(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジン排ガス用セラミックフィルタの再生方法、ディーゼルエンジン排ガスの処理方法及びディーゼルエンジン排ガス集塵システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/029 20060101AFI20220113BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20220113BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20220113BHJP
F01N 3/027 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F01N3/029 Z
B01D39/20 D
B01D46/42
F01N3/027 B
(21)【出願番号】P 2019501095
(86)(22)【出願日】2017-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2017046797
(87)【国際公開番号】W WO2018154964
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2017030234
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野々川 正巳
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-314246(JP,A)
【文献】特開2003-049635(JP,A)
【文献】特開2003-293728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/029
F01N 3/027
B01D 39/20
B01D 46/42
F01N 3/023
F01N 3/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C重油を燃料とした
船舶用主機エンジンとして使用される2ストロークディーゼルエンジンの排ガス中の粒子状物質及び油分が付着したセラミックフィルタに対して、高圧ガスを用いた逆洗を実施することにより粒子状物質をセラミックフィルタから除去する工程Aと、
補機エンジンとして使用される4ストロークディーゼルエンジンの排ガスが該セラミックフィルタを通過することで該セラミックフィルタを300℃~500℃に加熱して該セラミックフィルタから油分を揮発除去する工程Bとを含むディーゼルエンジン排ガス用セラミックフィルタの再生方法。
【請求項2】
前記
4ストロークディーゼルエンジンはC重油を燃料とする請求項1に記載の再生方法。
【請求項3】
工程Bは前記セラミックフィルタを350℃以上に加熱することを含む請求項1又は2に記載の再生方法。
【請求項4】
ディーゼルエンジン排ガス用集塵機の出口から排出された集塵後の排ガスを工程Bの熱源に利用することを含む請求項1~3の何れか一項に記載の再生方法。
【請求項5】
前記4ストロークディーゼルエンジンの排ガス中の油分が5mg/Nm
3
以下である請求項1~4の何れか一項に記載の再生方法。
【請求項6】
工程Bはヒータで加熱したガスが前記セラミックフィルタを通過することを含む請求項1~5の何れか一項に記載の再生方法。
【請求項7】
セラミックフィルタを2系統以上用いたディーゼルエンジン排ガスの処理方法であって、
該2系統以上のセラミックフィルタは、
船舶用主機エンジンとして使用されるC重油を燃料とした共通の
2ストロークディーゼルエンジンの排ガスを導入可能に構成されており、
該2系統以上のセラミックフィルタのうち少なくとも1系統のセラミックフィルタに対して請求項1~6の何れか一項に記載の再生方法を実施中に、該再生方法を実施している少なくとも1系統のセラミックフィルタとは別の少なくとも1系統のセラミックフィルタで該排ガスを処理することを含むディーゼルエンジン排ガスの処理方法。
【請求項8】
前記2系統以上のセラミックフィルタは、共通のヒータで加熱したガスを導入可能に構成されており、
請求項1~6の何れか一項に記載の再生方法を実施している前記少なくとも1系統のセラミックフィルタに対して、該ヒータで加熱したガスを導入して工程Bを実施することを含む請求項7に記載のディーゼルエンジン排ガスの処理方法。
【請求項9】
2系統以上のセラミックフィルタが収容された集塵機を1台又は2台以上用いる請求項7又は8に記載のディーゼルエンジン排ガスの処理方法。
【請求項10】
1系統のセラミックフィルタが収容された集塵機を2台以上用いる請求項7~9の何れか一項に記載のディーゼルエンジン排ガスの処理方法。
【請求項11】
セラミックフィルタを2系統以上用いたディーゼルエンジン排ガス集塵システムであって、
該2系統以上のセラミックフィルタは、
船舶用主機エンジンとして使用されるC重油を燃料とした共通の
2ストロークディーゼルエンジンの排ガスを導入可能に構成されており、
該2系統以上のセラミックフィルタのうち少なくとも1系統のセラミックフィルタに対して請求項1~6の何れか一項に記載の再生方法を実施中に、該再生方法を実施している少なくとも1系統のセラミックフィルタとは別の少なくとも1系統のセラミックフィルタで該排ガスを処理することが可能に構成されたディーゼルエンジン排ガス集塵システム。
【請求項12】
前記2系統以上のセラミックフィルタは、共通のヒータで加熱したガスを導入可能に構成されており、
請求項1~6の何れか一項に記載の再生方法を実施している前記少なくとも1系統のセラミックフィルタに対して、該ヒータで加熱したガスを導入して工程Bを実施することが可能に構成された請求項11に記載のディーゼルエンジン排ガス集塵システム。
【請求項13】
2系統以上のセラミックフィルタが収容された集塵機を1台又は2台以上用いる請求項11又は12に記載のディーゼルエンジン排ガス集塵システム。
【請求項14】
1系統のセラミックフィルタが収容された集塵機を2台以上用いる請求項11~13の何れか一項に記載のディーゼルエンジン排ガス集塵システム。
【請求項15】
2系統以上のセラミックフィルタと、2系統以上の排ガス導入弁と、2系統以上の再生用ガス導入弁と、2系統以上の逆洗弁と、逆洗ガスタン
クとを備えたディーゼルエンジン排ガス集塵システムであって、
該2系統以上のセラミックフィルタは、
船舶用主機エンジンとして使用されるC重油を燃料とした共通の
2ストロークディーゼルエンジンの排ガスを、対応する系統の排ガス導入弁を介して上流側から導入可能に構成されており、
該2系統以上のセラミックフィルタは、
補機エンジンとして使用される4ストロークディーゼルエンジンの排ガスを、対応する系統の再生用ガス導入弁を介して上流側から導入可能に構成されており、
該2系統以上のセラミックフィルタは、逆洗ガスタンクから供給される逆洗ガスを、対応する系統の逆洗弁を介して下流側から導入可能に構成されている、
ディーゼルエンジン排ガス集塵システム。
【請求項16】
前記2系統以上のセラミックフィルタ
は、共通のヒータで300℃~500℃に加熱したガスを、対応する系統の再生用ガス導入弁を介して上流側から導入可能に構成されている請求項15に記載のディーゼルエンジン排ガス集塵システム。
【請求項17】
該2系統以上のセラミックフィルタ
の下流側から排出される集塵後の排ガスを、前記ヒータに供給するための循環ダクトを備えた請求
項16に記載のディーゼルエンジン排ガス集塵システム。
【請求項18】
2系統以上のセラミックフィルタが収容された集塵機を1台又は2台以上用いる請求項15~17の何れか一項に記載のディーゼルエンジン排ガス集塵システム。
【請求項19】
1系統のセラミックフィルタが収容された集塵機を2台以上用いる請求項15~18の何れか一項に記載のディーゼルエンジン排ガス集塵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディーゼルエンジン排ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するためのセラミックフィルタを再生する方法に関する。また、本発明はディーゼルエンジン排ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するための処理方法に関する。また、本発明はディーゼルエンジン排ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するためのディーゼルエンジン排ガス集塵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、船舶、産業機械等のエンジンから排出される高温の排ガス中の粒子状物質を捕集するため、バグフィルタ、セラミックフィルタ、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF)といった各種ろ過式集塵機が知られている。ろ過式集塵機においては、フィルタが詰まった場合の再生方法として、A)高圧空気による逆洗、B)高温ガスによる燃焼再生、及び、C)電気加熱による燃焼再生等が採用されている。
【0003】
A)の方法として特許第3066247号公報(特許文献1)に記載される方法が例示される。当該公報にはセラミックフィルタの下流側に洗浄用ガスの噴出管を配設し、同セラミックフィルタの下流側端が全てまたは所定の区画毎に臨む1つまたは複数の閉塞室を設けるとともに同閉塞室に流入出管を設け、前記噴出管から噴出される洗浄用ガスを流入出管を通して前記閉塞室内に導入する方法が記載されている。
【0004】
B)の方法としては特許第3073152号公報(特許文献2)に記載される方法が例示される。当該公報にはディーゼル機関からの排ガス中に含まれる煤塵を濾過材で捕集し、煤塵を捕集した濾過材の一部に高温の焼却用ガスを供給することによって、煤塵を焼却して濾過材を再生する方法が記載されている。
【0005】
C)の方法としては特開2011-236787号公報(特許文献3)に記載される方法が例示される。当該公報においては、金網ヒータ、その両側から挟み込んだ一対のセラミック不織布、及びセラミック不織布の外側に積層された一対の支持用金網から成る積層体を蛇腹状に折り曲げて筒状に成形された筒体から構成されたフィルタが記載されている。フィルタの外周側には外周ヒータが配置される。当該公報によれば、フィルタを再生するために粒子状物質を焼却する時に、金網ヒータと外周ヒータに通電してフィルタ全域で均等に低温燃焼を確保することで、短時間に再生を達成可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3066247号公報
【文献】特許第3073152号公報
【文献】特開2011-236787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
船舶主機エンジンは、通常2ストロークエンジンで、燃料はC重油を使用している。2ストロークエンジンは燃焼効率が高いため、排ガス温度は250℃前後と比較的低温であり、更に、シリンダー油が飛散するため、排ガス中の油分(SOF)が多い傾向にある。また、C重油は粗悪な燃料であるため、燃料中にバナジウムやニッケルといった金属成分を多く含む傾向がある。そのため、従来技術ではフィルタ再生時に以下のような問題が発生する。
【0008】
高圧空気による逆洗は、煤やダスト等の粒子状物質をフィルタから払い落す技術としては有効であるが、フィルタに付着した油分に対しては洗浄効果が小さい。また、油分が付着した粒子状物質に対しても十分な洗浄効果を得ることができない。電気加熱又は高温ガスによる燃焼再生は、燃焼時のフィルタ内部の温度制御が難しく、場合によっては局所的に高温になり、フィルタが破壊する可能性がある。特に、船舶に使用される大型ディーゼルエンジンの燃料であるC重油を燃焼させた排気ガス中に含まれるバナジウムは800℃以上の高温領域でセラミックスへの悪影響が大きく、例えば、コーディエライト製のフィルタにバナジウムが付着した状態で加熱再生した場合、燃焼熱でフィルタが溶ける可能性がある。このため、高価な炭化珪素等の材料を使用する必要も出てくる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、セラミックフィルタに付着した粒子状物質及び油分の洗浄効果に優れると共に、セラミックフィルタへのダメージの少ないディーゼルエンジン排ガス用セラミックフィルタの再生方法を提供することを課題の一つとする。また、本発明はそのような再生方法を用いたディーゼルエンジン排ガスの処理方法を提供することを別の課題の一つとする。また、本発明はディーゼルエンジン排ガス集塵システムを提供することを更に別の課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、高圧ガス逆洗と低温加熱を組み合わせた以下の再生方法が有効であることを見出した。
【0011】
本発明は第一の側面において、C重油を燃料としたディーゼルエンジンの排ガス中の粒子状物質及び油分が付着したセラミックフィルタに対して、高圧ガスを用いた逆洗を実施することにより粒子状物質をセラミックフィルタから除去する工程Aと、該セラミックフィルタを300℃~500℃に加熱して該セラミックフィルタから油分を揮発除去する工程Bとを含むディーゼルエンジン排ガス用セラミックフィルタの再生方法である。
【0012】
本発明に係る再生方法の一実施形態においては、前記ディーゼルエンジンが船舶用主機エンジンである。
【0013】
本発明に係る再生方法の別の一実施形態においては、工程Bは前記セラミックフィルタを350℃以上に加熱することを含む。
【0014】
本発明に係る再生方法の更に別の一実施形態においては、ディーゼルエンジン排ガス用集塵機の出口から排出された集塵後の排ガスを工程Bの熱源に利用することを含む。
【0015】
本発明に係る再生方法の更に別の一実施形態においては、補機エンジン排ガスを工程Bの熱源に利用することを含む。
【0016】
本発明に係る再生方法の更に別の一実施形態においては、工程Bはヒータで加熱したガスが前記セラミックフィルタを通過することを含む。
【0017】
本発明は第二の側面において、セラミックフィルタを2系統以上用いたディーゼルエンジン排ガスの処理方法であって、
該2系統以上のセラミックフィルタは、C重油を燃料とした共通のディーゼルエンジンの排ガスを導入可能に構成されており、
該2系統以上のセラミックフィルタのうち少なくとも1系統のセラミックフィルタに対して本発明に係る再生方法を実施中に、該再生方法を実施している少なくとも1系統のセラミックフィルタとは別の少なくとも1系統のセラミックフィルタで該排ガスを処理することを含むディーゼルエンジン排ガスの処理方法である。
【0018】
本発明に係るディーゼルエンジン排ガスの処理方法の一実施形態においては、前記2系統以上のセラミックフィルタは、共通のヒータで加熱したガスを導入可能に構成されており、本発明に係る再生方法を実施している前記少なくとも1系統のセラミックフィルタに対して、該ヒータで加熱したガスを導入して工程Bを実施することを含む。
【0019】
本発明に係るディーゼルエンジン排ガスの処理方法の更に別の一実施形態においては、2系統以上のセラミックフィルタが収容された集塵機を1台又は2台以上用いる。
【0020】
本発明に係るディーゼルエンジン排ガスの処理方法の更に別の一実施形態においては、1系統のセラミックフィルタが収容された集塵機を2台以上用いる。
【0021】
本発明は更に第三の側面において、セラミックフィルタを2系統以上用いたディーゼルエンジン排ガス集塵システムであって、
該2系統以上のセラミックフィルタは、C重油を燃料とした共通のディーゼルエンジンの排ガスを導入可能に構成されており、
該2系統以上のセラミックフィルタのうち少なくとも1系統のセラミックフィルタに対して本発明に係る再生方法を実施中に、該再生方法を実施している少なくとも1系統のセラミックフィルタとは別の少なくとも1系統のセラミックフィルタで該排ガスを処理することが可能に構成されたディーゼルエンジン排ガス集塵システムである。
【0022】
本発明の第三の側面に係るディーゼルエンジン排ガス集塵システムの一実施形態においては、前記2系統以上のセラミックフィルタは、共通のヒータで加熱したガスを導入可能に構成されており、
本発明に係る再生方法を実施している前記少なくとも1系統のセラミックフィルタに対して、該ヒータで加熱したガスを導入して工程Bを実施することが可能に構成されている。
【0023】
本発明の第三の側面に係るディーゼルエンジン排ガス集塵システムの別の一実施形態においては、2系統以上のセラミックフィルタが収容された集塵機を1台又は2台以上用いる。
【0024】
本発明の第三の側面に係るディーゼルエンジン排ガス集塵システムの更に別の一実施形態においては、1系統のセラミックフィルタが収容された集塵機を2台以上用いる。
【0025】
本発明は第四の側面において、
2系統以上のセラミックフィルタと、2系統以上の排ガス導入弁と、2系統以上の再生用ガス導入弁と、2系統以上の逆洗弁と、逆洗ガスタンクと、ヒータとを備えたディーゼルエンジン排ガス集塵システムであって、
該2系統以上のセラミックフィルタは、C重油を燃料とした共通のディーゼルエンジンの排ガスを、対応する系統の排ガス導入弁を介して上流側から導入可能に構成されており、
該2系統以上のセラミックフィルタは、共通のヒータで300℃~500℃に加熱したガスを、対応する系統の再生用ガス導入弁を介して上流側から導入可能に構成されており、
該2系統以上のセラミックフィルタは、逆洗ガスタンクから供給される逆洗ガスを、対応する系統の逆洗弁を介して下流側から導入可能に構成されている、
ディーゼルエンジン排ガス集塵システムである。
【0026】
本発明の第四の側面に係るディーゼルエンジン排ガス集塵システムの一実施形態においては、
前記2系統以上のセラミックフィルタの下流側から排出される集塵後の排ガスを、前記ヒータに供給するための循環ダクトを備える。
【0027】
本発明の第四の側面に係るディーゼルエンジン排ガス集塵システムの別の一実施形態においては、
該2系統以上のセラミックフィルタは、補機エンジン排ガスを、対応する系統の再生用ガス導入弁を介して上流側から導入可能に構成されている。
【0028】
本発明の第四の側面に係るディーゼルエンジン排ガス集塵システムの更に別の一実施形態においては、2系統以上のセラミックフィルタが収容された集塵機を1台又は2台以上用いる。
【0029】
本発明の第四の側面に係るディーゼルエンジン排ガス集塵システムの更に別の一実施形態においては、1系統のセラミックフィルタが収容された集塵機を2台以上用いる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るディーゼルエンジン排ガス用セラミックフィルタの再生方法は、セラミックフィルタに付着した粒子状物質及び油分の洗浄効果に優れる。また、同再生方法はセラミックフィルタへのダメージが少ない。このため、油分の多いディーゼルエンジン排ガス中の粒子状物質を長期間に亘って安定して捕集することが可能となり、集塵機のメンテナンスが容易となる。よって、本発明は、船舶に使用される大型ディーゼルエンジンの燃料であるC重油を燃焼させた排気ガス中の粒子状物質を捕集する用途に好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係るセラミックフィルタ式集塵機の再生方法を適用可能なディーゼルエンジン排ガス集塵システムの構成例である。
【
図2】複数のセラミックフィルタ式集塵機を設置するときのディーゼルエンジン排ガス集塵システムの構成例である。
【
図3】船舶主機からの排ガス中の油分が付着した煤のTG-DTA測定結果である。
【
図4】柱状セラミックフィルタによる集塵及び逆洗のメカニズムを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(1.本発明が対象とする排ガス及び集塵機)
ディーゼル燃料には軽油、A重油、C重油などがある。このうちC重油は大型船舶用ディーゼル燃料として多用されているが、C重油を用いたディーゼルエンジンの排ガス中には他のディーゼル燃料を使用したときと比べて油分(SOF)が多い傾向がある。例えば、C重油を燃料としたディーゼルエンジンの排ガス中にはn-ヘキサン吸収重量法(環境庁告示64号)で測定して、10mg/Nm3以上の油分(ノルマルヘキサン抽出物質)が含まれており、20mg/Nm3以上の油分が含まれていることもあり、更には30mg/Nm3以上の油分が含まれていることもある。また、C重油は粗悪な燃料であるため、燃料中にバナジウムやニッケルといった金属成分を多く含む傾向がある。このため、C重油を燃料としたディーゼルエンジン排ガスをセラミックフィルタを備えた集塵機(本明細書においては、セラミックフィルタを備えた集塵機のことを「セラミックフィルタ式集塵機」ということがある。)で処理すると、他の燃料では問題とならなかったフィルタ再生時の問題が発生する。
【0033】
一般的なろ過式集塵機においては、フィルタに捕集された粒子状物質の量が大きくなり、フィルタの上流及び下流間での差圧が大きくなると、フィルタから粒子状物質を除去してフィルタを再生することが行われる。フィルタの再生方法としては高圧空気による逆洗や電気加熱又は高温ガスによる燃焼再生が挙げられるが、先述したように、これらの方法ではC重油を燃料としたディーゼルエンジンの排ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するためのセラミックフィルタ式集塵機の再生には不適である。これに対して、本発明は、C重油を燃料としたディーゼルエンジンの排ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するためのセラミックフィルタ式集塵機の再生に好適に使用することができる。
【0034】
C重油はJIS規格(K2205:1991)による分類である。C重油に対応する国際的な名称は、MFO(Marine Fuel Oil:船舶用燃料油)、HFO(Heavy Fuel Oil:重質燃料油)及びRFO(Residual Fuel Oil:残渣燃料油)である。参考のため、A重油及びC重油に対応する国際的な名称を表1に示す。
【0035】
【0036】
船舶には船を進めるための主機エンジンと、船の中で使用する電気を発電するための補機エンジンが搭載されている。補機エンジンは4ストロークエンジンが採用されており、排ガス温度も350℃以上と比較的高温であり、排ガス中の油分も少ないが、主機エンジンは、通常2ストロークエンジンであり、2ストロークエンジンは燃焼効率が高いため、排ガス温度は250℃前後と比較的低温であり、同じC重油を使用する船舶補機エンジンと比べて、排ガス中の油分が極めて多い。従って、本発明はとりわけ、C重油を燃料とした船舶用主機エンジンの排ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するためのセラミックフィルタ式集塵機の再生に好適に使用することができる。
【0037】
セラミックフィルタ式集塵機としては種々のものが知られており、本発明は各種のセラミックフィルタ式集塵機に対して特に制限なく使用可能である。セラミックフィルタの材質としては、限定的ではないが、コーディエライト製、炭化珪素質製が例示される。これらの中でも、コストの安いコーディエライト製が好ましい。セラミックフィルタの構造としては、限定的ではないが、多孔質の隔壁によって区画形成された複数のセルを有するハニカム構造が挙げられる。セル内を排ガスが通過する間に、粒子状物質(PM)が排ガスから分離されて捕集される。セラミックフィルタの形状は、限定的ではないが、多角柱(四角柱など)や円柱などの柱状とすることができる。柱状フィルタにおいては、一方の底面から処理前のガスを流入させ、他方の底面から処理後のガスを流出させることにより、集塵処理を行うことができるように構成可能である。
【0038】
例示的には、
図4に示すように、上流側の端面が開口するとともに下流側の端面が目封じされた複数の第1のセル401と、上流側の端面が目封じされて下流側の端面が開口する複数の第2のセル402とを有するハニカム構造の柱状セラミックフィルタ400が挙げられる。この種のセラミックフィルタ400においては以下のようなメカニズムにより粒子状物質404が捕集される(
図4の左図参照)。上流側の端面に排ガスが供給されると、排ガスは第1のセル401に導入されて第1のセル401内を下流に向かって進む。第1のセル401は下流側の端面が目封じされているため、排ガスは第1のセル401と第2のセル402を区画する多孔質の隔壁を透過して第2のセルに流入する。粒子状物質404は隔壁を通過できないため、第1のセル401内に捕集される。排ガス中の油分も同様に第1のセル401内に捕集される。第2のセル402に流入した排ガスは第2のセル402内を下流に向かって進み、下流側の端面から排出される。
【0039】
また、この種のセラミックフィルタ400の逆洗は以下のようにして行うことができる(
図4の右図参照)。洗浄用ガス406をセラミックフィルタ400の下流側の端面に向かって噴射すると、洗浄用ガス406はセラミックフィルタ400の第2のセル402内を上流に向かって進む。第2のセル402は上流側の端面が目封じされているため、洗浄用ガス406は第1のセル401と第2のセル402を区画する多孔質の隔壁を透過して第1のセル401に流入する。第1のセル401に流入した洗浄用ガス406は第1のセル401内を上流に向かって進み、第1のセル401内に捕集されていた粒子状物質404を同伴して、上流側の端面から排出される。但し、第1のセル401内に捕集されていた油分は逆洗では十分に排出することはできない。
【0040】
なお、本明細書において、セラミックフィルタの上流側というのは集塵前の排ガスがセラミックフィルタに流入する側を指し、セラミックフィルタの下流側というのは集塵後の排ガスがセラミックフィルタから流出する側を指す。
【0041】
(2.セラミックフィルタの再生方法)
C重油を用いたディーゼルエンジンの排ガスを対象とするセラミックフィルタ式集塵機のセラミックフィルタを再生するにあたっては、フィルタへのダメージを避けながら如何にして油分を除去するかが重要である。本発明においては、油分は揮発するが、黒鉛は燃焼しない程度の比較的低温でセラミックフィルタを加熱するという方法を採用する。これにより、油分の除去をフィルタへのダメージを与えることなく高効率で行うことができる。従って、本発明に係るディーゼルエンジン排ガス用セラミックフィルタの再生方法の一実施形態においては、C重油を燃料としたディーゼルエンジンの排ガス中の粒子状物質及び油分が付着したセラミックフィルタに対して、高圧ガスを用いた逆洗を実施することにより粒子状物質をセラミックフィルタから除去する工程Aと、該セラミックフィルタを300℃~500℃に加熱して該セラミックフィルタから油分を揮発除去する工程Bとを含む。
【0042】
工程Aにおいては、高圧ガスを用いた逆洗を実施することにより粒子状物質をセラミックフィルタから除去する。高圧ガスとしては、例えばゲージ圧が0.1MPa以上、典型的には0.2~1MPa、より典型的には0.3~0.7MPaの圧縮ガスを使用することができる。高圧ガスの種類としては、限定的ではないが、空気の他、窒素及びアルゴン等の不活性ガス、水蒸気が例示される。これらの中でもコストが安く、汎用性がある空気を使用することが好ましい。1回の逆洗に要する時間や逆洗の頻度は粒子状物質の捕集量によって適宜設定すればよい。
【0043】
工程Aにおいては、主として粒子状物質がセラミックフィルタから除去される。粒子状物質には煤やダストが含まれる。油分そのものや、油分が多量に付着した粒子状物質は逆洗では十分にセラミックフィルタから除去することは困難である。
【0044】
工程Bにおいては、セラミックフィルタを加熱して該セラミックフィルタから油分を揮発除去する。
図3に、船舶主機からの排ガス中の油分が付着した煤のTG-DTA測定結果を示す。TG曲線を見ると、300℃付近から重量減少が観察され、350℃付近で急激な重量減少が観察される。また、DTA曲線を見ると、この温度付近から発熱量が大きくなり、388.9℃で発熱量が最大となっている。この結果から、300℃以上に加熱すると、煤中の油分が揮発し、390℃近辺で一部燃焼を開始することを示していると考えられる。
【0045】
このため、セラミックフィルタから油分を揮発除去するためには、セラミックフィルタを300℃以上に加熱することが好ましく、350℃以上に加熱することがより好ましい。
【0046】
一方で、加熱温度を高くしすぎると、煤中の黒鉛の燃焼が生じ、燃焼熱によって更に温度が上昇するため、温度制御が難しくなる。バナジウムによるセラミックフィルタへのダメージも無視できなくなる。また、加熱のためのエネルギー消費量も大きくなって不経済となる。よって、セラミックフィルタから油分を揮発除去する際の加熱温度は500℃以下とするのが好ましく、450℃以下とするのがより好ましい。1回の加熱操作に要する時間や加熱操作の頻度は油分の捕集量によって適宜設定すればよい。
【0047】
セラミックフィルタを加熱する際には、300~500℃に加熱したガスがセラミックフィルタを通過するようにすると、揮発した油分がガスに同伴されて排出されやすいので好ましい。加熱したガスは、排ガスと同じように、セラミックフィルタの上流側から下流側に流すことが好ましい。セラミックフィルタを加熱するための熱源としては、液体燃料や電気などを利用したヒータを使用することが考えられる。ヒータで加熱したガスがセラミックフィルタを通過するように構成することもできる。
【0048】
しかしながら、ヒータによって、外気を加熱したりフィルタを直接加熱したりする場合、周囲温度から300℃以上に加熱する必要があるため、エネルギー消費量が大きくなる。そこで、廃熱を利用して加熱する事が好ましい。例えば、C重油を用いたディーゼルエンジンの排ガスを対象とするセラミックフィルタ式集塵機の出口から排出される清浄な排ガスを循環利用することができる。セラミックフィルタ式集塵機の出口から排出される排ガスの温度は例えば250℃程度であるから、所要温度まで加熱するのに必要なエネルギー量が少なくて済む。
【0049】
また、補機エンジンからの排ガス中の油分が少ない場合(例:5mg/Nm3以下)は、該排ガスがセラミックフィルタを通過することでセラミックフィルタを加熱してもよい。補機エンジンからの排ガス温度が300℃以上である場合には、ヒータも不要である。補機エンジンからの排ガスをセラミックフィルタに通過させると、該排ガス中の粒子状物質をセラミックフィルタで捕集しながら、セラミックフィルタ内の油分を揮発除去できるという利点も得られる。
【0050】
工程A及び工程Bを実施する順番には特に制約はなく、セラミックフィルタに捕集された粒子状物質及び油分の量に応じて工程Aと工程Bを適宜組み合わせて実施すればよい。このため、工程Aを実施後に工程Bを実施してもよく、工程Bを実施後に工程Aを実施してもよい。工程A及び工程Bを交互に実施することもできる。工程Aを複数回実施した後に工程Bを実施してもよい。工程Bを複数回実施した後に工程Aを実施してもよい。
【0051】
(3.ディーゼルエンジン排ガスの処理方法)
セラミックフィルタの再生中、ディーゼルエンジン排ガスの処理が滞らないようにするため、セラミックフィルタを複数系統準備し、再生中のセラミックフィルタとは別のセラミックフィルタを用いてディーゼルエンジン排ガスの処理を行うことが望ましい。
【0052】
従って、本発明は更に、セラミックフィルタを2系統以上用いたディーゼルエンジン排ガスの処理方法であって、
該2系統以上のセラミックフィルタは、C重油を燃料とした共通のディーゼルエンジンの排ガスを導入可能に構成されており、
該2系統以上のセラミックフィルタのうち少なくとも1系統のセラミックフィルタに対して本発明に係るセラミックフィルタの再生方法を実施中に、該再生方法を実施している少なくとも1系統のセラミックフィルタとは別の少なくとも1系統のセラミックフィルタで該排ガスを処理することを含むディーゼルエンジン排ガスの処理方法を提供する。
【0053】
前記2系統以上のセラミックフィルタはそれぞれ、ヒータで加熱したガスを導入可能に構成することができる。ヒータで加熱したガスがセラミックフィルタを通過することでセラミックフィルタに付着している油分を揮発除去することができる。ヒータは1系統のセラミックフィルタに対して1台ずつ設置することも可能であるが、すべての系統のセラミックフィルタが一斉に再生のための加熱処理を受けることは想定しなくてよい。そこで、経済性を考慮すると、前記2系統以上の集塵機は共通のヒータで加熱したガスを導入可能に構成しつつ、セラミックフィルタの再生方法を実施する少なくとも1系統のセラミックフィルタに選択的にヒータで加熱したガスを導入して工程Bを実施するのが好ましい。
【0054】
本発明に係るディーゼルエンジン排ガスの処理方法の一実施形態においては、2系統以上のセラミックフィルタのそれぞれのセラミックフィルタは、排ガスの集塵処理に使用する時間帯と、再生のための時間帯を経過し、これらの時間帯が交互に繰り返される。排ガスの集塵処理に使用する時間帯と、再生のための時間帯の切り替えは、排ガスの集塵処理の性能の低下度合に応じて適宜設定すればよいが、例示的には時間及び/又はフィルタ差圧に少なくとも基づいて行うことが可能である。
【0055】
上記のディーゼルエンジン排ガスの処理方法は、2系統以上のセラミックフィルタが収容された集塵機を1台又は2台以上用いることで実施してもよく、1系統のセラミックフィルタが収容された集塵機を2台以上用いることで実施してもよい。また、2系統以上のセラミックフィルタが収容された集塵機と、1系統のセラミックフィルタが収容された集塵機を組み合わせて実施してもよい。なお、1系統のセラミックフィルタとは、同一集塵機内の同一チャンバー内に収容され、排ガス処理及び再生のタイミングが同一であるセラミックフィルタを指す。同一のチャンバー内でセラミックフィルタを複数本使用する場合でも、上記条件を満たす限り、それら複数のセラミックフィルタは1系統のセラミックフィルタを構成する。
【0056】
(4.ディーゼルエンジン排ガス集塵システム)
以下、本発明に係るセラミックフィルタの再生方法を利用した、ディーゼルエンジン排ガスの処理方法の具体例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明に係るセラミックフィルタ式集塵機の再生方法を適用可能なディーゼルエンジン排ガス集塵システムの構成例が記載されている。ディーゼルエンジン排ガス集塵システム100は、C重油を燃料に用いたディーゼルエンジン101からの排ガスダクト121に接続された入口三方弁102、二系統の排ガス導入弁103a、103b、二系統の再生用ガス導入弁104a、104b、セラミックフィルタ式集塵機110、ヒータ105、空気タンク106、二系統の逆洗弁107a、107bを備える。セラミックフィルタ式集塵機110は、缶体112、缶体112内に収容された二系統のセラミックフィルタ114a、114b、二系統の排ガス/再生用ガス導入口115a、115b、排ガス出口117、PM回収箱118、二系統の逆洗ガス導入口119a、119bを備える。ディーゼルエンジン排ガス集塵システム100は更に、エンジンへの背圧を低減させるために排気ファン
130をセラミックフィルタ式集塵機110の下流側に設置する場合もある。
【0057】
排ガスダクト121を流れるディーゼルエンジン101からの排ガスは、入口三方弁102において、セラミックフィルタ式集塵機110へ送られるか、バイパスダクト122へ送られるかの切り替えが行われる。排ガスは、セラミックフィルタ式集塵機110へ送られる場合は、集塵処理が行われ、緊急時などバイパスダクト122へ送られる場合は、未処理のまま煙突から排出される。
【0058】
セラミックフィルタ式集塵機110は缶体112内に二系統のセラミックフィルタ114a、114bを備えている。缶体112内は第一系統用のチャンバー112aと第二系統用のチャンバー112bに分かれており、フィルタ上流側では両チャンバー内のガスが混合しないようになっている。第一系統のセラミックフィルタ114aは、第一系統の排ガス導入弁103aを通過し、第一系統の排ガス/再生用ガス導入口115aから第一系統用のチャンバー112a内に導入された排ガスを集塵処理することができる。第二系統のセラミックフィルタ114bは、第二系統の排ガス導入弁103bを通過し、第二系統の排ガス/再生用ガス導入口115bから第二系統用のチャンバー112b内に導入された排ガスを集塵処理することができる。
【0059】
二系統の排ガス導入弁103a、103bの開閉の切り替えによって、第一系統及び第二系統の何れのセラミックフィルタによって排ガスの集塵処理が行われるかが決定される。二系統の排ガス導入弁103a、103bの両方を開いて二系統のセラミックフィルタ114a、114bで同時に集塵処理することもできるが、一方のセラミックフィルタで集塵処理中には、他方のセラミックフィルタは再生中として、交互に集塵処理を行うことがトラブルを防止する上で好ましい。
【0060】
排ガスはセラミックフィルタ114a、114bで集塵処理を受けて清浄化された後、セラミックフィルタ式集塵機110の排ガス出口117から排出される。セラミックフィルタ式集塵機110の排ガス出口117から排出された排ガスは、排ガスダクト124を通って煙突から最終的に大気に放出可能である。
【0061】
ディーゼルエンジン排ガス集塵システム100は更に、セラミックフィルタ114a、114bの下流側から排出される集塵後の排ガスを、ヒータ105に供給するための循環ダクト125を備えることができる。循環ダクト125は、一方は排ガスダクト124に連結し、他方はセラミックフィルタ式集塵機110に直接又は間接的に連結することができる。循環ダクト125の途中には再生ファン131、ヒータ105が設置されている。排ガス出口117から排出された清浄な排ガスは循環ダクト125を流れ、ヒータ105を通過するときに所要温度まで加熱される。加熱された排ガスは、二系統の再生用ガス導入弁104a、104bの開閉の切り替えによって、第一系統及び第二系統の何れか又は両方のセラミックフィルタに供給可能である。
【0062】
第一系統のセラミックフィルタ114aは、第一系統の再生用ガス導入弁104aを通過し、第一系統の排ガス/再生用ガス導入口115aから第一系統用のチャンバー112a内に導入された再生用ガスによって加熱再生処理(工程B)を受けることが可能である。第二系統のセラミックフィルタ114bは、第二系統の再生用ガス導入弁104bを通過し、第二系統の排ガス/再生用ガス導入口115bから第二系統用のチャンバー112b内に導入された再生用ガスによって加熱再生処理(工程B)を受けることが可能である。
【0063】
図1を見ると、第一系統の排ガス導入弁103aが「開」となっており、第一系統の再生用ガス導入弁104aが「閉」となっている。このため、第一系統のセラミックフィルタ114aにディーゼルエンジン101からの排ガスが流入し、第一系統のセラミックフィルタ114aによって集塵処理が実施中であることが分かる。また、第二系統の排ガス導入弁103bが「閉」となっており、第二系統の再生用ガス導入弁104bが「開」となっている。このため、第二系統のセラミックフィルタ114bはヒータ105で加熱された再生用ガスを用いて工程B(油分の揮発除去)を実施中であることが分かる。
【0064】
ディーゼルエンジン排ガス集塵システム100は、循環ダクト125に代えて、又は、循環ダクト125に加えて、外気を供給する外気ダクト127を設置してセラミックフィルタ式集塵機110に外気を供給することができるように構成されていてもよい。
図1に示すディーゼルエンジン排ガス集塵システム100は、外気取り込み口128から再生ファン131による吸引力を利用して取り込んだ外気を流すことのできる外気ダクト127がヒータ105の前段で循環ダクト125に連結されている。ヒータ105の前段において、循環ダクト125及び外気ダクト127にそれぞれ弁129a、129bが設置されており、弁129a、129bの開閉や開度によって両者からヒータ105を通過するガス流量を調整することができる。当該構成により、循環ダクト125からの排ガスのみをヒータ105に流すことができ、外気ダクト127からの外気のみをヒータ105に流すことができ、又は、循環ダクト125からの排ガスと外気ダクト127からの外気の双方を同時にヒータ105に流すこともできる。
【0065】
また、二系統のセラミックフィルタ114a、114bの下流側にはそれぞれ逆洗ガス導入口119a、119bが配置されている。第一系統のセラミックフィルタ114aは、空気タンク106を出た後、逆洗ガスパイプ126を流れ、第一系統の逆洗弁107aを通過し、第一系統の逆洗ガス導入口119aから流入する圧縮空気によって逆洗を受ける。第二系統のセラミックフィルタ114bは、空気タンク106を出た後、逆洗ガスパイプ126を流れ、第二系統の逆洗弁107bを通過し、第二系統の逆洗ガス導入口119bから流入する圧縮空気によって逆洗を受ける。圧縮空気は二系統の逆洗弁107a、107bの開閉の切り替えによって、第一系統及び第二系統の何れのセラミックフィルタに送られるかが決定される。
【0066】
逆洗によってセラミックフィルタ114a、114bの上流側から排出された粒子状物質は重力によって落下し、缶体112の底部に設置されたPM回収箱118内に回収されることができる。
【0067】
次に、
図2には、本発明に係るセラミックフィルタ式集塵機の再生方法を適用可能なディーゼルエンジン排ガス集塵システムの別の構成例が示されている。
図1に示すディーゼルエンジン排ガス集塵システム100では、一台のセラミックフィルタ式集塵機110内に二系統のセラミックフィルタ114a、114bが設置されており、二系統のセラミックフィルタ114a、114bについて集塵処理とフィルタ再生を交互に切り替えることにより、継続的に排ガスの処理を継続できるシステムであった。これに対して、
図2に示すディーゼルエンジン排ガス集塵システム200では、一台のセラミックフィルタ式集塵機は一系統のセラミックフィルタのみを有しており、そのようなセラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cが複数台並列に配置されている。複数台のセラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cについて、集塵処理とフィルタ再生を順番に切り替えることで継続的に排ガスの処理を継続することが可能となる。
【0068】
ディーゼルエンジン排ガス集塵システム200は、船舶主機の2ストロークディーゼルエンジン201からの排ガスダクト221に接続された入口三方弁202、三系統の排ガス導入弁203a、203b、203c、三系統の再生用ガス導入弁204a、204b、204c、三台のセラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210c、ヒータ205、空気タンク206、三系統の逆洗弁207a、207b、207cを備える。セラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cはそれぞれ、一系統の排ガス/再生用ガス導入口215a、215b、215c、一系統の排ガス出口217a、217b、217c、一系統の逆洗ガス導入口219a、219b、219cを備える。ディーゼルエンジン排ガス集塵システム200は更に、エンジンへの背圧を低減させるために排気ファン230をセラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cの下流側に設置する場合もある。
【0069】
排ガスダクト221を流れるディーゼルエンジン201からの排ガスは、入口三方弁202において、セラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cへ送られるか、バイパスダクト222へ送られるかの切り替えが行われる。排ガスは、セラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cへ送られる場合は、集塵処理が行われ、緊急時などバイパスダクト222へ送られる場合は、未処理のまま煙突から排出される。
【0070】
三台のセラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cはそれぞれ一系統のセラミックフィルタ214a、214b、214cを有する。第一系統のセラミックフィルタ214aは、第一系統の排ガス導入弁203aを通過し、第一系統の排ガス/再生用ガス導入口215aから第一系統のセラミックフィルタ式集塵機210a内に導入された排ガスを集塵処理することができる。第二系統のセラミックフィルタ214bは、第二系統の排ガス導入弁203bを通過し、第二系統の排ガス/再生用ガス導入口215bから第二系統のセラミックフィルタ式集塵機210b内に導入された排ガスを集塵処理することができる。第三系統のセラミックフィルタ214cは、第三系統の排ガス導入弁203cを通過し、第三系統の排ガス/再生用ガス導入口215cから第三系統のセラミックフィルタ式集塵機210c内に導入された排ガスを集塵処理することができる。
【0071】
三系統の排ガス導入弁203a、203b、203cの開閉の切り替えによって、第一系統、第二系統及び第三系統の何れのセラミックフィルタによって排ガスの集塵処理が行われるかが決定される。三系統の排ガス導入弁203a、203b、203cをすべて開いて三系統のセラミックフィルタ214a、214b、214cで同時に集塵処理することもでき、二系統の排ガス導入弁のみを開いて二系統のセラミックフィルタで同時に集塵処理することもでき、一系統の排ガス導入弁のみを開いて一系統のセラミックフィルタで集塵処理することもできる。
【0072】
排ガスはセラミックフィルタ214a、214b、214cで集塵処理を受けて清浄化された後、セラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cの排ガス出口217a、217b、217cから排出される。排ガス出口217a、217b、217cから排出された排ガスは、排ガスダクト224を通って煙突から最終的に大気に放出可能である。
【0073】
また、三台のセラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cはそれぞれ、船舶補機の4ストロークディーゼルエンジン220からの排ガスダクト223に連結されている。排ガスダクト223を流れる排ガスは、三系統の再生用ガス導入弁204a、204b、204cの開閉の切り替えによって、第一系統、第二系統及び第三系統の何れか一つ、二つ又はすべてのセラミックフィルタに供給可能である。船舶補機の4ストロークディーゼルエンジン220からの排ガス中の油分が少なく、該排ガスの温度が300~500℃の範囲にある場合には、該排ガスをそのまま再生用ガスとして使用することができる。
【0074】
第一系統のセラミックフィルタ214aは、第一系統の再生用ガス導入弁204aを通過し、第一系統の排ガス/再生用ガス導入口215aから第一系統のセラミックフィルタ式集塵機210a内に導入された再生用ガスによって加熱再生処理(工程B)を受けることが可能である。第二系統のセラミックフィルタ214bは、第二系統の再生用ガス導入弁204bを通過し、第二系統の排ガス/再生用ガス導入口215bから第二系統のセラミックフィルタ式集塵機210bに導入された再生用ガスによって加熱再生処理(工程B)を受けることが可能である。第三系統のセラミックフィルタ214cは、第三系統の再生用ガス導入弁204cを通過し、第三系統の排ガス/再生用ガス導入口215cから第三系統のセラミックフィルタ式集塵機210cに導入された再生用ガスによって加熱再生処理(工程B)を受けることが可能である。
【0075】
図2を見ると、第一系統の排ガス導入弁203a及び第二系統の排ガス導入弁203bが「開」となっており、第一系統の再生用ガス導入弁204a及び第二系統の再生用ガス導入弁204bが「閉」となっている。このため、第一系統のセラミックフィルタ式集塵機210a及び第二系統のセラミックフィルタ式集塵機210bにディーゼルエンジン201からの排ガスが流入し、第一系統のセラミックフィルタ214a及び第二系統のセラミックフィルタ214bによって集塵処理が実施中であることが分かる。また、第三系統の排ガス導入弁203cが「閉」となっており、第三系統の再生用ガス導入弁204cが「開」となっている。このため、第三系統のセラミックフィルタ式集塵機210cには再生用ガスが流入し、第三系統のセラミックフィルタ214cは再生用ガスを用いて工程B(油分の揮発除去)を実施中であることが分かる。但し、第三系統のセラミックフィルタ214cは、再生中においても、船舶補機の4ストロークディーゼルエンジン220からの排ガス中の粒子状物質を捕集可能である。
【0076】
ディーゼルエンジン排ガス集塵システム200は、排ガスダクト223に代えて、又は、排ガスダクト223に加えて、外気を供給する外気ダクト227を設置して、セラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cに外気を供給することができるように構成されていてもよい。
図2に示すディーゼルエンジン排ガス集塵システム200は、外気取り込み口228から再生ファン231による吸引力を利用して取り込んだ外気を流すことのできる外気ダクト227が排ガスダクト223に連結されている。外気ダクト227の途中で再生ファン231の後段にヒータ205が設置されており、取り込まれた外気を所要温度まで加熱することができる。外気ダクト227には弁229aが設置されており、弁229aの開閉や開度によって外気の導入量を調整することができる。外気の導入量は船舶補機の4ストロークディーゼルエンジン220からの排ガスの温度、流量、油分濃度などに応じて、再生用ガスとして適切な条件を満たすように調整すればよい。
【0077】
ディーゼルエンジン排ガス集塵システム200は更に、セラミックフィルタ214a、214b、214cの下流側から排出される集塵後の排ガスを、ヒータ205に供給するための循環ダクト225を備えることができる。循環ダクト225は、一方は排ガスダクト224に連結し、他方はセラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cに直接又は間接的に連結することができる。図示の実施形態においては、循環ダクト225は再生ファン231の前段且つヒータ205の前段で外気ダクト227に連結している。外気ダクト227に連結する前段において循環ダクト225には弁229bが設置されており、弁229bの開閉や開度によって循環ダクト225を経由してヒータ205を通過するガス流量を調整することができる。
【0078】
また、三系統のセラミックフィルタ式集塵機210a、210b、210cの下流側にはそれぞれ逆洗ガス導入口219a、219b、219cが配置されている。第一系統のセラミックフィルタ214aは、空気タンク206を出た後、逆洗ガスパイプ226を流れ、第一系統の逆洗弁207aを通過し、第一系統の逆洗ガス導入口219aから第一系統のセラミックフィルタ式集塵機210aに流入する圧縮空気によって逆洗を受ける。第二系統のセラミックフィルタ214bは、空気タンク206を出た後、逆洗ガスパイプ226を流れ、第二系統の逆洗弁207bを通過し、第二系統の逆洗ガス導入口219bから第二系統のセラミックフィルタ式集塵機210bに流入する圧縮空気によって逆洗を受ける。第三系統のセラミックフィルタ214cは、空気タンク206を出た後、逆洗ガスパイプ226を流れ、第三系統の逆洗弁207cを通過し、第三系統の逆洗ガス導入口219cから第三系統のセラミックフィルタ式集塵機210cに流入する圧縮空気によって逆洗を受ける。圧縮空気は三系統の逆洗弁207a、207b、207cの開閉の切り替えによって、第一系統、第二系統及び第三系統の何れのセラミックフィルタに送られるかが決定される。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
図1に示すディーゼルエンジン排ガス集塵システムを船舶に設置し、C重油を使用した主機の2ストロークディーゼルエンジンからの排ガスの集塵処理を行うことで本発明の効果を実証した。当該排ガスをサンプリングしてダスト濃度をJIS Z8808:2013に準拠して測定したところ110mg/Nm
3であり、油分をn-ヘキサン吸収重量法に準拠して測定したところ35mg/Nm
3であった。なお、JIS Z8808:2013に準拠して測定されるダストには、煤も含まれる。
運転条件は以下とした。
・ディーゼルエンジン排ガス温度:150~350℃程度で時間帯により変動
・フィルタ:日本ガイシ株式会社製コーディエライト製フィルタ(商品名:セラレック)
・逆洗(工程A)頻度:1回/30分程度
・逆洗方法:1回の逆洗処理により、ゲージ圧0.5MPaの圧縮空気を0.1秒間噴射
・加熱再生(工程B)頻度:1回/6時間程度
・加熱再生方法:450℃に電気ヒータで加熱した外気を、1回の加熱再生につき30分程度フィルタに通すことにより実施。
・二系統のフィルタ114a、114bの集塵/再生の切り替えタイミング:加熱再生を実施するタイミングで切り換え
【0081】
上記の運転条件で排ガスの集塵処理を行ったところ、試験開始から1100時間フィルタの差圧は安定しており、継続的に排ガスの集塵処理を行うことができた。
【0082】
(比較例1)
フィルタの加熱再生処理を停止した他は、実施例1と同じ運転条件で排ガスの集塵処理を行った。この場合、運転時間が100時間程度でフィルタの差圧が約2倍に上昇してしまったため、ディーゼルエンジン排ガス集塵システムの運転を停止した。
【0083】
以上の試験結果から、本発明はC重油を燃料とした船舶主機2ストロークディーゼルエンジンの排ガスの集塵処理に対して極めて高い実用性を有していることが理解できる。
【符号の説明】
【0084】
100 ディーゼルエンジン排ガス集塵システム
101 ディーゼルエンジン
102 入口三方弁
103a、103b 排ガス導入弁
104a、104b 再生用ガス導入弁
105 ヒータ
106 空気タンク
107a、107b 逆洗弁
110 セラミックフィルタ式集塵機
112 缶体
114a、114b セラミックフィルタ
115a、115b 排ガス/再生用ガス導入口
117 排ガス出口
118 PM回収箱
119a、119b 逆洗ガス導入口
121 排ガスダクト
122 バイパスダクト
124 排ガスダクト
125 循環ダクト
126 逆洗ガスパイプ
127 外気ダクト
128 外気取り込み口
129a、129b 弁
130 排気ファン
131 再生ファン
200 ディーゼルエンジン排ガス集塵システム
201 2ストロークディーゼルエンジン
202 入口三方弁
203a、203b、203c 排ガス導入弁
204a、204b、204c 再生用ガス導入弁
210a、210b、210c セラミックフィルタ式集塵機
205 ヒータ
206 空気タンク
207a、207b、207c 逆洗弁
210a、210b、210c セラミックフィルタ式集塵機
214a、214b、214c セラミックフィルタ
215a、215b、215c 排ガス/再生用ガス導入口
217a、217b、217c 排ガス出口
219a、219b、219c 逆洗ガス導入口
220 4ストロークディーゼルエンジン
221 排ガスダクト
222 バイパスダクト
223 排ガスダクト
224 排ガスダクト
225 循環ダクト
226 逆洗ガスパイプ
227 外気ダクト
228 外気取り込み口
229a、229b 弁
230 排気ファン
231 再生ファン
400 柱状セラミックフィルタ
401 第1のセル
402 第2のセル
404 粒子状物質
406 洗浄用ガス