IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パーキンス エンジンズ カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7002545選択的還元システムのための方法及び装置
<>
  • 特許-選択的還元システムのための方法及び装置 図1
  • 特許-選択的還元システムのための方法及び装置 図2
  • 特許-選択的還元システムのための方法及び装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】選択的還元システムのための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20220113BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20220113BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F01N3/08 G ZAB
F01N3/24 C
B01D53/94 222
B01D53/94 400
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019530659
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2017082196
(87)【国際公開番号】W WO2018114426
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】16205948.9
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516323231
【氏名又は名称】パーキンス エンジンズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PERKINS ENGINES COMPANY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】アレクシス エデン
(72)【発明者】
【氏名】レオ シェード
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド シルバー
(72)【発明者】
【氏名】ベン レイド
(72)【発明者】
【氏名】グラハム ハーグレーブ
(72)【発明者】
【氏名】ポール ゲイナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロッキャー
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037893(JP,A)
【文献】特開2015-074982(JP,A)
【文献】特開2016-043320(JP,A)
【文献】特開2006-274845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08~ 3/38
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解触媒を備える触媒システムのための方法であって:
前記加水分解触媒に対してディーゼル排出流体(DEF)を,第1の特性セットに基づく第1の投与率で投与するステップであって,前記第1の特性セットが,前記加水分解触媒の表面上におけるDEFの有効残留時間を含む,ステップ
前記加水分解触媒の第2の特性セットを,第1の基準セットに基づいて決定するステップであって,前記第2の特性セットが,前記加水分解触媒の利用可能蓄積容量を含み,前記第1の基準セットが,前記加水分解触媒の初期蓄積容量,及び前記加水分解触媒の表面上におけるDEFの分解率を含む,ステップ
前記投与率を第2の特性セットに基づいて第2の投与率に変化させるステップ;並びに,
前記投与率を第2の基準セットに基づいて第1の投与率まで復帰させるステップであって,前記第2の基準セットが,前記加水分解触媒の利用可能蓄積量の下限しきい値を含む,ステップ
を備える方法。
【請求項2】
請求項に記載された方法であって,前記利用可能蓄積容量がしきい値に達したときに,前記投与率を変化させる,方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された方法であって,前記触媒システムが排出システムの排出通路内で排出ガスを処理するための選択的触媒還元システムを備え,前記DEFの分解率を,前記排出システムの状態に基づいて導き出す,方法。
【請求項4】
請求項1~の何れか一項に記載された方法であって,前記第2の投与率が,前記第1の投与率よりも大きい,方法。
【請求項5】
請求項1~の何れか一項に記載された方法であって,前記投与率を前記第2の投与率まで変化させるステップが,前記第1の基準セットに基づいて前記第2の投与率の値を決定するステップを含む,方法。
【請求項6】
請求項1~の何れか一項に記載された方法であって,前記投与率を前記第2の投与率まで変化させるステップが,前記加水分解触媒にDEFを前記第2の投与率で投与する時間を決定するステップを含む,方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載された方法であって,前記第1の投与率を,DEFの前記有効残留時間が実質的にゼロとなるように設定する,方法。
【請求項8】
請求項1~の何れか一項に記載された方法であって,前記第1の特性セットが:前記加水分解触媒の表面上におけるDEFの分解率;前記排出ガスの温度;及び,前記排出ガスの流速;の少なくとも1つを含む,方法。
【請求項9】
排出通路内で排出ガスを処理するための選択的触媒還元システムであって:
加水分解触媒
前記加水分解触媒にDEFを噴射するためのDEF投与ユニット;並びに,
請求項1~の何れか一項に記載された方法を実施するためのコントローラ;
を備える,システム。
【請求項10】
請求項1~の何れか一項に記載された方法を実施するために,機械読み取り可能な指示の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ディーゼルエンジンの排出ガスを処理するための選択的触媒還元(SCR)システムに関する。特に,本発明は,SCRシステムの効率を改善させるための方法に関する。
【0002】
選択的触媒還元(SCR)システムは既知であり,一般的にディーゼルエンジンの排出系に含まれて該エンジンの排出ガス処理に供されている。このようなシステムは,エンジンの排出通路内を流れる排出ガスにディーゼル排出流体(DEF)を導入するものである。DEFは尿素を含み,その尿素は排出通路内で加水分解及び熱分解することによりアンモニアを生成する。アンモニアはSCR触媒を通過し,その間に排出ガスと反応する。この場合,排出ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)は,排出系から大気中に放出される前に窒素に変換される。
【0003】
排出通路内にDEFを投与する多くのSCRシステムが提案されている。このようなシステムは,ときには「ウェット・スプレー」とも称されており,水性尿素のスプレーを排出ガス中に噴射して分解させることによりアンモニアを生成するものである。かかるシステムの一例は,特許文献1:米国特許出願公開第2008/307967号明細書に開示されている。特許文献1は,DEFが主排出通路の外側に配置された供給通路内で加水分解される配置を記載している。特に,DEFは加水分解触媒に投与され,アンモニアに加水分解される。そのアンモニアはSCR触媒の入口まで下流側に流れ,ここで反応してNOxを還元させる。一般的に,SCRシステムにより行われる既知の制御プロセス,例えば特許文献1に開示されるプロセスは,NOxをアンモニアにより還元させるべき場合に,DEFを加水分解リアクタに投与するものである。
【0004】
SCRシステムにおけるインパクション装置(雇えば加水分解触媒)にDEFを投与する場合,DEFは,ある条件下ではインパクション装置を冷却して尿素の熱分解,これに引き続くイソシアン酸の加水分解,並びにアンモニア及びイソシアン酸の脱離を減速させ,又は実質的に阻止する。このアンモニア放出量の抑制は,インパクション装置の機能にラグ又は遅延を生じさせる。これにより,SCR触媒におけるアンモニア蓄積量に対して作用させ得る制御量や,NOx変換が制限される。更に,減速又は阻止された尿素の熱分解により排出通路内における尿素堆積が生じ,例えば排出ガス入口温度が上昇した場合におけるアンモニア・スリップに際して,未反応の尿素又はアンモニアが未処理状態のまま排出通路から排出される可能性がある。
【0005】
堆積の形成を防止するため,インパクション装置に対するDEF投与率は,典型的には,所与の排出条件におけるDEF分解率以下(「定常状態」,「安全」又は「安定」投与率とも称される)となるように設定される。しかしながら,「安全」投与率の使用はインパクション装置のDEF蓄積容量を完全に活用するものではなく,これによりアンモニアの生成を実質的に制約する。
【0006】
本発明の課題は,少なくとも,上述した欠点のいくつかに対処することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2008/307967号明細書
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において,本発明は,加水分解触媒を備える選択的触媒還元システムのための方法を提供する。この方法は:
前記インパクション装置に対してディーゼル排出流体(DEF)を,第1の特性セットに基づく第1の投与率で投与するステップ;
前記インパクション装置の第2の特性セットを,第1の基準セットに基づいて決定するステップ;
前記投与率を第2の特性セットに基づいて第2の投与率に変化させるステップ;並びに,
前記投与率を第2の基準セットに基づいて第1の投与率まで復帰させるステップ;
を備える。
【0009】
第2の態様において,本発明は,排出通路内で排出ガスを処理するための選択的触媒還元システムを提供する。このシステムは:
インパクション装置;
インパクション装置にDEFを噴射するためのDEF投与ユニット;並びに,
請求項1~13の何れか一項に記載された方法を実施するためのコントローラ;
を備える。
【0010】
第3の態様において,本発明は,上述した方法を実施するために,機械読み取り可能な指示の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0011】
本発明の更なる態様,特徴及び利点,並びに本発明の各種実施形態の構造及び機能は,添付図面を参照して以下に詳述する通りである。本発明が本明細書に記載する特定の実施形態に限定されるものでないことに留意されたい。そのような実施形態は,あくまでも例示にために開示されるものである。付加的な実施形態は,本明細書の教示に基づいて当業者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下,本発明の実施形態を,単なる例示として,添付図面を参照しながら記載する。なお,対応する参照符号は,対応する構成要素を表している。
図1】選択的触媒還元システムを示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る例示的方法のフローチャートである。
図3図2に示す方法のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特定の実施形態について詳細に説明するに先立ち,本発明を適用し得る環境を例示しておくことが有益である。
【0014】
図1は,例示的な選択的触媒還元(SCR)システム10を示す。このシステムは,車両のエンジン(図示せず)からの排出ガスを搬出する排出通路12内に配置される。初めに,排出ガスは既知形式のディーゼル酸化触媒(DOC,図示せず)を通過し,この触媒は,その触媒作用により排出ガス中の炭化水素,一酸化窒素及び一酸化炭素の酸化反応を生じさせて二酸化炭素,二酸化窒素及び水を生成する。
【0015】
DOCの下流側にはディーゼル排出流体(DEF)投与ユニット16が配置され,これは,排出通路12内でインパクション装置(例えば加水分解触媒)18にDEFを投与するように構成されている。DEF投与ユニット及びインパクション装置は,いずれも既知形式のものである。インパクション装置の下流側にはSCR触媒20が配置され,これも既知形式のものである。システムは付加的な構成要素,例えばアンモニア・スリップ触媒を備えることができる。
【0016】
システムはコントローラ26を備え,このコントローラは,DEF投与ユニットがDEFを加水分解触媒に投与する投与率を制御するように構成されている。
【0017】
システムは,コントローラに接続される複数のセンサを更に含む。特に,インパクション装置の上流側には窒素酸化物(NOx)センサ28及び入口温度センサ30が配置されている。インパクション装置及びSCR触媒の間に出口温度センサ32及びアンモニアセンサ34が配置されている。上記のセンサは,もっぱら例示として列挙したものであり,システムは付加的又は代替的なセンサを備えることもできる。これら各種のセンサは,コントローラに設けられている1つ以上の入力及び/又は出力に接続することができる。作動の間,コントローラは,部分的にはシステムにおける種々のセンサから受信した測定データに基づいてDEF投与率を調整する。
【0018】
触媒システムは,単一のコントローラ26のみを有する構成として記載したが,原則的には複数の相互接続されたコントローラを使用することも可能である。代替的に,コントローラは,複数の個別的なサブコントローラ26a,26bを備えることができる。各サブコントローラは,特定の操作を行うことができる。例えば,第1のサブコントローラ26aはSCR触媒20の性能に関連する操作を行うことができ,第2のサブコントローラ26bは,加水分解触媒18の性能に関連する操作を行うことができる。
【0019】
通常作動の間,DEFの投与率は,1つ又は複数の要件に適合するように制御する。そのような要件の1つは,典型的には,加水分解触媒がDEFで飽和することを回避することである。これは,触媒上におけるDEFの堆積につながりかねず,触媒システムの機能及び/又は効率を低下させかねない点で望ましくないからである。従って,DEF投与率は,典型的には,加水分解触媒の表面上におけるDEFの有効残留時間が実質的にゼロとなるように選択する。有効残留時間は,加水分解触媒の表面上におけるDEF分解率と,DEF投与率との差として定義される。効残留時間がゼロであれば,DEF分解率はDEF投与率と同一である。
【0020】
DEF分解率は,触媒システム内における作動条件に依存する。更に,触媒システム内における作動条件は,触媒システムが装着されるエンジンの作動条件(例えばエンジン負荷)に依存する。
【0021】
作動の間,触媒システムの動的作動条件により,DEF分解率を精密に決定数rことは困難であり得る。従って,DEF投与率は,典型的には,あるレベルの不確実性を許容するように選択される。典型的に,「安全」投与率(「定常状態」又は「安定」投与率とも称される)は,投与時間が任意の時点においてDEF分解率よりも小さくなるように選択される。しかしながら,これにより加水分解触媒の飽和が回避されても,そのような「安全」投与率の適用は,加水分解触媒の容量を完全に活用するものではない。
【0022】
作動の間の計算負荷を低下させるため,DEF投与率の選択は,典型的には,コントローラに蓄積されているルックアップ・テーブルを使用して行われる。ルックアップ・テーブルにおけるDEF投与率は,任意数の適当なパラメータ(例えば,排出ガス温度,排出ガス流速)の関数であり得る。
【0023】
本明細書に開示される実施例において,もっぱら明確性及び説明の簡略化のために,エンジン負荷は一定であるものと,すなわちが一定であるものと仮定する。これは単に例示目的のためであり,実際には,エンジン負荷は通常作動の間,多くの要因に応じて変化する。同様に,エンジン負荷の変化に応じてDEF投与率も変化する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
次に,図1に示す触媒システムにおいて実施し得る例示的方法につき,図2及び図3を参照して説明する。
【0025】
この例示的方法は,図1に示すコントローラの何れか,又は両者において実施することができる。インパクション装置が加水分解触媒である実施例において,例示的な方法は,加水分解触媒コントローラにおいて実施する。他の実施例において,例示的な方法は,SCR触媒コントローラにおいて実施する。簡潔性のため,以下では1つのコントローラについて言及する。これは,システムに含まれるコントローラのうち,任意の,又は数個のコントローラに当てはまるものである。
【0026】
第1ステップ201において,インパクション装置にDEFを,第1の特性セットに基づいて第1の投与率で投与する。これは更に図3に示すとおりであり,同図は,投与率302と,インパクション装置304の完全蓄積容量の一部としての利用可能蓄積容量の例示的なグラフである。投与率及び利用可能蓄積容量は,何れも時間(X軸306により示される)の関数として示されている。
【0027】
上述した第1の投与率(水平線308で示す)を決定するため,インパクション装置の任意の適当な特性を使用することができる。一実施例において,第1の特性セットは,排出システムの状態(例えば排出温度又は排出流速)を代表する1つ又は複数のパラメータを含む。他の実施例において,第1の特性セットは,インパクション装置の表面上におけるDEFの有効残留時間(すなわち,DEF投与時間とDEF分解時間の差)を含む。
【0028】
特定の実施例において,第1のDEF投与率は,インパクション装置の表面上におけるDEFの有効残留時間が実質的にゼロとなるように選択する。換言すれば,DEF投与率は,触媒システムが装着されるエンジンの通常作動の間におけるDEF分解率と実質的に同一のレベルに設定する。有効残留時間を実質的にゼロに維持すれば,より詳細に上述したようにDEF体積の形成を防止することができる。有効残留時間が実質的にゼロであるため,インパクション装置は,利用可能蓄積容量310が実質的に一定となる。他の実施例において,第1のDEF投与率は,DEF分解率よりも小さくなるように選択することができる。
【0029】
図3では,DEF投与率及び利用可能蓄積容量が一定として示されているが,これは単なる例示に過ぎず,本発明方法の原理を説明するためのものである。エンジンの通常作動の間(例えば,重荷重用車両における場合),その作動条件が動的に変化することは容易に理解し得るところである。従って,DEF投与率は実際には変化することがある。
【0030】
第1の特性セットは,任意の様式で具体化することができる。いくつかの実施例において,第1の特性セットは,コントローラに保存されたルックアップ・テーブルとして構成することができる。1つ又は数個の特定因子(例えば,排出システムに配置された1つ又は複数のセンサからのセンサ入力)に基づき,ルックアップ・テーブルにおける特定のエントリーを選択することができる。他の実施例において,第1の特性セットは,コントローラにより導き出すことができる。第1の特性セットは,連続的又は設定間隔で導き出すことができる。
【0031】
第2ステップ202において,インパクション装置の第2の特性セットを第1の基準セットに基づいて決定する。第2の特性セットは,任意の適当な時点で,又は適当な回数で決定することができる。いくつかの実施例において,第2の特性セットを連続的に決定する。他の実施例において,第2の特性セットは特定の間隔で決定する。これは,コントローラハードウェアにおける所与の制約を考慮すれば実用的な措置である。
【0032】
第2の特性セットは,インパクション装置の適当な特性(単数又は複数)を代表することができる。一実施例において,第2の特性セットは,インパクション装置の表面上においてDEFを蓄積するための利用可能蓄積容量を含む。第1のDEF投与率がインパクション装置の飽和を回避するように選択されるため,通常の状況下では,利用可能蓄積容量はゼロとなる。
【0033】
第2の特性セットは,任意の適当な数の基準に基づき,任意の適当な態様で決定することができる。一実施例において,第1の基準セットは,排出システムの特定の状態におけるDEF分解率,及びインパクション装置の初期蓄積容量を含む。典型的に,初期蓄積容量は,インパクション装置の完全蓄積容量312,すなわち不使用時におけるインパクション装置の蓄積容量と等しい。第1の基準セットが単なる例示であり,原則として,第1の基準セットが特定の付加的又は代替的な基準を含み得ることは,言うまでもない。いくつかの実施例において,第1の基準セットは,付加的又は代替的に,かつ,限定されるものではないが:DEF投与率;予測内部温度;インパクション装置の瞬時蓄積容量(これは第1の特性セットに基づいて連続的に評価可能);の1つ又は複数を含む。
【0034】
DEF分解率は,任意の適当な態様で決定することができる。例えば,DEF分解率は,第1の特性セットについて上述したと同様に,コントローラに組み込まれたルックアップ・テーブルとして具体化することができる。代替的に,特定の分解率をシステムの作動の間に動的に,又は特定の間隔で決定することができる。
【0035】
初期蓄積容量は,適当な態様で決定することができる。一実施例において,初期蓄積容量は,コントローラにおけるメモリに予め定められたパラメータとして保存することができる。特定の実施例において,初期蓄積容量は,触媒システムの試行又は試験の間に決定した後,コントローラにおけるメモリに保存することができる。
【0036】
第3ステップ203において,DEF投与率は,第2の特性セットに基づいて第2の投与率まで変化させる。いくつかの実施例において,投与率は,第2の特性セットのうちの少なくとも1つの特性が特定の要件に適合する場合に変化させる(例えば,投与率は,利用可能蓄積容量がしきい値に達したときに第2の投与率まで変化させる)。
【0037】
第2の投与率は,任意の適当な値とすることができ,任意の態様で選択することができる。いくつかの実施例において,第2の投与率は予め定められた値,例えばシステムの可能な最大投与率,又は可能な最大投与率の固定された割合に設定することができる。他の実施例において,第2の投与率の値は,適当な態様で決定することができる。一実施例において,投与率を変化させるステップは,第2の投与率の値を第1の基準セットに基づいて決定するステップを含む。
【0038】
一実施例において,第2の投与率は第1の投与率よりも大きく,DEF分解率よりも大きい。従って,インパクション装置に第2の投与率で投与する間に,利用可能蓄積容量の値は減少316する。
【0039】
ある実施例において,第2の投与率に加えて,インパクション装置に第2の投与率で投与する投与時間を決定する。 特定の実施例において,投与率を第2の投与率まで変化させるステップは,インパクション装置に第2の投与率で投与する投与時間を決定するステップを更に含む。
【0040】
第2の投与率及び投与時間は互いに相関し,所与の状況下で使用される特定の値は状況因子に従属する。例えば,ある状況下では,インパクション装置を可及的に短時間で充満させるのが望ましいことがある。そのような状況下では,第2の投与率を可及的に高く設定し,投与時間を可及的に短く設定する。別の状況下では,投与時間をより長く設定し,第2の投与率をより低く設定するのが有利又は好適であり得る。
【0041】
第4ステップ204において,第2の基準セットが満たされた後,投与率を第1の投与率まで復帰させる。第2の基準セットは,任意の態様で規定することができる。一実施例において,第2の基準セットは,インパクション装置の表面上における利用可能DEF蓄積容量の下限しきい値を含む。下限しきい値に達したときに,投与率を第1の投与率まで復帰させる。特定の実施例において,下限しきい値は,ゼロの利用可能蓄積容量として設定する。他の実施例において,下限しきい値は,1%,5%,10%又は20%とする。上述した値は単なる例示であり,任意の適当な値を選択することができる。他の実施例において,第2の基準セットは,インパクション装置に第2の投与率で投与する投与時間を含む。投与時間が満了した後,投与率を第1の投与率まで復帰させる。
【0042】
投与率が第1の投与率まで復帰すると,第2の量の利用可能蓄積容量318が投与時間の最後に到達したレベルで開始し,インパクション装置に第2の投与率で投与する。第2の量の利用可能蓄積容量318は,いくつかの実施例において,一定レベルを維持する。他の実施例において,第2の量の利用可能蓄積容量318は,投与率が第1の投与率まで復帰した後に変化させる。いくつかの実施例において,利用可能蓄積容量は増加させる。特定の実施例において,第2の量の利用可能蓄積容量318は,インパクション装置に第2の投与率で投与する前における利用可能蓄積容量310と類似又は同一とする。第2の量の利用可能蓄積容量は多くの因子に従属し,これには(限定されるものではないが):第1の投与率;利用可能蓄積容量の値;第2の量の利用可能蓄積容量;又は環境因子;が含まれる。
【0043】
以上の記載は,単なる例示を目的としており,限定的なものではない。すなわち,以下に記載する本発明の技術的範囲を逸脱することなく,本発明に修正を加え得ることは,当業者には明白である。
図1
図2
図3