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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ソール構造およびそれを用いたシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/18 20060101AFI20220113BHJP
   A43B 13/12 20060101ALI20220113BHJP
   A43B 13/14 20060101ALI20220113BHJP
   A43B 7/28 20060101ALI20220113BHJP
   A43B 7/32 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A43B13/18
A43B13/12 Z
A43B13/14 A
A43B7/28
A43B7/32
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018055592
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019165937
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2019-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八幡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】串田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】森田 彰
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-540916(JP,A)
【文献】国際公開第2017/194070(WO,A1)
【文献】特開2006-334400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0154628(US,A1)
【文献】実開平01-010206(JP,U)
【文献】国際公開第2006/129837(WO,A1)
【文献】特開2009-233163(JP,A)
【文献】特開2016-182332(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/105481(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10231882(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 7/28,7/32,13/12,13/14,13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズ用のソール構造であって、
路面側に配置された板状の基板部と、
前記基板部から上方に向かって突出しかつ互いに間隔をあけて配置された弾性変形可能な複数の柱部と、
前記基板部の上方に配置された積層体と、を備え、
前記各柱部は、下端部が前記基板部に固定されかつ上端部が前記積層体に固定された状態で該基板部と該積層体との間に配置されており、
前記各柱部は、前記積層体に固定された前記各柱部の上端部が前記基板部に固定された前記各柱部の下端部に対して左右方向に移動するように弾性変形可能となっており、
前記各柱部の上端部および前記積層体は、前記各柱部の弾性変形により生じた復元力により、左右方向において元の状態の位置に復帰するように構成され
前記基板部および前記複数の柱部は、同一の硬質弾性部材で構成されたアウトソールであり、
前記基板部と前記複数の柱部とは一体形成されている、ソール構造。
【請求項2】
請求項1に記載のソール構造において、
前記複数の柱部は、前記基板部において少なくとも着用者の足の拇指球を含む前足部の位置に配置されている、ソール構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のソール構造において、
前記基板部および前記積層体の周縁部には、該基板部と該積層体との間隙を塞ぐための壁部が設けられている、ソール構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のソール構造において、
前記積層体は、前記基板部および前記柱部と同じ弾性材からなる、ソール構造。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のソール構造において、
前記積層体は、板状の上板部である、ソール構造。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のソール構造において、
前記積層体は、フィルム状のシート材である、ソール構造。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のソール構造において、
前記積層体は、前記アウトソールよりも軟質な弾性材からなるミッドソールである、ソール構造。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のソール構造において、
前記積層体は、着用者の足裏に対応する位置に配置されたアッパーの下部である、ソール構造。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載のソール構造において、
前記複数の柱部は、各々が弾性変形するときの変形方向に異方性を有するように構成されている、ソール構造。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のソール構造において、
前記基板部の上面に占める前記複数の柱部の配置密度が着用者の足の各部位に応じて異なっている、ソール構造。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載のソール構造において、
前記複数の柱部における前記基板部の上面からの突出高さが着用者の足の各部位に応じて異なっている、ソール構造。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のソール構造を備えるシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソール構造およびそれを用いたシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行時および走行時において着用者の足の接地感、歩き心地や走り心地を向上させたシューズ用のソール構造として、例えば特許文献1のようなソール構造が提案されている。
【0003】
この特許文献1には、アウトソールの接地面が路面に接地して着用者の体重が踵支持面にかかったときに、収容部の左右壁面と収容部に収容された緩衝体の左右側端部との間に設けられた右側および左側間隙により、弾性材からなる緩衝体が収容部で左右方向に相対移動可能となるシューズ用のソール構造が開示されている(特許文献1の図5および図6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/056513号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バドミントン、卓球などの体育館種目の競技中において、例えば着用者が左側から右側に向かって切り返し動作を行う場面では、着用者の体重が左足を中心に外甲側に向かって一旦移動するようになる。このような場面において、特許文献1のソール構造では、特に左足用シューズにおいて、アウトソールが路面に接地して着用者の体重が踵支持面にかかったときに、緩衝体が収容部の左側間隙に向かって相対移動するようになる。これにより、ソール構造としてのクッション性が発揮されて、着用者の足にかかる負担を軽減することが可能となっていた。
【0006】
しかしながら、特許文献1のソール構造では、例えば左側に向かう体重移動が終了してから着用者の体重が右側に移動するときに、収容部において一旦左側間隙に向かって移動した緩衝体が再び左側間隙から右側間隙に向かって復帰するように構成されていなかった。このため、着用者の足が左側から右側に向かって蹴り出される時の力が減衰されてしまう。その結果、切り返し動作を素早く行うことが困難となっていた。すなわち、特許文献1のソール構造では、切り返し動作をスムーズに行うことができなかった。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切り返し動作をスムーズに行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の形態はシューズ用のソール構造に係るものであり、このソール構造は、路面側に配置された板状の基板部と、基板部から上方に向かって突出しかつ互いに間隔をあけて配置された弾性変形可能な複数の柱部と、基板部の上方に配置された積層体と、を備えている。そして、各柱部は、下端部が基板部に固定されかつ上端部が積層体に固定された状態で基板部と積層体との間に配置されており、前記各柱部は、前記積層体に固定された前記各柱部の上端部が前記基板部に固定された前記各柱部の下端部に対して左右方向に移動するように弾性変形可能となっており、前記各柱部の上端部および前記積層体は、前記各柱部の弾性変形により生じた復元力により、左右方向において元の状態の位置に復帰するように構成され、前記基板部および前記複数の柱部は、同一の硬質弾性部材で構成されたアウトソールであり、前記基板部と前記複数の柱部とは一体形成されていることを特徴とする。
【0009】
第1の形態では、各柱部の下端部が基板部に固定されかつ各柱部の上端部が積層体に固定された状態で各柱部が基板部と積層体との間に配置されている。ここで、バドミントン、卓球などの体育館種目の競技中に着用者が例えば左側から右側に向かって切り返し動作を行う場合には、着用者の体重が左足を中心に外甲側に向かって一旦移動するようになる。このとき、各柱部は、積層体に固定された上端部が基板部に固定された下端部に対して左側に移動するように弾性変形する。この各柱部の弾性変形によりクッション性が発揮されて、切り返し動作時に着用者の足や膝にかかる負担を軽減することが可能となる。そして、左側に向かう体重移動が終了してから着用者の体重が右側に移動するときに、各柱部の弾性変形により生じた内部応力が元の状態に戻ろうとする復元力に変換される。この復元力により、各柱部の上端部が左側から右側に向かって移動するとともに、各柱部の上端部に固定された積層体も左側から右側に復帰するように移動する。これにより、着用者の足が左側から右側に向かって蹴り出される時の力が増大される。その結果、切り返し動作を素早く行うことが可能となる。したがって、第1の形態では、複数の柱部の弾性的な変形および復元により切り返し動作をスムーズに行うことができる。
【0010】
また、第1の形態では、基板部と柱部とが一体形成されているため、各柱部の下端部を基板部に対し安定させることができる。また、基板部および柱部が弾性材からなるアウトソールとして構成されているため、着用者の足が接地したときの衝撃が基板部を介して柱部に伝わりやすくなり、柱部の弾性的な変形および復元による作用効果を高めることができる。
【0011】
第2の形態は、第1の形態において、複数の柱部は、基板部において少なくとも着用者の足の拇指球を含む前足部の位置に配置されていることを特徴とする。
【0012】
この第2の形態では、柱部の弾性的な変形および復元による作用効果を、切り返し動作時に負荷がかかりやすい足の拇指球を含む前足部の位置で集中的に得ることができる。
【0013】
第3の形態は、第1または第2の形態において、基板部および積層体の周縁部には、基板部と積層体との間隙を塞ぐための壁部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この第3の形態では、壁部によりソール構造の外部から基板部と積層体との間隙に向かって異物が入り込むことを未然に防止することができる
【0015】
の形態は、第1~第3のいずれか1つの形態において、積層体は、基板部および柱部と同じ弾性材からなることを特徴とする。
【0016】
この第の形態では、積層体と基板部および柱部の少なくともいずれか一方との一体性を高めることができる。
【0017】
の形態は、第1~第のいずれか1つの形態において、積層体は、板状の上板部であることを特徴とする。
【0018】
この第の形態では、板状の上板部を設けることにより、接着性や作業性の向上を図ることができる。
【0019】
の形態は、第1~第のいずれか1つの形態において、積層体は、フィルム状のシート材であることを特徴とする。
【0020】
この第の形態では、接着性や作業性の向上を図るとともに、シート材によりソール構造を軽量化することができる。
【0021】
の形態は、第1~第3のいずれか1つの形態において、積層体は、アウトソールよりも軟質な弾性材からなるミッドソールであることを特徴とする。
【0022】
この第の形態では、ソール構造としての部品点数を減らすことができる。
【0023】
の形態は、第1~第のいずれか1つの形態において、積層体は、着用者の足裏に対応する位置に配置されたアッパーの下部であることを特徴とする。
【0024】
この第の形態では、ソール構造を簡素化および軽量化することができる。
【0025】
の形態は、第1~第のいずれか1つの形態において、複数の柱部は、各々が弾性変形するときの変形方向に異方性を有するように構成されていることを特徴とする。
【0026】
この第の形態では、柱部における弾性的な変形および復元の度合いを、着用者の動作の方向に応じて異ならせることができる。
【0027】
10の形態は、第1~第のいずれか1つの形態において、基板部の上面に占める複数の柱部の配置密度が着用者の足の各部位に応じて異なっていることを特徴とする。
【0028】
この第10の形態では、柱部における弾性的な変形および復元の度合いを、着用者の足の各部位に応じて異ならせることができる。
【0029】
11の形態は、第1~第のいずれか1つの形態において、複数の柱部における基板部の上面からの突出高さが着用者の足の各部位に応じて異なっていることを特徴とする。
【0030】
この第11の形態では、柱部における弾性的な変形および復元の度合いを、着用者の足の各部位に応じて異ならせることができる。
【0031】
12の形態は、第1~第11の形態のいずれか1つのソール構造を備えるシューズである。
【0032】
この第12の形態では、上記第1~第11の形態と同様の作用効果を奏するシューズを得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によると、切り返し動作をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の実施形態に係るソール構造およびこれを備えたシューズの全体構成を外甲側から見て示す側面図である。
図2図2は、アウトソールの構成を示す斜視図である。
図3図3は、アウトソールの構成を示す分解斜視図である。
図4図4は、図1のIV-IV線断面図である。
図5図5は、切り返し動作時における柱部の変形状態を模式的に示す図4相当図である。
図6図6は、変形例1のソール構造およびこれを備えたシューズの全体構成を外甲側から見て示す側面図である。
図7図7は、図6のVII-VII線断面図である。
図8図8は、変形例2のソール構造およびこれを備えたシューズの全体構成を外甲側から見て示す側面図である。
図9図9は、変形例2のアウトソールの構成を示す斜視図である。
図10図10は、変形例2のアウトソールの構成を示す分解斜視図である。
図11図11は、図8のXI-XI線断面図である。
図12図12は、変形例4のソール構造の縦断面状態を示す図4相当図である。
図13図13は、変形例5のソール構造の縦断面状態を示す図4相当図である。
図14図14は、変形例6の基板部および柱部の構成を示す斜視図である。
図15図15は、変形例7の基板部および柱部の構成を示す斜視図である。
図16図16は、変形例8の基板部および柱部の構成を示す斜視図である。
図17図17は、変形例9の基板部および柱部の構成を示す斜視図である。
図18図18は、変形例10の基板部および柱部の構成を示す斜視図である。
図19図19は、変形例11の基板部および柱部の構成を示す斜視図である。
図20図20は、変形例12の基板部および柱部の構成を示す斜視図である。
図21図21は、図20のXXI-XXI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係るソール構造1およびこれを備えたシューズSの全体を示し、このシューズSは、例えばバドミントン、卓球などの体育館種目に用いられるスポーツシューズ、日常使用のスニーカーおよびリハビリ用シューズとして使用される。
【0037】
ここで、ソール構造1は、左足用シューズのソール構造のみを例示している。右足用シューズのソール構造は、左足用シューズのものと左右対称となるように構成されている。このため、以下の説明では、左足用シューズのソール構造のみについて説明し、右足用シューズのソール構造の説明を省略する。
【0038】
また、以下の説明において、上方(上側)および下方(下側)とは、ソール構造1の上下方向の位置関係を表すものとする。また、前側および後側とは、ソール構造1の前後方向の位置関係を表すものとする。さらに、内甲側および外甲側とは、ソール構造1の足幅方向の位置関係を表すものとする。
【0039】
図1および図4に示すように、ソール構造1は、ミッドソール2を備えている。ミッドソール2は、着用者の足裏全体を支持するように構成されている。ミッドソール2は、軟質の弾性材からなり、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、ブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体などが適している。
【0040】
ミッドソール2の上側には、着用者の足裏全体を支持する足裏支持面が形成されている。ミッドソール2の周縁部には、着用者の足を覆うアッパー3が設けられている。
【0041】
次に、図1図4に示すように、ソール構造1は、アウトソール4を備えている。アウトソール4は、ミッドソール2の下側に積層配置されている。この実施形態において、アウトソール4は、着用者の足の前足部から後足部に亘る範囲に配設されている。
【0042】
アウトソール4は、ミッドソール2よりも高硬度の硬質弾性部材で構成されている。具体的に、アウトソール4の材料としては、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材が適している。
【0043】
アウトソール4は、上述した高硬度の弾性材からなる基板部5を有している。基板部5は、路面側に配置されている。基板部5は、略板状に形成されている。
【0044】
アウトソール4は、弾性変形可能な複数の柱部6,6,…を有している。柱部6,6,…は、基板部5と同じ弾性材からなり、基板部5と一体形成されている。柱部6,6,…は、基板部5の上面から上方に向かって円柱状に突出している。この実施形態では、各柱部6が同じ大きさの円柱状に形成されている。なお、図1では、柱部6,6,…を強調して示すために、柱部6,6,…にドットによるハッチングを付している。図4および図5についても、これと同様に、柱部6,6,…にドットによるハッチングを付している。
【0045】
柱部6,6,…は、各々が基板部5の上面で互いに等間隔となるように配置されている。柱部6,6,…は、基板部5において着用者の足裏全体に対応する位置に配置されている。なお、柱部6,6,…は、基板部5において少なくとも着用者の足の拇指球を含む前足部の位置に配置されていればよい。
【0046】
アウトソール4は、積層体を有している。この実施形態において、積層体は、板状の上板部7として構成されている。上板部7は、基板部5および柱部6,6,…と同じ弾性材からなり、基板部5の上方に配置されている。上板部7の下面は、基板部5の上面と間隔をあけて対向している。なお、この実施形態では、上板部7が各柱部6とは別部材として構成されている。
【0047】
各柱部6の下端部は、基板部5の上面に固定されている。各柱部6の上端部は、上板部7の下面7bに固定されている。そして、各柱部6は、基板部5および上板部7に固定された状態で基板部5と上板部7との間に配置されている。なお、この実施形態では、ソール構造1の外部から基板部5と上板部7との間隙に位置する柱部6,6,…が視認可能となっている。
【0048】
(実施形態の作用効果)
以上のように、各柱部6の下端部が基板部5に固定されかつ各柱部6の上端部が上板部7(積層体)に固定された状態で各柱部6が基板部5と上板部7との間に配置されている。ここで、バドミントン、卓球などの体育館種目の競技中に着用者が例えば左側から右側に向かって切り返し動作を行う場合には、着用者の体重が左足を中心に外甲側に向かって一旦移動するようになる。このとき、図5に示すように、各柱部6は、上板部7に固定された上端部が基板部5に固定された下端部に対して左側に移動するように弾性変形する。この柱部6,6,…の弾性変形によりクッション性が発揮されて、切り返し動作時に着用者の足や膝にかかる負担を軽減することが可能となる。そして、左側に向かう体重移動が終了してから着用者の体重が右側に移動するときに、各柱部6の弾性変形により生じた内部応力が元の状態に戻ろうとする復元力に変換される。この復元力により、各柱部6の上端部が左側から右側に向かって移動するとともに、各柱部6の上端部に固定された上板部7も左側から右側に復帰するように移動する。これにより、着用者の足が左側から右側に向かって蹴り出される時の力が増大される。その結果、切り返し動作を素早く行うことが可能となる。したがって、本発明の実施形態に係るソール構造1では、柱部6,6,…の弾性的な変形および復元により切り返し動作をスムーズに行うことができる。
【0049】
また、柱部6,6,…は、基板部5において少なくとも着用者の足の拇指球を含む前足部の位置に配置されている。このため、柱部6,6,…の弾性的な変形および復元による作用効果を、切り返し動作時に負荷がかかりやすい足の拇指球を含む前足部の位置で集中的に得ることができる。
【0050】
また、基板部5と柱部6,6,…とは一体形成されており、基板部5および柱部6,6,…が弾性材からなるアウトソール4として構成されている。このため、各柱部6の下端部を基板部5に対し安定させることができる。さらに、着用者の足が接地したときの衝撃が基板部5を介して各柱部6に伝わりやすくなり、各柱部6の弾性的な変形および復元による作用効果を高めることができる。
【0051】
また、積層体は、基板部5および柱部6,6,…と同じ弾性材からなる板状の上板部7として構成されている。このため、積層体としての上板部7と基板部5および柱部6,6,…との一体性を高めることができる。
【0052】
また、積層体として板状の上板部を設けることにより、接着性や作業性の向上を図ることができる。
【0053】
(実施形態の変形例1)
上記実施形態では、ソール構造1の外部から基板部5と上板部7との間隙に位置する柱部6,6,…が視認可能な形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図6および図7に示した変形例1のように、基板部5および上板部7(積層体)の周縁部には、基板部5と上板部7との間隙を塞ぐための壁部8aが設けられていてもよい。具体的に、この壁部8aは、基板部5および上板部7の全周に配置されていて、基板部5と一体形成されている。このような変形例1では、ソール構造1の外部からアウトソール4の内部(すなわち、基板部5と上板部7との間隙)に向かって異物が入り込むことを未然に防止することができる。さらに、壁部8aの上端部を上板部7の下面に固定することにより、柱部6,6,…および壁部8aを介して基板部5と上板部7との固定強度を高めることができる。
【0054】
(実施形態の変形例2)
上記実施形態では、アウトソール4を着用者の足裏全体に配設した形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図8図10に示した変形例2のように、アウトソール4を、着用者の足の前足部および後足部に対応する位置のそれぞれに分割して配置した形態としてもよい。この変形例2であっても、着用者の足の前足部および後足部の位置において柱部6,6,…による弾性的な変形および復元による作用効果を得ることができる。
【0055】
また、上記変形例1では、壁部8aを基板部5と一体形成した形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図8図11に示すように、輪状の壁部8bを、着用者の足の前足部に対応する位置に配置された基板部5の外周を覆うように取り付けてもよい。この変形例2であっても、基板部5と上板部7との間隙に異物が入り込むことを未然に防止することができる。なお、壁部8bの材料は、基板部5および各柱部6と同じ材料であってもよく、または基板部5および各柱部6と異なる材料であってもよい。
【0056】
さらに、上記変形例1では、壁部8aを基板部5の全周に配設した形態を示したが、この形態に限られず、壁部8aを基板部5の外周における所定の部分に配設した形態としてもよい。例えば、図8図10に示すように、着用者の足の後足部に対応する位置に配置された基板部5において、壁部8aを基板部5の前端部および後端部のそれぞれに配設してもよい。
【0057】
(実施形態の変形例3)
上記実施形態では、積層体が上板部7からなる形態を示したが、この形態に限られない。例えば、上板部7を、フィルム状のシート材(図示せず)に置き換えた形態としてもよい。具体的に、例えば予め上記シート材を各柱部6の上端部に接着剤や熱プレス等により固着し、シート材をミッドソール2の下面に張り付ける。この変形例3であっても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、各柱部6を直接的にミッドソール2の下面に固着する場合と比べて、接着性や作業性の向上を図ることができる。さらに、上板部7をシート材に置き換えることにより、積層体が上板部7である場合と比べてソール構造1全体を軽量化することができる。
【0058】
(実施形態の変形例4)
上記実施形態では、積層体が上板部7として構成された形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図12に示した変形例4のように、上板部7を設けずに、各柱部6の上端部をミッドソール2の下面に固定してもよい。すなわち、ミッドソール2を積層体としてもよい。この変形例4であっても、各柱部6の上端部がミッドソール2の下面に固定されていれば、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、ソール構造1としての部品点数を減らすことができる。
【0059】
(実施形態の変形例5)
また、図13に示した変形例5のように、ミッドソール2および上板部7を設けずに、各柱部6の上端部を着用者の足裏に対応する位置に配置されたアッパー3の下部に固定してもよい。すなわち、着用者の足裏に対応する位置に配置されたアッパー3の下部を積層体としてもよい。この変形例5であっても、各柱部6の上端部がアッパー3の下部に固定されていれば、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、ソール構造1を簡素化および軽量化することにより、変形例5のソール構造1を例えばサッカーシューズなどに適用することができる。
【0060】
(実施形態の変形例6~11)
上記実施形態では、各柱部6を円柱状に形成した形態を示したが、この形態に限られず、種々の形状にすることが可能である。例えば、図14に示した変形例6のように、各柱部6を略円筒状に形成してもよい。または、図15に示した変形例7のように、円柱状の各柱部6を、上下方向の中間部全周が湾曲状にくびれた形状となるように形成してもよい。または、図16に示した変形例8のように、各柱部6を略楕円状に形成してもよい。または、図17に示した変形例9のように、各柱部6を、平面視で略矩形状に形成しかつ側面視で下端部から上端部に向かって先細る台形状となるように形成してもよい。または、図18に示した変形例10のように、各柱部6を略三角柱状に形成してもよい。または、図19に示した変形例11のように、各柱部6を平面視で略十字状となるように形成してもよい。
【0061】
(実施形態の変形例12)
上記実施形態では、柱部6,6,…の各々を、互いに同一の形状(円柱状)となるように形成しかつ基板部5の上面で等間隔に配置した形態を示したが、この形態に限られない。
【0062】
具体的に、図20に示した変形例12では、足幅方向中央部から外甲側に亘る領域(以下、外甲側領域という)に四角柱状の柱部6,6,…が配置されている。一方、足幅方向中央部から内甲側に亘る領域(以下、内甲側領域という)には、円柱状の柱部6,6,…が配置されている。
【0063】
外甲側領域では、各柱部6の断面積が基板部5の前側から後側に向かって徐々に小さくなっている一方、内甲側領域では、各柱部6の断面積が基板部5の前側から後側に向かって徐々に大きくなっている。これにより、外甲側領域では、基板部5の前側から後側に向かうにつれて柱部6,6,…の変形量が大きくなる一方、内甲側領域では、基板部5の前側から後側に向かうにつれて柱部6,6,…の変形量が小さくなる。すなわち、変形例12の柱部6,6,…では、各々が弾性変形するときに足の部位によって変形量に差が生じるように構成されている。これにより、各柱部6における弾性的な変形および復元の度合いを、着用者の足の各部位に応じて異ならせることができる。
【0064】
また、外甲側領域では、各柱部6の辺部が前後方向に向くように配列された第1列と、各柱部6の隅角部が前後方向に向くように配列された第2列と、が足幅方向で交互に配置されている。これにより、第1列の各柱部6は、前後方向および足幅方向に向かって弾性変形しやすくなる一方、第2列の各柱部6は、前後方向および足幅方向の各々に対して略45度傾いた方向に向かって弾性変形しやすくなっている。すなわち、変形例12において、外甲側領域に配置された柱部6,6,…は、各々が弾性変形するときの変形方向に異方性を有するように構成されている。
【0065】
また、図21にも示すように、外甲側領域に位置する各柱部6は、内甲側領域に位置する各柱部6よりも高くなっている。さらに、内甲側領域では、各柱部6の高さが足幅方向中央部から内甲側に向かって徐々に低くなっている。すなわち、外甲側領域では各柱部6の変形量が相対的に大きくなる一方、内甲側領域では各柱部6の変形量が相対的に小さくなるように構成されている。これにより、特に外甲側領域で各柱部6の弾性的な変形および復元による作用が高まるため、切り返し動作をよりスムーズに行うことができる。また、アッパー3の過変形による棚落ちを防止することもできる。なお、外甲側領域から内甲側領域に向かって各柱部6の配置密度を小さくしても、同様の効果を奏し得る。
【0066】
また、図20に示すように、内甲側領域における拇指球に対応する位置では、各柱部6の高さが拇指球以外の他の部位に位置する各柱部6よりも低くなるように構成されている。これにより、拇指球に対応する位置では、接地時に各柱部6における垂直方向の過度な変形が抑えられて、安定性を保つことができる。なお、拇指球に対応する位置に配置された各柱部6の配置密度を相対的に大きくし、または各柱部6の断面積を相対的に大きくしても同様の効果を奏し得る。
【0067】
以上、変形例12のように、柱部6,6,…は、各々が弾性変形するときの変形方向に異方性を有するように構成されていてもよい。このような異方性により、各柱部6における弾性的な変形および復元の度合いを、着用者の動作の方向に応じて異ならせることができる。
【0068】
また、基板部5の上面に占める柱部6,6,…の配置密度が着用者の足の各部位に応じて異なるように構成してもよい。さらに、柱部6,6,…における基板部5の上面からの突出高さが着用者の足の各部位に応じて異なるように構成してもよい。このように構成すれば、各柱部6における弾性的な変形および復元の度合いを、着用者の足の各部位に応じて異ならせることができる。
【0069】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、各柱部6の上端部を、各柱部6とは別部材として構成された上板部7の下面に固定した形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、基板部5および柱部6,6,…と上板部7とを一体形成した形態としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、基板部5、各柱部6、および上板部7の各々が同じ弾性材からなる形態を示したが、この形態に限られない。例えば、基板部5と各柱部6とが互いに異なる弾性材からなり、かつ上板部7が基板部5および各柱部6のいずれか一方と同じ弾性材からなる形態であってもよい。あるいは、基板部5が弾性を有しない材料からなり、かつ各柱部6および上板部7の各々が同じ弾性材からなる形態であってもよい。このような形態であれば、積層体としての上板部7と、基板部5および各柱部6のいずれか一方との一体性を高めることができる。
【0071】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えばバドミントン、卓球などの体育館種目などのスポーツ用シューズに適用されるソール構造およびそれを用いたシューズとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0073】
S:シューズ
1:ソール構造
2:ミッドソール
3:アッパー
4:アウトソール
5:基板部
6:柱部
7:上板部(積層体)
8a,8b:壁部
図1
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