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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20220113BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/37
A61K8/92
A61Q1/00
A61Q1/02
A61Q1/04
A61Q1/10
A61Q1/14
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/06
A61Q5/12
A61Q19/00
A61Q19/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018547731
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2017038560
(87)【国際公開番号】W WO2018079620
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2016211624
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 忠夫
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094398(JP,A)
【文献】特開2005-247838(JP,A)
【文献】特開2009-079030(JP,A)
【文献】特開2006-265153(JP,A)
【文献】特開2009-137927(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114340(WO,A1)
【文献】特開2003-261424(JP,A)
【文献】特開2015-048321(JP,A)
【文献】特開平10-305088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/64
A61K 8/02
A61K 8/34
A61K 8/35
A61K 8/37
A61K 8/92
A61Q 1/00
A61Q 1/02
A61Q 1/04
A61Q 1/10
A61Q 1/14
A61Q 5/00
A61Q 5/02
A61Q 5/06
A61Q 5/12
A61Q 19/00
A61Q 19/10
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオサーファクタント、水および/又は多価アルコール、油性成分、及びヒノキチオールを含み、前記バイオサーファクタント、前記水および/又は多価アルコール、前記油性成分、及び前記ヒノキチオールの合計に対する前記ヒノキチオールの含有量が0.01重量%~3重量%であり、且つゲル状であるゲル状組成物を含むことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
バイオサーファクタント、水および/又は多価アルコール、油性成分、及びヒノキチオールを含み、前記バイオサーファクタント、前記水および/又は多価アルコール、前記油性成分、及び前記ヒノキチオールの合計に対する前記ヒノキチオールの含有量が0.01重量%~3重量%であり、且つゲル状であるゲル状組成物を含むことを特徴とする化粧料。
【請求項3】
前記ゲル状組成物における前記油性成分の濃度が50重量%~95重量%である請求項1または2に記載の皮膚外用剤または化粧料。
【請求項4】
前記バイオサーファクタントがサーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン、およびそれらの塩の群から選ばれる一種以上である請求項1~3のいずれかに記載の皮膚外用剤または化粧料。
【請求項5】
前記ゲル状組成物における前記バイオサーファクタントの濃度が0.02重量%~3重量%である請求項1~4のいずれかに記載の皮膚外用剤または化粧料。
【請求項6】
前記ゲル状組成物における前記ヒノキチオールの濃度が0.01重量%~1重量%である請求項1~5のいずれかに記載の皮膚外用剤または化粧料。
【請求項7】
前記多価アルコールがグリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、およびペンタンジオールの群から選ばれる1種以上である請求項1~6のいずれかに記載の皮膚外用剤または化粧料。
【請求項8】
前記多価アルコールがグリセリンである請求項1~6のいずれかに記載の皮膚外用剤または化粧料。
【請求項9】
前記ゲル状組成物における前記水および/又は多価アルコールの濃度が1.5重量%~30重量%である請求項1~8のいずれかに記載の皮膚外用剤または化粧料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の皮膚外用剤または化粧料を製造するための方法であって、
水および/又は多価アルコールにバイオサーファクタントと油性成分を混合する工程、および、
上記混合物に更にヒノキチオールを混合して前記ゲル状組成物を調製する工程を含み、
前記バイオサーファクタント、前記水および/又は多価アルコール、前記油性成分、及び前記ヒノキチオールの合計に対する前記ヒノキチオールの含有量が0.01重量%~3重量%であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安定性に優れたゲル状組成物と、それを含む皮膚用外用剤及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には種々の剤型のものが開発されており、その中には油性成分により増粘させたゲル状組成物があり、クレンジング化粧料や頭髪用化粧料など、様々な皮膚外用剤及び化粧料に用いられている。上記の油性増粘ゲル状組成物としては、従来より、多価アルコールと界面活性剤を配合した組成物等が知られており、例えばバイオサーファクタントであるサーファクチン若しくはその類縁化合物、またはそれらの塩と、3価以上の多価アルコールからなるゲル状組成物が知られている(特許文献1)。これらのゲル状組成物は肌によくなじみ、なめらかな使用感を有しているが、多価アルコールの配合による経時安定性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-176211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、肌に良くなじみ、なめらかな使用感を有しつつも経時安定性に優れたゲル状組成物と、当該ゲル状組成物を含む皮膚用外用剤及び化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前述の課題解決のために鋭意検討を行った結果、バイオサーファクタントを含有するゲル状組成物において、特定濃度の不飽和七員環化合物を配合することにより、ゲル状組成物の経時安定性が向上し、使用感に優れつつ保存安定性に優れたゲル状組成物を得ることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を示す。
【0006】
[1] バイオサーファクタント、水および/又は多価アルコール、油性成分、及び不飽和七員環化合物を含み、
前記不飽和七員環化合物の含有量が0.01重量%~3重量%であり、且つ、ゲル状であることを特徴とするゲル状組成物。
【0007】
[2] 前記油性成分の濃度が50重量%~95重量%である前記[1]に記載のゲル状組成物。
【0008】
[3] 前記バイオサーファクタントがサーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン、およびそれらの塩の群から選ばれる一種以上である前記[1]または[2]に記載のゲル状組成物。
【0009】
[4] 前記バイオサーファクタントの濃度が0.02重量%~3重量%である前記[1]~[3]のいずれかに記載のゲル状組成物。
【0010】
[5] 前記不飽和七員環化合物がヒノキチオールおよび/又はシクロヘプタトリエンである前記[1]~[4]のいずれかに記載のゲル状組成物。
【0011】
[6] 前記不飽和七員環化合物がヒノキチオールである前記[1]~[4]のいずれかに記載のゲル状組成物。
【0012】
[7] 前記不飽和七員環化合物の濃度が0.01重量%~3重量%である前記[1]~[6]のいずれかに記載のゲル状組成物。
【0013】
[8] 前記多価アルコールがグリセリン、ジグリセリン、1,2-ペンタンジオール、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、およびペンタンジオールの群から選ばれる1種以上である前記[1]~[7]のいずれかに記載のゲル状組成物。
【0014】
[9] 前記多価アルコールがグリセリンである前記[1]~[7]のいずれかに記載のゲル状組成物。
【0015】
[10] 水および/又は多価アルコールの濃度が1.5重量%~30重量%である前記[1]~[9]のいずれかに記載のゲル状組成物。
【0016】
[11] 前記[1]~[10]のいずれかに記載のゲル状組成物を含むことを特徴とする皮膚外用剤。
【0017】
[12] 前記[1]~[10]のいずれかに記載のゲル状組成物を含むことを特徴とする化粧料。
【0018】
[13] 前記[1]~[10]のいずれかに記載のゲル状組成物を製造するための方法であって、
水および/又は多価アルコールにバイオサーファクタントと油性成分を混合する工程、および、
上記混合物に更に不飽和七員環化合物を混合する工程を含み、
前記バイオサーファクタント、前記水および/又は多価アルコール、前記油性成分、及び前記不飽和七員環化合物の合計に対する前記不飽和七員環化合物の含有量が0.01重量%~3重量%であることを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、肌に良くなじみ、なめらかな使用感を有しつつも経時安定性に優れたゲル状組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る組成物はゲル状である。本発明において「ゲル」および「ゲル状」とは、本発明の組成物が溶媒に可溶であるか不溶であるかを問わず、組成物の粘度が0.01Pa・s~2000Pa・sであることをいうものとする。上記粘度が0.01Pa・s以上であれば、液垂れなどの問題が十分に抑制され、2000Pa・s以下であれば、組成物を皮膚に適用する外用剤や化粧料として用いた場合に、適度な延展性が得られる。上記粘度としては0.1Pa・s~1000Pa・sが好ましい。組成物の粘度は、一般的な粘度計を用いて測定すればよい。なお、本開示において「Y~Z」は、「Y以上、Z以下」を表し、YとZも本発明範囲に含まれるものとする。
【0021】
本発明のゲル状組成物は、バイオサーファクタントを含有する。本発明に係るゲル状組成物においてバイオサーファクタントは、界面活性剤として、水および/または多価アルコールなどの親水性成分と油性成分などの親油性成分とを互いに相溶させる作用を示す。
【0022】
バイオサーファクタントとは、微生物により生産される天然の界面活性化合物であり、一般に生分解性が高く、人体に対する皮膚刺激性が低いため環境や人体への安全性が極めて高いという特徴を持つ。本発明で用いられるバイオサーファクタントとしては、リポペプチド化合物のサーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン;糖脂質のマンノシルエリスリトールリピッドやソホロリピッド、トレハロースリピッド、ラムノリピッド;脂肪酸のスピクリスポール酸、ポリマーのエマルザンなど、またはこれらの塩が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0023】
上記の中でも少量でゲル状組成物の安定化の効果が得られることから、リポペプチド化合物のサーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン、またはそれらの塩が好ましく、サーファクチンまたはその塩が特に好ましい。
【0024】
ここで、サーファクチンの塩とは、一般式(1)
【化1】

[式中、Xは、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから選択されるアミノ酸残基を示し、RはC9-18アルキル基を示し、M+はアルカリ金属イオンまたは第四級アンモニウムイオンを示す]
で示される化合物、またはこの化合物を2種以上含有する組成物である。
Xとしてのアミノ酸残基は、L体でもD体でもよいが、L体が好ましい。
【0025】
「C9-18アルキル基」は、炭素数9以上、18以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和炭化水素基をいう。例えば、n-ノニル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、n-デシル基、8-メチルノニル基、n-ウンデシル基、9-メチルデシル基、n-ドデシル基、10-メチルウンデシル基、n-トリデシル基、11-メチルドデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基などが挙げられる。
【0026】
アルカリ金属イオンは特に限定されないが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどを表す。
第四級アンモニウムイオンの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;ベンジル基、メチルベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基等の有機基が挙げられる。第四級アンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられる。
【0027】
バイオサーファクタントは、1種、または2種以上使用してもよい。例えば、上記サーファクチンまたはその塩は1種、または2種以上使用してもよい。
サーファクチンまたはその塩は、公知方法に従って、微生物、例えばバチルス・ズブチリスに属する菌株を培養し、その培養液から分離することができ、精製品であっても、未精製、例えば培養液のまま使用することも出来る。また、化学合成法によって得られるものでも同様に使用できる。
本発明のゲル状組成物におけるバイオサーファクタントの濃度は0.02重量%~3重量%であることが望ましい。バイオサーファクタントの濃度が0.02重量%以上であれば、ゲル状組成物の保存安定性を十分に維持することができ、また、3重量%以下であれば、余分なバイオサーファクタントが使用感に与える悪影響を十分に抑制することができる。上記濃度として、好ましくは0.05重量%~2重量%、さらに好ましくは0.1重量%~1.5重量%が望ましい。なお、本発明のゲル状組成物におけるバイオサーファクタント、水および/又は多価アルコール、油性成分、及び不飽和七員環化合物の濃度は、本発明のゲル状組成物がバイオサーファクタント、水および/又は多価アルコール、油性成分、及び不飽和七員環化合物以外の成分を含む場合には、バイオサーファクタント、水および/又は多価アルコール、油性成分、及び不飽和七員環化合物の合計に対する濃度をいうものとする。
【0028】
本発明のゲル状組成物は、水および/又は多価アルコール、即ち、水および多価アルコールの群より選択される少なくとも1種以上の親水性成分を含有する。水と多価アルコールは、親水性成分として、本発明のゲル状組成物の使用感を高め、また、粘度を調整する役割を果たす。
多価アルコールは、2以上の水酸基を有する化合物をいう。多価アルコールとしては、特に限定はされないが、グリセリン、ジグリセリン、1,2-ペンタンジオール、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコールのいずれか1種または2種以上を使用するのが好ましい。また、常温常圧で液状である多価アルコールを使用することも好ましい。
【0029】
本発明のゲル状組成物における水および/又は多価アルコールの濃度は1重量%~50重量%であることが望ましく、好ましくは1.5重量%~30重量%であることが望ましい。水および/又は多価アルコールが上記の濃度範囲にあることにより、優れた使用感のゲル状組成物を形成することが可能となる。
【0030】
本発明のゲル状組成物は、油性成分を含有する。油性成分は、本発明のゲル状組成物の粘度を適度に調整し、且つ使用感を高める役割を果たす。本発明の油性成分は、水と任意の割合では混合しないものであれば、特に限定はされないが、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、セレシン、ポリエチレン末、スクワレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、流動イソパラフィン、ポリブテン、ミネラル油などの炭化水素類;ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ等のロウ類;マカデミアナッツ油、オリーブ油、綿実油、大豆油、アボガド油、コメヌカ油、米油、コメ胚芽油、パーム核油、ヒマシ油、ローズヒップ油、月見草油、ツバキ油、馬油、グレープシード油、ヤシ油、メドウホーム油、シアバター、コーン油、サフラワー油、ゴマ油等の油脂類;パルミチン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、セバシン酸ジイソプロピル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等のエステル類;ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の長鎖脂肪酸類;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン油類;セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;バチルアルコール、キミルアルコール等のアルキルグリセリルエーテル類のいずれか1種または2種以上を使用するのが好ましい。
【0031】
本発明のゲル状組成物における油性成分の濃度は50重量%~95重量%であることが望ましい。油性成分が上記の濃度範囲にあることにより、優れた使用感のゲル状組成物が得られる。上記濃度としては、60重量%~92重量%が好ましく、70重量%~90重量%がより好ましい。
【0032】
本発明のゲル状組成物は、不飽和七員環化合物を含有する。不飽和七員環化合物は、本発明のゲル状組成物の親水性成分と油性成分との分離を抑制し、安定性を高める作用を有する。
不飽和七員環化合物は、少なくとも1以上の炭素-炭素不飽和結合を有する七員環を有する化合物であれば、特に制限されない。本発明で用いられる不飽和七員環化合物としては、ヒノキチオール(2-ヒドロキシ-4-イソプロピルシクロヘプタ-2,4,6-トリエン-1-オン)、2,5-ジヒドロキシ-2,4,6-シクロヘプタ-トリエン-1-オン、1,3,5-シクロヘプタトリエン、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-メトキシフェニル)エテニル]シクロヘプタ-2,4,6-トリエン-1-オン、2-[2-(2-ピリジニル)エテニル]シクロヘプタ-2,4,6-トリエン-1-オン、シクロヘプタ-2,4,6-トリエン-1-オン、3-(2,4,6-シクロヘプタトリエン-1-イル)-2,4-ペンタンジオンなどを挙げることができ、ヒノキチオールを使用するのが望ましい。
【0033】
本発明のゲル状組成物における上記不飽和七員環化合物の濃度は0.01重量%~3重量%であることが望ましい。不飽和七員環化合物を上記の濃度範囲とすることにより、ゲル状組成物の安定性が向上する。上記濃度としては、好ましくは0.01重量%~1重量%であることが望ましく、更に好ましくは0.01重量%~0.5重量%であることが望ましい。
【0034】
本発明のゲル状組成物には、本発明の効果を達成する範囲で任意の成分を配合することができる。任意の成分としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;バイオサーファクタント以外の、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性剤;増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、エモリエント剤、乳化剤、可溶化剤、抗炎症剤、保湿剤、防腐剤、殺菌剤、pH調整剤、色素、香料、粉体類等が挙げられる。
【0035】
本発明のゲル状組成物は、上記成分を混合することにより製造することができる。より効率的に組成物をゲル状にするためには、水および/又は多価アルコールにバイオサーファクタントと油性成分を混合し、次いで、得られた混合物に更に不飽和七員環化合物を混合することが好ましい。バイオサーファクタントと油性成分の添加順序は特に制限されず、何れを先に水および/又は多価アルコールに混合してもよいし、同時に添加混合してもよい。より具体的には、例えば、水および/又は多価アルコールにバイオサーファクタントを溶解し、撹拌しながら上記油性成分を少量ずつ添加していき、更に、不飽和七員環化合物を少量ずつ添加していくこと等により調製することができる。水と多価アルコールを併用する場合は、水は油性成分と不飽和七員環化合物を添加した後に添加してもよい。不飽和七員環化合物は、水および/又は多価アルコールに溶解した上で添加してもよい。
【0036】
油性成分は、所定量ずつ添加(分割添加)しても、連続的に添加(連続添加)してもよい。
油性成分の分割添加の場合には、既に添加されている水および/又は多価アルコールの量の60質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下の量の油性成分を一度に添加し、撹拌して均一にする。それを繰り返すことにより必要量を添加する。連続添加の場合、添加速度は既に添加されている水および/又は多価アルコールの量の60質量%/分以下が好ましく、より好ましくは30質量%/分以下、より更に好ましくは10質量%/分以下である。
【0037】
また、他の成分を添加する場合は、油性成分を添加する前に添加しても、油性成分に溶解または分散させて添加しても、油性成分を全量添加した後に添加しても、油性成分を添加している途中で添加してもいずれの方法でもかまわない。水および/又は多価アルコールは、最初に全量を添加しても、添加量の一部を最初に使用して残りを後から添加してもよい。
【0038】
本発明のゲル状組成物の用途として、好ましくは皮膚外用剤、化粧料等が挙げられる。本発明のゲル状組成物は、皮膚外用剤または化粧料自体として使用することもできるし、さらに他の成分と混合して皮膚外用剤または化粧料として使用することもできる。本発明に係るゲル状組成物の用途として、例えばクリーム、ローション、クレンジングジェル、クレンジングクリーム等の基礎化粧料;ファンデーション、アイシャドウ、リップカラー、リップグロス等のメーキャップ化粧料;ヘアクリーム、スタイリングジェル、ヘアワックス等の頭髪用化粧料;シャンプー、リンス、ハンドソープ、ボディーソープ、洗顔フォーム等の洗浄料等に好適に使用することができる。
【0039】
本願は、2016年10月28日に出願された日本国特許出願第2016-211624号に基づく優先権の利益を主張するものである。2016年10月28日に出願された日本国特許出願第2016-211624号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0040】
本発明のゲル状組成物は例えば以下のようにして調製されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
実施例1
(A)サーファクチンナトリウム 0.8重量%
(B)グリセリン 8重量%
(C)トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 87.69重量%
(D)ヒノキチオール 0.01重量%
(E)エタノール 0.5重量%
(F)精製水 3重量%
(B)に(A)と(C)を徐々に投入し、攪拌溶解した。その後、(E)に溶解させた(D)を徐々に投入し、攪拌溶解し、さらに(F)を徐々に投入し、攪拌溶解し、ゲル状組成物を得た。
【0042】
実施例2
実施例1において(C)成分の量を87.65重量%、(D)成分の量を0.05重量%とした以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0043】
実施例3
実施例1において(C)成分の量を87.6重量%、(D)成分の量を0.1重量%とした以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0044】
実施例4
実施例1において(C)成分の量を87.5重量%、(D)成分の量を0.2重量%とした以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0045】
実施例5
実施例1において(C)成分の量を87.4重量%、(D)成分の量を0.3重量%とした以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0046】
比較例1
実施例1において(C)成分の量を87.7重量%とし、(D)成分を使用しなかった以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0047】
実施例6
(A)サーファクチンナトリウム 0.8重量%
(B)グリセリン 18重量%
(C)スクアラン 76.69重量%
(D)ヒノキチオール 0.01重量%
(E)1,2-ペンタンジオール 1.5重量%
(F)精製水 3重量%
(B)に(A)と(C)を徐々に投入し、攪拌溶解した。その後、(E)に溶解させた(D)を徐々に投入し、攪拌溶解し、さらに(F)を徐々に投入し、攪拌溶解し、ゲル状組成物を得た。
【0048】
実施例7
実施例6において(C)成分の量を76.65重量%、(D)成分の量を0.05重量%とした以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0049】
実施例8
実施例6において(C)成分の量を76.6重量%、(D)成分の量を0.1重量%とした以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0050】
実施例9
実施例6において(C)成分の量を76.5重量%、(D)成分の量を0.2重量%とした以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0051】
実施例10
実施例6において(C)成分の量を76.4重量%、(D)成分の量を0.3重量%とした以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0052】
比較例2
実施例6において(C)成分の量を76.7重量%とし、(D)成分を使用しなかった以外は同様の方法によりゲル状組成物を調製した。
【0053】
試験例1: 安定性評価
下記の安定性評価基準に基づいて、上記実施例1~5、比較例1のゲル状組成物については50℃にて4週間静置後の外観を評価し、上記実施例6~10、比較例2のゲル状組成物については50℃にて8週間静置後の外観を評価した。結果を表1、表2に示す。なお、表1、表2中、「SF」はサーファクチンナトリウムを示す。
〇:分離なし(油の離奨なし)
×:分離(油が離奨)
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1、表2に示す結果の通り、不飽和七員環化合物であるヒノキチオールを含む実施例1~10のゲル状組成物には油の離奨は見られず、ゲル状組成物の保存安定性に優れていたが、ヒノキチオールを含まない比較例1、2のゲル状組成物には油の離奨が見られ、ゲル状組成物の保存安定性に問題が見られた。