(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】直接接触式復水器及び発電プラント
(51)【国際特許分類】
F28B 3/06 20060101AFI20220113BHJP
F28B 9/10 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F28B3/06
F28B9/10
(21)【出願番号】P 2018152533
(22)【出願日】2018-08-13
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】津田 将太
(72)【発明者】
【氏名】古屋 修
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035999(JP,A)
【文献】特開平11-063857(JP,A)
【文献】実開昭63-142575(JP,U)
【文献】特公昭46-008732(JP,B1)
【文献】実開昭58-169367(JP,U)
【文献】特開2017-067377(JP,A)
【文献】米国特許第03834133(US,A)
【文献】特開2012-193883(JP,A)
【文献】特開2007-163136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28B 3/06
F28B 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンからのタービン排気が流入するタービン排気ダクトと、
前記タービン排気ダクトに接続され、前記タービン排気ダクトからのタービン排気を側方又は上方から受け入れる本体胴容器と、
前記本体胴容器の内部に冷却水を供給する冷却水供給管と、
前記本体胴容器が側方からタービン排気を受け入れる場合には、前記本体胴容器における前記タービン排気ダクト側とは反対の側に設けられて水平方向に開口し、前記本体胴容器が上方からタービン排気を受け入れる場合には、前記タービン排気ダクトから水平方向に離間した位置で前記本体胴容器に設けられて水平方向に開口するガス入口部と、
前記ガス入口部を介して前記本体胴容器に接続されるガス冷却室と、
前記ガス入口部に対向するように前記本体胴容器の内部に配置されるバッフル板と、を備え、
前記バッフル板の上部と、当該バッフル板の上部と上下方向に対向する前記本体胴容器の内壁面との間に、タービン排気が通過する通流開口が形成される、直接接触式復水器。
【請求項2】
前記バッフル板と前記本体胴容器の側壁部とが、前記ガス入口部側に形成する空間の水平面における断面積をS2、前記ガス入口部においてタービン排気が通過する部分の鉛直面における断面積をS3、前記ガス冷却室の水平面における断面積をS4としたとき、S2≧S3、及び/又は、S2≧S4の関係が成り立つ、請求項1に記載の直接接触式復水器。
【請求項3】
前記バッフル板の上部と、当該バッフル板の上部と上下方向に対向する前記本体胴容器の内壁面との間の前記通流開口の鉛直面における断面積をS1、前記バッフル板と前記本体胴容器の側壁部とが、前記ガス入口部側に形成する空間の水平面における断面積をS2としたとき、S1≧S2の関係が成り立つ、請求項1又は2に記載の直接接触式復水器。
【請求項4】
前記バッフル板に水平方向に貫通する空隙部が設けられ、
前記バッフル板の上部と、当該バッフル板の上部と上下方向に対向する前記本体胴容器の内壁面との間の前記通流開口の鉛直面における断面積をS1、前記バッフル板と前記本体胴容器の側壁部とが、前記ガス入口部側に形成する空間の水平面における断面積をS2、前記空隙部の鉛直面における断面積をS5としたとき、S1+S5≧S2の関係が成り立つ、請求項1又は2に記載の直接接触式復水器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の直接接触式復水器を備える、発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、直接接触式復水器及び発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
地熱エネルギーは環境に与える影響の少ない再生可能エネルギーの一つとして注目されており、近時、地熱エネルギーを利用した地熱発電プラントが普及しつつある。
【0003】
地熱発電プラントでは、タービンの排気圧力を負圧(真空)に保つべくタービン排気中の高温の水蒸気と低温の冷却水とを復水器により熱交換させて、水蒸気を凝縮させる場合がある。地熱発電プラントでは、水蒸気が凝縮した復水を火力発電等のように再利用する必要がないため、構造が簡単で熱交換を効率的に実施できる直接接触式復水器が用いられることが多い。
【0004】
直接接触式復水器は、タービン排気と冷却水とを直接接触させる機器であり、主にトレイ(多孔板)式と、液滴噴霧式(スプレー式)とに分類される。トレイ式は、復水器内部に流入したタービン排気の動圧によりトレイから落下する冷却水を微細化してタービン排気中に導入する方式である。スプレー式は、スプレーノズルを用いて冷却水を微細化してタービン排気中に噴射する方式である。また、この種の復水器では、タービン排気の導入形式として、下方排気型(上方流入型)か又は水平排気型(水平流入型)が多くの場合に採用されている。
【0005】
地熱発電で利用される地熱の生産井からの蒸気には一般に、二酸化炭素などの不凝縮ガスが含まれており、不凝縮ガスの濃度は生産井にもよるが、一般に0.3~10.0wt%程度である。この不凝縮ガスの濃度の値は、一般的な火力又は原子力プラントで利用される蒸気の1000倍以上の値に相当する。このような不凝縮ガスは、復水器における水蒸気と冷却水との間の伝熱を阻害して水蒸気の凝縮を阻害しうるため、復水器では、不凝縮ガスを滞留させることなく排出することがタービンの排気圧力を負圧(真空)に保つために重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-63857号公報
【文献】特許第5404175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、地熱発電用のスプレー式の復水器は、タービン排気ダクトと、冷却水供給手段として例えばスプレーノズルを収容する蒸気凝縮部と、不凝縮ガス冷却部と、を主要部分として備える。タービンから排出されたタービン排気は、タービン排気ダクトを通過した後、蒸気凝縮部に導かれて、そこで自身に含まれる水蒸気を凝縮される。そして、蒸気凝縮部で凝縮しない二酸化炭素などの不凝縮ガスと、それに随伴する水蒸気は、不凝縮ガス冷却部に導かれ、更に冷却された後に復水器から排出される。なお、不凝縮ガス冷却部では、その冷却によって凝縮した復水が復水用の排出口から排出されるとともに、不凝縮ガスは別の排出口から排出されることになる。
【0008】
このような復水器では、蒸気凝縮部に流入したタービン排気が冷却水と接触し、タービン排気に含まれる水蒸気が凝縮することで、蒸気凝縮部内を流れるタービン排気の流速が徐々に減少していく。そのため、復水器内部の流れにおいては、蒸気凝縮部のタービン排気ダクト側では流速が速い状態であるが、不凝縮ガス冷却部側では水蒸気がほとんど凝縮することで流速が遅くなり、流れの滞留が生じやすい状態になる。このように復水器内部で流れの滞留が生じてしまうと、滞留領域に不凝縮ガスが集まることで、復水器内部における水蒸気と冷却水との間の伝熱効率が悪化し、復水器内部の真空度が悪化してしまう虞がある。復水器内部の真空度が悪化すると、プラントの発電効率が低下してしまう。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、復水器内部における流れの滞留を抑制することで、復水器内部の真空度を所望の状態に安定的に保つことができる直接接触式復水器及び発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態に係る直接接触式復水器は、タービンからのタービン排気が流入するタービン排気ダクトと、前記タービン排気ダクトに接続され、前記タービン排気ダクトからのタービン排気を側方又は上方から受け入れる本体胴容器と、前記本体胴容器の内部に冷却水を供給する冷却水供給管と、前記本体胴容器が側方からタービン排気を受け入れる場合には、前記本体胴容器における前記タービン排気ダクト側とは反対の側に設けられて水平方向に開口し、前記本体胴容器が上方からタービン排気を受け入れる場合には、前記タービン排気ダクトから水平方向に離間した位置で前記本体胴容器に設けられて水平方向に開口するガス入口部と、前記ガス入口部を介して前記本体胴容器に接続されるガス冷却室と、前記ガス入口部に対向するように前記本体胴容器の内部に配置されるバッフル板と、を備えている。前記バッフル板の上部と、当該バッフル板の上部と上下方向に対向する前記本体胴容器の内壁面との間には、タービン排気が通過する通流開口が形成されている。
また、一実施の形態に係る発電プラントは、上記直接接触式復水器を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、復水器内部における流れの滞留を抑制することで、復水器内部の真空度を所望の状態に安定的に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態に係る直接接触式復水器の鉛直方向における概略断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る直接接触式復水器の内部におけるタービン排気の流速ベクトルを示す図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る直接接触式復水器からバッフル板を取り外した場合の当該復水器内部におけるタービン排気の流速ベクトルを示す図である。
【
図7】(A)は、第2の実施の形態の形態に係る直接接触式復水器が備えるバッフル板を示す図であり、(B)及び(C)は、第2の実施の形態の変形例を示す図である。
【
図8】第3の実施の形態に係る直接接触式復水器の鉛直方向における概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面を参照して各実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態に係る直接接触式復水器1(以下、復水器1と略す。)の鉛直方向における概略断面図である。また、
図2は
図1のII-II線に沿う断面図であり、
図3は
図1のIII-III線に沿う断面図であり、
図4は
図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【0015】
図1に示す復水器1は、図示省略するタービンからのタービン排気が流入するタービン排気ダクト10と、タービン排気ダクト10に接続され、タービン排気ダクト10からのタービン排気を側方から受け入れる本体胴容器11と、本体胴容器11の内部に冷却水を供給する冷却水供給管12と、本体胴容器11におけるタービン排気ダクト10側とは反対の側に設けられて水平方向に開口するガス入口部13と、ガス入口部13を介して本体胴容器11に接続されるガス冷却室14と、ガス入口部13に対向するように本体胴容器11の内部に配置されるバッフル板15と、冷却水供給管12が供給した冷却水とタービン排気から凝縮した凝縮水との混合水を本体胴容器11から排出するための混合水出口ノズル16と、を備えている。
【0016】
タービン排気ダクト10はタービンからのタービン排気を水平方向に通流させるように延びており、本体胴容器11の第1側壁部11Aに接続されている。本体胴容器11は、矢印Aに示すようにタービン排気ダクト10からの排気を側方から水平方向に沿って流入させ、タービン排気と、冷却水供給管12から供給される冷却水とを直接的に接触させることで、タービン排気に含まれる水蒸気を凝縮させるように構成されている。すなわち、本実施の形態に係る復水器1は、いわゆる水平流入側の直接接触式復水器である。また、本実施の形態に係る復水器1は発電プラントに組み込まれるものであり、具体的には地熱発電プラント用の復水器として構成されている。
【0017】
本実施の形態における本体胴容器11は、タービン排気ダクト10が接続される第1側壁部11Aと水平方向で対向する第2側壁部11Bの上部が湾曲状に形成されるが、タービン排気ダクト10内をタービン排気が流れる水平方向に対して直交する鉛直面での断面形状が矩形状となり、且つ、水平面での断面形状も矩形状となるように形成されている(
図2及び
図4参照)。なお、本体胴容器11の形状は本実施の形態における形状に特に限られるものではなく、例えば鉛直面での断面形状が円形になっていてもよい。
【0018】
冷却水供給管12はスプレー式の冷却水供給手段であり、タービン排気を凝縮させるための冷却水を通流させる配管部12Aと、配管部12A内の冷却水を本体胴容器11の内部に導入するためのスプレーノズル12Bと、を有している。配管部12Aは、本体胴容器11の第1、第2側壁部11A,11Bが対向する方向に対して直交する方向で互いに対向する本体胴容器11の第3、第4側壁部11C,11Dに跨る状態で設けられている(
図4参照)。また、スプレーノズル12Bは、配管部12Aの上面及び下面において長手方向に間隔を空けて複数設けられる。本実施の形態では、このような冷却水供給管12が複数設けられ、本体胴容器11の内部でマトリックス状に配列されている。
【0019】
ガス入口部13は第2側壁部11Bに設けられ、詳しくは第2側壁部11Bにおいて鉛直方向に平行となる部分である下部に設けられており、タービン排気ダクト10に対しては斜め下方に位置する。
図3に示すように、本実施の形態におけるガス入口部13は鉛直面での断面形状が矩形状となっており、また
図1に示すように、その下側辺部は本体胴容器11の底壁部分と面一になっている。また、本実施の形態におけるガス入口部13は矩形状の断面部分が一定の長さだけ連なるダクト形状をなしているが、ガス入口部13は本体胴容器11の第2側壁部11Bに形成される単なる開口であってもよい。また、ガス入口部13の断面形状は円形等であってもよい。
【0020】
ガス冷却室14は、タービン排気、詳しくは本体胴容器11内で凝縮されなかったタービン排気をガス入口部13を介して受け入れて冷却するための空間を形成するものであり、本実施の形態では直方体状をなしている。ガス冷却室14はその側壁部でガス入口部13に接続し、ガス入口部13から流入したタービン排気を上方に向けて通流させるべく上下方向に延びている。
【0021】
ガス冷却室14の内部には図示省略する冷却水供給管が設けられ、ガス冷却室14に流入したタービン排気は、ガス冷却室14の内部の冷却水供給管から供給される冷却水によって冷却されて凝縮するか又は気体状態のまま降温される。なお、ガス冷却室14内部の冷却水供給管は、本体胴容器11の内部の冷却水供給管12と同様のものであってもよい。また、ガス冷却室14の上部にはガス出口部14Aが設けられ、気体状態のままのタービン排気はガス出口部14Aから排出されるようになっている。
【0022】
一方で、本実施の形態におけるガス冷却室14の底壁部はガス入口部13の下側辺部(底壁部分)及び本体胴容器11の底壁部分と面一になっている。ここで、本実施の形態では本体胴容器11、ガス入口部13及びガス冷却室14の各下部によりホットウェル17が形成される。ホットウェル17は、本体胴容器11及びガス冷却室14に供給された冷却水とタービン排気から凝縮した凝縮水との混合水MWを溜めるための部分である。本実施の形態では、ホットウェル17に混合水MWが一定量で溜まるようになっている。混合水MWの水位は、図示しないポンプによって調整されるようになっている。
【0023】
バッフル板15は、厚み方向に対向する一対の主面が鉛直方向に平行となり、且つ主面の一方がガス入口部13と水平方向に対向するように配置されている。またバッフル板15は、タービン排気ダクト10の下流側開口に対して水平方向に離間した位置に配置され、より詳しくはガス入口部13に最も近い位置にある冷却水供給管12の近傍、本例ではガス入口部13に最も近い位置にある冷却水供給管12よりもタービン排気ダクト10側に配置されている。なお、バッフル板15は必ずしも鉛直方向に対して平行でなくてもよく、鉛直方向に対して傾斜する状態で配置されてもよい。
【0024】
図2に示すように、本実施の形態におけるバッフル板15は水平方向に長尺となる板体であり、本体胴容器11の第3側壁部11Cと第4側壁部11Dとに跨る状態で固定され、自身が位置する第3側壁部11C及び第4側壁部11Dとの間にはタービン排気の通流部分を形成していない。一方で、バッフル板15の上部15Aと、当該上部15Aと上下方向に対向する本体胴容器11の内壁面との間にはタービン排気が通過する通流開口18が形成されている。また、バッフル板15は本体胴容器11の底壁部に対して浮いた状態であり、バッフル板15の下部と本体胴容器11の底壁部との間にも隙間が形成されている。この隙間が形成されることで、本体胴容器11で生じた凝縮水等とガス冷却室14で生じた凝縮水等とが混合されてホットウェル17に溜まり、これらをまとめて混合水出口ノズル16から排出することが可能となる。
【0025】
本実施の形態では、ホットウェル17に混合水MWが一定量で溜まるように制御されるが、具体的に混合水出口ノズル16は、混合水MWの水面高さがバッフル板15の下部よりも高くなるようにその開閉を制御される。したがって、バッフル板15の下部と本体胴容器11の底壁部との間の隙間は、タービン排気の通過のための使用を意図されていない。なお、バッフル板15の下部と本体胴容器11の底壁部とは接していてもよく、この場合、バッフル板15に凝縮水を通過させるための貫通孔が形成されてもよい。
【0026】
また、
図1、
図2及び
図4を参照し、本実施の形態では、上記通流開口18の鉛直面における断面積をS1、バッフル板15と本体胴容器11の側壁部(詳しくは第2~第4側壁部11B~11D)とが、ガス入口部13側に形成する空間の水平面における断面積をS2としたとき、S1≧S2の関係が成り立つ。なお、
図2においては、通流開口18の範囲を濃度の薄いドットを付した領域によって示しており、
図4においては、バッフル板15と本体胴容器11の側壁部とが形成する上述の空間の範囲を濃度の濃いドットを付した領域によって示している。また、断面積S2を求める際にバッフル板15に対向する壁部が存在しない場合には、ガス入口部13が形成されている壁部の延長面をガス入口部13内に仮想的に引き延ばした上で、当該延長面及びバッフル板15と、これらの両側方に位置する一対の壁部とで囲まれる空間から、断面積S2を求めるようにする。
【0027】
また、
図3及び
図4を参照し、ガス入口部13においてタービン排気が通過する部分の鉛直面における断面積をS3、ガス冷却室14の水平面における断面積をS4としたとき、S2≧S3、及び/又は、S2≧S4の関係が成り立っており、詳しくは、S2≧S3、及び、S2≧S4の関係が成り立ち、加えて、S3≧S4の関係も成り立っている。つまり、S1≧S2≧S3≧S4の関係が成り立っている。なお、本実施の形態における「ガス入口部13においてタービン排気が通過する部分」は、ガス入口部13における混合水MWの水面よりも上方の部分に対応する。ガス入口部13において混合水MWが溜まる部分が形成されない場合には、ガス入口部13の全体が、タービン排気が通過する部分になる。また、
図3においては、「ガス入口部13においてタービン排気が通過する部分」の範囲をハッチングを付した領域によって示しており、
図4においては、ガス冷却室14の範囲をハッチングを付した領域によって示している。
【0028】
本実施の形態では、バッフル板15の上方に通流開口18が形成されることで本体胴容器11に流入したタービン排気が、通流開口18、バッフル板15と第2側壁部11Bとの間、ガス入口部13、ガス冷却室14の順に流れる。ここで、上述のようなS1~S4の関係が成り立つことで、本体胴容器11からガス冷却室14に至るまでのタービン排気の流速の低下が抑制される。タービン排気の流速の低下を抑制する観点では、本実施の形態のように、S1≧S2≧S3≧S4の関係が成り立つことが好ましいが、S1~S4の関係は、本実施の形態の態様に限られるものではない。
【0029】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0030】
本実施の形態に係る復水器1では、図示しないタービンが駆動された際に、タービンからのタービン排気が、
図1の矢印Aに示すようにタービン排気ダクト10から本体胴容器11に流入する。そして本体胴容器11に流入したタービン排気は、冷却水供給管12のスプレーノズル12Bから散水された冷却水と直接接触することで、自身に含まれる水蒸気を凝縮される。ここで、タービン排気に水蒸気および二酸化炭素などの不凝縮ガスが含まれる場合、本体胴容器11で凝縮しない不凝縮ガスと、これに随伴する水蒸気とを含む凝縮されていないタービン排気は、ガス入口部13を介してガス冷却室14に導かれ、そこで更に冷却されて外部に排出される。
【0031】
タービン排気ダクト10とガス入口部13とが水平方向で対向する位置関係となる水平流入側の直接接触式復水器においては、タービン排気ダクト10側ではタービン排気の流速が速い状態であるが、ガス入口部13側では水蒸気がほとんど凝縮することで、タービン排気の流速が遅くなっており、流れの滞留が生じやすい状態になる。とりわけガス入口部13が形成される第2側壁部11B側の上方側領域において流れの滞留が広範囲で生じやすくなる傾向が生じる。
【0032】
これに対して、本実施の形態ではガス入口部13に対向するバッフル板15を設けることで、
図1の矢印Bに示すように、タービン排気ダクト10からのタービン排気の一部がバッフル板15で転向され、上方に向かう流れが生じる。これにより、ガス入口部13が形成される第2側壁部11B側の上方側領域で滞留しようとする流れに、バッフル板15で転向された流れが干渉(衝突)することで、流れが滞留する範囲を縮小及び抑制することができる。これにより本実施の形態では、タービン排気ダクト10から本体胴容器11に流入したタービン排気(詳しくは、凝縮されていないタービン排気)が、矢印Cに示すようにガス入口部13側に向けてスムーズに流れるようになる。
【0033】
ここで、
図6は、復水器1からバッフル板15を取り外した場合の当該復水器内部におけるタービン排気の流速ベクトルを示す図であり、流速ベクトルは矢印で示されている。図中の流速ベクトルは、矢印の向きによって流れの向きを示し、矢印の長さが長いほど流速が大きいことを意味する。
図6に示される流速ベクトルは、本件発明者によるシミュレーションに基づき特定されたものである。
【0034】
上述したようにタービン排気ダクト10とガス入口部13とが水平方向で対向する位置関係となる水平流入側の直接接触式復水器においては、タービン排気ダクト10側ではタービン排気の流速が速い状態であるが、ガス入口部13側では水蒸気がほとんど凝縮することで、タービン排気の流速が遅くなっており、流れの滞留が生じやすい状態になる。とりわけガス入口部13が形成される第2側壁部11B側の上方側領域において流れの滞留が広範囲で生じやすくなる傾向が生じる。このような傾向から
図6に示すシミュレーション結果では、ガス入口部13が形成される第2側壁部11B側の上方側領域において種々の方向を向く遅い流れが広範囲に分布し、広範囲にわたり流れの滞留が生じている。
【0035】
これに対して、
図5はバッフル板15が設けられた復水器1の内部におけるタービン排気の流速ベクトルを示す図であり、
図6の場合と同様のシミュレーションに基づき速度ベクトルが特定されている。バッフル板15を設けた場合には、
図5の結果と
図6のバッフル板15が無い場合の結果とを対比して明らかなように、本体胴容器11の内部における流れの滞留が抑制されている。具体的には、種々の方向を向く遅い流れの分布が
図6よりも縮小している。このようなシミュレーション結果からも、バッフル板15を設けた場合には、本体胴容器11に流入したタービン排気がガス入口部13側に向けてスムーズに流れるようになることが分かる。
【0036】
そして、ガス入口部13側に向けて流れるタービン排気は、バッフル板15の上方の通流開口18から、バッフル板15と第2側壁部11Bとの間、ガス入口部13、ガス冷却室14の順に流れ、気体状態のままのタービン排気は矢印Dに示すように外部に排出される。ここで、本実施の形態では、上記通流開口18の鉛直面における断面積をS1、バッフル板15と本体胴容器11の側壁部(詳しくは第2~第4側壁部11B~11D)とが、ガス入口部13側に形成する空間の水平面における断面積をS2としたとき、S1≧S2の関係が成り立つ。これにより、通流開口18からバッフル板15と第2側壁部11Bとの間にかけて流れるタービン排気の流速の低下が抑制され、タービン排気の圧力損失が抑制される。これにより、通流開口18からバッフル板15と第2側壁部11Bとの間においても流れの滞留が抑制されるようになる。
【0037】
また、ガス入口部13においてタービン排気が通過する部分の鉛直面における断面積をS3、ガス冷却室14の水平面における断面積をS4としたとき、S2≧S3、及び/又は、S2≧S4の関係が成り立つ。これにより、バッフル板15と第2側壁部11Bとの間からガス入口部13、ガス冷却室14にかけて流れるタービン排気の流速の低下も抑制され、タービン排気の圧力損失が抑制される。これにより、バッフル板15と第2側壁部11Bとの間からガス入口部13、ガス冷却室14においても流れの滞留が抑制される。より詳しくは、本実施の形態では、S1≧S2≧S3≧S4の関係が成り立つことで、タービン排気の流速の低下が効果的に抑制され、通流開口18以降の流れの滞留が効果的に抑制されるようになる。
【0038】
したがって、本実施の形態によれば、復水器内部における流れの滞留を抑制することで、復水器内部の真空度を所望の状態に安定的に保つことができる。
【0039】
すなわち、地熱発電プラントにおいてタービンから排出されるタービン排気は水蒸気と不凝縮ガスとの混合流体であり、この場合、本体胴容器11では水蒸気のみが凝縮するため、タービン排気は下流側に流れるに従い、徐々に流速が低下すると共に不凝縮ガス濃度が上昇する。そのため、本体胴容器11のガス冷却室14側では不凝縮ガス濃度が高くなり且つタービン排気の流速も遅くなるため、流れの滞留が生じやすくなる。このような流れの滞留が生じてしまうと、復水器1から不凝縮ガスが排出されにくくなり、伝熱性能が低下し復水器内部の真空度が悪化してしまう場合がある。これに対し、本実施の形態ではガス入口部13に対向するバッフル板15を設けることで、復水器内部における流れの滞留を抑制でき、復水器内部での不凝縮ガスの滞留が抑制される。これにより、不凝縮ガスをスムーズに排出することが可能となるため、復水器内部の真空度を所望の状態に安定的に保つことができる。
【0040】
とりわけ、S2≧S3、及び/又は、S2≧S4の関係や、S1≧S2の関係が成り立つ。これにより、通流開口18以降の流れの滞留も抑制されて不凝縮ガスが効果的に排出されるため、復水器内部の真空度を効果的に改善することができる。
【0041】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態に係る直接接触式復水器について
図7を用いて説明する。本実施の形態に係る復水器の構成部分のうちの第1の実施の形態の構成部分と同様のものには、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図7(A)に示すように、本実施の形態は、バッフル板15に水平方向に貫通する空隙部15Sが設けられる点で第1の実施の形態と異なっている。空隙部15Sは複数設けられ、水平方向に長尺となるスリット形状に形成されている。
【0043】
また
図2乃至
図4も参照し、本実施の形態では、通流開口18の鉛直面における断面積をS1、バッフル板15と本体胴容器11の側壁部(詳しくは第2~第4側壁部11B~11D)とが、ガス入口部13側に形成する空間の水平面における断面積をS2、ガス入口部13においてタービン排気が通過する部分の鉛直面における断面積をS3、ガス冷却室14の水平面における断面積をS4、空隙部15Sの鉛直面における断面積(複数の空隙部15Sの断面積の総合計)をS5としたときに、S1+S5≧S2の関係が成り立つ。また、S2≧S3、及び/又は、S2≧S4の関係が成り立つ。
【0044】
以上のような第2の実施の形態に係る復水器では、バッフル板15の空隙部15Sを通過してタービン排気がガス入口部13側に流れるようになり、バッフル板15の前、つまりバッフル板15のタービン排気ダクト10側において流れの滞留が生じにくくなる。
【0045】
上述の第1の実施の形態ではバッフル板15を設置することにより、本体胴容器11の内部の流れの滞留を抑制したが、バッフル板15が自身に衝突する流れの水平方向の通過を完全に遮断する場合には、バッフル板15の前(タービン排気ダクト10側)に流れの滞留が生じやすくなる虞がある。これに対し、本実施の形態ではバッフル板15に空隙部15Sを設けることでタービン排気が空隙部15Sを通過できるため、バッフル板15の前に流れの滞留が生じることを抑制できる。これにより、不凝縮ガスをスムーズに排出することが可能となるため、復水器内部の真空度を所望の状態により確実に保つことができる。
【0046】
また、上述のようにS1+S5≧S2の関係が成り立つことで、通流開口18及び空隙部15Sからバッフル板15と第2側壁部11Bとの間に向けて流れるタービン排気の流速の低下を抑制でき、タービン排気の圧力損失を抑制できる。これにより、通流開口18及び空隙部15S以降の流れの滞留を抑制できるため、所望の真空度を一層確実に得ることができるようになる。
【0047】
なお、
図7(A)では、空隙部15Sが水平方向に長尺となるスリット形状に形成されるが、空隙部15Sの形状は特に限られるものではない。例えば空隙部15Sの形状の変形例として、
図7(B)に示すような上下方向に長尺な形状や、
図7(C)に示すような円形が挙げられる。また空隙部15Sは楕円形などであってもよい。
【0048】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態に係る直接接触式復水器について
図8及び
図9を用いて説明する。本実施の形態に係る復水器の構成部分のうちの第1及び第2の実施の形態の構成部分と同様のものには、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
本実施の形態に係る復水器は、上方流入型の直接接触式復水器である点で第1の実施の形態と異なる。詳しくは、
図8に示す本実施の形態に係る復水器は、タービンからのタービン排気が流入するタービン排気ダクト10と、タービン排気ダクト10に接続され、タービン排気ダクト10からのタービン排気を上方から受け入れる本体胴容器11と、本体胴容器11の内部に冷却水を供給する冷却水供給管12と、タービン排気ダクト10から水平方向に離間した位置で本体胴容器11に設けられて水平方向に開口するガス入口部13と、ガス入口部13を介して本体胴容器11に接続されるガス冷却室14と、ガス入口部13に対向するように本体胴容器11の内部に配置されるバッフル板15と、を備えている。そして、バッフル板15の上部15Aと当該上部15Aと上下方向に対向する本体胴容器11の内壁面との間に、タービン排気が通過する通流開口18が形成されている。
【0050】
本体胴容器11は水平方向に長尺に形成され、その上部の長手方向の中央位置にタービン排気ダクト10を接続させている。本体胴容器11は、矢印A’に示すようにタービン排気ダクト10からの排気を上方から鉛直方向に沿って流入させ、その内部で冷却水供給管12からの冷却水をタービン排気に直接的に接触させることにより、タービン排気に含まれる水蒸気を凝縮させる。本実施の形態では、本体胴容器11の長手方向中央位置に対して一方側及び他方側のそれぞれに、ガス入口部13、ガス冷却室14及びバッフル板15が設けられている。つまり、本体胴容器11には、一対のガス入口部13、一対のガス冷却室14、及び一対のバッフル板15が設けられている。また、
図9は
図8のIX-IX線に沿う断面図であり、同図に示すように、本体胴容器11の長手方向に直交する鉛直面での断面形状は円形になっている。
【0051】
本実施の形態においてもバッフル板15は、厚み方向に対向する一対の主面が鉛直方向に平行となり、且つ主面の一方がガス入口部13と水平方向に対向するように配置される。ただし、本実施の形態においても、バッフル板15は鉛直方向に対して傾斜する状態で配置されてもよい。また
図9に示すように、本体胴容器11の鉛直面での断面形状は円形であるため、バッフル板15の側部は本体胴容器11の円弧に沿うように湾曲している。また本実施の形態におけるバッフル板15は、タービン排気ダクト10の下流側開口に対して水平方向に離間した位置に配置され、より詳しくは冷却水供給管12の端部よりもガス入口部13側に配置されている。なお、本実施の形態では、冷却水供給管12が本体胴容器11の長手方向に沿う状態で配置されている。
【0052】
そして本実施の形態においても、
図8に示すように、バッフル板15の上方に形成される通流開口18の鉛直面における断面積をS1、バッフル板15と本体胴容器11の側壁部とが、ガス入口部13側に形成する空間の水平面における断面積をS2としたとき、S1≧S2の関係が成り立つ。
【0053】
また、ガス入口部13においてタービン排気が通過する部分の鉛直面における断面積をS3、ガス冷却室14の水平面における断面積をS4としたとき、S2≧S3、及び/又は、S2≧S4の関係が成り立っており、詳しくは、本実施の形態でも、S2≧S3、及び、S2≧S4の関係が成り立ち、さらには、S3≧S4の関係も成り立っている。つまり、S1≧S2≧S3≧S4の関係が成り立っている。なお、本実施の形態においても、「ガス入口部13においてタービン排気が通過する部分」は、ガス入口部13における混合水MWの水面よりも上方の部分に対応する。また、本実施の形態においてもバッフル板15に第2の実施の形態で説明したような空隙部15Sが設けられてもよく、この場合、S1+S5≧S2の関係が成り立ってもよい。
【0054】
以上のような第3の実施の形態に係る復水器においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。本実施の形態に係る復水器のような上方流入型の直接接触式復水器は、出力10MW以下の比較的小型のプラントで用いられることが多い。このような上方流入型の直接接触式復水器では、タービン排気が上方から流入した後、左右に分岐する流れになるため、凝縮の効率化を図るべく本実施の形態のようにガス冷却室14が左右に設置されることが一般的である。本実施の形態では、各ガス冷却室14のそれぞれに対応して、バッフル板15が設けられることで、左右に生じ得る流れの滞留を効果的に抑制できる。
【0055】
以上、各実施の形態を説明したが、上記の各実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…直接接触式復水器、10…タービン排気ダクト、11…本体胴容器、11A…第1側壁部、11B…第2側壁部、11C…第3側壁部、11D…第4側壁部、12…冷却水供給管、12A…配管部、12B…スプレーノズル、13…ガス入口部、14…ガス冷却室、14A…ガス出口部、15…バッフル板、15A…上部、15S…空隙部、16…混合水出口ノズル、17…ホットウェル、18…通流開口