記音情報算出部で算出された前記領域音の音情報を、前記記憶部に記憶された前記監視領域に対応した前記暗騒音の音情報と比較し、前記監視領域の前記領域音が前記監視領域に対応した前記暗騒音と異なる異常騒音を含む場合に前記監視領域に異常が生じていると判定する異常判定部と、
前記監視領域の異常を報知する報知部と、
前記異常判定部において前記監視領域に異常が生じていると判定された場合に前記監視領域の異常を報知するように前記報知部を制御する制御部とを備え
、
前記記憶部は、前記監視領域において前記異常騒音を発生する特定作業を実施する予定を登録した作業予定情報を記憶し、
前記異常判定部は、前記監視領域の前記領域音が前記異常騒音を含み且つ前記記憶部に記憶された前記作業予定情報に前記監視領域で前記特定作業を実施する予定が登録されていない場合に、前記監視領域に異常が生じていると判定することを特徴とする管理システム。
【請求項2】
前記記憶部は、異常騒音の音情報を記憶し、
前記異常判定部は、前記音情報算出部で算出された前記領域音の音情報を、前記記憶部に記憶された前記異常騒音の音情報とさらに比較する請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記暗騒音の周波数帯を音情報として記憶する請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記音検出部は、前記監視領域で発生する前記暗騒音を所定期間検出し、
前記音情報算出部は、前記音検出部で検出された音信号に基づいて所定期間の暗騒音の音情報を算出し、
前記記憶部は、前記音情報算出部で算出された前記所定期間の暗騒音の音情報を前記監視領域に対応した前記暗騒音の音情報として記憶する請求項1~
3のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項5】
前記監視領域に対応して配置され、前記監視領域を撮像する撮像部をさらに備え、
前記報知部は、前記撮像部で撮像された前記監視領域の画像を表示する画像表示部を有し、
前記制御部は、前記異常判定部において前記監視領域に異常が生じていると判定された場合に、前記画像表示部に前記監視領域の画像を表示させる請求項1~
4のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項6】
前記監視領域に対応して配置され、前記監視領域におけるガス漏れを検出するガス検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記ガス検出部でガス漏れが検出された場合には前記報知部により前記監視領域の異常を報知する請求項1~
5のいずれか一項に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管理システムに係り、特に、監視領域で発生した音(以下領域音)が異常騒音を含む場合に監視領域の異常を報知する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆるライフラインを構成する配管のうち高圧ガス輸送幹線は、幹線道路の直下に埋設されていることが多く、ガス供給会社では、高圧ガス輸送幹線の安全を維持するために幹線道路を定期的に巡回パトロールしている。
また、高圧ガス輸送幹線の近辺でガス供給会社以外の会社が工事、例えば上下水道管工事および電気配線工事などをする場合には、その工事を行う会社がガス供給会社に工事を行う旨を予め連絡し、ガス供給会社の社員等が立ち会って安全に工事が行われる。
【0003】
しかしながら、ガス供給会社以外の会社が工事を行うことをガス供給会社に連絡しないことがあり、ガス供給会社の管理なく工事が行われることによって高圧ガス輸送幹線が損傷されるおそれがあった。このような問題は、巡回パトロールの回数を増やすことによって、ある程度は解消することができるが、巡回パトロールに多くの人員を確保しなければならず、巡回パトロールの負担が増大するといった問題が生じる。
【0004】
そこで、巡回パトロールの負担を軽減する技術として、例えば、特許文献1には、監視カメラおよびマイクロフォンにより監視領域を監視するカメラ監視システムが提案されている。このカメラ監視システムは、監視領域に設置されたマイクロフォンによって異常音が検知されると、監視領域に異常事態が発生していると判断して、監視領域に設置されたカメラにより撮像された「画像」を表示するとともに、マイクロフォンにより集音された「異常音」を出力するようにしたものである。このようにして、遠方から幹線道路を監視することにより、巡回パトロールの負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のカメラ監視システムでは、マイクロフォンで所定の基準値レベル以上の音が検知されただけで異常音と判定し、監視領域の環境に応じた音の変化が考慮されていないため、監視領域における異常の有無を正確に判定することができなかった。
【0007】
例えば、音圧レベルが低下しにくい監視領域、例えばビルなどの障害物が少ない監視領域にマイクロフォンが設置された場合に、暗騒音の音圧レベルが高くなり、監視領域に異常事態が生じていないにもかかわらず、異常音と判定されるおそれがあった。この場合には、監視領域に異常事態が生じている旨の報知がおこなわれるが、この報知は誤報であるため、管理者は、カメラ画像をみても監視領域の異常を確認することができない。このため、管理者は、異常を確認するために監視領域に出向かなければならず、無駄な労力を割くことになる。
【0008】
一方、音圧レベルが低下しやすい監視領域、例えばビルなどの障害物が多い監視領域にマイクロフォンが設置された場合、監視領域に異常事態が生じているにもかかわらず、異常音が基準値レベルより小さな音圧レベルで検出されて、異常音が生じていないと判定されるおそれがある。この場合には、監視領域に異常事態が生じている旨の報知がおこなわれないため、管理者が監視領域の異常に気付くことができず、被害が増大するといった問題が生じる。
【0009】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、監視領域の異常を正確に判定する管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る管理システムは、監視領域に対応して配置され、監視領域で発生した音である領域音を検出する音検出部と、領域音を検出した音検出部から出力される音信号に基づいて領域音の音情報を算出する音情報算出部と、監視領域に対応した暗騒音の音情報を記憶する記憶部と、音情報算出部で算出された領域音の音情報を、記憶部に記憶された監視領域に対応した暗騒音の音情報と比較し、監視領域の領域音が監視領域に対応した暗騒音と異なる異常騒音を含む場合に監視領域に異常が生じていると判定する異常判定部と、監視領域の異常を報知する報知部と、異常判定部において監視領域に異常が生じていると判定された場合に監視領域の異常を報知するように報知部を制御する制御部とを備えるものである。
【0011】
ここで、記憶部は、異常騒音の音情報を記憶し、異常判定部は、音情報算出部で算出された領域音の音情報を、記憶部に記憶された異常騒音の音情報とさらに比較することが好ましい。
【0012】
また、記憶部は、暗騒音の周波数帯を音情報として記憶することができる。
【0013】
また、記憶部は、監視領域において異常騒音を発生する特定作業を実施する予定を登録した作業予定情報を記憶し、異常判定部は、監視領域の領域音が異常騒音を含み且つ記憶部に記憶された作業予定情報に監視領域で特定作業を実施する予定が登録されていない場合に、監視領域に異常が生じていると判定することができる。
【0014】
また、音検出部は、監視領域で発生する暗騒音を所定期間検出し、音情報算出部は、音検出部で検出された音信号に基づいて所定期間の暗騒音の音情報を算出し、記憶部は、音情報算出部で算出された所定期間の暗騒音の音情報を監視領域に対応した暗騒音の音情報として記憶することが好ましい。
【0015】
また、監視領域に対応して配置され、監視領域を撮像する撮像部をさらに備え、報知部は、撮像部で撮像された監視領域の画像を表示する画像表示部を有し、制御部は、異常判定部において監視領域に異常が生じていると判定された場合に、画像表示部に監視領域の画像を表示させることが好ましい。
【0016】
また、監視領域に対応して配置され、監視領域におけるガス漏れを検出するガス検出部をさらに備え、制御部は、ガス検出部でガス漏れが検出された場合には報知部により監視領域の異常を報知することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、異常判定部が、音検出部で検出された領域音の音情報を、記憶部に記憶された監視領域に対応した暗騒音の音情報と比較し、監視領域の領域音が監視領域に対応した暗騒音と異なる異常騒音を含む場合に監視領域に異常が生じていると判定するので、監視領域の異常を正確に判定する管理システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る管理システムの構成を示す図である。
【
図2】管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】監視領域に対応した暗騒音の波形データを示す図である。
【
図4】音検出部で検出される領域音の波形データを示す図である。
【
図5】実施の形態2に係る管理システムの要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る管理システムの構成を示す。この管理システムは、複数の監視部1aおよび1bと、管理部2と、報知部3とを有する。
【0020】
複数の監視部1aおよび1bは、複数の監視領域EaおよびEbにそれぞれ対応して配置され、監視領域EaおよびEbで発生する領域音をそれぞれ検出すると共に監視領域EaおよびEbをそれぞれ撮像することにより監視領域EaおよびEbを監視するものである。監視領域EaおよびEbとしては、例えば、高圧ガスを輸送するための配管が埋設された幹線道路Rなどが挙げられる。監視部1aおよび1bは、監視領域EaおよびEbを上方から監視できるように、例えば幹線道路Rの側部に設けられた支柱に取り付けることができる。
【0021】
管理部2は、監視部1aおよび1bとの間で無線通信して監視領域EaおよびEbを管理するもので、監視部1aおよび1bで検出された領域音および撮像された領域画像に基づいて、監視領域EaおよびEbにおいて上下水道管工事および電気配線工事などの工事が実施されているか否かを判定する。
【0022】
報知部3は、管理部2との間で無線通信して、管理部2において工事が実施されていると判定された場合に、幹線道路Rを巡回パトロールする管理者Pに監視領域EaおよびEbの異常を報知するものである。報知部3は、例えば携帯電話などから構成することができる。
【0023】
次に、監視部1aおよび1b、管理部2および報知部3の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、監視部1aは、音検出部4および撮像部5を有し、この音検出部4および撮像部5が無線通信部6aにそれぞれ接続されている。
【0024】
音検出部4は、監視領域Eaに対応して配置され、監視領域Eaで発生する領域音を検出して領域音に応じた音信号を出力するものである。音検出部4は、例えば、マイクロフォンなどから構成することができる。
【0025】
撮像部5は、監視領域Eaに対応して配置され、監視領域Eaを撮像して画像信号を出力するものである。撮像部5は、例えば、カメラなどから構成することができる。
【0026】
無線通信部6aは、音検出部4から出力された音信号と、撮像部5から出力された画像信号とを無線通信により管理部2に送信する。
なお、図示しない監視部1bは、監視部1aと同様の構成を有するため説明を省略する。
【0027】
管理部2は、無線通信部6bを有し、この無線通信部6bに音情報算出部7と画像処理部8がそれぞれ接続されている。また、音情報算出部7と画像処理部8は、異常判定部9を介して無線通信部6cに接続されている。また、異常判定部9には、記憶部10が接続されている。さらに、無線通信部6b、音情報算出部7、画像処理部8、異常判定部9および無線通信部6cに制御部11が接続され、この制御部11に格納部12および操作部13がそれぞれ接続されている。
【0028】
無線通信部6bは、監視部1aおよび1bの無線通信部6aとの間で無線通信して、監視部1aおよび1bの音検出部4から出力される音信号および監視部1aおよび1bの撮像部5から出力される画像信号を受信し、音信号を音情報算出部7に出力すると共に画像信号を画像処理部8に出力する。
【0029】
音情報算出部7は、無線通信部6bから出力される音信号に基づいて領域音の音情報を算出する。例えば、音情報算出部7は、音信号に基づいて領域音の波形データを求めて、その波形データに基づいて領域音の周波数、音圧および波形を領域音の音情報として算出することができる。
画像処理部8は、無線通信部6bから出力される画像信号に画像処理を施して領域画像を生成する。
【0030】
記憶部10は、異常騒音の音情報と、複数の監視領域EaおよびEbに対応した複数の暗騒音の音情報とを記憶する。ここで、異常騒音は、上下水道管工事および電気配線工事などの工事から生じる工事騒音であり、例えば舗装カッターおよび油圧ブレーカーなどの工事機械から生じる騒音が挙げられる。また、暗騒音は、異常騒音以外の騒音であり、例えば自動車の騒音など監視領域EaおよびEbにおいて日常的に発生する騒音が挙げられる。また、暗騒音には、緊急車両および踏切の警笛などの突発的な騒音も含まれる。
【0031】
ここで、記憶部10には、複数の監視領域EaおよびEbに対応した複数の暗騒音の音情報が記憶されている。このため、記憶部10には、監視領域EaおよびEbごとに異なる暗騒音の音情報が記憶されることになる。例えば、記憶部10は、監視部1aおよび1bの音検出部4により監視領域EaおよびEbにおける暗騒音をそれぞれ所定期間検出し、その暗騒音の音情報をそれぞれ平均化したものを監視領域EaおよびEbに対応した暗騒音の音情報として記憶することができる。
なお、記憶部10に記憶された異常騒音の音情報は、監視領域EaおよびEbに対応したものではなく、異常騒音として標準的な1つの基準値を設定したものである。
【0032】
異常判定部9は、音情報算出部7で算出された領域音の音情報を、記憶部10に記憶された監視領域EaおよびEbに対応する複数の暗騒音の音情報と比較し、特定の監視領域Eaの領域音が特定の監視領域Eaに対応した暗騒音と異なる異常騒音を含む場合に監視領域Eaに異常が生じていると判定する。
【0033】
制御部11は、異常判定部9において監視領域Eaに異常が生じていると判定された場合に、無線通信部6cを介して制御信号を報知部3に送信して、監視領域Eaの異常を報知するように報知部3を制御する。また、制御部11は、画像処理部8で生成された監視領域Eaの領域画像を報知部3に出力する。
無線通信部6cは、制御部11から出力される制御信号および画像信号を無線通信により報知部3に送信する。
【0034】
格納部12は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体を用いることができる。
操作部13は、管理者Pが入力操作を行うためのもので、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から構成することができる。
なお、音情報算出部7、画像処理部8、異常判定部9および制御部11は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0035】
報知部3は、管理者Pに対して監視領域EaおよびEbの異常を報知するもので、無線通信部6dを有し、この無線通信部6dに画像表示部14および警告音出力部15がそれぞれ接続されている。
【0036】
無線通信部6dは、管理部2の無線通信部6cとの間で無線通信し、無線通信部6cから制御信号および画像信号を受信して、画像信号を画像表示部14に出力すると共に制御信号を警告音出力部15に出力する。
【0037】
画像表示部14は、液晶ディスプレイなどから構成され、無線通信部6cから出力された領域画像を表示する。
【0038】
警告音出力部15は、スピーカーなどから構成され、無線通信部6cから出力された制御信号に基づいて警告音を出力する。
【0039】
次に、この実施の形態の動作について説明する。
まず、
図1に示すように、高圧ガスを輸送する配管が埋設された幹線道路Rに監視領域EaおよびEbが設定され、その監視領域EaおよびEb近傍に配置された監視部1aおよび1bにより監視領域EaおよびEbが監視されると共に報知部3を携帯した管理者Pが幹線道路Rを巡回パトロールする。
【0040】
監視領域EaおよびEbで発生した領域音は、
図2に示すように、監視部1aおよび1bの音検出部4でそれぞれ検出され、領域音に応じた音信号が音検出部4から無線通信部6aおよび6bを介して管理部2の音情報算出部7に出力される。また、監視部1aおよび1bの撮像部5が監視領域EaおよびEbをそれぞれ撮像し、その画像信号が撮像部5から無線通信部6aおよび6bを介して管理部2の画像処理部8に出力される。
【0041】
音検出部4から音信号を入力した音情報算出部7は、音信号に基づいて監視領域EaおよびEbの領域音の波形データをそれぞれ求め、その波形データに含まれる音情報、例えば周波数帯および音圧レベルを算出する。また、撮像部5から画像信号を入力した画像処理部8は、画像信号に画像処理を施して監視領域EaおよびEbの領域画像を生成する。このようにして、音情報算出部7で算出された領域音の音情報および画像処理部8で生成された領域画像は、それぞれ異常判定部9に出力される。
【0042】
音情報算出部7から異常判定部9に領域音の音情報が入力されると、異常判定部9は、領域音の音情報を記憶部10に記憶された暗騒音の音情報および工事騒音の音情報と比較する。
【0043】
ここで、領域音の音情報である周波数帯および音圧レベルは、監視領域EaおよびEbの環境、例えば建物の配置および道路の幅などに応じて変化するものである。このため、記憶部10に記憶された暗騒音の周波数帯および音圧レベルを監視領域EaおよびEbにおいて標準的な1つの基準値として設定すると、領域音に含まれる工事騒音を記憶部10に記憶された暗騒音と識別できないおそれがある。例えば、領域音に含まれる工事騒音の周波数帯および音圧レベルが監視領域EaおよびEbの環境に応じて大きく低下する場合に、工事騒音が記憶部10に記憶された暗騒音とほぼ同じ周波数帯および音圧レベルとなり、工事騒音を暗騒音と識別できなくなる。特に、監視領域Eaのように交通量の多い幹線道路Rは、監視領域Ebのように交通量が少ない道路と比較して、領域音に含まれる暗騒音の音圧レベルが大きくなるため、工事騒音を暗騒音と識別することがさらに困難となる。
【0044】
そこで、本発明においては、複数の監視領域EaおよびEbに対応した複数の暗騒音の周波数帯および音圧レベルを記憶部10に記憶する。例えば、監視領域EaおよびEbの暗騒音が音検出部4により所定期間、例えば1か月間検出され、音情報算出部7が音検出部4で検出された音信号に基づいて所定期間の暗騒音の音情報を算出する。具体的には、音情報算出部7は、
図3に示すように、音信号に基づいて所定期間の暗騒音S1の波形データを求め、その波形データから暗騒音S1の音情報を算出する。そして、算出された暗騒音S1の音情報を監視領域EaおよびEbにそれぞれ対応した暗騒音の音情報として記憶部10に記憶する。
【0045】
この時、所定期間の暗騒音S1の波形データから波形のパターンなどに基づいて種類の異なる暗騒音の音情報、例えば日常的な暗騒音の音情報、緊急車両の暗騒音S1aの音情報および踏切の暗騒音の音情報などを算出して記憶部10に記憶することが好ましい。さらに、記憶部10に記憶される暗騒音S1の音情報は、定期的に更新して学習機能を持たせることもできる。
【0046】
このようにして、監視領域EaおよびEbに対応した暗騒音の音情報が記憶部10に記憶されることにより、異常判定部9は、音検出部4で検出される領域音の音情報と記憶部10に記憶された暗騒音S1の音情報を同じ基準で比較することができる。例えば、異常判定部9は、記憶部10に記憶された暗騒音S1の音圧レベルに閾値Hを設定する。そして、
図4に示すように、音検出部4により検出された領域音の音圧レベルを閾値Hと比較して、特定の周波数帯において音圧レベルが閾値Hを超えるか否かを算出する。異常判定部9は、例えば監視領域Eaの領域音について音圧レベルが閾値Hを超えた場合には、監視領域Eaの領域音に暗騒音S1と異なる工事騒音S2が含まれるとし、監視領域Eaに異常が生じていると判定する。
【0047】
このように、音検出部4で検出される領域音を監視領域EaおよびEbに対応した暗騒音S1と比較することで、領域音に含まれる工事騒音S2を暗騒音S1と高精度に識別することができ、監視領域EaおよびEbに異常が生じているか否かを正確に判定することができる。この時、異常判定部9は、音検出部4で検出される領域音の音情報を種類の異なる暗騒音、例えば日常的な暗騒音、緊急車両の暗騒音S1aおよび踏切の暗騒音などの音情報と比較することで、領域音に含まれる暗騒音S1と工事騒音S2をより高精度に識別することができる。
【0048】
また、異常判定部9は、領域音の音情報を記憶部10に記憶された工事騒音S2の音情報とも比較することで、領域音に含まれる暗騒音S1と工事騒音S2をさらに高精度に識別することができる。特に、道路を切断する舗装カッターの騒音S2aおよび道路を破砕する油圧ブレーカーの騒音は、特徴的な音情報を有するため、監視領域EaおよびEbの領域音を舗装カッターの騒音S2aの音情報および油圧ブレーカーの騒音の音情報と比較することが好ましい。このように、異常判定部9が、領域音の音情報を暗騒音S1の音情報および工事騒音S2の音情報の両者と比較することで、領域音に含まれる暗騒音S1と工事騒音S2を高精度に識別することができる。
【0049】
そして、異常判定部9が監視領域Eaにおいて異常が生じていると判定すると、制御部11が、無線通信部6cおよび6dを介して制御信号と共に画像処理部8で生成された監視領域Eaの領域画像を出力し、監視領域Eaの領域画像を画像表示部14に表示させると共に監視領域Eaの異常を知らせる警告音を警告音出力部15から出力させる。
【0050】
これにより、報知部3を携帯する管理者Pに監視領域Eaの異常を正確に報知することができる。また、警告音の出力と同時に、画像表示部14には監視領域Eaの領域画像が表示される。このため、管理者Pは監視領域Eaの様子を視認することができ、監視領域Eaにおいて異常事態が発生しているか否かを確実に把握することができる。これにより、例えば監視領域Eaの領域画像において工事する様子が確認された場合には管理者Pが監視領域Eaに出向くなど、監視領域Eaの異常の報知に対して適切な行動をとることができる。
なお、制御部11は、画像表示部14に表示させた領域画像を記憶部10に保存することもでき、例えば、管理者Pがすぐに領域画像を確認できない場合には時間をおいて再度画像表示部14に領域画像を表示させることができる。また、報知部3とは別の新たな報知部を管理部2に配置することもでき、この報知部により管理部2の周辺の管理者Pに対して監視領域Eaの異常を報知することができる。
【0051】
一方、異常判定部9が、監視領域EaおよびEbの領域音において工事騒音S2を認識せず、監視領域EaおよびEbに異常が生じていないと判定した場合には、制御部11から制御信号は出力されず、報知部3から監視領域EaおよびEbの異常は報知されないことになる。
【0052】
本実施の形態によれば、異常判定部9が、複数の音検出部4で検出された領域音の音情報を複数の監視領域EaおよびEbに対応した複数の暗騒音S1の音情報と比較し、監視領域Eaの領域音に工事騒音S2が含まれる場合に監視領域Eaに異常が生じていると判定するため、監視領域Eaの異常を正確に判定して報知することができる。
【0053】
実施の形態2
実施の形態1において、記憶部10は、監視領域EaおよびEbにおいて工事騒音S2を発生する工事を実施する予定を登録した作業予定情報をさらに記憶することが好ましい。ここで、工事騒音S2を発生する工事は、本発明における特定作業を示す。
【0054】
実施の形態1と同様に、異常判定部9が、音検出部4で検出された領域音の音情報を、記憶部10に記憶された暗騒音S1の音情報および工事騒音S2の音情報と比較し、監視領域EaおよびEbの領域音に含まれる暗騒音S1と工事騒音S2を識別する。異常判定部9は、監視領域Eaの領域音に工事騒音S2が含まれる場合には、記憶部10に記憶された作業予定情報を参照し、作業予定情報に監視領域Eaで工事騒音S2を発生する工事を実施する予定が登録されているか否かを判定する。
【0055】
ここで、監視領域Eaで工事を実施する予定が登録されていない場合には、異常判定部9は、監視領域Eaにおいて未登録の工事が実施されているとし、監視領域Eaに異常が生じていると判定する。そして、制御部11が、無線通信部6cおよび6dを介して制御信号を出力して、報知部3により監視領域Eaの異常を報知させる。一方、監視領域Eaで工事を実施する予定が登録されている場合には、異常判定部9は、監視領域Eaにおいて登録された工事が実施されているとし、監視領域Eaに異常が生じていないと判定する。この場合には、制御部11から制御信号は出力されず、報知部3から監視領域Eaの異常は報知されないことになる。
【0056】
本実施の形態によれば、異常判定部9が、監視領域Eaの領域音が工事騒音S2を含み且つ監視領域Eaで工事騒音S2を発生する工事の予定が作業予定情報に登録されていない場合に監視領域Eaに異常が生じていると判定するため、作業予定情報に登録された工事、すなわち管理者Pが管理する工事に対して異常の報知は行われず、監視領域Eaの異常をより正確に報知することができる。
【0057】
実施の形態3
実施の形態1および2において、複数の監視部1aおよび1bは、複数の監視領域EaおよびEbにそれぞれ対応して配置されて監視領域EaおよびEbにおけるガス漏れを検出する複数のガス検出部をさらに有することが好ましい。
【0058】
例えば、
図5に示すように、実施の形態1において監視部1aの無線通信部6aにガス検出部31を新たに接続すると共に無線通信部6bおよび異常判定部9にガス測定部32を新たに接続することができる。
【0059】
ガス検出部31は、ガスを検出するための光を監視領域Eaに出力すると共に監視領域Eaで反射された反射光を受光するもので、例えば赤外線カメラから構成することができる。ガス検出部31は、無線通信部6aおよび6bを介して、反射光に応じた信号をガス測定部32に出力する。
【0060】
ガス測定部32は、反射光に応じた検出信号に基づいて監視領域Eaにおけるガスの濃度を測定し、ガスの濃度が所定の値より高い場合には監視領域Eaにおいてガス漏れが生じていると判定する。
【0061】
制御部11は、ガス測定部32においてガス漏れが生じていると判定された場合には報知部3により監視領域Eaにおいてガス漏れが生じていることを報知させる。
なお、図示しない監視部1bは、監視部1aと同様の構成を有するため説明を省略する。
【0062】
本実施の形態によれば、ガス検出部31が監視領域EaおよびEbにおいてガス漏れを検出した場合には報知部3によりガス漏れの発生を報知するため、監視領域EaおよびEbにおける異常の程度を報知することができる。
【0063】
なお、実施の形態3において、異常判定部9は、監視領域Eaの領域音に工事騒音S2が含まれると判定した場合に、ガス検出部31によりガスの検出を行ってもよい。ガス検出部31で検出された検出信号に基づいてガス測定部32がガス漏れの発生を判定し、ガス漏れが生じていないと判定された場合には、制御部11は報知部3により緊急性が低い異常が発生していることを報知する。一方、ガス測定部32によりガス漏れが生じていると判定された場合には、制御部11は報知部3により緊急性が高い異常が発生していることを報知する。
このように、監視領域EaおよびEbにおける異常の程度を段階的に報知することにより、管理者Pが監視領域EaおよびEbの異常事態に適切に対応することができる。
【0064】
なお、上記の実施の形態1~3では、記憶部10に記憶された異常騒音は、工事騒音S2に設定されたが、管理者Pが予め定めた特定の騒音であればよく、工事騒音S2に限られるものではない。例えば、異常騒音は、自動車事故および火事などの事故騒音に定めることもできる。
【0065】
また、上記の実施の形態1~3では、記憶部10は、音検出部4で検出された所定期間の暗騒音の音情報を記憶したが、複数の監視領域EaおよびEbに対応した複数の暗騒音の音情報を記憶すればよく、所定期間の暗騒音の音情報に限られるものではない。例えば、記憶部10は、監視領域EaおよびEbの環境、具体的には建物の配置および道路の幅などに基づいて監視領域EaおよびEbにおける暗騒音の音情報の変化量を求め、その変化量に応じた暗騒音の音情報を算出して記憶することができる。ただし、記憶部10は、領域音に含まれる暗騒音との誤差が少ないため、音検出部4で検出された暗騒音の音情報を記憶することが好ましい。
【0066】
また、上記の実施の形態1~3では、記憶部10は、複数の監視領域EaおよびEbに対応した複数の暗騒音の音情報が記憶されたが、複数の監視領域EaおよびEbに対応した複数の異常騒音の音情報を記憶することもできる。監視領域EaおよびEbに対応した異常騒音の音情報は、暗騒音の音情報と同様に、例えば音検出部4により異常騒音を測定したものを用いることができる。これにより、監視領域EaおよびEbの環境に応じた異常騒音の変化に対応して判定することができ、領域音に異常騒音が含まれるか否かをより正確に判定することができる。
【0067】
また、上記の実施の形態1~3において、記憶部10は、音検出部4により所定期間検出された監視領域EaおよびEbの暗騒音S1に基づいて暗騒音S1の継時的な変化を求め、その暗騒音S1の変化に基づいて算出される複数の時間帯における暗騒音S1の音情報を記憶することができる。例えば、記憶部10は、午前の監視領域EaおよびEbに対応した暗騒音の音情報と、午後の監視領域EaおよびEbに対応した暗騒音の音情報とを記憶することができる。そして、異常判定部9が、音検出部4で領域音を検出した時刻に基づいて記憶部10を参照し、その時刻おける暗騒音の音情報に基づいて監視領域EaおよびEbの領域音に含まれる暗騒音と異常騒音を識別する。これにより、異常判定部9は、時間帯に伴う監視領域EaおよびEbの暗騒音の変化を考慮して異常騒音を識別することができ、監視領域Eの異常をより正確に判定することができる。
【0068】
また、上記の実施の形態1~3では、複数の監視部1aおよび1bが複数の監視領域EaおよびEbにそれぞれ対応して配置されたが、1つの監視部を1つの監視領域に対応して配置することもできる。例えば、実施の形態1において監視部1bを除き、監視部1aのみを配置することができる。これにより、監視部1aの音検出部4が監視領域Eaで発生する領域音を検出し、異常判定部9が音検出部4で検出された領域音の音情報に基づいて監視領域Eaに異常が生じているか否かを判定することができる。
【符号の説明】
【0069】
1a,1b 監視部
2 管理部
3 報知部
4 音検出部
5 撮像部
6a,6b,6c,6d 無線通信部
7 音情報算出部
8 画像処理部
9 異常判定部
10 記憶部
11 制御部
12 格納部
13 操作部
14 画像表示部
15 警告音出力部
31 ガス検出部
32 ガス測定部
Ea,Eb 監視領域
R 幹線道路
P 管理者
S1 暗騒音
S2 工事騒音
S2a 舗装カッターの騒音