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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】タイヤ状態監視システム、送信機及び受信機
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
B60C23/04 140D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019555499
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2018036756
(87)【国際公開番号】W WO2020070782
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】辻田 泰久
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/208055(WO,A1)
【文献】特開2014-013221(JP,A)
【文献】特開2013-154687(JP,A)
【文献】特開2006-092355(JP,A)
【文献】特開2015-013635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0106706(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/00-23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数の車輪に装着される送信機と、前記車両に搭載される受信機とを備えるタイヤ状態監視システムであって、
前記車両は、前記複数の車輪のそれぞれの回転角度を検出する回転角度検出部を備え、
前記送信機は、
前記送信機の電力源と、
タイヤの状態を検出するように構成された状態検出部と、
前記車両の走行状態に応じて検出値が変化するように構成された走行状態検出部と、
前記状態検出部によって検出された前記タイヤの状態を示すタイヤ状態データを含み、かつ、前記走行状態検出部の検出値を示すデータを含まない送信データを生成するように構成されたデータ生成部と、
前記データ生成部により生成された送信データを変調して送信するように構成された送信部と、
前記走行状態検出部の前記検出値の取り得る値を複数に分割した範囲のそれぞれを前記車輪の回転角度に設定されている複数の特定角度に割り当てた対応関係が記憶されている記憶部と、
前記車輪の回転角度が前記特定角度であることを検出したときに前記送信部から前記送信データを送信する特定角度送信を行うことが可能な送信制御部とを備え、
前記送信制御部は、
前記特定角度送信を行う際に、前記車輪の回転角度が前記走行状態検出部の前記検出値に対応する前記特定角度であることを検出したときに前記送信データを送信するように構成され、
前記受信機は、
前記送信機からの前記送信データを受信可能に構成された受信部と、
前記特定角度で送信された前記送信データの受信を契機として前記回転角度検出部から取得した角度検出値に基づき、前記送信機が前記複数の車輪のうちのいずれに装着されているかを特定する特定部と、
前記対応関係が記憶されている受信記憶部と、
前記検出値を、前記送信機を構成する部材とは異なる車両側走行状態検出部から取得する取得部とを備え、
前記特定部は、前記受信部により前記送信データを受信したことを契機として前記取得部により取得した前記検出値と前記対応関係から、前記送信データが送信された前記特定角度を把握し、前記特定角度に基づき前記送信機が前記複数の車輪のうちのいずれに装着されているかを特定するように構成される、タイヤ状態監視システム。
【請求項2】
複数の車輪に装着される送信機であって、
車両は、前記複数の車輪のそれぞれの回転角度を検出する回転角度検出部を備え、
前記送信機は、
前記送信機の電力源と、
タイヤの状態を検出するように構成された状態検出部と、
前記車両の走行状態に応じて検出値が変化するように構成された走行状態検出部と、
前記状態検出部によって検出された前記タイヤの状態を示すタイヤ状態データを含み、かつ、前記走行状態検出部の検出値を示すデータを含まない送信データを生成するように構成されたデータ生成部と、
前記データ生成部により生成された送信データを変調して送信するように構成された送信部と、
前記走行状態検出部の前記検出値の取り得る値を複数に分割した範囲のそれぞれを前記車輪の回転角度に設定されている複数の特定角度に割り当てた対応関係が記憶されている記憶部と、
前記対応関係が記憶されている受信記憶部、前記送信機を構成する部材とは異なる車両側走行状態検出部から前記検出値を取得する取得部、及び前記送信データの受信を契機として前記回転角度検出部から取得した角度検出値に基づき前記送信機が装着された前記車輪の位置を特定する特定部を有する受信機に対して、前記車輪の回転角度が前記特定角度であることを検出したときに前記送信部から前記送信データを送信する特定角度送信を行うことが可能な送信制御部と、を備え、
前記送信制御部は、
前記特定角度送信を行う際に、前記車輪の回転角度が前記走行状態検出部の前記検出値に対応する前記特定角度であることを検出したときに前記送信データを送信するように構成される、送信機。
【請求項3】
前記走行状態検出部は、加速度センサである請求項2に記載の送信機。
【請求項4】
複数の車輪それぞれの回転角度を検出する回転角度検出部を有する車両に搭載される受信機であって、
前記受信機は、
前記車輪の回転角度が特定角度であることを検出したときに送信データを送信可能な送信機からの前記送信データを受信可能に構成された受信部と、
前記特定角度で送信された前記送信データの受信を契機として前記回転角度検出部から取得した角度検出値に基づき、前記送信機が前記複数の車輪のうちのいずれに装着されているかを特定する特定部と、
前記車輪の回転速度に応じて変化する検出値の取り得る値を複数に分割した範囲のそれぞれを前記車輪の回転角度に設定されている複数の特定角度に割り当てた対応関係が記憶されている受信記憶部と、
前記検出値を、前記送信機を構成する部材とは異なる車両側走行状態検出部から取得する取得部と、を備え、
前記受信部は、前記対応関係に応じた前記特定角度で前記送信データを送信する前記送信機からの前記送信データを受信するように構成され、
前記特定部は、前記受信部により前記送信データを受信したことを契機として前記取得部により取得した前記検出値と前記対応関係とから、前記送信データが送信された前記特定角度を把握し、前記特定角度に基づき前記送信機が前記複数の車輪のうちのいずれに装着されているかを特定するように構成される、受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ状態監視システム、送信機及び受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられた複数のタイヤの状態を運転者が車室内で確認できるようにするための装置として、タイヤ状態監視システムが知られている。タイヤ状態監視システムは、複数の車輪のそれぞれ装着される送信機と、車両に搭載された受信機とを備える。各送信機は、タイヤの状態を示す状態データを含む送信データを受信機に送信する。受信機は、送信データを受信することで、タイヤの状態を把握する。
【0003】
受信機は、受信した送信データが複数の車輪のうちのいずれに装着された送信機から送信されたかを特定する位置特定を行う。位置特定を行う際、送信機は、車輪の回転角度が予め定められた特定角度のときに、送信データを送信する。受信機は、送信データの受信を契機として、複数の車輪の回転角度を検出する回転角度検出装置から、各車輪の回転角度を把握する。受信機は、送信データを受信する毎に、各車輪の回転角度を取得する。そして、受信機は、各車輪の回転角度のばらつきから、各送信機が、複数の車輪のいずれに装着されているかを特定する。
【0004】
車両によっては、各送信機から送信された送信データが互いに干渉し合うヌルポイントが存在する場合がある。送信データが送信される特定角度とヌルポイントとが一致する場合、受信機は、特定角度で送信された送信データを受信できない。このため、特許文献1では、位置特定を行う際、各送信機から複数の特定角度で送信データを送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2012/0112899号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の特定角度で送信データを送信する場合、受信機は、受信した送信データが複数の特定角度のうちのいずれの角度で送信されたかを把握する必要がある。しかしながら、送信データが、角度情報を示すデータを含めて送信されると、送信データのデータ長が長くなり、消費電力が増加する。
【0007】
本発明の目的は、送信データの送信による消費電力を低減することができるタイヤ状態監視システム、送信機及び受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第一の態様によれば、車両の複数の車輪に装着される送信機と、前記車両に搭載される受信機と、を備えるタイヤ状態監視システムが提供される。前記車両は、前記複数の車輪のそれぞれの回転角度を検出する回転角度検出部を備える。前記送信機は、前記送信機の電力源と、タイヤの状態を検出するように構成された状態検出部と、前記車両の走行状態に応じて検出値が変化するように構成された走行状態検出部と、前記状態検出部によって検出された前記タイヤの状態を示すタイヤ状態データを含み、かつ、前記走行状態検出部の検出値を示すデータを含まない送信データを生成するように構成されたデータ生成部と、前記データ生成部により生成された送信データを変調して送信するように構成された送信部と、前記走行状態検出部の前記検出値の取り得る値を複数に分割した範囲のそれぞれを前記車輪の回転角度に設定されている複数の特定角度に割り当てた対応関係が記憶されている記憶部と、前記車輪の回転角度が前記特定角度であることを検出したときに前記送信部から前記送信データを送信する特定角度送信を行うことが可能な送信制御部とを備える。前記送信制御部は、前記特定角度送信を行う際に、前記車輪の前記車輪の回転角度が前記走行状態検出部の前記検出値に対応する前記特定角度であることを検出したときに前記送信データを送信するように構成されている。前記受信機は、前記送信機から送信される前記送信データを受信可能に構成された受信部と、前記特定角度で送信された前記送信データの受信を契機として前記回転角度検出部から取得した角度検出値に基づき、前記送信機のそれぞれが前記複数の車輪のうちのいずれに装着されているかを特定する特定部と、前記対応関係が記憶されている受信記憶部と、前記検出値を、前記送信機を構成する部材とは異なる車両側走行状態検出部から取得する取得部と、を備える。前記特定部は、前記受信部により前記送信データを受信したことを契機として前記取得部により取得した前記検出値と前記対応関係から、前記送信データの送信された前記特定角度を把握し、当該特定角度に基づき前記送信機のそれぞれが前記複数の車輪のうちのいずれに装着されているかを特定するように構成されている。
【0009】
車両の走行状態に応じて、走行状態検出部の検出値は変化する。走行状態検出部の検出値の取り得る値は、複数の範囲に分割されており、範囲毎に特定角度が割り当てられている。複数の範囲と特定角度との対応関係は、記憶部に記憶されている。従って、走行状態検出部の検出値に応じて、送信データは複数の特定角度で送信される。受信記憶部には、記憶部に記憶されている対応関係と同一の対応関係が記憶されている。従って、特定部は、取得部によって車両側走行状態検出部から取得された検出値と受信記憶部に記憶されている対応関係から送信データの送信された特定角度を把握することができる。送信データに角度情報を示すデータを含めなくても特定部に特定角度を把握させることができるため、送信データに角度情報を示すデータを含める場合に比べて送信データのデータ長を短くすることができる。これにより、送信データの送信による消費電力を低減することができる。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第二の態様によれば、車両の複数の車輪に装着される送信機が提供される。車両は、前記複数の車輪のそれぞれの回転角度を検出する回転角度検出部を備える。前記送信機は、前記送信機の電力源と、タイヤの状態を検出するように構成された状態検出部と、前記車両の走行状態に応じて検出値が変化するように構成された走行状態検出部と、前記状態検出部によって検出された前記タイヤの状態を示すタイヤ状態データを含み、かつ、前記走行状態検出部の検出値を示すデータを含まない送信データを生成するように構成されたデータ生成部と、前記データ生成部により生成された送信データを変調して送信するように構成された送信部と、前記走行状態検出部の前記検出値の取り得る値を複数に分割した範囲のそれぞれを前記車輪の回転角度に設定されている複数の特定角度に割り当てた対応関係が記憶されている記憶部と、前記対応関係が記憶されている受信記憶部、前記送信機を構成する部材とは異なる車両側走行状態検出部から前記検出値を取得する取得部、及び、前記送信データの受信を契機として前記回転角度検出部から取得した角度検出値に基づき前記送信機が装着された前記車輪の位置を特定する特定部を有する受信機に対して、前記車輪の回転角度が前記特定角度であることを検出したときに前記送信部から前記送信データを送信する特定角度送信を行うことが可能な送信制御部とを備える。前記送信制御部は、前記特定角度送信を行う際に、前記車輪の回転角度が前記走行状態検出部の前記検出値に対応する前記特定角度であることを検出したときに前記送信データを送信するように構成されている。
【0011】
走行状態検出部の検出値に応じて、送信データは複数の特定角度で送信される。受信記憶部には、記憶部に記憶されている対応関係と同一の対応関係が記憶されている。従って、特定部は、取得部によって車両側走行状態検出部から取得された検出値と受信記憶部に記憶されている対応関係から送信データの送信された特定角度を把握することができる。送信データに角度情報を示すデータを含めなくても特定部に特定角度を把握させることができるため、送信データに角度情報を示すデータを含める場合に比べて送信データのデータ長を短くすることができる。これにより、送信データの送信による消費電力を低減することができる。
【0012】
上記送信機について、前記走行状態検出部は、加速度センサであってもよい。
加速度センサは、車両の速度に応じて検出値が変化する。従って、加速度センサの検出値から特定角度を決定することができる。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第三の態様によれば、複数の車輪それぞれの回転角度を検出する回転角度検出部を有する車両に搭載される受信機が提供される。前記受信機は、前記車輪の回転角度が特定角度であることを検出したときに送信データを送信することが可能な送信機から送信される前記送信データを受信可能に構成された受信部と、前記特定角度で送信された前記送信データの受信を契機として前記回転角度検出部から取得した角度検出値に基づき、前記送信機のそれぞれが前記複数の車輪のうちのいずれに装着されているかを特定する特定部と、前記車輪の回転速度に応じて変化する検出値の取り得る値を複数に分割した範囲のそれぞれを前記車輪の回転角度に設定されている複数の特定角度に割り当てた対応関係が記憶されている受信記憶部と、前記検出値を、前記送信機を構成する部材とは異なる車両側走行状態検出部から取得する取得部と、を備える。前記受信部は、前記対応関係に応じた前記特定角度で前記送信データを送信する前記送信機からの前記送信データを受信するように構成される。前記特定部は、前記受信部により前記送信データを受信したことを契機として前記取得部により取得した前記検出値と前記対応関係から、前記送信データの送信された前記特定角度を把握し、当該特定角度に基づき前記送信機のそれぞれが前記複数の車輪のうちのいずれに装着されているかを特定するように構成されている。
【0014】
送信機からは、走行状態検出部の検出値に応じて、複数の特定角度で送信データが送信される。特定部は、取得部によって車両側走行状態検出部から取得された検出値と受信記憶部に記憶されている対応関係から送信データの送信された特定角度を把握することができる。従って、送信データに角度情報を示すデータを含めなくても特定角度を把握することができるため、送信データに角度情報を示すデータを含める場合に比べて送信データのデータ長を短くすることができる。これにより、送信データの送信による消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送信データの送信による消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】タイヤ状態監視システムの概略構成図。
図2】回転センサユニットの概略構成図。
図3】送信機の概略構成図。
図4】加速度センサの検出軸と車輪の位置関係を示す図。
図5】特定角度送信を行う際に送信制御部が行う処理を示すフローチャート。
図6】送信データのフレームフォーマットを示す図。
図7】車両の速度の取り得る値を複数に分割した範囲に特定角度を割り当てた対応関係を示す図。
図8】第1閾値と第2閾値との関係を示す図。
図9】受信制御部が行う車輪位置特定処理を示すフローチャート。
図10】左前車輪に装着された送信機から送信された送信データの受信を契機として取得されたパルスカウント値の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、タイヤ状態監視システム、送信機及び受信機の一実施形態について説明する。
図1に示すように、タイヤ状態監視システム30は、車両10に搭載されている。
車両10は、4つの車輪11を備える。各車輪11は、ホイール12と、ホイール12に装着されたタイヤ13とを備える。各車輪11のうち右前車輪11をFR、左前車輪11をFL、右後車輪11をRR、左後車輪11をRLとして説明する。
【0018】
車両10は、アンチロック・ブレーキシステム(以下、ABSと称す)20を備える。ABS20は、ABSコントローラ25と、4つの車輪11にそれぞれ対応する回転センサユニット21~24とを備える。第1回転センサユニット21は、左前車輪FLに対応し、第2回転センサユニット22は、右前車輪FRに対応している。第3回転センサユニット23は、左後車輪RLに対応し、第4回転センサユニット24は、右後車輪RRに対応している。ABSコントローラ25は、マイクロコンピュータ等よりなり、回転センサユニット21~24からの信号に基づき各車輪11の回転角度を求める。回転センサユニット21~24は、タイヤ13外に設けられている。
【0019】
図2に示すように、回転角度検出部としての各回転センサユニット21~24は、車輪11と一体回転する歯車26と、歯車26の外周面に対向するように配置された検出器27とを備える。歯車26の外周面には複数本の歯が等角度間隔おきに設けられている。歯車26の歯の数は48である。検出器27は、歯車26が回転することで生じるパルスを検出する。ABSコントローラ25は、検出器27に有線接続され、各検出器27の角度検出値であるパルスカウント値に基づき、各車輪11の回転角度を求める。詳細にいえば、ABSコントローラ25は、検出器27に発生したパルスの立ち上がりと立ち下がりをカウントする。ABSコントローラ25は、カウントされたパルスのカウント数を歯車26の1回転分のパルスのカウント数=96で除算したときの余りを、パルスカウント値として算出する。また、車輪11が1回転する間に検出器27に発生するパルス数で360度を除算することでパルスカウント値1につき歯車26が何度回転したかを把握することもできる。これらによって、パルスカウント値から、車輪11の回転角度を求めることができる。パルスカウント値は0~95の範囲内の値である。また、ABSコントローラ25は、検出器27に生じるパルスの周波数から、車両10の速度を算出する。
【0020】
次に、タイヤ状態監視システム30について説明する。
図1に示すように、タイヤ状態監視システム30は、車両10の4つの車輪11にそれぞれ装着される送信機31と、車両10の車体に設置される受信機50とを備える。送信機31は、タイヤ13の内部空間に配置されるように、車輪11に取り付けられている。送信機31として、タイヤバルブに固定されたものや、ホイール12やタイヤ13に固定されたものが用いられる。送信機31は、対応するタイヤ13の状態を検出して、検出したタイヤ13の情報を含む送信データを受信機50に無線送信する。タイヤ状態監視システム30は、送信機31から送信される送信データを受信機50で受信することで、タイヤ13の状態を監視する。
【0021】
図3に示すように、各送信機31は、圧力センサ32、温度センサ33、加速度センサ34、送信制御部35、送信回路36、バッテリ37、及び送信アンテナ39を備える。送信機31は、バッテリ37からの供給電力によって動作し、送信制御部35は送信機31の動作を統括的に制御する。送信機31の電力源となるバッテリ37は、一次電池であってもよく、二次電池やキャパシタなどの蓄電装置であってもよい。
【0022】
圧力センサ32は、対応するタイヤ13の空気圧を検出する。温度センサ33は、対応するタイヤ13内の温度を検出する。
図4に示すように、加速度センサ34は、検出軸34aを備え、検出軸34aの軸方向の加速度を検出する。加速度センサ34は、車輪11の回転による遠心力を検出できるように、車輪11に装着されている。例えば、加速度センサ34は、送信機31が車輪11の最下位置に位置しているときに、検出軸34aが鉛直方向を向くように、車輪11に装着されている。加速度センサ34は、少なくとも遠心力を検出できればよく、一軸の加速度センサ34であってもよいし、多軸の加速度センサ34であってもよい。タイヤ13内の圧力を検出する圧力センサ32、タイヤ13内の温度を検出する温度センサ33が状態検出部に対応する。
【0023】
図3に示すように、送信制御部35は、CPU35a及びRAMやROM等から構成された記憶部35bを含むマイクロコンピュータ等よりなる。送信制御部35は、計時機能を備える。計時機能は、例えば、タイマや、カウンタによって実現される。送信制御部35は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。即ち、送信制御部35は、1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、2)ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは3)それらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0024】
記憶部35bは、各送信機31の固有の識別情報を示すIDコードを記憶する。説明の便宜上、左前車輪FLに装着された送信機31のIDコードをFLID、右前車輪FRに装着された送信機31のIDコードをFRID、左後車輪RLに装着された送信機31のIDコードをRLID、右後車輪RRに装着された送信機31のIDコードをRRIDと表記する。また、記憶部35bは、送信機31を制御する種々のプログラムを記憶する。
【0025】
送信制御部35は、送信データを生成して、生成した送信データを送信回路36に出力する。送信データは、デジタルデータであり2進数のデータ列である。送信回路36は、送信データを変調する。変調された送信データは、無線信号として送信アンテナ39から送信される。無線信号とは、送信データを含む信号といえる。無線信号は、例えば、315MHz帯や、434MHz帯などのRF帯の信号である。送信制御部35は、送信データを生成するデータ生成部に対応する。送信回路36は、送信データを送信する送信部に対応する。
【0026】
送信機31は、車輪11の回転角度に関わらず送信データを送信する通常送信と、車輪11の回転角度が予め定められた特定角度であるときに送信データを送信する特定角度送信とを行うことが可能である。
【0027】
通常送信では、所定の間隔毎に送信データが送信機31から送信される。所定の間隔は、例えば、十秒~数十秒である。
特定角度送信は、例えば、所定時間以上に亘って車両10が停止された場合に行われる。所定時間は、タイヤローテーションなど車輪11の位置の変更に要する時間や、車輪11の交換などに要する時間よりも長い時間に設定される。所定時間は、例えば、数十分~数時間などである。
【0028】
車両10が走行しているか否かの判定は、加速度センサ34によって検出される加速度から判定することができる。車速が速くなるにつれて、加速度センサ34に作用する遠心加速度は大きくなる。加速度センサ34によって検出された加速度が走行判定用閾値以上であれば、送信制御部35は、車両10が走行していると判定する。一方、加速度センサ34によって検出された加速度が走行判定用閾値未満であれば、送信制御部35は、車両10が停車していると判定する。走行判定用閾値は、公差などを考慮して、車両10が停車しているときに加速度センサ34によって検出される加速度よりも大きい値に設定される。
【0029】
特定角度送信時には、車輪11の回転角度が、予め定められた特定角度であることを検出したときに送信データが送信機31から送信される。詳細に説明すれば、送信制御部35は、1回前の送信データの送信から所定の時間(例えば、十秒~数十秒)が経過しかつ特定角度が検出された場合に、送信機31から送信データを送信する。ここでは、複数の特定角度が設定される。特定角度として、送信機31が車輪11の最上位置にあるときの第1角度と、送信機31が車輪11の最下位置にあるときの第2角度とが設定される。第1角度を原点=0°とすれば、第2角度は180°となる。
【0030】
特定角度送信を行う際に送信制御部35が行う制御について説明する。
図5に示すように、ステップS1において、送信制御部35は、圧力センサ32及び温度センサ33から測定値を取得する。次に、ステップS2において、送信制御部35は、圧力センサ32の測定値及び温度センサ33の測定値を取得すると、予め定められたフレームフォーマットの送信データを生成する。
【0031】
図6に示すように、フレームフォーマットには、プリアンブル、識別コード、IDコード、固定ビット、圧力データ、温度データ、ステータスコード、誤り検出符号、及び、ストップビットが含まれる。圧力データ及び温度データは、タイヤ13の状態を示すタイヤ状態データである。
【0032】
図5に示すように、次に、ステップS3において、送信制御部35は、車両10の速度から、特定角度を決定する。送信制御部35は、まず、加速度センサ34から加速度を取得する。加速度センサ34の加速度は、車両10の速度が速いほど大きくなるため、加速度から車両10の速度を算出することができる。詳細にいえば、送信制御部35の記憶部35bには、タイヤ13の半径、ホイール12のリムの半径が記憶されている。送信制御部35は、加速度センサ34の検出する加速度と、記憶部35bに記憶されているタイヤ13の半径及びホイール12のリムの半径の情報から、車両10の速度を算出する。
【0033】
図7及び図8に示すように、車両10の速度の取り得る範囲を2つの範囲に分割している。そして、各範囲に特定角度を割り当てている。40km/hを閾値として、0km/h以上40km/h未満の速度を第1範囲、40km/h以上の速度を第2範囲とする。第1範囲には第1角度が割り当てられている。第2範囲には第2角度が割り当てられている。また、閾値にヒステリシスを設けて、第1角度→第2角度に切り替わる第1閾値と、第2角度→第1角度に切り替わる第2閾値とを個別に設定している。なお、車両10の速度の取り得る範囲を分割する閾値は、任意の値とすることができる。
【0034】
図8に示すように、第1閾値は第1範囲と第2範囲とを区分する閾値=40km/hであり、第2閾値は第1閾値よりも小さい値である。送信制御部35は、車両10が停止状態から車両10を走行させ、速度が第1閾値以上になる時刻T1までは特定角度を第1角度とする。時刻T1で速度が第1閾値以上になると、送信制御部35は、特定角度を第2角度とする。送信制御部35は、時刻T2で速度が第2閾値を下回るまでは特定角度を第2角度に維持する。送信制御部35は、時刻T2で速度が第2閾値未満になると、特定角度を第1角度とする。
【0035】
送信制御部35は、車両10の速度に応じて、特定角度を決定する。走行状態とは、車両10の速度となる。加速度センサ34の検出値である加速度は、車両10の速度に応じて変化する。従って、加速度センサ34が、走行状態検出部に対応する。車両10の速度は、加速度センサ34の加速度から算出している。従って、走行状態検出部の検出値とは、走行状態検出部により直接検出される値、及び、この値から算出することができる値の両方が含まれる。車両10の速度を示すデータは、送信データには含まれていないため、送信制御部35は、送信データに含まれないデータから特定角度を決定しているといえる。なお、加速度センサ34により検出された加速度及びこの加速度を用いて車両10の速度を算出する送信制御部35が走行状態検出部とみなすこともできる。
【0036】
図5に示すように、次に、ステップS4において、送信制御部35は、ステップS3で決定された特定角度の検出を契機として送信データを送信する。送信機31が特定角度になったことは、加速度センサ34によって検出される加速度によって検出可能である。前述したように、検出軸34aの延びる方向は、車輪11の回転角度に関わらず遠心力の作用する方向と同一方向となっており、加速度センサ34は車輪11の回転角度に関わらず遠心加速度を検出する。一方、重力加速度は常に鉛直方向に作用するため、検出軸34aが鉛直方向を向いていない場合、加速度センサ34は重力加速度の分力を検出する。加速度センサ34によって、検出される加速度は、遠心加速度に重力加速度を加えた加速度となる。
【0037】
ここで、車両10が急加速や、急停止しない限り、車輪11が1回転する間に変化する遠心加速度は極僅かである。したがって、車輪11が1回転する間に変化する加速度は、重力加速度とみなすことができる。そして、この重力加速度の変化から、車輪11の回転角度が特定角度であることを検出することができる。重力加速度のみを考慮した場合、重力加速度は、車輪11が1回転する間に、+1[G]~-1[G]の間で変化する。送信機31が最下位置のときに検出軸34aが鉛直方向を向く場合、送信機31が車輪11の最下位置となったときが+1[G]であり、送信機31が車輪11の最上位置となったときに-1[G]となる。この変化を用いて、送信制御部35は、特定角度の検出を契機として送信データを送信することが可能である。
【0038】
なお、「特定角度」とは、許容範囲を含む車輪11の回転角度である。送信制御部35が加速度を取得する頻度や、加速度センサ34の検出誤差など、種々の要因により、特定角度と、実際に送信データが送信されるときの車輪11の回転角度には誤差が生じる場合がある。「特定角度」とは、特定角度に完全に一致する角度のみを示すものではなく、誤差を加味した許容範囲を含むものといえる。
【0039】
上記した処理により、車両10の速度に応じた特定角度で、送信データは送信されることになる。車両10の速度に応じて、第1角度と第2角度の両方で送信データの送信が行われることになる。
【0040】
次に、受信機50について説明する。
図1に示すように、受信機50は、受信制御部51と、受信回路52と、受信アンテナ56とを備える。受信制御部51には、車両10に搭載された表示器57が接続されている。受信制御部51は受信CPU54及びROMやRAM等から構成される受信記憶部55を含むマイクロコンピュータ等よりなる。受信制御部51は、計時機能を備える。計時機能は、例えば、タイマや、カウンタによって実現される。受信制御部51は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。即ち、受信制御部51は、1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、2)ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは3)それらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0041】
受信回路52は、各送信機31から受信アンテナ56を介して受信された無線信号を復調して、送信機31からの送信データを受信制御部51に出力する。受信回路52は、受信部に対応している。
【0042】
受信制御部51は、受信回路52から出力された送信データに基づき、タイヤ13の状態であるタイヤ13内の圧力及びタイヤ13内の温度を把握する。タイヤ13に異常が生じている場合、受信制御部51は、表示器57に報知を表示する。
【0043】
受信記憶部55は、4つの車輪11にそれぞれ装着された送信機31のIDコードを記憶している。これにより、送信機31は、受信機50と対応付けられている。
ここで、受信した送信データが4つの車輪11のいずれのタイヤに関するものかを特定したい場合がある。例えば、4つの車輪11のうち1つのタイヤ13に生じた圧力異常がいずれのタイヤ13に生じているかを表示器57に表示したい場合や、車輪11の位置毎に対応したタイヤ13の圧力を表示器57に表示したい場合がある。このような場合、受信した送信データが4つの車輪11のうちいずれに関するものなのかを特定する必要がある。言い換えれば、受信制御部51は、各送信機31のIDコードと、車輪11の位置との対応付けを行う必要がある。
【0044】
以下、各送信機31が4つの車輪11のうちいずれに装着されているかを特定する車輪位置特定処理について説明する。車輪位置特定処理は、例えば、車両10の起動状態と停止状態とを切り替えるスタートスイッチによって車両10が起動とされた際に行われる。車両10の起動状態とは、アクセルペダルの操作により車両10が走行可能な状態である。車両10の停止状態とは、アクセルペダルを操作しても車両10が走行しない状態である。
【0045】
図9に示すように、ステップS11において、受信制御部51は、送信データを受信する。次に、ステップS12において、受信制御部51は、車両10の速度と特定角度との対応関係から、受信した送信データが送信された特定角度を把握する。まず、受信制御部51は、ABSコントローラ25から車両10の速度を取得する。受信記憶部55には、送信機31の記憶部35bに記憶されている対応関係と同一の対応関係が記憶されている。即ち、車両10の速度が取り得る値を分割した複数の範囲のそれぞれを特定角度に割り当てた対応関係が記憶されている。前述したように、0km/h以上40km/h未満の速度である第1範囲に第1角度が割り当てられ、40km/h以上の範囲である第2範囲に第2角度が割り当てられている。受信制御部51は、車両10の速度から、送信データが送信された特定角度を把握する。
【0046】
受信制御部51は、ABSコントローラ25から車両10の速度を取得する取得部となる。各回転センサユニット21~24は、車両10の速度を検出する車両側走行状態検出部となる。車両10の速度は、各回転センサユニット21~24の角度検出値から算出している。従って、車両側走行状態検出部の検出値とは、車両側走行状態検出部により直接検出される値、及び、この値から算出することができる値の両方が含まれる。受信制御部51は、ABSコントローラ25を介して各回転センサユニット21~24の検出値を取得しているといえる。なお、回転センサユニット21~24の検出値及びこの検出値を用いて車両10の速度を算出するABSコントローラ25が車両側走行状態検出部とみなすこともできる。各回転センサユニット21~24は送信機31を構成する部材とは異なる部材である。
【0047】
車両10の速度は、送信制御部35及び受信制御部51の両方が把握することができる。従って、送信制御部35及び受信制御部51が共通して把握できる走行状態に応じて、特定角度を決定することで、送信データに角度情報を示すデータを含めなくても、送信データの送信された特定角度を把握することができる。
【0048】
次に、ステップS13において、受信制御部51は、送信データの受信を契機として、各回転センサユニット21~24のパルスカウント値をABSコントローラ25から取得する。ステップS12とステップS13の処理は、ステップS12→ステップS13の順に行われてもよいし、ステップS13→ステップS12の順に行われてもよい。また、ステップS12の処理はステップS13の処理と同時に行われてもよい。
【0049】
次に、ステップS14において、受信制御部51は、各送信機31が4つの車輪のうちいずれに装着されているかを特定する位置特定を行う。位置特定は、送信データを受信する毎に、送信データの受信を契機としてパルスカウント値を取得し収集することで行われる。各車輪11の回転数は、デファレンシャルギアなどの影響によって異なる。このため、車輪11に装着された送信機31の相対位置は車両10の走行に伴い変化する。一方で、送信機31が特定角度で送信データを送信している場合、4つの車輪11のそれぞれの回転角度は、4つの送信機31のうちのいずれかから送信データが送信される回転角度と同期している。従って、各送信機31が特定角度で送信データを送信した場合、送信データの受信を契機としてパルスカウント値を取得すると、各送信機31に対応して、パルスカウント値のばらつきが少ない回転センサユニット21~24が存在する。こうして、送信データを取得する毎に収集したパルスカウント値のばらつきから、各送信機31が4つの車輪のうちいずれに装着されているかを特定することができる。
【0050】
複数の特定角度で送信データを送信した場合、2つの特定角度のうちのいずれの特定角度で送信されたかによって回転センサユニット21~24から取得されるパルスカウント値は異なる。このため、受信制御部51は、送信データが送信された特定角度を把握した上で、送信機31の位置を特定する必要がある。
【0051】
送信機31の位置特定を行う制御態様は、様々なものが考えられる。例えば、第1角度で送信された送信データの受信を契機として取得されたパルスカウント値と、第2角度で送信された送信データの受信を契機として取得されたパルスカウント値とを個別に収集してもよい。また、第1角度で送信された送信データの受信を契機として取得されたパルスカウント値、又は、第2角度で送信された送信データの受信を契機として取得されたパルスカウント値のいずれかに48を加算又は減算してもよい。この場合、第1角度と第2角度との差分に相当するパルスカウント値(48)を加算又は減算することで、1つの特定角度で送信データが送信されたとみなして送信機31の位置特定を行うことができる。この場合、全ての送信データを受信機50で受信できたとすれば、第1角度と第2角度で個別にパルスカウント値を収集する場合の2倍の速度でパルスカウント値を収集することができる。従って、送信機31の位置を特定するのに要する時間を短縮化できる。
【0052】
図10に示すように、左前車輪FLに装着された送信機31に着目し、この送信機31が第1角度及び第2角度で複数回送信データを送信したとする。受信制御部51は、第1角度で送信された送信データの受信を契機として取得されたパルスカウント値と、第2角度で送信された送信データの受信を契機として取得されたパルスカウント値+48の値とを収集する。
【0053】
図10に示す例では、左前車輪FLに対応する第1回転センサユニット21によって検出されるパルスカウント値のばらつきが最も少なくなる。したがって、FLIDの送信機31が左前車輪FLに装着されていると特定することができる。また、受信制御部51は、各送信機31が4つの車輪11のいずれに装着されているかを特定する特定部に対応している。このため、受信制御部51は、FFID、RLID、RRIDの送信機31が4つの車輪11のいずれに装着されているかを特定する。
【0054】
ステップS14の処理を行うことで、受信制御部51は、4つの送信機31が4つの車輪11のいずれに装着されているかを特定する。受信制御部51は、4つのIDコードと車輪11の位置とを対応づけて、受信記憶部55に記憶している。ステップS11~ステップS14の処理は、全ての送信機31と、車輪11の位置との対応関係が特定されるまで、送信データを受信する度に繰り返される。ステップS14の処理により、4つのIDコードと車輪11の位置とが対応付けが完了すると、受信制御部51は車輪位置特定処理を終了する。
【0055】
次に、上記の送信機31、受信機50及びタイヤ状態監視システム30の作用について説明する。
加速度センサ34により検出される加速度は、車両10の速度に応じて変化する。送信機31は、加速度センサ34の加速度から算出した速度に応じて、第1角度と、第2角度とで送信データを送信する。受信制御部51は、ABSコントローラ25から取得した車両10の速度から、送信データが送信された特定角度が第1角度か第2角度かを判定し、送信機31の位置を特定している。複数の特定角度で送信データを送信することで、ヌルポイントの影響を避けることができる。
【0056】
ここで、ヌルポイントの影響を避けつつ、受信機50に送信機31の位置を特定させるために、送信データを第1角度と第2角度とで交互に送信することも考えられる。受信機50は、第1角度と第2角度とで交互に送信データが送信されることを把握できていれば、第1角度で送信された送信データと第2角度で送信された送信データとのそれぞれに対して、パルスカウント値を収集することができる。また、通信環境の影響などで、送信データを受信できず、第1角度あるいは第2角度で送信された送信データを連続して受信する場合もある。この場合であっても、送信データが送信される間隔は把握できているため、送信データの受信間隔が、送信データの送信間隔の2倍程度であれば、同一の特定角度で送信された送信データを2回連続で受信したと把握することができる。
【0057】
しかしながら、複数回連続して、送信データを受信できなかった場合、各送信機31が4つの車輪のうちのいずれに装着されているかの特定が困難になる。これは、受信制御部51の計時機能の精度などに起因して、複数回連続して送信データを受信できなかった後に受信した送信データが第1角度で送信されたものか、第2角度で送信されたかを判断できなくなるためである。
【0058】
これに対し、本実施形態では、車両10の速度の取り得る値を第1範囲と第2範囲に分割し、各範囲に特定角度が割り当てられている。範囲と特定角度との対応関係が送信機31の記憶部35bと受信機50の受信記憶部55とにそれぞれ記憶されている。このため、受信制御部51は、複数回連続して送信データを受信できなかった場合であっても、車両10の速度から送信データが第1角度で送信されたか、第2角度で送信されたかを判断することができる。
【0059】
また、角度情報を示すデータを送信データに含めた場合、角度情報を示すデータに誤りが生じ、かつ、誤り検出符号にも誤りが生じた場合、受信制御部51は送信データの送信された特定角度を誤認識する場合がある。
【0060】
これに対して、本実施形態のように、送信データに含まれない検出値から特定角度を決定することで、送信データの誤りに起因した特定角度の誤認識を防止することができる。
本実施形態の効果について説明する。
【0061】
(1)車両10の速度の取り得る値が第1範囲と第2範囲に分割され、それぞれの範囲に特定角度が割り当てられている。範囲と特定角度との対応関係は、記憶部35bに記憶されている。送信制御部35は、対応関係に応じて第1角度と第2角度で送信データの送信を行う。受信記憶部55には、記憶部35bに記憶されている対応関係と同一の対応関係が記憶されている。従って、受信制御部51は、ABSコントローラ25から取得した車両10の速度と、受信記憶部55に記憶されている対応関係から送信データの送信された特定角度を把握することができる。受信制御部51は、把握した特定角度を用いて、各送信機31が4つの車輪のうちのいずれに装着されているかを特定することができる。送信データに角度情報を示すデータを含めなくても受信制御部51に特定角度を把握させることができるため、送信データに角度情報を示すデータを含める場合に比べて送信データのデータ長を短くすることができる。これにより、送信データの送信による消費電力を低減することができ、バッテリ37の長寿命化を図ることができる。
【0062】
(2)送信制御部35は、加速度センサ34により検出された加速度から算出した車両10の速度に応じて、送信データの送信を行う特定角度を決定する。送信制御部35は、送信データに角度情報を示すデータを含めないため、送信データに角度情報を示すデータを含める場合に比べて送信データのデータ長を短くすることができる。これにより、送信データの送信による消費電力を低減することができ、バッテリ37の長寿命化を図ることができる。
【0063】
(3)走行状態検出部として加速度センサ34が用いられている。加速度センサ34は、車両10の速度に応じて検出値が変化する。従って、加速度センサ34の検出値から特定角度を決定することができる。実施形態では、加速度センサ34により検出される加速度を用いて車輪11の回転角度が特定角度になったことの検出を行っている。従って、車輪11の回転角度が特定角度になったことを検出するための加速度センサ34を、送信データの送信を行う特定角度を決定するための部材として兼用することができる。
【0064】
(4)受信制御部51は、ABSコントローラ25から取得した車両10の速度と、受信記憶部55に記憶されている対応関係から送信データの送信された特定角度を把握することができる。従って、送信データに角度情報を示すデータを含めなくても受信制御部51は、特定角度を把握することができる。送信データに角度情報を示すデータを含める場合に比べて送信データのデータ長を短くすることができる。これにより、送信データの送信による消費電力を低減することができ、バッテリ37の長寿命化を図ることができる。
【0065】
(5)特定角度で送信データの送信を行えない送信機31、言い換えれば、受信機50に送信機31の位置特定を行わせることができない送信機31に特定角度送信機能をアドオンする場合がある。この場合、特定角度を受信機50に把握させるため、送信データに角度情報を含めようとすると、フレームフォーマットを変更する必要がある。これに対して、車両10の速度の取り得る値を分割した範囲に応じた特定角度で送信データの送信を行う場合には、車両10の速度の範囲に特定角度を割り当てた対応関係を送信機31の記憶部35bと受信機50の受信記憶部55両方に記憶することで、送信データの送信された特定角度を受信機50で把握することができる。従って、フレームフォーマットを変更することなく送信機31に特定角度送信機能をアドオンすることができる。
【0066】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・走行状態検出部及び車両側走行状態検出部として、車両10の進行方向に応じて検出値が変化するものを用いてもよい。図1に示すように、車両10は、カーナビゲーション装置61を備える。カーナビゲーション装置61は、GPS衛星から送信されるGPS情報を受信するGPS受信機62と、GPS情報から車両10の位置特定などを行うナビ制御部63と、を備える。ナビ制御部63は、車両10の現在位置と、車両10の過去の位置とを比較することで車両10の進行方向を検出する。
【0067】
図4に示すように、送信機31は、地磁気センサ71を備える。地磁気センサ71は、磁北から水平方向への角度のずれを検出する。この角度のずれが地磁気センサ71の検出値となる。地磁気センサ71の検出値は、車両10の進行方向に応じて変化する。送信制御部35は、地磁気センサ71の検出値から車両10の進行方向を把握することができる。この場合、走行状況は、車両10の進行方向である。
【0068】
送信制御部35は、地磁気センサ71の検出値に応じて、送信データの送信を行う特定角度を決定する。記憶部35bには、車両10の進行方向を特定角度に割り当てた対応関係が記憶されている。例えば、地磁気センサ71の検出値が北及び南に相当する範囲の場合は第1角度、東及び西に相当する範囲の場合は第2角度に割り当てられている。即ち、水平方向360°を4つの範囲に分割し、それぞれの範囲に特定角度を割り当てている。
【0069】
送信制御部35は、特定角度の検出を契機として送信データの送信を行う。受信制御部51は、送信データを受信した時点での車両10の進行方向をカーナビゲーション装置61から取得する。受信記憶部55には、記憶部35bに記憶されている対応関係と同一の対応関係が記憶されている。これにより、受信制御部51は、車両10の進行方向から送信データの送信された特定角度を把握することができる。
【0070】
なお、走行状態検出部としては、送信制御部35が検出値を取得できるように設けられていればよく、例えば、タイヤ13内に配置されていればよい。車両側走行状態検出部としては、送信機31を構成する部材とは異なる部材であり、受信制御部51が検出値を取得できるように、車両10であってタイヤ13外に設けられていればよい。例えば、車両側走行状態検出部は、車両10の車体や、車体に設けられた部材に設けられていればよい。車両側走行状態検出部が車両10に設けられている状態とは、車両側走行状態検出部が車両10とともに移動できる状態であればよい。例えば、車両側走行状態検出部は、車両10の搭乗者が携帯しているGPS装置や、受信機50に内蔵されたGPS装置であってもよい。なお、GPS装置とは、スマートフォン、携帯電話、ポータブルナビなどの携帯情報端末に内蔵されたものでもよい。
【0071】
・車両10の速度に代えて、車輪11の回転周期に応じて特定角度を決定してもよい。車輪11の回転周期とは、車輪11が1回転するのに要する時間である。車輪11の回転周期は、速度が速いほど短くなる。送信制御部35は、重力加速度の周波数(周期)から車輪11の回転周期を把握することができる。車輪が1回転する間に、重力加速度は、+1[G]~-1[G]の間で変化するため、重力加速度の周期と車輪11の回転周期とは一致する。送信制御部35の記憶部35bには、車輪11の回転周期の取り得る値を複数に分割した範囲毎に特定角度が割り当てられた対応関係が記憶されている。送信制御部35は、記憶部35bに記憶されている対応関係から特定角度を決定する。
【0072】
ABSコントローラ25は、パルスの周波数(=1秒間のパルス数)から車輪11の回転周期を算出することができる。受信制御部51は、ABSコントローラ25から車輪11の回転周期を取得することで、車輪11の回転周期を把握する。受信記憶部55には、車輪11の回転周期と特定角度との対応関係が記憶されている。受信制御部51は、対応関係から送信データが送信された特定角度を把握する。
【0073】
同様に、車両10の速度に代えて、車輪11の回転数に応じて特定角度を決定してもよい。車輪11の回転数とは、車輪11の単位時間当たりの回転数であり、例えば、1秒間に車輪が回転する回転数[s-1]である。送信制御部35は、重力加速度の周期から車輪11の回転数を算出することができる。ABSコントローラ25は、パルスの周期から車輪11の回転数を算出することができる。
【0074】
なお、ABSコントローラ25は、車輪11の回転周期及び車輪11の回転数を回転センサユニット21~24毎に個別に算出している。従って、受信制御部51は、車輪11毎に個別に特定角度が第1角度か第2角度かを把握する。詳細にいえば、各回転センサユニット21~24から取得したパルスカウント値が第1角度で得られたものか、第2角度で得られたものかを把握して、送信機31の位置特定を行う。なお、車両10の速度を用いる場合にも、車輪11毎に個別に車両10の速度を算出し、車輪11毎に特定角度が第1角度か第2角度かを把握してもよい。
【0075】
・実施形態において、車両10の速度の取り得る範囲を3つ以上に分割してもよい。例えば、0km/h以上20km/h未満を第1範囲、20km/h以上40km/h未満を第2範囲、40km/h以上60km/h未満を第3範囲、60km/h以上を第4範囲としてもよい。
【0076】
この場合、例えば、第1範囲及び第3範囲に第1角度を割り当て、第2範囲及び第4範囲に第2角度を割り当てる。また、第1範囲に第1角度を割り当て、第2範囲に第2角度を割り当て、第3範囲に第3角度を割り当て、第4範囲に第4角度を割り当ててもよい。即ち、2つの範囲に同一の特定角度を割り当ててもよいし、範囲毎に別々の特定角度を割り当ててもよい。第3角度は、第1角度及び第2角度とは異なる特定角度であり、例えば、90°である。第4角度は、第1角度、第2角度及び第3角度とは異なる特定角度であり、例えば、270°である。
【0077】
・送信制御部35は、重力加速度の周波数から車両10の速度を算出してもよい。重力加速度の周波数は、例えば、重力加速度の周期を用いることで算出することができる。
・実施形態におけるステップS3の処理を行った後であり、ステップS4の処理を行う前に、車両10の速度を再確認してもよい。ステップS3で特定角度を決定してから、ステップS4の処理を行うまでに待機時間が生じる場合がある。この待機時間中に車両10の速度が変化すると、ステップS3で決定された特定角度と、受信制御部51に把握される特定角度が異なるおそれがある。ステップS4の処理を行う直前に車両10の速度を再確認することで、ステップS3の処理で決定された特定角度と、送信データの送信を行う時点での車両10の速度に対応する特定角度とが一致するかを確認する。送信制御部35は、ステップS3の処理で決定された特定角度と、送信データの送信を行う時点での速度に対応する特定角度とが一致していない場合には、送信データの送信を中止してもよい。
【0078】
・上記したように、ステップS3で特定角度を決定してから、ステップS4の処理を行うまでに待機時間が生じる場合がある。このため、受信制御部51は、待機時間を考慮して、送信データの受信を契機として、所定時間前の車両10の速度をABSコントローラ25から取得してもよい。
【0079】
・受信制御部51は、GPS情報から得られる車両10の位置の変化から車両10の速度を算出してもよい。また、受信制御部51は、操舵角、車両10に搭載された加速度センサの検出値、ジャイロセンサの検出値などを用いることで車両10の速度を算出してもよい。
【0080】
・送信制御部35は、加速度センサ34の加速度から車両10の速度を算出しなくてもよい。この場合、加速度センサ34により検出される加速度の取り得る値を複数の範囲に分割して、範囲毎に特定角度を割り当てる。例えば、40km/hに相当する加速度未満の値を第1範囲とし、40km/hに相当する加速度以上の値を第2範囲とする。加速度と車両10の速度とは相間関係があるため、加速度の取り得る値を分割した範囲に特定角度を割り当てた対応関係と、車両10の速度の取り得る値を分割した範囲に特定角度を割り当てた対応関係とは同一の対応関係といえる。従って、受信記憶部55には、実施形態のように、車両10の速度の範囲と特定角度との対応関係が記憶されていればよい。
【0081】
・送信データには、圧力データ及び温度データのいずれかが含まれていればよい。即ち、送信データに含まれるタイヤ状態データは、少なくとも1つあればよい。この場合、送信機31は、状態検出部として、圧力センサ32及び温度センサ33のいずれかを備えていればよい。
【0082】
・送信機31の電力源として、各種発電素子を用いてもよい。電力源として、充電や発電が可能な部材を使用した場合であっても、利用できる電力には限りがある。従って、送信データの送信による消費電力を低減することが好ましく、送信データに角度情報を示すデータを含めずに送信を行うことで、限りある電力を有効に利用することができる。
【0083】
・各実施形態において、車両10は、複数の車輪11を備えたものであればよく、例えば、二輪車であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…車両、11…車輪、13…タイヤ、21,22,23,24…回転センサユニット、30…タイヤ状態監視システム、31…送信機、32…圧力センサ(状態検出部)、33…温度センサ(状態検出部)、34…加速度センサ(走行状態検出部)、35…送信制御部(データ生成部)、35b…記憶部、36…送信回路(送信部)、37…バッテリ(電力源)、50…受信機、51…受信制御部(特定部及び取得部)、52…受信回路(受信部)、55…受信記憶部。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10