(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/24 20060101AFI20220113BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220113BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220113BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H05B33/24
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/22 A
H05B33/22 C
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2018040957
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】安川 浩司
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0144895(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0115231(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0014661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/24
H01L 51/50
H01L 27/32
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、
前記第1の電極上のホール輸送層、
前記ホール輸送層上の発光層、
前記発光層上に位置し、前記発光層と接するホールブロック層、
前記ホールブロック層上に位置し、前記ホールブロック層と接する電子輸送層、および
前記電子輸送層上の第2の電極をそれぞれ備える第1から第3の発光素子を有し、
前記第2の発光素子の発光波長は、前記第1の発光素子の発光波長よりも長く、前記第3の発光素子の発光波長よりも短く、
前記第2の発光素子の前記ホールブロック層と前記電子輸送層の総厚は、前記第1の発光素子の前記ホールブロック層と前記電子輸送層の総厚よりも大きく、前記第3の発光素子の前記ホールブロック層と前記電子輸送層の総厚よりも小さく、
前記第1から第3の発光素子のそれぞれにおいて、前記ホールブロック層の厚さは前記電子輸送層の厚さよりも大きい表示装置。
【請求項2】
前記第2の発光素子の前記ホールブロック層の前記厚さは、前記第1の発光素子の前記ホールブロック層の前記厚さより大きく、前記第3の発光素子の前記ホールブロック層の前記厚さよりも小さい、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1から第3の発光素子の前記電子輸送層のそれぞれの厚さは1nm以上10nm以下である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1から第3の発光素子の前記電子輸送層のそれぞれの厚さは互いに同一である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の発光素子の前記ホール輸送層の厚さは、前記第1の発光素子の前記ホール輸送層の厚さよりも大きく、前記第3の発光素子の前記ホール輸送層の厚さよりも小さい、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1から第3の発光素子の前記ホールブロック層の電子移動度はいずれも1×10
-4cm
2/Vs以上であり、
前記第1から第3の発光素子の前記電子輸送層の電子移動度はいずれも1×10
-6cm
2/Vs以上である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1から第3の発光素子のそれぞれにおいて、前記ホールブロック層と前記電子輸送層のLUMO準位の差、および前記ホールブロック層と前記発光層のLUMO準位の差は、いずれも0.2eV以下である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1から第3の発光素子の前記第1の電極は、いずれも可視光を反射する反射面を有し、
前記第1から第3の発光素子のそれぞれにおいて、前記反射面と前記第2の電極の底面間の光学距離は、前記発光波長の4分の1の奇数倍と実質的に同一である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第3の発光素子の前記ホールブロック層の前記厚さは、25nm以上である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
第1から第3の画素電極、
前記第1から第3の画素電極のそれぞれの上に位置する第1から第3のホール輸送層、
前記第1から第3のホール輸送層のそれぞれの上に位置する第1から第3の発光層、
前記第1から第3の発光層のそれぞれの上に位置する第1から第3のホールブロック層、
前記第1から第3のホールブロック層のそれぞれの上に位置する第1から第3の電子輸送層、および
前記第1から第3の電子輸送層上の対向電極を有し、
前記第2の発光層の発光波長は、前記第1の発光層の発光波長よりも長く、前記第3の発光層の発光波長よりも短く、
前記第2のホールブロック層と前記第2の電子輸送層の総厚は、前記第1のホールブロック層と前記第1の電子輸送層の総厚よりも大きく、前記第3のホールブロック層と前記第3の電子輸送層の総厚よりも小さく、
前記第1から第3のホールブロック層の厚さは、それぞれ前記第1から第3の電子輸送層の厚さよりも大きい表示装置。
【請求項11】
前記第1から第3の電子輸送層は一体化された膜である、請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第1から第3のホール輸送層は一体化された膜である、請求項10に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第2のホールブロック層の前記厚さは、前記第1のホールブロック層の前記厚さよりも大きく、前記第3のホールブロック層の前記厚さよりも小さい、請求項10に記載の表示装置。
【請求項14】
前記第1から第3の電子輸送層のそれぞれの厚さは1nm以上10nm以下である、請求項10に記載の表示装置。
【請求項15】
前記第1から第3の電子輸送層のそれぞれの厚さは互いに同一である、請求項10に記載の表示装置。
【請求項16】
前記第2のホール輸送層の厚さは、前記第1のホール輸送層の厚さよりも大きく、前記第3のホール輸送層の厚さよりも小さい、請求項10に記載の表示装置。
【請求項17】
前記第1から第3のホールブロック層の電子移動度はいずれも1×10
-4cm
2/Vs以上であり、
前記第1から第3の電子輸送層の電子移動度はいずれも1×10
-6cm
2/Vs以上である、請求項10に記載の表示装置。
【請求項18】
前記第1のホールブロック層と前記第1の電子輸送層のLUMO準位の差、および前記第1のホールブロック層と前記第1の発光層のLUMO準位の差は、いずれも0.2eV以下であり、
前記第2のホールブロック層と前記第2の電子輸送層のLUMO準位の差、および前記第2のホールブロック層と前記第2の発光層のLUMO準位の差は、いずれも0.2eV以下であり、
前記第3のホールブロック層と前記第3の電子輸送層のLUMO準位の差、および前記第3のホールブロック層と前記第3の発光層のLUMO準位の差は、いずれも0.2eV以下である、請求項10に記載の表示装置。
【請求項19】
前記第1から第3の画素電極は、いずれも可視光を反射する反射面を有し、
前記第1の画素電極の前記反射面と前記対向電極の底面間の光学距離、前記第2の画素電極の前記反射面と前記対向電極の底面間の光学距離、および前記第3の画素電極の前記反射面と前記対向電極の底面間の光学距離は、それぞれ前記第1の発光層、前記第2の発光層、および前記第3の発光層の前記発光波長の4分の1の奇数倍と実質的に同一である、請求項10に記載の表示装置。
【請求項20】
前記第3のホールブロック層の前記厚さは、25nm以上である、請求項10に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、発光素子を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一例として、有機EL(Electroluminescence)表示装置が挙げられる。有機EL表示装置は、基板上に形成された複数の有機発光素子(以下、発光素子)を有し、各発光素子は一対の電極(陰極、陽極)間に有機化合物を含む電界発光層(以下、EL層と記す)を基本構造として有している。一対の電極間に電位差を与えることで陽極と陰極からEL層に対してそれぞれホールと電子が供給される。ホールと電子はEL層内で再結合して有機化合物の励起状態を形成する。この励起状態が基底状態に輻射失活する際の発光を利用することで、発光素子としての機能が発現される。
【0003】
発光素子の効率や発光色は、EL層の構造やEL層に含まれる発光材料によって制御される。例えば、発光材料を適宜選択することによって種々の色の発光を得ることができる。また、発光素子内部、あるいは外部における光の干渉効果を利用することで、正面方向の発光強度を増大させるとともに発光スペクトルを狭線化することもできる。例えば特許文献1では、発光波長の異なる発光素子ごとにEL層に含まれるホール輸送層の厚さを調整し、これによってEL層と一対の電極によって形成される共振構造を制御することが開示されている。この方法により、発光素子ごとに発光強度や発光色を最適化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、色純度と発光効率に優れた発光素子を備え、色再現性に優れた低消費電力の表示装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一つは表示装置である。この表示装置は、第1から第3の発光素子を有する。第1から第3の発光素子はそれぞれ、第1の電極、第1の電極上のホール輸送層、ホール輸送層上の発光層、発光層上に位置し、発光層と接するホールブロック層、ホールブロック層上に位置し、ホールブロック層と接する電子輸送層、および電子輸送層上の第2の電極を備える。第2の発光素子の発光波長は、第1の発光素子の発光波長よりも長く、第3の発光素子の発光波長よりも短い。第2の発光素子のホールブロック層と電子輸送層の総厚は、第1の発光素子のホールブロック層と電子輸送層の総厚よりも大きく、第3の発光素子のホールブロック層と電子輸送層の総厚より小さい。第1から第3の発光素子のそれぞれにおいて、ホールブロック層の厚さは電子輸送層の厚さよりも大きい。
【0007】
本発明の実施形態の一つは、表示装置である。この表示装置は、第1から第3の画素電極、第1から第3の画素電極のそれぞれの上に位置する第1から第3のホール輸送層、第1から第3のホール輸送層のそれぞれの上に位置する第1から第3の発光層、第1から第3の発光層のそれぞれの上に位置する第1から第3のホールブロック層、第1から第3のホールブロック層のそれぞれの上に位置する第1から第3の電子輸送層、および第1から第3の電子輸送層上の対向電極を有する。第2の発光層の発光波長は、第1の発光層の発光波長よりも長く、第3の発光層の発光波長よりも短い。第2のホールブロック層と第2の電子輸送層の総厚は、第1のホールブロック層と第1の電子輸送層の総厚よりも大きく、第3のホールブロック層と第3の電子輸送層の総厚よりも小さい。第1から第3のホールブロック層の厚さは、それぞれ第1から第3の電子輸送層の厚さよりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る表示装置の上面模式図。
【
図2】本発明の実施形態に係る表示装置の表示素子の断面模式図。
【
図3】本発明の実施形態に係る表示装置の表示素子の断面模式図。
【
図4】本発明の実施形態に係る表示装置の表示素子の断面模式図。
【
図5】本発明の実施形態に係る表示装置の表示素子の断面模式図。
【
図6】本発明の実施形態に係る表示装置の表示素子の断面模式図。
【
図7】本発明の実施形態に係る表示装置の画素の等価回路の一例。
【
図8】本発明の実施形態に係る表示装置の断面模式図。
【
図9】本発明の実施形態に係る表示装置の断面模式図。
【
図10】本発明の実施形態に係る表示装置の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。複数の同様、あるいは類似する要素を区別する場合、符号とともに小文字のアルファベットを付し、これら複数の要素を総じて記述する場合には符号のみを用いる。
【0011】
本発明において、ある一つの膜に対してエッチングや光照射を行って複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来し、同一の層構造、同一の材料を有する。したがって、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0013】
本明細書および請求項において、「ある構造体が他の構造体から露出するという」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態では、本発明の実施形態の一つである表示装置100、および表示装置100に含まれる発光素子120の構造を説明する。
【0015】
[1.全体構造]
図1に表示装置100の上面模式図を示す。表示装置100は基板102を有し、その上にパターニングされた種々の絶縁膜、半導体膜、導電膜を有する。これらの絶縁膜、半導体膜、導電膜により、複数の画素104や画素104を駆動するための駆動回路(走査線側駆動回路108、信号線側駆動回路110)が形成される。複数の画素104によって表示領域106が定義される。後述するように、各画素104に発光素子120が配置される。
【0016】
走査線側駆動回路108や信号線側駆動回路110は、表示領域106外(周辺領域、あるいは額縁領域)に配置される。表示領域106や走査線側駆動回路108、信号線側駆動回路110からはパターニングされた導電膜で形成される種々の配線112が基板102の一辺へ延び、配線112は基板102の端部付近で露出されて端子(図示せず)を形成する。これらの端子はフレキシブル印刷回路基板(FPC)114と電気的に接続される。ここで示した例では、FPC114上に、半導体基板上に形成された集積回路を有する駆動IC116がさらに搭載される。駆動IC116、FPC114を介して外部回路(図示しない)から映像信号や電源が供給され、映像信号や電源は配線112を通して表示領域106、走査線側駆動回路108、信号線側駆動回路110へ与えられる。駆動回路や駆動IC116の態様については
図1に示したそれに限られず、例えば駆動IC116は基板102上に実装されても良いし、信号線側駆動回路110の機能が駆動IC116に統合されていても良い。
【0017】
[2.発光素子の構造]
表示装置100には、異なる発光色を与える複数の発光素子120が設けられ、各画素104にこれらの発光素子120のいずれか一つが配置される。例えば各画素104には、青色発光、緑色発光、および赤色発光を与える発光素子120のいずれかが配置される。このように三原色の発光を与える複数の発光素子120を制御することで、フルカラー表示が可能となる。発光素子120の発光色には制約は無く、例えば白色発光を与える発光素子をさらに設けてもよい。
【0018】
図2は、それぞれ三つの画素(第1の画素104a、第2の画素104b、第3の画素104c)に配置され、互いに異なる発光色を与える第1の発光素子120a、第2の発光素子120b、第3の発光素子120cの断面構造を模式的に示す。ここに示した例では、第2の発光素子120bの発光波長は、第1の発光素子120aのそれよりも長く、第3の発光素子120cのそれよりも短い。例えば第1の発光素子120a、第2の発光素子120b、第3の発光素子120cはそれぞれ、青色発光、緑色発光、赤色発光を与えるよう、発光素子120を構成することができる。本明細書では、青色発光とは400nm以上500nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する発光であり、緑色発光とは500nm以上600nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する発光であり、赤色発光とは600nm以上780nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する発光である。
【0019】
各発光素子120は画素電極(第1の電極)122を備える。ここでは便宜上、第1の発光素子120a、第2の発光素子120b、第3の発光素子120cの画素電極122をそれぞれ第1の画素電極122a、第2の画素電極122b、第3の画素電極122cと呼ぶ。画素電極122は陽極、および陰極のいずれか一方として機能することができるが、以下の説明では画素電極122は陽極として機能する場合を説明する。第1の画素電極122a、第2の画素電極122b、第3の画素電極122cにはそれぞれ独立して電位が供給されるよう、画素104が構成される。
【0020】
各発光素子120は、画素電極122と重なる対向電極(第2の電極)138を備える。対向電極138も陽極、および陰極の他方として機能することができるが、以下の説明では対向電極138が陰極として機能する場合を説明する。後述するように、対向電極138は第1の画素104a、第2の画素104b、第3の画素104cにわたって延在する。すなわち、対向電極138は第1の画素104a、第2の画素104b、第3の画素104cにわたって連続的に設けられ、複数の画素104に設けられるそれぞれの発光素子120によって共有される。したがって、複数の画素104において対向電極138には同一の電位が印加される。各発光素子120には、画素電極122と対向電極138の間に種々の機能層が設けられ、画素電極122と対向電極138から機能層に対してホールと電子がそれぞれ注入される。本明細書と請求項では、画素電極122と対向電極138に挟持される機能層の全体をEL層140と呼ぶ。
【0021】
図2に示すように、第1の画素104aには、EL層140の機能層として、第1のホール輸送層126a、第1のホール輸送層126a上の第1の発光層130a、第1の発光層130aの上に位置し、第1の発光層130aと接する第1のホールブロック層132a、および第1のホールブロック層132a上に位置し、第1のホールブロック層132aと接する第1の電子輸送層134aが設けられる。任意の構成として、第1の画素104aは、第1の画素電極122aに接するホール注入層124、第1のホール輸送層126aと第1の発光層130aに挟まれる電子ブロック層128、第1の電子輸送層134a上の電子注入層136を有してもよい。
【0022】
同様に、第2の画素104bには、第2のホール輸送層126b、第2のホール輸送層126b上の第2の発光層130b、第2の発光層130bの上に位置し、第2の発光層130bと接する第2のホールブロック層132b、および第2のホールブロック層132b上に位置し、第2のホールブロック層132bと接する第2の電子輸送層134bが設けられる。第1の画素104aと同様、任意の構成として、第2の画素104bは、第2の画素電極122bに接するホール注入層124、第2のホール輸送層126bと第2の発光層130bに挟まれる電子ブロック層128、第2の電子輸送層134b上の電子注入層136を有してもよい。
【0023】
同様に、第3の画素104cには、第3のホール輸送層126c、第3のホール輸送層126c上の第3の発光層130c、第3の発光層130cの上に位置し、第3の発光層130cと接する第3のホールブロック層132c、および第3のホールブロック層132c上に位置し、第3のホールブロック層132cと接する第3の電子輸送層134cが設けられる。第1の画素104aや第2の画素104bと同様、任意の構成として、第3の画素104cは、第3の画素電極122cに接するホール注入層124、第3のホール輸送層126cと第3の発光層130cに挟まれる電子ブロック層128、第3の電子輸送層134c上の電子注入層136を有してもよい。
【0024】
詳細は後述するが、第1から第3のホール輸送層126は、それぞれ独立した膜として対応する発光素子120に設けてもよく、あるいは一体化された一つの膜として第1から第3の発光素子120に共有されるように設けてもよい。同様に、第1から第3の電子輸送層134もそれぞれ独立した膜として対応する発光素子120に設けてもよく、あるいは一体化された一つの膜として第1から第3の発光素子120に共有されるように設けてもよい。ホール注入層124、電子ブロック層128、電子注入層136は一つの膜として第1から第3の発光素子120に共有されるように設けられる。
【0025】
各発光素子120上には、任意の構成として、第1のキャップ層184、および第1のキャップ層184上の第2のキャップ層186を備える光学調整層を設けてもよい。光学調整層を設けることで、発光層130から対向電極138を介して出射される光を共振させることができ、これにより出射光の狭線化や正面方向の強度を向上させることができる。光学調整層も第1から第3の発光素子120に共有されるように設けられる。
【0026】
以下、画素電極と対向電極、および各機能層について説明する。
【0027】
2-1.画素電極
画素電極122は、EL層140にホールを注入するために設けられる電極であり、その表面が比較的高い仕事関数を有することが好ましい。画素電極122の具体的な材料としてはインジウム-スズ混合酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛混合酸化物(IZO)などの可視光を透過可能な導電性酸化物が挙げられ、これらにはさらにケイ素が含まれていてもよい。このような材料を用いることにより、発光層130から得られる発光を画素電極122を通じて取り出すことができる。一方、発光層130から得られる発光を対向電極138を通して取り出す場合、画素電極122は銀やアルミニウムなどの可視光の反射率が高い金属を含む膜をさらに含んでもよい。例えば画素電極122は、導電性酸化物を含む第1の導電膜、銀、アルミニウムなどの金属を含む第2の導電膜、導電性酸化物を含む第3の導電膜がこの順に積層された構造を有することができる。この場合、第2の導電膜の上面は反射面として機能し、この反射面で発光層130からの光が反射する。
【0028】
2-2.ホール注入層
ホール注入層124には画素電極122からホールが注入しやすい、すなわち酸化されやすい化合物(電子供与性化合物)を用いることができる。換言すると最高占有分子軌道(HOMO)準位の浅い化合物を用いることができる。例えばベンジジン誘導体やトリアリールアミンなどの芳香族アミン、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体などを用いることができる。あるいは、ポリチオフェンやポリアニリン誘導体を用いることができ、一例としてポリ(2,3-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)が挙げられる。あるいは、上述した芳香族アミンやカルバゾール誘導体、あるいは芳香族炭化水素などの電子供与性化合物と電子受容体との混合物を用いてもよい。電子受容体としては、酸化バナジウムや酸化モリブデンなどの遷移金属酸化物や、含窒素ヘテロ芳香族化合物、シアノ基などの強い電子吸引基を有するヘキサアザトリフェニレンなどのヘテロ芳香族化合物などが挙げられる。これらの材料や混合物はイオン化ポテンシャルが小さいため、画素電極122からのホール注入障壁が小さく、表示装置100の駆動電圧の低減に寄与する。
【0029】
2-3.ホール輸送層
ホール輸送層126は、ホール注入層124に注入されたホールを発光層130側へ輸送する機能を有する。ホール輸送層126には、ホール注入層124で使用可能な材料と同様、あるいは類似する材料を用いることができる。例えば、ホール注入層124と比較して、HOMO準位が深いが、その差が約0.5eV、0.3eV、あるいはそれ以下の材料を用いることができる。上述した材料は電子輸送性よりもホール輸送性が高いため、ホールを効率よく発光層130側へ輸送することができ、表示装置100を低い電圧で駆動することを可能にする。
【0030】
2-4.電子ブロック層
電子ブロック層128は、対向電極138から注入された電子が再結合に寄与することなく発光層130を通過してホール輸送層126へ注入されることを防ぐことでホールを発光層130内に閉じ込めるとともに、発光層130で得られる励起エネルギーがホール輸送層126の分子に移動することを防ぐ機能を有する。これにより、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0031】
電子ブロック層128には、電子輸送性よりもホール輸送性が高い、あるいは同程度であり、発光層130内の分子よりも最低非占有分子軌道(LUMO)準位が浅く、かつバンドギャップが大きい材料を用いることが好ましい。具体的には、電子ブロック層128に含まれる分子のLUMO準位と発光層130に含まれる分子のそれとの差は、0.2eV、0.3eV、あるいは0.5eV以上が好ましい。また、電子ブロック層128に含まれる分子のバンドギャップと発光層130に含まれる発光材料のそれとの差が0.2eV、0.3eV、あるいは0.5eV以上であることが好ましい。発光材料が燐光材料の場合、発光材料よりも0.2eV、0.3eV、あるいは0.5eV以上三重項準位(T1準位)の高い材料を用いることが好ましい。より具体的には、芳香族アミン誘導体、カルバゾール誘導体、9,10-ジヒドロアクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンゾチオフェン誘導体などが挙げられる。
【0032】
2-5.発光層
発光層130はホールと電子が再結合する空間を提供する層であり、この層に含まれる発光材料から発光が得られる。発光層130は単一の化合物で形成されていてもよく、あるいは、いわゆるホスト―ゲスト型の構成を有していもよい。ホスト―ゲスト型の場合、ホスト材料としては、例えばスチルベン誘導体、アントラセン誘導体などの縮合芳香族化合物、カルバゾール誘導体、キノリノール配位子を含む金属錯体、芳香族アミン、フェナントロリン誘導体などの含窒素ヘテロ芳香族化合物などを用いることができる。ゲストは発光材料として機能し、クマリン誘導体、ピラン誘導体、キノクリドン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、アントラセン誘導体などの蛍光材料、あるいはイリジウム系オルトメタル錯体、もしくはポルフィリン誘導体の白金錯体などの燐光材料をゲストとして用いることができる。発光層130を単一の化合物で構成する場合、上述したホスト材料を用いることができる。この場合、ホスト材料が発光材料として働く。
【0033】
本実施形態の表示装置100では、第2の発光素子120bの発光波長が第1の発光素子120aの発光波長よりも長く、第3の発光素子120cの発光波長よりも短くなるよう、発光層130の材料が選択される。例えば、第1の発光層130aの発光材料が400nm以上500nm以下の範囲に発光ピークを与え、第2の発光層130bの発光材料が500nm以上600nm以下の範囲に発光ピークを与え、第3の発光層130cの発光材料が600nm以上780nm以下の範囲に発光ピークを与えるよう、発光材料が選択される。
【0034】
2-6.ホールブロック層
ホールブロック層132は、画素電極122から注入されたホールが再結合に寄与することなく発光層130を通過して電子輸送層134へ注入されることを防ぐことでホールを発光層130内に閉じ込めるとともに、発光層130で得られる励起エネルギーが電子輸送層134内の分子に移動することを防ぐ機能を有する。これにより、発光効率の低下を防ぐことができる。
【0035】
ホールブロック層132には、ホール輸送性よりも電子輸送性が高く、発光層130内の分子よりもHOMO準位が深く、かつバンドギャップが大きい材料を用いることが好ましい。具体的には、ホールブロック層132に含まれる分子のHOMO準位と発光層130に含まれる分子のそれとの差は、0.2eV、0.3eV、あるいは0.5eV以上が好ましい。また、ホールブロック層132に含まれる分子のバンドギャップと発光層130に含まれる分子のそれとの差は0.2eV、0.3eV、あるいは0.5eV以上が好ましい。発光材料が燐光材料の場合、発光材料よりも0.2eV、0.3eV、あるいは0.5eV以上T1準位の高い材料を用いることが好ましく、具体的には2.2eV以上のT1準位を有する材料が好ましい。例えば、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-ヒドロキシ-ビフェニリル)アルミニウムなどの比較的バンドギャップの大きい(例えば2.8eV以上)金属錯体などが挙げられる。
【0036】
ここで、ホールブロック層132に含まれる分子のLUMO準位と発光層130に含まれる分子のLUMO準位の差が0eV以上0.2eV以下となるよう、それぞれの層を構成することが好ましい。これにより、対向電極138から注入された電子をより速やかに発光層130に輸送することが可能となり、また、発光層130における発光領域を画素電極122側へシフトさせることが可能となる。
【0037】
表示装置100では、ホールブロック層132は電子輸送層134よりも高い移動度を有し、電子移動度が1×10-4cm2/Vs以上1×10-2cm2/Vs以下、1×10-4cm2/Vs以上5×10-3cm2/Vs以下、あるいは1×10-4cm2/Vs以上1×10-3cm2/Vs以下の材料を用いて構成される。ホールブロック層132の高い電子移動度に起因し、ホールブロック層132の厚さ(t1)を大きくしても駆動電圧が増大せず、表示装置100の消費電力の増大を抑制することができるだけでなく、電子をより速やかに発光層130に輸送することが可能となる。換言すると、ホールブロック層132の厚さを調整することで、駆動電圧の増大を招くことなく発光層130と対向電極138間の距離を任意に調整することができる。
【0038】
ホールブロック層132は、各発光素子120において電子輸送層134より大きな厚さを有するように形成される。また、ホールブロック層132は、発光色の異なる発光素子120間で異なる厚さを有する。具体的には、最も短波長の発光を与える第1の発光素子120aの第1のホールブロック層132aの厚さが最も小さく、第2のホールブロック層132bの厚さよりも小さい。これに対し、最も長波長の発光を与える第3の発光素子120cの第3のホールブロック層132cの厚さが最も大きく、第2のホールブロック層132bの厚さよりも大きい。例えば、第1のホールブロック層132aと第2のホールブロック層132bの厚さは共に10nmから30nmの範囲から選択され、典型的にはそれぞれ10n、15nmである。第3のホールブロック層132cの厚さは25nmから40nmの範囲から選択され、典型的には25nm、あるいは30nmである。
【0039】
2-7.電子輸送層
電子輸送層134は対向電極138から電子注入層136に注入された電子を発光層130側へ輸送する機能を有する。電子輸送層134はホール輸送性よりも電子輸送性い材料(電子輸送材料)を含む。具体的には、電子輸送層134の電子移動度が1×10-6cm2/Vs以上1×10-4cm2/Vs以下、1×10-6cm2/Vs以上5×10-5cm2/Vs以下、あるいは1×10-6cm2/Vs以上1×10-5cm2/Vs以下となるよう、材料が選択される。さらに、電子輸送層134のLUMO準位とホールブロック層132のLUMO準位の差が0eV以上0.2eV以下となるよう材料を選択することが好ましい。このような化合物としては、アルミニウム錯体、リチウム錯体、ベリリウムなどの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、シラシクロペンタジエン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ぺリレン誘導体などの縮合芳香族化合物、フェナントロリン誘導体などの含窒素縮合ヘテロ芳香族化合物などが挙げられる。上記金属錯体としては、例えば8-キノリノラトリチウム(Liq)、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq)やビス(8-キノリノラト)ベリリウムなどの、8-キノリノール配位子を有する金属錯体が例示される。これらの化合物は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1から4のアルキル基、あるいはフェニル基やナフチル基などのアリール基が挙げられる。
【0040】
電子輸送層134の厚さは、1nm以上10nm以下、あるいは1nm以上5nm以下の範囲から選択される。電子輸送層134の厚さは発光素子120間で同一でも良い。上述したように、各発光素子120では、電子輸送層134よりも高い電子移動度を有するホールブロック層132は、電子輸送層134よりも厚く形成される。このため、電子輸送層134の相対的に低い電子移動度はホールブロック層132の高い電子移動度によって補完され、表示装置100を低い電圧で駆動することができる。
【0041】
第2の発光素子120bの第2のホールブロック層132bと第2の電子輸送層134bの厚さの和(総厚)は、第1の発光素子120aの第1のホールブロック層132aと第1の電子輸送層134aの厚さの和よりも大きく、第3の発光素子120cの第3のホールブロック層132cと第3の電子輸送層134cの厚さの和よりも小さくなるよう、発光素子120を構成することができる。具体的には、第1のホールブロック層132aと第1の電子輸送層134aの厚さの和は15nmから25nm、典型的には20nmとすることができる。第2のホールブロック層132bと第2の電子輸送層134bの厚さの和は20nmから30nm、典型的には25nmとすることができる。第3のホールブロック層132cと第3の電子輸送層134cの厚さの和は30nmから40nm、典型的には35nmとすることができる。
【0042】
2-8.電子注入層
電子注入層136は、対向電極138からの電子注入を促進する機能を有する。電子注入層136に用いることのできる材料としては、例えばフッ化リチウムやフッ化カルシウムなどの無機化合物が挙げられる。あるいは、電子輸送層134に用いることが可能な電子輸送性化合物と、リチウムなどの第1族金属やマグネシウム、カルシウムなどの第2族金属、あるいはイッテルビウムなどのランタノイド金属などに例示される電子供与性化合物との混合物を用いることができる。典型的には、AlqとLiの混合物やLiqとLiの混合物が挙げられる。電子輸送性化合物と電子供与性化合物の混合層内には電子輸送性化合物のアニオンラジカルが存在するため、キャリアとしての電子の密度が高い。このため、電子輸送層134の電子輸送性が増大し、対向電極138から注入される電子を効率よく発光層130へ輸送することができ、その結果、表示装置100の駆動電圧が低減する。電子注入層136の厚さは、0.5nmから10nm、あるいは1nmから5nmの範囲から選択することができる。
【0043】
2-9.対向電極
対向電極138は、EL層140へ電子を注入する機能を有する。これと同時に、発光層130からの発光を画素電極122から取り出す場合には反射電極として、発光を対向電極138から取り出す場合には、発光の一部を反射し、一部を透過する半反射半透過電極として機能する。対向電極138を反射電極として用いる場合には、アルミニウムやマグネシウム、銀などの金属やこれらの合金を含み、可視光を効率よく反射する厚さを有する膜を対向電極138として用いる。一方、対向電極138を半反射半透過電極として用いる場合には、ITOやIZOなどの透光性を有する導電性酸化物を含むよう、対向電極138が構成される。あるいは、上述した金属を含み、かつ、可視光が透過する程度の厚さを有する金属膜を用いてもよい。この場合、さらに透光性を有する導電性酸化物が積層された積層体を用いてもよい。
【0044】
2-10.キャップ層
第1のキャップ層184は、可視光領域における透過率が高く、かつ、屈折率が比較的高い材料を含むことができる。このような材料の一例として有機化合物が挙げられる。有機化合物としては高分子材料が代表例であり、たとえば硫黄、ハロゲン、リンを含む高分子材料が挙げられる。硫黄を含む高分子としては、主鎖や側鎖にチオエーテル、スルホン、チオフェンなどの置換基を有する高分子が挙げられる。リンを含む高分子材料としては、主鎖や側鎖に亜リン酸基、リン酸基などが含まれる高分子材料、あるいはポリフォスファゼンなどが挙げられる。ハロゲンを含む高分子材料としては、臭素やヨウ素、塩素を置換基として有する高分子材料が挙げられる。上記高分子材料は、分子間あるいは分子内で架橋していてもよい。他の例としては無機材料が挙げられ、酸化チタン、酸化ジリコニウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、ITO、IZO、硫化鉛、硫化亜鉛、窒化ケイ素などが例示される。これらの無機材料と高分子材料の混合物を用いてもよい。
【0045】
一方第2のキャップ層186は、可視光領域における透過率が高く、かつ、屈折率が比較的低い材料を含むことができる。一例としてフッ素を含有する高分子材料が挙げられる。フッ素を含有する高分子材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン、これらの誘導体、主鎖あるいは側鎖にフッ素を有するポリビニルエーテルやポリイミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリシロキサンなどが挙げられる。これらの高分子は分子内あるいは分子間で架橋していてもよい。低い屈折率を有する無機材料としては、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどの金属フッ化物、酸化ホウ素や酸化リンを含有する酸化ケイ素などが挙げられる。
【0046】
[3.光学設計]
表示装置100では、適切な光学設計をEL層140に施すことにより、正面方向の発光効率を増大させ、かつ、発光の色純度を向上させることができる。上述したように、発光層130からの発光を対向電極138から取り出す場合(トップエミッション)、画素電極122は反射電極として機能し、対向電極138は半反射半透過電極として発光層130からの発光を一部を反射し、一部を透過する。一方、発光層130からの発光を画素電極122から取り出す場合には(ボトムエミッション)、画素電極122は可視光を透過し、対向電極138は反射電極として機能する。この場合、画素電極122とEL層140との屈折率の差に起因して画素電極122とEL層140との界面においてEL層140からの光が一部反射する。すなわち、この界面が反射面として機能する。したがって、トップエミッションとボトムエミッションのいずれの場合でも画素電極122と対向電極138の反射面の間に微小共振器が形成され、発光層130で生成した光が干渉する。以下、
図2に示した画素電極122の上面と対向電極138の底面がそれぞれの反射面として働き、この間で微小共振器が形成されるとして説明を行う。
【0047】
微小共振器内における光の干渉効果は、画素電極122の上面と対向電極138の底面間の光学距離と発光層130からの発光のスペクトルによって決まる。この光学距離は、各機能層の屈折率と厚さの積の和である。トップエミッションの場合には光学距離が目的とする発光の波長の4分の1(λ/4)の奇数倍と一致するように、ボトムエミッションの場合には発光層130における発光中心と画素電極122の上面間の光学距離が目的とする発光の波長の2分の1(λ/2)の整数倍と一致するようにEL層140を調整することで、発光が強め合うように光が干渉する。これにより、発光層130の正面方向の発光強度が増大し、発光スペクトルが狭線化される。
【0048】
表示装置100では、各発光素子120のホールブロック層132の厚さを制御することでEL層140の光学距離の調整を容易に行うことができる。例えば第1の発光素子120aにおいては、第1のホールブロック層132aの厚さを制御することで光学調整が行われる。第2の発光層130bは第1の発光層130aよりも長波長側に発光を与えるため、光学距離は第1の発光素子120aよりも第2の発光素子120bの方が長い。このため、第2の発光素子120bでは、第2のホールブロック層132bを第1のホールブロック層132aよりも厚く形成し、上述した干渉条件を満たすように光学調整が行われる。同様に、第3の発光層130cは第2の発光層130bよりも長波長側に発光を与えるため、光学距離は第3の発光素子120cの方が第2の発光素子120bよりも長い。このため、第3の発光素子120cでは、第2のホールブロック層132bの厚さよりも大きな厚さを有する第3のホールブロック層132cを上述した干渉条件を満たすように配置することで光学調整が行われる。
【0049】
上述したように、ホールブロック層132は高い電子輸送性を示す。このため、光学調整を行うために厚いホールブロック層132を形成しても、駆動電圧の増大を防ぐことができる。また、高い電子輸送性に起因して、各発光層130において発光領域を画素電極122側にシフトさせることができる。このことは、特に発光波長が最も短い第1の発光素子120aにおいて発光効率の増大に大きく寄与する。この理由は以下のとおりである。最も短い波長の発光を与える第1の発光素子120aでは、発光材料として蛍光材料を使用することで、優れた色純度と高い信頼性を実現することができる。発光材料として蛍光材料を用いる場合、電子とホールの再結合によって約25%の確率で励起一重項(S1)が形成され、75%の確率で励起三重項(T1)が形成される。励起一重項は速やかに基底状態に輻射失活することで発光を与えるが、蛍光材料の励起三重項は非輻射失活過程を経由して基底状態へ失活するため、発光に寄与しない。
【0050】
しかしながら、発光領域を画素電極122側にシフトさせて励起子密度を増大させることで、三重項励起状態同士の反応、すなわち三重項-三重項消滅(T-T消滅)過程を経て励起一重項を生成することができる。このため、再結合によって直接形成される励起一重項のみならず、T-T消滅過程によって生じる励起一重項をも発光に寄与させることができ、その結果、20%を超える高い外部量子効率で第1の発光素子120aを発光させることが可能となる。
【0051】
[4.変形例]
表示装置100は、発光素子120間において、ホールブロック層132に加え発光層130の厚さ(t
2)が異なるよう構成してもよい。具体的には
図3に示すように、第2の発光層130bの厚さが第1の発光層130aの厚さよりも大きく、第3の発光層130cの厚さ以下となるよう、表示装置100を構成することができる。このような構成を採用することで、ホールブロック層132と発光層130の両者を用いて光学調整を行うことが可能となる。
【0052】
あるいは
図4に示すように、発光素子120間において、ホールブロック層132に加え電子輸送層134の厚さ(t
3)が異なるよう表示装置100を構成してもよい。具体的には、第2の電子輸送層134bの厚さが第1の電子輸送層134aの厚さよりも大きく、第3の電子輸送層134cの厚さよりも小さくなるよう、表示装置100を構成することができる。このような構成を採用することで、ホールブロック層132と電子輸送層134の両者を用いて光学調整を行うことが可能となる。
【0053】
あるいは
図5に示すように、発光素子120間において、ホールブロック層132に加えホール輸送層126の厚さ(t
4)が異なるよう表示装置100を構成してもよい。具体的には、第2のホール輸送層126bの厚さが第1のホール輸送層126aの厚さよりも大きく、第3の発光素子120cの第3のホール輸送層126cの厚さよりも小さくなるよう、表示装置100を構成することができる。このような構成を採用することで、ホールブロック層132とホール輸送層126の両者を用いて光学調整を行うことが可能となる。
【0054】
あるいは
図6に示すように、発光素子120間において、ホールブロック層132の厚さのみならず、電子輸送層134の厚さとホール輸送層126の厚さが異なるよう表示装置100構成してもよい。この場合、ホールブロック層132、電子輸送層134、およびホール輸送層126の厚さの関係は、
図3、
図4、および
図5に示した発光素子のそれと同様である。
【0055】
従来の発光素子では、光学調整は主に発光層よりも下に位置するホール輸送層126やホール注入層124を用いて行われる。これに対し表示装置100では、ホールブロック層132を主に用いて各発光素子120で光学調整を行う。これにより、実施例でも示すように、従来の発光素子と比較して高い効率を有し、かつ、高い信頼性を示す発光素子120を提供できることが発明者によって見出された。また、ホールブロック層132の高い電子輸送性に起因し、ホールブロック層132を用いて光学調整を行っても駆動電圧の増大を抑制することができることが確認された。このことから、本実施形態を適用することにより、消費電力が低く、優れた色再現性と信頼性を示す表示装置を提供することが可能となる。
【0056】
[5.画素の構造]
5-1.画素回路
各画素104には、パターニングされた種々の絶縁膜や半導体膜、導電膜によって発光素子120を含む画素回路が形成される。画素回路の構成は任意に選択することができ、その一例を等価回路として
図7に示す。
【0057】
図7の等価回路で示す画素回路は、発光素子120に加え、駆動トランジスタ222、発光制御トランジスタ230、補正トランジスタ228、初期化トランジスタ224、書込トランジスタ226、保持容量234、付加容量236を有している。容量238は独立した容量素子ではなく、発光素子120の寄生容量である。高電位電源線200には高電位PVDDが与えられ、この電位が電流供給線202を介して各列に接続される画素104に供給される。発光素子120、駆動トランジスタ222、発光制御トランジスタ230、補正トランジスタ228は、高電位電源線200と低電位電源線204との間で直列に接続される。低電位電源線204には低電位PVSSが与えられる。
【0058】
駆動トランジスタ222の一方の端子は発光制御トランジスタ230と補正トランジスタ228を介して高電位電源線200と電気的に接続され、他方の端子は発光素子120と電気的に接続される。駆動トランジスタ222のゲートは、初期化トランジスタ224を介して第1の信号線206と電気的に接続されるとともに、書込トランジスタ226を介して第2の信号線208と電気的に接続される。第1の信号線206には初期化信号Viniが与えられ、第2の信号線208には映像信号Vsigが与えられる。初期化信号Viniは一定レベルの初期化電位を与える信号である。書込トランジスタ226は、そのゲートに接続される書込制御走査線210に与えられる走査信号SGによって動作(オン/オフ)が制御される。初期化トランジスタ224のゲートは、初期化制御信号IGが与えられる初期化制御走査線212と接続され、初期化制御信号IGにより動作が制御される。書込トランジスタ226がオン、初期化トランジスタ224がオフのとき、映像信号Vsigの電位が駆動トランジスタ222のゲートに与えられる。一方、書込トランジスタ226がオフ、初期化トランジスタ224がオンのとき、初期化信号Viniの電位が駆動トランジスタ222のゲートに与えられる。
【0059】
補正トランジスタ228と発光制御トランジスタ230のゲートにはそれぞれ、補正制御信号CGが印加される補正制御走査線214、発光制御信号BGが印加される発光制御走査線218が接続される。駆動トランジスタ222の一方の端子には、補正トランジスタ228を介し、リセット制御線216が接続される。リセット制御線216は、走査線側駆動回路108に設けられるリセットトランジスタ232と接続される。リセットトランジスタ232はリセット制御信号RGによって制御され、これによりリセット信号線220に与えられるリセット電位Vrstを補正トランジスタ228を介して駆動トランジスタ222の一方の端子に印加することができる。
【0060】
駆動トランジスタ222の他方の端子とゲートとの間には、保持容量234が設けられる。付加容量236の一方の端子は駆動トランジスタ222の他方の端子に接続され、他方の端子が高電位電源線200に接続される。付加容量236は、他方の端子が低電位電源線204に接続されるように設けてもよい。保持容量234と付加容量236は、映像信号Vsigを駆動トランジスタ222のゲートに与えるとき、映像信号Vsigに応じたゲート-ソース間電圧Vgsを保持するために設けられる。
【0061】
信号線側駆動回路110、もしくは駆動IC116は、第1の信号線206と第2の信号線208に初期化信号Viniと映像信号Vsigをそれぞれ出力する。一方、走査線側駆動回路108は書込制御走査線210に走査信号SGを出力し、初期化制御走査線212に初期化制御信号IGを出力し、補正制御走査線214に補正制御信号CGを出力し、発光制御走査線218に発光制御信号BGを出力し、リセットトランジスタ232のゲートにリセット制御信号RGを出力する。
【0062】
5-2.断面構造
図8に表示装置100の断面模式図を示す。
図8は、基板102上に形成された隣接する三つの画素104(第1の画素104a、第2の画素104b、第3の画素104c)の断面模式図である。ここでは、各画素104に含まれる素子のうち、駆動トランジスタ222、保持容量234、付加容量236、発光素子120の断面構造が示されている。
【0063】
画素回路に含まれる各素子はアンダーコート150を介し、基板102上に設けられる。基板102はガラスや石英、あるいはプラスチックを含むことができる。プラスチックを用いることで基板102に可撓性を付与することができる。プラスチックとしては、ポリイミドやポリアミド、ポリエステル、ポリカルボナートなどの高分子が挙げられ、中でも耐熱性の高いポリイミドが好適である。アンダーコート150は、単層構造を有していてもよく、
図8に示すように複数の膜から構成されていてもよい。複数の膜を用いる場合、例えば酸化シリコンを含む膜150a、窒化シリコンを含む膜150b、および酸化シリコンを含む膜150cを含む膜を順次基板102上に形成すればよい。
【0064】
駆動トランジスタ222は、半導体膜152、ゲート絶縁膜154、ゲート電極156、ドレイン電極162、ソース電極164を含む。ゲート電極156は、ゲート絶縁膜154を介して半導体膜152の少なくとも一部と交差するように配置され、半導体膜152とゲート電極156が重なる領域にチャネル領域152aが形成される。半導体膜152はさらに、チャネル領域152aを挟持する低濃度不純物領域152c、およびチャネル領域152aと低濃度不純物領域152cを挟持する高濃度不純物領域152bを有する。
【0065】
ゲート絶縁膜154を介し、ゲート電極156と同一の層に存在する容量電極158が高濃度不純物領域152bと重なるように設けられる。ゲート電極156、容量電極158の上には層間絶縁膜160が配置される。層間絶縁膜160とゲート絶縁膜154には、高濃度不純物領域152bに達する開口が形成され、この開口を覆うようにドレイン電極162、ソース電極164が配置される。ソース電極164の一部は、層間絶縁膜160を介して高濃度不純物領域152bの一部と容量電極158と重なり、高濃度不純物領域152bの一部、ゲート絶縁膜154、容量電極158、層間絶縁膜160、およびソース電極164の一部によって保持容量234が形成される。
【0066】
駆動トランジスタ222や保持容量234の上にはさらに平坦化膜166が設けられる。平坦化膜166は、ソース電極164に達する開口を有し、この開口と平坦化膜166の上面の一部を覆う接続電極168がソース電極164と接するように形成される。平坦化膜166上にはさらに付加容量電極170が設けられる。接続電極168と付加容量電極170を覆うように容量絶縁膜172が配置される。容量絶縁膜172は、平坦化膜166の開口では接続電極168の一部を覆わず、接続電極168の上面を露出する。これにより、接続電極168を介し、その上に設けられる画素電極122とソース電極164間の電気的接続が可能となる。容量絶縁膜172には、その上に設けられる隔壁176と平坦化膜166の接触を許容するための開口174を設けてもよい。開口174を通して平坦化膜166中の不純物を除去することができ、これによって発光素子120の信頼性を向上させることができる。なお、接続電極168や開口174の形成は任意である。
【0067】
容量絶縁膜172上には、接続電極168と付加容量電極170と重なる画素電極122が設けられる。容量絶縁膜172は付加容量電極170と画素電極122によって挟持され、この構造によって付加容量236が形成される。画素電極122は、付加容量236と発光素子120によって共有される。
【0068】
画素電極122の上には、画素電極122の端部を覆う隔壁176が設けられる。画素電極122、隔壁176を覆うようにEL層140、およびその上の対向電極138が設けられる。EL層140には上述した構造を適用することができ、EL層140を構成する各機能層や対向電極138は、インクジェット法やスピンコート法、印刷法、蒸着法、あるいはスパッタリング法を適宜適用して形成される。
図8では、見やすさを考慮し、EL層140の詳細な構造は図示していない。
【0069】
表示装置100は、任意の構成として、発光素子120保護するためのパッシベーション膜180を備えてもよい。パッシベーション膜180の構造も任意に決定することができ、単層構造、積層構造のいずれを採用してもよい。積層構造を有する場合、
図8に示すように、例えばケイ素含有無機化合物を含む第1の層180a、樹脂を含む第2の層180b、ケイ素含有無機化合物を含む第3の層180cが順次積層した構造を採用することができる。ケイ素含有無機化合物としては窒化ケイ素や酸化ケイ素が挙げられる。樹脂としてはエポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリエステル、ポリカルボナートなどが挙げられる。
【0070】
図9に
図8で示した発光素子120の断面模式図を示す。
図9では、
図6に示した第1の発光素子120a、第2の発光素子120b、および第3の発光素子120cがそれぞれ第1の画素104a、第2の画素104b、および第3の画素104cに配置した例が示されている。すなわち、発光素子120間でホールブロック層132やホール輸送層126、発光層130の厚さが異なる例が示されている。
図9に示すように、ホール注入層124や電子ブロック層128、電子輸送層134、電子注入層136、および対向電極138は複数の画素104にわたって連続的に設けられる。すなわち、これらの層や電極は複数の発光素子120によって共有される。したがって、電子輸送層134は、
図6に示した第1の電子輸送層134a、第2の電子輸送層134b、第3の電子輸送層134cが一体化された一つの膜である。これに対し、ホール輸送層126や発光層130、ホールブロック層132は、隣接する画素104間で離間するように設けられる。
【0071】
図9に示した例では、ホール輸送層126は隣接する画素104間で離間するように設けられているが、
図10に示すように、ホール輸送層126は複数の画素104に共有されるよう、第1のホール輸送層126a、第2のホール輸送層126b、第3のホール輸送層126cが一体化された膜として形成してもよい。この場合、一つのホール輸送層126dを第1の画素電極122a、第2の画素電極122b、第3の画素電極122cの上に、第1の発光素子120aから第3の発光素子120cにわたって形成した後、ホール輸送層126eを第2の画素電極122bと第3の画素電極122cの上に選択的に形成し、さらにホール輸送層126fを第3の画素電極122cの上に選択的に形成すればよい。この場合、第1の発光素子120aにおいてはホール輸送層126dが第1のホール輸送層126aに相当し、第2の発光素子120bにおいてはホール輸送層126dとホール輸送層126eの積層が第2のホール輸送層126bに相当する。同様に、第3の発光素子120cにおいてはホール輸送層126dとホール輸送層126fの積層が第3のホール輸送層126cに相当する。
【0072】
これらの変形例においても、高い電子輸送性を示すホールブロック層132が電子輸送層134よりも厚く形成され、ホールブロック層132によって光学調整が行われる。また、異なる発光色を与える発光素子120間でホールブロック層132の厚さが異なる。したがって、駆動電圧の増大を伴うことなく各発光素子120で光学調整が可能であり、色純度に優れ、発光効率の高い発光素子120、およびそれを有する表示装置100を提供することができる。
【実施例1】
【0073】
本実施例では、表示装置100に備えられる発光素子120の特性を評価した結果を述べる。
【0074】
実施例1の表示装置100は
図6に示した第1の発光素子120aから第3の発光素子120cを備える。表1にこれらの発光素子120のホール輸送層126、ホールブロック層132、電子輸送層134の厚さを纏める。第1の発光素子120aから第3の発光素子120cの発光層130の厚さは、それぞれ15nm、45nm、40nmであり、対向電極は138は銀とマグネシウムを共蒸着することで作製した(厚さ20nm)。なお、比較の対象として従来の素子構造を有する三つの発光素子(第4から第6の発光素子)を有する表示装置(比較例1)も形成した。実施例1の第1の発光素子120aから第3の発光素子120cの機能層で用いた材料は、第4から第6の発光素子の機能層で用いた材料とそれぞれ同一である。比較例1の第4から第6の発光素子のホール輸送層126、ホールブロック層132、電子輸送層134の厚さも表1に示す。表1から理解されるように、比較例1の発光素子では、ホールブロック層132の厚さは電子輸送層134の厚さよりも小さく、かつ、発光素子間で同一である。実施例1と比較例1の各発光素子では、光学調整はホール輸送層、ホールブロック層、および電子輸送層を用いて行った。
【0075】
【0076】
実施例1と比較例1の発光素子の特性を表2に纏める。
【0077】
【0078】
表2に示すように、実施例1の発光素子120はいずれも優れた色純度の青色、緑色、赤色発光することが確認された。実施例1と比較例1の各素子は、駆動電圧において大きな差はみられなかったものの、実施例1では正面方向から測定した場合の電流効率の顕著な向上が確認された。信頼性を表す5%輝度低下時間は、実施例1と比較例1では大きな差は見られないが、電流効率の増大を考慮すると、これらの結果は、より高い輝度で発光させても信頼性(5%輝度低下時間)が変わらないことを意味しており、実施例1の発光素子120では実質的に信頼性が向上していると結論付けることができる。
【実施例2】
【0079】
本実施例では、ホール輸送層126、ホールブロック層132、電子輸送層134の厚さが実施例1の発光素子120のそれらと異なる発光素子120を有する表示装置100(実施例2)の特性を評価した結果を述べる。
【0080】
実施例1と同様、実施例2の表示装置100は
図6に示した第1の発光素子120aから第3の発光素子120cを有しており、表3にこれらの発光素子120のホール輸送層126、ホールブロック層132、電子輸送層134の厚さを纏める。第1の発光素子120aから第3の発光素子120cの発光層130の厚さは、それぞれ15nm、45nm、40nmであり、対向電極138は銀とマグネシウムを共蒸着することで作製した(厚さ20nm)。比較の対象として従来の素子構造を有する三つの発光素子(第7から第9の発光素子)を有する表示装置(比較例2)も形成した。第1の発光素子120aから第3の発光素子120cの機能層で用いた材料は、第7から第9の発光素子の機能層で用いた材料とそれぞれ同一である。第7から第9の発光素子のホール輸送層126、ホールブロック層132、電子輸送層134の厚さも表3に示す。表3から理解されるように、比較例2の発光素子では、ホールブロック層132の厚さは電子輸送層134の厚さよりも小さく、かつ発光素子間で異なる。これに対し、比較例1の発光素子ではホールブロック層は電子輸送層よりも薄く、発光素子間で同一である。実施例1と比較例1と同様、実施例2と比較例2の各発光素子においても、光学調整はホール輸送層、ホールブロック層、および電子輸送層を用いて行った。
【0081】
【0082】
実施例2と比較例2の発光素子の特性を表4に纏める。
【0083】
【0084】
表4に示すように、実施例2の発光素子120はいずれも優れた色純度の青色、緑色、赤色発光することが確認された。実施例2の発光素子120の駆動電圧は、比較例2のそれらと比較してやや増大しているものの、顕著な差はみられなかった。しかしながら正面方向から測定した場合の電流効率、および信頼性は、第1の発光素子120aから第3の発光素子120cのいずれにおいても大幅な向上が確認された。
【0085】
このように、本発明の実施形態を適用することにより、色純度と発光効率に優れた高信頼性発光素子を提供することが確認された。このため、これらの発光素子を利用することで、色再現性に優れた低消費電力の表示装置を提供することが可能となる。
【0086】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0087】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0088】
100:表示装置、102:基板、104:画素、104a:第1の画素、104b:第2の画素、104c:第3の画素、106:表示領域、108:走査線側駆動回路、110:信号線側駆動回路、112:配線、114:FPC、120:発光素子、120a:第1の発光素子、120b:第2の発光素子、120c:第3の発光素子、122:画素電極、122a:第1の画素電極、122b:第2の画素電極、122c:第3の画素電極、124:ホール注入層、124a:第1のホール注入層、124b:第2のホール注入層、124c:第3のホール注入層、126:ホール輸送層、126a:第1のホール輸送層、126b:第2のホール輸送層、126c:第3のホール輸送層、126d:ホール輸送層、126e:ホール輸送層、126f:ホール輸送層、128:電子ブロック層、128a:第1の電子ブロック層、128b:第2の電子ブロック層、128c:第3の電子ブロック層、130:発光層、130a:第1の発光層、130b:第2の発光層、130c:第3の発光層、132:ホールブロック層、132a:第1のホールブロック層、132b:第2のホールブロック層、132c:第3のホールブロック層、134:電子輸送層、134a:第1の電子輸送層、134b:第2の電子輸送層、134c:第3の電子輸送層、136:電子注入層、136a:第1の電子注入層、136b:第2の電子注入層、136c:第3の電子注入層、138:対向電極、140:EL層、150:アンダーコート、150a:酸化シリコンを含む膜、150b:窒化シリコンを含む膜、150c:酸化シリコンを含む膜、152:半導体膜、152a:チャネル領域、152b:高濃度不純物領域、152c:低濃度不純物領域、154:ゲート絶縁膜、156:ゲート電極、158:容量電極、160:層間絶縁膜、162:ドレイン電極、164:ソース電極、166:平坦化膜、168:接続電極、170:付加容量電極、172:容量絶縁膜、174:開口、176:隔壁、180:パッシベーション膜、180a:第1の層、180b:第2の層、180c:第3の層、184:第1のキャップ層、186:第2のキャップ層、200:高電位電源線、202:電流供給線、204:低電位電源線、206:第1の信号線、208:第2の信号線、210:書込制御走査線、212:初期化制御走査線、214:補正制御走査線、216:リセット制御線、218:発光制御走査線、220:リセット信号線、222:駆動トランジスタ、224:初期化トランジスタ、226:書込トランジスタ、228:補正トランジスタ、230:発光制御トランジスタ、232:リセットトランジスタ、234:保持容量、236:付加容量、238:容量