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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20220128BHJP
   B01J 21/16 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20220128BHJP
   C04B 38/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B01J35/04 301D
B01J35/04 301A
B01J35/04 301J
B01J21/16 A ZAB
B01J32/00
C04B38/00 303Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018060205
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019171245
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】木下 尚志
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176944(JP,A)
【文献】特開2015-192988(JP,A)
【文献】特開2014-184371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、及び前記隔壁の外周を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム構造部を備え
記ハニカム構造部は、当該ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、外周セル構造、中央セル構造、及び前記外周セル構造と前記中央セル構造との境界に配設された境界壁、を有し、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、前記セルのうち、前記中央セル構造を構成する前記隔壁のみによって周囲の全てが区画されているセル、及び前記外周セル構造を構成する前記隔壁のみによって周囲の全てが区画されているセルを、それぞれ完全セルとし、
前記外周セル構造は、前記ハニカム構造部の外周部に形成された前記完全セルを繰り返し単位として含むものであり、
前記中央セル構造は、前記ハニカム構造部の中央部に形成された前記完全セルを繰り返し単位として含むものであり、
前記外周セル構造は、前記中央セル構造との境界部分に、当該外周セル構造の繰り返し単位となる前記完全セルの形状の一部を含む不完全セルを有し、且つ、
前記中央セル構造は、前記外周セル構造との境界部分に、当該中央セル構造の繰り返し単位となる前記完全セルの形状の一部の形状を含む不完全セルを有し、
前記中央セル構造の前記不完全セルの全個数のうちの5%以上、50%以下の前記不完全セルが、前記外周セル構造の前記不完全セルと互いに連通している、ハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、前記外周セル構造の繰り返し単位の形状と、前記中央セル構造の繰り返し単位の形状とが異なるものである、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、前記中央セル構造の前記不完全セルと、前記外周セル構造の前記不完全セルとが、連続する前記隔壁によって区画されている、請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記中央セル構造の前記不完全セルと前記外周セル構造の前記不完全セルとが連通する箇所において、1つの前記中央セル構造の前記不完全セルに対して、1つの前記外周セル構造の前記不完全セルが連通している、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記外周セル構造の前記不完全セルと互いに連通している前記中央セル構造の前記不完全セルが、前記境界部分の周方向において隣接して存在していない、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、前記中央セル構造における前記セルの繰り返し単位の配列方向が、前記外周セル構造における前記セルの繰り返し単位の配列方向に対して、10°以上、50°以下傾いている、請求項1~5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、2つ以上のセル構造が境界壁によって隔てられたハニカム構造体において、境界壁の近傍に発生する応力集中を緩和することができ、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンから排出される排ガス中に含まれるHC、CO、NOx等の有害物質の浄化処理のため、ハニカム構造体に触媒を担持したものが使用されている。また、ハニカム構造体は、多孔質の隔壁によって区画形成されたセルの開口部に目封止を施すことにより、排ガス浄化用のフィルタとしても使用されている。
【0003】
ハニカム構造体は、排ガスの流路となり複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状の構造体である。このようなハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する面において、複数のセルが、所定の周期で規則的に配列したセル構造を有している。従来は、1つのハニカム構造体において、上記面内のセル構造は、1種類であったが、近年、排ガス浄化効率の向上等を目的として、上記面内に、2種類以上のセル構造を有するハニカム構造体が提案されている。例えば、セルの延びる方向に直交する面の、中央部分と外周部分において、セル密度やセル形状を異ならせることにより、上記面内に、2種類以上のセル構造を有するハニカム構造体が提案されている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【0004】
例えば、特許文献1~3には、2種類以上のセル構造を有するハニカム構造体として、例えば、セルの延びる方向に直交する面内において、中央部分のセル密度が高く、外周部分のセル密度が低くなるように構成されたハニカム構造体等が開示されている。このように、従来、ハニカム構造体の中央部分と外周部分とで、セル密度が異なる2つ以上のセル構造を有するハニカム構造体が提案されている。
【0005】
また、2種類以上のセル構造を有するハニカム構造体として、セル密度の異なる複数のセル密度領域を有するハニカム構造体も提案されている(例えば、特許文献4を参照)。特許文献4に記載されたハニカム構造体は、隣り合うセル密度領域同士の間に、両者を隔てる円筒状の境界壁が設けられている。そして、特許文献4に記載されたハニカム構造体は、境界壁に接する境界セルの内接円の直径が0.5mm以上であることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-177794号公報
【文献】特開2008-018370号公報
【文献】特開2000-097019号公報
【文献】特開2015-192988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に記載されたハニカム構造体のように、異なるセル構造の境界に、円筒状の境界壁が配設されたハニカム構造体は、セル構造が切り替わる境界壁付近に応力集中が起きやすく、耐熱衝撃性が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、2つ以上のセル構造が境界壁によって隔てられたハニカム構造体において、境界壁の近傍に発生する応力集中を緩和することができ、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示すハニカム構造体が提供される。
【0010】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、及び前記隔壁の外周を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム構造部を備え
記ハニカム構造部は、当該ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、外周セル構造、中央セル構造、及び前記外周セル構造と前記中央セル構造との境界に配設された境界壁、を有し、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、前記セルのうち、前記中央セル構造を構成する前記隔壁のみによって周囲の全てが区画されているセル、及び前記外周セル構造を構成する前記隔壁のみによって周囲の全てが区画されているセルを、それぞれ完全セルとし、
前記外周セル構造は、前記ハニカム構造部の外周部に形成された前記完全セルを繰り返し単位として含むものであり、
前記中央セル構造は、前記ハニカム構造部の中央部に形成された前記完全セルを繰り返し単位として含むものであり、
前記外周セル構造は、前記中央セル構造との境界部分に、当該外周セル構造の繰り返し単位となる前記完全セルの形状の一部を含む不完全セルを有し、且つ、
前記中央セル構造は、前記外周セル構造との境界部分に、当該中央セル構造の繰り返し単位となる前記完全セルの形状の一部の形状を含む不完全セルを有し、
前記中央セル構造の前記不完全セルの全個数のうちの5%以上、50%以下の前記不完全セルが、前記外周セル構造の前記不完全セルと互いに連通している、ハニカム構造体。
【0011】
[2] 前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、前記外周セル構造の繰り返し単位の形状と、前記中央セル構造の繰り返し単位の形状とが異なるものである、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[3] 前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、前記中央セル構造の前記不完全セルと、前記外周セル構造の前記不完全セルとが、連続する前記隔壁によって区画されている、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[4] 前記中央セル構造の前記不完全セルと前記外周セル構造の前記不完全セルとが連通する箇所において、1つの前記中央セル構造の前記不完全セルに対して、1つの前記外周セル構造の前記不完全セルが連通している、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0014】
[5]前記外周セル構造の前記不完全セルと互いに連通している前記中央セル構造の前記不完全セルが、前記境界部分の周方向において隣接して存在していない、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
[6] 前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する面において、前記中央セル構造における前記セルの繰り返し単位の配列方向が、前記外周セル構造における前記セルの繰り返し単位の配列方向に対して、10°以上、50°以下傾いている、前記[1]~[5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハニカム構造体は、2つ以上のセル構造が境界壁によって隔てられたハニカム構造体において、境界壁の近傍に発生する応力集中を緩和することができ、耐熱衝撃性に優れるという効果を奏するものである。したがって、本発明のハニカム構造体は、応力発生時における、境界壁及びその近傍での破損を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体の流入端面を模式的に示す平面図である。
図3図2のX-X’断面を模式的に示す、断面図である。
図4図2に示すハニカム構造体の流入端面の一部を模式的に示す拡大平面図である。
図5図4に示す拡大平面図を説明するための模式図である。
図6】従来のハニカム構造体の流入端面の一部を模式的に示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。
【0019】
(1)ハニカム構造体:
図1図5に示すように、本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、柱状のハニカム構造部4を備えたハニカム構造体100である。ハニカム構造部4は、多孔質の隔壁1、及びこの隔壁1の外周を囲繞するように配設された外周壁3を有するものである。ハニカム構造部4の隔壁1は、流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成するものである。
【0020】
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカム構造体の流入端面を模式的に示す平面図である。図3は、図2のX-X’断面を模式的に示す、断面図である。図4は、図2に示すハニカム構造体の流入端面の一部を模式的に示す拡大平面図である。図5は、図4に示す拡大平面図を説明するための模式図である。
【0021】
本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4が、以下のように構成されている点に特徴を有する。ハニカム構造部4は、中央セル構造15と、外周セル構造16と、外周セル構造16と中央セル構造15との境界部分に配設された境界壁8と、を有するものである。ここで、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に垂直な断面において、複数のセル2のうち、隔壁1によって周囲の全てが区画されているセルを完全セル2xとする。そして、この完全セルは、上述した中央セル構造15及び外周セル構造16におけるそれぞれの繰り返し単位(別言すれば、基本単位)となっている。
【0022】
外周セル構造16とは、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する面において、ハニカム構造部4の外周部に形成された完全セル2xを繰り返し単位として含むセル構造のことである。中央セル構造15とは、上記面において、ハニカム構造部4の中央部に形成された完全セル2xを繰り返し単位として含むセル構造のことである。中央セル構造15と外周セル構造16とは、後述する「互いに連通する不完全セル2y」以外の部分において、境界壁8によって区画されている。
【0023】
外周セル構造16は、中央セル構造15との境界部分に、外周セル構造16の繰り返し単位となる完全セル2xの形状の一部を含む不完全セル2yを含む。また、中央セル構造15は、外周セル構造16との境界部分に、中央セル構造15の繰り返し単位となる完全セル2xの形状の一部の形状を含む不完全セル2yを含む。そして、本実施形態のハニカム構造体100においては、中央セル構造15の不完全セル2yの全個数のうちの5%以上、50%以下の不完全セル2yが、外周セル構造16の不完全セル2yと互いに連通していることを特徴とする。以下、外周セル構造16と中央セル構造15との境界部分に存在する不完全セル2yについて、中央セル構造15の不完全セル2yを「中央側不完全セル2y」といい、外周セル構造16の不完全セル2yを「外周側不完全セル2y」ということがある。
【0024】
本実施形態のハニカム構造体100は、2つ以上のセル構造が境界壁8によって隔てられたハニカム構造体100において、境界壁8の近傍に発生する応力集中を緩和することができ、耐熱衝撃性に優れるという効果を奏するものである。即ち、上述したように、外周側不完全セル2yと連通している中央側不完全セル2yの個数の比率を、5%以上、50%以下とすることで、ハニカム構造体100に熱応力が生じた際に、境界壁8の近傍に発生する応力集中を緩和することができる。したがって、本実施形態のハニカム構造体100は、熱応力発生時における、境界壁8及びその周辺での破損を有効に防止することができる。
【0025】
例えば、図6に示すように、外周セル構造216と中央セル構造215との境界に境界壁208を備えたハニカム構造体200においては、通常、全ての不完全セル202yが、境界壁208によって仕切られている。このように構成された従来のハニカム構造体200は、熱応力発生時における最大応力発生箇所が、ハニカム構造部204の境界壁208及びその近傍となる。このため、従来のハニカム構造体200は、発生した熱応力によって破損等を生じやすいものとなっていた。ここで、図6は、従来のハニカム構造体の流入端面の一部を模式的に示す拡大平面図である。図6において、符号201は、隔壁を示し、符号202は、セルを示す。また、符号202aは、中央セル構造215のセルを示し、符号202bは、外周セル構造のセルを示し、符号202xは、完全セルを示す。
【0026】
本実施形態のハニカム構造体100は、従来のハニカム構造体200(図6参照)と比較した場合、図5に示すように、境界壁8の一部が、取り除かれた構造であるということができる。即ち、中央側不完全セル2yと外周側不完全セル2yと連通している部分には、外周セル構造16と中央セル構造15とを仕切る境界壁8が存在しておらず、互いの不完全セル2yが連通した状態となっている点に、本発明は特徴を有する。ここで、図5において、符号18の破線で示される範囲が、従来のハニカム構造体において境界壁8が存在していた箇所である。なお、本実施形態のハニカム構造体は、外周側不完全セル2yと中央側不完全セル2yとが境界壁8によって仕切られている中央側不完全セル2yの個数の比率が、50%を超え、95%未満であると言い換えることもできる。
【0027】
外周側不完全セル2yと連通している中央側不完全セル2yの個数の比率が5%未満であると、境界壁8の近傍に発生する応力集中を緩和する効果が十分に発現しない。一方で、外周側不完全セル2yと連通している中央側不完全セル2yの個数の比率が50%を超えると、ハニカム構造体100の機械的強度が低下してしまう。以下、外周側不完全セル2yと連通している中央側不完全セル2yの個数の比率を、単に、「中央側不完全セル2yの連通個数比率」ということがある。
【0028】
本実施形態のハニカム構造体100においては、中央側不完全セル2yの連通個数比率が、5%以上、49%以下であることが好ましく、10以上、45%以下であることが特に好ましい。中央側不完全セル2yの全個数、及び外周側不完全セル2yと連通している中央側不完全セル2yの個数については、ハニカム構造体100の端面又はセル2の延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡によって観察することによって測定することができる。
【0029】
本発明において、外周セル構造16は、ハニカム構造部4の外周部に形成された完全セルであって、特に、最外周に形成された完全セル2xを繰り返し単位として含むセル構造となっている。一方、中央セル構造15は、ハニカム構造部4の中央部に形成された完全セル2xであって、特に、セル2の延びる方向に直交する面の重心に存在する完全セル2xを繰り返し単位として含むセル構造となっている。
【0030】
本発明において、「セル構造」とは、セル2の延びる方向に直交する面において、隔壁1によって区画されたセル2の1個、又は複数個のセル2の組み合わが、1つの繰り返し単位となり、その繰り返し単位の集合によって形成されるセル構造のことをいう。例えば、同一セル形状のセルが、上記面において規則的に配列している場合、同一セル形状のセルの存在する範囲が、1つのセル構造となる。また、異なるセル形状のセルであっても、複数個のセルの組み合わせが1つの繰り返し単位となる場合には、その繰り返し単位が存在する範囲が、1つのセル構造となる。
【0031】
本発明において、「中央セル構造15」は、1つ以上のセル構造によって構成されている。したがって、「中央セル構造15」は、外周セル構造16よりも内側に、1つのセル構造のみが存在する場合には、その1つのセル構造が中央セル構造15となる。また、外周セル構造16よりも内側に、2つ以上のセル構造が存在する場合には、2つ以上のセル構造のそれぞれが中央セル構造15となる。そして、中央セル構造15と外周セル構造16との境界部分の一部には、中央セル構造15と外周セル構造16とを仕切るようにして境界壁8が配設されている。なお、図示は省略するが、本実施形態のハニカム構造体100においては、中央セル構造15が2つ以上のセル構造を有する場合には、それぞれのセル構造を仕切るように、第二の境界壁及び第三の境界壁などを更に有していてもよい。同様に、外周セル構造16が、1つ以上のセル構造によって構成されていてもよく、さらに、それぞれのセル構造を仕切るように、第二の境界壁及び第三の境界壁などを更に有していてもよい。
【0032】
本実施形態のハニカム構造体は、ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する面において、外周セル構造の繰り返し単位の形状と、中央セル構造の繰り返し単位の形状とが異なるものであることが好ましい。即ち、本実施形態のハニカム構造体は、外周セル構造と中央セル構造とが、異なるセル構造であることが好ましい。例えば、図1図5に示すハニカム構造体100においては、中央セル構造15と外周セル構造16とが異なるセル構造であり、ハニカム構造部4が2種類のセル構造によって構成されている。
【0033】
本発明において、2つのセル構造が「異なる構造」であるとは、2つのセル構造を比較した場合に、隔壁厚さ、セル密度、セル形状のいずれか1つが異なることを意味する。ここで、「隔壁厚さが異なる」とは、2つのセル構造の隔壁厚さを比較した場合に、25μm以上の差を有することをいう。また、「セル密度が異なる」とは、2つのセル構造のセル密度を比較した場合に、7個/cm以上の差を有することをいう。
【0034】
ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する面において、中央セル構造の不完全セルと、外周セル構造の不完全セルとが、連続する隔壁によって区画されていることが好ましい。「連続する隔壁」とは、ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する面において、セルの外周形状に一致するように配置された隔壁のことをいう。例えば、図5の符号19で示される境界壁8を取り除くようにして、中央側不完全セル2yと外周側不完全セル2yとを連通させた場合には、1つの中央側不完全セル2yに対して、隣接する2つの外周側不完全セル2yが連通した状態となる。このような場合には、隣接する2つの外周側不完全セル2yを区画する隔壁1が、連通させた3つの不完全セル2y内に突出した状態で残ってしまうこととなる。上記したような、不完全セル2y内に突出した状態の隔壁を「不連続な隔壁」という。不完全セル2yを区画する隔壁1が、上記のような不連続な隔壁1を含むものであると、ハニカム構造体100の機械的強度が低下することがある。
【0035】
また、中央セル構造15の中央側不完全セル2yと、外周セル構造16の外周側不完全セル2yとが連通する箇所において、1つの中央側不完全セル2yに対して、1つの外周側不完全セル2yが連通していることが好ましい。例えば、1つの中央側不完全セル2yに対して、2つ以上の外周側不完全セル2yが連通している場合には、不完全セル2yを区画する隔壁1が、上記のような不連続な隔壁1を含むものとなりやすい。1つの中央側不完全セル2yに対して、1つの外周側不完全セル2yが連通するように構成することにより、ハニカム構造体100の機械的強度の低下を有効に抑制することができる。
【0036】
また、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する面において、外周側不完全セル2yと連通している中央側不完全セル2yが、境界部分の周方向において隣接して存在していないことが好ましい。このように構成することによって、互いに連通している不完全セル2yを区画する隔壁1が、不連続な隔壁1を有しにくくなり、ハニカム構造体100の機械的強度の低下を有効に抑制することができる。
【0037】
また、1つの中央側不完全セル2yに対して、1つの外周側不完全セル2yが連通するように構成されている場合には、中央側不完全セル2yと外周側不完全セル2yとの連通部分に境界壁8が存在しないことが好ましい。即ち、中央側不完全セル2yと外周側不完全セル2yとが互いに連通している連通部分は、図5における符号18の破線で示されるような、従来のハニカム構造体において境界壁8が存在していた箇所の境界壁8が、全て取り除かれていることが好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体100の機械的強度の低下を有効に抑制することができる。
【0038】
セルの延びる方向に直交する面における、それぞれのセルの形状については特に制限はない。例えば、中央セル構造及び外周セル構造を構成するセルの形状としては、三角形、四角形、六角形、八角形などの多角形を挙げることができる。また、中央セル構造及び外周セル構造を構成するセルは、それぞれのセル構造内において、一のセルと、他のセルとで、その形状が異なっていてもよい。
【0039】
本実施形態のハニカム構造体においては、中央セル構造のセル密度が、外周セル構造のセル密度よりも大であることが好ましい。このように構成されたハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する面において、排ガスを外周のセルに流入させやすくすることができ、ハニカム構造体と排ガスを効率よく接触させ浄化できる点で好ましい。
【0040】
図1図5に示すハニカム構造体100においては、中央セル構造15におけるセル2aの繰り返し単位の配列方向が、外周セル構造16におけるセル2bの繰り返し単位の配列方向に対して傾いた状態となっている。すなわち、中央セル構造15におけるセル2aの繰り返し単位は、図2の紙面の横方向に配列しており、その一方で、外周セル構造16におけるセル2bの繰り返し単位は、図2の紙面の横方向に対して斜めに傾いた方向に配列している。このように構成することによって、特定の箇所応力集中が発生することを抑制し、強度確保に効果を奏するものとなる。ただし、本実施形態のハニカム構造体100においては、中央セル構造15におけるセル2aの繰り返し単位の配列方向と、外周セル構造16におけるセル2bの繰り返し単位の配列方向と、が平行なものであってもよい。
【0041】
中央セル構造15におけるセル2aの繰り返し単位の配列方向と、外周セル構造16におけるセル2bの繰り返し単位の配列方向とのなす角の大きさについては特に制限はない。ただし、中央セル構造15におけるセル2aの繰り返し単位の配列方向が、外周セル構造16におけるセル2bの繰り返し単位の配列方向に対して傾いている場合には、10°以上、50°未満傾いていることが好ましい。上記のような角度範囲で、セル2a,2bの繰り返し単位の配列方向を傾かせることにより、上述した効果を有効に発現させることができる。
【0042】
中央セル構造におけるセル密度は、40~155個/cmであることが好ましく、60~140個/cmであることが更に好ましく、75~110個/cmであることが特に好ましい。中央セル構造におけるセル密度が40個/cm未満であると、ハニカム構造体の強度を確保できないことや、排ガスを外周に流入させることが難しいことがある。また、中央セル構造におけるセル密度が155個/cmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセルの目詰まりが発生することがある。
【0043】
外周セル構造におけるセル密度は、15~95個/cmであることが好ましく、30~80個/cmであることが更に好ましく、40~65個/cmであることが特に好ましい。外周セル構造におけるセル密度が15個/cm未満であると、ハニカム構造体の強度が不足することがある。また、外周セル構造におけるセル密度が95個/cmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセルの目詰まりが発生することがある。
【0044】
中央セル構造における隔壁の厚さは、0.05~0.21mmであることが好ましく、0.05~0.16mmであることが更に好ましく、0.05~0.12mmであることが特に好ましい。中央セル構造における隔壁の厚さが薄すぎると、ハニカム構造体の強度が確保できないことや、排ガスを外周に流入させることが難しくなる点で好ましくない。中央セル構造における隔壁の厚さが厚すぎると、ハニカム構造体の圧力損失が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセルの目詰まりが発生する点で好ましくない。
【0045】
外周セル構造における隔壁の厚さは、0.07~0.23mmであることが好ましく、0.07~0.18mmであることが更に好ましく、0.07~0.15mmであることが特に好ましい。外周セル構造における隔壁の厚さが薄すぎると、ハニカム構造体の強度が確保できないことや、排ガスを外周に流入させることが難しくなる点で好ましくない。外周セル構造における隔壁の厚さが厚すぎると、ハニカム構造体の圧力損失が増大することや、触媒を担持した場合に、担持した触媒によってセルの目詰まりが発生する点で好ましくない。
【0046】
外周壁の厚さは、0.2~1.0mmであることが好ましく、0.3~0.8mmであることが更に好ましく、0.4~0.6mmであることが特に好ましい。外周壁の厚さが薄すぎると、ハニカム構造体全体の機械的強度が低下してしまう点で好ましくない。外周壁の厚さが厚すぎると、ハニカム構造体のセルの開口面積が減少し、圧力損失が増大することがある点で好ましくない。
【0047】
境界壁の厚さは、0.01~0.3mmであることが好ましく、0.05~0.25mmであることが更に好ましく、0.1~0.2mmであることが特に好ましい。境界壁の厚さが薄すぎると、ハニカム構造体全体の機械的強度が低下してしまう点で好ましくない。境界壁の厚さが厚すぎると、ハニカム構造体のセルの開口面積が減少し、圧力損失が増大することがある点で好ましくない。
【0048】
ハニカム構造部の隔壁の気孔率が、10~55%であることが好ましく、20~45%であることが更に好ましく、25~35%であることが特に好ましい。隔壁の気孔率が10%未満であると、ハニカム構造体をフィルタとして使用した際に、圧力損失が増大することがある。隔壁の気孔率が55%を超えると、ハニカム構造体の強度が不十分となり、排ガス浄化装置に用いられる缶体内にハニカム構造体を収納する際に、ハニカム構造体を十分な把持力で保持することが困難となる。隔壁の気孔率は、水銀ポロシメータ(Mercury porosimeter)によって計測された値とする。水銀ポロシメータとしては、例えば、Micromeritics社製のAutopore 9500(商品名)を挙げることができる。
【0049】
隔壁の材料が、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、主成分は酸化物又は非酸化物の各種セラミックスや金属等であることが好ましい。具体的には、セラミックスとしては、例えば、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素、窒化珪素、及びチタン酸アルミニウムから構成される材料群より選択された少なくとも1種を含む材料からなることが好ましい。金属としては、Fe-Cr-Al系金属及び金属珪素等が考えられる。これらの材料の中から選ばれた1種又は2種以上を主成分とすることが好ましい。高強度、高耐熱性等の観点から、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、コージェライト、炭化珪素、及び窒化珪素から構成される材料群より選ばれた1種又は2種以上を主成分とすることが特に好ましい。また、高熱伝導率や高耐熱性等の観点からは、炭化珪素又は珪素-炭化珪素複合材料が特に適している。ここで、「主成分」とは、その成分中に、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上存在する成分のことを意味する。
【0050】
境界壁の材料は、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、主成分は酸化物又は非酸化物の各種セラミックスや金属等であることが好ましい。なお、境界壁の材料は、隔壁の材料と同じものであることが好ましい。
【0051】
外周壁の材料は、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、主成分は酸化物又は非酸化物の各種セラミックスや金属等であることが好ましい。なお、外周壁の材料は、隔壁の材料と同じものであることが好ましい。本実施形態のハニカム構造体は、隔壁、境界壁、及び外周壁が、一度の押出成形によって形成された一体成形品であることが特に好ましい。
【0052】
ハニカム構造体の全体形状については特に制限はない。本実施形態のハニカム構造体の全体形状は、流入端面及び流出端面の形状が、円形、又は楕円形であることが好ましく、特に、円形であることが好ましい。また、ハニカム構造体の大きさは、特に限定されないが、流入端面から流出端面までの長さが、50~254mmであることが好ましい。また、ハニカム構造体の全体形状が円柱状の場合、それぞれの端面の直径が、50~254mmであることが好ましい。
【0053】
本実施形態のハニカム構造体は、内燃機関の排ガス浄化用の部材として好適に用いることができる。例えば、排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として好適に利用することができる。本実施形態のハニカム構造体は、ハニカム構造部の隔壁の表面及び隔壁の細孔のうちの少なくとも一方に、排ガス浄化用の触媒が担持されたものであってもよい。
【0054】
また、本実施形態のハニカム構造体は、隔壁によって区画形成されたセルのいずれか一方の端部に配設された目封止部を、更に備えたものであってもよい。すなわち、目封止部は、セルの流入端面側又は流出端面側の開口部に配設され、セルのいずれか一方の端部を封止するものであり、このようなハニカム構造体は、排ガス中の粒子状物質を除去するフィルタとして利用することができる。
【0055】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体を製造する方法について説明する。
【0056】
まず、ハニカム構造部を作製するための可塑性の坏土を作製する。ハニカム構造部を作製するための坏土は、原料粉末として、前述の隔壁の好適な材料群の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって作製することができる。
【0057】
次に、作製した坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及び最外周に配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を得る。押出成形においては、押出成形用の口金として、坏土の押出面に、成形するハニカム成形体の反転形状となるスリットが形成されたものを用いることができる。特に、本発明のハニカム構造体を製造する際には、押出成形用の口金として、押出成形するハニカム成形体の中央部分と外周部分との境界部分で、互いの不完全セルが連通するようなスリットが形成されたものを用いることが好ましい。なお、上記した口金としては、中央セル構造の不完全セルの全個数のうちの5%以上、50%以下の不完全セルが、外周セル構造の不完全セルと互いに連通するような口金とする。
【0058】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥してもよい。また、ハニカム成形体の製造に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を配設してもよい。
【0059】
次に、得られたハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム構造体を得る。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。なお、本発明のハニカム構造体を製造する方法は、これまでに説明した方法に限定されることはない。
【実施例
【0060】
(実施例1)
コージェライト化原料100質量部に、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径1~10μmのコークスを使用し、有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0061】
次に、ハニカム成形体作製用の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が円柱形のハニカム成形体を得た。押出成形においては、押出成形用の口金として、押出成形するハニカム成形体の中央部分と外周部分とで、セル構造が異なるようにスリットが形成されたものを用いた。また、この口金は、セル構造が異なる中央部分と外周部分との境界の一部に、境界壁を形成するためのスリットが形成されたものであった。そして、実施例1では、中央セル構造の不完全セルのうちの個の不完全セルに対しては、上記口金において境界壁を形成するためのスリットを形成しないものとした。したがって、実施例1にて押出成形されたハニカム成形体は、上述した中央セル構造の個の中央側不完全セルについては、外周セル構造の外周側不完全セルと互いに連通したものとなっていた。中央側不完全セルの全個数は、176個であり、中央側不完全セルの連通個数比率は、%となる。なお、外周側不完全セルと互いに連通する個の中央側不完全セルは、境界部分の周方向において、ランダムとなるような間隔で配置させた。
【0062】
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0063】
次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、実施例1のハニカム構造体を製造した。実施例1のハニカム構造体は、端面の直径が103mmの円柱状であった。実施例1のハニカム構造体のセルの延びる方向の長さは、84mmであった。
【0064】
また、実施例1のハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する面において、中央セル構造と外周セル構造とが、異なるセル構造であった。中央セル構造は、隔壁の厚さが0.102mmであり、セル密度が62.0個/cmであり、セルの形状が四角形であった。また、実施例1のハニカム構造体における、外周セル構造は、隔壁の厚さが0.076mmであり、セル密度が46.5個/cmであり、セルの形状が四角形であった。
【0065】
また、実施例1のハニカム構造体の中央セル構造は、ハニカム構造部の端面において、円形状であり、その直径が73.4mmであり、中央セル構造と外周セル構造との境界部分の一部には、厚さが0.14mmの境界壁を有するものであった。そして、中央セル構造の7個の不完全セルは、外周セル構造の不完全セルと互いに連通したものであった。表1の「中央側不完全セル」における「連通している個数(個)」の欄に、中央セル構造の不完全セルのうちの、外周セル構造の不完全セルと互いに連通している不完全セルの個数を示す。また、表1の「中央側不完全セル」における「連通個数比率(%)」の欄に、中央セル構造の不完全セルの全個数に対する、「外周セル構造の不完全セルと互いに連通している不完全セル」の個数の百分率を示す。
【0066】
実施例1のハニカム構造体は、外周セル構造におけるセルの繰り返し単位の配列方向と、中央セル構造におけるセルの繰り返し単位の配列方向とのなす角が、45°であった。表1の「中央セル構造における配列方向の傾き」の欄に、「外周セル構造におけるセルの繰り返し単位の配列方向と、中央セル構造におけるセルの繰り返し単位の配列方向とのなす角」の値を示す。
【0067】
中央セル構造の不完全セルと、外周セル構造の不完全セルとが、連続する隔壁によって区画されている場合には、「連続する隔壁の有無」の欄に「有」と記す。上記した連続する隔壁によって区画されていない場合には、「連続する隔壁の有無」の欄に「無」と記す。
【0068】
また、1つの中央セル構造の不完全セルに対して、1つの外周セル構造の不完全セルが連通している場合に、表1の「内外の不完全セルの連通の有無」の欄に「有」と記す。1つの中央セル構造の不完全セルに対して、1つの外周セル構造の不完全セルが連通している箇所が無い場合に、表1の「内外の不完全セルの連通の有無」の欄に「無」と記す。即ち、上述した欄に「無」と記す場合は、1つの中央セル構造の不完全セルに対して、2つ以上の外周セル構造の不完全セルが連通している、又は2つ以上の中央セル構造の不完全セルに対して、1つ以上の外周セル構造の不完全セルが連通している場合である。
【0069】
また、外周セル構造の不完全セルと互いに連通している中央セル構造の不完全セルが、境界部分の周方向において隣接して存在する場合、表1の「方向で隣り合う不完全セルの有無」の欄に「有」と記す。上記において隣接して存在しない場合に、表1の「方向で隣り合う不完全セルの有無」の欄に「無」と記す。
【0070】
実施例1のハニカム構造体は、隔壁の気孔率が35%であった。隔壁の気孔率の測定は、Micromeritics社製のAutopore 9500(商品名)によって測定した値である。
【0071】
また、実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、「耐熱衝撃性」、「触媒コート後の圧損上昇率」、及び「機械的強度」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
[耐熱衝撃性]
耐熱衝撃性は、以下に示すような電気炉スポーリング性(ESP;Electrical Spalling)試験によって評価した。具体的には、まず、炉内温度を400℃に保った電気炉に、室温のハニカム構造体を入れて20分間保持する。その後、電気炉から、耐火レンガ上へハニカム構造体を取り出し。15分間以上自然放置して、ハニカム構造体を室温まで冷却する。その後、ハニカム構造体の外観を観察しつつ、金属棒でハニカム構造体の外周部を軽く叩くことにより、ハニカム構造体の状態を確認する。ハニカム構造体にクラックが観察されず、かつ打音が鈍い音でなく、金属音であれば、その温度での評価を合格する。そして、電気炉内の温度を50℃ずつ順次上げて、上述した評価を繰り返し行い、炉内温度が650℃以上になっても、外観及び打音に異常が確認されなかったものを合格とする。そして、外観及び打音に異常が確認されない限界の温度を、耐熱衝撃性の評価における結果とする。
【0073】
[触媒コート後の圧損上昇率]
触媒コート後の圧損上昇率の評価は、以下の方法で、圧損上昇率を求めることによって行った。まず、触媒コートを行っていないハニカム構造体の圧損を、大型風洞試験機を用いて測定した。このとき、ガス温度は25℃とし、ガス流量は10Nm/分とした。次に、圧損を測定したハニカム構造体に対して、触媒(三元触媒)を200g/L担持させた。ハニカム構造体に触媒を担持させることを「触媒コート」という。触媒コートを行ったハニカム構造体について、触媒コートを行っていないハニカム構造体と同様の条件で圧損を測定した。触媒コートを行っていないハニカム構造体の圧損を「P」とし、触媒コートを行ったハニカム構造体の圧損を「P」として、下記式(1)により、触媒コート後の圧損上昇率を求め、触媒コート後の圧損上昇率が41%以下を合格とした。
式(1):触媒コート後の圧損上昇率=(P-P)/P×100%
【0074】
[機械的強度]
機械的強度の評価は、以下に示すアイソスタティック(Isostatic)強度を測定することによって行った。アイソスタティック(Isostatic)強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505-87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。すなわち、アイソスタティック破壊強度試験は、缶体に、ハニカム構造体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。このアイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、ハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。本実施例における機械的強度の評価においては、アイソスタティック強度が1.5MPa以上である場合を合格とする。
【0075】
【表1】
【0076】
(実施例2~11、比較例1~4)
中央側不完全セルの構成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。作製したハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「耐熱衝撃性」、「触媒コート後の圧損上昇率」、及び「機械的強度」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
(結果)
実施例1~11のハニカム構造体は、耐熱衝撃性の評価において、合格基準の650℃を上回るものであった。一方で、中央側不完全セルの連通個数比率(%)が0%及び4%の比較例1及び2については、異常が確認されない限界の温度が600℃であり、不合格となった。耐熱衝撃性の評価では、中央側不完全セルの連通個数比率(%)が大きくなるにしたがって、異常が確認されない限界の温度が上昇する傾向が確認された。
【0078】
また、実施例1~11のハニカム構造体は、触媒コート後の圧損上昇率の評価についても、合格基準の41%以下を満たすものであった。一方で、中央側不完全セルの連通個数比率(%)が0%及び4%の比較例1及び2については、触媒コート後の圧損上昇率が共に43%であり、合格基準を満たさないものであった。
【0079】
更に、実施例1~11のハニカム構造体は、機械的強度の評価についても、アイソスタティック強度が、合格基準の1.5MPa以上のものであった。一方で、中央側不完全セルの連通個数比率(%)が51%及び80%の比較例3及び4については、アイソスタティック強度が、合格基準の1.5MPaを下回るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のハニカム構造体は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスを浄化するための触媒を担持する触媒担体や、排ガスを浄化するためのフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:隔壁、2:セル、2a:セル(中央セル構造のセル)、2b:セル(外周セル構造のセル)、2x:完全セル、2y:不完全セル(中央側不完全セル、外周側不完全セル)、3:外周壁、4:ハニカム構造部、8:境界壁、11:流入端面、12:流出端面、15:中央セル構造、16:外周セル構造、100,200:ハニカム構造体、201:隔壁、202:セル、202a:セル(中央セル構造のセル)、202b:セル(外周セル構造のセル)、202x:完全セル、202y:不完全セル、203:外周壁、204:ハニカム構造部、208:境界壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6