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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】自動臨床分析器システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
G01N35/04 G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019502805
(86)(22)【出願日】2017-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 US2017042943
(87)【国際公開番号】W WO2018017771
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2019-08-09
(31)【優先権主張番号】62/365,314
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ステイン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】バー,ロイ
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】メラーズ,コリン
(72)【発明者】
【氏名】バオ,トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カンマラータ,チャールズ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ポラック,ベンジャミン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヤグシ,バリス
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,ベリ
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513073(JP,A)
【文献】特表2014-532880(JP,A)
【文献】特表2007-524842(JP,A)
【文献】国際公開第2014/138533(WO,A1)
【文献】特開2015-135282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外診断(IVD)環境で使用する分析器システムであって、
人間のオペレーターからアクセス可能な前部に配置された1つ以上の引き出しを介して、複数の試料管を保持する複数のトレイを受け入れるように構成された、試料ハンドラーモジュールと、
少なくとも1つのピペットを使用して、前記複数の試料管の各々から試料の一部を吸引し、該試料の臨床化学的特性及びイムノアッセイ特性のうちの少なくとも一方の臨床分析を実行するように構成された、1つ以上の分析器モジュールと、
前記複数の試料管のうちの少なくとも1つを受け入れるように構成されると共に基部に磁石を有する、複数の試料キャリアと、
複数の分岐を形成する複数のトラックセクションを含み、該各トラックセクションが、同期制御される複数の磁気コイルを含んだ表面を有する、自動化トラックとを備え、
前記自動化トラックは、前記複数の試料キャリア内の前記複数の試料管を前記同期制御される磁気コイルを利用して移動させ、前記複数のトラックセクションに沿って前記複数の試料キャリアを推進するように構成され、
前記自動化トラックは、前記試料ハンドラーモジュールのロボットアームを介して前記試料ハンドラーモジュールから前記複数の試料管の各々を受け取り、そして、前記1つ以上の分析器モジュールの前記少なくとも1つのピペットからアクセス可能な前記自動化トラックの第1の位置に前記各試料管を移動させて試料の一部の吸引を促進するように構成されており、
試薬カートリッジを受け入れ、前記自動化トラックを介して、前記1つ以上の分析器モジュールからアクセス可能な第2の位置に前記試薬カートリッジを搬送するように構成された、複数の試薬キャリアを更に備え、
前記自動化トラックは、前記複数のトラックセクションが、前記1つ以上の分析器モジュールの周囲に外周ループを形成すると共に、前記1つ以上の分析器モジュールの内側に、前記外周ループを迂回する複数のバイパストラックセクションを形成するように構成され、
前記少なくとも1つのピペットからアクセス可能な前記自動化トラックの第1の位置が、前記バイパストラックセクションのうちの少なくとも1つにあって前記試料管のための物理的キューとして機能し、且つ、前記1つ以上の分析器モジュールからアクセス可能な前記自動化トラックの第2の位置が、前記トラックセクションにより形成される前記外周ループ上にある、分析器システム。
【請求項2】
体外診断(IVD)環境で使用する分析器システムであって、
人間のオペレーターからアクセス可能な前部に配置された1つ以上の引き出しを介して、複数の試料管を保持する複数のトレイを受け入れるように構成された、試料ハンドラーモジュールと、
少なくとも1つのピペットを使用して、前記複数の試料管の各々から試料の一部を吸引し、該試料の臨床化学的特性及びイムノアッセイ特性のうちの少なくとも一方の臨床分析を実行するように構成された、1つ以上の分析器モジュールと、
前記複数の試料管のうちの少なくとも1つを受け入れるように構成されると共に基部に磁石を有する、複数の試料キャリアと、
複数の分岐を形成する複数のトラックセクションを含み、該各トラックセクションが、同期制御される複数の磁気コイルを含んだ表面を有する、自動化トラックとを備え、
前記自動化トラックは、前記複数の試料キャリア内の前記複数の試料管を前記同期制御される磁気コイルを利用して移動させ、前記複数のトラックセクションに沿って前記複数の試料キャリアを推進するように構成され、
前記自動化トラックは、前記試料ハンドラーモジュールのロボットアームを介して前記試料ハンドラーモジュールから前記複数の試料管の各々を受け取り、そして、前記1つ以上の分析器モジュールの前記少なくとも1つのピペットからアクセス可能な前記自動化トラックの第1の位置に前記各試料管を移動させて試料の一部の吸引を促進するように構成されており、
前記複数の試料キャリアの各々が、2つの保持位置を有する試料管ホルダーを備え、
前記試料ハンドラーモジュールの前記ロボットアームは、前記ロボットアームと相互作用するのに適した位置に到着した、前記複数の試料キャリアのうちの第1の試料キャリアに対し、前記複数のトレイのいずれかから第1の試料管をピックアップして該第1の試料キャリアの前記試料管ホルダーの前記2つの保持位置のうちの空いている保持位置に配置し、続いて当該試料管ホルダーの前記2つの保持位置のうちの他方の保持位置に保持されている第2の試料管を取り出して前記複数のトレイのいずれかにある空き位置へ置き、そして、第3の試料管をピックアップすべく前記トレイ上を移動するように構成されている、分析器システム。
【請求項3】
前記複数の試料キャリアの各々を観察し、該試料キャリアと前記複数の試料管のうちの少なくとも1つとを、当該試料管が当該試料キャリア内に配置された後に特徴付ける、複数のカメラを有するステーションを、前記自動化トラックに更に備える、請求項1又は2に記載の分析器システム。
【請求項4】
前記複数のトラックセクションの各々が、前記1つ以上の分析器モジュールのいずれかから主電力を受けると共に、前記1つ以上の分析器モジュールのうちのその隣にあるものからバックアップ電力を受ける、請求項1~3のいずれか1項に記載の分析器システム。
【請求項5】
前記試料ハンドラーモジュールは、コントロール流体及びキャリブレーター流体を数日間保管するように構成された冷蔵保管庫を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の分析器システム。
【請求項6】
前記1つ以上の分析器モジュールの各々に対し、前記バイパストラックセクションのうちの1つがサービスを提供し、該バイパストラックセクションは、前記少なくとも1つのピペットによるランダムアクセスのために前記複数の試料キャリアのサブセットを一時的に保留するように構成される、請求項1に記載の分析器システム。
【請求項7】
前記バイパストラックセクションの各々における前記複数の試料キャリアのサブセットの移動及びランダムアクセスは、前記1つ以上の分析器モジュールのプロセッサに応答して制御される、請求項6に記載の分析器システム。
【請求項8】
前記外周ループは前記試料ハンドラーモジュールからアクセス可能であり、
前記複数のトラックセクションは、前記試料キャリアが前記試料ハンドラーモジュールに戻ることなく前記1つ以上の分析器モジュールの周囲を周回することを可能にするように構成されたバイパストラックセクションを形成する、請求項1、6又は7に記載の分析器システム。
【請求項9】
前記トラックセクションの少なくとも1つは、外部の実験室自動化システムからアクセス可能である、請求項1~8のいずれか1項に記載の分析器システム。
【請求項10】
患者試料を分析する方法であって、
試料ハンドラーモジュールにおいて、人間のオペレーターからアクセス可能な前記試料ハンドラーモジュールの前部に配置された1つ以上の引き出しを介して、複数の試料管を保持する複数のトレイを受け取るステップと、
自動化トラックの表面のコイルを使用して、それぞれ基部に磁石を有する複数の試料キャリアを推進する自動化トラックを設けるステップと、
前記自動化トラックを介して、前記試料ハンドラーモジュールのロボットアームからアクセス可能な前記自動化トラックの第1の位置に、前記複数の試料キャリアのうちの第1の試料キャリアを位置決めするステップと、
前記ロボットアームを用いて前記複数のトレイから第1の試料管を取り出すステップと、
前記第1の試料管を前記第1の試料キャリア内に配置するステップと、
前記自動化トラックを介して、1つ以上の分析器モジュールのセットのうちの第1の分析器モジュールによって制御されるピペットからアクセス可能な第2の位置に、前記第1の試料キャリアを位置決めするステップと、
前記第1の試料キャリアが前記自動化トラックを介して前記第2の位置に停止している間に、前記第1の試料管の試料の一部を、前記ピペットを用いて吸引するステップと、
該試料の臨床化学的特性及びイムノアッセイ特性のうちの少なくとも一方の臨床分析を前記第1の分析器モジュールによって実行するステップと、
前記自動化トラックに沿って移動するように構成された少なくとも1つの試薬キャリアを提供するステップと、
前記試薬キャリアを使用し、試薬カートリッジを前記自動化トラックに沿って前記第1の分析器モジュールがアクセス可能な第3の位置に搬送するステップと、
前記第1の分析器モジュールのロボットアームを用いて該第1の分析器モジュールに前記試薬カートリッジを移載するステップと、
前記臨床分析に使用するために前記第1の分析器モジュールによって前記試薬カートリッジを保管するステップとを含み、
前記自動化トラックを設けるステップは、
前記1つ以上の分析器モジュールの周囲に外周ループを形成する複数のトラックセクションを設けるステップと、
前記1つ以上の分析器モジュールの内側に、前記外周ループを迂回する複数のバイパストラックセクションを設けるステップとを含み、
前記第1の分析器モジュールのピペットからアクセス可能な前記自動化トラックの第2の位置が、前記バイパストラックセクションのうちの少なくとも1つにあって前記試料管のための物理的キューとして機能し、且つ、前記第1の分析器モジュールがアクセス可能な前記自動化トラックの第3の位置が、前記トラックセクションにより形成される前記外周ループ上にある、方法。
【請求項11】
患者試料を分析する方法であって、
試料ハンドラーモジュールにおいて、人間のオペレーターからアクセス可能な前記試料ハンドラーモジュールの前部に配置された1つ以上の引き出しを介して、複数の試料管を保持する複数のトレイを受け取るステップと、
自動化トラックの表面のコイルを使用して、それぞれ基部に磁石を有する複数の試料キャリアを推進する自動化トラックを設けるステップと、
前記自動化トラックを介して、前記試料ハンドラーモジュールのロボットアームからアクセス可能な前記自動化トラックの第1の位置に、前記複数の試料キャリアのうちの第1の試料キャリアを位置決めするステップと、
前記ロボットアームを用いて前記複数のトレイから第1の試料管を取り出すステップと、
前記第1の試料管を前記第1の試料キャリア内に配置するステップと、
前記自動化トラックを介して、1つ以上の分析器モジュールのセットのうちの第1の分析器モジュールによって制御されるピペットからアクセス可能な第2の位置に、前記第1の試料キャリアを位置決めするステップと、
前記第1の試料キャリアが前記自動化トラックを介して前記第2の位置に停止している間に、前記第1の試料管の試料の一部を、前記ピペットを用いて吸引するステップと、
該試料の臨床化学的特性及びイムノアッセイ特性のうちの少なくとも一方の臨床分析を前記第1の分析器モジュールによって実行するステップとを含み、
前記複数の試料キャリアのそれぞれが2つの保持位置を有する試料管ホルダーを備え、
前記試料ハンドラーモジュールにおいて、該試料ハンドラーモジュールのロボットアームと相互作用するのに適した位置に到着した、前記複数の試料キャリアのうちの第2の試料キャリアに対し、前記ロボットアームにより、前記複数のトレイのいずれかから第2の試料管をピックアップして該第2の試料キャリアの前記試料管ホルダーの前記2つの保持位置のうちの空いている保持位置に配置し、続いて当該試料管ホルダーの前記2つの保持位置のうちの他方の保持位置に保持されている第3の試料管を取り出して前記複数のトレイのいずれかにある空き位置へ置き、そして、該ロボットアームは、第4の試料管をピックアップすべく前記トレイ上を移動するステップを更に含む、方法。
【請求項12】
前記第1の試料キャリアが前記第1の試料管を受け取った後、複数のカメラを使用して、当該第1の試料キャリアの複数の画像を取得するステップと、
前記複数の画像を分析して、前記第1の試料管の個体情報及び物理的特性を判定するステップとを更に含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記自動化トラックを設けるステップに、複数のトラックセクションを設けることを含み、
当該方法は、
前記1つ以上の分析器モジュールのうちの1つから前記各トラックセクションに主電力を供給するステップと、
前記主電力が遮断された場合に、前記1つ以上の分析器モジュールのうちの隣にあるモジュールからバックアップ電力を供給するステップとを更に含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記試料ハンドラーモジュール内の冷蔵保管庫に複数のコントロール流体及びキャリブレーター流体を配置するステップと、
前記複数のコントロール流体及びキャリブレーター流体を前記冷蔵保管庫に数日間保管するステップとを更に含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記自動化トラックにおいて、前記1つ以上の分析器モジュールの各々に対し、前記バイパストラックセクションのうちの1つがサービスを提供し、
当該バイパストラックセクションは、ピペットによるランダムアクセスのために前記複数の試料キャリアのサブセットを一時的に保留するように構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の分析器モジュールのプロセッサに応答して、前記バイパストラックセクションの各々にある前記複数の試料キャリアのサブセットの移動及びランダムアクセスを制御するステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記自動化トラックにおいて、前記外周ループが前記試料ハンドラーモジュールからアクセス可能であり、
前記複数のトラックセクションは、前記試料キャリアが前記試料ハンドラーモジュールに戻ることなく前記1つ以上の分析器モジュールの周囲を巡って走行できるように構成されるバイパストラックセクションを形成する、請求項10、15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記自動化トラックを設けるステップは、外部の実験室自動化システムからアクセス可能な少なくとも1つのトラックセクションを設けるステップを更に含む、請求項10~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2016年7月21日に出願された米国仮特許出願62/365,314の利益を主張し、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、実験室環境で使用するための実験室自動化システム及び臨床化学分析器システムに関し、より具体的には、臨床分析器内で体外診断用患者試料を取り扱い、保管、搬送、及び試験するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
体外診断用機器(IVD:In Vitro Diagnostics)は、患者流体試料に対して実施されるアッセイに基づいて検査所が疾病の診断を支援することを可能にする。IVDは、患者の体液又は膿瘍から採取される液体試料の分析によって実施され得る、患者診断及び治療に関連する種々のタイプの分析試験及びアッセイ(測定)を含む。これらのアッセイは、通常、患者試料を収容する管又はバイアル等の流体容器が装填されている自動化臨床化学分析器(「分析器」)によって行われる。分析器は、バイアルから液体試料を抽出し、その試料を特別な反応キュベット又は管(一般的に、反応容器と呼ばれる)内で様々な試薬と組み合わせる。いくつかの従来のシステムでは、モジュラーアプローチが分析器に使用されている。実験室自動化システムは、或る試料処理モジュール(モジュール)と別のモジュールとの間で試料を往復させることができる。モジュールは、試料ハンドリングステーション及び分析器モジュール/試験ステーション(例えば、特定の種類のアッセイに特化することができるユニット)を含む1つ以上のステーションを含むことができるか、さもなければ、イムノアッセイ(IA:免疫測定)及び臨床化学(CC)ステーションを含み得る大型分析器に試験サービスを提供することができる。従来のIVD自動化トラックシステムの中には、或る完全に独立したモジュールから別のスタンドアロンモジュールに試料を搬送するように設計されたシステムを含むものがある。これは、異なるタイプの試験が2つの異なるステーション/モジュールにおいて専門化されることを可能にし、又は、利用可能な試料スループットのボリュームを増加させるために、2つの冗長ステーションがリンクされることを可能にする。しかしながら、これらの実験室自動化システムは、マルチステーション分析器のボトルネックになることがよくある。相対的に言えば、従来の実験室自動化システムは、試料がステーション間で独立して移動できるようにするための高度な知能又は自律性を欠いている。
【0004】
例示的な従来技術のシステムでは、コンベヤベルトと非常によく似た摩擦式のトラックが、異なるステーション間でパック(pucks)又は容器のラックと呼ばれることがある個々のキャリア機構を往復させる。試料は、トラックに沿って分析器内のステーション間を移動するために、オペレーター又はロボットアームによってパック内に配置される試験管等の試料容器に保管することができる。しかしながら、この摩擦トラックは一度に一方向にしか動くことができず、そしてトラック上のいかなる試料も同じ速度で同じ方向に動くはずである。試料が摩擦トラックを出る必要があるときは、ゲーティング/スイッチングを使って個々のパックをオフシュートパスに移動させることができる。この構成の欠点は、各ゲート及びスイッチで任意の所与のパックの方向を制御するためにシンギュレーション(単離)を使用しなければならないことである。例えば、2つのパックが互いに近接していて、1つのパックのみをオフシュートパスにリダイレクトする(向かわせる)必要がある場合、1つのパックだけをオフシュートパスに移動して適切なパックを確実に摩擦トラックから引き出すようにスイッチを制御することは困難になる。このため、多くの従来技術のシステムでは、個々のパックがトラック上の各決定点において一度に1つずつ解放されかつ切り替えられるようにパックをゲートで停止させることが必要とされてきた。
【0005】
摩擦トラック式システムでシンギュレーションが使用されてきた別の方法は、パックをゲートで停止させ、バーコードリーダーが試料管のバーコードを読み取ることを可能にすることである。バーコードリーダーはトラック間でパックを切り替えるのに必要な時間量に比べて遅いので、スキャンはトラック上の流れにハードシンギュレーションを導入し、切り替えの決定が行われている間、近くの全てのパックを停止させる。決定がなされた後、スキャンされたパックが切り替えられる間にスキャンされたパックの後ろのパックが進行するのを防ぐために物理的なブロックを使用することによってスキャンされたパックのみが進行するのを確実にするためにシンギュレーションを更に使用することができる。
【0006】
特許文献1は、パックをメイントラックから引き抜きトラックに向けるために使用することができる作動式機械的転換ゲートを含む、例示的な従来技術の摩擦トラックシステムを示している。そこに説明されているように、転換プロセスは、個々のパックをシンギュレートし分離するために複数の機械的ゲートを必要とする場合があり、このために、各パックが複数回停止され、各パックが、転換決定が行われる前にバーコードを読み取ることができるように回転させられる。そのようなシステムは待ち時間を増加させ、転換ゲートが摩擦トラックに追加されるたびに、ゲートが別の交通ボトルネックを追加することを事実上確実にする。そのようなシステムは、各転換ゲートで自然とキューをもたらし、各試料が摩擦トラックに費やす時間量を更に増加させる。
【0007】
摩擦トラックはまた、一般的に動きが遅い。パック内の全ての試料が一緒に移動するため、これらのパックは定期的に互いに衝突し、トラックはカーブ路及び直線路を巡って同じ速度で移動する。さらに、停止、シンギュレート、及び切り替えは、転換アーム又は停止点等の静止物体にパックが衝突することによって行われる。結果として、摩擦トラックは、パック内の開いた流体試料容器内に収容された流体が実験装置又は自動化トラック上にはねかけてこぼれるのを防ぐために、通常、比較的低い速度で移動する。大規模な実験室システムでは、摩擦トラックが1つの試料パックを部屋の一方の端から部屋のもう一方の端に移動するのに数分かかることがある。これは全体的な待ち時間を増加させ、移動時間の増加によりトラフィック(通行量)を増加させる可能性があり、それは分析器及び自動化システムに挿入されたバッチ内の試料の所要時間又は平均スループットを減少させる可能性がある。したがって、自動化システム内での試料及び試料キャリアのより速い移動を可能にするシステムに対する必要性がある。
【0008】
分析器内の従来の実験室自動化システムは、オペレーター(例えば、実験室技術者)が試料管のトレイを投入領域に配置することによって操作される。これらの管は、通常、それらの側面に配置された垂直ステッカーを有し、垂直ステッカーは、バーコードと、オプションでシステムが試料の同一性を検証し、それに応じて各試料を処理することを可能にする人間可読識別子とを含む。これらのトレイは、典型的には、いくつかの試料(例えば、典型的には約50の試料)をオペレーターが手動で運ぶことを可能にするアレイである。トレイ内の全ての試料が必ずしも同じ方法で処理されるわけではないので、オペレーターによる手動操作又はシステム内のロボットアームを介して試料がトレイから出される。次いで、これらの試料管は、すでに存在しているか、又は自動化システムトラック内に配置されているキャリア(例えば、プラスチックパック)内に配置される。従来のプラスチックパックの性質及び患者試料をトレイからパックに移動するのに使用される試料ハンドリングロボットのために、使用可能な患者試料管の種類には通常制限がある。例えば、臨床分析器は、患者試料が均一な寸法(例えば、管を構成するガラス又はプラスチックの均一な高さ及び直径)を有する単一の種類の患者試料管に到達することを必要とし得る。特に患者試料の供給源にばらつきがある場合(例えば、様々な臨床場所から患者試料を受け取る診断検査室)、均一な患者試料管サイズを使用することは望ましくない場合がある。
【0009】
試料がSTAT(短時間処理)試料であるか否かを同定するために各試料の同一性を確認しなければならないので、投入された試料トレイをハンドリングするための自動化プロセスは比較的遅くなる可能性がある。STAT試料は即時の優先順位を必要とし、自動化システムによって、典型的にはSTAT試料を含むパックの前に試料パックの任意の物理的キューをフラッシュ(解消)することによって、異なってハンドリングすることができ、STAT試料がその目的地に自由に動くことを可能にする。さらに、様々な患者試料管サイズが使用されている場合、ロボットアームのエンドエフェクターは、管のサイズを知ることなく管に係合する際に注意深くなければならず、この係合は、このエンドエフェクターが管に適切に係合した時点を判定するために観察される圧力を頼りにしており、これは、暗闇の中で周囲を手探りするようなものである。このように、多様な患者試料管サイズを使用可能にする可能性のある試料ハンドリング投入に関して従来技術には欠陥が存在する。
【0010】
従来の摩擦式の自動化トラックも、冗長性の欠如に苦しんでいる可能性がある。典型的な構成では、摩擦トラックは、通常単一の電源、コントローラー等を含むいくつかのモジュールにボルトで固定されたスタンドアロンのコンポーネントである。これらのコンポーネントのいずれかが故障すると、自動化システム全体が修理されるまでシャットダウンする。トラック設計はまた、通常、コンパクトさの欠如、及び、システムの他の全ての試料と同じ主経路をとらずに、自動化トラック内の地点の間を移動するためのアクセス可能な経路の欠如という欠点を抱えている。各々が渋滞を引き起こし、スループットを低下させ、システム全体の待ち時間と所要時間とを増加させる可能性がある。さらに、試料は摩擦トラックの上に着座して過度の時間を費やすので、試料は投入されてから長い待ち時間のためにテストが試料に対して行われるまでの間に劣化し始めるかもしれない。加えて、従来のボルト締め自動化トラックは、その患者試料との相互作用のために各ステーションによって試料が自動化トラックから物理的に排出されることを必要とする。これは、システムの機械的複雑さ及び全体的な待ち時間を増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許:US6,202,829
【発明の概要】
【0012】
本発明は、以下の概念のうちのいずれかを使用することによって、従来技術の1つ以上の欠点に対処することができる。一態様において、体外診断(IVD)環境で使用する分析器システムは、人間のオペレーターからアクセス可能な前部に配置された1つ以上の引き出しを介して複数の試料管を保持する複数のトレイを受け入れるように構成された試料ハンドラーモジュールと、少なくとも1つのピペットを使用して、複数の試料管の各々から試料の一部を吸引し、その試料の臨床化学的特性及びイムノアッセイ特性のうちの少なくとも一方の臨床分析を実行するように構成された1つ以上の分析器モジュールとを備える。分析器システムは、複数の試料管のうちの少なくとも1つを受け入れるように構成されると共に基部に磁石を有する試料キャリアと、複数の分岐を形成する複数のトラックセクションを含み、各トラックセッションが同期制御される複数の磁気コイルを含んだ表面を有する自動化トラックとを更に備える。自動化トラックは、複数の試料キャリア内の複数の試料管を同期制御された磁気コイルを利用して移動させ、複数のトラックセクションに沿って複数の試料キャリアを推進するように構成される。自動化トラックは、試料ハンドラーモジュールのロボットアームを介して試料ハンドラーモジュールから複数の試料管の各々を受け取り、1つ以上の分析器モジュールの少なくとも1つのピペットからアクセス可能な自動化トラックの第1の位置に各試料管を移動させて、試料の一部の吸引を促進するように構成される。
【0013】
幾つかの態様のうちの1つの態様によれば、試料ハンドラーモジュールは、引き出しが人間のオペレーターによって閉じられたときに引き出し内の管のオーバーヘッド画像を記録する複数のカメラを含む。幾つかの態様のうちの別の態様によれば、分析器は、複数の試料キャリアの各々を観察し、試料キャリアと複数の試料管のうちの少なくとも1つとを、当該試料管が当該試料キャリア内に配置された後に特徴付ける、複数のカメラを有するステーションを、自動化トラックに備える。幾つかの態様のうちの別の態様によれば、複数のトラックセクションは、1つ以上の分析器モジュールのうちのいずれかから主電力を受けると共に、1つ以上の分析器モジュールのうちのその隣にあるものからバックアップ電力を受ける。幾つかの態様のうちの別の態様によれば、試料ハンドラーモジュールは、コントロール流体及びキャリブレーター流体を数日間保管するように構成された冷蔵保管庫を含む。幾つかの態様のうちの別の態様によれば、分析器は、試薬カートリッジを受け入れ、自動化トラックを介して、1つ以上の分析器モジュールからアクセス可能な第2の位置に試薬カートリッジを搬送するように構成された、複数の試薬キャリアを更に備える。
【0014】
幾つかの態様のうちの1つの態様によれば、自動化トラックは、複数のトラックセクションが、1つ以上の分析器モジュールの周囲に外周ループを形成すると共に、1つ以上の分析器モジュールの内側に外周ループを迂回する複数のバイパストラックセクションを形成するように構成される。少なくとも1つのピペットからアクセス可能な自動化トラックの第1の位置は、バイパストラックセクションのうちの少なくとも1つにある。幾つかの態様のうちの別の態様によれば、1つ以上の分析器モジュールの各々に対し、バイパストラックセクションのうちの1つがサービスを提供し、該バイパストラックセクションは、少なくとも1つのピペットによるランダムアクセスのために複数の試料キャリアのサブセット(部分集合)を一時的に保留するように構成される。幾つかの態様のうちの別の態様によれば、バイパストラックセクションの各々における複数の試料キャリアのサブセットの移動及びランダムアクセスは、1つ以上の分析器モジュールのプロセッサに応答して制御される。幾つかの態様のうちの別の態様によれば、外周ループは試料ハンドラーモジュールからアクセス可能であり、複数のトラックセクションは、試料キャリアが試料ハンドラーモジュールに戻ることなく1つ以上の分析器モジュールの周囲を周回することを可能にするように構成されたバイパストラックセクションを形成する。
【0015】
幾つかの態様のうちの1つの態様によれば、トラックセクションの少なくとも1つは、外部の実験室自動化システムからアクセス可能である。幾つかの態様のうちの別の態様によれば、複数の試料キャリアの各々は、2つの保持位置を有する試料管ホルダーを含み、試料ハンドラーモジュールは、複数の試料管のうちの第1の試料管を試料管ホルダーに入れてから、複数の試料管のうちの第2の試料管を試料管ホルダーから取り出すように構成される。
【0016】
一態様において、患者試料を分析する方法は、試料ハンドラーモジュールにおいて、人間のオペレーターからアクセス可能な試料ハンドラーモジュールの前部に配置された1つ以上の引き出しを介して複数の試料管を保持する複数のトレイを受け取るステップと、自動化トラックの表面のコイルを使用して、それぞれ基部に磁石を有する複数の試料キャリアを推進する自動化トラックを設けるステップとを含む。この方法は、自動化トラックを介して、試料ハンドラーモジュールのロボットアームからアクセス可能な自動化トラックの第1の位置に複数の試料キャリアのうちの第1の試料キャリアを位置決めするステップと、該ロボットアームを用いて複数のトレイから第1の試料管を取り出すステップと、第1の試料管を第1の試料キャリア内に配置するステップとを更に含む。この方法は、自動化トラックを介して、1つ以上の分析器モジュールのセットのうちの第1の分析器モジュールによって制御されるピペットからアクセス可能な第2の位置に、第1の試料キャリアを位置決めするステップと、自動化トラックを介して第2の位置に試料キャリアが停止している間に、第1の試料管の試料の一部を、ピペットを用いて吸引するステップとを更に含む。さらに、この方法は、その試料の臨床化学的特性及びイムノアッセイ特性のうちの少なくとも一方の臨床分析を第1の分析器モジュールによって実行するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】いくつかの実施形態で使用するための例示的な試料ハンドリングモジュールの上面図。
図2】いくつかの実施形態で使用するための例示的な試料ハンドリングモジュールの斜視図。
図3】いくつかの実施形態で使用するための例示的なキャリアの一連の概略的なトップダウン状態である。
図4】いくつかの実施形態で使用するための例示的な一体型モジュール式自動化トラックシステムの概略図。
図5】いくつかの実施形態で使用するための例示的な一体型モジュール式自動化トラックシステムの概略図。
図6】いくつかの実施形態で使用するための例示的な一体型モジュール式自動化トラックシステムの概略図。
図7】いくつかの実施形態で使用するための試料ハンドリングモジュールの例示的な使用の概略図。
図8】いくつかの実施形態で使用するための例示的な試料ハンドラー及び容器移動装置のシステム図。
図9】容器移動装置と分析器モジュールとの間の例示的な相互作用を示すフローチャート。
図10A】いくつかの実施形態で使用するための例示的な冷却システムの斜視図。
図10B】いくつかの実施形態で使用するための例示的な冷却システムの斜視図。
図10C】いくつかの実施形態で使用するための例示的な冷却システムのドアアセンブリの側面図。
図10D】いくつかの実施形態で使用するための例示的な冷却システムの管及びカバーアセンブリの斜視図。
図11】試料ハンドラーの例示的実施形態で使用するための例示的ロボットアームの斜視図。
図12】試料ハンドラーの例示的実施形態で使用するための例示的ロボットアームエンドエフェクターアセンブリの斜視図。
図13】試料ハンドラーの例示的実施形態で使用するための例示的ロボットアームセンサーアセンブリの斜視図。
図14】いくつかの実施形態で使用するための例示的な自動化トラックシステムの斜視図。
図15】いくつかの実施形態で使用するための例示的な自動化トラックシステムの斜視図。
図16】いくつかの実施形態で使用するための例示的な自動化トラックシステムの断面図。
図17】いくつかの実施形態で使用するための例示的な自動化トラックシステムの上面図。
図18】いくつかの実施形態で使用するための例示的な自動化トラックシステム及びロジックサブパートの上面図。
図19】いくつかの実施形態で使用するための例示的な自動化トラックシステム及びロジックサブパートの上面図。
図20】いくつかの実施形態で使用するための例示的な自動化トラックセクションの上面図。
図21】いくつかの実施形態で使用するための例示的な自動化トラックセクションの電気系統図。
図22】いくつかの実施形態で使用するための例示的な容器移動システムの電気系統図。
図23】いくつかの実施形態で使用するための例示的な患者試料管キャリアの斜視図。
図24】いくつかの実施形態で使用するための例示的な患者試料管キャリアの側面図。
図25】いくつかの実施形態で使用するための例示的な患者試料管キャリアの上面図。
図26】いくつかの実施形態で使用するための例示的な患者試料管キャリアの上面図。
図27】いくつかの実施形態で使用するための例示的な患者試料管キャリアの上面図。
図28】いくつかの実施形態で使用するための例示的な分析器モジュールのためのシステム図。
図29】いくつかの実施形態で使用するための例示的な分析器モジュールのための電気機械システムの上面図。
図30】いくつかの実施形態で使用するための例示的な試薬キャリアの斜視図。
図31】いくつかの実施形態で使用するための例示的な分析器モジュールのための電気機械システムの上面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態の概要及びシステムアーキテクチャ
臨床分析器と共に使用するための自動化システム、又は自動化システムを有する一体型臨床分析器は、以下の実施形態のいずれかを含むことができる。実施形態は、体外診断アッセイ分析が行われる分析器モジュール(複数の場合もある)との間で試料(患者試料)を搬送するための試料ローディング(装填)能力を有する自動臨床化学(CC)分析器モジュール及び自動イムノアッセイ(IA)分析器モジュールを含むモジュール式システムを利用することができる。システムはモジュールの複数の構成で拡張可能であり、顧客の年間スループットニーズを小容量から非常に大容量/メガ市場セグメント(年間500000から5M+テスト)までの範囲で可能にする。
【0019】
検査室の中には、検査室自動化システム(LAS)を使用してそれらの様々な分析器の全てを共にリンクすることを選択するものもある。LASは、理想的には、試料を集中的にロード及びアンロードする場所を提供し、それらの試料を接続された分析器の各々で処理するために自動的に分配することができる。遠心分離機、デキャッパー、リキャッパー、及び等分機等の様々な種類の分析前及び分析後装置もまた、分配経路内に含まれ得る。これらの装置は、自動化システムがアクセス可能とすることができるか、又は前処理及び後処理のためにオペレーターが試料管(患者試料管)を自動化システムから手動で取り出すことを必要とする独立型装置とすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の自動化システムは、既存の検査室自動化システムとインターフェース接続することもでき、既存の実験装置、又は本明細書に記載の自動化システムとインターフェース接続するようには設計されていないモジュールとのインターフェースに実施形態を拡張することを可能にする。
【0020】
自動化システムは、試料の処理を管理するプロセス制御マネージャー(PCM)として説明することができる。これには、システムに出入りする試料の入出力、処理待ちの間の試料の一時保管、PCMに取り付けられた様々な分析器での処理のための試料のスケジューリング、(自動化トラックへの及び自動化トラックからのを含む)自動化トラック全体にわたる試料の移動の促進、そして、いくつかの実施形態では、自動化システムのメンテナンスが含まれる。実施形態で使用するための例示的なPCMは、以下のメインモジュール及びサブシステムを含む。
【0021】
試料ハンドラー(SH)は、制御保管庫、ロボット、グリッパー、モジュールマネージャーPC、試料入出力(I/O)、引き出しビジョンシステム(DVS)を含むことができるサブシステムを備える。SHは、試料ソース/シンクとして機能する。SHは、PCMシステムが潜在的に試料を取得する3つの方法のうちの主要なものである。他の2つの方法は実験室自動化システム(LAS)及び直接接続(手動)方法である。SHは、ユーザーが通常の試料、STAT(短時間処理)試料、及びコントロール/キャリブレーターバイアルをシステムにロードしたりシステムからアンロードしたりするための手段を提供する。SH内では、ロボットサブシステムは、試料I/O(引き出しトレイ)、制御保管庫、及び容器移動装置を含む他のサブシステムとモジュールとの間でこれらの管を移動させることを担当している。
【0022】
容器移動装置(VM)は、試料パック/キャリア、容器移動装置マネージャー、トラック構造、コイルボード、トラックマウント、マスターボード、そして高レベルのノードコントローラーを含むことができるサブシステムを備える。いくつかの実施形態は、分析モジュール間で物質を共有することを可能にする統合モジュール式プラットフォームを有する分析器システムを利用する。物質は、同じ種類の分析モジュール用の患者試料又は試薬を含むことができる。統合システムの実施形態は、顧客の観点から合理化された試料フローを提供することができる。これは、試料のロード及びアンロードに対して単一の場所を通して達成することができ、それは信頼性がありかつ迅速な試料分配システムを提供する。容器移動装置サブシステムは、この物質分配を取り扱う。通常の条件下では、実験室の技術者が容器移動装置トラックを直接操作することは決してない。容器移動装置は、試料又は試薬を移動させる自動化トラック上でキャリアを管理し、各キャリアは専用のタイプのホルダーを有する。例えば、管ホルダーは2つの保持位置(時々A及びBと呼ばれる)を有し、通常の操作下では、それらのうちの1つだけが試料管を有する(図3)。いくつかの実施形態では、試薬キャリアは、イムノアッセイ(IA)モジュール及び臨床化学(CC)モジュールの両方からの試薬を取り扱うことができる。
【0023】
ユーティリティセンターは、容器移動装置故障用電源、中央コンピューターシステム、内部通信用のネットワークスイッチ、代替トラック電源、試料ハンドラー電源を含むことができるサブシステムを備える。
【0024】
これらのモジュールのうち、主要な物理モジュールには、試料ハンドラー及び容器移動装置が含まれる。ユーティリティセンターは、中央コンピューターシステム内に主に電子サブシステムを備える。ユーティリティセンターは、ハードウェアコンポーネントの状態、試料ハンドラー及び容器移動装置の動作の維持(電源フェイルオーバーを含む)、並びに内部通信インフラストラクチャを担当する。
【0025】
個々の分析器モジュールに加えて、これらの主要モジュール内には、システムの概要において更なる注目に値する3つの追加のサブシステムがある。
【0026】
制御保管庫-コントロール及びキャリブレーター用保管庫は、品質管理(QC)物質を冷却すると同時にQC物質の蒸発及び露光を最小にするように設計された冷蔵モジュールである。いくつかの実施形態では、制御保管モジュールは、試料ハンドラー内に配置されており、一般的に冷蔵保管庫と呼ばれることがある。試料ハンドラーの正面から見た場合、モジュールは、試料ローディングエリアの後ろで管特徴付けステーションの前に配置されている。制御保管庫は、試料ハンドラーロボットアームによってアクセスすることができる。一般的に、ユーザーがコントロール保管モジュールに直接アクセスすることはない(試料ハンドラーロボットを使用してQC物質をモジュールから除去できないシステム障害の場合を除く)。制御保管モジュールは、一般的に、コントロール及びキャリブレーター用バイアルを保管するように設計されている。バイアル/管は、熱伝導性管ベースサブアセンブリ(例えば、管を受けるための凹部を有する熱伝導性プレート)に係合し、これは、冷蔵保管庫サブアセンブリに取り付けられた熱電素子を使用して冷却される。コントロールアクセスドアアセンブリは、試料ハンドラーロボットがQC物質にアクセスすることを可能にする。カバーはモジュールを更に断熱し、光バリアを提供することができる。蒸発を更に防ぐために、サブアセンブリは、各QC管の上に着座する1組の可動式蒸発カバーを有することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、コントロール及びキャリブレーター用保管庫は、試料ハンドラーモジュールの後部中央に配置される。コントロール管及びキャリブレーター管は、試料管と同じ方法で試料引き出し内にロードすることができる。一般的に、サブシステムは、機器の正面からアクセスできない。システムトラック及び管特徴付けステーションは、自動化トラックの近くで、システムの背面側に接している。いくつかの実施形態では、コントロール及びキャリブレーター保管庫は、試料ハンドラーの幅を占め、主コンポーネントデッキの上に着座している。いくつかの実施形態では、2つのピンがコンポーネントデッキ上に配置されており、それによってコントロール保管庫をねじで固定することができる。このデッキの下では、3つの熱電素子(TED)がサブシステムを冷却する。いくつかの実施形態では、制御保管庫の下の領域は、モジュールの外側に、又はモジュールの内側から結露を除去するのに役立つ結露チャネルから生じる可能性がある結露を受けやすい。電子装置を持たないこと及びドリップトレイを追加すること等の緩和策も、それに応じて使用できる。いくつかの実施形態では、TEDの数インチ下に配置されたドリップトレイがモジュールの内側から凝縮物を収集し、TEDから排出される空気が凝縮物に吹き付けて、その凝縮物を蒸発させるのを助けることを可能にする。
【0028】
DVS-引き出しビジョンシステム(DVS)は、いくつかの実施形態では、各引き出しに対して完全に独立した電子機器のセットを含むことができるモジュール式サブシステムである。DVSは、オペレーターが各引き出しを閉じるときにグローバルシャッタ及び極めて短い露光時間(例えば、約100μsのストロボ)を使用して管トレイの画像を取り込む。引き出しエンコーダーシステムは、トレイ内の各列に対応する正確な位置(及びいくつかの実施形態では、各列に対して斜めのカメラ角度を提供するために各トレイの前後に追加の画像)でカメラをトリガーするために使用される。管の各列は隣接する列の複数の画像に現れるので、DVSはトレイ内の対象物の立体(又は三角)画像分析を実行することができる。各隣接画像は、管の各列の異なる角度の視点及び遠近感を提供する。DVSの概念のいくつかの更なる説明は、全内容が本明細書に援用される国際出願PCT/US2015/035092を参照して理解することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、各引き出し用のDVSカメラは、取り込まれた画像を引き出しの動きと同期させる役割を果たすカスタム画像キャプチャボードに統合することができる。結果として生じる画像のローカルメモリ内のバッファーを作成し(そして引き出しがスムーズに閉じられない場合には上書きし)、オフライン分析のために外部コンピューターに転送することができる。これにより、引き出しが人間のオペレーターによって閉じられる速い速度よりもはるかに遅い速度で分析を行うことが可能になる。短い露光時間のため、いくつかの実施形態では、DVSは、高強度光の短パルスを低減するためにカスタムイルミネーションボードを利用する(例えば、イルミネーションボードを直接画像キャプチャボードに取り付け、影を最小限に抑えるために各カメラレンズの周りにLEDのリングを設けることができる)。これら2枚のボードは、除去ボードに取り付けられているアクリル又はガラスの透明保護シートと共に、DVS光学スタックを形成する。
【0030】
TCS-管特徴付けステーション(TCS)は、複数のカメラ(好ましくは3つのカメラ)を使用して容器移動装置のトラック上の物体の360度撮像を提供する統合サブシステムである。すなわち、TCSは、(例えば、SHロボットアームによって)キャリア内に配置される試料管を特徴付けるために使用され得る。TCSによって生成された光学的特性化情報は、(分析システムのために中央コンピューターで動作する)中央プランナーソフトウェアによって使用され、各容器を識別し、保管チェーンを確立し、各試料、そしてそれによって各試料キャリアに必要な処理タスクを決定することができる。例えば、試料管の光学分析は、各試料管についてのバーコード情報を明らかにすることができ、それは試料管の内容物を一意に識別する。効率及び信頼性を向上させるために、分析前モジュール及び分析器モジュールで管特性を利用できるようにすることもできる。例えば、キャリアに対する管の公称配向位置からのいかなるずれも、試料管からのピペット操作を最適化するために伝達され得る。さらに、名目に対する試料管及びキャリアの挙動の統計的分析を使用して、容器移動装置及び試料ハンドラーモジュールの両方の較正手順を支援することができる。
【0031】
TCSはまた、多種多様な試料容器を確実に識別できるようにするために分類又はパターンマッチングを特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、TCSは各管を特定の種類の標準管として分類することができる。いくつかの実施形態では、物理的測定値を光学的に取得して、各管のタイプの公称外の寸法を説明するために管の正確な物理的サイズを特定することができる。伝えることができる例示的な特性には、高さ、キャップの有無、垂直に対する向き、非対称性等が含まれる。
【0032】
試料ハンドリングシステム及び容器移動装置システム
試料ハンドラーモジュールは、オペレーター/実験室の技術者へのメインインターフェースを担当する。試料ハンドラーモジュールは、試料入力/出力(I/O)領域を通して試料管を受け入れる。試料I/O領域は、試料トレイ構成に応じて、360個~440個の試料管を保管することができる受動型引き出しシステムを含むことができる。例えば、例示的なシステムは、4つのスロットのうちの1つに配置することができる15ポジション及び55ポジションの試料トレイの両方を受け入れる。オペレーターによる引き出しの挿入中に、引き出しビジョンシステム(DVS)は、トレイ内の全ての列の画像を取得する。(いくつかの実施形態で使用され得る例示的なDVSは、国際出願PCT/US2014/027217及び国際出願PCT/US2015/035092で更に詳細に説明され、これら出願の全内容は本明細書に援用される。)DVSからのこれらの画像は試料ハンドラーのモジュール管理プロセッサに伝達され、そこでそれらは、ロボットの動作と並行して分析され、管が配置される場所に関する情報を提供し、キャップ又は管トップの試料カップを有するかどうかを判断し、各試料管のサイズを特定し、ピック/プレースの正確さ及び精度を向上させるために管の中心の情報を更新する。
【0033】
例示的な試料ハンドラーは、患者試料、品質管理物質、試薬キャリブレーター物質、及びいくつかの実施形態では試薬カートリッジの搬送を担う、リニアサーボモーター技術に基づく3軸リニアガントリーロボットを含む。試料ハンドラーロボットは、引き出し空間内の55ポジション又は15ポジションの試料トレイから試料管を引き出すために、試料管に一定の力を加え、それらを容器移動装置上に位置する試料パック/キャリア(パックという用語はキャリアの従来の用語であるため、本明細書で使用されるときこれらの用語は交換可能である)に移動するようなサーボモーター方式で使用されるステッピングモーターベースのリニアアクチュエーターを含む。人間のオペレーターが、55ポジション又は15ポジションのトレイに直接試料をロード及びアンロードしてから、ロボットがアクセス可能な手動引き出しにそれらを配置する。
【0034】
試料が容器移動装置上の試料キャリアにロードされると、一組の画像を取得するために試料は管特徴付けステーション(TCS)に提示され、多くの特性を決定することが可能になる。これにより、バーコードラベルを任意の向きで読み取ることが可能になり、その主要な特性(高さ、幅、キャップの有無、カップの有無、管の傾き、管の中心)を取得するために試料管上に三次元の視点を提供できるようになる。バーコードが取得され、全ての関連する物理的特性が決定されると、試料パックは中央計画プロセッサ及びソフトウェアからの決定に基づいて適切な分析器に送られ、そこで適切なプロセス内のキューに入ると、分析器に渡される。完了すると、試料は容器移動装置の制御に戻り、処理される次の分析器又は全ての作業が完了した場合は試料ハンドラーのいずれかに送られる。未処理の試料又はシステム上で利用可能な繰り返し処理のための任意の命令(反射、再実行、又は自動希釈)がある限り、このサイクルが繰り返される。
【0035】
TCSは、3つのバーコードリーダーと1つの画像分析カメラとから構成されており、これらは、各試料管及びキャリアについての以下の情報を決定するために外部トリガーにより一組の画像を取得する:試料キャリアID(2Dバーコード)、試料ID(1Dバーコード)、試料管の高さ(mm)、試料管の幅(mm)、試料キャップの有無(真/偽)、試料カップの有無(真/偽)、理論上の中心に対する試料管の中心線(mm)。いくつかの実施形態では、TCSは、3つのカメラからキャリア内の管の画像を取得する。
【0036】
この情報を用いて、試料管は次に必要な分析器への分配のために容器移動装置へ首尾よく搬送される。例示的な容器移動装置は、吸引を必要とする試料(患者、QC、又はキャリブレーターのいずれか)の分析器への搬送を主な役割とする線形同期モーター式コンベヤシステムであり、ソフトウェア計画コンポーネントによって指示される。試料に対する全ての作業指示が完了すると、キャリアは試料ハンドラーに戻り、そこでロボットは試料管をキャリアから(試料タイプに応じて)トレイ又は冷蔵コントロール保管コンパートメントのいずれかに移動して戻す。
【0037】
試料ハンドラー引き出しシステムは、引き出しビジョンシステム(DVS)として知られるモジュールを含む。このサブシステムは、オペレーターが試料の引き出しを閉じるときにアクティブになり、試料ハンドラーにロードされた全てのトレイの各列の画像を取得する。次に、これらの画像はDVSから試料ハンドラーモジュールマネージャーPCに転送され、そこで処理されて次の情報が提供される:試料管の有無(真/偽)、試料管キャップの有無(真/偽)、試料カップの有無(真/偽)、試料管の高さ(mm)、及び中心からの試料管のずれ(mm)。
【0038】
DVSから出力された情報に基づいて、試料ハンドラーロボットの試料管座標は、試料管のピック動作中の詰まり状態の可能性を最小にするように更新される。引き出しが完全に挿入され、試料ハンドリングロボットがDVSで取得した画像からデコードされた情報を入手すると、ロボットは引き出しから試料のピックプレース位置への試料の処理を開始し、このピックプレース位置で試料キャリア上の空いたスロットに試料を配置する。その後、ロボットは左又は右のいずれかに移動し、(定常状態の操作で)戻ってきた試料を回収してオペレーターに出力するために試料トレイに戻す。
【0039】
いくつかの実施形態では、試料ハンドラー空間内に、システム内で使用するための品質管理(QC)及びキャリブレーター物質の長期保存用の冷蔵空間が存在する。臨床分析器内の特定の機器の品質管理を断続的に較正し検証するために、QC及びキャリブレーター物質を使用することができる。この物質は通常、較正の有効性を検証するために均一な温度に冷蔵しなければならない。較正はシステム内で断続的に行われるため、試料ハンドリングロボットがアクセス可能な冷蔵室にQC及びキャリブレーター物質を保管することが役立つ。QC及びキャリブレーター物質は、物質を含む個々の試料管に保存することができ、これらの管を患者試料と同じ容器移動装置機構を介して搬送することができる。コントロール保管モジュールは、その中に保管された試料管内で4℃未満の勾配で4℃~8℃の環境を維持する(勾配は定常状態に達するのに十分長く保管された管にのみ適用される)。長期保管用として識別された管は、管特徴付けステーション(TCS)から情報を受け取ると、このモジュールに配置される。
【0040】
冷蔵コントロール保管モジュールは、その主な機能が品質管理物質(QC)又はキャリブレーター物質のいずれかを含む最大60個の試料管のための冷蔵空間を提供することである試料ハンドラー空間内に含まれるサブアセンブリである。これらの試料管は、最大7日間、又は使用説明書(IFU)で指定された長さのどちらか短い方の期間、TCSによって識別されると、この区画に保管される。
【0041】
図1は、いくつかの実施形態に使用され得る例示的な試料ハンドラー10の上面図を示す。この図では、試料ハンドラー10は、前面(すなわち、オペレーターが相互作用する面)がページの下部にあり、自動化トラックの背面がページの上部に位置するように向けられている。試料ハンドラー10は、ロボット/トラックインターフェースに管特徴付けステーション12を含む。管特徴付けステーション12は、管がトラック14上のキャリア上に配置されるときに管及びキャリアを特徴付ける。これにより、各キャリア内に配置された管の識別情報、及び各管の物理的状態(例えば、管のサイズ、流体レベル、管上部のカップが存在するかどうか等)について情報を確認することができる。管特徴付けステーション12に隣接してコントロール/キャリブレーター保管領域16が位置する。これによりトラックの近くにコントロール及びキャリブレーター流体を長期間冷蔵保管することができ、分析器内の関連する場所への移動のために、これらの流体をトラック上のキャリア内に簡単に配置することができる。保管庫16の位置はまた、入力/出力引き出し18を試料ハンドラー10の前面に配置することを可能にする。この例では、個々に開いて引き出すことができる4つの隣接する引き出し18がある。
【0042】
ロボットアーム20は、引き出し18内の任意の管を拾い上げるために二次元的に移動することができ、それらの管を保管庫16及びトラック14上のキャリアとの間で移動させることができる。キャリッジがそのガントリーに沿って左右に移動する間に、ロボットアーム20は、試料ハンドラー10の前部から後部にガントリーを移動させることによって位置決めすることができる。次に、反対側のエンドエフェクターを垂直に動かして管を拾い上げるように下に伸ばし、エンドエフェクターが管と係合するように適切に配置されたらエンドエフェクターを閉じることができる。
【0043】
ロボットアーム20が各管をうまく係合させるのを助けるために、引き出しビジョンシステム22が引き出しへの開口部で引き出しの上方に配置されている。これにより、トレイが引き出しビジョンシステムを通過する際にトレイ内の管を見下ろす一連の画像を撮影することができる。一連のカメラをストロボすることにより、複数の画像をバッファーに取り込むことができ、各管は複数の画像に現れる。次にこれらの画像を分析して各管の物理的特性を決定することができる。例えば、各管の直径及び高さを決定することができる。同様に、各試料のキャッピング状態又は非キャッピング状態を迅速に判定することができる。さらに、管頂部のカップ(管の頂部に配置される小さなプラスチックウェルであり、管が試料のより深い深さではるかに小さい容積を搬送することを可能にし、吸引がより容易に行われることを可能にする)の有無を確認することができる。同様に、どのキャップの特性も画像から確認できる。これは、与えられた試料をより高い優先度(STAT)試料として識別するためにキャップ上に特定のカラーマーキングを含むことができる。
【0044】
モジュールマネージャーPCは、この情報を利用して、引き出し18内の各トレイからトラック14上のキャリアに試料を移動させるようにスケジューリングすることができる。モジュールマネージャーPCはまた、係合前のエンドエフェクターの適切な高さ、及びエンドエフェクターを係合して複数の直径の管を収容するときに使用する適切な力又は距離を識別することを含む、各管とのやり取りの方法をロボットアーム20に指示することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、試料が冷蔵を必要とする流体タイプであると判定された場合、又はスケジューリングアルゴリズムがその試料の処理の遅れのために冷蔵が必要であると決定した場合、ロボットアーム20はその試料を引き出し18から(又はすでにトラック上にある場合、トラック14上のキャリアから)冷蔵保管庫16内の一時的な保管場所に移動させることができる。いくつかの実施形態では、冷蔵保管庫16は、コントロール及びキャリブレーター用保管庫としてのみ使用される。いくつかの実施形態では、試料を冷蔵保管庫16に保管するか否かの決定は、保管庫16内の利用可能な空間(すなわち、コントロール及びキャリブレーターによって使用されない空間)に依存し、必要に応じて、空間を混在用途に動的に割り当てることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、冷蔵保管庫16は、試料管を受けるように構成された凹部のアレイを有する熱電制御プレートを含む。例えば、このプレートは、試料管を保持するような大きさの一連の円筒形凹部を有するように機械加工されたアルミニウム又は鋼のブロックとすることができる。その場合、このアルミニウム又は鋼鉄ブロックをペルチェ素子等の熱電冷却器(TEC)、及び熱電対/熱センサーに結合してアルミニウムプレートの温度を制御し、それによってそのプレートに保持された試料管内に保管される流体の温度を制御できる。その間、モーターによって開くことができる絶縁蓋が、保管領域の頂部に配置される。これにより、試料管を無制限に冷蔵プレート内に配置し、冷蔵プレートから取り出すことが可能になるが、冷蔵保管庫の容積はほぼ断熱されて閉じられ、冷蔵庫とほとんど同じようになる。いくつかの実施形態では、冷蔵保管庫16内の管は、ロボットアーム20によって配置及び取り出すことができる緩く嵌まる蓋を配置することによって蒸発から保護することができる。
【0047】
図2は、試料ハンドラー10の斜視図である。この例では、トラック14は引き出し18の前面とほぼ平行であり、一方、冷蔵保管庫16は引き出し18とトラック14との間の大きな物理的物体である。一方、ロボットアーム20は、引き出し18及び冷蔵保管庫16の高さよりも十分に高い位置で支持体上を移動する。管特徴付けステーション12及びDVS22は図2には示されておらず、これにより、試料ハンドラー10の内部をよりよく理解することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、引き出しは、ソフトウェア内の特定のタスクに対して指定されてもよい。例えば、試料ハンドラー10を制御するプロセッサは、4つの引き出しのうちのいずれかを試料入力(投入)、試料出力(排出)、又は試料入力/出力として識別するように構成することができる。特定の引き出しを入力専用又は出力専用として指定することによって、試料を1つの場所にロードしてバッチを開始し、試料が完成したときに別の場所から取り出すことができる。出力トレイが一杯になった後に取り出されると、ソフトウェアはそれぞれの引き出しを入力レーンとして指定することができ、オペレーターは引き出されたトレイを試験用の追加の試料の新しいトレイと交換することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、引き出しはまた、試薬容器内の試薬を受け入れるように構成されてもよい。ソフトウェアは、どの引き出し又は引き出しのどの部分が新しい試薬を受け取るために指定されているかを識別することができる。これは、トラック14(及びそれに接続された任意のトラックセクション)にアクセス可能な分析器モジュールへの試薬の自動配給を促進することができ、分析器内の試薬を補充するために自動配給のための1つの場所にオペレーターが試料試薬を配給することを可能にし、実験室における手動のオーバーヘッドを大幅に減少させる。
【0050】
図3は、ロボットアーム20がトラック14上のキャリア内で試料管とどのように相互作用するかを示している。いくつかの実施形態では、デュアルポジションキャリアが利用され、ロボットアームによるプレースアンドピック(荷積み及び荷降ろし)移動を可能にする。この相互作用を説明するために、図3は、キャリア26の3つの状態を示している。キャリア26は2つのスロット(保持位置)を含み、1つのスロットは、容器移動装置システムによって移動された後に既に処理され、そして今や試料ハンドラーによってトラックから取り出されてトレイ又は冷蔵保管庫内に配置される準備ができている既存の試料管を運び、もう1つのスロットは、キャリアがトラック14上のロボットアーム20と相互作用するのに適した位置に到着したときに最初は空である。この初期状態は状態27に示されており、そこでは既存の管が最後部のスロット(左側のスロット)に存在しており、最前部のスロット(右側のスロット)は空であり、その試料管の処理を開始するために入力領域からの試料の配置を待っている。ロボットアーム20は、入力/出力領域内のトレイから次のスケジューリングされた試料をピックアップし、3軸ガントリーに沿って移動して管を最も右のスロットに挿入するための位置に配置する。状態28において、ロボットアームは下降し、処理のために新しい試料管を一番右のスロット内に配置する。この状態では、両方のスロットは、既に処理された試料及びまだ処理されていない試料によって占められている。すでに処理された試料を取り除くために、ロボットアームは静止したままとしてキャリアをその長さの半分だけ右へ動かすか、又はロボットアームを一番左の試料へ短い距離だけ動かすことができる。状態29において、ロボットアームは、一番左の試料を取り出し、その試料を出力用に指定されたトレイ内に配置する等、試料ハンドラー内の保管庫への搬送を開始する。一番右の処理すべき試料が残り、そしてキャリアは容器移動装置システムによってその目的地まで搬送される。その間、既に処理された試料が出力トレイを一杯にすると、トレイは取り出しの準備ができていることをオペレーターに知らせることができ、オペレーターはそのトレイを取り出すことができる。
【0051】
プレースアンドピックキャリア26を利用することによって、(図7に関して説明されるように)既存の後処理された試料を取り除き、そして新しい前処理された試料を挿入するために必要とされる全体の通行を大幅に減らすことができる。例えば、キャリアに単一のスロットしか存在しない場合、ロボットアーム20はトラック14及びキャリアの上方の位置に移動して、その後処理試料を除去する必要がある。その後、ロボットアーム20は、その後処理試料を適切なトレイ内に配置するために試料ハンドラー全体を横切って移動して戻る必要がある。次に、ロボットアーム20は、分析のために次の前処理済みの試料を取り出すために、入力トレイのうちの1つの上の所定の位置に移動する必要がある。次いでロボットアーム20はその試料管を持ち上げ、試料ハンドラーの全体を横切ってトラック14及びキャリアのスロットまで移動して戻り、その前処理された試料をキャリアのスロット内に下げて置く。その間、キャリアはトラック上でアイドル状態になる。2ポジションキャリアを利用することによって、ロボットアームのスループットを効果的に2倍にすることができ、キャリアがトラック14上でアイドル状態にある時間量を大幅に短縮することができる。例えば、任意の待機位置とロボットアームと相互作用する位置との間の通過時間が、ロボットアームがトレイに移動するのにかかる時間と同じ程度である場合、後処理試料を置いて、前処理された試料をピックアップし、トラック14の上方の位置に移動して戻ると、トラック14上のキャリアのアイドル時間は最小になり得る。次にキャリアが戻ったときには、反対の順番の占有スロットが発生し、キャリアが一番右のスロット内の管とのプレースアンドピック相互作用のために到着することに留意されたい。
【0052】
図4は、試料を入力領域から分析器モジュールへ移動させ、分析器内でこれらの試料をハンドリングするのを助け、そして試料ハンドラーの出力領域へ処理試料を戻すPCMの容器移動装置コンポーネントを示す。マルチモジュール分析器システム30は、複数の相互接続されたモジュールを含む。この例では、システム30は、複数の試料ハンドラー10を含む。複数の試料ハンドラーを利用することによって、より多くの試料トレイをシステム内に配置することができ、シフトの開始時により大きなバッチを開始することができる。さらに、これにより2倍の試料をトラック上に配置したり、トラックから取り出したりすることができる。これは、並列に動作できる複数の分析器モジュールを備えた大規模システムでは、入力/出力スループットが並列分析器の分析スループットと一致する可能性があることを意味する。例えば、1つの分析器モジュールが1時間あたり500個の試料をハンドリングすることができ、3つの分析器モジュールが使用される場合、これらのモジュールに供給するための入力/出力要求は1時間あたり最大1500個の試料とすることができる。いくつかの実施形態では、単一の試料ハンドラーは、この要求をハンドリングすることができない可能性があり、分析器モジュールの入力/出力要求に追いつくために複数の試料ハンドラーを追加することを必要とする。
【0053】
さらに、いくつかの実施形態では、試料ハンドラーのうちの1つを入力として使用するように設定することができ、一方、他の試料ハンドラーを出力として設定することができる。モジュール方式を使用することによって、単一の試料ハンドラー10を使用することができるが、より大きなシステムでは、2つ以上の試料ハンドラーを使用することができる。
【0054】
例示的なシステム30では、2つの分析器モジュールが利用されている。分析器モジュール32は、イムノアッセイ分析器である。分析器モジュール34は、臨床化学分析器である。これら2つの分析器モジュールは異なるアッセイを実行し、患者試料の異なる特性について試験する。
【0055】
トラック14は、容器移動装置システムの心臓部を形成する多分岐トラックである。見て分かるように、トラック14は、試料ハンドラー10及び分析器モジュール32,34に一体的に設けられた分岐及び長さを含む。個々の分岐の機能は、図5及び図6に関して説明される。これらのモジュールによって提供されるトラックセグメントに加えて、追加のモジュール38、40、及び42は、他のモジュールによって提供されるトラック部分にボルト締めすることができる短い専用トラックセクションを提供する。トラックモジュール36,38,40,42は、試料ハンドラーモジュール又は分析器モジュールに関連する追加のハードウェアなしに、動力付きトラックセグメントを提供する。モジュール10,32,34は、実験室の床からトラック14の高さまで及びそれ以上の高さまで延在するフルキャビネットであり得るが、トラックセグメントモジュール36,38,40,42は、床の長さのサポートを必要とせずに他のモジュールのキャビネットから延在するボルトオンセグメントであり得る。図4のモジュールの各々は、キャリアが容器移動装置システムを走行するための実質的にシームレスなトラックを、隣接するモジュール間の各トラックセグメントが形成するように、レベリングハードウェアを利用して、モジュール式に共にボルト締めすることができる。
【0056】
例示的なシステム30では、分析器モジュール32のトラックのセクション44は、分析器モジュール34の対応するセクションから変更する必要があり得ることが分かる。いくつかの実施形態では、分析器モジュールのトラックセグメントは、工場出荷時に分析器モジュール34に示されるものと同じ構成にある。これにより、複数の分析器を直列に配置し、それぞれのトラックセグメントを単に共にボルトで固定して長いチェーンを形成することができる。いくつかの実施形態では、システム30に示されるように、試料ハンドラーモジュールのバックトラックセグメントと分析器モジュールとの間にオフセットがある場合、キャリアが分析器モジュールのバックトラックセクションから試料ハンドラーモジュールのバックトラックセクションに移動することを可能にするためにS字型の屈曲部が必要とされ得る。この例では、このS字形の屈曲部は、トラックセクション42及び領域44内の変更されたトラックセグメントをボルト締めすることによって提供される。したがって、分析器モジュール内のトラックセグメントは、これらのモジュールと一体であるが、設置時に大幅に変更でき、分析器モジュール内のトラックセグメントの複数の構成を可能にすることを理解すべきである。しかしながら、これらのトラックセグメントはこれらの分析器モジュールにとって依然として非常に重要であることを理解すべきである。いくつかの実施形態において、分析器モジュール32,34の背面は、試料ハンドラー10の背面と同一平面上にあり、トラックセグメント44及びセクション42を完全に変える必要性を排除する。
【0057】
トラックセグメント38,40は、前側トラックセグメントと後側トラックセグメントとの間に戻りを提供するU字型トラックセグメントであり、試料ハンドラー又は分析器モジュール内の内側のコード(弦)セグメントを横切ることなくトラフィックがトラック14を巡って移動できるようにする。これにより、トラック14は外周ループを形成することができ、主トラフィックは分析器モジュールの周囲に沿って移動する。その間、内部トラックセクションは主ループを迂回(ショートカット)し、各々の分析器モジュールの両側(前面から背面)の間に直接の経路を提供し、これはローカルトラフィックのルートとして機能する。これらのコードセグメントは、内部セグメント/トラックセクション、迂回セグメント/トラックセクション、又は場合によってはローカルトラックセクションとも呼ばれ得る。これらのコードセグメントは、ピペットへのアクセスを提供するために外周のループを迂回する。これにより、トラック14の全体の流れを妨げることなく、各試料ハンドラー又は分析器モジュールに関連する小さな物理的キューがそれらの内部コードセグメントを利用することが可能になる。
【0058】
専用トラックセグメントモジュール36は、トラック14内での試料の戻り及び分岐を促進して、PCMの中央コンピューターシステムが柔軟な方法でトラフィックを向けることを可能にする。外周トラック部分は、試料が試料ハンドラーモジュール10から分析器モジュール32のトラックセグメントまで、またその逆に移動するための方法を提供する。一方、トラックセグメントモジュール36の内側コードは分岐を提供し、これによって試料ハンドラーモジュール10内に移動することなく、試料が分析器32から分析器34へ(反時計回りに)移動することができる。これにより、単一の試料管に対する複数の試験が容易になり、試料管がシステム30の右側にどのように配置されているかにかかわらず、試料管が分析器モジュール間を自由に移動できるようになる。これにより、PCMスケジューリングソフトウェアは、試料ハンドリングに関連するトラックセグメント上のトラフィックを増やすことなく、分析器モジュール内で試料をテストする順序を柔軟に設定できる。トラックセグメント36は、セクション36(及びいくつかの実施形態ではセクション42)内に分岐ループを設けることによって、ソース及びシンク(例えば、試料ハンドラーモジュール10)とプロセッサ(例えば、分析器モジュール32,34)との間の境界を提供する。このループにより、試料キャリアはソース、シンク、及びプロセッサ間を移動でき、ソース及びシンクに戻ることなく、試料がループできることも含まれる。
【0059】
システム機器マネージャーソフトウェアコンポーネントを含む中央コンピューターは、図4には示されていない。機器マネージャーソフトウェアは、試料ハンドラー10及び分析器モジュール32,34等の下位モジュールからの情報を統合して、この情報をオペレーターに提示する。機器マネージャーは、システム内のネットワーク(例えば、内部イーサネットネットワーク:「イーサネット」は登録商標、以下同)を介して他のモジュールから情報を受け取る。情報は、モジュールと中央コンピューターとの間で非同期に要求され提供することができる。中央コンピューターはまた、LISシステムと容器移動装置システムとの間で動作し、試料及びそれらのシステム内での移動をスケジューリングすることができる。中央コンピューターはまた、容器移動装置システムと個々のモジュールとの間で動作して、試料の制御を引き渡し、試料が或る場所に到着したら試料の試験を開始することができる。
【0060】
図5及び図6は、図4に示すシステムの通常動作中の更なる詳細を示す。図5はシステム30の試料ハンドラー部分を示し、一方、図6は、システム30の分析器モジュール部分を示す。例示的なシステム30では、容器移動装置システム内の動きは、おおよそ、図5及び図6の矢印で示すように、反時計回りに行われる。例示的なキャリア(正方形として示されている)は、様々なトラックセグメントを横切っている。図4図6におけるトラックセグメントは、明瞭にするために、記号形式で示されていることを理解すべきである。これらのトラックセグメントの構成についての更なる詳細は、図14図16に関して説明される。ほとんどの実施形態では、トラックセグメントは、キャリアを支持する平坦な表面、並びに垂直壁、及びキャリアがトラック表面に沿って適切な直線方向に移動するのを助けるガイドレールを含む。いくつかの実施形態では、トラックセグメントモジュール40内のキャリア46は、トラックセグメントモジュール40を使用して(STAT試料を運ぶとき等)個々の試料ハンドリングモジュール用のキューを迂回することができる。いくつかの実施形態では、トラックセグメントモジュール40はまた、オペレーターからアクセス可能とすることができ、手動の相互作用を必要とする試料(例えば、システムの或る点でエラーを生じた試料)を有するキャリアを取り出し又は検査のためにオペレーターに提示することを可能にする。これにより、トラックセグメントモジュール40はオペレーターにとってのメンテナンスポートとして機能することができる。いくつかの実施形態では、トラックセクションモジュール40はまた、実験室自動化システム(LAS)へのアクセスを提供することができる。
【0061】
実験室によっては、LASシステムを使用して様々な分析器システムを互いに接続することを選択している。LASは、試料を集中的にロード及びアンロードするための場所を提供し、この例では、試料ハンドラー10によってハンドリングされる試料がそれらの試料をレガシーシステムによってハンドリングされることを可能にする外部自動化システムにアクセスできるようにする。例えば、より古い分析器モジュールは、多くの実施形態のトラックシステムにアクセスできない可能性がある。例えば、全血分析モジュールは、本明細書で論じられるトラックセグメントに直接接続されていない実験室にすでに存在している可能性がある。(LASによって提供することができる)ロボットアームをトラックセグメントモジュール40に接続することによって、試料をセクション40から取り出し、実験室に存在する既存の自動化システムに入れることができる。これらの試料は、その後、LASに接続されている全血分析器モジュールに移動できる。そのような実施形態では、トラックセクション40は、患者試料管のソース又はシンクである。
【0062】
キャリア47は、試料ハンドリングモジュール10内のロボットアーム用の相互作用点で停止する。キャリア47は、試料ハンドラーのロボットアームとのプレースアンドピック相互作用のために一時停止し、次いで試料ハンドラーモジュール10用のTCSによる新しい試料管で特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、単一のTCSを最右端の試料ハンドラー10に設置して、複数のTCSシステムを設置する全体の費用を削減することができる。一方、小さな物理的キュー48,49は、試料ハンドラーモジュール内の試料ハンドリングロボットと相互作用するのを待っている試料キャリアを含む。キュー48,49内のキャリアは、完了した優先順位の低い試料を有することがあり、試料ハンドラーのロボットアームの自由サイクルが各々のキャリアに含まれる試料をオフロードするのを待つ。これにより、キュー48,49のフラッシュを必要とせずに、トラック14の外周ループが優先順位の高い試料を処理することができる。さらに、システムが保留試料の大部分又は全ての分析を完了し、追加の試料トレイが挿入されるのを待っている場合、テスト用の試料を能動的に搬送していないキャリアは、キュー48,49に格納され、トラック14の他のセグメント上にトラフィックを生成することなくそれらのキャリアがアイドル状態になることを可能にする。TCSの例示的な実施形態は、同一出願人による以下の出願に記載されており、これら出願の全内容はいずれも本明細書に援用される:国際出願PCT/US2014/021572、国際出願PCT/US2016/018062、国際出願PCT/US2017/014777、国際出願PCT/US2017/014778、国際出願PCT/US2017/014767、国際出願PCT/US2017/014772、国際出願PCT/US2017/014773、国際出願PCT/US2017/014774、及び国際出願PCT/US2017/014775。
【0063】
いくつかの実施形態では、試料ハンドラーモジュール10用の出力キュー50を利用して、分析の準備ができている試料キャリアを一時的に保持することができる。そのようなキューは、システムがトラックの分析器部分に既に多すぎる試料キャリアがあると考えるときに使用することができる。次に、分析器32,34内の空間が解放されるまで、試料をキュー50に入れることができる。
【0064】
一方、トラックセグメントモジュール36内の試料51は、モジュール36を利用して自動化トラックの試料ハンドラーセクションを迂回して分析器内の更なる試験に戻ることができる。
【0065】
図6に示すように、分析器セクション内の試料キャリアは、トラックの幾何学的形状を利用して、分析器モジュール32,34と効率的に相互作用することができる。分析器32がキャリア52に近接してピペッティングステーションを有すると仮定する。試料がキャリア52の位置内に移動すると、IA分析器モジュール32用のピペットは、試験のために試料部分を吸引し得る。一方、モジュール32の内部トラックセグメントは、物理的キュー(待ち行列)53として働き得る。分析器用のこれらの内部トラックセクションは双方向とされ得る。そのため、物理的キュー53は、分析器モジュール32の前部又は後部に向かって移動し得る。これは、キュー53が、トラックでキュー全体を一掃することなく、適切なキャリアをピペッティングロケーションまで移動させることによって独立ランダムアクセスキューとして働くことを可能にする(例えば、キューの中央の試料がアクセスされる必要がある場合、試料は位置52の後部まで移動し得る)。幾つかの実施形態において、それぞれの分析器モジュール内のローカルプロセッサは、それぞれの分析器モジュールの内側トラックセグメント内の物理的キュー内でのキューイング(列処理)を取り扱う。例えば、分析器モジュール32内のプロセッサは、要求に応じてそのキュー内の任意のキャリアにアクセスするためにキュー53のトラックセグメントを制御することができる。一方、PCMシステム全体のトラック14上のトラフィックを管理するグローバルプロセッサは、各ローカルキューに試料キャリアを追加し、そこからキャリアを除去することを担当することができる。したがって、容器移動装置のグローバルプロセッサの観点からは、分析器内の各キューは先入れ先出し(FIFO)キューであり、一方、各分析器モジュールキュー内のローカルトラックマネージャーはランダムアクセスとすることができる。
【0066】
分析器モジュール32内のキュー53のように、キュー54は、ローカル双方向トラック及びそのトラック内に収容される任意の試料に対して、CC分析器モジュール34についてのランダムアクセスを可能にする。試料キャリア56は、分析器モジュール34用のローカルピペット用の相互作用ポイントに設置される。試料キャリア58は、外周トラックセグメントからキュー54に合流するために到達する。この時点で、試料キャリア58の位置の詳細な管理に対する制御は、グローバル容器移動装置管理プロセッサから、内部トラックセグメントを制御する分析器モジュール34内のローカルプロセッサに引き渡すことができる。同様に、試料キャリア60は、分析器モジュール34とのその相互作用を終了しており(例えば、分析器モジュール34は、搬送されている試料管からの吸引を終了している)、ローカルトラックは、キャリア60をトラック14の主ループに戻す。試料62は、戻りトラックセグメントモジュール38上にある。このトラックセグメントは、ローカル分析器トラックセグメントをバイパスしている試料について使用され得る。例えば、トラックが何らかの理由で一掃される必要がある場合、又は、ローカルキューが満杯である場合、この経路が使用されて、効率的に保持するパターンで試料キャリアを配置し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、キャリアは、単なる患者試料管以上のものを運ぶことができる。キャリア64は、患者試料管ではなく、トラック14を走行して分析器に試薬を運ぶように構成されたキャリアである。いくつかの実施形態では、分析器モジュール34と試薬を保持するキャリアとの間のインターフェースは、キャリア64の位置に存在することができる。その位置で、モジュールによっては、ロボットアーム又は他の適切な移動システムが、試薬容器(試薬ウェッジ等)を捕捉して、キャリアからその試薬を取り出し、その試薬ウェッジを分析器内の局所試薬保管庫に配置することができる。例えば、イムノアッセイ分析器モジュール32は、一般的に分析器内に貯蔵されていない或る種の試薬を必要とする場合があるし、試薬を補充する必要がある場合もある。いくつかの実施形態では、オペレーターは、適切な分析器モジュールへの試薬の自動送達のために適切な試薬を試料ハンドリングモジュールに挿入することができる。自動化トラックを介して試薬を局所分析器モジュールに送達するための例示的なロジック及びシステムは、同一出願人による米国特許9,645,159及び国際出願PCT/US2014/011007を参照して理解することができ、これらの全内容は本明細書に援用される。
【0068】
いくつかの実施形態では、冷蔵保管庫16から取り出されたコントロール及びキャリブレーターを含む管は、キャリア64の位置で停止するキャリア内に配置することができ、分析器モジュールは患者試料とは異なるトラック上の異なる位置でコントロール及びキャリブレーターをサンプリングできる。他の実施形態では、患者試料のものと同様の方法で分析器モジュールと相互作用させるために、コントロール及びキャリブレーターがキュー53,54に入れられる。
【0069】
いくつかの実施形態では、試料ハンドラー及び容器移動装置は非同期装置であり、それらは単一の位置でそれらの相互作用を調整しなければならない。容器移動装置はそれ自体、規定されたサイクルタイムを有さず、キャリアを試料ハンドラーに持ってくるか、又は、TCS画像が取得されるとキャリアを出口キューに移動するためのコマンドに応答する純粋にイベント駆動のシステムである。いくつかの実施形態では、TCSは、トリガーされると、トリガーされてから1.00秒後にキャリアを移動のために解放する非同期装置でもある。TCSからの結果の分析及び報告は、画像取得の完了後1.00秒以内に行われる。このタイミングは、取得された画像の正確な特性及び画像を処理するアルゴリズムに基づいて変動する可能性があるが、好ましくは、1.00秒等の所定の制限時間より長くはかからないはずである。
【0070】
いくつかの実施形態では、試料ハンドラーは、持続時間が7.20秒以下の全体サイクルで動作するように設計されている。ただし、試料I/O領域内の管の位置が異なるため、実際のサイクルタイムは異なる可能性がある。図7は、単一の運動内で生じる例示的な運動を示す。
【0071】
図7は、プレースアンドピック動作中のロボットアーム20の例示的経路を示す。位置Aにおいて、ロボットアーム20は引き出し1から処理すべき試料を取り出すために下降する。次いでロボットアーム20は、トラック14上を位置Bまで移動して管を、待機中のキャリアに入れる。待機中のキャリアが、引き出し3に戻る準備ができた後処理済み試料を有する場合、ロボットアーム20は位置Cに移動する。位置Cでは、ロボットアーム20は降下し、終了した待機中の試料管を取り上げる。次いで、ロボットアーム20は位置Dに移動し、そこで引き出し3には空いたスロットが存在する。次いでロボットアーム20はその待機スロットに試料を置き、運動を完了する。次に、ロボットアーム20は、処理されるべき次の試料のために引き出し1内の次の位置に移動する。ロボットアームによって完成した回路全体は、試料キャリアの全体的なサイクルタイムを超えてはならない。例えば、いくつかの実施形態では、サイクルタイムは7.2秒とすることができ、1時間あたり500個の試料が各試料ハンドラーによって処理されることを可能にする。
【0072】
DVS及びコントロール保管コンパートメントは、ロボットのサイクルタイム内で同時に動作するため、他のモジュールからは見えない。DVSは、要求されたときに試料ハンドラーモジュールマネージャーPCに画像を転送し、いくつかの実施形態では、画像は画像あたり約150ミリ秒でデコードされ得る。コントロール保管コンパートメントは、ドアの開閉に1.00秒が割り当てられている。管をコンパートメントの内外に移動させるのに必要な残りの活動は、7.20サイクルの境界に入らない。
【0073】
図8は、試料ハンドラー10と容器移動装置68との間の相互作用のシステム図である。容器移動装置68は、トラック内のハードウェアの移動を管理して分析器と試料ハンドラーとの間で試料キャリアを移動させるシステムを表す。容器移動装置68は、容器移動装置マネージャー70によって制御される。容器移動装置マネージャー70は、自動化トラック上の試料の有無を通信し、適切な目的地に関する情報及びそれらの試料のスケジューリングを受信するために、分析器システムの中央計算システムと相互作用することを担当する。試料キャリア47及びTCS12も自動化トラックセクションと共に容器移動装置の一部である。試料キャリア47が試料ハンドラー10の近くの適切な位置に到着すると、ロボット20は試料キャリア47と相互作用して完成した試料管を取り出し、処理のために新しい試料管を試料キャリア47に追加する。
【0074】
試料キャリア47は、TCS12を用いて定位置に移動し、近接トリガーを開始する。このトリガーは、キャリア47間の無線通信、TCS12上の物理的スイッチ、TCS12上の光スイッチ又は電気センサー、又はTCS12における試料キャリア47の有無を検出するための他の任意の適切な装置とすることができる。試料キャリア47とのその相互作用から、TCS12は、(例えば、カメラ及びTCS12のうちの1つでバーコードをスキャンすることによって)キャリア内の試料管のIDを識別し、管及びキャリアの物理的特性を決定する。次に、これらの特性は、TCS12によって試料キャリア47に割り当てられる。次いで、試料IDは、その試料のスケジューリングのために中央計算システムに通信される。中央計算システムが試料80を入手すると、それは実験室情報システム(LIS)内の情報に基づいて適切な試験スケジュールを決定することができる。試験スケジュールが決定されると、その試料及びキャリアの送り先(及び、いくつかの実施形態ではスケジュール)は、中央コンピューターによって決定及び計算することができる。
【0075】
TCS12が別個のキャリア47によって保持されている管の特徴付けを終了すると、容器移動装置マネージャーは、中央コンピューターから目的地情報を要求することができる。目的地を受信すると、容器移動装置マネージャー70は、現在のトラフィック及びトラック上の他の試料キャリアに関する経路指定情報に基づいて、その目的地に到達するための即時スケジュールと共に、試料キャリア47を送るための適切な経路を決定できる。容器移動装置マネージャー70は、目的地情報、経路情報、適切な場合にはスケジューリング情報等を含む自動化トラック上の各キャリアに対する状態モデルを維持する。次に、容器移動マネージャー70は、次の目的地に到達する経路を試料キャリア47に割り当てる。その後、容器移動装置マネージャー70は、そのキャリアの適切な目的地への移動を促進する。その目的地に到着すると、容器移動装置マネージャー70は、試料が目的地にうまく到着したという確認を中央計算システムに送る。これにより、中央計算システムはその試料をハンドリングする際の次の適切なステップを決定することができる。
【0076】
分析器が内部経路(例えば、外周トラックの間の各分析器を通過するコード)にわたって移動及びスケジューリング制御を維持する実施形態では、中央コンピューティングシステムは、その試料キャリアの次の目的地を決定することができるが、その試料キャリアが容器移動装置68に放出されるときの正確なタイミングは、各分析器モジュールによって決定される。試料が分析器モジュールに到着すると、キャリアが分析器モジュールの内部トラックセクション内に配置されるとき、容器移動装置マネージャー70はその試料キャリアの制御をローカル分析器モジュールに渡すことができる。次いで分析器モジュールはそれ自体の物理的キューを管理し、それが(中央コンピューターシステムから受信した情報に基づいて)適切な試験スケジュール及び各試料の完了を決定することを可能にする。分析器モジュールでの試験が完了すると、分析器モジュールは次に、分析器モジュールの内部トラックを介して試料キャリアを外部トラック上に移動して戻し、制御を容器移動装置マネージャー70に伝達して戻す。容器移動装置マネージャー70は、再びキャリアの制御を受け取ると、中央コンピューターシステムからそのキャリアの次の目的地を要求することができる。
【0077】
図8に示すように、試料キャリア47は、TCS12によって特性が割り当てられ、容器移動装置マネージャー70によって経路情報が割り当てられる。いくつかの実施形態では、試料キャリアは、この情報をローカルに格納し、その目的地に到達するために情報を使用することができるオンボードのアドレス可能メモリを含むことができる。そのような実施形態では、試料キャリア47は、この情報を各トラックセクションのプロセッサ及びローカル分析器モジュールに通信することができる。分析器モジュールは、試験のために試料部分を吸引するために吸引ピペットに対して定位置に試料キャリアを適切に動かすために特性を使用することができる。この情報はまた、管の高さ、管の幅、管の向き、管頂部カップの有無等を理解することによって、ピペットが試料と相互作用するのを導くことができる。経路情報は、各ローカルトラックセクションを制御するプロセッサによって使用され、試料キャリア47を適切に送ることができる。
【0078】
他の実施形態では、試料キャリア47に割り当てられた特性及び経路は、試料キャリア47に直接伝達されるのではなく、システムの適切なプロセッサに直接又は中央計算システムを介して伝達される。例えば、特性は目的地分析器モジュールに伝達される。経路情報は、適切な加速度、速度、分岐等を含む試料キャリア47のハンドリング方法について各ローカルトラックセクションに指示するために容器移動装置マネージャーによって使用される。これによって容器移動装置マネージャー70は、試料キャリア47を適切に送るために自動化システム内の様々なスイッチ及びリニアモーターに命令するトラフィックマネージャーのように作用することができる。
【0079】
試料ハンドラー10は、容器移動装置68との相互作用を理解する目的で4つの主要な論理コンポーネントを有する。トレイ72は、患者試料管をロード及びアンロードするために引き出し18に挿入される。トレイ72が引き出しに挿入されて引き出しが閉じられると、トレイ又は引き出し上のエンコーダーがトレイ72の動きをDVS22に伝達する。これにより、DVS22は、試料管の各列が引き出しに挿入されるときに1つ以上の写真を撮ることができる。これにより、DVS22は、引き出し内の各位置に対応する画像の書き換え可能バッファーを維持することができる。これにより、トレイ72の各列の各管の複数の角度の画像が与えられる。その後、DVS22は、この情報を利用して、トレイ72の各管の物理的特性を決定する。例えば、DVS22は、管頂部カップの有無、各管の直径、トレイ72内の各管の各管位置の高さ、トレイ72内の空きスロットの位置等を決定できる。いくつかの実施形態では、DVS22は、トレイ72内の管上のバーコードを見つけて読み取ることを試みない。一般的に、DVS22によって撮られた画像は、トレイ72の各列の上方から撮られ、各管の上から見た図と、隣接する列の写真が撮られたときの各管の斜視図とを与える。
【0080】
DVSは、オペレーターが引き出しを素早く(例えば、1.0m/s未満の速度で)閉じるときに、管トレイの画像を取り込むための画像センサーを含む、引き出し毎に完全に独立した電子機器のセットを有するモジュール式サブシステムとすることができる。引き出しが予期しない方法で動く可能性があるため、DVSはフラッシュを短期間にわたって繰り返し起動しなければならない。非常に高い速度でフラッシュをトリガーすると、この問題を解決できるが、非常に高速(例えば、60Hz)でフラッシュ光を検出するためには、非常に高価な高フレームレートカメラ(すなわち、画像キャプチャ装置)及び計算集約的なビデオ処理技術の使用を必要とするであろう。片頭痛を引き起こし、更にてんかん発作を引き起こす可能性があるため、より低い速度(例えば、13Hz)は使用することができない。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時に出願された米国仮特許出願62/365,295に見出すことができ、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0081】
したがって、一実施形態は、画像キャプチャのためにターゲットを照らすために使用することができる技法の組合せを提供する。例えば、一実施形態は、カバーを使用してオペレーターから特定の視線を遮蔽することができる。一実施形態はまた、依然として観察能力を可能にしながら、操作者を遮蔽するために1つ以上の反射面(例えば、鏡)を利用することができる。更なる一実施形態は、閃光の絶対的な明るさを最小限に抑えることを試みることができる(例えば、反射面は、無反射マットスタイル仕上げで覆われるか又は塗装される)。別の一実施形態は、閃光と任意の局所的な周囲/背景光との知覚されるコントラストを最小限に抑える。一実施形態では、フラッシュは、オペレーターが光学的外乱を引き起こすと予想する特定の事象に同期させることができる。
【0082】
次いで、これらの特性はロボット20に伝達され、試料キャリア47への配置のために試料管を選択するときにロボットが試料管を適切に係合させるためにこれらの特性を利用することを可能にする。例えば、高さ及び直径の特性を使用して、位置合わせ不良が試料管を損傷することなく、ロボットエンドエフェクターの降下高さ、エンドエフェクターが試料と係合するために閉じる程度、及び試料管の中心の位置を調整することができる。ロボット20は、試料管を取り外して配置することによってトレイ72と相互作用する。同様に、ロボット20は、品質管理管及びキャリブレーター管を取り外して配置することによって冷蔵コントロール保管庫16と相互作用する。同様に、コントロール保管庫16のトレイ72から取り出された、又はその中に配置されたそれらの管は、ロボット20によって試料キャリア47の中に配置されるか、又は試料キャリア47から取り出される。
【0083】
図8はまた、容器移動装置68のモジュール式設計を補助するためにどのように冗長電力を使用することができるかを示す。自動化トラックは試料ハンドラー10と分析器モジュールとの間で試料を移動させるために使用されるので、自動化トラックが通常稼働時に故障しないことが重要である。自動化トラックはトラックセグメントで構成されているため、1つのトラックセグメントで障害が発生すると自動化トラック全体が停止し、分析装置が追加の試料を受け取ることができなくなる。実験室は大量の患者試料を扱い、分析器システムの停止時間を最小限に抑えることが重要である。トラックセグメントの故障を克服することができる1つの方法は、冗長電力システムを利用することによるものである。これにより、障害点としてトラックセグメントの電源システムが取り除かれる。図8の例から分かるように、容器移動装置電源モジュール74は、容器移動装置68のシステムに電力を供給する。トラックセグメントの部分、トラックセグメントのグループ、又はそれらのサブセットに電力を供給する複数の容器移動装置電源モジュール74があり得る。この例では、単一の容器移動装置電源モジュール74が、TCS12が配置されているローカルトラックセグメントに電力を供給する。容器移動装置電源システム74が故障した場合に容器移動装置68が故障するのを防止するために、容器移動装置68は、そのような故障の場合に隣にある試料ハンドラー電源モジュール76から電力を受け取る能力を有する。試料ハンドラー電源モジュール76は、試料ハンドラー10に電力を供給する。試料ハンドラー電源モジュール76は、必要に応じて、少なくとも一時的に、隣のトラックセクションに電力を供給するのに利用可能な十分なオーバーヘッド電流を有するように適切な大きさにすることができる。容器移動装置68内の電源コントローラーは、容器移動装置電源モジュール74の停電を検出し、自動的に電源として試料ハンドラー電源モジュール76に切り替えることができる。
【0084】
この電源コントローラーは中央コンピューターシステムに警告してオペレーターにエラーを認識させることができる。これは自動化システムを自動的に停止させないので、現在のバッチの試料をハンドリングすることができ、そして容器移動装置電源モジュール74の故障を解決するためにメンテナンス時間をスケジューリングすることができる。また、いくつかの実施形態では、電源モジュール74は、ホットスワップ可能である。例えば、実験室は、故障が発生した場合に、電源モジュール74の代わりに交換することができる予備の電源モジュールを備え得る。その間、試料ハンドラー電源モジュール76は、障害とホットスワッププロセスの完了との間に電力を供給することができる。これにより、容器移動装置68における電源システムの故障による停止時間を実質的になくすことができる。一方、試料ハンドラー電源モジュール76は、より高価でより頑強なコンポーネントで構築することができ、一方、容器移動装置電源モジュール74は、故障を冗長に防止することができるため、より安価でより頑強でないコンポーネントで構成することができる。
【0085】
さらに、一般的により多くのトラックセグメントがあり、そして容器移動装置システム68全体が拡張可能かつカスタマイズ可能であるため、システム内に多くの容器移動装置電源モジュール74があることが予想される。結果として、システムのソフトフェイルオーバーによる停止時間を防止しながら、容器移動装置電源モジュール74のコストを削減することが実行可能である。
【0086】
容器移動装置電源モジュール74が故障する可能性があり、ローカル電源コントローラーが試料ハンドラーモジュール76から電力を受け取ることができるのと同様に、容器移動装置電源モジュールはまた、隣接する容器移動装置電源モジュールが故障した場合には、隣接するトラックセクションに冗長フェイルオーバー電力を供給できる。このように、追加のトラックセクションがシステムに追加されると、電源コントローラーは、冗長フェイルオーバーのために隣接する電源モジュールをデイジーチェーン接続して、電源モジュールの故障によるトラックセクションの停止時間を防ぐことができる。
【0087】
容器移動装置システム
容器移動装置サブシステムは、ソース/シンク(例えば、試料ハンドラー又はLASインターフェース)から試料又は試薬を受け取り、それを処理のために分析モジュールに提示するという責務を有する。これは一般的に、試料キャリアを移動させるための磁気トラック、それらの試料キャリア、任意の試薬キャリア(これは、いくつかの実施形態では、試料キャリアであり得る)、トラックの制御システム、及びトラックと試料ハンドリングモジュール又は分析器モジュールとの間の任意のインターフェースを含む。容器移動装置は、通常、オペレーターによってアクセスされることはない。容器移動装置はまた、システムから除去するために容器をソース/シンクに戻す。本明細書で使用される場合、試料ハンドラー10は、試料、キャリブレーター、及びコントロール用のソース/シンクとして説明することができる。いくつかの実施形態において、試薬はまた、試料ハンドラー10を介してロードすることができ、その試料ハンドラーが試薬ソース/シンクとして作用することを可能にする。容器移動装置は、接続された分析モジュールへの試料のランダムアクセスを提供することにより、システム全体のスループットに貢献する。
【0088】
以下は、容器移動装置システムに関する例示的な機能及び責務のリストである。
【0089】
試料容器の動作
・試料管を受け入れるために試料ソース/シンクとハンドシェイクする
・試料及び管の特性を特定する
・容器移動装置の現在の試料在庫を保管して利用可能にする
・プランナーからのルーティング指示を実行する
・各分析モジュール用の試料ピペッティングキューを維持する
・ランダムアクセスピペッティングを可能にするために分析モジュールとハンドシェイクする
・試料管を取り出すために試料ソース/シンクとハンドシェイクする
【0090】
試薬容器の動作
・試薬パックを受け入れるために試薬ソース/シンクとハンドシェイクする
・試薬パックを取り出すために分析モジュールとハンドシェイクする
・試薬パックを受け入れるために分析モジュールとハンドシェイクする
・試薬パックを取り出すために試薬ソース/シンクとハンドシェイクする
【0091】
いくつかの実施形態では、試薬は、容器移動装置システムのトラックシステムを介して分析器モジュール内に自動的にロードすることができる。試薬パックは、試料ハンドラー10の代替実施形態では引き出し内にロードされてもよい。例えば、或る引き出しは試薬引き出しとして指定され、他の引き出しは試料引き出しとして指定される。
【0092】
試料ソース/シンクは、外部供給源(例えば、オペレーター又はLASトラック)から試料管を受け取り、それらを容器移動装置に提示する、又はその逆の役割を果たすサブシステムである。試料ハンドラー10に加えて、いくつかの実施形態では、特定の顧客ニーズを満たすために試料ソース/シンクの他の実装態様があり得る。変異形の中には、小容量又は大容量、高スループット又は低スループット、又は拡張ワークフロー構成を有するサブシステムがあり得る(が、これらに限定されない)。一般的に、ソース/シンクは、試料ハンドラー10等の試料ソース/シンクの基本インターフェースに準拠する。一般的に、実施形態は、完成したと見なされるべき少なくとも1つの試料ソース/シンクを含む。いくつかの実施形態では、最大3つのソース/シンクを容器移動装置システムに取り付けることができる。これにより、並列入出力機能が可能になり、システム全体のスループットが向上する。
【0093】
以下は、分析器システムにおけるソース/シンクの例示的な機能性及び責務である。
・オペレーターが分析器システムに試料をロードできるようにする
・オペレーターが分析器システムから試料をアンロードできるようにする
・容器移動装置に移動する試料を選択する
・事前に識別された試料を容器移動装置に移動する要求をハンドリングする
・試料を容器移動装置に移動する
・要求されたら容器移動装置から試料を取り出す
・現在の試料在庫を保管して利用可能にする
・LASから分析器システムに試料をロードする
・分析器システムからLASに試料をアンロードする
【0094】
図4に示すように、容器移動装置システムは、試料(及びいくつかの実施形態では試薬)をソース/シンクから様々な分析器モジュールに搬送するための単一トラックを形成するように接続することができる複数のトラックセクションを含む。いくつかの実施形態では、このトラックは、壁及び平らな床内のガイドレールを含むステンレス鋼チャネルから構成されている。キャリアは、超高分子量(UHMW)ポリエチレン、テフロン(登録商標)、又は他の適切な材料等の低摩擦材料を各キャリアの底部に含むことができる。この底部材料は、壁内のガイドレールによって案内されて、キャリアが平坦なトラックに沿って滑ることを可能にする。トラックの金属面の下には、一連の磁気コイルがリニア同期モーター(LSM)を形成している。一方、各キャリア内の複数の希土類磁石は、これらのコイルの変化と同期してキャリアを動かすことによって、これらのコイルの変化に応答する。例示的実施形態は、MagneMotion, Inc.によって製造される複数のオンボード(実装型)の適切なサイズのLSMコイルを利用する。これらのリニア同期モーターの基本動作は、MagneMotion, Inc.に譲渡された米国特許8,967,051から理解することができる。
【0095】
容器移動装置システムは、ソフトウェアコンポーネントとハードウェアコンポーネントとの両方を含む。個々のトラックセクション及びそれらのトラックセクション用のローカルコントローラーに加えて、容器移動装置システム用のハードウェアは、メモリ、周辺回路、ディスクドライブ、ネットワークインターフェース等を有するプロセッサを含むコンピューターも含む。容器移動装置のコンピューターは、分析機器全体のための中央コンピューターにおいて、試料の移動をスケジューリングして促進する機器マネージャーと共に動作する。いくつかの実施形態では、中央コンピューターと容器移動装置のコンピューターとの間の通信は、内部イーサネット/IPバックボーンを介して行われる。システム30内の各モジュールはイーサネット接続を介して接続され、中央コンピューターが容器移動装置システム全体を含む各モジュールと通信することを可能にする。いくつかの実施形態では、容器移動装置のコンピューターは、図4のトラックセクション36等のトラックセクションコンポーネントのうちの1つに埋め込むことができる。
【0096】
容器移動装置のソフトウェアは、試料ハンドリングロボット内のキャリアから入力を受信して、トラックシステム内の全ての相互作用の状態モデルを維持することができる。例えば、試料ハンドリングロボットがキャリア内に新しい試料を配置すると、そのキャリア又はロボットは、試料とキャリアとの間の新しい関連付けを容器移動装置のソフトウェアに通知することができる。その後、容器移動装置のソフトウェアは、イーサネット接続を介して中央コンピューター内のシステム機器マネージャーソフトウェアに通知することができる。これにより、機器30用の中央コンピューターは、システム内の全試料の状態モデルを維持し、試料を試料の制御を有する現在のモジュール並びに試料に対して実行されるタスクのスケジュールと関連付けることができる。試料のバーコードが管特徴付けステーションによって読み取られると、試料及びキャリアの関係についての追加の状態情報が管特徴付けステーションから容器移動装置のソフトウェアに伝達され、最新の状態モデルが可能になる。この情報も中央コンピューターに伝達することができる。試料が分析器モジュールから移動され、試験され、別の分析器モジュールに移動され、試験され、試料ハンドリングモジュールに戻され、システムから取り出されると、容器移動装置及び中央コンピューターによって維持される状態モデルをプロセスに沿った各時点で更新することができる。
【0097】
各ソース/シンクはまた、分析器システムの中央コンピューター内のシステム機器マネージャーソフトウェアと相互作用する。イーサネット接続を介して通信することより、各ソース/シンク(例えば、試料ハンドラー)は、試料がトレイから取り出され、ローカルトラックセクション上のキャリア内に配置され、戻されるとき、ソース/シンクが試料トレイを受け取った時点並びに試料トレイが有する可能性のある何らかの識別情報及びステータス情報を識別する。さらに、ハンドリングされた試料数、残っている試料数等に関する統計情報もまた、ソース/シンクによって維持され、システム機器マネージャーに通信され得る。試料が各ソース/シンクに到着すると、そのモジュールのプロセッサは、システム機器マネージャーから各試料の一意の識別子を要求することができる。バーコードが読み取られる前であっても、この一意の識別子を使用してその個々の試料管を追跡できる。その試料管がそのバーコードを管特徴付けステーションによって読み取られると、試料の識別とその管のための一意の識別子との間の関連付けは、中央コンピューター内のシステム機器マネージャー内のソフトウェアによってなされ得る。
【0098】
中央コンピューター内には、ソフトウェアで実行されるプラニングサブシステムもある。このプランナーは、システムに関する情報を利用するという主な役割と、システム内の個々の分析モジュールを選択し、その試料の作業指示内の各試料に対して各テストを実行するものを識別するという内部のビジネスの役割とを担う。この情報を用いて、プランナーは、その特定の分析モジュールのために試料を試料キューに移動するように容器移動装置に指示する。その分析モジュールが試料からの吸引を終了すると、容器移動装置はその分析モジュールによって解放されたときにその試料の次の目的地を要求する。中央コンピューターのプランナーから来るその目的地は、他の分析モジュール(更なる試験を実施する必要がある場合)、又はその試料を容器移動装置から取り出すことを可能にする試料ソース/シンクとすることができる。いくつかの実施形態では、容器移動装置ソフトウェア及びプランナーは、異なるプロセッサに存在し、情報は機器内のネットワークを介して交換される。いくつかの実施形態では、容器移動装置ソフトウェア及びプランナーは、単一のプロセッサで動作し、プロセッサ間通信又はメモリを介して通信を行うことを可能にする。
【0099】
個々の試料に対する作業指示は、LISから中央プロセッサが受け取る。LISは、その日に実験室内で処理される予定の全ての試料について、全ての作業指示のデータベースを維持できる。プランナーソフトウェアコンポーネントは、シフトの開始時又はオンデマンドで、LISから受信した作業指示を個々の試料に関連付けることができる。容器移動装置が自動化トラック上の患者試料の特定の識別情報を識別すると、容器移動装置のソフトウェアはプランナーと通信して、その試料のタスクのスケジュール及び目的地を特定する。その試料の識別子は作業指示と比較され、その試料に対して実行される適切な作業指示及びタスクの順序が識別される。次に、プランナーソフトウェアモジュールは、システム内の各分析モジュールのステータスを確認して、その試料を受け取り、作業指示の各試験を実行するための適切な分析モジュールを識別する。複数の分析モジュールが同じ試験を実行できる場合、プランナーソフトウェア内のスケジューリングロジックは、これらの分析モジュールを負荷分散して最大のスループットを確保しながら、個々の分析器モジュールの個々のキューの待ち時間を最小限に抑えることができる。
【0100】
これらの試験の目的地のスケジュールがプランナーモジュールによって計算されると、目的地の順序の基本経路を容器移動装置に送ることができる。容器移動装置はそれからそのローカルな制御下で動作し、各試料を各分析器モジュールへ移動させ、試料がその目的地に到達する度にプランナーに知らせる。その後、プラニングモジュールは、各試料及びシステムの状態モデルを維持できる。いくつかの実施形態では、容器移動装置は各試料について次の目的地のモデルを維持するだけである。したがって、試料が各分析器モジュールに送達されると、プランナーモジュールに通知される。その試料の制御はローカル分析器モジュールに渡される。ローカル分析器は、そのローカルトラックセクションをランダムアクセスキューとして制御する。そのローカル分析器モジュールが試料の試験を完了すると、その分析器モジュールはステータスの変化を容器移動装置又は中央コンピュータープランナーモジュールに伝達することができる。制御は容器移動装置に引き渡すことができる。次いで、ローカル分析器は、試料をローカルトラックセクションから容器にアクセス可能なトラックセクションの一部の上に移動させる。次に、トラフィックが許可されると、容器移動装置は試料キャリアを外周トラックセクション上に移動させる。その後、容器移動装置はプランナーモジュールと通信して、そのキャリアの次の目的地を特定する。プランナーモジュールからその目的地を受信すると、容器移動装置は次にそのキャリアの低レベル制御を維持し、そのキャリアがその目的地に到達するまでそれに従ってトラフィックを方向付け、その時点で中央プランナーモジュールは通知され、適切なローカルモジュールに制御が渡される。
【0101】
ローカル分析モジュール用の試料について全ての試験が完了すると、プランナーモジュールは、適切なソース/シンク用の出力キューにそのキャリアを移動させるように容器移動装置に通知する。容器移動装置は目的地コマンドを受信し、その試料キャリアをソース/シンクのための任意のキューの物理的位置(例えば、試料ハンドラー10)に移動し、そしてプランナーモジュールに通知して制御が指定されたソース/シンクに渡されたことを確認する。
【0102】
中央コントローラーのプランナーモジュールはまた、試料ソース/シンクモジュールと通信する。これにより、プランナーモジュールは、いつ試料を受け取り、いつローカルキャリア上に移動し、容器移動装置に渡され、容器移動装置から受け取り、ソース/シンクモジュール内の出力スロット又は格納スロット内に配置するかを理解することができる。これにより、各スロット間のソフトウェアの関連付けが可能になり、試料の識別子によって、その試料の保管場所がわかっているため、その試料で追加の後続の試験を簡単に実行できる。
【0103】
上記で説明したように、容器移動装置及び試料ソース/シンクモジュールは、ローカルトラックセクションがソース/シンクのロボットアームがアクセス可能である点(例えば、試料キャリア47が示されるトラックセクション14)で互いに相互作用する。容器移動装置は、ロボットアームがアクセス可能な所定の場所にキャリアを移動させることに対して責務を負い、一方、ロボットアームは正しい場所に置かれたキャリアとうまく相互作用することに対して責務を負う。これにより、ソース/シンクと容器移動装置モジュールとの間の試料の適切な受け渡しが保証される。
【0104】
いくつかの実施形態では、容器移動装置及び分析モジュールは、2つの一般的な点群で互いに相互作用する。第1の組の点は、相互作用のために個々の試料管が容器移動装置によって分析モジュールに提示される場所である。いくつかの実施形態では、この位置は、キャリア52,56の位置と同義である。いくつかの実施形態では、容器移動装置モジュールは、各分析モジュールのキューとして機能する個々のトラックセクションコードの低レベル制御を維持する。容器移動装置は、各分析モジュールの要求に応じてこれらのセクションを操作して、ランダムアクセスキューとして機能する。このようにして、各分析モジュールのプロセッサは、それがアクセス可能な試料に対するキューモデルを有するだけでよく、各試料を各キューの先頭の位置、すなわち各キューに対するアクセスポイントに移動させるのに必要な個々のステップは、容器移動装置のコントローラーによって実行される。これにより、容器移動装置のソフトウェアは磁気トラックを使用して試料を移動することに専門知識を持つことができるが、分析モジュール内のソフトウェアは、試料を物理バッファー内で移動する方法の基本モデルとともに試験用に特化できる。
【0105】
いくつかの実施形態では、容器移動装置が各分析モジュールと相互作用する第2の点群は、図6の試薬キャリア64の位置にある。これらの実施形態では、キャリアは外周トラック上の所与の位置に試薬パックを提示することができ、それにより容器移動装置は試薬を各分析モジュールに持ってくることができる。
【0106】
分析モジュール及び容器移動装置は、システムが共有キュー内の試料のそれぞれに対するランダムアクセスを提供するように、試料管を移動するとともに試料管にアクセスするためのそれらの活動を調整する。ランダムアクセスを維持することによって、分析モジュールはより高い公称スループットを維持し、したがって全体的な時間効率を向上させるためにそれら自体の内部スケジューリングアルゴリズムを利用することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、各分析モジュールは、そのローカル分析器モジュールが或る設定時間後にアクセスすることができる全ての試料のソフトウェア内に論理キューを維持することができる。例えば、図6に示す例では、IA分析器モジュール32は、試料53以外の試料を含む論理キューを維持することができる。例えば、試料60,62,51は、分析器モジュール32のソフトウェア内に維持されるランダムアクセスキューの一部とすることができる。それが必要とされる前に1サイクル(又はそれ以上)各試料を要求することで、論理キュー内の試料が分析器モジュール32の内側コードの物理的キュー内にある必要がないように、容器移動装置はジャストインタイム方式でアクセスできる試料を供給できる。いくつかの実施形態では、容器移動装置は、分析器モジュール32の論理キューが試料54,56も含むことができるように十分迅速にトラックセクションを操作することができる。すなわち、分析器モジュール34と分析器モジュール32との間にスケジューリングの競合がない限り、容器移動装置は必要に応じて分析器モジュール32に適切な試料を提示することができ、各分析器モジュールについて利用可能なキューの論理サイズを大幅に拡大する。一実施形態において従来の物理的キューの代わりにどのような論理キューを使用することができるかの更なる例は、米国特許出願公開2015/0118756から理解することができる。
【0108】
図9は、例示的な実施形態における容器移動装置システムとローカル分析器モジュールとの間で試料を受け渡すための例示的なソフトウェアフロー80を示し、それによってローカル分析器モジュールはソフトウェア内の試料の論理キューを維持するが、その分析器モジュールへのローカル内部トラックを含むトラック上のキャリア内の試料管の実際の位置決めをするために容器移動装置システムに依存している。したがって、容器移動装置システムは、試料吸引を実行するためにローカル分析器によって使用されるピペットとの相互作用のために、患者試料を物理的に所定の位置に移動させる役割を果たす。ステップ82において、容器移動装置システムは、既知の試料IDを有する試料を分析器モジュールの位置に移動させる。ステップ84で、容器移動装置コントローラーは、その分析器のキューに利用可能な新しい試料があることをローカル分析器に通知する。ステップ86では、ローカル分析器はその試料IDをランダムアクセスキューのための論理構成体に追加する。ステップ88では、ローカル分析器モジュールは、その論理キュー内の次の試料を選択して吸引を実行する。この次の試料は、到着したばかりの試料を含む、ランダムアクセスキュー内の任意の試料とすることができる。このステップは、分析器モジュールに対してローカルのプロセッサによって実行されるソフトウェア命令を含むローカルスケジューリングアルゴリズムを使用して行われる。これにより、ローカル分析器モジュールは、そのローカルキューを管理する際に自律性を持つことができる。
【0109】
ステップ90において、ローカル分析器モジュールプロセッサは、選択及びステップ88に基づいて吸引のために次の試料を要求する。次に、ローカル分析器モジュールは、要求されている試料IDを容器移動装置に通信する。ステップ92では、容器移動装置は、ローカルトラックセグメントを使用して要求された試料をローカル分析器モジュールのピペットステーションの所定の位置に移動させる。このステップが完了すると、ステップ94で、容器移動装置は、その要求が満たされ、試料は吸引の準備ができていることをローカル分析器モジュールに通知する。ステップ96では、ローカル分析器モジュールは、試料吸引ピペットを所定の位置に移動させて、要求された試料管から試料を吸引する。ステップ98で、ピペットによって吸引が行われ、十分な量が試料から吸引されたかどうか、又はそれが試料を再度要求しなければならないかどうか(例えば、試料に追加の吸引サイクルのためにとどまることを要求する等)がローカル分析器モジュール内のプロセッサによって決定される。例えば、追加の量の試料流体が直ちに又は近い将来に必要とされる可能性があると決定された場合、その試料はその分析器モジュールの論理キューに維持され得るが、試料はピペットの位置で直ちに必要とされない可能性があり、追加の試料と相互作用するようにピペットを解放する。
【0110】
ステップ100において、十分な量が吸引された場合、ローカル分析器モジュールコントローラーは、試料がキューから解放され得ることを容器移動装置システムに通知する。解放の通知を受信すると、容器移動装置システムは、ステップ102でそのステータス及びメモリを更新することによって試料が論理キューから解放されたことに気付くことができる。ステップ104では、分析器システム内の追加モジュールに試料が解放される準備ができていることを通知することができる。例えば、ステップ106では、容器移動装置は、それが要求を受信し、試料が論理キューから解放されるべきであることを分析器モジュールに通知することができる。この通知を受け取ると、ローカル分析器モジュールは、その患者試料のその論理キューからの解放を完了し、試料のキューを表すメモリ構造からそれを削除する。ステップ108では、容器移動装置は、ローカルトラックセグメント上の物理的キューから試料を取り除くことが物理的に可能であるかどうかを判定する。例えば、反時計回りのトラフィックパターンで動作しているシステムでは、解放される試料がローカルトラックセグメント上で反時計回りにおいて先頭の試料でない場合、その試料を解放するには、間に介在している試料をメイントラック上に流して、物理的キューの末尾でローカルキューに戻されるように容器移動装置システムの周りを巡回して戻す必要がある。いくつかの実施形態では、メイントラックループが反時計回りに動作しても、メイントラックループに十分な空きスペースがあれば、ローカルトラックセグメントは時計回りにおいて先頭の試料をメイントラックループ上に移動させることができる場合がある。これは、道路上を前進する前に車を私道から道路上に後退させる方法と似ている。
【0111】
試料をローカルキューから即座に除去することが物理的に実現可能でない場合、ステップ110で、容器移動装置は、解放される試料を有するキャリアと出口トラックセグメントとの間の任意の試料キャリアが、解放された試料が出ることができるようにメイントラック上にフラッシュされるように、ローカルトラックセグメントの物理的キューを安全にシャッフルさせることができるかどうかを判定する。この判定は、試料をメイントラックセグメント上に解放するのに十分な時間があるかどうか、又はそうするためにはフラッシュを促進するために短時間内に必要とされる物理的キューから近くの試料をフラッシュする必要があるかどうか等、ローカルトラフィックステータスに基づく可能性がある。ローカルキューのフラッシュ手順が実行可能である場合、ステップ112において、容器移動装置は、間に介在している適切な試料を解放される試料と同様にメイントラックセグメント上に移動させる。その後、これらの介在している試料はメイントラックループを回って移動し、ローカル分析器モジュールの物理的キューの末尾に戻される。その後、解放された試料は、その次の目的地に移動することができる。試料が解放されると、ステップ114において、分析器システムの中央計算システム内のプランナーモジュールは、それがその次の目的地へ移動する準備ができていることを容器移動装置から知らされる。プランナーモジュールは次に、容器移動装置と相互作用して次の目的地を決定し、その試料をその目的地に物理的に移動させる。
【0112】
ソフトウェアインターフェース
上述の概念に加えて、ソフトウェアパラメーターを使用して、分析器システム内の試料、キャリア、及びシステムのステータスに関するデータを格納することができる。これらのパラメーターは、これらのオブジェクトのステータスに関する情報を伝達するためにも使用できる。以下は、いくつかの実施形態に係る、分析器システムの動作中にソフトウェアモジュール間で格納及び受け渡すことができるデータのいくつかの例である。
【0113】
以下は例示的なメッセージであり、それにより、容器移動装置は、新しい試料がローカルランダムアクセス試料キューに利用可能にされていることを分析器モジュールに伝える。このようなメッセージには、以下の情報が含まれている。
・試料ID:これは、分析器システム内の試料を一意に識別する識別子である。このパラメーターは、ピペット操作を行う作業指示又は試験へのリンクである。
・一次/二次管フラグ:このパラメーターは、血液試料と共に使用される、試料が一次管(例えば、赤血球(RBC)を含む)又は二次管(例えば、RBCを含まない)かどうかを分析器モジュールに対して識別する。
・管タイプ:このパラメーターは、サポートされている管のどの分類が試料に関連付けられているかを分析器モジュールに対して識別する。
・管頂部試料カップフラグ:このパラメーターは、試料管が試料管上に支持された管頂部カップを載せているかどうかを分析器モジュールに対して識別する。
【0114】
分析器モジュールは、次の試料を分析器モジュールのピペットの物理的位置に配置するための要求を容器移動装置に伝達することができる。それは試料IDを引数として含めることができる。
【0115】
別の容器移動装置から分析器へのメッセージは「試料OKを知らせる」メッセージであり、それによって容器移動装置は分析器モジュールに試料がピペット操作される所定の位置にあることを指示する。いくつかの実施形態では、分析器モジュールは、複数のピペット操作位置にアクセスすることができる。したがって、それらの実施形態では、試料ID及びその試料が配置された位置のIDは、「試料OKを知らせる」メッセージ内で引数として渡される。
【0116】
分析器モジュールが試料の処理を終了すると、分析器モジュールは「キューからの試料の解放を知らせる」メッセージを容器移動装置に送信することができる。このメッセージは、試料がその分析器モジュールにもはや必要とされないことを示している。それには試料IDがパラメーターとして含まれている。
【0117】
同様に、容器移動装置が分析器モジュールのローカルキューから要求された試料を首尾よく解放したとき、容器移動装置は、試料IDを含む「試料が解放されたことを知らせる」メッセージで応答することができる。前述のメッセージは、図9のソフトウェアフローに関して示されていることに留意すべきである。
【0118】
冷蔵保管庫
コントロール及びキャリブレーター用の冷蔵保管庫は、試料管内のコントロール及びキャリブレーター用に数日の長期保管を提供する。これは、試料ハンドラーモジュール内の冷蔵保管庫内に冷蔵湿度/蒸発器制御環境を提供することによって達成される。いくつかの実施形態では、密閉された冷蔵環境に各管用の蒸発カバーを設けることによって、コントロール及びキャリブレーターを少なくとも14日間実質的な劣化又は蒸発による損失なしに保管することができる。
【0119】
図10Aは、例示的なコントロール保管モジュール120の分解斜視図である。コントロール保管モジュール120の主要コンポーネントは、管を覆う管アクセスドアアセンブリ116と、コールドチャンバを形成するベースアセンブリ118内に含まれる蒸発カバーベースアセンブリ117とである。管アクセスドアアセンブリ116は、コントロール管及びキャリブレーター管を収容するための密封されたドアを提供する。管及び蒸発カバーベースアセンブリ117は、コントロール管及びキャリブレーター管を受け入れ、これらの管を冷却するための熱シンクを提供するための複数の凹部を有するステンレスベースプレートを含む。さらに、チューブベースアセンブリと係合するような大きさの個々の蒸発カバーが各管の上方に配置されている。これらのカバーは、相互汚染を避けるために管と直接接触しないように大きさが決められている。コールドチャンバのベースアセンブリ118は、断熱壁を有するハウジングと、ベースアセンブリ117のステンレスベースと熱的に接触している熱電冷却器(TEC)の取り付け位置とを含む。
【0120】
図10Bは、例示的なコントロール保管モジュールと共に使用するための例示的な冷却モジュール120を示す。この実施形態では、3つの熱電素子(TED)が、コントロール及びキャリブレーターを保管するために使用される冷却冷蔵保管庫を担当する。各熱電素子は、熱パッド、1つ以上のペルチェモジュール、ヒートシンクフィン、及びフィンから熱を除去するためのファンを含むアセンブリである。各TED及びヒートシンクハードウェアを含むモジュールは、図10BではTEDモジュール122として識別されている。冷却はペルチェ効果によって起こり、ペルチェ効果は、2つの異なる導体の接合部に電荷を通過させて、高温側及び低温側を作り出すことによって機能する。冷却面は、TEDの冷たい面とコールドプレート取り付け面との間にグラファイトサーマルパッドを挟むことによって熱的に接続される。高温側は一連のフィンに接続されており、それは空気が吹かれて、熱を除去するのを可能にする。一連のサーミスタ124は、コールドプレートの底部全体にわたって配置することができる。例えば、3個をTED用の取り付けブロックに直接取り付けることができ、2個の追加サーミスタを追加の測定機能のためにシステムの端部近くに配置することができる。次いで、制御モジュールは、各サーミスタ124からの熱入力を利用してTED122を作動させるための制御を提供することができる。当該技術分野で知られているような様々な熱調整手法を適用することができる。いくつかの実施形態では、電位積分微分(PID)コントローラーを使用して各TED122を制御する。いくつかの実施形態では、サーミスタ値の局所平均化を使用して各々の個々のTEDを個別に制御することができる。いくつかの実施形態では、全てのサーミスタの平均を使用して、全てのTEDを一斉に制御することができる。他の例示的な制御手法は、比例コントローラー、比例積分コントローラー、及び単純閾値熱電対手法を使用することを含む。
【0121】
例示的な実施形態では、比例積分(PI)調整が使用される。積分PIコントローラーは、特に大きな時間制約のあるシステムで、温度制御によく使用される。この例でコントロール保管モジュールの係数を調整するために使用される方法は、John G. Ziegler及びNathaniel B. Nicholsによって開発された限界感度法(Ultimate Sensitivity Method)である。以下は、この方法におけるステップの実施例を説明する。最初のステップはkI=0に設定することである。kIはコントローラーの積分係数である。小さいkPから始めて、応答が安定するまで待つ。kPはコントローラーの比例係数である。応答が振動し始めるまで、設定値は少しの量だけ変更される。応答に振動がない場合は、kPを2倍に増やして繰り返す。この方法は、応答信号に振動が見られるまで継続する。例示的な冷蔵コントロール保管モジュールにおける調整プロセスのこのステップの間、kP=300、400、及び350の値がこの順序で使用された。350が適切なゲインKuであることが判明し、その結果、93秒の温度での振動期間が生じた。これにより、PIコントローラーで使用するための以下の式が得られる。kP=350/2.2=160、kI=1.55/1.2=1.3(93秒=1.55分)。この方法の最後のステップは、試験及び確認である。
【0122】
実施例において、kP=160、kI=1.3、及びkD=0でコントロール保管調整プロセスを操作することは、0.427℃/分で冷却すること、17℃の周囲温度で開始することをもたらした。3つのTEDが完全にオンになり、8.5Aの直流で、モジュールは定常状態に達した後で、PI制御下で安定したままである。モジュールを周囲温度17℃で始動している間、実施例のコントロール保管モジュールは、34.5分で定常状態に達した。定常状態は、設定点温度4℃の1%以内に温度を維持することと定義できる。実施例において、アンダーシュートは0.25℃(6.25%)であり、設定点を超えた後に定常状態に達するまでの整定時間は6.5分であった。冷却速度が0.427℃/分、整定時間が6.5分の場合、モジュールが4℃の設定点に達するのに要する計算時間は、(30℃-4℃)/(.427℃/分)+6.5分=67.3分である。例示的な一実施形態では、30℃はシステムの動作範囲に対する最高周囲温度である。同じ式を使用すると、周囲温度35℃に対して冷却時間は79分になる。例示的な一実施形態では、35℃は、冷蔵コントロール保管モジュールを含む試料ハンドラーモジュールのカバーの下の推定最大温度である。
【0123】
いくつかの実施形態では、管アクセスドアアセンブリ116は、スライド式に開く2つのドアを備える。いくつかの実施形態において、1つ以上のモーターがドアの作動を提供してもよい。断面図10Cに示されるもの等のいくつかの実施形態は、試料ハンドリングロボット20がドアの作動を提供することを可能にする受動的な機構を提供する。管アクセスドアアセンブリ116は、2つのドアを含む。これらのドアのうちの1つは、ピン125を含む。ピン125は、ドアのうちの1つに剛性的に機械的に結合され、ロボットアーム20のガントリーアセンブリと係合するように構成される。これによって、ロボットアーム20は、ピン125と係合する所定の位置に移動でき、そして、そのピンを開いた位置又は閉じた位置に動かすことができる。ラックアンドピニオン126は、ピン125の係合が2つのドアを反対方向に動かすことを可能にし、ロボットアーム20によるピン125の係合による開閉動作を提供する。
【0124】
図10Dは、管及びベースアセンブリ118の分解斜視図である。蒸発カバー127は、頂部プレート128の凹部に収まるように構成されている。頂部プレート128は、保護頂部シートをベースアセンブリ118に提供する開口部のプラスチックアレイとすることができる。開口部は、蒸発カバー127を受け入れるような大きさである。頂部プレート128の下では、ステンレス鋼の打撃プレート129が、頂部プレート128のものよりも小さいサイズの穴のアレイを含む。蒸発カバー127は、これらの開口部のサイズの違いのために作られた棚状部の上に置かれる。いくつかの実施形態では、蒸発カバー127はプラスチック材料から作製されるが、蒸発カバー127と打撃プレート129との間に磁力を提供するためにカバーのベースに1つ以上の磁石を含む。これにより、カバー127は、打撃プレート129にしっかりと嵌合することができる。ロボットアーム20は、各蒸発カバー127を取り外すためにエンドエフェクターを使用し、そのカバーを近くの棚に置き、次に取り外しのためにエンドエフェクターを使用してその下で管を係合させることによってベースアセンブリ118に保管されたコントロールキャリブレーターにアクセスすることができる。
【0125】
ベースアセンブリ118は、コントロール管及びキャリブレーター管を受け入れるように寸法決めされた複数の凹部を含む。いくつかの実施形態では、これらの凹部は、「v」を形成する2つの垂直壁と、「v」とは反対側で、保持力を提供する板ばねとを含む。「v」及びばねを使用することによって、これらの凹部に収容された管は、ロボットアームによるより正確な係合のために反復可能な位置に直立に保持され得る。
【0126】
試料ハンドラーロボットサブシステム
試料ハンドラーモジュールと共に使用され得る例示的な試料ハンドラーロボットは、互いに直交する3つの軸を有するデカルトロボットを有するロボットガントリーを含む。ガントリーは4台のリニアブラシレスDCモーターでセットアップされている。ガントリーのY軸には2つのモーターが使用され、1つはX軸用、もう1つはZ軸用である。リニアモーターは、磁気ロッド、フォーサー、ボールベアリングスライドを含み、全てフレームに取り付けられている。コイルは、スライドによって案内されて磁気ロッドに沿って移動するフォーサー内に存在する。例示的なガントリー構成を図11に示す。
【0127】
ロボットアーム130は、900mmの移動距離を有する2つの平行なY軸リニアモーター132を含む。平行なY軸リニアモーターを有することによって、X軸リニアモーター134は、X軸リニアモーター134全体がY軸リニアモーターに対して直角に移動することを可能にする安定したプラットフォームを有する。この実施形態では、X軸リニアモーター134は、約660mmの移動量を有する。X軸モーター134に沿って走行するのは、150mmの垂直移動量を有するZ軸リニアモーター136を含むアセンブリである。信号及び電力はケーブルチェーンキャリア137によって提供することができ、ロボットアーム130が動き回るときにケーブルが絡まるのを防ぐ。X軸及びY軸リニアモーター132,134はガントリーを形成し、Z軸モーター136を試料管又はキャリアの真上に位置決めする。ロボットアーム130の最下点において、エンドエフェクター139は、試料管又は他の物体を掴むために開閉することができる顎部を提供する。ロボットアーム130が試料管の上方に配置されると、Z軸モーター136が管に下降し、同時にエンドエフェクター139が開閉して管を捕捉する。
【0128】
いくつかの実施形態において、4つのガントリーモーターは、3つのCopley Accelnetコントローラー/アンプによって制御される。X軸、Z軸、及びロボットエンドエフェクターの負荷を分散するために、2つのY軸モーターが使用されている。2つのY軸モーターは常に共に動くので、同期を確保するために単一のAccelnetコントローラー/アンプによって制御される。
【0129】
ロボットガントリーサブシステムのエンドエフェクターは、グリッパーと呼ぶことができる。ロボットグリッパーの主な目的は、搬送可能な物品を掴み、搬送中に保持し、解放することである。搬送可能な物品には、試料管、コントロール/キャリブレーターバイアル、コントロール保管蒸発カバーが含まれる。グリッパーはまた、開いた管、キャップ付きの管、及びフランジ付きの管をハンドリング可能であってもよい。いくつかの実施形態では、グリッパーは管頂部試料カップ(TTSC)を有する試験管を搬送することも可能であり得る。ロボットグリッパーは、クラッシュ/衝突センサー、エンコーダーフィードバックを有するステッピングモーター、回転運動を直線運動に変換するための機構、及びグリッパーフィンガーを含むことができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、全ての搬送可能な物品を同じ量の力で掴むことができる。各管は、同じグリップ位置を有するように指定することもできる。そのような実施形態では、正確な高さは、システムが支持するのに必要とされる最も短い管の高さによって決められる。いくつかの実施形態では、グリッパーは、管の頂部からずれて把持するように設計されている。管の頂部の見積もりは、DVSを介して、又はエンドエフェクターの機械的な位置合わせによって取得できる。ステッピングモーターは、運動変換機構を介してグリッパーフィンガーを開閉するように駆動する。
【0131】
いくつかの実施形態では、グリッパーは、クラッシュ/衝突センサーを介してロボットガントリーに取り付けられている。このセンサーは、エンドエフェクターが垂直(Z)方向又は横(X、Y)方向のいずれかで物体と衝突したときを感知する能力を提供する。2つのセンサーは別々の入力としてモーターアンプに接続されている。アンプは、入力がアクティブになるとフラグが設定され、モーターはあらかじめ指定された動作パラメーターのセットで動作を中止するように構成されている。フラグがクリアされた後にのみ、モーターは運転に戻ることができる。これは、試料ハンドラー内の試料コンテンツの流出を防ぐのに役立つことができる。
【0132】
例示的なクラッシュセンサー及び衝突センサーは、試料ハンドラーの誤動作を回避するための追加の機能を含むことができる。グリッパーのクラッシュ機能により、或る程度のコンプライアンス、並びに管の底の確認及び試料I/O内への管の配置、コントロール及びキャリブレーターの保管、並びにトラックシステム内のキャリアが可能になる。この動作中、光センサーを通過する遮断ピンからの信号は、管が所望の高さに達したことをシステムに知らせることができる。いくつかの実施形態では、センサーを作動させるために約0.7mmの移動距離が必要である。このセンサーはまた、管を別の管の上に置く場合のように、搬送中の物体が予期せずにターゲットに衝突したときを検出するようにも機能する。センサーは、管を損傷したり破損させたりすることなく、ロボットが慎重に停止できるようにするための追加の移動距離を有する。
【0133】
クラッシュ機能は、ロボットエンドエフェクターの傾きを処理する。傾きは、走行中に意図しない物体にぶつかることによって加えられる横荷重によって引き起こされる可能性がある。例としては、試料キャリアの管スロットの前縁にぶつかることが挙げられる。このコンプライアンスにより、ロボットは停止し、搬送物の損傷/落下を防ぐことができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、エンドエフェクターグリッパーフィンガーは、フィンガーが試料管を掴むときに或る程度のコンプライアンス及び緩衝を可能にする、Oリング等のゴム部分を含む。いくつかの実施形態では、管の保持を実行する底部形状は、65mm管等、予想される最小の管サイズについてトレイの頂部とキャップの底部との間に拘束されるように設計されている。いくつかの実施形態では、これは、エンドエフェクターが利用可能な最小のキャップ付き管と接触することになる約15mmの垂直方向の遊びを可能にする。
【0135】
いくつかの実施形態では、4つのモーターが使用されるが、3つのコントローラー/アンプのみが使用される。Y軸は2つのモーターを使用してX軸、Z軸、及びロボットエンドエフェクターの負荷を分散する。これらのモーターは両方とも単一のコントローラー/アンプによって制御される。これを行うには、アンプの出力を両方のモーターに接続し、モーターのフィードバック接続を共に結合させる。しかしながら、アンプ及びソフトウェアは、2つのモーターがあることに気付かない可能性がある。これにより、Y軸を任意の他の軸と同じように扱うことができるため、制御が簡単になる。Y軸の2つのモーターは機械的に共に結合されているため、それらを別々に制御することは非常に困難であり得る。1つの解決策は、各モーターに1つずつ、2つの別々のコントローラー/アンプを使用することである。しかしながら、2つの制御アルゴリズムが単一の機械的負荷の位置を制御するために、ほぼ完全に同期することなく実行され得るので、2つのアルゴリズムは互いに絶えず対抗する可能性が高い。
【0136】
いくつかの実施形態では、ガントリーロボットサブシステムは、サーボ位置モード及び位置モードでコントローラーを使用し、全体の制御アルゴリズムは、3つの入れ子式制御ループから構成される。これらには、位置ループ、速度ループ、及び電流ループが含まれる。アルゴリズムは、2つのフィードバック信号を利用する。これらは、モーターからの位置フィードバック及びアンプからの電流フィードバックである。速度ループに対して使用される速度フィードバックは、位置信号の導関数である。
【0137】
いくつかの実施形態では、ロボットグリッパー制御は、サーボモードで動作する。サーボモードでは、制御アルゴリズムはステッパーをエンコーダーフィードバック付きの真の閉ループサーボモーターとして動作させる。このようにしてグリッパーを制御することは、把持されている間にグリッパーが物品に加える力の量を制御する能力を提供する。このモードでは、グリッパーは、ロボットガントリー内のモーターと同じ制御アルゴリズムで同じ方法で制御される。
【0138】
いくつかの実施形態では、搬送可能物品を掴むとき、グリッパーは物品の直径を知らない。このため、グリッパーはグリップを試みるたびにその「完全に閉じた」位置に移動するように指示される。グリッパーが物品に遭遇したときにグリッパーがその閉鎖動作を確実に停止するために、コントローラー/アンプの「ピーク電流」及び「連続電流」パラメーターが使用される。モーター出力電流は、グリッパーフィンガーの端部で出力される力と相関している。グリッパーは、閉じているときに物品に遭遇すると、コントローラー/アンプに設定されている連続的な電流値に相関する特定の量の力でそのアイテムを掴む。これは、グリッパー内に物品がある間は、モーターがその目的の位置に到達していないことを意味する。モーターはサーボ制御しているので、それはその最小位置に到達しようとし続ける。邪魔になる物品があり、モーターが動くことができないので、グリッパーは、保持している物体をアンプの連続電流値と相関する特定の力の値で掴み続ける。他の実施形態では、グリッパーは、DVS又はTCSの結果に基づいてそれが拾い上げている物品の直径についてのモデルを有してもよい。これにより、モーター制御における力フィードバックの必要性を軽減できる。
【0139】
図12は、エンドエフェクター139を含むエンドエフェクターアセンブリ140を示す。エンドエフェクターアセンブリ140は、Z軸モーター136の制御で垂直に移動する。エンドエフェクター139は、アクチュエーター142を介して作動される。アクチュエーター142は、エンドエフェクターを開閉可能にするサーボモーターアクチュエーターとすることができ、これらのエンドエフェクターの状態に関するフィードバック信号を提供することができる。このフィードバック信号は、管と係合するときに問題が発生したかどうかを判断するために使用できる。エンドエフェクターアセンブリ140の頂部にはコンプライアンスセンサー144がある。コンプライアンス(追従)センサー144は、エンドエフェクターアセンブリのクラッシュ状態及び傾斜状態に関する知覚フィードバック信号を提供する。
【0140】
図13は、コンプライアンスセンサー144についての更なる詳細を提供する。コンプライアンスセンサー144のこの断面図は、エンドエフェクターアセンブリ140の傾斜及びクラッシュ状態を検出するための例示的な機構を示す。エンドエフェクターアセンブリ140の傾斜は、傾斜触覚センサーPCB146を使用して決定することができる。リング状に配置された複数の触覚圧力センサー又は光学センサーは、コンプライアンスセンサーハウジング150に対するコンプライアンスピストン148の非対称運動を検出することができる。触覚センサーPCB146内の触覚センサーのリングに対する非対称運動は、エンドエフェクターアセンブリ140が軸から外れて傾いていることを示している。
【0141】
コンプライアンスピストン148は、クラッシュプランジャー152と同心円状に係合する。この係合は、軸方向の摺動関係を含むことができ、クラッシュプランジャー150がコンプライアンスピストン148の内外に摺動することを可能にする。一方、クラッシュプランジャー152に加えられる軸外力は、コンプライアンスピストン148の傾斜に影響を及ぼし得る。クラッシュセンサー152は、クラッシュプランジャー152をコンプライアンスセンサーハウジング150から離れる方向に付勢するクラッシュスプリング154から下向きの力を受ける。垂直方向の運動中にエンドエフェクターが予期しない物体に遭遇したときのように、垂直方向の力がエンドエフェクター139に加えられると、クラッシュプランジャー152はばね154を圧縮し、コンプライアンスセンサーハウジング150に対して動く。したがって、ハウジング150に対するクラッシュプランジャーのいかなる運動もクラッシュ状況が起こっていることを示す。クラッシュプランジャー152がハウジング150に対して動く距離は、ばね154に関するフックの法則によって支配されるように、クラッシュの力に比例する。ハウジング150に結合された光学センサー156は、ハウジングに対するクラッシュプランジャー152の相対距離又は動きを検出することができる。飛行時間反射、光学的測定、又はクラッシュプランジャー152と共にハウジング150内に移動する符号化ロッドの相対運動を観察することを含む任意の従来の方法で距離を決定することができる。いくつかの実施形態では、機械式エンコーダーを光学センサー156の代わりに使用することができる。光学センサー156によって電気信号を提供して、経験しているクラッシュ力の量を示すことができる。
【0142】
一方、クラッシュ力に横方向成分があると、クラッシュプランジャー152とコンプライアントピストン148との間の同心係合は、コンプライアントピストン148を中心軸に対して移動させ、それを傾けさせる。その場合、触覚センサー146は、この傾斜イベントを検出することができる。触覚センサーPCB146及び光学センサー156からの電気信号は、ロボットアーム130内のモーターを制御するプロセッサに提供することができる。
【0143】
容器移動装置のアーキテクチャ
いくつかの実施形態では、VMトラックは分散型電源を使用する。それぞれのトラックセクションは、分析器モジュール又は試料ハンドラーモジュールに関連付けられる。これらのモジュール間に設置されるスタンドアローントラックセクションは、いずれかのモジュールに関連付けられ得る。それぞれのトラックセクションは、それぞれのトラックセクションがそれに対して物理的に存在するモジュール、及び、1つの隣接モジュールによって給電される。いくつかの実施形態において、冗長電力をどの隣接モジュールから引出すかを決定することは、以下の慣行を利用する。分析器モジュールと試料ハンドラーモジュール(例えば、トラックセクション36)との間の境界を見ると、冗長電力を提供する隣接モジュールは、常に、その境界に最も近いモジュールである。それぞれのトラックセクションは、現在のモジュール及び直前のモジュールによって給電される。ここで、「直前の(prior)」は、SH/分析器モジュール境界により近いモジュールとして述べられる。分析モジュールの周りのU状トラックは、分析器の電力源を通して給電される。バックアップとして、U形状は前の分析器電力源に接続される。それぞれの電力源におけるコントローラーモジュールは、ローカルの電力故障を識別し、隣接する冗長電力源に自動的に切換え得る。例えば、現在の分析モジュールが、サービスのためにオフラインにされる必要があるか、又は、内部故障のためにダウンしている場合、それぞれのトラックセクション用の電力コントローラーは、そのトラック用の電力源を、前の/隣接する器具によって提供される電力源に切換えることになる。こうして、トラック動作は、電力源のうちの1つがダウンしている場合でも、継続し得る。幾つかの実施形態において、それぞれのU状トラック用の電力システムモジュールは、器具の背後の直線トラックセクションに近接して位置する。電力は、電力コントローラーから分析器の前面のリニアモーターに分配される。電力ケーブルは、分析モジュール自身を通してその前面トラックセクションまでルーティングされ得る。幾つかの実施形態において、それぞれのトラックセクションは、24VDCで働き、24VDCは、それぞれのキャリアが直線トラックセクション上で6m/sの最高速度に達することを可能にするのに十分な電力をそれぞれのキャリアに提供する。
【0144】
幾つかの実施形態において、トラックセクションは、多数のコイルボードに分割される。コイルボードは、トラックの金属(非強磁性)表面の下に搭載され得るコイルのリニアアレイを含む。トラックの直線セクションについて、それぞれのコイルボードは直線であり、一方、角又はカーブにおいて、コイルボードは、カーブに一致するために適切にレイアウトされたコイルを含む。全てのコイルボードは、マスターボード及びノードコントローラーによって制御される。幾つかの実施形態において、それぞれのマスターボードは最大8つの異なるコイルボードを制御し得る。一方、ノードコントローラーは集中化される。単一ノードコントローラーは、容器移動装置トラック全体を制御し得る。幾つかの実施形態において、複数の分散式ノードコントローラーは、拡張性のために使用され得る。例えば、トラックが数メートルにわたって延在するより大きいシステムにおいて、複数のノードコントローラーが使用されてもよく、キャリアの制御は、キャリアがトラックネットワークの異なる領域を横断するときに引継がれ得る。
【0145】
容器移動装置マネージャーソフトウェアは、ネットワークスイッチを通して物理的トラック用のノードコントローラーと通信するホストPC上に存在し得る。幾つかの実施形態において、複数のノードコントローラーは、単一ノードコントローラーが通常業務をハンドリングする状態で、冗長フェイルオーバーのために使用することができ、一方、第2の代替のノードコントローラーは、1次ノードコントローラーが万一故障する場合、引継ぐために準備される。幾つかの実施形態において、1次及び2次ノードコントローラーは、まさに同じソフトウェア動作及び設計を有するが、異なるIPアドレスを有し、シームレスなフェイルオーバーを可能にし得る。それぞれのノードコントローラーは、分析器システム内のネットワークスイッチを通してマスターボードに接続される。幾つかの実施形態において、ネットワークスイッチの2つの層が存在する。トップレベルのイーサネットスイッチは、PCMシステムについての中央ユーティリティセンターの一部である。これは、デイジーチェーン接続方式で一連のギガビットイーサネットスイッチに接続され得る。これらのスイッチのそれぞれは、それぞれのモジュール用の電力コントローラーとして2重の業務を果たし、ネットワーク切換え及びフェイルオーバー電力制御の両方を提供し得る。この配置構成において、それぞれのギガビットスイッチは、隣接モジュール内のそれぞれのスイッチに接続される。このデイジーチェーン接続式配置構成は、ネットワークスイッチが万一故障する場合、通信の切断をもたらす場合があるが、これらのスイッチは、容易な解決のためにホットスワップ可能であるように設計され得る。さらに、これらのネットワークスイッチの予想される故障レートは、それぞれのモジュールの電力システムよりずっと低い。トラックを構成するリニアモーターは、これらのギガビットスイッチを介してそれぞれのローカルマスターボードと通信し得る。
【0146】
図14は、トラックシステム160の斜視図を示す。トラックシステム160は、単一試料ハンドラーユニット及び2つの分析器モジュールを有するように構成される。図15は、試料ハンドラーモジュール10及び2つの分析器モジュール32,34を含む完全稼働中の分析器システム162内に位置するトラックシステム160を示す。これか分かるように、トラックシステム160は、トラックがオペレーターにとって容易にアクセス可能でないように、モジュール自身内に収容される。しかし、トラック160及び分析器システム162はモジュール式設計を利用し、それにより、トラックコンポーネントはそれぞれのモジュール内に存在し、それぞれのモジュールは、隣接モジュールを近位に設置しそれらをリンクすることによって、トラックセグメントを結合するために容易にともにリンクされ得る。トラック160の上の蓋は、トラックのリンクを容易にするために、据付け又はサービス中に取除かれ得る。幾つかの実施形態において、トラックセクションは、モジュールを互いに隣接して設置し、それぞれのモジュールのトラックセクションをともにボルトで留めることによって拡張され(正:are expanded)、トラック160等の単一多分岐トラックシステムを形成する。シグナリングケーブルは、制御を拡張することの容易さのためにともにデイジーチェーン接続され得る。
【0147】
図16は、トラックセクション170の断面図を示す。トラックセクション170は、トラック160において使用されるトラックセクションとすることができる。この実施形態において、キャリアは、トラック表面174上のレール172の間に載せられる。幾つかの実施形態において、レール172は、アルミニウム押出し部であり、トラック表面174の下でトラックコンポーネントの外側に垂直側面も含む。これらのアルミニウム押出し部は、トラックユニットを形成するためにこれらの側面ピースに内部コンポーネントを容易にボルトで留めるためにブラケットを含み得る。トラック表面174は、好ましくは非強磁性のステンレス鋼表面であり、トラック表面174を耐久性があるものにしかつ清掃するのを容易にする。アルミニウム、ステンレス鋼、複合材料等のような他の材料が、レール172及びトラック表面174のために使用され得ることが認識されるべきである。レール172の側面コンポーネントの底部に、ベースプレート176が存在する。ベースプレート176は、トラックセクション170を含むモジュールに搭載することができ、トラックシステムについての支持を提供する。
【0148】
トラック表面174の下に一連のコイル180が存在する。トラックセクション170の長手方向は図のページの奥に向かう方向であり、トラックセクション170に沿って移動するにつれて、更なるコイル180に遭遇する。コイル180は、コイルボード182に取り付けられることが好ましく、トラックの長手方向においてより高いコイル密度を可能にするために横長であることが好ましい。いくつかの実施形態では、コイルボード182は、長手方向にいくつかのコイル180を含むプリント回路基板(PCB)である。例示的なコイルボードは長さが250mmであり、250mmのトラックに必要な全てのコイル180を収容する。したがって、典型的なトラックセクションは、トラックシステム全体を構成するための数十のコイルボード182を含むいくつかのコイルボード182を有することになる。いくつかの実施形態では、コイルボード182は、そのコイルボードに沿って移動するキャリア及び24VDCの電源に適用する軌道を示すための制御信号を受信する。コイルボード182は、コイル180と、これらのコイルを駆動するためのモータードライバーと、キャリアの磁石を検出することによってコイルボードの上のトラック表面を横切るキャリアの存在を検出するための1つ以上のセンサーとを含む。これらのセンサーは、キャリア内の磁石によって、コイルボードに沿って移動するキャリアの存在及びロケーションを検出するホール効果センサーを含み得る。したがって、コイルより多いセンサーが存在してもよく、トラック表面174を横断するキャリアの位置の高分解能を可能にする。さらに、RFID受信機は、トラック表面に沿って移動するキャリアを識別するRFID信号を受信するために利用されてもよい。幾つかの実施形態において、それぞれのキャリアに一意の磁気シグネチャは、ホール効果センサーによって検出されて、キャリアのアイデンティティを磁気的に決定し得る。例えば、ホール効果センサーのアレイを横断するキャリアは、キャリア内の磁石がそのアレイにわたって移動するときに、ホール効果センサーアレイによって検出される立上り時間及び信号アーチファクトに基づいてそのキャリアの一意のシグネチャを識別するために製造時に特徴付けられ得る。幾つかの実施形態において、主駆動磁石より小さい磁石が、キャリアの底部分に設置されて、製造時にそれぞれのキャリアについての一意のシグネチャを意図的に生成してもよい。この磁気シグネチャは、容器移動装置システム用のソフトウェアにおいてそれぞれのキャリアのアイデンティティに相関され得る。例示的なリニア同期モーター駆動システムは米国特許9,346,371に記載されている。
【0149】
図17は、個々のトラックセクションが識別された状態の、例示的なトラックシステム160の上面図を示す。概して、トラックシステム160のモジュール式設計を構成する4つのタイプのトラックセクションが存在する。切換えセグメント184はトラック内の分岐である。切換えセグメント184についてのトラック表面は、全体的にT状であり、丸みのある内側縁を有する。一方、切換えセグメント184のレールは、1つの直線レール(Tの上部)、1つのR付きレール(Tの一方の内側角)、及び切換え機構を含む1つのR付きレール(Tの他方の内側角)を含む。この切換え機構は、スイッチとして働くために所定の度数(例えば、幾何学的配置に応じて20度~30度)だけ転回され得る可動レールコンポーネントである。レールコンポーネントの一方の側で、レールは直線レールとして働く。レールコンポーネントの他方の側で、レールは、転回部の外側角を形成するR付きレールとして現れる。この可動レールコンポーネントを切換えることによって、その可動レールコンポーネントは、転回部の外側又は単純な直線コースレールを提供し得る。そのため、モバイルコンポーネントは、2値スイッチを提供し、それにより、切換えセグメント184は、制御信号に応じて、転回部として又は直線コースとして現れる。これは、切換えセグメントの状態に基づいて個々のキャリアを方向転換するために使用され得る。トラックが双方向であってよいが、Tの一端のみが、転回部を形成するためにTの中央部分に接続され得ることが留意されるべきである。そのため、切換えセグメント184は3つのポートを有してもよいが、本質的に、1つのポートは、他の2つのポートのいずれかに切換えられてもよいが、これらの2つのポートは、ともに接合されることができない。
【0150】
より単純なタイプのトラックセクションは、外側直線コース186又は内側直線コース188等の直線コースである。直線コース186,188の基本コンポーネントは、その直線コースの方向に沿ってリニア推進力を提供する一連のコイルボードを伴うトラック表面及びレールである。直線コース186,188は、図17において別々に識別される。その理由は、内側直線コース188が、幾つかの実施形態において、トラック160全体を制御する容器移動装置コントローラーではなく、ローカルモジュールの制御下で動作し得るからである。これは、それぞれのローカルモジュールが、トラックセクション188を独立に動作させて、ローカルランダムアクセスキューとして働くことを可能にする。容器移動装置コントローラーは、切換えセグメント184からローカル内側直線コース188にキャリアを移動させた後、制御をローカルモジュールに引渡し得る。同様に、ローカルモジュールが内側直線コース188上に存在する試料に関する吸引を完了すると、そのモジュールは、試料キャリアを切換えセグメント184内に移動させ、制御を容器移動装置コントローラーに引渡してもよい。幾つかの実施形態において、内側トラックセクション188は、トラックシステム160全体を制御する容器移動装置コントローラーの制御下で依然として動作する。内側直線コース188上のローカルキューを制御するために、ローカルモジュールは、容器移動装置コントローラーと直接通信して、トラックセクション188内でのキャリアの移動を要求し得る。これは、要求-肯定応答通信システムを使用することによって、ローカルモジュールがそのキュー内のキャリアに対する制御を明示することを可能にし、個々のキャリアを移動させトラックシステム160を動作させる技術を容器移動装置コントローラーが有することを可能にする。
【0151】
第4のタイプのトラックセグメントは湾曲トラックセグメント190である。湾曲トラックセグメント190は、所定の半径を有する90度屈曲部(又は、他の角度の屈曲部)を提供する。この半径は、好ましくは、切換えトラックセグメント184がカーブになるように切換えられるときの転回部において使用される半径と同じである。半径は、極端な横力に遭遇することなく、キャリアがカーブの周りを速く移動することを、同時に可能にしながら、カーブの空間影響を最小にするように選択される。そのため、オートメーショントラック160の空間要件及び速度要件は、湾曲セグメント190の半径を決定し得る。
【0152】
電気的に、湾曲セグメント190は、直線コース186,188と実質的に同じである。これらのセグメントのそれぞれは複数のコイルを含み、複数のコイルは、シーケンスで励磁されて、キャリアの底部の磁石と連携してリニアモーターを提供する。その理由は、それぞれのコイルが励磁されて、それぞれのキャリアの底部に設置された駆動磁石に押力又は引力を提供するからである。コイルがシーケンスで励磁される速度は、トラックのそのセクション上でのキャリアの速度を決定する。さらに、キャリアは、或る位置内に移動し、所定のロケーションで、そのロケーションでコイルを励磁することによって高分解能で停止してもよい。
【0153】
図18は、トラック160を制御する容器移動装置コントローラーについての種々の制御ゾーンを示す。それぞれの破線ボックスは、別個のマスターボードによって制御される異なる制御ゾーンを示す。これらのトラックセグメント又はトラックセグメントの複数の部分内のコイルボードは、それぞれの制御ゾーン用の異なるマスターボードの制御下で動作する。これは、トラック管理のスケーラビリティを支援する。ノードコントローラーは、幾つかのマスターボードを、ネットワークを介してそれらと通信しながら制御し得る。一方、それぞれのマスターボードは、それぞれのマスターボードが制御するトラックの領域について個々のコイルボードを制御し得る。それぞれのマスターボードは、コイルボードと通信して、それぞれのキャリアの位置及びロケーションを識別するセンサー情報を受信し、それぞれのコイルボードに送出される制御信号によって、それぞれのキャリアの軌道を管理し得る。それぞれのマスターボードは、ノードコントローラーからローカルキャリアについての軌道情報を受信する。これは、それぞれのマスターボードが、トラックの小セクションを、コントローラーから受信される情報に基づいてトラックのそのセクションのリアルタイム制御を実施しながら支配して、トラックシステム全体の総合管理タスクをハンドリングすることを可能にする。図18に示す例示的な実施形態において、8つのマスターボード制御ゾーンが存在する。それぞれのマスターボードは、次の制御ゾーンとの適切な交換ポイントにキャリアを方向付けるために、その制御ゾーン内の任意の切換えトラックセグメント184を管理することも担当する。
【0154】
トラックシステムの管理を更に分割し、電力フェイルオーバー冗長性を提供するために、トラックシステムは、システム内のそれぞれのモジュールにほぼ対応する異なる領域に分割され得る。領域192は分析器モジュール34に対応し、一方、領域194は、分析器モジュール32に対応し、領域196は試料ホルダー10に対応する。複数のマスターボードがこれらの領域のそれぞれの中に包含されることが留意されるべきである。冗長性は、これらの領域のそれぞれにネットワーク及び電力を提供することを担当するように電力フェイルオーバーギガビットイーサネット(PFGE:power failover gigabit Ethernet)スイッチを割当てることによって達成され得る。それぞれのPFGEスイッチは、それぞれのマスターボードとノードコントローラーとの間のローカルネットワーキングを提供する。また、それぞれのPFGEスイッチは、トラックのローカル領域に電力を提供する。電力を提供するためにスイッチを利用することによって、電力冗長性が達成され得る。この例において、領域196のためのPFGEスイッチは、ローカル電力源にアクセスして、この領域におけるそれぞれのマスターボードに電力を提供する。そのPFGEスイッチは、領域194のための隣接するPFGEスイッチにおいてアクセスすることができる電力チャネルも提供する。領域194のためのPFGEスイッチは、ローカル分析器モジュールによって提供されるローカル電力源に対する通常のアクセスを有する。そのローカル分析器モジュールが、万一、故障するか、オフにされるか、又はサービスを必要とする場合、その電源は遮断され得る。しかし、分析器モジュール32がサービスされている間、分析器モジュール34が動作することを依然として可能にすることが望ましい。これを達成するために、領域194,192内のトラックセクションは、動作し続ける必要がある。これを達成するために、領域194のためのPFGEスイッチは、ローカルモジュールからの電力の喪失を検出し、領域196から、隣接するPFGEスイッチによって供給される電力供給にアクセスする。領域194のためのPFGEスイッチは、次に、ローカルモジュールの電力が故障したときにそのセクションが万一電力を必要とする場合、領域192のためのPFGEスイッチに電力供給を提供する。モジュール34が万一電力を喪失し、それにより、領域192のためのPFGEスイッチがローカル電力供給にアクセスできない場合、そのPFGEスイッチは、ローカル電力の喪失を検出し、隣の領域194のためのPFGEスイッチによって供給される電力供給にアクセスし得る。こうして、分析器モジュール32又は34が万一故障する場合、ローカルトラックセクションは、隣にある領域内のモジュールのための電力源によって供給される電力を得続ける。
【0155】
いくつかの実施形態と共に使用するためのこれらの例示的な電力フェイルオーバー冗長性技法及びシステムに関する更なる詳細は、同時に出願された米国仮特許出願62/365,194に見出すことができ、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0156】
図20は、トラック160の例示的な部分200の上面図である。例示的なトラック部分200は、単一マスターボードによって制御される複数のコイルボードを含む。図21は、コイルボード及びコイルボードを制御するマスターボードを有し、物理的トラックが取除かれた状態の同じ例示的なトラック部分200を示す。マスターボード202は、容器移動装置コントローラー/ノードコントローラーから制御命令を受信する。マスターボード202は、次に、これらの命令を使用して、コイルボード204,206を制御する。マスターボード202は、コイルボード204,206からセンサーデータも受信する。この例において、外側トラック直線コースセクションに関連する5つのコイルボード204、及び、内側トラック直線コースセクションに関連する1つのコイルボード204が存在する。コイルボード206は、切換えトラックセクションを制御する。コイルボード204のそれぞれは、ラインで配置された一連のコイル及びホール効果センサーのアレイを有する。コイルは、コイルボード204上のローカル駆動回路(例えば、大電流増幅器)によって給電され、マスターボード202の制御下で順次励磁されて、リニアトラックセクションに沿ってキャリアを駆動する。キャリア内の駆動磁石は、これらのコイルの上に設置されたステンレス鋼トラック表面に沿ってキャリアが移動するにつれて、これらのコイルに対して誘引又は反発される。ホール効果センサーは、通過する磁石を検出し、コイルボードがコイルを制御するためのフィードバックを有することを可能にする。また、センサーから収集された情報は、マスターボード202に通信され得る。例えば、キャリアに関する識別用情報が通信されてもよいとともに、キャリアに関する位置情報が通信され得る。コイルボード204は、幾つかの実施形態においてRFID受信機も有し得る。
【0157】
コイルボード206は、コイルボード204と同様に一連のコイルを含む。しかし、コイルボード206は切換えセクションを制御するため、コイルは分岐部に配置される。さらに、コイルボード206は、キャリアを再方向付けするために切換えセクション内のガイドレールを変更する切換え部材を作動させる(例えば、コイルボード206に結合したサーボモーターを作動させる)ことを担当する。幾つかの実施形態において、コイルボード206内のコイルの構成は、物理的に切換えられるガイドレールについての必要性を制限する。キャリアが転回部内に移動するにつれて、そのルートに沿うコイルは、キャリアを弧状に磁気的に押し、引く。ガイドレール切換え部材は、その移動を支援し得るが、幾つかの実施形態において、磁気ガイド力によってキャリアにめったに接触しない。幾つかの実施形態において、コイルボードは、シリアルペリフェラルインタフェース(SPI)バスを介してマスターボード202によって制御され、SPIバスは、マスターボードとコイルボードとの間のシリアル通信を容易にする。
【0158】
図22は、容器移動装置システム用のネットワーク制御アーキテクチャを示す。容器移動装置PC208は、容器移動装置全体用のマスターコントローラーとして働き、容器移動装置システムと相互作用するためにオペレーター又は検査所情報システム用のインターフェースを提供する。PC208は、個々の試料についての試験のスケジューリング及び行き先の割当てを監督し、それぞれの試料及び実施される試験のステータスのデータベースを維持し得る。PC208は、容器移動装置の統括的管理を提供するが、低レベル管理は、他のモジュールに任されてもよい。PC208は、イーサネットスイッチ210を介して容器移動装置システム内の他のモジュールと相互作用する。例えば、PC208は、1つ以上のノードコントローラー212と通信し得る。
【0159】
ノードコントローラー212は、容器移動装置システム内の試料の中間レベル管理及びルーティングを担当する。ノードコントローラー212は、PC208の統括的制御で動作する。しかし、ルーティング決定、軌道決定、トラフィック管理等は、ノードコントローラー212内のソフトウェアによって支配される。複数のノードコントローラーの間で、負荷平衡化方式で制御が共有され得るため、複数のノードコントローラー212が示される。例えば、オートメーショントラックの複数の領域は異なるノードコントローラーに割当てられ得るか、又は、個々のキャリアの管理は異なるノードコントローラーに割当てられ得る。例示的な実施形態において、通常動作中に、単一の1次ノードコントローラー212は、容器移動装置システムの全ての管理のために使用される。一方、2次スタンドバイノードコントローラー212は、1次ノードコントローラーが万一オフラインになる場合、利用可能である。その2次ノードコントローラーは、容器移動装置システム内の全てのキャリアのステータスを含むメモリを維持して、1次ノードコントローラーが万一故障する場合に引き継ぐのを支援し得る。これは、冗長性及び/又はホットスワップ可能性を提供し、容器移動装置が、ノードコントローラーがオフラインの場合に継続することを可能にする。
【0160】
ノードコントローラー212は、イーサネットスイッチ210を介してマスターボード202と通信する。図19に関して上術したように、トラックの或る領域内でのローカルネットワーキングは、それぞれの領域に割当てられたPFGEスイッチによって支配され得る。この例において、PFGEスイッチ214は、スイッチ210からデイジーチェーン接続されて、ノードコントローラー212とそれぞれのマスターボード202との間のイーサネットネットワークを提供する。ノードコントローラー212は、このイーサネットネットワークを通じて通信して、命令を与え、それぞれのマスターボード202からキャリアに関するステータス情報を受信し得る。それぞれのマスターボード202は、その後、そのマスターボード上のシリアルポートを介してローカルコイルボード204,206を制御する。そのため、ノードコントローラー212は、それぞれのコイルボードと直接通信することなくトラック内のコイルを制御し得る。これは、トラックシステムのスケーラビリティを支援する。
【0161】
実際問題として、容器移動装置のトラックは、分析器モジュールのピペットに対して明確に規定された高さにあるべきである。これは、分析器モジュールと一体のトラックセクションを設けることによって、又は、分析器モジュール上に明確に規定されたブラケットロケーションを設けて、トラックセクションモジュールが、モジュール方式でボルトで留められることを可能にすることによって、達成することができる。これは、ピペットが、試料管の底部について予想される位置(典型的なキャリア上の試料管のモデルによって、又は、TCSによって決定される管及びキャリアに関する情報によって識別される)に対して繰返し移動することを可能にする。管トップカップに関して、信頼性のある垂直位置も重要である。キャリアの底部をよく知られている位置に設置し、TCSによって決定された管トップカップに関する特徴付け情報を利用することによって、ピペットは、管トップカップの小ターゲットと確実に相互作用し得る。さらに、トラックの底部及び縁部をそれぞれのピペットに対して任意の知られている位置に搭載することによって、ピペットは、側壁からの干渉なしで、管又は管トップカップに確実に入ることができ、そのピペットは、静電容量に基づいて流体高さレベルを確実に決定し得る。静電容量式流体レベルセンサーは、ピペットの既知の伝導特性を利用し、流体内に設置されたときの静電容量を測定する。その流体がその中にセットされる容器の底部について信頼性のある許容範囲を有することによって、この静電容量式信号は、残っている試料容積の信頼性のある推定量を与え得る。
【0162】
キャリア
容器移動装置システムは、全体を通して説明したように、試料を搬送するために複数のキャリアと相互作用する。図23は、容器移動装置システムとともに使用するためのキャリアの例示的な実施形態の斜視図を示す。キャリア220は、キャリア内へのまたキャリア外への試料のプレースアンドピック運動を支持するように構成される。左手スロットは、4つのタイン222のセットの間に設置される試料を受取るように構成される。右手スロットは、4つのタイン(櫛歯)224のセットの間に設置される試料を受取るように構成される。これらのタインのセットは、対称でありかつ互いのミラーである。タインのセットの間で、中央部材226は、固定タインとして働き、4つのタインのセットにそれぞれの試料管を押込むために力を提供するばね228のセットを含む。これは、それぞれの試料スロット内での異なるサイズの試料の(長手方向軸に沿う)心出しをもたらさないが、ばね228によって提供される力並びにタイン224,222の形状は、それぞれの試料管を、キャリア/タインの長手方向軸において、横方向に心出しすることになる。矢印は、キャリア220の移動の長手方向を示す。タインは、試料管が長手方向に固定ロケーションで位置合わせされることを可能にし、それにより、試料管の中心は、試料管の半径に依存することになるが、それぞれの試料管のサイズに基づいて容易に再現可能である。
【0163】
これらのタインセットを有する上部プレートを支持するのは、本体230である。本体230は、RFIDタグ、及び、2つ以上の駆動磁石であって、キャリア220がトラック表面内のコイルと連携してリニアモーターを形成することを可能にする、2つ以上の駆動磁石等の任意のオンボード回路を含むハウジングとして働く。本体230の側壁は、トラックレールにインターフェースするように適合され得る。例えば、直線コースにおける及び固定半径カーブの周りにおける移動中のアライメントを容易にするために、本体の側壁は、以下の例示的な特徴を有し得る。本体230の側壁の上側部分は凹状セクション232を含む。この凹状セクションは、図26に示すように、カーブの内側角にインターフェースし得る。一方、凹状セクション232の垂直縁において、短い平坦セクション233が側壁内に存在する。直線コースに沿って移動しながら、キャリアの両側のセクション233の対は、直線レールの対に沿ってキャリアを整列させるのに役立ち得る。凹状セクション232の下で、凸状セクション234は、カーブの外側のレールと相互作用するために使用され得るインターフェースを提供する。したがって、湾曲セクション内のレールが2つの高さを有することができ、すなわち、カーブの内側のレールが凹状セクション232に係合するためにより高いロケーションに設置され、一方、カーブの外側のレールが凸状セクション234に係合するためにより低いロケーションに設置されることが認識されるであろう。幾つかの実施形態において、この関係は切換わり、カーブの周りを進行するときに横方向安定性を増加させるために、凸状セクションが本体内でより高く位置しながら、凹状セクションを本体内でより低く提供する。側壁232、233、及び234の凹状、平坦、凸状部分の例示的な関係は、図25の上面図においてよりよく理解することができる。
【0164】
本体230のベースにおいて、1つ以上の長手方向スライダー236が、本体230とステンレス鋼トラックとの間の摩擦を最小にするために使用され得る。例えば、超高分子量(UHMW:Ultra-High Molecular Weight)ポリエチレン又はテフロン材料が使用されてもよい。
【0165】
図24は、キャリア220の側面図である。部材226によって支持されるばね228は、2つのセットの板ばね、それぞれの試料スロットについて1つのセット、を含む。上側板ばね238は、管の上部をタイン222,224に押込む長手方向力を提供する。一方、下側板ばね240は、管の底部をタイン222,224に押込む長手方向力を提供する。これらの2つのばねの組合せは、タイン222,224の垂直アライメントに対する管の垂直アライメントを保証する。
【0166】
図25は、タイン222,224とばね228との関係を示す例示的なキャリア220の上面図である。タインの(図の配向において)最も右の対及び最も左の対は、ばね228によって押付けられた管を位置合わせし心出しするように働く。一方、タインの最も上の対及び最も下の対は、管が横方向に転倒することを防止する更なるセキュリティを提供する。見られ得るように、タインとばねとの間に幾つかの開口が存在する。これは、管の種々の光学ビューを可能にする。キャリアがTCS内に設置されると、複数のカメラビューが、タインの間の空間を通して見られて、バーコードラベルを読取り得る又は管内の液体高さを検知し得る。
【0167】
幾つかの実施形態において、タイン224,222は、金属含侵又はカーボン含侵プラスチックを含む。そのため、これらのタインはわずかに伝導性であり得る。タインの伝導性は、ピペットによるロケーション検知を容易にすることができ、静電容量式レベルセンスを使用する流体のレベル検知に影響を及ぼす可能性がある。例えば、例示的な実施形態において、キャリアの上部におけるタイン又は他の構造は、試料吸引中の静電容量式レベル検知を高めるために約30%(25%~35%)カーボン充填Lexan(商標、以下同)樹脂で作られる。幾つかの実施形態において、20%~50%の範囲のカーボン充填Lexan樹脂が使用され得る。
【0168】
図26は、キャリア220の側壁と湾曲トラックセクションの側部レールとの間のレールの噛み合わせを示す。この例において、キャリア220は、内側側部レール242及び外側側部レール244を有するトラックセクションに噛み合う。内側側部レール242は、側壁キャリア220内の凹状セクション232とインターフェースするように構成される。側部レール242は、トラック表面までの全体には延在せず、凹状セクション232の下の対応する凸状セクションが側部レール242の下を自由に通過することを可能にする。一方、外側トラックセクション側壁242は、凸状セクション234に噛み合い、実質的にトラック表面までの全体に延在する。これは、ガイドレールの半径と実質的に同じ半径を有するレールをガイドするために物理的インターフェースを設けることによって、カーブにおけるキャリア220のアライメントを可能にする。これは、カーブの周りを進行するときのラトリング、振動、横方向衝撃等を最小にする。
【0169】
図27は、キャリア220の側壁と直線トラックセクションの側部レールとの間のレールの噛み合わせを示す。この例において、平坦側壁セクション233は、トラックセクションの平行平坦側壁246に噛み合う。これは、キャリアと側壁との間の4つの相互作用ポイントを提供し、キャリアを移動方向に整列させるのを支援する。
【0170】
臨床化学分析器モジュール
分析器モジュールの1つのタイプは、臨床化学モジュール34である。臨床化学モジュール34は、中容量臨床化学(MVCC)モジュールに関して説明されるであろう。MVCCモジュールは、自動化された臨床化学試験を実行するための機器である。MVCCモジュールは、より大型の分析システムの一部として設置することができ(例えば、分析器30)、これは複数のMVCC及びIAモジュールを含むことができる。MVCCモジュールはまた、直接接続LASインターフェースモジュールを介して実験室試料分配トラックに直接接続することもできる。
【0171】
MVCCモジュールの主な機能は、測光及び統合多感覚技術(IMT)又はイオン選択電極(ISE)検出器を使用して臨床化学アッセイを提供することである。例示的なMVCCモジュールは、1時間あたり最大1200個の測光アッセイ、及び1時間あたり最大600個のIMT結果(1試料あたり最大3つの電解質結果を伴う1時間あたり200試料)を処理することができる。MVCCモジュールは、希釈システム、IMT/ISEシステム、試薬システム、及び測光システムを含み、MVCCモジュール用の一般的なベースユーティリティを介してサポートされている。
【0172】
いくつかの実施形態では、MVCCモジュールは、試料をロードするための固有の能力を有さず、容器移動装置システムを介して試料ハンドラーモジュール又は直接ロードトラックセクション等のソース/シンクにリンクされなければならない。MVCCモジュールは、容器移動装置システムを介して、MVCCモジュールのピペットがアクセス可能なアリコート位置に配置された一次試料容器から1つ以上の試料アリコートを取り出し、それらを処理のためにオンボードで保管する。
【0173】
MVCCモジュールは、PCMトラックから(又はいくつかの実施形態では、左側の単一の位置で直接)試料にアクセスする。MVCC試薬カートリッジ設計は、搬送機構インターフェース及び自動キャップ開放を可能にする構成を含む。これによって、それは「自動化にやさしく」なることができる。これにより、MVCCモジュールは、容器移動装置システムの自動化トラックを介して試薬カートリッジを受け取り、これらの試薬カートリッジを自動化トラックからMVCCモジュール上の試薬保管庫に自動的に移動させることができる。これにより、MVCCモジュールへの試薬の自動供給が可能になる。いくつかの実施形態では、MVCCモジュールは、モジュールの後部のPCMトラック上の単一の位置(例えば、図6の位置64)、又は前部の手動ロードステーションに試薬をロード及びアンロードすることができる。
【0174】
図28は、MVCCモジュール300のドメインモデルである。患者試料、キャリブレーター試料、又はコントロール試料(共に、試料)302は、キャリア及び容器移動装置システムを介して位置56に送達される試料管であり、試料調製システム304は試料にアクセスできる。試料調製システム304は、試料アクセスポイント56にアクセスするピペットアームを含む。次に、調製システム304は、自動化トラック上の試料から1つ以上のアリコートを吸引する。その試料の同一性に基づいて、その試料アリコートに対してISE試験又は測光試験が適切であるかどうかがMVCCモジュールによって決定される。ISE試料試験の場合、アリコートはISE試料送達システム306に送達される。ISE試料送達システム306は、ISE試験用の試料アリコートを受け取るためにキュベット等の複数のアリコート容器を含む。次に、送達システム306は、希釈された試料アリコートを標準のISE試験を実行するISE試験モジュールに送達する。この試験の結果データは、次にモジュール制御プロセッサ312に提示される。プロセッサ312は、MVCCモジュール300で行われている全ての試験をスケジューリングし管理する責務を負う。プロセッサ312は、LISから試験命令で、又はオペレーター若しくは試験メニューから手動でコマンドを受け取る。試験結果が完成してプロセッサに提示されると、プロセッサ312は、これらの試験結果及びその試料に対する試験の完了等の他の任意のステータスデータをLIS又はユーザーインターフェース又はデータベースに報告する。
【0175】
試料が測光試験を必要とすると決定された場合、調製システム304は、アリコートを測光試料送達システム308に提示する。測光試料送達システム308は、試料のアリコートを希釈して保存する希釈リングを含むことができる。次いで、各測光試料アリコートを測光反応システム314に提示する。この反応システムは、設定された時間スケジュールに従って試料及び試薬を受け取り、それらの混合試料を光度計316に提示する反応リングを含むことができる。光度計316は、試薬と希釈試料との間の反応を観察するために、規則的な時間間隔又はスケジュールで混合試料の複数の光度測定を行うことができる。 次に、光度計316はその結果を光度計データとしてモジュール制御プロセッサ312に提示する。
【0176】
試薬は、オペレーターによる手動送達のために前面の引き出しを介して、又は位置64等の自動化トラック上の所定の位置に試薬容器を配置することによって送達することができる。試薬送達システム322は、試薬引き出しから又は自動化トラックから試薬320を受け取り、ロボットアーム又は同様の機械的手段を用いて、試薬送達システム322は、その試薬を試薬保管領域324内に移動する。いくつかの実施形態では、試薬送達は、試薬送達システム322によるその試薬のいくつかの種類の準備を必要とすることがある。試薬保管領域324は、環境/温度制御された保管領域とすることができ、そこでは試薬の容器は試薬アリコートとして要求に応じて測光反応システム314によって使用される反応リングに送達されるように保管される。試薬が測光試験に必要とされるとき、その試薬のアリコートを試薬保管領域324から引き出すことができ、そして測光反応システム314の反応リングの一部である試薬容器又はキュベット内に配置することができる。
【0177】
MVCCモジュール300はまた、実験室から電気及び水を受け取る。試料又は試薬の相互汚染を防ぐために、試験コンポーネントの洗浄及びすすぎに水が使用される。機器の試験及び洗浄の結果、液体廃棄物が発生し、これを実験室で排出して処理又は流さなければならない。希釈剤、キュベット、又は使い捨てチップ若しくは試薬包装等の消耗品もMVCCモジュール300に提示される。これらの消耗品が使用されると、それらはMVCCモジュールによって空の試薬カートリッジと共に固形廃棄物保管領域(例えば、内部ゴミ箱)に廃棄されてもよい。一杯になると、オペレーターは固形廃棄物容器を空にして内容物を(例えば、それらを実験室のゴミ箱又は生物学的に有害な廃棄物容器に入れることによって)適切に処分するように警告することができる。
【0178】
MVCCモジュールは、2つの測定技術、すなわち測光法及びイオン選択電極(IMT/ISE)を使用する。試料のアリコートを1つ又は2つの液体試薬と混合し、1つ以上の波長で反応混合物を透過した光を最大10分間にわたって測定することによって、測光試験が行われる。IMT試験は、試料アリコートをIMT希釈剤と混合し、その混合物を標的イオン(例えば、Na、K、及びCl)に特異的な電極を通過させることによって行われる。
【0179】
例示的な一実施形態では、MVCCモジュールは、1時間あたり最大1200個の測光アッセイ、及び1時間あたり最大600個のIMT結果(1試料あたり最大3つの電解質結果を伴う1時間あたり200試料)を処理することができる。全ての測光アッセイ及びIMTアッセイは、元の試料の希釈されたアリコートから処理される。測光アッセイの場合、MVCCモジュールは、試料に対する特定の試験の希釈率と必要な試料流体の量とに応じて、1つ以上の希釈液を調製する。
【0180】
IMTアッセイの場合、元の試料のアリコートがIMTモジュールに送達され、それが内部で希釈液を調製する。IMTアッセイでは、原試料のアリコートを測定量のIMT希釈剤に添加する。混合物は、IMTチップを通過してモジュールを通って引き出され、そして各センサーの電圧が読み取られる。IMT基準Aの測定は、参照読みを提供するために各試料の直前又は直後に行われる。
【0181】
測光アッセイ用の希釈液は、MVCC試験スケジューリングソフトウェアによって必要とされるまで希釈リング上に保管される。適切な時(複数の場合もある)に、希釈された試料のアリコートを試料アームによって反応キュベット内に送達する。一般的に、全ての測光アッセイは同じ基準テンプレートに従う。すなわち、第1の試薬は空の反応キュベット内に送達され、その後試料が添加されて混合される。ほとんどの光度測定アッセイでは、試料添加の4.3分後に第2の試薬を反応混合物に添加する(そして混合する)。アッセイが完了するまで(最大9.75分)設定された時間に測光測定値を取る。全ての測光データが収集された後、アッセイ結果はいくつかの利用可能な計算のうちの1つを用いて計算される。
【0182】
光度希釈リングスケジューリングは、同期及び非同期の2つの基本モードで動作する。同期スケジューリングモードは、IMTがビジーであるか、又はIMT作業が利用できないときに動作している。同期動作中、モジュールに提示された試料から測光希釈物が作成されている。希釈リングは6秒ごとに進み、希釈キュベットを順番に処理する。希釈リングが静止している間に、新しい希釈アリコートの作成、希釈キュベットの洗浄、混合等の様々な操作がリングの周囲で行われる。いくつかの実施形態では、各試料は、単一の希釈キュベットから反応リング上の最大2つのキュベットに搬送される。反応リングとの同期を維持するために、その希釈物が反応サンプリング位置に到達したときに適切なキュベットが反応リング上に用意されるように、2つの測光試験が混合ステーションでの希釈に対してスケジューリングされる。スケジューリングされている試料に必要な残りの(2つを超える)試験は、保留中の作業のリストに追加される。混合ステーションでの特定の希釈に要求される試験が1つだけの場合、2番目のスケジューリングされた試験は、一般的なCLEAN試験である。
【0183】
非同期スケジューリングモードは、IMTがアイドル状態で利用可能な作業があるとき、又は測光保留作業リストが長くなりすぎるとき、又は高優先度(STAT)測光試験が利用可能であるときに動作している。非同期動作中、新しい希釈液は作成されず、洗浄も混合も行われない。非同期モードでは、最優先の測光試験を処理に利用できるようにするために、希釈リングは必要に応じて自由に動くことができる。
【0184】
図29は、例示的なMVCCモジュール300内のハードウェアシステムを示す。試料は、容器移動装置システムを介して試料アクセスポイント56に移動される。提示されると、試料は希釈アーム330を介して吸引可能となる。希釈アーム330は、試料のアリコートを吸引するように構成されたピペットを有するロボットアームである。その試料アリコートがISE試験のためにモジュール300の制御プロセッサによって指定されている場合、希釈アーム330は反時計回りに揺動し、ピペットをIMTシステム332用のアクセスポートの上方に位置決めする。希釈アーム330によって吸引された試料アリコートが測光試験用に指定されている場合、希釈アーム330は時計回りに回転してピペットを希釈リング334の上方に位置決めする。
【0185】
希釈器システムは、支持ポンプ及びバルク流体供給システムと共に、希釈アーム及びプローブ330、希釈リング334、希釈混合器336、及び希釈アリコート洗浄機を含む。希釈システムは、測光システム及びIMTシステムを使用可能にする。希釈アーム330は、PCMトラック上の試料アクセスポイント56からIMTシステム332又は希釈リング334のいずれかに試料を搬送する。
【0186】
光度測定アッセイのために、希釈アームは食塩水を用いて必要な試料希釈液(複数の場合もある)を作成する。通常の希釈は1:5であるが、アッセイ要件に応じて他の希釈も利用可能である。例示的なシステムはまた、最大1:2500の比率で段階希釈を実行する(スループットに影響を与える)能力を有する。そのアリコートがアリコート洗浄ステーションに到達するまで、希釈された試料は、希釈リング334での再試験又は反射試験のために保持される。通常の(多くの試験/試料)状況下では、試料は10分超使用できる。
【0187】
IMTアッセイの場合、希釈アーム330は、IMTポートに直接血清及び/又は尿の希釈を行い、そこで希釈物が混合される。この場合、IMT特有の希釈剤は、別の計量システムによって送達される。
【0188】
IMTシステム332は、ISE試験用の適切な電極を用いて希釈された試料を試験することを担当する。試料アリコートが試験されると、IMTシステム332はその後、その試料部分を試験するために使用された内部容器を洗い流して洗浄することができる。IMT試験の結果は、次いでモジュール制御プロセッサ312に送られる。IMTシステム332は、図28のISEモジュール310を含む。
【0189】
IMTシステム332は、希釈アーム330によってIMTポートに送達された試料(血清又は尿)を処理する。IMT希釈剤は、試料と混合される入口ポートに計量供給される。希釈された試料は、検出電極「スタック」に引き込まれ、そこで標的イオン(Na、K、Cl)の濃度が測定される。基準流体(複数の場合もある)は、定期的な較正を実行するために「スタック」に自動的にポンピングされることができる。このシステムは18秒サイクルで動作し、1時間あたり600アッセイの公称スループットで1時間あたり200試料を処理する。
【0190】
希釈リング334は一連の使い捨て又は洗浄可能な容器/キュベットを含む。希釈リング334が試料アリコートを受け取ると、そのリングは、試料を有する各キュベットが希釈混合器336に達するまでキュベットを回転させて、希釈試料の最終混合を実行し、試料を測光試験に適したものにする。その試料が試料アーム338によってアクセスされることができる位置になるまで、希釈リング334は時計回りに回転し続ける。希釈リング334はランダムアクセス試料リングとして作用することができ、希釈アーム330、希釈混合器336によってSTAT試料を相互作用点から、その後試料アーム338がアクセス可能な位置まで直接移動させることができる。
【0191】
試料アーム338は、希釈混合器336によって調製された希釈試料部分を吸引し、反応リング340の上方に移動し、その試料部分をその反応リング内の反応キュベットに分配することを担当する。いくつかの実施形態では、反応リング340は、試料及び試薬を有するキュベットを有する複数の同心円状リングを含むことができる。これらのリングは、試薬を吸引して試料を含む反応容器に分配することを可能にするために互いに対して動かすことができる。いくつかの実施形態では、単一のリングが使用される。試料が到着する前、又は試料が試薬アーム342又は試薬アーム344を介して到着した後に、試薬を添加することができる。
【0192】
試薬アーム342,344の主な機能は、試薬のアリコートをそれぞれ試薬サーバー346又は試薬サーバー345から移動させることである。次いで、これらのアリコートは、反応リング340内の反応容器に分配される。いくつかの実施形態では、アリコートを受け取る容器は、患者試料を含む。いくつかの実施形態では、容器は空であり、患者試料は後で加えられる。試薬サーバー345,346は、様々な異なる試薬を含み、MVCCモジュール300による様々な試験の実行を可能にする。反応リング340は、各反応容器が混合のために試薬混合器348又は試料混合器350に達するように所定の順序で容器を移動させる。試薬混合器348は、試薬サーバー345,346からの試薬、又は組み合わせ試薬を予め混合するために使用することができる。試料混合器350は、試薬及び試料の両方を含む反応容器を混合するために使用される。一旦混合されると、試料と試薬との間の反応は反応容器内で進行する。反応リング340が回転して、光度計352が所定の時間に反応の光度測定を行うことを可能にする。いくつかの試験では、所定の時間に追加の試薬を試薬アーム342,344によって添加し、新しい溶液を混合し、追加の測光測定を行う必要がある。
【0193】
いくつかの実施形態では、測光システムは、反応リング340上の221個の光学キュベット内で測光アッセイを処理する。システムは、当該技術分野の他のMVCCモジュールで使用されている伝統的な固定アッセイテンプレートをサポートする。反応リング340は、3秒毎に75個のキュベット位置を割り出す。この割り出しパターンを使用して、所与のキュベットは3つのインデックスごとに4つのキュベット位置を進める。システムは3秒毎に新しい測光試験を開始することができ、1時間あたり1200アッセイの公称スループットをもたらす。
【0194】
アッセイリソースには、試薬1の送達、試料の送達、試薬混合1、試薬2の送達、及び試薬混合2が含まれ、これら全ては固定された時点で行われる。反応は各アッセイ後にキュベット洗浄機によって洗浄され再利用される半永久的キュベット内で行われる。アッセイは、加熱流体浴を用いて反応リング340上で一定温度(37℃)に保たれた反応キュベット中で処理される。システムは、3秒周期でアッセイを処理する。
【0195】
アッセイは、試薬アーム344による第1の試薬R1の添加により開始される。その後まもなく、精密サンプラー(例えば、試料アーム338)が希釈リング334上のアリコートから反応キュベットに試料を移す。次いで、内容物を試薬混合器348又は試料混合器350で完全に混合し、そして反応が起こる。反応リング340が割り出しをしている間、反応キュベットは光度計352によっておよそ9秒に1回読み取られる。光度計352は、当該技術分野において同様の光度計によって現在使用されている11の波長の標準セットを使用する。光度計352は、11の利用可能な波長を用いて吸光度及び比濁分析をサポートする。
【0196】
いくつかのアッセイは単一の試薬のみを必要とし、他のアッセイは第2の試薬の添加を必要とする。第2の試薬は、試薬アーム342によって固定された時点(例えば、試料添加後約260秒)で添加され、反応は試薬混合器348又は試料混合器350によって混合される。反応は前述のように光度計によって読み取られる。
【0197】
試薬サーバー346,345は、2つの同心リング内に配置された一連の半径方向を向いた試薬容器を含む。これらの試薬容器は、試薬ローダー354を介してロードすることができる。試薬ローダー354は、それを自動化トラック上の容器移動装置アクセスポイント64の上方に配置することを可能にするガントリー上を移動するロボットアームを含む。試薬ローダー354の機械的コンポーネントは、試薬カートリッジと相互作用するように構成された、ロボットアーム20に関して説明したものと実質的に同じとすることができる。試薬サーバー345,346内の試薬を補充する必要があるとき、サーバーは自動的に空のカートリッジを排出し、容器移動装置システムは交換用の試薬カートリッジを取り出し、キャリアを介してそのカートリッジを容器移動装置アクセスポイント64に配置する。その後、試薬ローダー354はその位置に移動し、エンドエフェクターを使用して試薬カートリッジを持ち上げる。次に試薬ローダー354は、その試薬カートリッジを試薬サーバー345,346内の適切な空のスロットに移動し、カートリッジを試薬サーバー内のその位置に挿入する。
【0198】
あるいはまた、オペレーターは、機械の要求に応じて又は所定のスケジュールで試薬を手動でロードすることができる。オペレーターは、試薬手動ロードステーション356で一連の試薬カートリッジをトレイにロードすることができる。試薬手動ロードステーション356は、トレイを受け取り、そのトレイを試薬ローダー354の下の位置に移動させる直線スライドを含む。次いで、試薬ローダーのロボットアームのエンドエフェクターは、試薬手動ロードステーション356に配置されたトレイから試薬カートリッジを取り出し、それらのカートリッジを試薬サーバーの適切なスロットに移動させることができる。これにより、試薬の自動又は手動ロードが可能になる。
【0199】
試薬は、試薬システムによって保管及び提供される。試薬システムは、2つの冷蔵回転式試薬サーバーを含む。1つのサーバー345は第1の試薬添加専用であり、もう1つのサーバー346は第2の試薬添加専用である。各サーバーは3秒周期で動作し、約1秒が動作に割り当てられ、2秒がそれぞれの試薬アームによるアクセスに割り当てられる。各試薬サーバーは、2つの同心円状に配置された試薬カートリッジを保持する。内側リング上に24のカートリッジと、外側リング上に46のカートリッジとで、全部で70のカートリッジ容量が存在する。いくつかの実施形態では、各サーバー上の最大4つの位置を特別な洗浄液を保持するカートリッジ専用にすることができ、1つの位置は、物流の積み降ろしのために開放したまま維持することができる。これは、例示的なシステムが同時に65の異なるオンボードアッセイをサポートできることを意味する。
【0200】
試薬カートリッジは、試薬ローダー354によってサーバー内にロードされる。試薬ローダー354は、カートリッジの身元を確認するため(位置64のPCMトラックロード)、又はカートリッジを識別するために(試薬手動ロードステーション356)、試薬カートリッジをバーコードリーダーに提示する。その後、試薬ローダー354は、カートリッジを適切なサーバー位置内(サーバー345,346内)に配置する。
【0201】
試薬カートリッジは、PCMによるハンドリングを容易にするようにサイズ決めされており、試薬ローダー354及びPCM試薬ハンドラー(例えば、ロボットアーム20)を使用してピックアップすることを可能にするための把持機能を有する。カートリッジは、オートオープン機能付きのねじ込み式キャップで閉じられている。顧客及びシステムによる識別のために、1つ以上のバーコードラベルが提供されている。カートリッジには2つのウェルがあり、各ウェルの容量は25mlである。デュアルウェル構成では、必要に応じて各ウェルを開くだけで、より長いオンボード安定性を実現できる。図30は、例示的なデュアルウェル試薬カートリッジの斜視図を示す。
【0202】
試薬カートリッジは、顧客によって(試薬を前水和する必要がある場合)又はシステムによって自動的に開くことができるねじ込み式キャップで閉じられている。このキャップは長期間保管するために気密封止を維持する必要があるが、使用時には簡単に開くことができる。この閉鎖システムは自動開放のみであり、開放されたキャップを再密封することはできない。ホイルシールは、試薬ローダー354による穿刺用に設計されている。
【0203】
イムノアッセイ分析器モジュール
IA分析器モジュール32は、磁気分離及び化学ルミネセンス読み出しを用いて不均一イムノアッセイを自動化する臨床分析器である。イムノアッセイは、試験される検体に対する特異的抗体、又は試験される抗体に対する特異的抗原のいずれかの存在を利用する。そのような抗体は患者の試料中の検体と結合して「免疫複合体」を形成する。イムノアッセイにおいて抗体を使用するために、それらはアッセイの必要性に合うように特定の方法で修飾される。不均一イムノアッセイでは、1つの抗体(捕捉抗体)を固相、IAモジュール用の磁性粒子の微細懸濁液に結合させて、磁場を用いた分離とそれに続く洗浄プロセスとを可能にする。これはサンドイッチアッセイ及び競合アッセイで例示される。例示的なIAモジュールメニューは、これらの形式における更なる変形を含み得る。
【0204】
サンドイッチアッセイ形式では、2つの抗体が使用され、各々が通常はタンパク質である検体の分子上の異なる結合部位に結合するように選択される。一方の抗体は、磁性粒子に結合している。もう一方の抗体はアクリジニウムエステル(AE)分子に結合している。アッセイ中に、試料及び2つの修飾抗体試薬がキュベットに添加される。検体が患者の試料中に存在する場合、2つの修飾抗体は検体分子を結合して「挟む」であろう。次に、磁界を印加し、それによって磁性粒子をキュベットの壁に引き寄せ、過剰の試薬を洗い流す。キュベットに残っている唯一のAE標識抗体は、磁性粒子とのサンドイッチ構造を通して免疫複合体を形成したものである。次に酸溶液を添加してAEを溶液中に遊離させるが、これは化学発光反応に必要な過酸化水素も含む。次に塩基を加えてそれを分解させ、発光させる(下記の反応式を参照のこと。様々なAEが様々なアッセイにおいて使用されるが、基本的な化学は実質的に同一である)。光は数秒間続く閃光として放出され、集められて、照度計で測定される。積算された光出力は相対光単位(RLU)として表される。これは、その臨床範囲にわたって同じ検体の既知の基準によって生成されたRLU値に用量反応曲線をフィッティングすることによって生成された基準曲線と比較される。サンドイッチアッセイは、直接的な用量反応曲線を生成し、ここでより高い検体用量は増加したRLUに対応する。
【0205】
競合アッセイ形式は、抗体が1つだけ使用されている分子に適用される。この抗体は磁性粒子に結合している。第2のアッセイ試薬は、AEに結合した検体分子を含有する。アッセイ中、試薬の量は、患者の試料からの検体とAEタグ付き検体とが限られた量の抗体に対して競合するように選択される。より多くの患者検体があるほど、より少ないAEタグ付き検体が抗体に結合するであろう。磁気分離及び洗浄後、キュベット内の唯一のAE源は、抗体を介して磁性粒子に結合したAEタグ付き検体からのものである。前述のように酸及び塩基を添加し、用量分析はサンドイッチアッセイについて記載した通りである。競合アッセイでは、逆の用量反応曲線が得られ、この場合、より高い信号は、患者試料中のより少量の検体に対応する。
【0206】
IA分析器モジュールの磁性粒子試薬は「固相」とも呼ばれ、AEタグ付き試薬は「ライト試薬」とも呼ばれる。IA分析器モジュールは、ハードウェア及びソフトウェアを提供して、同時に、ランダムアクセスで、そして高スループットで、様々な形式の複数のアッセイを実行することを可能にする。
【0207】
図31は、以下のサブシステムを含む例示的IA分析器モジュール360の例示的電気機械コンポーネントの上面図である。
【0208】
分析エンジン-インキュベーションリング362は、内側及び外側のインキュベーションリング、駆動機構、洗浄リングへの及び洗浄リングからのキュベットエレベーター、及び熱コントロールを含む。これらのリングは、所定の時間、制御された温度下で試料と試薬との反応を促進する。洗浄リング364は、リング、キュベット係合機構、及び照度計へのキュベットエレベーターを含む。洗浄リング364は、インキュベートされた反応試料を洗浄するための洗浄ステーションに試料を移動させ、そして結果の測定のために得られた試料を照度計に移動させることを担当する。洗浄リング364にアクセス可能な洗浄ステーション366は、4つの吸引プローブ及びZ運動機構、吸引バルブ、外部吸引プローブ洗浄ポート及びバルブ、洗浄ディスペンスポンプ、酸ディスペンスポンプ、並びにバルブ及びポートを含む。照度計368は、エンクロージャー/ターンテーブル及び駆動機構、光電子増倍管(PMT)、ベースディスペンスポンプ、バルブ及びプローブ、廃棄物吸引油圧装置、並びに反応が測定された後にキュベットを廃棄するためのキュベット排出機構を含む。照度計368は、処理された試料に対する塩基反応を開始し、そして結果として生じる輝度を測定することを担当する。キュベットローダー370は、ホッパー、エスカレーター、オリエンテーションシュート、ドロップシュート、プッシャー、キュー、及びリング送り機構を含む。キュベットローダーは、滅菌キュベットをインキュベーションリング362内にロードする役割を果たす。
【0209】
試薬/補助的ハンドリング-試薬コンパートメント372は、回転トレイ、駆動及び熱コントロール、ファン、試薬を識別するためのバーコードリーダー、手動でロードされた試薬カートリッジを受け入れるための手動アクセスドア、及び自動ロードされた試薬を受け入れるためのオートローダーアクセスドアを含む。試薬コンパートメントは、試薬プローブによるアクセスのために試薬を冷蔵状態又は熱的に制御された状態で保管する役割を果たす。試薬オートローダー374は、X-Z機構、パックグリッパー機構、及びパックセンサーを含む。試薬オートローダーは、MVCCモジュールの試薬ローダー354と実質的に同様に機能する。試薬プローブは、それぞれがX-Z機構を有する3つのプローブ、3つの希釈ポンプ、流体容量チェックコンポーネント、プローブ洗浄ステーション、及び関連する油圧装置を含む。3つの試薬プローブ376は、試薬を吸引し、それらをインキュベーションリング内のキュベットに分配する役割を果たす。
【0210】
試料ハンドリング-試料プローブ378は、シータZ機構、希釈ポンプ及びシリンジ、試料完全性センサー、及び液面レベル感知コンポーネントを含む。試料プローブ378は、図6で説明したように、自動化トラック上の位置52で患者試料を含む管から試料部分を吸引する役割を果たす。いくつかの実施形態では、試料プローブ378はまた、手動でロードされた試料の内部キューにアクセスすることができ、それによってオペレーターは6つの管トレイ内の試料を手動でロードすることができる。内部バーコードリーダーがそのトレイ内の各試料の識別情報を読み取り、それによって試料プローブ378が各試料を自動化トラック上の試料と同じ方法で処理することを可能にする。いくつかの実施形態では、試料プローブ378に使い捨てチップを使用することが望ましい。これにより、試料間のキャリーオーバーのリスクが大幅に減少する。使い捨てチップローダー380は、チップトリプルパックローダー、チップトレイシンギュレーター、提示機構、及び固形廃棄物へのシュートを含む。使い捨てチップローダー380は、試料プローブ378がアクセス可能な場所にチップを提示するため、その試料プローブから既存の汚れたチップを取り除くため、そしてそのチップを新しい無菌チップで配置するために、滅菌使い捨てチップのパックを取る役割を果たし、試料プローブが次の吸引をすることを可能にする。
【0211】
シャーシ、カバー、ユーティリティ-これらのシステムは、シャーシ及び他の補助ハードウェアによってサポートされている。このハードウェアは、内壁、バッフル、ファン等を含むシャーシフレームを含む。図31に示す電気機械システムの頂部では、固定パネルのカバー及びユーザーがアクセス可能なドア及び引き出し等がこれらの機構を保護する。電源スイッチ及びステータスライトなどの外部コントロール及びインジケーターは、オペレーターに低レベルのインターフェースを提供する。真空サブシステム、凝縮排水管、水道管及び廃棄物配管等の水力学を提供することができる。酸、塩基、洗浄ボトル、及び供給ラインなどのバルク試薬は、上記のメカニズムの下のシャーシ内に提供することができる。電力、データ分配等、並びに電気制御電子機器及びプロセッサもまた、シャーシの一部として提供することができる。
【0212】
典型的な試験は、外側インキュベーションリング内のキュベット内で始まる。試料は、PCMによってシステムを介して送達された試料から吸引する試料プローブによって、又はオペレーターによる直接ロードによって最初に添加される。試験定義(TDef)によって指定されるように、試料添加後の特定の時間間隔で、試薬プローブによって1つ、2つ、又は3つの試薬が添加される。試料及び試薬はインキュベーションリング内でインキュベートされる。TDefによって規定されているような特定の時間に、キュベットを洗浄リングまで上昇させ、洗浄プロセスを実施し、これは磁性粒子をキュベット壁に引き付け、内容物を繰り返し吸引して粒子を洗浄することからなる。洗浄リングを介した任意の1回のトリップ内において、最大4回の吸引及び7回の洗浄を行うことができる。最後の吸引の後に洗浄は続かない。これが単一パスアッセイである場合、酸を添加し、キュベットを照度計内へ持ち上げ、そこで塩基を添加して光フラッシュを読み取る。これが2パスアッセイである場合、洗浄ステップの最後に粒子を洗浄ジェットによって再懸濁し、キュベットを内側インキュベーションリング内に降ろし、そこで1つ又は2つの追加の試薬を試薬プローブによって分注する。適切なインキュベーションの後、キュベットを2回目及び最後の洗浄のために洗浄リング内に再び上昇させ、続いて酸を添加し、塩基を添加し、そして光を照度計で読み取る。照度計では、キュベットが読み取り操作を終えた後、その内容物が廃液中に吸引され、そしてキュベットは固形廃棄物中に廃棄される。キュベットロード機構は、連続操作のために新しいキュベットをインキュベーションリングに補充する。これらはユーザーによって満たされるホッパーから定期的に取り出される。
【0213】
いくつかの実施形態では、試料は、患者の検体、基準曲線を特定のロットの試薬に調整するために使用されるキャリブレーター、又は経時的に様々な間隔でシステム性能を監視するために使用される検体の既知の濃度のコントロールとすることができる。いくつかの実施形態では、試料を外側インキュベーションリング内のキュベットに添加し、次いで試薬プローブを使用して試薬トレイ内の希釈剤容器から希釈剤を添加して所望の希釈比を達成する。次に試料プローブは、希釈試料の一部を新しいキュベットに吸引する。いくつかの実施形態では、STAT試料による使用のために、いくつかの空のキュベットを外側リング内に維持することができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、IA分析器モジュールの機械サイクルは8秒であり、これは450回の試験/時の最大スループットに相当する。上記のように、各サイクルは、1回の試料添加、3回の試薬添加、洗浄ステーション当たり2回の洗浄動作、及び2回の照度計読み取りを可能にする。システム内の全ての動作は同期化されているため、例えば、試薬プローブがパックから吸引しているときに試薬トレイが停止したり、試料の分注中にインキュベーションリングが停止したりする。分析プロセスの中心には、インキュベーションリング及び洗浄リングがある。インキュベーションリングにはそれぞれ5つのストップがあり、そのうち3つは試薬の送達専用で、残りの2つは試料の添加用及びインキュベーションリングと洗浄リングとの間のキュベット交換用である。インキュベーションリングはランダムに動き、洗浄リングは着実に増加しながら、キュベットを様々なサービスに運ぶ。いくつかの実施形態では、洗浄リング及び照度計は4秒周期で作動し、その結果、単一の洗浄ステーション及び照度計は、第1パス及び第2パスの洗浄/読み取り操作を同時に行うことができる。
【0215】
IA分析器モジュールの例示的実施形態は、IA分析器モジュールの動作を管理するプロセッサ上で動作することができる以下の電気的ハードウェア又はソフトウェアモジュールを含むことができる。モジュールマネージャーは、機器ワークステーション及びモジュールデバイスマネージャーとの通信バスとして、イーサネット(10/100/1000Mbs)、RS232、USB(2.0)、及びビデオポートインターフェースをサポートする機器ワークステーションのサブシステムである。例示的なモジュールマネージャーは、IntelベースのPC上で動作し、診断、ソフトウェア管理、ユーザーインターフェース、及び機器内の任意のデバイスマネージャーの構成を担当する。
【0216】
デバイスマネージャーは、モジュールマネージャー及び他のデバイスコントロールマネージャー(DCM)との通信バスとして、イーサネット(10/100Base-T)、CANOpen、RS232、及びUSB(2.0)インターフェースをサポートするリアルタイム制御モジュールである。デバイスマネージャーは、機器サブシステムの分散制御対集中制御を提供する。ワークフローのスケジューリング及び調整は、この組み込みプロセッサによってハンドリングされるが、サブシステム機構の個々の制御は、各サブシステムの一部であるノードによってローカルにハンドリングされる。例示的なデバイスマネージャーは、ワークフロー管理、スケジューラー、及びシーケンサーソフトウェアモジュールをホストする。デバイスマネージャーはまた、外部周辺機器用の適切なインターフェース、命令及び制御を提供し、IA分析器モジュール内の全てのノードに関するステータス情報の収集を促進する。
【0217】
例示的なデバイスコントロールマネージャー(DCM)は、サブシステム内のローカル電磁アセンブリを制御する。デバイスマネージャーはDCMと通信し、CANバスを介してこれらのノードを管理する。DCMによって制御することができる例示的なノードは、ステッピングモーター及び熱制御ハードウェアを含む。これらのノードはまた、センサー、スイッチ入力、デジタル又はアナログI/O等を担当することもできる。照度計データ及び制御もまた、例示的なノードによってハンドリングできる。
【0218】
IA分析器モジュールの分析エンジンは、全てのアッセイ処理が行われる場所である。これには、インキュベーションリング、洗浄リング、洗浄ステーションの照度計、及びキュベット供給が含まれる。分析エンジンは、内側及び外側インキュベーションリング(第1パスリング及び第2パスリング)、インキュベーションリングの温度制御、洗浄リング、インキュベーションリングと洗浄リングとの間のエレベーター、洗浄ステーション(磁石、吸引プローブ、ポート、ポンプ、及びバルブを含む)、照度計、キュベットローダー、及び制御電子機器を含む。これは、インキュベーションの長さ、試薬添加の数、並びに洗浄及びパスの数に関してアッセイの柔軟性を提供する。反応領域は、各アッセイパスにつき1つずつである独立して移動可能な2つのインキュベーションリングによって提供されるインキュベーション領域と、洗浄ステーションを含む別個の洗浄リングとの間で分割される。インキュベーションリングの各々は、エレベーターが両者の間でキュベットを交換することを可能にする洗浄リングとの交点を有する。第1パスリング(外側リング)には、キュベットを上に移動させるだけのエレベーターがある。第2パスリングには、2つのエレベーターがあり、1つは上昇し、もう1つは下降し、これにより、2パスアッセイの第1の洗浄の最後に、キュベットを洗浄リングから第2パスのリングに降ろし、追加の試薬を受け取り、必要な限りそこでインキュベートし、そして最後の洗浄及び読み取りのために再び洗浄リングまで持ち上げることができる。
【0219】
例示的な一実施形態では、インキュベーションリングは37℃に温度制御されている。洗浄リングは周囲温度である。いくつかの実施形態では、キュベットは非対称的である。キュベットは、その小さい半径のために広い側面がその円周に面するように洗浄リングの中に配置される必要がある。インキュベーションリングと洗浄リングとは、略直角に交差し、キュベットはそれらの狭い側がリングの周囲に面するようにインキュベーションリング内に配置される。したがって、これらのリング間でキュベットを交換するためのエレベーターは、キュベットの向きを考慮する必要がある。
【0220】
インキュベーションリングは円周方向に様々な動きをするが、洗浄リングは稼働中、着実に増加する。例示的な一実施形態では、洗浄リングは4秒のサイクルタイムで作動するが、インキュベーションリングは8秒の通常の機械サイクルタイムで作動する。リングの相対的な位置決めにより、第1パスリングからのキュベットを洗浄リングの奇数位置に持ち上げることができ、第2パスリングからのキュベットを洗浄リングの偶数位置に持ち上げることができる。これにより、同時に2つのリングから来るキュベットを交互配置し、スループットに悪影響を与えることなくそれらを処理することが可能になる。これは、各アッセイパスに専用の洗浄ステーションを有するのと同じである。洗浄を通過したキュベットは、読み取りのために照度計に押し込まれるか、又は第2パスのインキュベーションリングに押し下げられる。
【0221】
洗浄リングを使用可能にする洗浄ステーションの例示的な一実施形態は、粒子をキュベットの側面に引き寄せる1組の固定磁石を含む。磁性粒子は磁力によってキュベットの側面に固定されているが、吸引プローブはキュベットの底部まで下降して内容物を吸引する。プローブは、キュベット間のキャリーオーバーを最小限に抑えるために、プローブの外部の周りで水を注入して吸引するクリーニングカラーの内側を移動する。洗浄溶液又は再懸濁溶液は、斜めに取り付けられ、粒子ペレットに向けられたポートから注入される。磁性粒子の複数回の洗浄を促進するために、洗浄リングが移動するにつれて各キュベットが各吸引プローブと相互作用するように、一連の4つの個々の吸引プローブを使用することができる。最後のプローブはキュベットを乾いたままにする。次にリングは、キュベットを磁石の影響から遠ざけて動かす。
【0222】
これがシングルパスアッセイ又は2パスアッセイの第2パスである場合、酸が酸ポートから注入される。その後、キュベットは洗浄リングから照度計に持ち上げられる。これが2パスアッセイの第1パスである場合、洗浄液のジェットが粒子を再懸濁するために適用され、キュベットは適切なエレベーター位置で第2パスリングまで下げられる。
【0223】
例示的な照度計は、光度測定を実行する単一のピックアップ位置を有する。照度計は、光電子増倍管(PMT)の前にキュベットをもたらす遮光ターンテーブルを含む。次に、塩基が注入されて、その後の化学反応のために溶液を短いフラッシュで発光させる。光はPMTによって読み取られる。次に、キュベットをプローブがその内容物を廃液に吸引する場所に移動させる。その後、キュベットは固形廃棄物に排出される。
【0224】
キュベットローダーは、第1パスリングのみを提供する。キュベットローダーは、ホッパー、エスカレーター、キュベット配向シュート、及びリングへの挿入機構を含む。
【0225】
例示的な一実施形態では、インキュベーションリングは回転し、1サイクルあたり固定数の停止をする。例えば、試薬送達を促進するための3回の停止を含めて、1サイクルあたり5回の停止を行うことができる。第1のインキュベーションリングでは、試料を1つ以上のキュベットに分注するために試料プローブで1回の停止が使用される。第5の停止は、キュベットを洗浄ステーションに運ぶために使用される。第2のインキュベーションリングでは、第1の停止を使用して洗浄リングエレベーターからキュベットを受け取り、第5の停止を使用して洗浄リングエレベーターを介してキュベットを洗浄リングに戻す。洗浄リングは典型的には固定速度で移動し、各キュベット内の各洗浄サイクルに対して、並びに各キュベットの各エレベーター相互作用及び照度計相互作用に対して停止する。
【0226】
IA分析器モジュールの試薬ハンドリングサブシステムは、アクセスドア、試薬トレイ及び駆動機構を有するサーマルエンクロージャー、ペルチェベースの冷却システム、試薬を識別するためのバーコードリーダー、オートローダー、オートローダードア、3つの試薬プローブ、プローブ油圧装置、プローブ洗浄ステーション、及び制御電子機器を含む。
【0227】
例示的な一実施形態では、試薬パックと補助パックとが混合され、試薬パックを3つの試薬プローブのうちの1つがアクセス可能な各位置に移動させることを可能にする回転トレイ内に配置される。この回転動作は試薬を連続的に混合するように作用することができ、そうすることでそれらは吸引される準備ができる。これは、オペレーターによる予混合ステップを明らかにすることができる。この回転動作は、3つの平行な試薬プローブの使用により予想される回転速度に対して加速され得る。全ての試薬プローブを使用するには、試薬保管庫内の試薬トレイは、3つの試薬を3つの試薬プローブの3つの位置に送達するために、8秒サイクルごとに最大3回転することが可能であるべきである。試薬プローブは、相互汚染を最小限に抑えるために、異なる種類の試薬に対して専用としてもよい。
【0228】
いくつかの実施形態では、試料プローブは、異なる検体濃度を有する試料の相互汚染を最小限に抑えるために使い捨てチップを利用する。試料は、試料管又は管頂部カップ内の試料プローブに到達することができる。キャリブレーターも同様に試料プローブによってハンドリングされる。いくつかの実施形態では、直接チャネルを使用してバーコード試料の6ポジショントレイを手動でロードすることができる。分析器モジュールの一部としてのバーコードリーダーは、患者試料を識別して、あたかもその試料が自動化トラック上のキャリアを介して到着したかのように同じ方法で試料をハンドリングできる。プローブ油圧装置は、IVD環境における吸引プローブに適した任意の従来の手段を使用することができる。空気圧ポンプは、空気を利用して試料プローブを取り除き、圧力を調整して吸引又は分注操作を実行することができる。
【0229】
いくつかの実施形態では、臨床分析器モジュール内の環境制御システムを使用して、臨床分析器モジュール内の空気及びオンボードの流体の内部温度を正確に制御する。システム及び制御方法は、臨床分析器モジュールの温度制御を提供し、それにより改善された試験結果をもたらす。
【0230】
いくつかの実施形態によれば、インライン流体ヒーターは、それを通して流体管が経路付けされる臨床分析器モジュールのコンパートメント内の気温の制御と併せて使用される。これは、流体が分注される点から或る距離を置いて流体ヒーターが取り付けられることを可能にし、さもなければそれはかなりの技術的挑戦である。それはさらに、流体が連続的に分注されないときに一般的な状況において流体ヒーターを通過した冷却した液体を排除するために流体ラインを洗い流す必要性を排除する。本明細書の実施形態に従って、分析器内の気温を分析器の周囲動作範囲を超える温度に制御することは、高価な冷却機構を必要とせずに、加熱のみによって温度を維持することを可能にする。
【0231】
いくつかの実施形態によれば、臨床分析器モジュールで使用するための環境制御システムは、イムノアッセイ反応に使用される流体を一定温度にするためのインライン流体熱交換器又はヒーターと、流体ラインが通るコンパートメント(複数の場合もある)内の気温の制御と、バルク流体が保管されている(そして分析器電子機器を収容している)コンパートメント内の気温の制御とを含む。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時出願の米国仮特許出願62/365,307にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0232】
いくつかの実施形態のキュベット及び測光の改善
いくつかの実施形態では、臨床化学機器上の反応キュベットセグメントの位置合わせは、キュベット内の試料の測光測定を実行する際に使用される光ビームの位置を検証するためにキュベット窓上の視覚的マーキングによって達成される。光ビームの位置を示すランプ取り付けブラケットを利用して光ビームゲージを所定の位置に保持してキュベット窓にマーキングを施す。
【0233】
例えば、測光測定を実行するための光ビーム位置を検証するためにキュベット窓上に視覚的マーキングを提供するためのシステムは、1つ以上の反応キュベットセグメントを含む分析器反応リング及び垂直ゲージ反応リングを含むことができる。反応キュベットセグメントはそれぞれ1つ以上のキュベットを保持し、垂直ゲージはキュベットに関連する窓位置に対応する位置に開口部を含む。システムはまた、開口部に挿入され、キュベットに対して回転して、キュベットの内容物に対して測光測定を実行するための光ビーム領域を保持するように構成されたゲージ光ビームを含むことができる。いくつかの実施形態では、前述のシステムは、キュベットに関連する窓位置に対応する高さでゲージ光ビームを保持するように構成されたブラケット光源写真を更に含む。ゲージ光ビームは、開口光度計を使用してブラケット光源写真内に保持することができ、リングロックアパーチャーは、開口光度計をブラケット光源写真内に固定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、開口光度計は、開口1.5mmの光度計である。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時出願の米国仮特許出願62/365,298にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0234】
いくつかの実施形態では、光度計のソースランプにおけるドリフトの低減又は解消は、キュベット位置のマップに基づいて取得された基準測定値を使用して達成することができる。キュベットマッピングは、システム内の各キュベットに対する自動アライメントルーチンとして実行することができる。マッピングは、基準測定値を取得するための位置を識別するために使用され、これは次に、光度計を較正し、ソースランプ強度ドリフトの影響を排除するために使用することができる。
【0235】
例えば、光度計のソースランプ強度ドリフトを補正するためのコンピューター実施方法は、複数のキュベット位置を特定する反応リングのキュベットマップを生成することと、キュベットマップを使用して複数のキュベット位置間の複数の領域を特定することとを含む。光度計を使用して複数の基準測定値が取得され、各基準測定値は複数の領域のうちの1つにおいて取得される。その後、ソースランプの光度計のソースドリフトは、複数の基準測定値に基づいて補正することができる。
【0236】
いくつかの実施形態では、複数の基準測定値は、複数のキュベット位置に対応する複数の信号測定値を取得しながら取得される。基準測定値及び信号測定値は、ノイズを除去し精度を高めるためにオーバーサンプリングされてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、信号測定値の分散は、ソースランプの強度ドリフトを補正する前に基準測定値をフィルタリングするために使用することができる。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時出願の米国仮特許出願62/365,294にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0237】
いくつかの実施形態では、キュベットマッピングは、システム内の各キュベットに対する自動アライメントルーチンとして実行される。このマッピングルーチンは、正確な測光測定値を生成するための最適なトリガーポイントを見つける。このルーチンは、性能に影響を与えることなく、キュベットリングの初期化ルーチンの一部として実行することができる。追加された新しいセグメントは、リング機構のリセット中に自動的にマッピングできる。本明細書に記載の技法の更なる利点として、動的ソースランプ参照用のキュベット間での基準測定値を計算することができ、それによって結果の精度が向上する。
【0238】
いくつかの実施形態によれば、測光キュベットマッピングを実行するためのコンピューター実施方法は、反応リングの完全回転中に、反応リング内の複数の容器間の複数のギャップに関連するエッジを検出することを含む。各ギャップは、閾値を下回る第1の所定数の光度計測定値の検出に基づいて容器内部を識別するステップと、閾値を超える第2の所定数の光度計測定値の検出に基づいて立ち上がりエッジを識別するステップと、閾値を下回る第3の所定数の光度計測定値の検出に基づいて立ち下がりエッジを識別するステップとを含むエッジ検出プロセスに従って決定される。これらの値が識別されると、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが複数のギャップのうちの1つを示すものとして記録される。このエッジ検出プロセスは、所定数のギャップが決定されるまで繰り返すことができる。
【0239】
いくつかの実施形態では、容器内部の識別に続いて、立ち上がりエッジが所定の数の光度計測定値内で識別されない場合、欠けているエッジを示す報告が生成される。他の実施形態では、立ち上がりエッジの識別に続いて、立ち下がりエッジが所定の数の光度計測定値内で識別されない場合、欠けている容器を示す報告が生成される。
【0240】
いくつかの実施形態では、エッジ検出プロセスに続いて、記録されたギャップに基づいて複数のトリガーポイントが複数の容器に対して計算される。他の実施形態では、エッジ検出プロセスに続いて、保管されたギャップに基づいて1つ以上の容器に試験に使用不可能としてフラグを立てることを含む容器フラグプロセスが実行される。容器に隣接するギャップの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの少なくとも一方が許容範囲外である場合、容器は試験に使用不可能として指定することができる。
【0241】
本発明の別の態様によれば、測光キュベットマッピングを実行するためのコンピューター実施方法は、光度計に関連する光が2つの容器の間にある機械的ホーム位置に反応リングをアライメントすることと、光度計エンコーダーをゼロにリセットすることとを含む。次いで、エッジデータが光度計デバイスコントロールマネージャーを用いて捕捉される。反応リングを1回転させて、エッジデータを光度計デバイスコントロールマネージャーから読み取る。反応リングは、機械的ホーム位置に再アライメントされ、トリガーポイントは、光度計デバイスコントロールマネージャーを使用してエッジデータから計算される。次いで、容器から測光測定値を収集するために割り出しを初期化することができる。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時出願の米国仮特許出願62/365,287にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0242】
いくつかの実施形態の容器移動装置システムの追加の構成
いくつかの実施形態では、VMシステムによって使用される技術は、とりわけ、キャップを外した試料が空気に曝される間の時間を測定及び制御する能力を提供する。いくつかの実施形態によれば、試料の空気への曝露は、キャップ付き容器内の試料を受け取り、キャップ付き容器を試料ハンドラー上に駐車することによって開始する方法に従って管理される。次いで、試料に対応する試験要求が受け取られ、各試験要求は自動臨床化学分析器に含まれる1つ以上の分析モジュールに関連付けられる。第1の試験要求に関連した第1の分析モジュールが識別される。第1の分析モジュールが試験に利用可能になると、キャップ付きの容器は試料ハンドラーから再びロードされ、そして容器の蓋が外される。次に、キャップを外した容器を第1の分析モジュールに優先的に配達する。第1の分析モジュールでの試料吸引に続いて、キャップを外した容器を1つ以上の追加の分析モジュールに搬送することができる、又は試験要求を完了したものとして指定することができる。いくつかの実施形態では、キャップを外した容器の第1の分析モジュール及び1つ以上の追加の分析モジュールへの搬送は、キャップを外した容器を保持するキャリアに原動力を加えるリニアモーターシステムを使用して行われる。
【0243】
前述の方法のいくつかの実施形態では、キャップが外された容器が空気に曝されるのにタイムクリティカルである場合、キャップが外された容器は、試験を待つ他の1つ以上の試料の前に第1の分析モジュールの処理キューに入れられる。逆に、キャップが外された容器が空気に曝されるのにタイムクリティカルではない場合、キャップが外された容器は第1の分析モジュールの処理キューの終わりに入れることができる。他の実施形態では、蓋付き容器のキャップを外すと同時にタイマーが初期化される。第1の試験要求に関連する最小時間閾値をこの時間と併せて使用して、第1の分析モジュールの処理キュー内のキャップを外した容器の送達を優先させることができる。さらに、第1の分析モジュールの処理キュー内のキャップを外した容器の優先順位付けは、(例えば、参照データの表を使用して決定されるように)試料に関連する相対安定度値に更に基づくことができる。その方法の間、試料の相対安定度値が所定の安定度閾値を超えると決定された場合、試料の更なる試験を妨げるか、又は試料の更なる試験全体を通して持続する安定性フラグを試料に関連付けることができる。タイマーが所定の限度に達すると、警報をオペレーターに送信して、できるだけ早くキャップを外した容器を密封するようにオペレーターに指示することができる。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時出願の米国仮特許出願62/365,206にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0244】
いくつかの実施形態では、VMシステムによって使用される搬送システムは、従来のハウジングと比較してより小さい寸法及び低減された材料コストで構築されたリニアモーターハウジングを利用する。いくつかの実施形態によれば、リニアモーターを使用してキャリアビークルを搬送するためのシステムは、1つ以上のリニアモーターを保持するように成形されたリニアモーターハウジングを含む。リニアモーターハウジングは、長方形(又はほぼ長方形の)ステンレス鋼の天板と、押し出されたアルミニウムの左右の側板とを有する。左側板は天板の一方の長手方向縁部に隣接して接続され、右側板は天板の他方の長手方向縁部に隣接して接続されている。天板は、その表面上でキャリアビークルの推進力を支持するように設計されている。したがって、例えば、一実施形態では、天板の上面側は、0.2μmから0.4μmの間の表面粗さを有する。
【0245】
いくつかの実施形態では、前述のリニアモーターハウジングは、リニアモーターシステムの効率的な動作を確実にするために使用される1つ以上の構成を含む。例えば、一実施形態では、リニアモーターハウジングは、長方形のステンレス鋼製の天板と2つの側板とに塗布された電磁シールド材料を更に含む。別の一実施形態では、渦電流シールド材料が長方形のステンレス鋼製の天板に塗布されている。この渦電流シールド材料は、更に側板にも塗布することができる。アルミニウム側板の厚さは、異なる実施形態では変わり得る。いくつかの実施形態では、厚さは、リニアモーターハウジングの可撓性を可能にするために最小化される。例えば、一実施形態では、左側板及び右側板の厚さは、±0.25度のねじり屈曲をリニアモーターハウジングに与えるように選択される。
【0246】
いくつかの実施形態では、リニアモーターハウジングシステムは、キャリアビークル用の頑強な推進システムを形成する際にリニアモーターハウジングを補足する追加のコンポーネントを含む。例えば、一実施形態では、システムは、リニアモーターハウジングの長手方向縁部のそれぞれに隣接して接続されたガイドレールを更に含む。他の実施形態では、システムは、リニアモーターハウジングの長方形のステンレス鋼製天板及び他のリニアモーターハウジングに対応する長方形のステンレス鋼製天板を横切ってキャリアビークルの連続推進を促進するように、リニアモーターハウジングを1つ以上の追加のリニアモーターハウジングに結合するように動作可能な複数の結合コンポーネントを含む。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時出願の米国仮特許出願62/365,216にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0247】
VMシステムを動作させるためのいくつかの方法及びシステムは、自動化システム内の既存のセンサーを利用し、問題を診断し、VMシステムの健全性を維持する目的で、必要に応じて追加のセンサーを使用することができる。自動化システムは、トラック内の電磁石を構成するコイルの健全性をチェックするために測定回路を使用し、作動したコイルによって生じる磁場の偏向を監視するためにホール効果センサー(HES)、又は、動作温度が予想通りであるかどうかを確認するためにコイルボードの温度を監視するための温度計/熱電対を、少なくとも使用する。既存のセンサーは、電流測定値、偏向された磁場、温度等の重要な情報を提供する。
【0248】
いくつかの実施形態では、これらのセンサーから収集されたデータは、ローカル又はリモートの中央運用監視又は保守監視センターに通信することができる。データは即時の動作のために見直すことができるし、統計的、傾向分析のために編集することができる。
【0249】
したがって、VMシステム及びキャリアは、容器移動装置システム又はその部品の健全性を評価し、更には予測するためにも使用することができる。例えば、コイルボード、マスターボード、ノードコントローラー、コントローラーモジュール、ホストPCT、容器移動装置マネージャーソフトウェア、リニアモーター、イーサネットスイッチ、センサー、ホール効果センサー、スイッチング機構、電源フェイルオーバーギガビットイーサネットスイッチ、温度計/熱電対、湿度センサー等の1つ以上の様々なコンポーネントからの通信を介して、ローカル又はリモートの監視ステーション(例えば、コンピューター)によって、VMシステムの現在のステータスをほぼリアルタイムで評価し、データを収集し、保存し、メンテナンスイベントが発生する前にそれを予測するための努力において現在又は将来の傾向を識別するために分析することができる。温度などの出力を読み取ることに加えて、監視は、定期的に、又はオペレーター又は中央ソフトウェアによる要求に応じて、マスターボードによって自動的に行われ得るテストプロトコルを実行することも含み得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、中央監視ステーションは、異なる場所及び潜在的に異なる顧客にある複数のシステムを同時に監視することができる。このようにして、IVD製造業者は、その顧客のためにサービスプランを実施することができる。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時出願の米国仮特許出願62/365,310にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0251】
いくつかの実施形態では、キャリアは、温度制御システム(例えば、能動的又は受動的温度制御)を有することができる。例えば、温度制御システムは、受動的温度制御であってもよく、ここでキャリアは断熱材内にペイロードを有する。したがって、一実施形態では、断熱容器を利用して容器への熱流を最小限に抑え、試験ステーションまでのその経路上でその容器をその元の温度又はその近くの温度に維持することができる。これにより、軽量で費用対効果が高く、保守が容易な解決策が可能になる。
【0252】
更なる一実施形態は、能動的温度制御を利用することができる。能動的温度制御の場合には、キャリア、又はインテリジェントキャリアは、その温度を操作することができる装置を有することができる。例えば、キャリアは、それに取り付けられた小型熱電素子を有することができる。熱電冷却は、ペルチェ効果を使用して、2つの異なるタイプの材料の接合部間に熱流束を作り出す。更なる一実施形態では、熱電冷却器(TEC)素子は、ペイロードを所望の温度に保つのを助けるために、本明細書で論じる受動的温度制御(例えば、240)と組み合わせることができる。
【0253】
加えて、一実施形態は、小型電気熱量冷却装置(ECC)を利用することができる。電気熱デバイスは、印加電場の下で可逆的な温度変化を有する材料を含む。この効果は、磁気熱量効果と同様に、電圧がシステムのエントロピーを上下させることから生じる。TEC装置と同様に、ECC装置は、ペイロードを所望の温度に維持するのを助けるために、本明細書で論じる受動的温度制御(例えば、240)と組み合わせることができる。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時出願の米国仮特許出願62/365,276にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0254】
いくつかの実施形態は、ロボットピペットプローブの診断機器を、割り出しリング内のキャリア、キュベット、又は試薬パック上の試料管にアライメントするための技術を利用する。したがって、一実施形態は、プローブとターゲットとの間の適切な相互作用を確実にするための超高精度アライメントシステムを提供する。自動アライメントシステムは、プローブスイッチやプローブ振れセンサーを利用してもよい。これらのうちの1つ以上(すなわち、プローブスイッチ及び振れセンサー)を使用して、一実施形態は、依然として非常に正確で反復可能なアライメントを達成しながら、プロセスを単純化することができる。
【0255】
具体的には、システムの実施形態は、ロボットアームを使用して、狩猟道具を開口部に挿入することができる。システムの実施形態は、それから、複数の検知ビームを使用して、開口部内の狩猟道具の第1の位置を検出することができる。次いで、一実施形態は、ロボットアームを使用して狩猟道具を180度回転させ、複数の検知ビームを使用して、開口部内の狩猟道具の第2の位置を再び検出することができる。これら2つの計算に基づいて、振れの大きさ及び振れの方向を決定することができる。次いで、狩猟道具を、ロボットアームを介して標的に挿入することができる。狩猟道具は、感圧チップを使用して、標的に対する狩猟道具の位置を検出することができ、その後、実施形態は、上記の要因に基づいて、開口部及び標的に対する狩猟道具の位置を調整することができる。この例示的な構成に関する更なる詳細は、同時に出願された米国仮特許出願62/365,225にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0256】
いくつかの実施形態では、VMシステムは、単一の試料識別ステーションを用いてそのキャリアの全ての同一性及び位置を継続的に追跡し、相互作用(吸引/デキャップ/その他)点で試料を再識別する必要なく試料のカストディチェーンを提供するためにカバー/インターロックする。これにより、各々の相互作用点に試料識別ステーションを有する必要がなくなる。ハードウェアのこの削減は、システムをより安く、より小さく、そしてより信頼できるものにすることを可能にする。それはまた、自動化システムだけでなく、自動化システムに接続された既存の予備分析/分析機器もまたより効率的に運転することを可能にする。
【0257】
いくつかの実施形態によれば、より一貫性のある実現可能なキャパシティソリューションを提供するという問題に取り組むことを促進する4つの構成がある。
【0258】
1.管の固有のIDを自動化トラック上のパックの固有のIDと対にする、試料識別を取得するための単一点(例えば、バーコードリーダー)。
【0259】
2.そのパックの全ての同一性及び位置を継続的に追跡することができる自動化トラック。
【0260】
3.試料の移動領域及び目的地の全てを覆う連続カバーセット。
【0261】
4.カバーが破られたかどうかを検出する能力。
【0262】
この例示的な特徴に関する更なる詳細は、同時に出願された米国仮特許出願62/365,268にあり、この出願の全内容は本明細書に援用される。
【0263】
例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はそれに限定されない。本発明の好ましい実施形態に対して多数の変更及び修正を行うことができること、及び、こうした変更及び修正を、本発明の要旨から逸脱することなく行うことができることは、当業者にとって当然のことである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の要旨及び範囲内の全ての等価な変形に及ぶと解釈されるべきである。
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