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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】芯材挿通式木質構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20220113BHJP
   B27M 1/04 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B27M3/00 H
B27M3/00 S
B27M1/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018224585
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020082651
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2018-11-30
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518426527
【氏名又は名称】株式会社コーエイ産業
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【弁理士】
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】大林 憲二
【合議体】
【審判長】長井 真一
【審判官】西田 秀彦
【審判官】森次 顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-42125(JP,A)
【文献】特開2000-120043(JP,A)
【文献】Atelierina-ホーム|Facebook,[online],2013年2月4日,[2021年4月21日検索],インターネット<URL:https://www.facebook.com/481236711913313/photos/a.481524281884556/481761008527550/?type=3&theater>
【文献】Creema,クルクルスツール,[online],[2021年4月21日検索],インターネット<URL:https://www.creema.jp/item/181689/detail>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工及び溶接容易な金属製の芯材(10)と木質部材(20)を利用した木造構造物(30)の製造方法であって、
木材から、相互に接触面を並行、又は前記芯材(10)の曲げに対応した角度を備えた二つの平面部を設けた前記木質部材(20)を得る木質部材加工工程Aと、
前記木質部材(20)に前記芯材(10)を挿通する挿通穴(21)を設ける挿通穴加工工程Bと、
前記木質部材加工工程A及び前記挿通穴加工工程Bで得られた前記木質部材(20)の前記挿通穴(21)に、前記芯材(10)を挿通させるとともに、重なり合う前記木質部材(20)の前記平面部同士を面接触させて芯材挿通式木質構造体(2)を組み立てる組立工程Cと、
前記芯材挿通式木質構造体(2)を複数用いて木造構造物(30)を構成する締結工程Dから成り、
前記芯材(10)の片側端部又は両側端部に螺合部(11)を備え、前記締結工程Dにおいて、締結部材(40)及び、螺合部材(12)を介して前記芯材(10)を締結することで複数の前記木質部材(20)を一体化させるとともに、前記芯材(10)及び前記締結部材(40)に対し、垂直方向にも前記芯材(10)及び前記締結部材(40)を設けることを特徴とする木造構造物(30)の製造方法。
【請求項2】
曲げ加工及び溶接容易な金属製の芯材(10)と木質部材(20)を利用した木質構造物(30)であって、
前記木質部材(20)には前記芯材(10)を挿通する挿通穴(21)と、相互に接触面を並行又は前記芯材(10)の曲げに対応した角度を備えた二つの平面部を設け、
前記木質部材(20)を前記芯材(10)の形状に沿って複数挿通し、重なり合う前記平面部同士を面接触させ、
前記芯材(10)の片側端部又は両側端部に螺合部(11)を備え、締結部材(40)及び螺合部材(12)を介して前記芯材(10)を締結し、複数の前記木質部材(20)を一体化させるとともに、
前記芯材(10)及び前記締結部材(40)に対し、垂直方向にも前記芯材(10)及び前記締結部材(40)が設けられていることを特徴とする木質構造物(30)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を利用した構造体の製造方法に関し、詳しくは、小径の芯材を木片等に挿通させ、木質構造体を成形する工法であって、製材等において廃棄される木材の切り屑等の有効利用を図りつつ、無垢材では不可能な長尺なものや、曲率を有する形状のものにも対応でき、従来にない木質特有の造形美及び機能美を創出する木質構造体の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
木材の温かみや素材感は、優しい印象を与え、生活に癒しの空間を創造する。また、日本の人工林は昭和30年から40年にかけて、わが国の政策として大量に植林され、50年以上経た現在収穫期に入ったが、地球温暖化の加速による二酸化炭素の削減を目的として環境間伐が2008年より始まり、国産材は供給過多の時代となった。そのため、木材価格の下落が続く状況であり、特に環境間伐で産出される小径間伐材は、利用価値が少なく、新たな利用の途が求められている。
【0003】
また、間伐材は成熟した木材と比較し、小径であることや収縮や変形等が大きいという弱点があるため、木質チップや合板、ラミナ材などに利用されることが多く、角材を利用する木造構造物の材料としては敬遠されている。また、通常の角材を用いる場合では乾燥済みのものを使用することが多く、含水率の高い生の角材を使用してパネル状の木造構造物を作ることは非常に困難であるといえる。しかしながら、乾燥木材を使うとなると、コスト高となり経済的負担が大きくなる。また、含水率の高い生の非乾燥材では、変形しやすく、撓み等も生じることとなる。そこで、小径木の非乾燥木材でも材料として利用できる木質構造の製造技術が求められている。
【0004】
木材を利用した構造物は、人の生活において温かい印象を受け、無機物で構成される構造物と比較して癒しの空間を創造しやすいといえるが、製材された角材等の組み合わせだけではデザイン的に限界があるといえ、従来にない創作性を発揮できる木材を利用した工法が求められている。
【0005】
これらの課題を解決しようと、従来からも種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、発明の名称を「木質ブロック乾式ユニット組積工法と建造物」とする技術が開示され、公知技術となっている(特許文献1参照)。具体的には「間伐材を含む小口径短尺原木の角柱材にモジュール性システムを導入加工、導入加工の角柱材が木質システムブロック、木質システムブロック乾式ユニット組積工法に依る建造物の建設を目的」を課題とし、その解決手段は、「モジュール性システムとシステム導入に付いて、任意正方形木質角柱、任意矩形木質角柱の横臥上端面より、横臥下端面に90度の任意等間隔貫通孔複数加工を成して、角柱と角柱にモジュール性システムを導入、導入加工材の 性能形状をシステムと呼び記す、図示が任意等間隔貫通孔複数加工を成してモジュール性システム導入のシステム」とするものである。しかし、係る技術は、複数の木製のブロックに貫通穴を設け、軸芯を基準としてユニットボルトを挿通させるという点において、本発明の構成と共通する点を有しているが、複雑な形状や、斬新な創作性を発揮するデザインに対応させることができないものである。
【0006】
また、特許文献2には、発明の名称を「擁壁施工法」とする技術が開示され、公知技術となっている(特許文献2参照)。具体的には「一定の規格を定め、その規格に応じてブロック単位の擁壁を工場で製造し、かつ、擁壁を形成する場所において規格に併せた支柱を設置し、該支柱に擁壁ブロックを積み上げることにより、擁壁を形成するという擁壁施工法を提供する。」ことを課題とし、その解決手段は、「コンクリート製の基礎に固定される水平部と擁壁を支持する起立部とからなる鉄骨製の支柱と、支柱の起立部に 填める複数の貫通穴を備えた直方体状のコンクリート製擁壁ブロックと、隣接する支柱の水平部間の距 離を一定にするための水平部用ゲージと、隣接する支柱の起立部間の距離を一定にするための起立部用ゲージと、支柱の起立部を垂直に立設するための垂直測定具とを使用し、コンクリート製の基礎に擁壁を立設する」というものである。係る技術は、木製の部材を利用するものではないが、支柱に対してゲージで繋いで構造体を成すという点において、本発明と共通する点がある。しかしながら、係る技術は木の特性を利用した造形美や、木質から生ずる癒し空間を創出するといった効果を発揮できず、また、間伐材や製材から排出される小片木材の有効利用を図るといった課題を解決するに至っていない。
【0007】
また、発明の名称を「細長木材組み立式一体工法」とする技術が開示され、公知技術となっている(特許文献3参照)。具体的には「優れた省資源健康住宅を作るためには全て自然のあるがままの材料を使うのが理想であり、その中でも間伐材の有効利用による森林保全と住宅単価を引き下げる」ことを課題とし、その解決手段は、「基礎の簡略化と施工費引き下げに対して、既製コンクリートブロックを使用、上部構造物の組立の簡略化と施工費引き下げに対して、工場加工品とする、パネル、板材以外は集成材としない、工業製品の化学物質削減に対して、間伐材を使用する、建物維持費削減に 対して、地熱利用、断熱空気層を作る、解体後の資源再利用に対して、アンカーボルト以外の金物は使用しない」というものである。しかし、係る技術は、柱の間に水平材を組み上げて壁材を構成する物であり、木材の撓みは大きく、乾燥させる製材工程を経た角材等でなければならず、どのような木材でも構成材料となるという本発明の課題を解決するに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平07-127161
【文献】特開2004-308220
【文献】特開2011-220088
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決すべく、小径木や製材から生まれる小片木材等の有効利用を図れないかとの着想から、木質構造体としての機能を十分に発揮するとともに、従来にない造形の装飾的機能を発揮可能な木質構造体の製造技術の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る芯材挿通式木質構造体の製造方法は、芯材と木質部材を利用して木造構造物を製造する製造方法であって、木材から小片木材等を得る木質部材加工工程Aと前記木質部材に前記芯材を挿通する挿通穴を設ける挿通穴加工工程Bと、前記木質部材加工工程A及び前記挿通穴加工工程Bで得られた前記木質部材の前記挿通穴に、前記芯材を挿通させて前記木造構造物を組み立てる組立工程Cと、前記芯材の両端に設けられる締結部材によって締結する締結工程Dから成る構成を採用した。
【0011】
また、発明に係る芯材挿通式木質構造体の製造方法は、前記芯材の片側端部又は両側端部に螺合部を備え、前記組立工程Cにおいて前記木質部材を前記芯材の形状に沿って複数挿通させて組み立てた後、前記締結工程Dにおいて、前記連結部及び、螺合部材を介して前記芯材を締結する構成の製造方法とすることもできる。
【0012】
また、発明に係る芯材挿通式木質構造体の製造方法は、前記締結工程Dにおいて、前記芯材及び前記連結部材に対し、垂直方向にも前記芯材及び前記連結部材を設ける構成の製造方法とすることもできる。
【0013】
また、発明に係る芯材挿通式木質構造体は、芯材と木質部材を利用した木造構造物であって、前記木質部材には前記芯材を挿通する挿通穴を設け、前記木質部材を前記芯材の形状に沿って複数挿通させ、前記芯材の両端に設けられる締結部材によって締結した構成を採用することもできる。
【0014】
また、発明に係る芯材挿通式木質構造体は、前記芯材の片側端部又は両側端部に螺合部を備え、前記木質部材を前記芯材の形状に沿って複数挿通させた後前記連結部及び、螺合部材を介して前記芯材を締結する構成を採用することもできる。
【0015】
また、発明に係る芯材挿通式木質構造体は、前記芯材及び前記連結部材に対し、垂直方向にも前記芯材及び前記連結部材を設ける構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る芯材挿通式木質構造体及びその製造方法によれば、廃棄される小木片等を有効利用できるとともに、木材の切断と穴あけは最も簡易な加工なので、加工設備に高額な投資がかからず製品コストを大幅に削減ができるという優れた効果を発揮する。
【0017】
また、本発明に係る芯材挿通式木質構造体及びその製造方法によれば、無垢材では得られない長物の木質構造体や、机やいす等の脚部等、更にはこれらと直行する方向に用いてテーブルの枠体とするなど装飾的機能を発揮する木質構造体を提供することができるという優れた効果を発揮する。
【0018】
また、本発明に係る芯材挿通式木質構造体及びその製造方法によれば、芯材は直線的なものとは限らず、曲状としてもよい。係る構成に採用した場合では曲状の心材に沿った木質構造体とすることができ、従来にない、装飾的な装飾機能を発揮できるという優れた効果を発揮する。
【0019】
また、本発明に係る芯材挿通式木質構造体及びその製造方法によれば、芯材を複数連接することにより壁部材やパネル部材等を構成することもでき、形状の異なる木片等の組み合わせから生じる隙間を用いて、美観や通気性といった機能を発揮させることができるという優れた効果を発揮する。
【0020】
また、本発明に係る芯材挿通式木質構造体及びその製造方法によれば、小木片を用いることにより、座屈に対する強度の高い木質構造体とすることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る芯材挿通式木質構造体の製造方法に係る作業工程を示すフローチャートである。
図2】本発明に係る芯材挿通式木質構造体の基本構成を説明する基本構成説明図である。
図3】本発明に係る芯材挿通式木質構造体を複数用いて平面的に構成する実施例を説明する実施例説明図である。
図4】直行方向にも芯材を利用する構成を採用した場合の芯材挿通式木質構造体の実施例を説明する実施例説明図である。
図5】直線状及び曲線状の芯材を利用した構成の芯材挿通式木質構造体の実施例を説明する実施例説明図である。
図6】本発明に係る芯材挿通式木質構造体を複数用いて立体的に構成する実施例を説明する実施例説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、木造構造物30の製造方法と、その製造方法によって製造される木造構造物30の2つのカテゴリーに属する発明であるため、先ず、本発明に係る芯材挿通式木造構造物製造方法1の製造方法について説明し、その後に特徴的な構造を有する芯材挿通式木造構造物2について説明する。なお、製造方法と木造構造物30の何れにも共通する構成部材の説明は重複する部分について省略する。
【0023】
図1は、本発明の製造方法に係る作業工程を示すフローチャートであり、全体としては、木質部材加工工程Aと、挿通穴加工工程Bと、組立工程Cによって製造した木造構造物30を、締結工程Dによって立体的な木造構造物30を得る製造方法である。以下、各工程毎に説明をする。
【0024】
木質部材加工工程Aは、森林の伐採や間伐等によって搬出された木材を、例えば輪切り等の加工を行う工程である。但し、製材等から排出される小片木材等を有効利用等する場合には、木質部材加工工程Aは省略することができる。
【0025】
挿通穴加工工程Bは、前記木質部材加工工程Aにおいて、芯材10を挿通させるための挿通穴21の加工を含むものである。但し、一般の製材等から排出される小片の木材の場合等ではそのままの形状で利用することが可能な場合が多く、前記の通り、輪切り等の加工が不要な場合には、挿通穴21の穴あけ加工のみの工程となる場合もある。なお、挿通穴21の内径は、芯材10の直径に対応する大きさに加工する必要があり、木造構造物30として、必要な剛性を確保するために締まり嵌めの寸法公差としたり、造形美と組み立ての容易性を優先して、隙間嵌めの寸法公差とする。即ち、目的となる木造構造物30の特性として求められる加工精度での穴あけ加工を行う。
【0026】
組立工程Cは、木質部材加工工程A及び挿通穴加工工程Bで得られた木質部材20の挿通穴21に、芯材10を挿通させて、木造構造物30を組み立てる工程である。係る組立工程Cにおいて特に注意するのは、芯材10に対して直線的に木質部材20を配置する場合と、芯材10に曲率を有する部分に木質部材20を配置する場合とでは、どのような形状の木質部材20を選択して組み合わせる検討をしなければならない点である。特に軸方向に作用する力については、曲げと座屈を考慮する必要がある。他方、芯材10に曲率を有する部分を含む場合には、木質部材20の上面と底面が平行でないものを選択したり、丸太状の輪切りの辺が当接するように、曲面部同士や、曲面部と平面部との組み合わせによる木質部材20は、作用する応力を考慮して行う。なお、各木質部材20同士の当接部に接着剤を塗布することが、強度的により望ましい。
【0027】
締結工程Dは、組立工程Cによって得られた棒状、又は平面上の木造構造物30を組み合わせることにより、立体的な木造構造物30として、芯材挿通式木質構造体2を得る工程である。係る工程に用いる連結部材40には芯材10との関係において螺合部11により、連結するものである。具体的には、例えば、図5(b)に示すような、直線の芯材10に沿って木質部材20を挿通させた花台や、図5(a)に示すような、曲率を有する芯材10に沿って挿通される木質部材20が曲がった造形の照明スタンドのように、1本の曲がった芯材10で構成される木造構造物30の芯材挿通式木質構造体2としたり、図6(a)に示すような、複数の木造構造物30で構成される平面的な壁を面方向が垂直になるように組み合わせた屏や、図6(b)に示すような二つの水平な辺が直交する角部に更に垂直方向の木造構造物30を組み合わせる構成を、四か所配置することによって得られるテーブルとするなど、多様な立体的構成の芯材挿通式木質構造体2とすることができる。なお、図6(c)は曲状の木造構造物30を複数組み合わせてパーゴラを構成することも可能となる実施例を示したものである。
【0028】
図2は、本発明に係る芯材挿通式木質構造体2の基本構成を説明する基本構成説明図であり、図2(a)は、芯材10が直線状のものに複数の木質部材20を挿通させた状態を示し、図2(b)は、直線状の芯材10に挿通する前の複数の木質部材20を示し、図2(c)は、挿通される木質部材20は製材された小片でも間伐材の輪切りでも、或いは芯持ち材でも辺材でも良く、木目の方向にも捉らわれないことを示し、図2(d)は、芯材10が曲線状であって、複数の木質部材20がその曲率に沿って挿通された状態を示している。
【0029】
図2(a)に示す通り、本発明に係る芯材挿通式木質構造体2は、連続して挿通される木質部材20の形状については多種多様のものが対応可能であり、芯材10の通る長手方向に、挿通穴21を有していれば矩形や円形といった外形形状にとらわれることなく対応することができる。なお、図2(a)、図2(b)、図2(d)には木質部材20の中心を通すように挿通穴21を設けるように示したが、係る挿通穴21の位置は必ずしも中心を通る必要はない。従って、例えば図2(c)に示すように、角材の小片や丸太を輪切りにした等の色々な木片を、木質部材20として利用する場合でも、これらの木片は正円でなくてもよく、また、中心を外した位置に挿通穴21を有してもよい。但し、樹芯から離れた表皮に近い辺材の部分は、若い部分であり、水分が多く、収縮と変形が大きいため、大きな力が作用する木質構造物30のような場合には、係る配置関係を考慮することが望ましい。以下、構成部材について詳細に説明する。
【0030】
芯材10は、本発明に係る芯材挿通式木質構造体2における基軸となる部材であり、基本的に木質構造体30に掛かる強度を受けるとともに、装飾的機能の要となるものである。図2(a)及び図2(b)に示した通り、直線状の軸とする場合は座屈に対する耐力が大きく、図(c)に示すような湾曲した形状と比較すると垂直方向の荷重に対して強くなる。但し、直線のみ使用であると、装飾の幅が限定されてしまうため、図2(c)のような形状を用いたりすることによって、強度よりもデザイン性を重視するような木質構造体30とすることも有効である。また、材質については金属、木材、樹脂製でもよく、特に限定されるものではないが、木質構造体30が求められる剛性を有することが必要となるため、金属製であることが望ましく、中でも酸化の恐れが少ないニッケルクロム鋼(ステンレス)や、曲げ加工や溶接が容易な鉄製とすることがより望ましい。寸法については特に限定する物ではなく、木質構造体30が必要とする剛性を加工できる直径及び長さとし、角度のきつい曲げ部は、木質構造体30の形状によって、木質構造体30の両側断面にテーパとすることにより対応可能である。但し、曲げ部には応力が集中するため、力を分散するように大きな円弧とすることが望ましい。なお、中身のみならず、中立のパイプ等でもよい。
【0031】
木質部材20は、木材の製材工程において排出される小片木材や、処分に困っている杉間伐材などを輪切りにしたものを用いればよく、本発明の実施品を製造するための専用品である必要はない。即ち、挿通穴21を設けられる面積を有する木片であれば形状や大きさが限定されるものではない。但し、図5に示す実施例のように丸太材を単に輪切りにして芯方向に対して垂直な方向に挿通穴21を設ける場合では軟らかい樹皮と辺材の堺が潰れて寸法精度が悪くなる場合がある。そのような場合には組み合わされる木質部材20同士の接触部を平面加工し、面接触状態で支える必要がある。多数の形状が考えられ、図2及び図3に示すとおり、断面形状が丸、矩形、台形、多角形、楕円、その他不規則な形状であっても相互に接触面を平行又は芯材10の曲げに対応した角度を備えていればよい。具体的には杉の間伐材を輪切りにしたものが考えられる。係る杉の間伐材は、伐採した森林にそのまま放置されたり、放置されずに搬出されても利用の途が生み出せず、廃棄されてしまうため、資源の有効利用を図ることが望ましい。なお、杉の間伐材に限定されるものではなく、家具の製造工場や建物等の施工現場から排出されるすべての木材が適用対象となる。
【0032】
木造構造物30は、基本的に木製の構造物であって、具体的には例えば塀、壁、間仕切り部材、机、椅子、柱、及び花台等多種多様なものが対象となり得る。図5(a)から図5(f)には、六種類の実施例を示したが、本発明に係る芯材挿通式木質構造体の製造方法1を利用することにより、その装飾効果を発揮させる多くのパターンが存在することは言うまでもない。
【0033】
挿通穴21は、木質部材20に設けあれる貫通穴であって、芯材10が挿通される穴部である。直径については芯材10と隙間嵌めとなるか締まり嵌めになるかは木造構造物30での使う部分によって異なる。即ち、強い強度を必要とする部分に用いられる場合には、締まり嵌めにすることによって、木質部材20にも受ける荷重から作用する応力を分散させて剛性を高めることが有効である。これに対し、大きな力が作用せず、芯材10の強度で十分に対応できる場合には、隙間嵌めでもデザイン性や製造工程において組み立てしやすいという長所を有する。更に、座屈に対する強度も高めることも可能となる。
【0034】
締結部材40は、芯材10の両端に設けられる平坦な板状部材である。所謂枠部材に想到するもので、木質部材20を両側から挟み込んで形状を保持するものである。締結部材40には芯材10を挿通させるための貫通した挿通穴21が設けられている。
【0035】
螺合部11は、芯材10の両端にネジ部を設けて雄ネジとし、雌ネジを有する螺合部材12により芯材10を締結する。なお、雌ネジ部を有する螺合部材12は、所謂ナットでも良いが、可能であれば芯材10の端部に用いる木質部材20に螺合部材12を埋め込んだ螺合部11とすることが望ましい。このように構成することで、芯材10を外部から目視できないようにして、木造構造物30の質感を担保することが可能となる。
【0036】
図3は、本発明に係る芯材挿通式木質構造体2を複数用いて平面的に構成する実施例を説明する実施例説明図である。係る構成を採用する場合には、複数の芯材10を並列して長尺な連結部材40で連結する。係る構成では、平面的な木造構造物30となり、異なる形状の木質部材20から生まれる隙間は通気性を備えた塀や壁とすることを可能とするものである。また、規則的な配置のみならず、不規則な配置による造形美を発揮させることも可能となる。
【0037】
図4は、直行方向にも芯材を利用する構成を採用した場合の芯材挿通式木質構造体2の実施例を説明する実施例説明図である。係る実施例では、縦方向に四本の芯材10を連結部材40で連結するとともに、略中心部を直交する方向に芯材10を一本備えている。なお、この場合、直交する一本の心材10については隣接する木質部材20を可能な限り広い面積で接触するようにすることが望ましい。このような構成にすることによって、壁や塀としての剛性を高めることが可能となるからである。
【0038】
図5は、直線状及び曲線状の芯材を利用した構成の芯材挿通式木質構造体2の実施例を説明する実施例説明図であり、図5(a)は、曲状の芯材10を利用する構成を採用した場合の芯材挿通式木質構造体2の実施例を説明する実施例説明図である。図5(a)に示すとおり、芯材10に曲部を有しても断続的に隣接する小片の木質部材20が接触することにより、曲げに対する強度を向上させることが可能である。製材される角材等は、曲げるのが大変であり、途中で曲率を描く柱や家具の支柱等従来ではできなかった造形の木造構造物30を得ることが可能となる。例えば、図6(c)のようなアーチ状の組み合わせから成るパーゴラ等を構成することも可能である。
【0039】
図5(b)は、芯材10の芯方向に木質部材20を直線状に配置する構成の芯材挿通式木質構造体2の実施例を説明する実施例説明図である。図5(b)に示すとおり、直線状の心材10に小片の木質部材20を多数配置し、座屈に対する強度を向上させることが可能となる構成である。
【0040】
図6は、本発明に係る芯材挿通式木質構造体2を複数用いて立体的に構成する実施例を説明する実施例説明図であり、図6(a)は、平面的に構成された木造構造物30を、組み合わせることにより、立体的に構成した芯材挿通式木質構造体2の実施例を示し、図6(b)は、芯材10を立体公差させるなどして立体的に構成した芯材挿通式木質構造体2の実施例を示している。なお、図6(a)及び図6(b)では、間伐材等の小径木を輪切りにしたものを組み合わせて、構成したものであり、間伐材の有効利用に資する実施例態形といえるものである。更に図6(c)は、曲状に構成された木造構造物30を立体的に交差させて庭園等で利用するパーゴラの実施例を示したものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、森林環境保護に必須の間伐作業から得られる間伐材や、製材工程において生じた小径木の有効利用を図ることで、林業の分野における産業の発達に貢献するとともに、廃棄される木材等の有効利用により環境保全にも資するといえ、産業上の利用可能性は高いものと思慮される。
【符号の説明】
【0042】
1 芯材挿通式木質構造体の製造方法
2 芯材挿通式木質構造体
10 芯材
11 螺合部
12 螺合部材
20 木質部材
21 挿通穴
30 木造構造物
40 締結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6