(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】板材加工機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/70 20140101AFI20220128BHJP
B21D 28/36 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B23K26/70
B21D28/36 Z
(21)【出願番号】P 2018058144
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕介
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-309529(JP,A)
【文献】実開昭50-068383(JP,U)
【文献】特開2012-232880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B21D 28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材に対して加工を行う板材加工機における支持体に所定方向へ移動可能に設けられた移動体と、
前記移動体の前記所定方向の位置を検出するリニアエンコーダを構成し、前記支持体に上向きに設けられ、前記所定方向に延びたリニアスケールと、
前記移動体に設けられ、前記リニアスケールに向かって圧縮空気を噴出するインナー噴出口、及び前記リニアスケールの周辺に向かって圧縮空気を噴出するアウター噴出口がそれぞれ形成された清掃ノズルと、を具備し
、
前記清掃ノズルは、
前記移動体に設けられたアウターノズル管と、
前記アウターノズル管の先端部側の内部に設けられ、支持穴が貫通して形成された先端板と、
前記アウターノズル管の内部に設けられ、先端部側が前記先端板の前記支持穴に支持されたインナーノズル管と、を有し、
前記インナーノズル管の先端部に前記インナー噴出口が形成され、前記アウターノズル管の先端部側の内壁面と前記先端板の端面との間に前記アウター噴出口が形成されていることを特徴とする板材加工機。
【請求項2】
前記清掃ノズルは、前記インナー噴出口からの圧縮空気の流速が前記アウター噴出口からの圧縮空気の流速よりも高くなるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の板材加工機。
【請求項3】
前記アウター噴出口の一部は、鉛直下方に向かって圧縮空気を噴出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板材加工機。
【請求項4】
前記清掃ノズルの先端部側の軸心は、鉛直方向に対して傾斜していることを特徴する請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の板材加工機
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材(板金)に対して例えばレーザ加工等の加工を行う板材加工機(板金加工機)に関する。
【背景技術】
【0002】
板材加工機の1つであるレーザ加工機においては、加工速度の向上の要請から、移動体を支持体に対して所定方向へ移動させるモータとして、回転モータよりも応答性に優れたリニアモータが用いられることがある。リニアモータは、支持体に設けられかつ所定方向に延びたモータ固定子と、移動体にモータ固定子と隙間を隔てて対向して設けられたモータ可動子とを有している。また、移動体の位置決め精度を十分に確保するために、レーザ加工機は、リニアモータに併せて、移動体の所定方向の位置を検出するリニアエンコーダを具備している。リニアエンコーダは、支持体に設けられかつモータ固定子と平行に延びたリニアスケールと、移動体にリニアスケールと間隔を隔てて対向して設けられかつリニアスケールの目盛を読み取る読取ヘッドとを有している。
【0003】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リニアエンコーダの設置容易性、及び支持体等の熱変形(伸び)に対するリニアエンコーダの動作信頼性を確保するために、リニアスケールを支持体に上向きに設けなければならない場合がある。この場合には、レーザ加工機の稼働中に、リニアスケールが長時間に亘って粉塵環境下に置かれると、粉塵がリニアスケール上に堆積して、リニアエンコーダによって移動体の所定方向の位置を検出できないことがある。そのため、移動体に設けられた清掃ノズルを用い、清掃ノズルの噴出口からリニアスケールの一部であって読取ヘッドの近傍に位置する部分に向かって圧縮空気を噴出させる清掃対策が採られていた。
【0006】
しかしながら、前述の対策は、リニアスケール上に堆積した粉塵を吹き飛すことができるものの、清掃ノズルの噴出口からの圧縮空気がリニアスケールの周辺の粉塵を含む空気を巻き込んで、粉塵がリニアスケール上に叩きつけられ、却ってリニアスケールを汚してしまうことがある。つまり、リニアスケールを支持体に上向きに設けた場合には、リニアエンコーダによって移動体の所定方向の位置を確実かつ正確に検出することができず、移動体の安定した位置決めを継続して行うことが困難になるという問題がある。
【0007】
なお、前述の問題は、レーザ加工機だけでなく、上向きのリニアスケールが長時間亘って粉塵環境下に置かれることがある他の板材加工機においても同様に生じる。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成からなる板材加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様は、板材(板金)に対して加工を行う板材加工機(板金加工機)における支持体に所定方向へ移動可能に設けられた移動体(可動体)と、前記移動体の前記所定方向の位置を検出するリニアエンコーダを構成し、前記支持体に上向きに設けられ、前記所定方向に延びたリニアスケールと、前記移動体に設けられ、前記リニアスケールに向かって圧縮空気を噴出するインナー噴出口、及び前記リニアスケールの周辺に向かって圧縮空気を噴出するアウター噴出口がそれぞれ形成された清掃ノズルと、を具備し、前記清掃ノズルは、前記移動体に設けられたアウターノズル管と、前記アウターノズル管の先端部側の内部に設けられ、支持穴が貫通して形成された先端板と、前記アウターノズル管の内部に設けられ、先端部側が前記先端板の前記支持穴に支持されたインナーノズル管と、を有し、前記インナーノズル管の先端部に前記インナー噴出口が形成され、前記アウターノズル管の先端部側の内壁面と前記先端板の端面との間に前記アウター噴出口が形成されているものである。
【0010】
本発明の実施態様では、前記清掃ノズルは、前記インナー噴出口からの圧縮空気の流速が前記アウター噴出口からの圧縮空気の流速よりも高くなるように構成されてもよい。また、前記アウター噴出口の一部は、鉛直下方に向かって圧縮空気を噴出してもよい。更に、前記清掃ノズルの先端部側の軸心は、鉛直方向に対して傾斜してもよい。
【0011】
本発明の実施態様では、前記清掃ノズルは、前記移動体に設けられたアウターノズル管と、前記アウターノズル管の先端部側の内部(内側)に設けられ、支持穴が貫通して形成された先端板と、前記アウターノズル管の内部(内側)に設けられ、先端部側が前記先端板の前記支持穴に支持されたインナーノズル管と、を有し、前記インナーノズル管の先端部に前記インナー噴出口が形成され、前記アウターノズル管の先端部側の内壁面と前記先端板の端面との間に前記アウター噴出口が形成されてもよい。
【0012】
本発明の実施態様によると、前記板材加工機の稼働中に、前記インナー噴出口から前記リニアスケールに向かって圧縮空気を噴出させる。同時に、前記アウター噴出口から前記リニアスケールの周辺に向かって圧縮空気を噴出させる。これにより、前記リニアスケールが長時間に亘って粉塵環境下に置かれても、前記インナー噴出口からの圧縮空気によって前記リニアスケール上に堆積した粉塵を吹き飛ばすことができる。また、前記アウター噴出口からの圧縮空気によって前記リニアスケールの周辺の粉塵を含む空気の巻き込みを抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記リニアスケールを前記支持体に上向きに設けた場合でも、前記リニアエンコーダによって前記移動体の所定方向の位置を確実かつ正確に検出することができ、前記移動体の位置決めを安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機の模式的な正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機の模式的な右側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機の模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るレーザ加工機の模式的な背面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る清掃ノズル及びそれに関連する具体的な構成を示す模式図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の実施形態に係る清掃ノズル及びその周辺の模式図である。
図6(b)は、本発明の実施形態に係る清掃ノズルの先端部側から見た図である。
【
図7】
図7(a)は、実施例の場合における清掃ノズルの周辺の空気の流線(流線分布)について流体解析を行った結果を示す図である。
図7(b)は、比較例の場合における清掃ノズルの周辺の空気の流線について流体解析を行った結果を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例及び比較例の場合における清掃試験の結果を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について
図1から
図6を参照して説明する。
【0016】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。また、本願の明細書及び特許請求の範囲において、次のように定義する。「X軸方向」とは、図面に矢印で示す水平方向の1つであり、左右方向とも言う。「Y軸方向」とは、図面に矢印で示す水平方向の1つでかつX軸方向に直交する方向であり、前後方向とも言う。更に、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「U」は、上方向、「D」は、下方向をそれぞれ指している。
【0017】
図1から
図4に示すように、本発明の実施形態に係るレーザ加工機10は、板材(板金)Wに対してレーザ加工を行う板材加工機(板金加工機)である。以下、本発明の実施形態に係るレーザ加工機10の具体的な構成について説明する。
【0018】
レーザ加工機10は、Y軸方向(前後方向)に延びた支持体としてのベッド12を具備している。ベッド12の上部には、Y軸方向に延びた一対の端壁14が形成されており、一対の端壁14は、X軸方向に離隔している。また、ベッド12の上部における各端壁14の近傍には、Y軸方向に延びた支持壁16が形成されており、一対の支持壁16は、X軸方向に離隔している。
【0019】
ベッド12の上方(上側)には、レーザ加工を行うための加工領域PFが形成されている。加工領域PFには、スケルトン状のパレット(テーブル)22を介して板材Wが載置される。また、パレット22は、板材Wを点接触で支持する複数の支持プレート(図示省略)を有している。
【0020】
各支持壁16には、Y軸方向に延びたY軸ガイド部材24が設けられており、一対のY軸ガイド部材24は、加工領域PFを挟んでX軸方向に離隔している。移動体としての門型フレーム(門型の可動フレーム)26は、加工領域PFのX軸方向の両側に位置する一対の支柱部26aと、加工領域PFの上方に位置しかつX軸方向に延びた梁部26bとを有している。そして、門型フレーム26は、一対のY軸ガイド部材24を介してベッド12の上部にY軸方向へ移動可能に設けられている。
【0021】
レーザ加工機10は、移動体としての門型フレーム26を所定方向であるY軸方向へ移動させる一対のY軸リニアモータ28を具備しており、一対のY軸リニアモータ28は、加工領域PFを挟んでX軸方向に離隔している。また、各Y軸リニアモータ28は、支持壁16に設けられかつY軸方向に延びたモータ固定子30を有しており、各モータ固定子30は、複数の永久磁石により構成されている。各Y軸リニアモータ28は、門型フレーム26の支柱部26aにモータ固定子30と隙間を隔てて対向して設けられたモータ可動子32を有しており、各モータ可動子32は、磁界を発生させるコイルにより構成されている。
【0022】
レーザ加工機10は、門型フレーム26のY軸方向の位置を光学的に検出する一対の光学式のY軸リニアエンコーダ34を具備しており、各Y軸リニアエンコーダ34は、対応するY軸リニアモータ28の近傍に位置している。また、各Y軸リニアエンコーダ34は、端壁14に設けられかつモータ固定子30に平行に延びたリニアスケール36を有しており、リニアスケール36には、同一ピッチの多数の目盛(図示省略)が形成されている。一方(左側)のリニアスケール36は、上向きになっており、他方(右側)のリニアスケール36は、横向きになっている。各Y軸リニアエンコーダ34は、門型フレーム26の支柱部26aにリニアスケール36と間隔を隔てて対向して設けられかつリニアスケール36の目盛を光学的に読み取る読取ヘッド38を有している。
【0023】
ここで、一方のリニアスケール36が端壁14に上向きに設けられているため、リニアスケール36と読取ヘッド38との間隔を所定の微小間隔(例えば0.2mm)に設定した状態で、各リニアエンコーダ34を容易に設置することができる。また、同じ理由により、ベッド12等が熱変形(熱膨張)によって伸びても、リニアスケール36と読取ヘッド38との間隔を所定の微小間隔に保つことができ、各リニアエンコーダ34の動作信頼性を維持することができる。
【0024】
なお、レーザ加工機10は、光学式のY軸リニアエンコーダ34に代えて、門型フレーム26のY軸方向の位置を磁気的に検出する磁気式のY軸リニアエンコーダを用いてもよい。
【0025】
門型フレーム26の梁部26bには、X軸方向に延びたX軸ガイド部材40が設けられており、X軸ガイド部材40には、スライダ42がX軸方向に移動可能に設けられている。また、レーザ加工機10は、スライダ42をX軸方向へ移動させるX軸リニアモータ44を具備している。X軸リニアモータ44は、門型フレーム26の梁部26bに設けられかつX軸方向に延びたモータ固定子46を有しており、複数の永久磁石により構成されている。X軸リニアモータ44は、スライダ42にモータ固定子46と隙間を隔てて対向して設けられたモータ可動子48を有しており、磁界を発生させるコイルにより構成されている。更に、レーザ加工機10は、スライダ42のX軸方向の位置を光学的に検出する光学式のX軸リニアエンコーダ(図示省略)を具備している。
【0026】
スライダ42には、加工領域PFにパレット22を介して載置された板材Wに向かって上方向からレーザ光を照射するレーザ加工ヘッド50が設けられている。また、レーザ加工ヘッド50は、レーザ光を発振するレーザ発振器52に光学的に接続されている。
【0027】
従って、X軸リニアエンコーダの検出値に基づいて、X軸リニアモータ44をフィードバック制御しながら、スライダ42のX軸方向の位置決めを行う。また、各Y軸リニアエンコーダ34の検出値に基づいて、各Y軸リニアモータ28をフィードバック制御しながら、門型フレーム26のY軸方向の位置決めを行う。そして、レーザ加工ヘッド50のX軸方向及びY軸方向の位置決めを行いながら、レーザ加工ヘッド50により板材Wに向かって上方向からレーザ光を照射してレーザ加工を行うことができる。
【0028】
前述のように、一方(左側)のリニアスケール36が端壁14に上向きに設けられており、一方のリニアスケール36が長時間に亘って粉塵環境下に置かれると、一方のリニアスケール36上に粉塵が堆積する傾向にある。そのため、門型フレーム26の一方の支柱部26aには、一方のリニアスケール36を清掃するための清掃ノズル54が設けられている。そして、清掃ノズル54及びそれに関連する具体的な構成は、次の通りである。
【0029】
図5及び
図6(a)(b)に示すように、門型フレーム26の一方の支柱部26aには、清掃ノズル54を構成するアウターノズル管56が設けられている。アウターノズル管56の断面形状は、矩形形状に形成されている。アウターノズル管56の先端部側の軸心56s(清掃ノズル54の先端部側の軸心54s)は、鉛直方向に対して傾斜している。また、アウターノズル管56の先端部側の下部には、先端部側の軸心56sに対して平行な方向から斜めに切欠かれた切欠部56nが形成されている。
【0030】
なお、アウターノズル管56の先端部側の軸心56sは、鉛直方向に対して傾斜しているが、その角度は傾斜しない鉛直方向から、鉛直方向と90°傾いたX軸方向と平行とする角度範囲で適宜選択可能である。また、アウターノズル管56の切欠部56nは、アウターノズル管56の傾き、端壁14(ベッド12)や一方のリニアスケール36との隙間を考慮して、適宜寸法に設定している。更に、アウターノズル管56の断面形状は円形状等の矩形形状以外の形状に形成してもよい。
【0031】
アウターノズル管56の先端部側の内部(内側)には、先端部側の軸心56sに直交する方向に先端板58が設けられている。先端板58の前側端面及び後側端面がアウターノズル管56の内壁面にそれぞれ接合されている。また、先端板58の前側下部及び後側下部には、切欠部58nがそれぞれ形成されている。先端板58の上側端面は、アウターノズル管56の内壁面に非接触になっている。先端板58の下側端面は、アウターノズル管56の切欠部56n側に位置し、かつ清掃ノズル54の先端側から見たときにアウターノズル管56の下側の内壁面に一致している。更に、先端板58の中央部には、後述するインナーノズル62を貫通させるための支持穴60が形成されている。
【0032】
アウターノズル管56の先端部側の内部(内側)には、インナーノズル管62が設けられており、インナーノズル管62の先端部側は、先端板58の支持穴60に支持された状態で固定されている。インナーノズル管62の基端部側は、アウターノズル管56の外側へ突出している。また、インナーノズル管62の先端部には、読取ヘッド38の近傍であって一方のリニアスケール36の表面に向かって圧縮空気CAを噴出するインナー噴出口64が形成されている。
【0033】
アウターノズル管56の先端部側の内壁面と先端板58の上側端面との間には、読取ヘッド38の近傍であって一方のリニアスケール36の表面の周辺に向かって圧縮空気CAを噴出する第1のアウター噴出口66A(66)が形成されている。また、アウターノズル管56の先端部側の内壁面と先端板58の前側端面及び後側端面との間には、読取ヘッド38の近傍であって一方のリニアスケール36の表面の周辺に向かって圧縮空気CAを噴出する第2のアウター噴出口66B(66)がそれぞれ形成されている。更に、アウターノズル管56の先端部側の内壁面と先端板58の下側端面との間には、鉛直下方(真下)の端壁14に向かって圧縮空気を噴出する第3のアウター噴出口66C(66)が形成されている。
【0034】
なお、アウターノズル管56の切欠部56nの先端部側の軸心56sに平行な部分を省略して、アウターノズル管56の先端部側の下部にスリット加工を施すことによって第3のアウター噴出口66Cを形成してもよい。アウター噴出口66は、先端板58の全周に亘って形成してもよい。
【0035】
これにより、インナー噴出口64からの圧縮空気CAによって一方のリニアスケール36上に堆積した粉塵を吹き飛ばす際に、複数のアウター噴出口66(66A,66B,66C)から一方のリニアスケール36の周囲に向かって圧縮空気CAを噴出する。よって、複数のアウター噴出口66(66A,66B,66C)から噴出された圧縮空気CAがインナー噴出口64からの圧縮空気CAの周囲を取り囲む層となり、インナー噴出口64からの圧縮空気CAによる一方のリニアスケール36の周辺の粉塵を含む空気SAの巻き込みを防止でき、一方のリニアスケール36の表面の汚れを防止できる。
【0036】
特に、第3のアウター噴出口66Cから鉛直下方に向かって噴出した圧縮空気CAは、
図6(a)の実線矢印のように一方のリニアスケール36側(右側)のみならず、その反対側(左側)にも分かれように流れができる。よって、
図6(a)の点線矢印で示す粉塵を含む空気SAが一方のリニアスケール36側に巻き込まれることを防止するのみならず、粉塵を一方のリニアスケール36から遠ざかる方向へ移動させる効果もあり、一方のリニアスケール36の表面の汚れを十分に防止できる。
【0037】
インナーノズル管62の基端部には、インナーノズル管62に圧縮空気CAを供給するための第1配管68の一端部が接続されている。第1配管68の他端部には、工場設備のエアコンプレッサ等の圧縮空気源(エア源)70に接続されている。また、第1配管68の途中には、インナーノズル管62に供給される圧縮空気CAの流速を調整する第1流速調整手段としての第1スピードコントローラ72が配設されている。第1スピードコントローラ72は、可変流量絞り弁74と、可変流量絞り弁74に並列に接続された逆止弁76とを有している。
【0038】
アウターノズル管56の基端部には、アウターノズル管56に圧縮空気CAを供給するための第2配管78の一端部が接続されている。第2配管78の他端部は、第1配管68の途中における圧縮空気原70と第1スピードコントローラ72との間に接続されている。また、第2配管78の途中には、アウターノズル管56に供給される圧縮空気CAの流速を調整する第2流速調整手段としての第2スピードコントローラ80が配設されている。第2スピードコントローラ80は、可変流量絞り弁82と、可変流量絞り弁82に並列に接続された逆止弁84とを有している。
【0039】
ここで、第1スピードコントローラ72及び第2スピードコントローラ80は、インナー噴出口64からの圧縮空気CAの流速がアウター噴出口66からの圧縮空気CAの流速よりも高くなるように適宜に調整されている。これにより、インナー噴出口64からの流速の速い圧縮空気CAで一方のリニアスケール36の表面上の粉塵を吹き飛ばし、アウターノズル噴出口66からの流速の遅い圧縮空気CAによりエアカーテン効果を生じさせ、一方のリニアスケール36の周辺の粉塵を含む空気SAの巻き込みが抑えられる。
【0040】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
図4、
図5、及び
図6(a)に示すように、レーザ加工機10の稼働中に、読取ヘッド38の近傍に設けたインナー噴出口64から一方のリニアスケール36の表面に向かって圧縮空気CAを噴出させる。同時に、読取ヘッド38の近傍に設けた複数のアウター噴出口66から一方のリニアスケール36の表面の周辺に向かって圧縮空気CAを噴出させる。これにより、一方のリニアスケール36が長時間に亘って粉塵環境下に置かれても、インナー噴出口64からの圧縮空気CAによって一方のリニアスケール36上に堆積した粉塵を吹き飛ばすことができる。また、複数のアウター噴出口66からの圧縮空気CAによって一方のリニアスケール36の周辺の粉塵を含む空気SAの巻き込みを抑えることができる。特に、第3のアウター噴出口66Cを含め複数のアウター噴出口66から圧縮空気CAがリニアスケール36の表面の周辺に向かって噴出されるため、エアカーテン効果を発揮させて、一方のリニアスケール36の周辺の粉塵を含む空気SAの巻き込みを十分に抑えることができる。
【0042】
従って、本発明の実施形態によれば、一方のリニアスケール36を端壁14(ベッド12)に上向きに設けた場合でも、Y軸リニアエンコーダ34によって門型フレーム26のY軸方向の位置を確実かつ正確に検出することができ、門型フレーム26の位置決めを安定的に行うことができる。その結果、本発明の実施形態によれば、板材Wに対して高精度なレーザ加工を安定的に行うことができる。
【0043】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、適宜の変更を行うことにより、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されるものでなく、レーザ加工機10だけでなく、本発明の技術的思想を適用したパンチプレス等の他の板金加工機にも及ぶものである。
【実施例】
【0044】
本発明の実施例について
図7(a)(b)及び
図8について説明する。
【0045】
(実施例1)
インナー噴出口及びアウター噴出口から圧縮空気を噴出させた場合(実施例の場合)において、清掃ノズルの周辺の空気の流線(流線分布)について流体解析を行い、その流体解析の結果をまとめると、
図7(a)に示すようになる。また、インナーノズル管のみを清掃ノズルとして用い、インナー噴出口から圧縮空気を噴出させた場合(比較例の場合)において、清掃ノズル(インナーノズル管)の周辺の空気の流線について流体解析を行い、その流体解析の結果をまとめると、
図7(b)に示すようになる。なお、圧縮空気の流線は、実線矢印で示し、粉塵を含む空気の流線は、破線矢印で示している。清掃ノズルの内部の空気の流線については省略してある。
【0046】
即ち、比較例の場合には、リニアスケールの周辺の粉塵を含む空気がインナー噴出口から圧縮空気に巻き込まれて、リニアスケール側に向かって流れることが確認できた。一方、実施例の場合には、リニアスケールの周辺の粉塵を含む空気のリニアスケール側への流れを抑えることが確認できた。これは、アウター噴出口からの圧縮空気によってリニアスケールの周辺の粉塵を含む空気の巻き込みを抑えたことによると考えられる。
【0047】
(実施例2)
実施例の場合及び比較例の場合において、レーザ加工中の粉塵環境を模擬した環境下で清掃試験を行った。そして、その清掃試験の結果をまとめると、
図8に示すようになる。なお、清掃試験においては、リニアスケール上に粉塵が堆積し易いようにするため、リニアスケールには上向きの粘着面を有する粘着テープを貼り付けた。
【0048】
即ち、比較例の場合には、リニアスケール上に粉塵が堆積するのに対して、実施例の場合には、リニアスケール上に粉塵が堆積しないことが確認できた。
【符号の説明】
【0049】
10 レーザ加工機
12 ベッド(支持体)
14 端壁
16 支持壁
22 パレット
24 Y軸ガイド部材
26 門型フレーム(移動体)
26a 支柱部
26b 梁部
28 Y軸リニアモータ(リニアモータ)
30 モータ固定子
32 モータ可動子
34 Y軸リニアエンコーダ
36 リニアスケール
38 読取ヘッド
40 X軸ガイド部材
42 スライダ
44 X軸リニアモータ
46 モータ固定子
48 モータ可動子
50 レーザ加工ヘッド
52 レーザ発振器
54 清掃ノズル
54s 清掃ノズルの先端部側の軸心
56 アウターノズル管
56s アウターノズル管の先端部側の軸心
56n 切欠部
58 先端板
58n 切欠部
60 支持穴
62 インナーノズル管
64 インナー噴出口
66 アウター噴出口
66A 第1のアウター噴出口
66B 第2のアウター噴出口
66C 第3のアウター噴出口
68 第1配管
70 圧縮空気源(エア源)
72 第1スピードコントローラ
74 可変流量絞り弁
76 逆止弁
78 第2配管
80 第2スピードコントローラ
82 可変流量絞り弁
84 逆止弁
CA 圧縮空気
SA 粉塵を含む空気
PF 加工領域
W 板材(板金)