IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7002562風力タービンローターブレードおよび風力タービンローターブレードの製造方法
<>
  • 特許-風力タービンローターブレードおよび風力タービンローターブレードの製造方法 図1
  • 特許-風力タービンローターブレードおよび風力タービンローターブレードの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】風力タービンローターブレードおよび風力タービンローターブレードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20220113BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20220113BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F03D80/30
F03D1/06 A
B29C70/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019556366
(86)(22)【出願日】2018-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018060445
(87)【国際公開番号】W WO2018197472
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-12-10
(31)【優先権主張番号】102017108818.0
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Borsigstrasse 26, 26607 Aurich Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィンケ ダニエル
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-531038(JP,A)
【文献】特開2016-084798(JP,A)
【文献】特開2014-201683(JP,A)
【文献】国際公開第2011/080177(WO,A3)
【文献】米国特許出願公開第2015/0023792(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0348654(US,A1)
【文献】特表2013-511655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/30
F03D 1/06
F03D 80/00
B29C 70/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンローターブレード(200)であって、
ローターブレード先端部(210)およびローターブレード根元部(220)、ならびに避雷システム(300)、
を備えており、
前記避雷システム(300)が、避雷導体(310)と、少なくとも1つの受雷用レセプタ(330)と、を有し、
前記風力タービンローターブレード(200)の表面上で前記少なくとも1つの受雷用レセプタ(330)の周囲の領域には、塗料の形における加熱可能塗装(340)が設けられており、前記加熱可能塗装(340)が前記少なくとも1つの受雷用レセプタ(330)によって前記避雷導体(310)にガルバニックに結合されており、
前記加熱可能塗装(340)が、アクリレートベースに基づいており、カーボンナノ材料および黒鉛を有する、
風力タービンローターブレード(200)。
【請求項2】
前記塗料の厚さが、40μmと1mmの間である、
請求項1に記載の風力タービンローターブレード(200)。
【請求項3】
風力タービンローターブレード(200)を製造する方法であって、
前記風力タービンローターブレードの外郭を繊維複合材料から製造することと、
少なくとも1つの避雷導体(310)および少なくとも1つの受雷用レセプタ(330)を設けることと、
前記風力タービンローターブレードの表面上で、前記少なくとも1つの受雷用レセプタ(330)の周囲の領域に塗料の形における加熱可能塗装(340)を塗布することと、
前記加熱可能塗装(340)を前記少なくとも1つの受雷用レセプタ(330)によって前記少なくとも1つの前記避雷導体(310)にガルバニックに結合することと、
を含み、
前記加熱可能塗装(340)が、アクリレートベースに基づいており、カーボンナノ材料および黒鉛を有する、方法。
【請求項4】
風力タービンローターブレード(200)の避雷システムの一部として加熱可能塗装(340)を使用することであって、前記加熱可能塗装が、前記風力タービンローターブレードの表面上で、少なくとも1つの受雷用レセプタ(330)の周囲の領域に塗料の形において塗布され、避雷導体に前記少なくとも1つの受雷用レセプタ(330)によってガルバニックに結合され、
前記加熱可能塗装(340)が、アクリレートベースに基づいており、カーボンナノ材料および黒鉛を有する、加熱可能塗装の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンローターブレードと、風力タービンローターブレードを製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンのローターブレードは、多数の異なる形状において知られている。風力タービンのナセルの高さおよびローターブレードの長さの理由から、風力タービンのローターブレードは、避雷要件に適合しなければならない。
【0003】
優先権を主張する独国特許出願に関して、独国特許商標庁は、次の文書、すなわち、特許文献1、特許文献2、および特許文献3を調査した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国実用新案第202013007659号明細書
【文献】欧州特許公開第1187988号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2806160号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、改善された雷保護を有する風力タービンローターブレードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の風力タービンローターブレードによってと、請求項4に記載の風力タービンローターブレードを製造する方法によって、達成される。
【0007】
したがって、ローターブレード根元部およびローターブレード先端部を有する風力タービンローターブレードを提供する。本ローターブレードは、ローターブレード根元領域へのガルバニック(電気的:galvanic)接続を有する避雷導体(lightning protection conductor)を有する避雷システム、を有する。避雷システムは、加熱可能塗料の形における加熱可能塗装が塗布されている、ローターブレード表面の領域、を有し、この領域は、加熱可能塗料における落雷を適切に消散できるように、避雷導体にガルバニックに(電気的に:galvanically)結合されている。
【0008】
本発明の一態様によれば、本風力タービンローターブレードは、同様に避雷導体にガルバニックに結合されている少なくとも1つの受雷用レセプタ(lightning receptor)を有する。この場合、少なくとも1つの受雷用レセプタの周囲の領域には、加熱可能塗料またはエナメルが設けられている。言い換えれば、受雷用レセプタの周囲の表面は、加熱可能塗料またはエナメルを有する。加熱可能塗料は、特に受雷用レセプタの領域における表面の損傷を防止する目的で、落雷を受雷用レセプタに伝える役割を果たす。
【0009】
本発明の一態様によれば、加熱可能塗料は、カーボンナノ材料および黒鉛を有する。
【0010】
本発明の一態様によれば、ローターブレードの表面を保護するために、ローターブレードの表面に、本発明に従って加熱可能塗料を設けることができる。このようにして、本ローターブレードの非導電性部分を避雷システムに統合することができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、すでに存在する避雷システムをさらに改善する目的で、ローターブレードの表面に少なくとも部分的に後から加熱可能塗料を塗布することもできる。
【0012】
本発明の一態様によれば、塗布された加熱可能塗料を、例えば避雷レセプタを介して避雷システムに結合することができる。
【0013】
加熱可能塗装は、ローターブレード先端部とローターブレード根元部との間に帯状に設けることができる。加熱可能塗装は、ローターブレード根元部の領域における避雷システムの残り部分に結合することができる。
【0014】
さらに本発明は、風力タービンローターブレードを製造する方法にも関する。ローターブレードが繊維複合材料から製造され、避雷システムが組み込まれる。この場合、ローターブレードの内部に、特に雷消散導体(lightning dissipation conductor)が設けられる。避雷システムの一部としての加熱可能塗料が、ローターブレードの表面に塗布され、避雷導体にガルバニックに結合される。
【0015】
さらに本発明は、風力タービンローターブレードの避雷システムの一部として加熱可能塗装を使用することまたは加熱可能塗料にも関する。
【0016】
特に、最大100℃まで使用するための、カーボンナノ材料および黒鉛を有するアクリルベースの加熱可能塗装が設けられる。
【0017】
加熱可能塗料の厚さは、40μm~1mmの範囲内とすることができる。
【0018】
本発明のさらなる構造・構成は、従属請求項の主題である。
【0019】
以下では、本発明の利点および一例としての実施形態を、図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る風力タービンの概略図を示している。
図2】本発明に係る風力タービンローターブレードの概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る風力タービンの概略図を示している。風力タービン100は、タワー102と、タワー102の上のナセルとを有する。ナセル104には、3枚のローターブレード200およびスピナー110を有する空力ローター106が設けられている。空力ローター106は、風力タービンの運転中に風によって回転し、したがって空力ローター106に直接または間接的に結合されている発電機の回転子または回転子部材をさらに回転させる。この発電機はナセル104の中に配置されており、電気エネルギーを発生させる。ローターブレード200のピッチ角は、各ローターブレード200のローターブレード根元部108bにおけるピッチモーターによって変えることができる。
【0022】
風力タービンは避雷システムをさらに有し、この避雷システムは、3枚のローターブレード200の1枚に落ちた雷が適切に消散されるようにする。この目的のため、ローターブレードの内部に雷消散導体が設けられており、風力タービンの内部にさらなる雷消散導体設備(lightning dissipation conductor arrangement)が設けられている。
【0023】
図2は、本発明に係る風力タービンローターブレードの概略図を示している。図2は、ローターブレード先端部210およびローターブレード根元部220を有するローターブレード200を示している。本ローターブレードは、避雷システム300を有する。避雷システム300は、特に、例えばローターブレードの内部における避雷導体310と、オプションとして少なくとも1つの受雷用レセプタ330を有する。ローターブレード先端部210は、避雷導体設備(lightning protection conductor arrangement)311によって避雷導体310にガルバニックに結合されているさらなる受雷用レセプタ320を、オプションとして有することができる。避雷システム300は、ローターブレードの表面上の加熱可能塗料またはエナメルまたは加熱可能塗装340をさらに有する。落雷を適切に消散させ得るようにする目的で、加熱可能塗装340は避雷導体310にガルバニックに結合されている。
【0024】
本発明の一態様によれば、加熱可能塗装または加熱可能塗料340は、受雷用レセプタ330の領域に設けられている。この場合、避雷導体310への加熱可能塗装340のガルバニック結合も、受雷用レセプタによって達成される。
【0025】
加熱可能塗装または加熱可能塗料は、アクリレートベースで製造することができ、カーボンナノ材料および黒鉛を含むことができる。
【0026】
このような加熱可能塗料の例は、加熱可能塗料Carbo e-Therm ACR-100 1Wである。この塗料の密度は1.08g/cmである。色は無煙炭色とすることができる。固形分は39~41%(プラスチック+ポリマー)である。貯蔵寿命は6ヶ月である。ベース溶剤は水である。最低造膜温度は約14℃である。pH値は約7~8である。粘性(剪断率100/秒)は700~800mPasである。
【0027】
乾燥した層の製品特性は、以下、すなわち、使用温度範囲:-18℃~100℃、比抵抗:1050~1100Ωμm、層抵抗:R/m、5.5Ωから(層厚200μmの場合)、推奨最小層厚:40μm、である。
【0028】
塗料の厚さは、30μm~2mmの範囲内、好ましくは40μm~1mmの範囲内である。
図1
図2