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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】舌圧測定装置および舌圧測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/22 20060101AFI20220113BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220113BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61B5/22 200
A61B5/00 101L
A61B5/11 320
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019066519
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162883
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000150707
【氏名又は名称】長野計器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉池 義弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 昇
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 美希
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-105495(JP,A)
【文献】特開昭59-164039(JP,A)
【文献】実開昭59-137704(JP,U)
【文献】特開平06-047006(JP,A)
【文献】国際公開第2007/026488(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/03
A61B 5/11, 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に挿入可能かつ復元力を有する弾性バルーンと、
前記弾性バルーンに連通される連通流路と、
前記連通流路を介して前記弾性バルーンに空気を供給するポンプと、
前記連通流路に接続され前記弾性バルーンの内部圧力を測定する圧力測定器と、
前記ポンプの駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記内部圧力が所定圧力よりも低い設定圧力に到達するまで、前記ポンプを連続駆動させる第1駆動機構と、
前記内部圧力が前記設定圧力に到達後、前記ポンプを第1設定時間断続駆動させ、その後、前記ポンプを第2設定時間停止させる第2駆動機構と、を有し、
前記第2駆動機構は、前記第2設定時間経過後の前記内部圧力が前記所定圧力以上になるまで、前記ポンプの前記断続駆動と前記停止とを繰り返し実施する
ことを特徴とする舌圧測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の舌圧測定装置において、
前記制御装置は、
前記第1設定時間後の前記内部圧力と、前記第2設定時間後の前記内部圧力との圧力差が第1閾値以上であるか否かを判定する圧力差判定部と、
前記圧力差判定部により、前記圧力差が前記第1閾値以上と判定された場合、警報を出力する警報出力部と、を有する
ことを特徴とする舌圧測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の舌圧測定装置において、
前記制御装置は、
前記第2駆動機構による、前記ポンプの前記断続駆動と前記停止との積算時間が第2閾値以上であるか否かを判定する積算時間判定部と、
前記積算時間判定部により、前記積算時間が前記第2閾値以上と判定された場合、警報を出力する警報出力部と、を有する
ことを特徴とする舌圧測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の舌圧測定装置において、
前記連通流路の容積を機種毎に調整可能な調整部を備える
ことを特徴とする舌圧測定装置。
【請求項5】
口腔内に挿入可能かつ復元力を有する弾性バルーンと、前記弾性バルーンに空気を供給するポンプと、前記弾性バルーンの内部圧力を測定する圧力測定器と、を備える舌圧測定装置による舌圧測定方法であって、
前記弾性バルーンの内部圧力が所定圧力よりも低い設定圧力に到達するまで、前記ポンプの連続駆動運転を実施する第1加圧工程と、
前記第1加圧工程の後に実施され、前記ポンプを第1設定時間断続的に駆動させる断続駆動運転を実施する第2加圧工程と、
前記第2加圧工程の後に実施され、前記ポンプを第2設定時間停止させる安定化工程と、を有し、
前記安定化工程後の前記内部圧力が前記所定圧力以上になるまで、前記第2加圧工程と前記安定化工程とを繰り返し実施する
ことを特徴とする舌圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌圧測定装置および舌圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試験者の舌圧を測定する舌圧測定装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の舌圧測定装置では、バルーンを予め所定圧力まで与圧しておき、与圧されたバルーンを口腔内に挿入する。そして、当該バルーンを舌で押圧した際のバルーン内部の圧力の変化量から舌圧を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-105495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来例では、バルーンを与圧する際に、バルーン内部の圧力が所定圧の90%になるまでは、加圧ポンプを高速駆動させ、その後、所定圧に到達するまで加圧ポンプを緩やかに駆動させ、所定圧に到達したら、加圧ポンプを停止している。
【0006】
ここで、バルーンの材質が樹脂(例えば、天然ゴム)の場合、バルーンを与圧した際に、バルーンが膨張し、内部容積が変化する。この際、このバルーンの膨張は、ポンプによる加圧に比べて緩やかに起こるため、ポンプによる加圧後もバルーンが膨張することがある。そうすると、特許文献1の従来例では、ポンプによってバルーンの内部の圧力が所定圧に到達した後に、バルーン内部の容積が変化して、バルーン内部の圧力が所定圧よりも低くなってしまうことがある。そのため、舌圧を測定する際の初期値がバルーンの膨張によってずれてしまい、舌圧の測定精度が低下してしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、舌圧の測定精度を向上できる舌圧測定装置および舌圧測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の舌圧測定装置は、口腔内に挿入可能かつ復元力を有する弾性バルーンと、前記弾性バルーンに連通される連通流路と、前記連通流路を介して前記弾性バルーンに空気を供給するポンプと、前記連通流路に接続され前記弾性バルーンの内部圧力を測定する圧力測定器と、前記ポンプの駆動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記内部圧力が所定圧力よりも低い設定圧力に到達するまで、前記ポンプを連続駆動させる第1駆動機構と、前記内部圧力が前記設定圧力に到達後、前記ポンプを第1設定時間断続駆動させ、その後、前記ポンプを第2設定時間停止させる第2駆動機構と、を有し、前記第2駆動機構は、前記第2設定時間経過後の前記内部圧力が前記所定圧力以上になるまで、前記ポンプの前記断続駆動と前記停止とを繰り返し実施することを特徴とする。
【0009】
本発明では、第2駆動機構がポンプを第1設定時間断続駆動させ、その後、ポンプを第2設定時間停止させる。そして、第2駆動機構は、第2設定時間経過後の内部圧力が所定圧力以上になるまで、ポンプの断続駆動と停止とを繰り返し実施する。そのため、例えば、弾性バルーンが加圧により膨張するような材質であっても、膨張後において、弾性バルーンの内部の圧力が所定圧力以上になるようにポンプを制御することができる。したがって、舌圧を測定する際の初期値がずれてしまうことを防止できるので、舌圧の測定精度を向上できる。
【0010】
また、例えば、弾性バルーンが加圧により膨張しないような材質であっても、通常、弾性バルーンの内部圧力を上昇させると、断熱圧縮により、弾性バルーンの内部の温度が上昇する。この場合、弾性バルーンの内部圧力が所定圧力に到達した後に、周囲の環境の影響により弾性バルーンの内部の温度が低下し、弾性バルーンの内部圧力も低下する。
これに対し、本発明によれば、第2駆動機構が、ポンプの断続駆動と停止とを繰り返し実施することにより、弾性バルーンの内部温度が低下した後において、弾性バルーンの内部圧力が所定圧力以上になるようにポンプを制御することができる。したがって、この場合も、舌圧を測定する際の初期値がずれてしまうことを防止でき、舌圧の測定精度を向上できる。
【0011】
本発明の舌圧測定装置において、前記制御装置は、前記第1設定時間後の前記内部圧力と、前記第2設定時間後の前記内部圧力との圧力差が第1閾値以上であるか否かを判定する圧力差判定部と、前記圧力差判定部により、前記圧力差が前記第1閾値以上と判定された場合、警報を出力する警報出力部と、を有することが好ましい。
この構成では、例えば、弾性バルーンや連通流路が損傷して、損傷箇所から空気が抜けてしまうことで、第1設定時間後の内部圧力と第2設定時間後の内部圧力との圧力差が第1閾値以上になった場合、警報出力部が警報を出力する。そのため、試験者は弾性バルーンや連通流路の損傷を把握することができる。
【0012】
本発明の舌圧測定装置において、前記制御装置は、前記第2駆動機構による、前記ポンプの前記断続駆動と前記停止との積算時間が第2閾値以上であるか否かを判定する積算時間判定部と、前記積算時間判定部により、前記積算時間が前記第2閾値以上と判定された場合、警報を出力する警報出力部と、を有することが好ましい。
この構成では、例えば、ポンプの性能が劣化してしまったことにより、内部圧力が所定圧力まで上昇せずに、断続駆動と停止との積算時間が第2閾値以上になった場合、警報出力部が警報を出力する。そのため、試験者はポンプの劣化等を把握することができる。
【0013】
本発明の舌圧測定装置において、前記連通流路の容積を機種毎に調整可能な調整部を備えることが好ましい。
ここで、舌圧測定装置は機能等を付加するために、例えばリニューアルすることがある。この際、装置内配管を短縮して省スペース化を図ることがあるが、そうすると、装置内配管の体積が変化する。つまり、舌圧測定の検出部の容積が変化することになるが、検出部の容積が変化すると、空気圧の変化量も変化してしまう。そのため、リニューアル前の装置による測定値に対して、リニューアル後の装置による測定値の再現性が失われてしまうといった問題があった。
これに対し、この構成では、舌圧測定装置のリニューアル等により、連通流路の容積が変化したとしても、当該連通流路の容積を調整することができる。そのため、弾性バルーンおよび連通流路の容積、つまり、検出部の容積をリニューアルの前後で同じになるように調整できるので、舌圧測定装置のリニューアルの前後において、測定値の再現性が失われてしまうことを防止できる。
【0014】
本発明の舌圧測定方法は、口腔内に挿入可能かつ復元力を有する弾性バルーンと、前記弾性バルーンに空気を供給するポンプと、前記弾性バルーンの内部圧力を測定する圧力測定器と、を備える舌圧測定装置による舌圧測定方法であって、前記弾性バルーンの内部圧力が所定圧力よりも低い設定圧力に到達するまで、前記ポンプの連続駆動運転を実施する第1加圧工程と、前記第1加圧工程の後に実施され、前記ポンプを第1設定時間断続的に駆動させる断続駆動運転を実施する第2加圧工程と、前記第2加圧工程の後に実施され、前記ポンプを第2設定時間停止させる安定化工程と、を有し、前記安定化工程後の前記内部圧力が前記所定圧力以上になるまで、前記第2加圧工程と前記安定化工程とを繰り返し実施することを特徴とする。
本発明では、前述と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る舌圧測定装置を示す概略図。
図2】第1実施形態の舌圧測定装置の概略を示すブロック図。
図3】第1実施形態の舌圧測定における加圧制御処理を説明するフローチャート。
図4】加圧制御処理時における弾性バルーンの内部圧力の変化を示す図。
図5】本発明の第2実施形態に係る舌圧測定装置の概略を示すブロック図。
図6】第2実施形態の加圧制御処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の舌圧測定装置1を示す概略図である。
図1において、舌圧測定装置1は、試験者の舌圧を測定する装置であり、装置本体10と弾性バルーン2とを備えている。
弾性バルーン2は、バルーン本体21とチューブ22とを備えている。バルーン本体21は、加圧により膨張する材質で形成され復元力を有しており、口腔内に挿入可能とされている。チューブ22は、先端側がバルーン本体21に接続され、基端側が装置本体10に接続されており、装置本体10から吐出される空気をバルーン本体21に導入可能とされている。
なお、舌圧測定装置1は舌圧強化トレーニング装置としても利用される。
【0017】
[装置本体10]
図2は、舌圧測定装置1の装置本体10の概略を示すブロック図である。
図1および図2に示すように、装置本体10は、ケース11と、表示部12と、操作部13と、ブザー14と、圧力センサ15と、ポンプ16と、排気弁17と、空気流路18と、調整部19と、制御回路100とを備えている。
【0018】
ケース11は、箱型に形成されている。ケース11には、上記した表示部12、操作部13、ブザー14、圧力センサ15、ポンプ16、排気弁17、空気流路18、調整部19、制御回路100等が収納される。さらに、ケース11には、これらに電力を供給するために使用可能な図示略の電池が収納される。
なお、装置本体10は電力を供給するための電池を収納可能に構成されることに限られるものではなく、例えば、コンセント等からケーブルを介して電力を供給可能に構成されていてもよい。
【0019】
また、ケース11内において、圧力センサ15、ポンプ16、排気弁17は、空気流路18および調整部19により接続されている。また、空気流路18の一端部181はチューブ22に接続される。つまり、空気流路18、調整部19およびチューブ22により、本発明の連通流路が構成される。また、空気流路18の他端部182は、ケース11の内部に開放されている。なお、ケース11の内部の空間は外部と連通しており、大気圧となっている。
【0020】
圧力センサ15は、空気流路18に接続されており、弾性バルーン2の内部圧力を測定可能に構成されている。これにより、圧力センサ15は、バルーン本体21の変形による空気圧の変動を検出する。なお、圧力センサ15は、本発明の圧力測定器の一例である。
【0021】
ポンプ16は、チューブ22、空気流路18を介してバルーン本体21と接続されている。ポンプ16は、チューブ22および空気流路18に空気を供給することで、バルーン本体21を加圧するものである。
また、本実施形態では、ポンプ16は内部に逆止弁を内蔵している。これにより、ポンプ16が停止している間に、当該ポンプ16を介して弾性バルーン2および空気流路18に供給された空気が抜けることを抑制できる。
【0022】
排気弁17は、ケース11の外部とバルーン本体21との接続を開放、遮断するための電磁弁である。本実施形態では、排気弁17は、後述する開放工程において、バルーン本体21の内部の圧力を開放する際に「開」とされる。これにより、バルーン本体21の内部に供給された空気が、チューブ22、空気流路18、調整部19および排気弁17を介して、空気流路18の他端部182からケース11の内部に排出される。なお、前述したとおり、ケース11の内部の空間は外部と連通しているので、他端部182から排出された空気は、ケース11の内部の空間を介して、外部に排出される。
【0023】
表示部12は、圧力センサ15で検知された圧力値をデジタル表示する液晶ディスプレイ(LCD)であり、制御回路100に電気的に接続されている。
操作部13は、制御回路100を操作するためのものである。操作部13は、ケース11の正面側に2個配置されており、それぞれ制御回路100に電気的に接続されている。試験者は、当該操作部13を操作することにより、舌圧測定装置1の電源を投入したり、舌圧の測定を開始したりすることができる。
ブザー14は、制御回路100から出力される警報信号によって、警報音を発するものである。
【0024】
調整部19は、空気流路18の一部として構成されおり、配管部191と容積調整部材192とを有する。
配管部191は、環状部材で構成されており、両端部が空気流路18と接続されている。
容積調整部材192は、配管部191の内径よりも外径が小さい柱状に形成され、配管部191の内部に配置されている。本実施形態では、外径や軸方向の寸法を変えることで、体積がそれぞれ異なる複数種類の容積調整部材192を用意している。必要な調整量に応じて容積調整部材192を選択し、当該容積調整部材192により配管部191内部の一部を埋めることにより、調整部19の容積を調整可能に構成されている。そして、本実施形態では、当該配管部191の容積を調整することにより、連通流路を構成するチューブ22、空気流路18および調整部19の容積を調整可能に構成されている。
【0025】
[制御回路100]
制御回路100は、表示部12、ブザー14、圧力センサ15、ポンプ16、排気弁17等の動作を制御する回路であり、制御部110と記憶部120とを有する。なお、制御回路100は、本発明の制御装置の一例である。
記憶部120は、ROMやRAM等で構成され、舌圧測定装置1の動作を制御する各種プログラムや各種データを記憶している。
【0026】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)で構成されており、第1駆動部111と、第2駆動部112と、圧力差判定部113と、警報出力部114とを有する。
第1駆動部111および第2駆動部112は、記憶部120に記憶された各種プログラムを読み出し実行することで、ポンプ16を駆動させる駆動信号を出力する。本実施形態では、第1駆動部111および第2駆動部112は、PWM制御によりポンプ16を駆動させる。なお、第1駆動部111および第2駆動部112によるポンプ16の駆動の詳細については、後述する。また、第1駆動部111は本発明の第1駆動機構の一例であり、第2駆動部112は本発明の第2駆動機構の一例である。
【0027】
圧力差判定部113は、後述する加圧制御処理において、第2加圧工程後および安定化工程後における弾性バルーン2の内部圧力の圧力差を判定する。圧力差判定部113による圧力差の判定の詳細については、後述する。
【0028】
警報出力部114は、圧力差判定部113による判定結果に基づいて、表示部12およびブザー14に警報信号を出力する。これにより、表示部12にエラー表示が表示され、ブザー14により警報音が発せられる。
【0029】
[加圧制御処理]
次に、本実施形態の舌圧測定における加圧制御処理について説明する。なお、加圧制御処理は、舌圧測定において、弾性バルーン2の内部圧力を所定圧力P2に調整するために実行される。なお、本実施形態では、所定圧力P2として19.6kPaが設定されている。
【0030】
図3は、加圧制御処理を説明するフローチャートであり、図4は、加圧制御処理時における弾性バルーン2の内部圧力の変化を示す図である。
図3および図4に示すように、先ず、制御回路100は大気開放工程を実行する(ステップS1)。具体的には、制御回路100は、排気弁17を「開」にする。これにより、弾性バルーン2、空気流路18および調整部19の内部圧力が解放されて、大気圧力になる。そして、弾性バルーン2、空気流路18および調整部19の内部圧力が解放されたら、制御回路100は、排気弁17を「閉」にする。
【0031】
次に、第1駆動部111は、ポンプ16に駆動信号を出力し、ポンプ16の連続駆動運転を開始する(ステップS2)。具体的には、第1駆動部111は、PWM制御のオンの時間幅(デューティ)を100%にし、ポンプ16のモータのコイルに常に電圧をかけることで、ポンプ16を連続駆動させる。
【0032】
次に、制御回路100は、圧力センサ15により、弾性バルーン2の内部圧力Pcを測定する(ステップS3)。
そして、制御回路100は、内部圧力Pcが設定圧力P1以上であるか否か、すなわち、内部圧力Pcが設定圧力P1に到達したか否かを判定する(ステップS4)。なお、本実施形態では、設定圧力P1として、所定圧力P2の94%である18.5kPaが設定されている。つまり、設定圧力P1は、所定圧力P2よりも低い圧力に設定されている。なお、設定圧力P1は、18.5kPaに設定されることに限られるものではなく、例えば、18.0kPaに設定されていてもよく、所定圧力P2よりも低い圧力に設定されていればよい。
【0033】
ステップS4において、Noと判定した場合、制御回路100は、ステップS3に戻って処理を繰り返す。
一方、ステップS4において、Yesと判定した場合、第1駆動部111はポンプ16を停止させる(ステップS5)。なお、ステップS2~S5までの処理により、図4に示す第1加圧工程が実行される。
【0034】
図3に戻って、制御回路100は待機工程を実行する(ステップS6)。具体的には、制御回路100は、ポンプ16の駆動を停止させてから、1秒間待機する。
そして、第2駆動部112は、ポンプ16の断続駆動運転を開始する(ステップS7)。具体的には、第2駆動部112は、PWM制御のデューティを34%にし、ポンプ16のモータのコイルにかける電圧をオンオフさせることにより、ポンプ16を断続駆動させる。
【0035】
次に、制御回路100は、ポンプ16の断続駆動運転を開始してからの経過時間tonが、あらかじめ設定された時間t1以上になったか否かを判定する(ステップS8)。本実施形態では、t1として100ミリ秒間が設定されている。つまり、第2駆動部112は、断続駆動運転において、ポンプ16を34ミリ秒間駆動させ、66ミリ秒間停止させる。なお、t1は本発明の第1設定時間の一例である。また、t1として100ミリ秒間が設定されることに限定されるものではなく、任意の値に設定することができる。
【0036】
ステップS8でNoと判定した場合、制御回路100はステップS8の処理を繰り返す。
一方、ステップS8でYesと判定した場合、第2駆動部112はポンプ16を停止させる(ステップS9)。なお、ステップS7~S9までの処理により、図4に示す第2加圧工程が実行される。
【0037】
図3に戻って、制御回路100は、圧力センサ15により、弾性バルーン2の内部圧力Piを測定する(ステップS10)。
そして、制御回路100は、ポンプ16を停止させてからの経過時間toffが、あらかじめ設定された時間t2以上になったか否かを判定する(ステップS11)。本実施形態では、t2として1秒間が設定されている。なお、t2は本発明の第2設定時間の一例である。また、t2として1秒間が設定されることに限定されるものではなく、例えば、2秒間以上に設定されていてもよく、弾性バルーン2の内部圧力Psが安定する時間が設定されていればよい。
【0038】
ステップS11でNoと判定した場合、制御回路100はステップS11の処理を繰り返す。
一方、ステップS11でYesと判定した場合、制御回路100は、圧力センサ15により、弾性バルーン2の内部圧力Psを測定する(ステップS12)。なお、ステップS11の処理により、図4に示す安定化工程が実行される。
【0039】
図3に戻って、圧力差判定部113はPi-Ps、つまり、t1後の内部圧力Piと、t2後の内部圧力Psとの圧力差が、あらかじめ設定された第1閾値D1以上であるか否かを判定する(ステップS13)。本実施形態では、D1として、2kPaが設定されている。つまり、圧力差判定部113は、1秒間の安定化工程において、弾性バルーン2の内部圧力Psが2kPa以上低下したか否かを判定している。なお、第1閾値D1は、2kPaに設定されることに限られるものではなく、例えば、3kPa以上に設定されていてもよく、任意の値に設定することができる。
【0040】
ステップS13でYesと判定した場合、圧力差判定部113は弾性バルーン2や空気流路18が損傷していると判断し、警報出力部114に警報信号を出力させる(ステップS14)。これにより、表示部12にエラー表示が表示され、ブザー14により警報音が発せられるので、試験者は弾性バルーン2や空気流路18の損傷等の異常を把握できる。
【0041】
一方、ステップS13でNoと判定したら、制御回路100は、t2後の内部圧力Psが所定圧力P2以上であるか否かを判定する(ステップS15)。
ステップS15でNoと判定した場合、制御回路100は、ステップS7に戻って処理を繰り返す。つまり、制御回路100は、t2後の内部圧力Psが所定圧力P2以上になるまで、第2加圧工程と安定化工程とを繰り返し実行する。
一方、ステップS15でYesと判定した場合、制御回路100は加圧制御処理を終了する。
【0042】
以上のような本実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、第2駆動部112がポンプ16をt1時間断続駆動運転させ、その後、ポンプ16をt2時間停止させる。そして、第2駆動部112は、t2時間経過後の内部圧力Psが所定圧力P2以上になるまで、ポンプ16の断続駆動と停止とを繰り返し実施する。そのため、弾性バルーン2が加圧により膨張しても、膨張後において、弾性バルーン2の内部の圧力が所定圧力P2以上になるようにポンプ16を制御することができる。したがって、舌圧を測定する際の初期値がずれてしまうことを防止できるので、舌圧の測定精度を向上できる。
【0043】
(2)また、仮に、弾性バルーン2が加圧により膨張しないような材質であっても、通常、弾性バルーン2の内部圧力を上昇させると、断熱圧縮により、弾性バルーン2の内部の温度が上昇する。この場合、バルーンの内部圧力が所定圧に到達した後に、周囲の環境の影響により弾性バルーン2の内部温度が低下し、弾性バルーン2の内部圧力が低下する。
これに対し、本実施形態では、第2駆動部112が、ポンプ16の断続駆動と停止とを繰り返し実施することにより、弾性バルーン2の内部温度が低下した後において、弾性バルーン2の内部圧力が所定圧力P2以上になるようにポンプ16を制御することができる。したがって、この場合も、舌圧を測定する際の初期値がずれてしまうことを防止でき、舌圧の測定精度を向上できる。
【0044】
(3)本実施形態では、例えば、弾性バルーン2や空気流路18が損傷して、損傷箇所から空気が抜けてしまうことで、t1時間後の内部圧力Piとt2時間後の内部圧力Psとの圧力差が第1閾値D1以上になった場合、警報出力部114が警報信号を出力する。そのため、試験者は弾性バルーン2や空気流路18の損傷を把握することができる。
【0045】
(4)本実施形態では、舌圧測定装置1は、連通流路を構成するチューブ22、空気流路18および調整部19の容積を調整可能な調整部19を備える。
ここで、舌圧測定装置1は機能等を付加するために、例えばリニューアルすることがある。この際、空気流路18を短縮して省スペース化を図ることがあるが、そうすると、空気流路18の体積が変化する。つまり、舌圧測定の検出部の容積が変化することになるが、検出部の容積が変化すると、空気圧の変化量も変化してしまう。そのため、リニューアル前の装置による測定値に対して、リニューアル後の装置による測定値の再現性が失われてしまうといった問題があった。
これに対し、本実施形態では、舌圧測定装置1のリニューアル等により、空気流路18等の容積が変化したとしても、調整部19の容積を調整することができるので、検出部の容積をリニューアルの前後で同じになるように調整できる。そのため、舌圧測定装置1のリニューアルの前後において、測定値の再現性が失われてしまうことを防止できる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面に基づいて説明する。
第2実施形態では、制御部110Aに積算時間判定部115Aが設けられる点で第1実施形態と異なる。
なお、第1実施形態の舌圧測定装置1と同じ構成については、同じ符号を付けて説明は省略する。
【0047】
[装置本体10]
図5は、第2実施形態の舌圧測定装置1Aの装置本体10Aの概略を示すブロック図である。
図5に示すように、装置本体10Aは、制御回路100Aを備える。
【0048】
[制御回路100A]
制御回路100Aは、制御部110Aと記憶部120とを有する。
制御部110Aは、積算時間判定部115Aを備える。
【0049】
積算時間判定部115Aは、後述する加圧制御処理において、第2駆動部112によるポンプ16の断続駆動時間と停止時間との積算時間t12を判定する。積算時間判定部115Aによる積算時間t12の判定の詳細については、後述する。
【0050】
[加圧制御処理]
次に、本実施形態の舌圧測定における加圧制御処理について説明する。
図6は、加圧制御処理を説明するフローチャートである。なお、第2実施形態において、ステップS1A~9A,11A,12A,15Aは、前述した第1実施形態のステップS1~9,11,12,15と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
図6に示すように、ステップS15AでNoと判定すると、積算時間判定部115Aは、第2駆動部112によるポンプ16の断続駆動と停止との積算時間t12(図4参照)が、あらかじめ設定された第2閾値D2以上であるか否かを判定する(ステップS16A)。本実施形態では、D2として、30秒間が設定されている。つまり、積算時間判定部115Aは、ポンプ16の断続駆動と停止との積算時間t12が30秒間以上か否かを判定している。なお、第2閾値D2は、30秒間に設定されることに限られるものではなく、例えば、30秒間以上に設定されていてもよく、任意の値に設定することができる。
【0052】
ステップS16AでYesと判定した場合、積算時間判定部115Aは、ポンプ16の性能が劣化したと判断し、警報出力部114に警報信号を出力させる(ステップS17A)。これにより、表示部12にエラー表示が表示され、ブザー14により警報音が発せられるので、試験者はポンプ16の劣化等を把握できる。
一方、ステップS16AでNoと判定した場合、制御回路100Aは、ステップS7Aに戻って処理を繰り返す。
【0053】
以上のような本実施形態では、次の効果を奏することができる。
(5)本実施形態では、例えば、ポンプ16の性能が劣化してしまったことにより、内部圧力Psが所定圧力P2まで上昇せずに、断続駆動と停止との積算時間t12が30秒間以上になった場合、警報出力部114が警報信号を出力する。そのため、試験者はポンプ16の劣化等を把握することができる。
【0054】
[変形例]
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、ポンプ16が逆止弁を内蔵することにより、ポンプ16を介して空気が抜けることを抑制できるよう構成されていたが、これに限定されない。例えば、ポンプ16の一次側もしくは二次側に仕切弁を設け、ポンプ16が停止した場合に当該仕切弁を「閉」させることで、当該ポンプ16を介して空気が抜けることを抑制できる構成とされていてもよい。
【0055】
前記第1実施形態では、制御部110は圧力差判定部113を備えて構成されていたが、これに限定されず、制御部110が圧力差判定部113を備えていない場合も本発明に含まれる。
同様に、前記第2実施形態では、制御部110Aは積算時間判定部115Aを備えて構成されていたが、これに限定されず、制御部110Aが積算時間判定部115Aを備えていない場合も本発明に含まれる。
さらに、前記各実施形態では、制御部110,110Aが圧力差判定部113および積算時間判定部115Aの両方を備えていてもよい。
【0056】
前記各実施形態では、警報出力部114は、表示部12およびブザー14に警報信号を出力するよう構成されていたが、これに限定されない。例えば、警報出力部114は、表示部12およびブザー14のいずれか一方に警報信号を出力するよう構成されていてもよい。
【0057】
前記各実施形態では、調整部19は、配管部191および容積調整部材192を備えて構成されていたが、これに限定されない。例えば、調整部19は、伸縮可能なベローズ配管から構成されていてもよい。また、配管部191に容積調整部材192を貫通させ、配管部191の内部に配置される容積調整部材192の体積と、外部に配置される容積調整部材192の体積とを調整可能に構成してもよく、連通流路を構成するチューブ22および空気流路18の容積を調整可能に構成されていればよい。
また、舌圧測定装置1,1Aが調整部19を備えない場合も本発明に含まれる。
【0058】
前記各実施形態では、ポンプ16の断続駆動運転において、PWM制御のデューティが34%に設定されていたが、これに限定されない。例えば、PWM制御のデューティは、35%以上に設定されていてもよく、任意の値に設定することができる。
また、第2駆動部112は、ポンプ16の断続駆動運転において、第2加圧工程の回数に応じて、PWM制御のデューティを徐々に増加させるように構成されていてもよい。具体的には、第2駆動部112は、1回目の第2加圧工程のデューティを34%とし、2回目の加圧工程のデューティを37%とし、3回目の第2加圧工程のデューティを40%とするように、構成されていてもよい。また、第2駆動部112は、ポンプ16の断続駆動運転において、第2加圧工程の回数に応じて、PWM制御のデューティを徐々に低下させるように構成されていてもよい。
さらに、第2駆動部112は、ポンプ16の断続駆動運転において、所定圧力P2と内部圧力Psとの差に応じて、PWM制御のデューティを決定する、つまり、PWM制御のデューティをフィードバック制御により決定するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,1A…舌圧測定装置、2…弾性バルーン、10,10A…装置本体、11…ケース、12…表示部、13…操作部、14…ブザー、15…圧力センサ、16…ポンプ、17…排気弁、18…空気流路、19…調整部、21…バルーン本体、22…チューブ、100,100A…制御回路(制御装置)、110,110A…制御部、111…第1駆動部(第1駆動機構)、112…第2駆動部(第2駆動機構)、113…圧力差判定部、114…警報出力部、115A…積算時間判定部、120…記憶部、191…配管部、192…容積調整部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6