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特許7002484トウプリプレグ製造装置、及びトウプリプレグの製造方法
<図1>
  • 特許-トウプリプレグ製造装置、及びトウプリプレグの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】トウプリプレグ製造装置、及びトウプリプレグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 15/12 20060101AFI20220203BHJP
   B29C 70/18 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20220203BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20220203BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B29B15/12
B29C70/18
B05D7/00 B
B05D7/00 A
B05D3/00 B
B05D3/00 D
B05D1/28
B05C1/08
B05C11/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019010263
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020116835
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】302019599
【氏名又は名称】ミズノ テクニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】弘中 進
(72)【発明者】
【氏名】内海 陽吉
(72)【発明者】
【氏名】富井 浩司
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074699(JP,A)
【文献】特開昭48-078276(JP,A)
【文献】特開昭56-095625(JP,A)
【文献】特開2002-011399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16、15/08-15/14、C08J5/04-5/10、5/24、
C09J1/00-5/10、9/00-201/10、
B05D1/00-7/26、
B29C41/00-41/36、41/46-41/52、70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウプリプレグを製造するトウプリプレグ製造装置であって、
樹脂が貯留される貯留部と、
前記貯留部に貯留される樹脂を付着させながら回転するとともに、走行する強化繊維束に樹脂を塗布するオイリングローラーと、
前記トウプリプレグの目標樹脂含有率に基づく供給速度にて、前記貯留部に樹脂を連続的に供給するポンプと、
前記貯留部に貯留されている樹脂の貯留量を測定する貯留量測定部と、
前記オイリングローラーの回転速度を制御する回転制御部とを備え、
前記回転制御部は、前記貯留量測定部により測定された貯留量が目標貯留量よりも多い場合には、前記オイリングローラーの回転速度を増加させ、測定された貯留量が前記目標貯留量よりも少ない場合には、前記オイリングローラーの回転速度を減少させることを特徴とするトウプリプレグ製造装置。
【請求項2】
前記トウプリプレグの樹脂含有率を予測演算する含有率演算部と、
前記ポンプを制御する供給制御部とを備え、
前記供給制御部は、前記含有率演算部により予測演算された樹脂含有率が目標樹脂含有率よりも高い場合には、前記貯留部への樹脂の供給速度を減少させ、予測演算された樹脂含有率が前記目標樹脂含有率よりも低い場合には、前記貯留部への樹脂の供給速度を増加させる請求項1に記載のトウプリプレグ製造装置。
【請求項3】
貯留部に貯留された樹脂を付着させながら回転するオイリングローラーを用いて、走行する強化繊維束に樹脂を塗布するトウプリプレグの製造方法であって、
前記トウプリプレグの目標樹脂含有率に基づく供給速度にて、前記貯留部に樹脂を連続的に供給するとともに、
前記貯留部に貯留されている樹脂の貯留量を測定し、測定された貯留量が目標貯留量よりも多い場合には、前記オイリングローラーの回転速度を増加させ、測定された貯留量が前記目標貯留量よりも少ない場合には、前記オイリングローラーの回転速度を減少させることを特徴とするトウプリプレグの製造方法。
【請求項4】
前記トウプリプレグの樹脂含有率を予測演算し、演算された樹脂含有率が目標樹脂含有率よりも高い場合には、前記貯留部への樹脂の供給速度を減少させ、演算された樹脂含有率が前記目標樹脂含有率よりも低い場合には、前記貯留部への樹脂の供給速度を増加させる請求項3に記載のトウプリプレグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウプリプレグ製造装置、及びトウプリプレグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂からなる成形品は、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグと呼ばれるシート状基材を積層し、加圧及び加熱により樹脂を熱硬化させることにより製造される。プリプレグとしては、複数本の強化繊維束を一方向に並行して配列させたものにマトリックス樹脂を含浸させたシート状のシートプリプレグや、より細幅のトウプリプレグが知られている。
【0003】
特許文献1には、貯留部に貯留される樹脂を付着させながら回転するオイリングローラーを用いて、走行する強化繊維束に樹脂を塗布するトウプリプレグ製造装置が開示されている。特許文献1のトウプリプレグ製造装置では、貯留部への樹脂の供給量、及びオイリングローラーの回転速度を調整することによって、トウプリプレグの樹脂含有率を一定にするように制御されている。
【0004】
具体的には、貯留部に貯留される樹脂量を測定し、測定される樹脂量が目標樹脂量となるように貯留部への樹脂の供給速度を制御している。また、巻き取られたトウプリプレグの樹脂含有率を使用した樹脂量の測定値から予測演算し、予測演算により算出された樹脂含有率と目標含有率との差分に基づいてオイリングローラーの回転速度をPID制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-74699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のトウプリプレグ製造装置に用いられている上記の制御方法は、製造されたトウプリプレグをある程度の短い長さ単位で見た場合の樹脂含有率の変動幅が大きくなる傾向があり、特に、製造開始直後に樹脂含有率が大きく変動しやすい。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造開始直後におけるトウプリプレグの樹脂含有率の変動を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するトウプリプレグ製造装置は、樹脂が貯留される貯留部と、前記貯留部に貯留される樹脂を付着させながら回転するとともに、走行する強化繊維束に樹脂を塗布するオイリングローラーと、前記トウプリプレグの目標樹脂含有率に基づく供給速度にて、前記貯留部に樹脂を連続的に供給するポンプと、前記貯留部に貯留されている樹脂の貯留量を測定する貯留量測定部と、前記オイリングローラーの回転速度を制御する回転制御部とを備え、前記回転制御部は、前記貯留量測定部により測定された貯留量が目標貯留量よりも多い場合には、前記オイリングローラーの回転速度を増加させ、測定された貯留量が前記目標貯留量よりも少ない場合には、前記オイリングローラーの回転速度を減少させる。
【0009】
上記構成によれば、オイリングローラーに供給される強化繊維束の状態(例えば、解繊状態)の部分的な変化に応じてオイリングローラーの回転速度の変更が頻繁に行われる。これにより、製造開始直後におけるトウプリプレグの樹脂含有率の変動を含めた、短い長さ単位で見た場合のトウプリプレグの樹脂含有率の変動を抑制できる。
【0010】
上記トウプリプレグ製造装置において、前記トウプリプレグの樹脂含有率を予測演算する含有率演算部と、前記ポンプを制御する供給制御部とを備え、前記供給制御部は、前記含有率演算部により予測演算された樹脂含有率が目標樹脂含有率よりも高い場合には、前記貯留部への樹脂の供給速度を減少させ、予測演算された樹脂含有率が前記目標樹脂含有率よりも低い場合には、前記貯留部への樹脂の供給速度を増加させることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、短い長さ単位で見た場合の樹脂含有率の変動に加えて、長い長さ単位(例えば、巻取りボビンに巻き取られた巻回体単位)で見た場合の樹脂含有率の変動も抑制できる。
【0012】
上記課題を解決するトウプリプレグの製造方法は、貯留部に貯留された樹脂を付着させながら回転するオイリングローラーを用いて、走行する強化繊維束に樹脂を塗布するトウプリプレグの製造方法であって、前記トウプリプレグの目標樹脂含有率に基づく供給速度にて、前記貯留部に樹脂を連続的に供給するとともに、前記貯留部に貯留されている樹脂の貯留量を測定し、測定された貯留量が目標貯留量よりも多い場合には、前記オイリングローラーの回転速度を増加させ、測定された貯留量が前記目標貯留量よりも少ない場合には、前記オイリングローラーの回転速度を減少させる。
【0013】
上記構成によれば、オイリングローラーに供給される強化繊維束Fの状態(例えば、解繊状態)の部分的な変化に応じてオイリングローラーの回転速度の調整が頻繁に行われる。これにより、短い長さ単位で見た場合のトウプリプレグの樹脂含有率の変動、特に、製造開始直後におけるトウプリプレグの樹脂含有率の変動を抑制できる。
【0014】
上記トウプリプレグの製造方法において、前記トウプリプレグの樹脂含有率を予測演算し、演算された樹脂含有率が目標樹脂含有率よりも高い場合には、前記貯留部への樹脂の供給速度を減少させ、演算された樹脂含有率が前記目標樹脂含有率よりも低い場合には、前記貯留部への樹脂の供給速度を増加させることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、短い長さ単位で見た場合の樹脂含有率の変動に加えて、長い長さ単位(例えば、巻取りボビンに巻き取られた巻回体単位)で見た場合の樹脂含有率の変動も抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造開始直後におけるトウプリプレグの樹脂含有率の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】トウプリプレグ製造装置の概略図。
図2】制御ユニットのブロック図。
図3】供給制御のフローチャート。
図4】回転制御のフローチャート。
図5】本実施形態のトウプリプレグ製造装置を用いて製造されたトウプリプレグの樹脂含有率の変動を示すグラフ。
図6】従来技術のトウプリプレグ製造装置を用いて製造されたトウプリプレグの樹脂含有率の変動を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1に示すように、トウプリプレグ製造装置10は、強化繊維束Fに樹脂を塗布してトウプリプレグTとする製造ユニットU1と、製造されたトウプリプレグTの樹脂含有率(Rc値:樹脂質量/トウプリプレグ質量)が目標値となるように強化繊維束Fに対する樹脂の塗布量を制御する制御ユニットU2とを備えている。
【0019】
製造ユニットU1は、強化繊維束Fを走行させる走行経路を構成する複数のガイドローラー11を備えている。上記走行経路の上流側の端部には、強化繊維束Fが巻回された給糸ボビン12が配置され、上記走行経路の下流側の端部には、製造されたトウプリプレグTを巻き取る巻取りボビン13が配置されている。
【0020】
また、製造ユニットU1は、上記走行経路を走行する強化繊維束Fに樹脂を塗布するオイリングローラー14を備えている。オイリングローラー14は、特定の2つのガイドローラー11間において、その外周面が上記走行経路を走行する強化繊維束Fに接触する位置に配置されるとともに、強化繊維束Fの走行方向に沿って回転するように構成されている。オイリングローラー14は、制御ユニットU2に設けられる制御部Cから出力される制御信号s1に基づく回転速度で回転する。オイリングローラー14の回転制御の詳細については後述する。
【0021】
オイリングローラー14の下部には、溶融状態の樹脂が貯留されて、オイリングローラー14の外周面に樹脂を供給する貯留部15が配置されている。貯留部15は、オイリングローラー14に当接する箱状部材であり、オイリングローラー14の表面と貯留部15の下壁及び側壁との間に樹脂を貯留する貯留空間を形成している。オイリングローラー14は、その外周面の回転軌跡の一部において、貯留部15に貯留された樹脂を通過して、外周面に樹脂を付着させることによって、貯留部15からの樹脂の供給を受ける。また、オイリングローラー14の側部には、スクレーパー16が配置されている。
【0022】
貯留部15からオイリングローラー14の外周面に付着した樹脂は、スクレーパー16によって一定の厚みに延ばされて整形される。そして、整形された樹脂が付着したオイリングローラー14の外周面上を強化繊維束Fが走行することにより、オイリングローラー14から強化繊維束Fに樹脂が塗布される。
【0023】
貯留部15には、貯留部15に貯留されている樹脂の貯留量を測定する貯留量測定部としての液面センサ17が設けられている。液面センサ17は、所定のサンプリング周期毎に、貯留部15に貯留されている樹脂の液面高さHを測定し、測定した液面高さHを制御部Cに出力する。
【0024】
貯留部15には、樹脂タンク18から貯留部15へ樹脂を供給するための供給路19が接続されている。供給路19には、供給速度(単位時間当たりの吐出量)を任意に設定できるポンプ20が設けられている。ポンプ20としては、例えば、チューブポンプが挙げられる。ポンプ20は、制御部Cから出力される制御信号s2に基づく供給速度(単位時間当たりの吐出量)で貯留部15へ樹脂を連続的に供給するように駆動する。ポンプ20の吐出量を変更する供給制御の詳細については後述する。
【0025】
樹脂タンク18には、樹脂が貯留されている樹脂タンク18の質量を測定する第1質量測定器21が設けられている。第1質量測定器21により測定された第1質量Maは、所定のサンプリング周期毎に制御部Cに出力される。また、オイリングローラー14以降の走行経路の下部には、オイリングローラー14以降の走行経路において滴下した樹脂量、即ち、トウプリプレグ製造装置10における樹脂のロス量を測定する第2質量測定器22が設けられている。第2質量測定器22により測定された第2質量Mbは、所定のサンプリング周期毎に制御部Cに出力される。
【0026】
上記走行経路におけるオイリングローラー14と巻取りボビン13との間には、巻取りカウンタ23を有する測長ローラー24が配置されている。巻取りカウンタ23は、巻取りボビン13に巻き取られた巻取り長Wを測定する。巻取りカウンタ23により測定された巻取り長Wは、所定のサンプリング周期毎に制御部Cに出力される。
【0027】
上述した製造ユニットU1において、給糸ボビン12から引き出された強化繊維束Fは、ガイドローラー11によるガイドを受けながらオイリングローラー14の外周面上を走行する。これにより、強化繊維束Fは、オイリングローラー14から所定量の樹脂が塗布されてトウプリプレグTとなり、巻取りボビン13に巻き取られる。
【0028】
次に、制御ユニットU2について説明する。制御ユニットU2は、製造されたトウプリプレグTのRc値が目標値となるように、オイリングローラー14から強化繊維束Fに塗布される樹脂の塗布量を最適化するための構成である。
【0029】
ここで、オイリングローラー14から強化繊維束Fに塗布される樹脂の塗布量は主に、スクレーパー16とオイリングローラー14との間の距離、貯留部15へ供給される樹脂量、及びオイリングローラー14の回転速度の3つの要素により決定される。この3つの要素のうち、トウプリプレグ製造装置10では、スクレーパー16とオイリングローラー14との間の距離を固定値としている。そして、貯留部15へ供給する樹脂量を変動させる供給制御、及びオイリングローラー14の回転速度を変動させる回転制御を実行することにより、オイリングローラー14から強化繊維束Fに塗布される樹脂の塗布量を最適化している。
【0030】
図1に示すように、制御ユニットU2は、各種の設定値の入力を外部より受け付ける入力部25と、オイリングローラー14及びポンプ20に制御信号s1,s2を出力する制御部Cと、製造ユニットU1の制御状態をリアルタイムに表示する表示部26とを備えている。
【0031】
図2に示すように、制御部Cは、オイリングローラー14に制御信号s1を出力する回転制御部C1と、ポンプ20に制御信号s2を出力する供給制御部C2とを備えている。
回転制御部C1は、液面センサ17により測定された液面高さHに基づいて、オイリングローラー14の回転速度である単位時間当たりの回転数(以下、単に回転数と記載する。)を決定する。そして、決定した回転数にて回転させるための制御信号s1をオイリングローラー14に出力する。具体的には、回転制御部C1は、貯留部15に貯留される樹脂の液面高さ(樹脂量)を一定に保持するように、オイリングローラー14の回転数を制御する。
【0032】
供給制御部C2は、巻取りボビン13に巻き取られたトウプリプレグTのRc値Iを演算するRc演算部C2aを備えている。Rc演算部C2aは、第1質量測定器21により測定された第1質量Ma、第2質量測定器22により測定された第2質量Mb、及び巻取りカウンタ23により測定された巻取り長Wに基づいて、現在のトウプリプレグTのRc値Iを演算する。
【0033】
具体的には、下記式(1),(2)を用いて現在のトウプリプレグTに含まれる樹脂量T及び繊維量Tを演算し、下記式(3)を用いて、樹脂量T及び繊維量TからトウプリプレグTのRc値Iを演算する。下記式(1)~(3)における樹脂タンク18の初期質量Ma、及び強化繊維束FのTexは、予め入力部25を介して制御部Cに入力される設定値である。
【0034】
樹脂量T=((樹脂タンク18の初期質量Ma)-(第1質量Ma))-(第2質量Mb)…(1)
繊維量T=(強化繊維束FのTex)×巻取り長W…(2)
Rc値I=(樹脂量T)/((樹脂量T)+(繊維量T))…(3)
なお、本実施形態においては、第1質量測定器21、第2質量測定器22、巻取りカウンタ23を備える測長ローラー24、及びRc演算部C2aによって、トウプリプレグTのRc値を予測演算する含有率演算部が構成されている。
【0035】
供給制御部C2は、演算されたRc値Iに基づいて、貯留部15への樹脂の供給速度であるポンプ20の単位時間当たりの吐出量(以下、単に吐出量と記載する。)を決定する。そして、決定した吐出量となるように駆動させるための制御信号s2をポンプ20に出力する。具体的には、供給制御部C2は、製造されたトウプリプレグTのRc値Iを一定に保持するようにポンプ20の吐出量を制御する。
【0036】
次に、図3及び図4に基づいて、供給制御部C2による供給制御、及び回転制御部C1による回転制御の詳細について説明する。
まず、初期設定として、目標Rc値It、目標高さHt、基準吐出量Vs、基準回転数Rs、仕上がり全長E、樹脂タンク18の初期質量Ma、及び強化繊維束FのTexの各設定値を入力部25から制御部Cに入力する。また、ポンプ20を駆動して、目標高さHtとなるように貯留部15に樹脂を貯留した状態とする。
【0037】
目標Rc値Itは、トウプリプレグTのRc値の目標値である。目標高さHtは、貯留部15における樹脂の液面高さの目標値である。基準吐出量Vsは、ポンプ20の吐出量の初期値であり、オイリングローラー14を基準回転数Rsで回転させて目標Rc値ItのトウプリプレグTを製造した場合に、樹脂タンク18から消費される単位時間当たりの樹脂消費量の理想値と同値に設定される。仕上がり全長Eは、巻取りボビン13に巻き取るトウプリプレグTの目標長さである。
【0038】
<供給制御>
図3のフローチャートに示すように、トウプリプレグ製造装置10が駆動されると、供給制御部C2は、基準吐出量Vsにて貯留部15に樹脂を供給するようにポンプ20を駆動する(ステップS11)。次に、供給制御部C2は、巻取りボビン13に巻き取られた現在のトウプリプレグTのRc値Iを演算する(ステップS12)。
【0039】
ステップS12の後、供給制御部C2は、Rc値と目標Rc値Itの差分と吐出量(供給速度)との関係を示すマップ又は関係式に基づいて、Rc値Iを目標Rc値Itに一致させるようにポンプ20の吐出量を所定周期毎にPID制御する(ステップS13)。具体的には、Rc値Iが目標Rc値Itよりも低い場合には、吐出量を、Rc値と目標Rc値Itの差分に基づく所定量、増大させるようにポンプ20を制御し、Rc値Iが目標Rc値Itよりも高い場合には、吐出量を、Rc値と目標Rc値Itの差分に基づく所定量、減少させるようにポンプ20を制御する。なお、上記マップ又は関係式は、予め供給制御部C2に記憶されている。
【0040】
ステップS13の後、供給制御部C2は、現在のトウプリプレグTの巻取り長Wが仕上がり全長Eに達したか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14において、巻取り長Wが仕上がり全長Eに達している場合(YES)には、供給制御部C2は、供給制御を終了させる。ステップS14において、巻取り長Wが仕上がり全長Eに達していない場合(NO)には、ステップS12へと戻り、ステップS12~S14を繰り返し実行する。
【0041】
<回転制御>
図4のフローチャートに示すように、トウプリプレグ製造装置10が駆動されると、回転制御部C1は、基準回転数Rsでオイリングローラー14を回転させる(ステップS21)。次に、回転制御部C1は、現在の貯留部15の液面高さHが目標高さHtよりも低いか否かを判定する(ステップS22)。ステップS22において、液面高さHが目標高さHtよりも低い場合(YES)には、回転制御部C1は、オイリングローラー14の回転数を、現在の回転数から予め設定された所定量を減算した回転数に低下させる(ステップS23)。
【0042】
ステップS22において、液面高さHが目標高さHt以上である場合(NO)には、回転制御部C1は、現在の貯留部15の液面高さHが目標高さHtよりも高いか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24において、液面高さHが目標高さHtよりも高い場合(YES)には、回転制御部C1は、オイリングローラー14の回転数を、現在の回転数から予め設定された所定量を加算した回転数に増加させる(ステップS25)。
【0043】
ステップS24において、液面高さHが目標高さHt以下である場合(NO)には、ステップS22へと戻り、ステップS22~S25を繰り返し実行する。また、ステップS23及びステップS25の後は、ステップS22へと戻り、ステップS22~S25を繰り返し実行する。
【0044】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5は、本実施形態のトウプリプレグ製造装置10を用いてトウプリプレグTを製造した場合におけるトウプリプレグTの巻取り長Wに対するRc値の変化のシミュレート結果を示すグラフである。また、同じタイミングにおけるオイリングローラー14の回転数の変化及びポンプ20の回転数(吐出量に対応する数値)の変化のシミュレート結果を重ねて表示している。
【0045】
図6は、制御ユニットU2を特許文献1に開示される従来の制御構成に変更してトウプリプレグTを製造した場合におけるトウプリプレグTの巻取り長Wに対するRc値の変化のシミュレート結果を示すグラフである。また、同じタイミングにおけるオイリングローラー14の回転数の変化及びポンプ20の回転数(吐出量に対応する数値)の変化のシミュレート結果を重ねて表示している。
【0046】
従来の制御構成においては、貯留部15に貯留される樹脂の液面高さ(樹脂量)を一定に保持するように、ポンプ20の吐出量を制御し、製造されたトウプリプレグTのRc値を一定に保持するように、オイリングローラー14の回転数を制御している。この場合、図6のグラフに示されるように、トウプリプレグTのRc値は、製造開始直後に大きく変動し、その後、一定の値に収束している。
【0047】
一方、本実施形態の制御構成では、製造されたトウプリプレグTのRc値Iを一定に保持するように、ポンプ20の吐出量を制御し、貯留部15に貯留される樹脂の液面高さ(樹脂量)を一定に保持するように、オイリングローラー14の回転数を制御している。この場合、図5のグラフに示されるように、従来の制御構成を採用した場合に見られた製造開始直後のRc値の変動が抑えられて、製造開始直後から一定のRc値が維持されている。
【0048】
また、オイリングローラー14の回転数について図5及び図6のグラフを比較すると、トウプリプレグTの製造が進むに従って、従来の制御構成では、回転数の変動が小さくなるのに対して、本実施形態の制御構成では、どの製造タイミングにおいても常に一定幅の変動がある。この結果から、本実施形態の制御構成の場合には、オイリングローラー14に供給される強化繊維束Fの状態(例えば、解繊状態)の部分的な変化に応じてオイリングローラー14の回転数の変更が頻繁に行われていることが分かる。本実施形態の制御構成では、オイリングローラー14の回転数が頻繁に変更される結果、製造開始直後のトウプリプレグTのRc値の変動を含めて、短い長さ単位で見た場合のトウプリプレグTのRc値の変動を抑制できていると考えられる。
【0049】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)トウプリプレグ製造装置10は、樹脂が貯留される貯留部15と、貯留部15に貯留される樹脂を付着させながら回転するとともに、走行する強化繊維束Fに樹脂を塗布するオイリングローラー14と、トウプリプレグTの目標Rc値Itに基づく供給速度にて、貯留部15に樹脂を連続的に供給するポンプ20と、貯留部15に貯留される樹脂の液面高さHを測定する液面センサ17と、オイリングローラー14の回転速度を制御する回転制御部C1とを備えている。回転制御部C1は、液面センサ17により測定される液面高さHが目標高さHtよりも高い場合には、オイリングローラー14の回転数を増加させ、液面高さHが目標高さHtよりも低い場合には、オイリングローラー14の回転数を減少させる。
【0050】
上記構成によれば、オイリングローラー14に供給される強化繊維束Fの状態(例えば、解繊状態)の部分的な変化に応じてオイリングローラー14の回転数の変更が頻繁に行われる。これにより、製造開始直後のトウプリプレグTのRc値の変動を含めた、短い長さ単位で見た場合のトウプリプレグTのRc値の変動を抑制できる。
【0051】
(2)トウプリプレグTのRc値Iを予測演算する含有率演算部と、ポンプ20を制御する供給制御部C2とを備えている。供給制御部C2は、含有率演算部により演算されたRc値Iが目標Rc値Itよりも高い場合には、ポンプ20の吐出量を減少させ、Rc値Iが目標Rc値Itよりも低い場合には、ポンプ20の吐出量を増加させる。
【0052】
上記構成によれば、短い長さ単位で見た場合のトウプリプレグTのRc値の変動に加えて、長い長さ単位(例えば、巻取りボビン13に巻き取られた巻回体単位)で見た場合のトウプリプレグTのRc値の変動も抑制できる。
【0053】
(3)供給制御部C2は、Rc値と目標Rc値Itとの差分と、吐出量(供給速度)との関係を示すマップ又は関係式に基づいて、Rc値Iを目標Rc値Itに一致させるようにポンプ20の吐出量を制御する。
【0054】
上記構成によれば、長い長さ単位で見た場合のトウプリプレグTのRc値の変動を更に効果的に抑制できる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
・上記実施形態では、貯留部15に貯留されている樹脂の液面の高さに基づいて、貯留部15に貯留されている樹脂の貯留量を測定していたが、その他のパラメータ(例えば、樹脂を含む貯留部15の質量)に基づいて、樹脂の貯留量を測定してもよい。
【0056】
・回転制御部C1によるオイリングローラー14の回転制御は、貯留部15に貯留される樹脂量を一定に保持する制御であれば特に限定されるものではなく、PID制御等の公知の制御を採用できる。
【0057】
・供給制御部C2によるポンプ20に対する供給制御は、製造されたトウプリプレグTのRc値Iを一定に保持する制御であれば特に限定されるものではなく、公知の制御を採用できる。
【0058】
・製造されたトウプリプレグTのRc値Iを予測演算する方法は、上記実施形態に記載した方法に限定されない。例えば、巻取りボビン13に巻き取られたトウプリプレグTの全体質量を測定し、トウプリプレグTの全体質量と、巻取り長Wから求められるトウプリプレグTに含まれる繊維量Tとに基づいてトウプリプレグTのRc値Iを求めてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、製造されたトウプリプレグTのRc値Iを予測演算し、演算されたRc値Iに基づいて、貯留部15への樹脂の供給速度(ポンプ20の吐出量)を変更していたが、常に一定の供給速度(基準吐出量Vs)で貯留部15へ樹脂を供給してもよい。この場合には、供給制御部C2による供給制御を省略できる。
【0060】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)供給制御部は、予測演算された樹脂含有率と目標樹脂含有率との差分と、前記貯留部への樹脂の供給速度との関係を示すマップ又は関係式に基づいて、樹脂含有率を目標樹脂含有率に一致させるように前記貯留部への樹脂の供給速度を制御する前記プリプレグ製造装置。
【符号の説明】
【0061】
C…制御部、C1…回転制御部、C2…供給制御部、C2a…Rc演算部、F…強化繊維束、T…トウプリプレグ、U1…製造ユニット、U2…制御ユニット、10…トウプリプレグ製造装置、11…ガイドローラー、12…給糸ボビン、13…巻取りボビン、14…オイリングローラー、15…貯留部、16…スクレーパー、17…液面センサ、18…樹脂タンク、19…供給路、20…ポンプ、21…第1質量測定器、22…第2質量測定器、23…測長ローラー、24…巻取りカウンタ、25…入力部、26…表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6