IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ナンバー2、リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-抗体を精製するための方法 図1
  • 特許-抗体を精製するための方法 図2
  • 特許-抗体を精製するための方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】抗体を精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/22 20060101AFI20220214BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20220214BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220214BHJP
   C07K 17/10 20060101ALN20220214BHJP
   C07K 17/08 20060101ALN20220214BHJP
   C07K 14/195 20060101ALN20220214BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
C07K1/22
C07K16/00
C12P21/08
C07K17/10
C07K17/08
C07K14/195
C12N15/09 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019182562
(22)【出願日】2019-10-03
(62)【分割の表示】P 2015562513の分割
【原出願日】2014-03-13
(65)【公開番号】P2020019795
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2019-10-28
(31)【優先権主張番号】61/787,309
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513110104
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、(ナンバー2)、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY (NO.2) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ゴクレン,ケント イー.
(72)【発明者】
【氏名】スダ,エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウビエラ,アントニオ ラウル
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/135415(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0182979(US,A1)
【文献】JOURNAL OF CHROMATOGRAPHY B: BIOMEDICAL SCIENCES & APPLICATIONS,NL,ELSEVIER,2004年11月11日,VOL:814, NR:2,PAGE(S):209 - 215
【文献】J Chromatogr. A, 2013 Feb 15, vol. 1285, pp. 88-96
【文献】J. Chromatogr. B Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. (2007) vol. 860, no. 2, pp. 209-217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインA、プロテインG、又はプロテインLクロマトグラフィーによって、少なくとも一つの混入物を含む溶液からタンパク質を精製するための方法であって、a)固体支持体に固定化されたプロテインA、プロテインG、又はプロテインLにタンパク質を吸着させるステップ、b)吸着されたタンパク質を含む固定化されたプロテインA、プロテインG、又はプロテインLを、10 mM~125 mMのナトリウムカプリレートを含む第一の洗浄バッファーと接触させることによって、少なくとも一つの混入物を除去するステップ、及びc)固体支持体に固定化されたプロテインA、プロテインG、又はプロテインLからタンパク質を溶出させるステップを含み、
前記タンパク質が、可溶性受容体、抗体、抗体断片、免疫グロブリン単一可変ドメイン、Fab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉鎖コンフォメーションの多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、及び二重特異性抗体からなる群から選択され、
前記溶液が細胞培養供給流であり、
前記少なくとも一つの混入物が、宿主細胞タンパク質及び宿主細胞DNAからなる群から選択され、
第一の洗浄バッファーがNaClの添加なしに作られる、前記方法。
【請求項2】
第一の洗浄バッファーが50 mM~125 mMのナトリウムカプリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一の洗浄バッファーが50 mM~100 mMのナトリウムカプリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第一の洗浄バッファーが50 mM~75 mMのナトリウムカプリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第一の洗浄バッファーが75 mM~125 mMのナトリウムカプリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第一の洗浄バッファーが75 mM~100 mMのナトリウムカプリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第一の洗浄バッファーが25 mM、50 mM、75 mM又は100 mMのナトリウムカプリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
洗浄バッファーが、さらに100 mM~400 mMの酢酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
宿主細胞が、大腸菌細胞、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、COS細胞、K562細胞、BHK細胞、PER.C6細胞、及びHEK細胞からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
洗浄バッファーが、有機酸、有機酸の共役塩基のアルカリ金属塩、有機酸の共役塩基のアンモニウム塩、及び有機塩基からなる群から選択される一つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
有機酸が、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、グリシン、グリシルクリシン(glycylclycine)、コハク酸、TES(2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ})エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、及びMES(2-(N-モルホリノ) エタンスルホン酸)からなる群より選択され、有機塩基が、トリス塩基、ビス-トリス、ビス-トリス-プロパン、ビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、TAPS(3-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパスルホン酸)、及びトリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有機酸の共役塩基が、有機酸の共役塩基のナトリウム塩、有機酸の共役塩基のカリウム塩、及び有機酸の共役塩基のアンモニウム塩からなる群から選択される一つである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
混入した溶液からタンパク質を精製するための方法であって、
(a)固相に固定化されたプロテインAを、プロテインA平衡化バッファーにより平衡化するステップ、又は固相に固定化されたプロテインLを、プロテインL平衡化バッファーにより平衡化するステップ、
(b)タンパク質を、混入した溶液から固相に固定化されたプロテインA又はプロテインLに吸着させるステップ、
(c)固相を、50 mM~55 mMのトリス塩基、45 mM~50 mMの酢酸、10 mM~125 mMのナトリウムカプリレートを含む第一のプロテインA又は第一のプロテインL洗浄バッファーによって洗浄することによって少なくとも一つの混入物を除去するステップ、並びに
(d)プロテインA溶出バッファー又はプロテインL溶出バッファーにより固相からタンパク質を回収するステップ
を含み、全てのバッファーが、NaClの添加なしに作られ、
前記タンパク質が、可溶性受容体、抗体、抗体断片、免疫グロブリン単一可変ドメイン、Fab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉鎖コンフォメーションの多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、及び二重特異性抗体からなる群から選択され、
前記溶液が細胞培養供給流であり、かつ
前記少なくとも一つの混入物が、宿主細胞タンパク質及び宿主細胞DNAからなる群から選択される、前記方法。
【請求項14】
ステップ(c)の後及びステップ(d)の前に以下のステップ:固相を、55 mMのトリス塩基、45 mMの酢酸を含み、pH 7.2の第二のプロテインA洗浄バッファーによって洗浄することによって混入物を除去するステップであって、第二のプロテインA洗浄バッファーがNaClの添加なしに作られるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(d)の後に以下のステップ:(e)回収されたタンパク質を含む溶液を、30 mMの酢酸、100 mMのHClにより、pH3.0に用量設定するステップ、(f)ステップ(e)の溶液をpH3.030~60分保つステップ、及び(g)ステップ(f)の溶液のpHを、1MトリスによりpH7.5に調整するステップ、及び場合によりステップ(g)により生産される溶液を濾過するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プロテインA又はプロテインL洗浄バッファーが、1 mM500 mMの酢酸ナトリウムをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体支持体に固定化されたプロテインA、プロテインG、又はプロテインL等のスーパー抗原を用いるタンパク質精製の分野に関する。特に、本発明は、所望のタンパク質産物の損失を最小限にしながら、洗浄中に宿主細胞混入物を除去するための、洗浄バッファー成分及び洗浄バッファーを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去十年にわたって、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、哺乳動物細胞培養供給流からのモノクローナル抗体の捕捉のための主要な選択法として、十分に確立されてきた。この非常に特異的なアフィニティーステップは、プロテインAリガンドと抗体のFc領域の間の特異的な結合により、単一のステップにおいて98%の不純物を除去することができる。プロテインAクロマトグラフィーにおける典型的な操作条件下では、清澄化された細胞培養供給流を、抗体のある程度の質量付加が達成されるまで、カラムに適用する。その後、カラムを典型的には高イオン強度のバッファーにより洗浄して、非特異的相互作用を介して樹脂に結合した宿主細胞混入物を除去する。その後、抗体を通常pHの変更によりカラムから溶出させ、さらなる処理のために回収する。したがって、この作業の主な目的は、イオン性及び疎水性相互作用を破壊し、宿主細胞混入物の除去を高め、それによって下流のユニット操作での精製負荷を低減するための、塩と組み合わせた界面活性剤の使用を調べることである。
【0003】
大スケールの精製については、産物収率を最大化するための洗浄及び溶出バッファーの成分の最適化に対して多くの努力がなされている。しかしながら、多くの異なるタンパク質産物が同時に精製される生産条件では、それぞれの個々のタンパク質産物のための特有の洗浄バッファーの開発は、様々なバッファー成分をスクリーニングし、それぞれの特定のタンパク質産物についての適切な洗浄バッファーを決定するために、多大な時間及び資源を必要とする。様々な種類のタンパク質に効率的に用いられ得る「一般的な」中間洗浄バッファーが、有用であり、望ましいものであろう。本発明は、かかる洗浄バッファー成分を用いるタンパク質精製法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、スーパー抗原クロマトグラフィーによって、少なくとも一つの混入物を含む溶液から、抗体、抗体断片、又は免疫グロブリン単一可変ドメインを含むタンパク質を精製するための方法であって、a)固体支持体に固定化されたスーパー抗原にタンパク質を吸着させるステップ、b)吸着されたタンパク質を含む固定化されたスーパー抗原を、脂肪族カルボキシレートを含む第一の洗浄バッファーと接触させることによって、少なくとも一つの混入物を除去するステップ、及びc)固体支持体に固定化されたスーパー抗原からタンパク質を溶出させるステップを含む、前記方法に関する。
【0005】
一態様において、本発明は、プロテインAクロマトグラフィーによって、混入したタンパク質の溶液からタンパク質を精製するための方法であって、
(a)固相に固定化されたプロテインAを、プロテインA平衡化バッファーにより平衡化するステップ、
(b)タンパク質を、混入した溶液から固相に固定化されたプロテインAに吸着させるステップ、
(c)固相を、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約50 mMの酢酸、少なくとも一つの脂肪族カルボキシレートを含み、約pH 7.5の第一のプロテインA洗浄バッファーによって洗浄することによって少なくとも一つの混入物を除去するステップであって、脂肪族カルボキシレートが、約100 mMのナトリウムカプリレート、約20 mMのナトリウムデカノエート、及び約20 mMのナトリウムドデカノエートからなる群より選択される前記ステップ、並びに
(d)プロテインA溶出バッファーにより固相からタンパク質を回収するステップ
を含む、前記方法に関する。本発明の一態様において、全てのバッファーは、NaClの添加なしに作られる。
【0006】
一実施形態では、プロテインA洗浄バッファーは、約1 mM~約500 mMの酢酸ナトリウムをさらに含む。一実施形態では、プロテインA洗浄バッファーは約300mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0007】
一態様において、本発明は、プロテインLクロマトグラフィーによって、混入したタンパク質の溶液からタンパク質を精製するための方法であって、
(a)固相に固定化されたプロテインLを、プロテインL平衡化バッファーにより平衡化するステップ、
(b)タンパク質を、混入した溶液から固相に固定化されたプロテインLに吸着させるステップ、
(c)固相を、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約50 mMの酢酸、少なくとも一つの脂肪族カルボキシレートを含み、約pH 7.5の第一のプロテインL洗浄バッファーによって洗浄することによって少なくとも一つの混入物を除去するステップであって、脂肪族カルボキシレートが、約100 mMのナトリウムカプリレート、約20 mMのナトリウムデカノエート、及び約20 mMのナトリウムドデカノエートからなる群より選択される、前記ステップ、並びに
(d)プロテインL溶出バッファーにより固相からタンパク質を回収するステップ
を含む、前記方法に関する。本発明の一態様において、全てのバッファーは、NaClの添加なしに作られる。
【0008】
一実施形態では、プロテインL洗浄バッファーは、約1 mM~約500 mMの酢酸ナトリウムをさらに含む。一実施形態では、プロテインL洗浄バッファーは、約300mMの酢酸ナトリウムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カプリレート濃度試験結果‐抗OSM。
図2】カプリレート濃度試験結果‐抗IL13。
図3】カルボン酸濃度試験結果。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明が、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的システムに限定されるものではなく、それがもちろん変更し得ることが理解される。また、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであって、限定することを意図するものではないことが理解される。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形の用語は、文脈が他で明示的に支持しない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば、「ポリペプチド」への言及は、二つ以上のポリペプチドの組み合わせを含む等である。
【0011】
量、時間等の測定可能な数値に関して本明細書で用いられる「約」は、特定の値から±20又は±10%、例えば±5%、±1%、及び±0.1%の変動を包含することを意図し、したがって、開示された方法を実施するためにバリエーションが適切である。
【0012】
他で定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が関する分野における通常の知識を有する者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で記載されるのと同様又は等価な任意の方法及び材料が本発明の試験のための実施において用いられ得るが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載される。本発明の説明及び特許請求の範囲において、以下の用語が用いられる。
【0013】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において、アミノ酸残基のポリマーを言及するために、互換的に用いられる。ポリペプチドは、天然(組織由来の)起源、組換え又は原核若しくは真核細胞調製物由来の天然発現、又は合成法により化学的に生産されるものであり得る。該用語は、一以上のアミノ酸残基が、対応する天然のアミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然のアミノ酸ポリマー及び非天然のアミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然のアミノ酸と同様の方法で機能する化学化合物を指す。非天然残基は、科学文献及び特許文献において十分に記載されている;天然アミノ酸残基の模倣物として有用なわずかな例示的な非天然成分及びガイドラインが以下に記載される。芳香族アミノ酸の模倣物は、例えば、D-又はL-ナフィルアラニン(naphylalanine);D-又はL-フェニルグリシン;D-又はL-2チエネイルアラニン(thieneylalanine);D-又はL-1,-2,3-又は4-ピレネイルアラニン(pyreneylalanine);D-又はL-3チエネイルアラニン(thieneylalanine);D-又はL-(2-ピリジニル)-アラニン;D-又はL-(3-ピリジニル)-アラニン;D-又はL-(2-ピラジニル)-アラニン;D-又はL-(4-イソプロピル)-フェニルグリシン;D-(トリフルオロメチル)-フェニルグリシン;D-(トリフルオロメチル)-フェニルアラニン;D-p-フルオロ-フェニルアラニン;D-又はL-p-ビフェニルフェニルアラニン;K-又はL-p-メトキシ-ビフェニルフェニルアラニン;D-又はL-2インドール(アルキル)アラニン;及びD-又はL-アルキルアラニン(alkylalanine)によって置換することによって作製され得、ここでアルキルは置換されたか又は未置換のメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソ-ブチル、2級-イソチル(isotyl)、イソ-ペンチル、又は非酸性アミノ酸であり得る。非天然アミノ酸の芳香環として、例えば、チアゾイル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンゾイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリル、及びピリジル芳香環が挙げられる。
【0014】
本明細書で用いられる「ペプチド」は、本明細書にて具体的に例示されるペプチドの保存的変異であるペプチドを含む。本明細書で用いられる「保存的変異」は、別の生物学的に類似する残基によるアミノ酸残基の置換を意味する。保存的変異の例として、限定されるものではないが、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、システイン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、ノルロイシン、又はメチオニン等の一つの疎水性残基を別の疎水性残基で置換すること、又はアルギニンのリジンでの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸での置換、若しくはグルタミンのアスパラギンでの置換等の一つの極性残基を別の極性残基で置換すること等が挙げられる。互いに置換可能である中性親水性アミノ酸として、アスパラギン、グルタミン、セリン、及びスレオニンが挙げられる。「保存的変異」はまた、その置換ポリペプチドに対して産生された抗体が、非置換ポリペプチドとも免疫反応を起こす限り、非置換の親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を用いることも含む。そのような保存的置換は、本発明のペプチドのクラスの定義の範囲内である。本明細書で用いられる「カチオン性」とは、pH7.4にて正味の正電荷を有するいずれのペプチドをも意味する。ペプチドの生物活性は、当業者に公知であり、本明細書に記載される標準的な方法によって測定することができる。
【0015】
「組換え」とは、タンパク質に関連して用いられる場合、異種核酸若しくはタンパク質の導入によって、又は天然核酸若しくはタンパク質の変化によって修飾されたタンパク質を指す。
【0016】
本明細書で用いられる「治療タンパク質」は、哺乳動物に投与されて、例えば研究者若しくは医師が求めている組織、系、動物、若しくはヒトの生物学的又は医学的応答を惹起することができるあらゆるタンパク質及び/又はポリペプチドを指す。治療タンパク質は、2つ以上の生物学的又は医学的応答を引き起こし得る。さらに、用語「治療有効量」は、そのような量を受けていない対応する被験者と比較して、限定されるものではないが、疾患、障害、若しくは副作用の治癒、予防、若しくは寛解、又は疾患若しくは障害の進行速度の低下をもたらす、いかなる量をも意味する。この用語はまた、正常な生理学的機能の向上に有効である量、ならびに第二の医薬剤の治療効果を向上又は補助する患者の生理学的機能を引き起こすのに有効である量もその範囲内に含む。
【0017】
本明細書において特定される全ての「アミノ酸」残基は、天然のL‐配置である。標準的なポリペプチド命名法に従って、アミノ酸残基に対する略語を以下の表に示す。
【表1】
【0018】
全てのアミノ酸残基配列は、本明細書において、その左から右への配向が慣例的なアミノ末端からカルボキシ末端への方向である式によって表されることには留意されたい。
【0019】
他の実施形態では、ポリペプチドは、抗原結合ポリペプチドである。一実施形態では、抗原結合ポリペプチドは、可溶性受容体、抗体、抗体断片、免疫グロブリン単一可変ドメイン、Fab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉鎖コンフォメーションの多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、又は二重特異性抗体からなる群より選択される。
【0020】
本明細書で用いられる用語「抗原結合ポリペプチド」は、抗体、抗体断片、及び抗原に結合する能力を有するその他のタンパク質構築物を指す。
【0021】
用語「Fv、Fc、Fd、Fab、又はF(ab)2」は、これらの標準的な意味で用いられる(例えば、Harlow et al., Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)参照)。
【0022】
「キメラ抗体」は、ドナー抗体由来の天然の可変領域(軽鎖及び重鎖)を、アクセプター抗体由来の軽鎖及び重鎖定常領域と合わせて含む、遺伝子操作された抗体の種類を指す。
【0023】
「ヒト化抗体」は、非ヒトドナー免疫グロブリン由来のCDRを有し、分子の残りの免疫グロブリン由来部分は、一つ(以上)のヒト免疫グロブリン由来である遺伝子操作された抗体の種類を指す。加えて、フレームワーク支持残基(framework support residues)は、結合親和性を保存するために、改変されてよい(例えば、Queen et al., Proc. Natl. Acad Sci USA, 86:10029-10032 (1989)、Hodgson et al., Bio/Technology, 9:421 (1991)を参照)。適切なヒトアクセプター抗体は、従来のデータベース、例えば、KABAT.RTM.データベース、Los Alamosデータベース、及びSwiss Proteinデータベースより、ドナー抗体のヌクレオチド及びアミノ酸配列に対する相同性によって選択され得る。ドナー抗体のフレームワーク領域に対する相同性(アミノ酸に基づく)によって特徴付けられるヒト抗体は、ドナーCDRの挿入のための重鎖定常領域及び/又は重鎖可変フレームワーク領域を提供するのに適切であり得る。軽鎖定常又は可変フレームワーク領域を提供することができる適切なアクセプター抗体は、同様の方法で選択することができる。アクセプター抗体重鎖及び軽鎖が、同じアクセプター抗体に由来する必要はないことには留意されたい。先行文献には、そのようなヒト化抗体作製のためのいくつかの方法が記載されており、例えば、欧州特許第0239400A号及び欧州特許第054951A号を参照されたい。
【0024】
用語「ドナー抗体」は、その可変領域、CDR、若しくはその他の機能性断片、又はそれらのアナログのアミノ酸配列を、第一の免疫グロブリンパートナーへ与え、それによって、改変免疫グロブリンコード領域を提供し、及びその結果として、ドナー抗体に特徴的である抗原特異性及び中和活性を有する改変抗体の発現を提供する抗体(モノクローナル及び/又は組換え)を指す。
【0025】
用語「アクセプター抗体」は、ドナー抗体に対して異種であり、その重鎖及び/若しくは軽鎖フレームワーク領域、ならびに/又はその重鎖及び/若しくは軽鎖定常領域をコードするアミノ酸配列のすべて(又はいずれかの部分であるが、いくつかの実施形態ではすべて)を、第一の免疫グロブリンパートナーへ与える抗体(モノクローナル及び/又は組換え)を指す。特定の実施形態では、ヒト抗体は、アクセプター抗体である。
【0026】
「CDR」は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の超可変領域である、抗体の相補性決定領域アミノ酸配列として定義される(例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)を参照されたい)。免疫グロブリンの可変部分には、3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDR(又はCDR領域)が存在する。したがって、本明細書で用いられる場合、「CDR」は、3つの重鎖CDRすべて、又は3つの軽鎖CDRすべて(又は、適当な場合、すべての重鎖CDR及びすべての軽鎖CDRの両方)を意味する。抗体の構造及びタンパク質フォールディングは、他の残基が抗原結合領域の一部と見なされることを意味し得、当業者にはそのように理解されるであろう。例えば、Chothia et al., (1989) Conformations of immunoglobulin hypervariable regions、 Nature 342, p 877-883、を参照されたい。
【0027】
本明細書で用いられる場合、用語「ドメイン」は、タンパク質の残りの部分とは独立した三次構造を有するフォールドされたタンパク質構造を指す。一般的に、ドメインは、タンパク質の別々の機能特性を担っており、多くの場合、タンパク質及び/又はそのドメインの残りの機能を喪失することなく、付加、除去、又は他のタンパク質へ転移され得る。「抗体単一可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含むフォールドされたポリペプチドドメインである。従って、それは、完全な抗体可変ドメイン、及び修飾可変ドメイン、例えば、一つ以上のループが抗体可変ドメインに特徴的ではない配列によって置き換えられたもの、又は、切断された、又はN末端若しくはC末端伸長を含む抗体可変ドメイン、ならびに少なくとも完全長ドメインの結合活性及び特異性を維持する可変ドメインのフォールドされた断片を含む。
【0028】
語句「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、異なるV領域又はドメインとは独立して、抗原又はエピトープと特異的に結合する抗体可変ドメイン(VH、VHH、VL)を意味する。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の異なる可変領域又は可変ドメインとのフォーマット(例えば、ホモダイマー又はヘテロマルチマー)として存在し得、ここで、他の領域又はドメインは、単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合に必要ではない(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインは、追加の可変ドメインとは独立して抗原と結合する)。「ドメイン抗体」又は「dAb」は、その用語が本明細書にて用いられる場合、抗原と結合することができる「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。免疫グロブリン単一可変ドメインは、ヒト抗体可変ドメインであり得るが、(例えば、国際公開第00/29004号に開示される)げっ歯類、コモリザメ、及びラクダ科(Camelid)VHHdAb(ナノボディ)等、他の種由来の単一抗体可変ドメインも含む。ラクダ科VHHは、元々軽鎖のない重鎖抗体を産生するラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、及びグアナコを含む種由来である免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。かかるVHHドメインは、本技術分野で利用可能である標準的な技術に従ってヒト化することができ、かかるドメインは、依然として、本発明において「ドメイン抗体」とみなされる。本明細書で用いられる場合、VHは、ラクダ科VHHドメインを含む。NARVは、コモリザメを含む軟骨魚類中にて同定された別の種類の免疫グロブリン単一可変ドメインである。これらのドメインは、新規抗原受容体可変領域(Novel Antigen Receptor variable region)(一般的に、V(NAR)又はNARVと略される)としても知られる。さらなる詳細については、Mol. Immunol. 44, 656-665 (2006)及び米国特許出願第20050043519A号を参照されたい。
【0029】
用語「エピトープ結合ドメイン」は、異なるV領域又はドメインとは独立して、抗原又はエピトープと特異的に結合するドメインを指し、これは、ドメイン抗体(dAb)、例えばヒト、ラクダ科、又はサメ免疫グロブリン単一可変ドメインであってよい。
【0030】
本明細書で用いられる場合、用語「抗原結合部位」は、抗原と特異的に結合することができるタンパク質上の部位を意味し、これは、単一ドメイン、例えばエピトープ結合ドメインであり得、又はこれは、標準的な抗体上で見ることができる対となったVH/VLドメインであってもよい。本発明のいくつかの態様では、一本鎖Fv(ScFv)ドメインは、抗原結合部位を提供することができる。
【0031】
用語「mAbdAb」及び「dAbmAb」は、本発明の抗原結合タンパク質を指すために本明細書で用いられる。これら2つの用語は、互換的に用いられ得、本明細書で用いられる場合、同じ意味を有することを意図している。
【0032】
一つの態様では、本発明は、少なくとも一つの混入物を含む溶液から、スーパー抗原クロマトグラフィーによって、抗体、抗体断片、又は免疫グロブリン可変ドメインを含むタンパク質を精製するための方法であって、a)固体支持体に固定化されたスーパー抗原にタンパク質を吸着させるステップ、b)吸着されたタンパク質を含む固定化されたスーパー抗原を、脂肪族カルボキシレートを含む第一の洗浄バッファーと接触させることによって、少なくとも一つの混入物を除去するステップ、及びc)固体支持体に固定化されたスーパー抗原からタンパク質を溶出させるステップを含む、前記方法に関する。
【0033】
一つの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーは、スーパー抗原を用いて実施される。「スーパー抗原」は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーと、これらのタンパク質のターゲットリガンド結合部位とは別の部位にて相互作用する一般的リガンド(generic ligands)を指す。ブドウ球菌エンテロトキシンは、T細胞受容体と相互作用するスーパー抗原の例である。抗体と結合するスーパー抗原としては、限定するものではないが、IgG定常領域と結合するプロテインG(Bjorck and Kronvall, J. Immunol., 133:969 (1984))、IgG定常領域及びVHドメインと結合するプロテインA(Forsgren and Sjoquist, J. Immunol., 97:822 (1966))、ならびにVLドメインと結合するプロテインL(Bjorck, J. Immunol., 140:1194 (1988))が挙げられる。一つの実施形態では、スーパー抗原は、プロテインA、プロテインG、及びプロテインLからなる群から選択される。
【0034】
本明細書で用いられる場合、用語「プロテインA」は、その天然源から回収されたプロテインA、合成によって作製されたプロテインA(例えば、ペプチド合成により、又は組換え技術により)、及びCH2/CH3領域を有するタンパク質と結合する能力を維持するその変異体を包含する。プロテインAは、レプリゲン(Repligen)、ファルマシア(Pharmacia)、及びフェルマテック(Fermatech)から市販のものを購入してもよい。
【0035】
本明細書で用いられる場合、「アフィニティークロマトグラフィー」は、等電点、疎水性、又はサイズ等の生体分子の一般的な特徴ではなく、生体分子間の特異的かつ可逆的な相互作用を、クロマトグラフィー分離を行うために利用するクロマトグラフィー法である。「プロテインAアフィィテニティークロマトグラフィー」又は「プロテインAクロマトグラフィー」は、プロテインAのIgG結合ドメインの、免疫グロブリン分子のFc部分に対するアフィニティーを利用する特異的なアフィニティークロマトグラフィー法を指す。このFc部分は、ヒト又は動物の免疫グロブリン定常ドメインであるCH2及びCH3又はこれらと実質的に類似する免疫グロブリンドメインを含む。プロテインAは、黄色ブドウ球菌の細胞壁由来の天然タンパク質、組換え又は合成法によって生産されたプロテインA、及びFc領域に結合する能力を保持する変異体を包含する。実際には、プロテインAクロマトグラフィーは、固体支持体に固定化されたプロテインAの使用を含む。Gagnon, Protein A Affinity Chromotography, Purification Tools for Monoclonal Antibodies, pp. 155-198, Validated Biosystems, 1996を参照されたい。プロテインG及びプロテインLもまた、アフィニティークロマトグラフィーのために用いられ得る。固体支持体は、プロテインAが付着する非水性のマトリックス(例えば、カラム、樹脂、マトリックス、ビーズ、ゲル等)である。かかる支持体として、アガロース、セファロース、ガラス、シリカ、ポリスチレン、コロジオンチャコール(collodion charcoal)、砂、ポリメタクリレート、架橋ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、及びアガロースとデキストランの表面増量剤(surface extender)及び他の好適な材料が挙げられる。好適な材料は本分野において周知である。任意の好適な方法が、スーパー抗原を固体支持体に固定するのに用いられ得る。タンパク質を好適な固体支持体に固定するための方法は、本分野において周知である。例えば、Ostrove, in Guide to Protein Purification, Methods in Enzymology, 182: 357-371, 1990を参照されたい。固定化されたプロテイン又はプロテインLを有するか又は有さないかかる固体支持体は、Vector Laboratory (Burlingame, Calif.)、Santa Cruz Biotechnology (Santa Cruz, Calif.)、BioRad (Hercules, Calif.)、Amersham Biosciences (part of GE Healthcare, Uppsala, Sweden)及びMillipore (Billerica, Mass.)等を含む、多くの市販の供給源から簡単に利用可能である。
【0036】
脂肪族カルボキシレートは、直鎖又は分岐鎖のいずれかであり得る。幾つかの実施形態では、脂肪族カルボキシレートは脂肪族カルボン酸若しくはその塩であるか、又は脂肪族カルボキシレートの供給源は脂肪族カルボン若しくはその塩である。幾つかの実施形態では、脂肪族カルボキシレートは直鎖であり、メタン酸(ギ酸)、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸(ウンデシル酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸(トリデシル酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、又はそれらのいずれかの塩からなる群より選択される。したがって、脂肪族カルボキシレートは、1~20の炭素長の炭素骨格を含み得る。一実施形態では、脂肪族カルボキシレートは6~12の炭素骨格を含む。一実施形態では、脂肪族カルボキシレートは、カプロエート、ヘプタノエート、カプリレート、及びデカノエートからなる群より選択される。一実施形態では、脂肪族カルボキシレートの供給源は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸のナトリウム塩、及び脂肪族カルボン酸のカリウム塩からなる群より選択される。一実施形態では、洗浄バッファーは、ナトリウムカプリレート、ナトリウムデカノエート、又はナトリウムドデカノエートを含む。一実施形態では、洗浄バッファーは、約10 mM~約125 mMのナトリウムカプリレート、約1 mM~約30 mMのナトリウムデカノエート又は約1 mM~約30 mMのナトリウムドデカノエートを含む。一実施形態では、洗浄バッファーは、約100 mMのナトリウムカプリレート、約20 mMのナトリウムデカノエート、又は約20 mMのナトリウムドデカノエートを含む。一実施形態では、洗浄バッファーは約1 mM~約500 mMの酢酸ナトリウムを含む。一実施形態では、洗浄バッファーは約300 mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0037】
一実施形態では、少なくとも一つの混入物は宿主細胞タンパク質又は宿主細胞DNAである。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、COS細胞、K562細胞、BHK細胞、PER.C6細胞、及びHEK細胞からなる群より選択される。宿主細胞は、大腸菌(E. Coli)(例えば、W3110、BL21)、枯草菌(B. subtilis)及び/又は他の好適な細菌からなる群より選択される細菌細胞;真核細胞、例えば真菌又は酵母細胞(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、アスペルギルス(Aspergillus)属、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、アカパンカビ(Neurospora crassa))であり得る。
【0038】
「バッファー」は、その酸-塩基共役成分の作用により、pHの変化を阻止する緩衝溶液である。
【0039】
「平衡バッファー」は、本明細書において、クロマトグラフィーのための固相の調製に用いられる。
【0040】
「ローディングバッファー」は、タンパク質及び混入物の混合物を、クロマトグラフィーマトリックス上へロードするために用いられるバッファーである。平衡バッファー及びローディングバッファーは、同じであってよい。
【0041】
「溶出バッファー」は、クロマトグラフィーマトリックスからタンパク質を溶出するために用いられるバッファーである。
【0042】
「塩」は、酸及び塩基の相互作用によって形成される化合物である。
【0043】
一実施形態では、洗浄バッファーは、有機酸、有機酸の共役塩基のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、及び有機塩基を含む。一実施形態では、洗浄バッファーは、NaClの添加なしに作られる。
【0044】
一実施形態では、有機酸としては、限定されるものではないが、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、グリシン、リン酸、グリシルクリシン(glycylclycine)、コハク酸、TES(2‐{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸)、MOPS(3‐(N‐モルホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン‐N,N’‐ビス(2‐エタンスルホン酸))、及びMES(2‐(N‐モルホリノ)エタンスルホン酸)が挙げられる。
【0045】
一実施形態では、有機塩基としては、限定されるものではないが、トリス塩基、アルギニン、ビス‐トリス、ビス‐トリス‐プロパン、ビシン(N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)グリシン)、HEPES(4‐2‐ヒドロキシエチル‐1‐ピペラジンエタンスルホン酸)、TAPS(3‐{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸)、及びトリシン(N‐トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシンからなる群が挙げられる。
【0046】
一実施形態では、有機酸の共役塩基は、有機酸の共役塩基のナトリウム、カリウム、又はアンモニウム塩である。一実施形態では、有機酸は、酢酸であり、酢酸の共役塩基は、ナトリウム塩である。
【0047】
一実施形態では、タンパク質は、抗原結合タンパク質である。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗体である。一実施形態では、抗体は、IgGクラスの抗体である。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、免疫グロブリン単一可変ドメインである。
【0048】
一態様において、本発明は、プロテインAクロマトグラフィーによって、混入したタンパク質の溶液からタンパク質を精製するための方法であって、
(a)固相に固定化されたプロテインAを、プロテインA平衡化バッファーにより平衡化するステップ、
(b)タンパク質を、混入した溶液から固相に固定化されたプロテインAに吸着させるステップ、
(c)固相を、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約55 mMの酢酸、少なくとも一つの脂肪族カルボキシレートを含み、約pH 7.5の第一のプロテインA洗浄バッファーによって洗浄することによって少なくとも一つの混入物を除去するステップであって、脂肪族カルボキシレートが、約100 mMのナトリウムカプリレート、約20 mMのナトリウムデカノエート、及び約20 mMのナトリウムドデカノエートからなる群より選択される前記ステップ、並びに
(d)プロテインA溶出バッファーにより固相からタンパク質を回収するステップ
を含む、前記方法に関する。一実施形態では、全てのバッファーが、NaClの添加なしに作られる。一実施形態では、プロテインA洗浄バッファーは、さらに約1 mM~約500 mMの酢酸ナトリウムを含む。一実施形態では、プロテインA洗浄バッファーは、約300 mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0049】
一実施形態では、平衡化バッファーは、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約50 mMの酢酸を含み、約pH 7.2であり、溶出バッファーは1.8mMの酢酸ナトリウム及び約28.2 mM~約300 mMの酢酸を含み、約pH 2.4~約pH 3.6である。
【0050】
一実施形態では、本方法は、ステップ(c)の後及びステップ(d)の前に以下のステップ:固相を、55 mMのトリス塩基、45mMの酢酸を含み、約pH 7.2の第二のプロテインA洗浄バッファーによって洗浄することによって混入物を除去するステップをさらに含む。一実施形態では、第二のプロテインA洗浄バッファーはNaClの添加なしに作られる。
【0051】
一実施形態では、本方法は、ステップ(d)の後に以下のステップ:(e)回収されたタンパク質を含む溶液を、30 mMの酢酸、100 mMのHClにより、約pH3.0に用量設定するステップ、(f)ステップ(e)の溶液を約pH3.0に約30~約60分保つステップ、及び(g)ステップ(f)の溶液のpHを、1Mトリスにより約pH7.5に調整するステップをさらに含む。
【0052】
一実施形態では、本方法は、ステップ(g)により生産される溶液を濾過するステップをさらに含む。
【0053】
一態様において、本発明は、プロテインLクロマトグラフィーによって、混入したタンパク質の溶液からタンパク質を精製するための方法であって、
(a)固相に固定化されたプロテインLを、プロテインL平衡化バッファーにより平衡化するステップ、
(b)タンパク質を、混入した溶液から固相に固定化されたプロテインLに吸着させるステップ、
(c)固相を、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約50 mMの酢酸、少なくとも一つの脂肪族カルボキシレートを含み、約pH 7.5の第一のプロテインL洗浄バッファーによって洗浄することによって少なくとも一つの混入物を除去するステップであって、脂肪族カルボキシレートが、約100 mMのナトリウムカプリレート、約20 mMのナトリウムデカノエート、及び約20 mMのナトリウムドデカノエートからなる群より選択される前記ステップ、並びに
(d)プロテインL溶出バッファーにより固相からタンパク質を回収するステップ
を含む、前記方法に関する。一実施形態では、全てのバッファーは、NaClの添加なしに作られる。一実施形態では、プロテインL洗浄バッファーは、約1 m~約500 mMの酢酸ナトリウムを含む。一実施形態では、プロテインL洗浄バッファーは、約300 mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0054】
一実施形態では、平衡化バッファーは、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約50 mMの酢酸を含み、約pH 7.2であり、溶出バッファーは、1.8 mMの酢酸ナトリウム及び約28.2 mM~約300 mMの酢酸を含み、約pH 2.4~約pH 3.6である。
【0055】
一実施形態では、本法は、ステップ(c)の後及びステップ(d)の前に以下のステップ:固相を、約55 mMのトリス塩基、約45 mMの酢酸を含み、約pH 7.2の第二のプロテインL洗浄バッファーによって洗浄することによって混入物を除去するステップをさらに含む。一実施形態では、第二のプロテインL洗浄バッファーはNaClの添加なしに作られる。
【0056】
一実施形態では、本方法は、ステップ(d)の後に以下のステップ:(e)回収されたタンパク質を含む溶液を、30 mMの酢酸、100 mMのHClにより、約pH3.0に用量設定するステップ、(f)ステップ(e)の溶液を約pH3.0に約30~約60分保つステップ、及び(g)ステップ(f)の溶液のpHを、1mMトリスにより約pH7.5に調整するステップをさらに含む。
【0057】
一実施形態では、本方法は、ステップ(g)により生産される溶液を濾過するステップをさらに含む。
【0058】
「溶液」は、細胞培養培地、例えば細胞培養供給流であり得る。供給流は、濾過され得る。溶液は、清澄化未処理ブロス(CUB)(又は清澄化発酵ブロス/上清)であり得る。CUBは、清澄化によって全ての細胞及び/又は細胞デブリが除かれた細胞培養上清としても知られる。あるいは、少なくとも一つのペリプラズム抽出物が、本分野で知られる方法を用いて回収される。溶液は、タンパク質を発現する細胞の溶解調製物(例えば、溶液は可溶化液)であり得る。
【0059】
「混入物」は、スーパー抗原クロマトグラフィーの前のロードサンプル中に、又はスーパー抗原クロマトグラフィーの後に溶出液中に存在するあらゆる外来の又は望ましくない分子を意味する。「プロセス不純物(process impurities)」もまた存在し得る。これらは、目的のタンパク質が生産されるプロセスの結果として存在する不純物である。例えば、これらには、宿主細胞タンパク質(HCP)、RNA、及びDNAが含まれる(例えば、ウイルス)。「HCP」は、目的のタンパク質とは無関係の、細胞培養又は発酵の間に宿主細胞によって生産されるタンパク質、例えば細胞内及び/又は分泌タンパク質を指す。宿主細胞タンパク質の例は、精製後及び精製中にまだ存在する場合に、目的のタンパク質にダメージをもたらし得るプロテアーゼである。例えば、プロテアーゼが目的のタンパク質を含むサンプル中に残っている場合、それは、もともとは存在していなかった産物関連物質又は不純物を生じさせ得る。プロテアーゼの存在は、精製の間及び/又は最終製剤において、時間をかけて目的のタンパク質の崩壊をもたらし得る。HCPの除去、又はHCPの低減したレベルは、定義によればプロテアーゼの除去又は低減と等しい。
【0060】
プロセス不純物は、細胞を増殖させるために、又は目的のタンパク質の発現を確実にするために用いられる成分、例えば、溶媒(例えば、酵母細胞を培養するために用いられるメタノール)、抗生物質、メトトレキサート(MTX)、培地成分、凝集剤等もまた含む。前のステップの間にサンプルに浸出するスーパー抗原固相の一部である分子、例えば、プロテインA、プロテインG、又はプロテインLもまた含まれる。
【0061】
混入物は、その活性を維持するが、その構造において異なるタンパク質を含む「産物関連物質」、及びその構造の相違のためにその活性を失ったタンパク質である「産物関連不純物」もまた含む。これらの産物関連変異体は、例えば、高分子量種(HMW)、低分子量種(LMW)、凝集タンパク質、前駆物質、分解されたタンパク質、ミスフォールドされたタンパク質、アンダージスルフィド結合された(underdisulfide-bonded)タンパク質、断片、及び脱アミド化種を含む。
【0062】
溶出液中のこれらの不純物のいずれか一つの存在は、洗浄ステップが成功したか否かを確かめるために測定され得る。例えば、本発明者は、タンパク質 mgあたりのHCP ngで測定される検出されたHCPのレベルの低減を示した(実施例を参照されたい)。
【0063】
したがって、スーパー抗原固体支持体からの溶出液は、約5000百万分率(ppm)以下、4000百万分率(ppm)以下、3000百万分率(ppm)以下、2,500百万分率(ppm)以下、2000百万分率(ppm)以下、1500百万分率(ppm)以下、1000百万分率(ppm)以下、約900百万分率(ppm)以下、約800百万分率(ppm)以下、約700百万分率(ppm)以下、約600百万分率(ppm)以下、約500百万分率(ppm)以下、約400百万分率(ppm)以下、約300百万分率(ppm)以下、約200百万分率(ppm)以下、約100百万分率(ppm)以下、約90 ppm以下、約80 ppm以下、約70 ppm以下、約60 ppm以下、又は約50 ppm以下でHCP又はDNAが存在するサンプル中にタンパク質を含み得る。「Ppm」は、ng/mlと等しく、「ppb」(「十億分率」)は、pg/mgと等しい。
【0064】
低減は、脂肪族カルボキシレートを含まない対照洗浄ステップと比較した際に示され得る。あるいは、低減は、脂肪族カルボキシレート及び酢酸ナトリウムを含まない対照洗浄ステップと比較した際に示され得る。
【0065】
記載された方法では、本発明の洗浄ステップの後、溶出液からの目的のタンパク質の回収率は、100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、70%、60%、50%又はそれ未満、例えば、100%~50%の範囲内の任意の別々の値、又はこの範囲の別々の値のいずれかのペアによって規定される任意のサブレンジである。溶出液中の回収率(%)は、カラムに適用された目的のタンパク質の量のパーセントとして、溶出液中の目的タンパク質の量を決定することによって、以下の式に従って計算される:
回収率=溶出液中のタンパク質の量×100 ロード中の産物の量
【0066】
溶出液中に存在する混入物の量は、ELISA、OCTET、又は上記混入物の一以上のレベルを決定するための他の方法によって決定され得る。本明細書に記載される実施例において、ELISA法は、サンプル中のHCPのレベルを決定するために用いられる。
本発明の様々な態様を以下に示す。
1.スーパー抗原クロマトグラフィーによって、少なくとも一つの混入物を含む溶液からタンパク質を精製するための方法であって、a)固体支持体に固定化されたスーパー抗原にタンパク質を吸着させるステップ、b)吸着されたタンパク質を含む固定化されたスーパー抗原を、脂肪族カルボキシレートを含む第一の洗浄バッファーと接触させることによって、少なくとも一つの混入物を除去するステップであって、脂肪族カルボキシレートが6~12の炭素骨格を含む前記ステップ、及びc)固体支持体に固定化されたスーパー抗原からタンパク質を溶出させるステップを含む、前記方法。
2.スーパー抗原が、プロテインA、プロテインG、及びプロテインLからなる群より選択される、上記1に記載の方法。
3.脂肪族カルボキシレートが、カプロエート、ヘプタノエート、カプリレート、デカノエート、及びドデカノエートからなる群より選択される、上記1又は2に記載の方法。
4.脂肪族カルボキシレートの供給源が、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸のナトリウム塩、脂肪族カルボン酸のカリウム塩からなる群より選択される、上記1~3のいずれかに記載の方法。
5.洗浄バッファーが、ナトリウムカプリレート、ナトリウムデカノエート、又はナトリウムドデカノエートを含む、上記1~4のいずれかに記載の方法。
6.洗浄バッファーが、約10 mM~約125 mMのナトリウムカプリレート、約1 mM~約30 mMのナトリウムデカノエート、又は約1 mM~約30 mMのナトリウムドデカノエートを含む、上記1~5のいずれかに記載の方法。
7.洗浄バッファーが、約100 mMのナトリウムカプリレート、約20 mMのナトリウムデカノエート、又は約20 mMのナトリウムドデカノエートを含む、上記1~6のいずれかに記載の方法。
8.洗浄バッファーが、さらに約100 mM~約400 mMの酢酸ナトリウムを含む、上記1~7のいずれかに記載の方法。
9.洗浄バッファーが、約300 mMの酢酸ナトリウムを含む、上記1~8のいずれかに記載の方法。
10.少なくとも一つの混入物が、宿主細胞タンパク質又は宿主細胞DNAである、上記1~9のいずれかに記載の方法。
11.宿主細胞が、CHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、COS細胞、K562細胞、BHK細胞、PER.C6細胞、及びHEK細胞からなる群より選択される哺乳動物細胞である、上記10に記載の方法。
12.宿主細胞が、E.coli、真菌細胞又は酵母細胞からなる群より選択される、上記10に記載の方法。
13.固体支持体が、アガロース、ポリメタクリレート、架橋ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、及びアガロースとデキストランの表面増量剤からなる群より選択される、上記1~12のいずれかに記載の方法。
14.タンパク質が、可溶性受容体、抗体、抗体断片、免疫グロブリン単一可変ドメイン、Fab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉鎖コンフォメーションの多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、又は二重特異性抗体からなる群より選択される、上記1~13のいずれかに記載の方法。
15.溶液が細胞培養濾液である、上記1~14のいずれかに記載の方法。
16.ステップc)後の宿主細胞タンパク質の相対的低減倍数が、約2~約10倍である、上記1~15のいずれかに記載の方法。
17.ステップc)後の宿主細胞タンパク質の相対的低減倍数が、約5倍である、上記16に記載の方法。
18.ステップc)後のDNAの相対的低減倍数が、約2倍~約150倍である、上記1~17のいずれかに記載の方法。
19.ステップc)後のDNAの相対的低減倍数が、約100倍である、上記18に記載の方法。
20.ステップc)後の宿主細胞タンパク質又はDNAの量が、約5000 ppm、4000 ppm、3000 ppm、2,500 ppm、2000 ppm、1500 ppm、1000 ppm、約900 ppm、約800 ppm、約700 ppm、約600 ppm、約500 ppm、約400 ppm、約300 ppm、約200 ppm、約100 ppm、約90 ppm、約80 ppm、約70 ppm、約60 ppm、又は約50 ppm未満である、上記1~19のいずれかに記載の方法。
21.ステップc)後にタンパク質がいずれかのさらなるアフィニティークロマトグラフィーに供されない、上記1~20のいずれかに記載の方法。
22.洗浄バッファーが、有機酸、アルカリ金属、又は有機酸の共役塩基のアンモニウム塩、及び有機塩基をさらに含み、洗浄バッファーがNaClの添加なしに作られる、上記1~21のいずれかに記載の方法。
23.有機酸が、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、グリシン、グリシルクリシン(glycylclycine)、コハク酸、TES(2-[[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ])エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、及びMES(2-(N-モルホリノ) エタンスルホン酸)からなる群より選択される、上記22に記載の方法。
24.有機塩基が、トリス塩基、ビス-トリス、ビス-トリス-プロパン、ビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、TAPS(3-[[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ]プロパンエタンスルホン酸)、及びトリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)からなる群より選択される、上記22に記載の方法。
25.有機酸の共役塩基が、有機酸の共役塩基のナトリウム、カリウム、又はアンモニウム塩である、上記22~24のいずれかに記載の方法。
26.有機酸が酢酸である、上記22~25のいずれかに記載の方法。
27.有機塩基がトリス塩基である、上記22~26のいずれかに記載の方法。
28.有機酸が酢酸であり、酢酸の共役塩基がナトリウム塩である、上記22~27のいずれかに記載の方法。
29.プロテインAクロマトグラフィーによって、混入したタンパク質の溶液からタンパク質を精製するための方法であって、
(a)固相に固定化されたプロテインAを、プロテインA平衡化バッファーにより平衡化するステップ、
(b)タンパク質を、混入した溶液から固相に固定化されたプロテインAに吸着させるステップ、
(c)固相を、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約55 mMの酢酸、少なくとも一つの脂肪族カルボキシレートを含み、約pH 7.2~約8.0の第一のプロテインA洗浄バッファーによって洗浄することによって少なくとも一つの混入物を除去するステップであって、脂肪族カルボキシレートが、約100 mMのナトリウムカプリレート、約20 mMのナトリウムデカノエート、及び約20 mMのナトリウムドデカノエートからなる群より選択される前記ステップ、並びに
(d)プロテインA溶出バッファーにより固相からタンパク質を回収するステップ
を含み、全てのバッファーが、NaClの添加なしに作られる、前記方法。
30.平衡化バッファーが、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約50 mMの酢酸を含み、約pH 7.2であり、溶出バッファーが1.8mMの酢酸ナトリウム及び約28.2 mM~約300 mMの酢酸を含み、約pH 2.4~約pH 3.6である、上記29に記載の方法。
31.ステップ(c)の後及びステップ(d)の前に以下のステップ:固相を、約50~55 mMのトリス塩基、約45~50 mMの酢酸を含み、約pH 7.2の第二のプロテインA洗浄バッファーによって洗浄することによって混入物を除去するステップであって、第二のプロテインA洗浄バッファーがNaClの添加なしに作られるステップをさらに含む、上記29又は30に記載の方法。
32.ステップ(d)の後に以下のステップ:(e)回収されたタンパク質を含む溶液を、30 mMの酢酸、100 mMのHClにより、約pH3.0に用量設定するステップ、(f)ステップ(e)の溶液を約pH3.0に約30~約60分保つステップ、及び(g)ステップ(f)の溶液のpHを、1Mトリスにより約pH7.5に調整する前記ステップをさらに含む、上記29~31のいずれかに記載の方法。
33.ステップ(g)により生産される溶液を濾過するステップをさらに含む、上記32に記載の方法。
34.プロテインLクロマトグラフィーによって、混入したタンパク質の溶液からタンパク質を精製するための方法であって、
(a)固相に固定化されたプロテインLを、プロテインL平衡化バッファーにより平衡化するステップ、
(b)タンパク質を、混入した溶液から固相に固定化されたプロテインLに吸着させるステップ、
(c)固相を、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約50 mMの酢酸、少なくとも一つの脂肪族カルボキシレートを含み、約pH 7の第一のプロテインL洗浄バッファーによって洗浄することによって少なくとも一つの混入物を除去するステップであって、脂肪族カルボキシレートが、約100 mMのナトリウムカプリレート、約20 mMのナトリウムデカノエート、及び約20 mMのナトリウムドデカノエートからなる群より選択される、前記ステップ、並びに
(d)プロテインL溶出バッファーにより固相からタンパク質を回収するステップ
を含み、全てのバッファーが、NaClの添加なしに作られる、前記方法。
35.平衡化バッファーが、約50 mM~約55 mMのトリス塩基、約45 mM~約50 mMの酢酸を含み、約pH 7.2であり、溶出バッファーが、約1.8 mMの酢酸ナトリウム、約28.2 mM~約300 mMの酢酸を含み、約pH 2.4~約pH 3.6である、上記34に記載の方法。
36.ステップ(c)の後及びステップ(d)の前に以下のステップ:固相を、約55 mMのトリス塩基、約45 mMの酢酸を含み、約pH 7.2の第二のプロテインL洗浄バッファーによって洗浄することによって混入物を除去するステップであって、第二のプロテインL洗浄バッファーがNaClの添加なしに作られるステップをさらに含む、上記34又は35に記載の方法。
37.ステップ(d)の後に以下のステップ:(e)回収されたタンパク質を含む溶液を、30 mMの酢酸、100 mMのHClにより、約pH3.0に用量設定するステップ、(f)ステップ(e)の溶液を約pH3.0に約30~約60分保つステップ、及び(g)ステップ(f)の溶液のpHを、1Mトリスにより約pH7.5に調整するステップをさらに含む、上記34~36のいずれかに記載の方法。
38.ステップ(g)により生産される溶液を濾過するステップをさらに含む、上記37に記載の方法。
39.プロテインA又はプロテインL洗浄バッファーが、約1 mM~約500 mMの酢酸ナトリウムをさらに含む、上記29又は34に記載の方法。
40.プロテインA又はプロテインL洗浄バッファーが、約300 mMの酢酸ナトリウムをさらに含む、上記39に記載の方法。
【実施例
【0067】
実施例1-材料及び方法
全てのクロマトグラフィープロセスは、GE Healthcare (Uppsala, Sweden)のAKTA Explorer 100Systemを用いて行った。純粋なタンパク質サンプルの濃度は、Thermo Scientific NanoDrop 1000 (RN)を用いて280nmで吸光度を測定することによって決定した。未精製のサンプルのタンパク質濃度は、Hewlett Packard (Palo Alto, CA)のAgilent 1100 HPLCにおいて、Applied Biosystems (Foster City, CA) から得たPOROSプロテインAカラム(2.1 x 30 mm)用いて決定した。MabSelect SuRe プロテインA培地は、GE Healthcare (Uppsala, Sweden)から得た。Vantageカラムは、Millipore社 (Bedford, MA)から得た。濁度測定は、HACH社(Loveland, CO, USA)から得た2100P Tubidimeterとガラスサンプルセル(カタログ# 24347-06)を用いて行った。全ての化学物質は、JT Baker (Phillipsburg, NJ) 又はSigma Aldrich (St Louis, MO) から得、USPグレードであった。
【0068】
全てのクロマトグラフィー試験を、他で記載しない限り、AKTA Explorer 100クロマトグラフィーシステムにおいて、1.1 x 25 cm MabSelect SuReカラムを用いて行った。細胞培養濾液の抗体濃度は、分析的プロテインAによって決定し、又はGSK, Upper Merionの生体分析科学(Bioanalytical Sciences)グループによって、Biacoreタンパク質濃度アッセイによって行った。
【0069】
実施例2-洗浄バッファー添加の初期スクリーニング
バッファーを、酢酸又はトリス塩基を用いて特定のpHまで用量設定することによって調製した。対照として、スクリーニング条件を、標準的な高塩プロテインA洗浄バッファー、50mMトリス、酢酸、1M NaCl、pH 7.2と同様の洗浄バッファーの結果と比較した。試験した5つの実験条件の完全なリストについては図1を、対応する結果については表3及び4を参照されたい。洗浄バッファーは、GSKアセット抗OSM (GSK315234)及び抗IL-13 (GSK679586)細胞培養ろ液のプロテインAクロマトグラフィーにおいて試験した。これらの二つの独立した事例は、同様のHCP及びDNA低減傾向をもたらした。Triton X100及びTriton X114洗浄バッファーについてのプロテインA産物における不純物レベルは、変更された不規則な溶出プロフィール並びに過剰な産物の損失のため、さらには評価しなかった。非イオン性エチレンオキシドポリマーベースの界面活性剤であるPS80を含有するバッファーは、標準的な1M NaCl洗浄バッファーと比べて、わずかな除去を示した。HCP及びDNAの最も大きい低減は、100 mMナトリウムカプリレート、カルボン酸のナトリウム塩、オクタン酸を含むバッファーに由来した。100 mMカプリレートバッファーは、抗OSM及び抗IL-13の両方について、対照と比べて約5倍のHCPの低減をもたらした。さらに、それは抗OSM及び抗IL-13について、対照と比べてそれぞれ100倍及び60倍のDNAの低減をもたらした。洗浄スクリーニング条件での抗OSM及び抗IL13についての完全な収率、HCP、DNA、及びSECデータについては表3及び表を参照されたい。
【表2】
【表3】
【表4】
実施例3-不純物の除去に対するカプリレート濃度の効果
【0070】
不純物の除去に対するナトリウムカプリレート濃度の効果を調べるために、一連のナトリウムカプリレート濃度を試験した。バッファーのリスト及び抗OSM及び抗IL-13についての不純物の除去に対するカプリレートの濃度の効果を試験するために用いた流速については表5を参照されたい。抗OSM及び抗IL-13についてのカプリレート濃度試験のデータは、図1及び図2に要約されている。抗IL-13及び抗OSMクロマトグラフィーの両方について、カプリレート濃度の変更は、明確にCHO HCP及びDNAの低減に影響する。カプリレートの濃度が高いほど、抗OSM及び抗IL-13の両方についてHCP及びDNAの大きな低減が観察された。しかしながら、HCP及びDNAの最大の低減が、ナトリウムカプリレートと0.3M酢酸ナトリウムの組み合わせにおいて観察された。界面活性剤と塩の組み合わせ効果は、界面活性剤又は塩単独と比べて、バッファーの除去能を増加させた。
【0071】
本試験で試験した最大ナトリウムカプリレート濃度は、pH 7.2、約125mMナトリウムカプリレートの経験的に決定された可溶性のため、100mMナトリウムカプリレートであった。可溶性は、より高いpHで増加すると予測されるため、より多くの宿主細胞混入物の除去が必要である場合、より高い濃度のカプリレートがバッファー系及び成分を調整することによって試験され得る。しかしながら、この試験に基づいて、本発明者は、0.3M酢酸ナトリウムと組み合わせた100 mMナトリウムカプリレートが宿主細胞不純物の十分な除去を与えたことを決定した。
【表5】
【0072】
実施例4-カルボン酸スクリーニング
ナトリウムカプリレートは、カルボン酸のクラスに属する8つの炭素長脂肪族鎖からなるカプリル酸のナトリウム塩である。これらの両親媒性の飽和非分岐塩は、それらの飽和炭素尾部及び荷電炭素頭部のために、界面活性剤として作用する。混入物の除去への炭素尾部の長さの効果を決定するために、幾つかの他のナトリウム塩を試験した。試験したこれらの他の塩は、ナトリウムカプロエート、ナトリウムヘプタノエート、ナトリウムカプリレート、ナトリウムデカノエート、及びナトリウムドデカノエートを含む。実験デザインは表6に要約されている。この実験の結果は、図3に要約されている。ナトリウムドデカノエートは、予備実験において観察された低い収率及び変更された溶出挙動のために、分析から除いた。ドデカノエートを除く全ての異なる塩が同様の産物収率をもたらし、それぞれが非常に異なる不純物プロフィールをもたらした。鎖における炭素数が増加するほど、不純物レベルは低下した。ナトリウムカプリレート(C8)未満の炭素鎖を有するナトリウム塩は、非常に高い不純物レベルをもたらした。洗浄バッファー添加物の最も良い二つの候補物質は、ナトリウムカプリレート及びナトリウムデカノエートである。
【表6】
【0073】
実施例5-最適化洗浄の濁度に対する効果
最適化カプリレート洗浄の下流ユニット操作に対する効果もまた、プロテインA後の沈降を最小化し、濾過性を高めることについての影響に特に焦点を当てて、調べた。1.16g/Lの抗IL-13細胞培養濾液由来の抗IL-13細胞培養濾液を、二つの異なる洗浄レジメンを用いて、2.6 ×27 cmのMabSelect SuReカラムで処理した。この材料の半分を、ナトリウムカプリレートを組み入れた最適化洗浄レジメンを用いて、プロテインAクロマトグラフィーにより処理した。この材料の他の半分を、カプリレート洗浄の代わりに平衡バッファーにより処理した。濾過性の測定として濁度を用いて、溶出プールの濁度測定値を記録した。その後、溶出液を30 mM酢酸、100 mM塩酸によりpH 3.5に用量設定した。濁度測定値を再び測定し記録した。溶出サンプルのpH 3.5での一時間のインキュベーションに続いて、その後、それらを次のユニット操作に備えて、pH 6.0に用量設定した。pH調整プールの濁度測定値を測定し、記録した。得られるデータを表に要約し、不純物プロフィールを表に示す。濁度を濾過性の指標と考えると、カプリレート洗浄は、アニオン交換供試材料の濁度の50%の低減のために、濾過への負荷のいくらかを低減しただろう。
【表7】
【表8】
【0074】
実施例6-トリスアセテートバッファーにおけるプロテインAカプリレートバッファーを用いるドメイン抗体精製
大腸菌で発現させた25kDa(Vk-VHalbudAb+TNFR1dAb)のdAb分子であるDOM0100を、プロテインA、0.5x20cmのカラムにパックしたGE HealthcareのMabSelect Xtraを用いて精製した。全てのステップについて、流速は300cm/hrであった。55mMのトリス塩基、45mMの酢酸、pH 7.5で平衡化した後、細胞培養濾液を13.5mg/mLで樹脂のカラムに供試した。供試力価は1.88mg/mlであった。その後、カラムを5カラム容量の55mMのトリス塩基、45mMの酢酸、300mMの酢酸ナトリウム、100mMのナトリウムカプリレート、pH7.5で洗浄した。その後、タンパク質を溶出させ、その後カラムを除去(clean)し、衛生化し保管した。溶出ピークの分析は、74.9%の収率についてELISAによって、1440ppmのHCP(宿主細胞タンパク質)をもたらした。同じ実験を、同じ条件、ただしカプリレート洗浄の代わりに高塩洗浄で二回繰り返し、これはそれぞれ77.2%及び76.0%の収率でELISAによって2398ppm及び2456ppmのHCPをもたらした。滞留時間と対応する0.5cm×10cmカラムで評価したクロマトグラフィーシークエンスの効果は、150サイクルまでの動的結合能には、何の影響も有さなかった。樹脂の選択性を、MabSelect及び塩基安定性のMabSelect SuReについて、同じクロマトグラフィーシークエンスを用いて同様に試験し、これは同等のHCP産物の質をもたらした。
【0075】
実施例7-プロテインL、カプリレート洗浄及びトリスアセテートバッファーを用いるDAT06 dAbの精製
大腸菌で発現させた11.5kDa (Vk) dAb分子であるDAT06を、0.5cmx20cmにパックしたプロテインL (GE HealthcareのCapto L)を用いて精製した。全てのステップについて、流速は300cm/hrであった。52mMのトリス塩基、48mMの酢酸、pH 7で平衡化した後、細胞培養濾液を13mg/mLで樹脂に供試した。その後、カラムを、再平衡化、溶出、除去(clean)、衛生化、及び保管される前に、5CV、52mMトリス塩基、48mM酢酸、100mMナトリウムカプリレート、pH7を用いて洗浄した。溶出ピークの分析は、96.4%の回収率についてELISAによって、5815ppmのHCPをもたらした。これに対し、52mMのトリス、48mMの酢酸、2MのNaCl、pH7.0高塩洗浄ステップを用いる同じクロマトグラフィーシークエンスは、ELISAによって7476ppmのHCP及び85.1%の回収率を与えた。平衡化バッファー、52mMトリス、48mM酢酸、pH7.0の平衡化バッファーによる洗浄ステップは、ELISAによって12523ppmのHCP及び94.1%の回収率を与えた。
図1
図2
図3