(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】セルロースII型ナノ結晶粒子及びその調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
C08B 15/08 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
C08B15/08
(21)【出願番号】P 2019556409
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2017118915
(87)【国際公開番号】W WO2018126959
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-07-12
(31)【優先権主張番号】201710000911.8
(32)【優先日】2017-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710794872.3
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513194997
【氏名又は名称】中国科学院金属研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】張 勁松
(72)【発明者】
【氏名】顔 雨坤
(72)【発明者】
【氏名】周 揚韜
(72)【発明者】
【氏名】劉 志宇
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-171901(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1369508(CN,A)
【文献】特開平06-082435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0287208(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 15/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶度≧80%、数平均分子量が1200~2500、多分散度Mw/Mn≦1.30であり、
セルロース糖鎖末端から構成された該セルロースII型ナノ結晶粒子の外表面は(001)晶帯軸に垂直する結晶面、又は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、該外表面の長さと幅は該セルロースII型ナノ結晶粒子の長さLと幅Wを限定し、該外表面に垂直するサイズは該セルロースII型ナノ結晶粒子の高さHを限定し、
糖鎖末端から構成された前記(001)晶帯軸に垂直する結晶面又は前記(-112)晶帯軸に垂直する結晶面に、活性アルデヒド基が存在していることを特徴とするセルロースII型ナノ結晶粒子
であって、以下の調製方法によって調整されたことを特徴とするセルロースII型ナノ結晶粒子:
セルロース含有原料を溶解させ、セルロース溶液を得、該セルロース溶液を貧溶媒と混合させ、溶解したセルロースを貧溶媒に析出させ、非結晶化再構築したセルロースを得る工程1と、
工程1で調製した非結晶化再構築したセルロースを水/有機溶媒の混合溶液に加え、無機酸を加えて酸性度を調整し、加熱還流して反応させ、前記セルロースII型ナノ結晶粒子を得る工程2と、
を含み、
前記セルロース含有原料は、セルロース原料を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させて得た精製セルロース;廃紙;又は綿であり、
前記有機溶媒は、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンの一種又は二種以上であり、
前記無機酸は、塩酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、臭化水素酸の一種又は二種以上であり、
前記無機酸の濃度は0.01-5mol/Lであり、
工程1において、セルロース含有原料を溶解するための溶媒は、8.3wt%NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなり、
工程1において、前記貧溶媒は、炭素数が4以下の低分子アルコールであることを特徴とする調製方法により調製された、セルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項2】
多分散度Mw/Mn≦1.20であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項3】
多分散度Mw/Mn≦1.10であることを特徴とする請求項2に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項4】
数平均分子量が1500~2200であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項5】
数平均分子量が1600~2000であることを特徴とする請求項4に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項6】
前記セルロースII型ナノ結晶粒子の格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項7】
前記セルロース糖鎖末端から構成された該セルロースII型ナノ結晶粒子の外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、該セルロースII型ナノ結晶粒子の長さLと幅Wがいずれも3nm~20nmの間であり、高さHが3nm~10nmの間であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項8】
前記セルロース糖鎖末端から構成された該セルロースII型ナノ結晶粒子の外表面は(001)晶帯軸に垂直する結晶面であり、該セルロースII型ナノ結晶粒子の長さLと幅Wがいずれも15nm~200nmの間であり、高さHが2nm~10nmの間であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項9】
長さLと幅Wがいずれも3nm~15nmの間であり、高さHが3nm~8nmの間であることを特徴とする請求項7に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項10】
長さLと幅Wがいずれも3nm~10nmの間であり、高さHが3nm~6nmの間であることを特徴とする請求項9に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項11】
結晶度≧90%であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項12】
結晶度≧95%であることを特徴とする請求項11に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項13】
前記セルロースII型ナノ結晶粒子が単結晶粒子であることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項14】
セルロース含有原料を溶解させ、セルロース溶液を得、該セルロース溶液を貧溶媒と混合させ、溶解したセルロースを貧溶媒に析出させ、非結晶化再構築したセルロースを得る工程1と、
工程1で調製した非結晶化再構築したセルロースを水/有機溶媒の混合溶液に加え、無機酸を加えて酸性度を調整し、加熱
還流して反応させ、前記セルロースII型ナノ結晶粒子を得る工程2と、
を含み、
前記セルロース含有原料は
、セルロース原料を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させて得た精製セルロース
;廃紙;又は綿であり、
前記有機溶媒は、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンの一種又は二種以上であり、
前記無機酸は、塩酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、臭化水素酸の一種又は二種以上であり、
前記無機酸の濃度は0.01-5mol/Lであ
り、
工程1において、セルロース含有原料を溶解するための溶媒は、8.3wt%NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなり、
工程1において、前記貧溶媒は、炭素数が4以下の低分子アルコールであることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子の調製方法。
【請求項15】
工程1において、前記セルロース含有原料が植物、動物、藻類、細菌から分離した精製セルロース又はセルローススラリーであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程2において、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、エチレングリコール、グリセロール、アセトンの一種又は二種以上である、又は
前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン及び/又は1,4-ジオキサンである、又は
前記有機溶媒は、アセトン及び/又は酢酸エチルであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
工程2において、前記無機酸の濃度は0.1-2mol/Lであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
工程2で得られたセルロースII型ナノ結晶粒子を洗浄した後にウェットのままで保存することを特徴とする請求項14~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記セルロース原料の全重量に対するセルロースII型ナノ結晶粒子の収率は80%を超えることを特徴とする請求項14~
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記セルロース原料の全重量に対するセルロースII型ナノ結晶粒子の収率は90%を超えることを特徴とする請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
触媒キャリア又は複合材料補強相として用いられることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子。
【請求項22】
前記セルロースII型ナノ結晶粒子は、触媒キャリア又は複合材料補強相として用いられることを特徴とする請求項14~
20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースナノ結晶の分野に関し、より具体的にセルロースII型ナノ結晶粒子及びその調製方法と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースナノ結晶は最近数十年で広く研究されてきたハイエンドセルロース類材料であり、生分解性、生体適合性、高い比表面積、高い剛性率高弾性率、強い構造や形態制御性、表面修飾可能性などの特有の物理、化学および生物学性質を有し、材料、軽工業、化学工業、食品、医薬、保健、環境保護、情報、エネルギー等の分野で広い応用可能性がある。
【0003】
現在では、セルロースナノ結晶は二種類の結晶構造を有し、一種類がセルロースI型であり、もう一種類がセルロースII型である。従来のセルロースII型ナノ結晶は主に以下の三つの方法で得られる。第一の方法では、セルロース原料をマーセル化し、そして酸触媒加水分解処理を行い、直径50nm~200nmの球状セルロースII型ナノ結晶を得る。第二の方法では、まず、酸加水分解法でセルロースI型ナノ結晶を得て、そして水酸化ナトリウム溶液処理により、幅が10nmを超え、長さが200nmを超える棒状又は針状セルロースII型ナノ結晶を得る。第三の方法では、氷浴の条件で、濃硫酸を徐々にセルロースの水分散液に滴下し、そして加熱反応させて透明な加水分解液を得、さらに水で加水分解液を洗浄して加水分解セルロースを晶析させ、幅5nm~10nm、長さ100nm超の棒状セルロースII型ナノ結晶を得る。前者の二種類の方法は、本質的に抽出であるが、第三種類の方法は、本質的にセルロース原料分解後の小分子セルロースの結晶化再構築である。上記の三種類のセルロースII型ナノ結晶調製方法は以下の欠点がある。
【0004】
第一に、セルロース原料の分解過程において、高濃度、高倍数(酸液とセルロース原料との質量比)の硫酸又は塩酸を使用する必要がある。硫酸を採用する場合、酸液濃度が65%に達し、セルロースと酸液との質量比が1:8~1:20であり、加水分解反応温度が45℃である。塩酸を採用する場合、塩酸濃度が2.5~6mol/Lであり、セルロースと酸液との質量比が1:20~1:60であり、加水分解反応温度が70~110℃である。高倍数、高濃度の強酸の使用は、設備を厳しく腐食するだけではなく、無害化処理を必要とする工業廃水が大量に発生する(1質量部のナノ結晶製品を得るために、数百倍乃至数千倍、ひいては数万倍の質量の工業廃水が生じる)。これらの工業廃水の無害化処理にかかる高額な費用は間違いなく従来のセルロースナノ結晶の生産コストが高いことの重要な要因である。
【0005】
第二に、セルロースナノ結晶の表面性質は制御しにくい。表面性質はセルロースナノ結晶の品質を示すための肝心な指標であり、表面性質の制御可能性は、複合材料への応用及び様々な機能化派生物の開発にとって非常に重要である。多くの測定結果はいずれも、従来の調製方法で得られた棒状、針状、ウィスカー状、球状のセルロースナノ結晶は完全な単結晶ではなく、若干の微小セルロース結晶と非晶質セルロースが混合してなる、内部に多くの結晶体欠陥が存在する多結晶構造であることを示す。このような多結晶構造について、物質材料比、温度、酸性度、時間等の制御可能な条件を精確に制御することで、セルロースナノ結晶サイズとアスペクト比の制御を実現できるとしても、製品の結晶度、結晶的欠陥を精確に制御できないため、ナノ結晶表面性質の制御不可能性は不可避となる。
【0006】
セルロースナノ結晶は発見されてから今まで70年近くになり、期待される応用可能性も示したが、依然として調製コストと製品品質の二つの課題に直面しているため、現在でもセルロースナノ結晶の応用は依然として研究の段階に止まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、セルロースII型ナノ結晶粒子及びその調製方法と応用を提供することにあり、セルロースII型ナノ結晶粒子は、結晶度が高く、分子量が小く、分子量分布が狭く、サイズ分布が狭く、表面コンホメーションが明確であり、表面化学修飾可能性が大きく、触媒キャリア、複合材料補強相等の用途に適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明思想
本発明者は、従来技術に存在する以上の2つの技術課題を解決するために、構造の緩い非晶質セルロースが加水分解しやしく、単結晶の表面構造が明確であり且つ性質が制御しやすい等の特徴を生かし、有機溶媒の多糖分子結晶挙動に対する制御効果を合わせて、新たなセルロースII型ナノ結晶粒子の調製方法(セルロース原料をまず非結晶化再構築し、さらに結晶化酸分解を行う)を創出し、セルロースナノ結晶材料の効率的、かつ清潔な生産、および品質制御を実現する。
【0009】
本発明の技術形態
第一の局面では、本発明は、結晶度≧80%であり、数平均分子量が1200~2500、多分散度Mw/Mn≦1.30であるセルロースII型ナノ結晶粒子を提供する。
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その多分散度Mw/Mn≦1.20である。
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その多分散度Mw/Mn≦1.10である。
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その数平均分子量が1500~2200である。
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その数平均分子量が1600~2000である。
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、該セルロースII型ナノ結晶粒子の格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°である。
【0010】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、セルロース糖鎖末端から構成された該セルロースII型ナノ結晶粒子の外表面は、(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面、又は(-1 1 2)晶帯軸に垂直する結晶面であり、該外表面の長さと幅は、該セルロースII型ナノ結晶粒子の長さLと幅Wを限定し、該外表面に垂直するサイズは、該セルロースII型ナノ結晶粒子の高さHを限定している。
【0011】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、糖鎖末端から構成された前記(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面又は前記(-1 1 2)晶帯軸に垂直する結晶面には、活性アルデヒド基が存在している。
【0012】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、前記セルロース糖鎖末端から構成された該セルロースII型ナノ結晶粒子の外表面は、(-1 1 2)晶帯軸に垂直する結晶面であり、該セルロースII型ナノ結晶粒子の長さLと幅Wがいずれも3nm~20nmであり、高さHが3nm~10nmである。
【0013】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、前記セルロース糖鎖末端から構成された該セルロースII型ナノ結晶粒子の外表面は、(001)晶帯軸に垂直する結晶面であり、該セルロースII型ナノ結晶粒子の長さLと幅Wがいずれも15nm~200nmであり、高さHが2nm~10nmである。
【0014】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その長さLと幅Wがいずれも3nm~15nmであり、高さHが3nm~8nmである。
【0015】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その長さLと幅Wがいずれも3nm~10nmであり、高さHが3nm~6nmである。
【0016】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その結晶度≧90%である。
【0017】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その結晶度≧95%である。
【0018】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その収率はセルロース原料の全重量に対して、80%を超えている。
【0019】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、その収率はセルロース原料の全重量に対して、90%を超えている。
【0020】
該セルロースII型ナノ結晶粒子の好ましい実施形態では、該セルロースII型ナノ結晶粒子が単結晶粒子である。
【0021】
第二の局面では、本発明は、以下の工程を含む、本発明の第一局面のセルロースII型ナノ結晶粒子の調製方法を提供する。
工程1:セルロースを含有する原料を溶解させ、セルロース溶液を得る。該セルロース溶液を貧溶媒と混合させ、溶解したセルロースを貧溶媒に析出させ、非結晶化再構築したセルロースを得る。
工程2:工程1で調製された非結晶化再構築したセルロースを水/有機溶媒の混合溶液に入れ、無機酸を加えて酸性度を調整し、低濃度酸性条件で調製することを実現でき、加熱反応により前記セルロースII型ナノ結晶粒子を得る。
【0022】
該方法の好ましい実施形態では、工程1において、前記セルロース含有原料は、植物、動物、藻類、細菌から分離した精製セルロース又はセルローススラリーである。
【0023】
該方法の好ましい実施形態では、工程1において、セルロース含有原料を溶解するための溶媒は、水酸化ナトリウム/尿素/水、水酸化リチウム/尿素/水、水酸化ナトリウム/チオ尿素/水、水酸化リチウム/チオ尿素/水、N-メチルモルホリン-N-酸化物/水、N,N-ジメチルアセトアミド/LiCl、N,N-ジメチルホルムアミド/LiBrの一種又は二種以上から選ばれる。
【0024】
該方法の好ましい実施形態では、工程1において、前記貧溶媒は、水、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、アルカン類の溶媒から選ばれる一種又は二種以上である。
【0025】
該方法の好ましい実施形態では、工程1において、前記貧溶媒は、水、アルコール、ケトンの一種又は二種以上である。
【0026】
該方法の好ましい実施形態では、工程1において、前記貧溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、エチレングリコール、グリセロール、アセトンの一種又は二種以上である。
【0027】
該方法の好ましい実施形態では、工程2において、前記有機溶媒は、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドの一種又は二種以上である。
【0028】
該方法の好ましい実施形態では、工程2において、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、エチレングリコール、グリセロール、アセトンの一種又は二種以上である。
【0029】
該方法の好ましい実施形態では、工程2において、前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン及び/又は1,4-ジオキサンである。
【0030】
該方法の好ましい実施形態では、前記有機溶媒は、アセトン及び/又は酢酸エチルである。
【0031】
該方法の好ましい実施形態では、工程2において、前記無機酸は、塩酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、臭化水素酸の一種又は二種以上である。
【0032】
該方法の好ましい実施形態では、工程2において、前記無機酸の濃度が0.01~5mol/Lである。
【0033】
該方法の好ましい実施形態では、工程2において、前記無機酸の濃度が0.1~2mol/Lである。
【0034】
該方法の好ましい実施形態では、工程2で得られたセルロースII型ナノ結晶粒子を洗浄した後にウェットのままで保存する。
【0035】
第三の局面では、本発明は、触媒キャリア、複合材料補強相等として用いられることを特徴とする本発明の第一局面に記載のセルロースII型ナノ結晶粒子又は本発明の第二局面に記載の方法により調製されたセルロースII型ナノ結晶粒子の用途を提供する。
【発明の効果】
【0036】
1.本発明は、以上の技術形態を採用することにより、少なくとも以下の技術効果を部分的に実現した。第一、本発明の方法は、まずセルロース原料を非結晶化再構築し、それを構造の緩い、分解しやすい非晶質セルロースに転化し、そしてさらに酸触媒結晶化分解を行うため、分解の難度を大幅に下げ、従来プロセスの高濃度、高倍数強酸に対する依存を解消し、分解工程が低濃度酸性条件で行えるようになり、強酸の使用量を大幅に減少させることにより、高濃度強酸の設備に対する腐食および大量の廃水処理によるコスト問題を解決した。第二、有機溶媒の多糖分子結晶挙動に対する制御効果を利用することにより、高結晶度、表面コンホメーションが明確であり、性質が制御可能なセルロースII型ナノ結晶粒子を得られるとともに、少なくともいくつかの実施形態において、セルロースの過剰分解も避け、高い収率を実現し、これが最高で90%以上に達する。
【0037】
2.それだけではなく、いくつかの好ましい実施形態では、本発明はさらに以下の2つの予期されなかった効果を得られた。第一、本発明で調製されたセルロースII型ナノ結晶粒子製品は結晶構造が非常に完全であり、HRTEMにてセルロース晶体の原子像構造をはっきり観察できることは、セルロースナノ結晶粒子の表面コンホメーションの精確な解釈および表面性質による派生応用の開発にとって重大な意味を持っている;第二、本発明で調製されたセルロースII型ナノ結晶粒子は、暴露面に大量の活性ヒドロキシル基が存在しているだけではなく、本発明者はさらに、セルロース糖鎖末端から構成された特定の暴露面に大量の高活性のアルデヒド基が存在していることを見出した。一方、伝統的なセルロースナノ結晶表面では活性のヒドロキシル官能基しか存在していない。このような二活性官能基を有する新規構造は、セルロースナノ結晶製品の後続応用の開拓に、より大きなフレキシビリティと可能性を与えた。
【0038】
3.本発明で提案された技術形態は、結晶度が高く、分子量が小さく、分子量分布が狭く、サイズ分布が狭く、表面コンホメーションが明確であり、表面化学修飾可能性が大きい等を主な特徴とするセルロースII型ナノ結晶粒子を調製することに成功した。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明にかかる方法で工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースのXRD回折パターンである。図において、横軸2thetaは回折角2θ(度)を示す。縦軸Indensityは強度(a.u.)を示す。
【
図2】
図2は、本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子のXRD回折パターンである。図において、横軸2thetaは回折角2θ(度)を示す。縦軸Indensityは強度(a.u.)を示す。
【
図3】
図3は、本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子のTEM写真である。
【
図4】
図4は、
図3で示されるセルロースII型ナノ結晶粒子のTEM写真の部分拡大写真である。その中で、A図は、低倍数でのセルロースII型ナノ結晶粒子の高度に分散した写真である。B図は、高解像度TEMでセルロースII型ナノ結晶粒子の露出結晶面の結晶面パラメータの計算及び計算結果による模擬図である。C図は、一つのセルロースII型ナノ結晶粒子の高解像度TEM拡大図である。D図は、一つのセルロースII型ナノ結晶粒子の高解像度TEM拡大図である。
【
図5】
図5は、
図3で示されるセルロースII型ナノ結晶粒子のTEM写真の他の部分拡大写真である。
【
図6】
図6は、
図3で示されるセルロースII型ナノ結晶粒子的TEM写真の他の部分拡大写真である。
【
図7】
図7は、本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子の他のTEM写真である。
【
図8】
図8は、
図7で示されるセルロースII型ナノ結晶粒子のTEM写真の部分拡大写真である。
【
図9】
図9は、GPC方法により本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子を測定する過程において、該ナノ粒子がカルボキシメチル基に変性された後の変性粒子のGPC測定図である。図において、横軸R.T.は保留時間(min)を示す。縦軸Indensityは強度(a.u.)を示す。
【
図10】
図10は、本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子が水中に分散している懸濁液写真である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの具体的な実施形態は本発明の保護範囲を制限するものではない。本実施形態で使用する原料は既知の化合物であり、市販のものであってもよい。
【0041】
1.セルロースII型ナノ結晶粒子の調製方法
セルロース含有原料
本発明において、「セルロース含有原料」又は「セルロース原料」は任意の物理状態のセルロースを含む材料であってもよく、好ましくは植物、動物、藻類、細菌から分離される精製セルロース又はセルローススラリーであり、好ましくは植物由来の精製セルロース又はセルローススラリーである。本発明において、「植物」、「動物」、「藻類」、「細菌」はいずれも本分野における通常の意味であり、例えば植物はコケ植物、シダ類植物、種植物など、例えば、木、竹、綿、草類、麻類などを含んでもよい。
【0042】
本発明において、「精製セルロース」とは、セルロース原料を予備処理して得られたセルロース含量が向上したセルロース含有材料であり、セルロース原料の予備処理又は精製は本分野の公知の技術を採用でき、例えば、最も一般的なセルロース原料の精製プロセスは、セルロース原料(例えば、穀稈、竹など)を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させるプロセスである。
【0043】
本発明において、「セルローススラリー」とは、スラリー形のセルロースを含む原料、例えば、パルプ、竹パルプ、綿パルプ、藁パルプ、麻パルプ等であり、その調製方法も本分野で公知のものである。
【0044】
工程1:セルロース原料の非結晶化再構築
本発明において、「非結晶化再構築」とは、セルロース原料における元の結晶部分を破壊し、構造の緩い非結晶化再構築したセルロースに転化する過程である。
【0045】
該工程において、非結晶化再構築の第一歩は、セルロース含有原料を溶解させ、セルロース溶液を得ることである。用いられる溶媒は従来技術でセルロース含有原料を溶解するための任意の溶媒であってもよく、水酸化ナトリウム/尿素/水、水酸化リチウム/尿素/水、水酸化ナトリウム/チオ尿素/水、水酸化リチウム/チオ尿素/水、N-メチルモルホリン-N-酸化物/水、N,N-ジメチルアセトアミド/LiCl,N,N-ジメチルホルムアミド/LiBrから選ばれる一種又は数種であることが好ましい。
【0046】
溶解した後、該セルロース溶液を貧溶媒と混合させ、溶解したセルロースを貧溶媒に析出させ、非結晶化再構築したセルロースを得る。用いられる貧溶媒は従来技術でセルロースをセルロース溶液から析出させる任意の貧溶媒であってもよく、好ましくは水、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、アルカン類の溶媒から選ばれる一種又は数種であり、より好ましくは水、アルコール、ケトンの一種又は数種であり、さらに好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、エチレングリコール、グリセロール、アセトンの一種又は数種であり、セルロース溶液を貧溶媒と混合することは、本分野における任意の液液混合の方式で行うことができ、かつ任意の補強混合の方式(例えば攪拌など)を採用してもよく、セルロース溶液を貧溶媒に加える、又は貧溶媒をセルロース溶液に加えることにより実現する。
【0047】
さらに、該非結晶化再構築したセルロースが析出した後、必須ではないが、該非結晶化再構築したセルロースを濾過してもよく、適当な洗浄液体(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノールなど)で洗浄し、凍結乾燥させ、非結晶化再構築したセルロースが得られ、後続の工程で使用する。
【0048】
工程2:非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解
本発明において、「結晶化酸分解」とは、非結晶化再構築したセルロースを有機溶媒と水との混合溶液系において、酸触媒分解反応を行い、非結晶化再構築したセルロースを分解過程で再結晶させてセルロースナノ結晶を形成する過程である。
【0049】
該工程において、析出した非結晶化再構築したセルロースを有機溶媒と水との混合溶液に加え、そして該溶液中に適量な無機酸を加えて酸性度を調整し、適当な温度に加熱し、酸触媒分解反応を行い、本発明のセルロースII型ナノ結晶粒子を含む懸濁液を得る。
【0050】
該工程における有機溶媒の選択について、本分野の慣例的な技術知識であり、例えば、好ましくはアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランおよび1,4-ジオキサンから選ばれる一種又は数種であり、より好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、エチレングリコール、グリセロール、アセトンから選ばれる一種又は数種であり、他の実施形態において、該有機溶媒はテトラヒドロフラン又は1,4-ジオキサンから選ばれ、さらに他の実施形態において、該有機溶媒はアセトン又は酢酸エチルから選ばれる。
【0051】
該工程における無機酸の選択についても、本分野の慣例的な技術知識であり、例えば、セルロースを分解できる任意の種類の無機酸であってもよく、好ましくは塩酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、臭化水素酸から選ばれる一種又は数種であり、使用される無機酸の濃度については制限がない。非晶質セルロースの構造が緩く、分解しやすいため、該工程ではマイルドなプロセス条件を採用してもよく、例えば、該工程で用いられる無機酸の濃度が好ましくは0.01~5mol/Lであり、より好ましくは0.05~3mol/Lであり、より好ましくは0.1~2mol/Lであり、最も好ましくは0.1~1mol/Lである。
【0052】
さらに、本発明のセルロースII型ナノ結晶粒子を含む懸濁液を得た後、必須ではないが、該懸濁液をアルカリで中和してもよく、固液分離(例えば、膜分離、遠心分離など)の手段によりセルロースII型ナノ結晶粒子を分離し、脱イオン水で洗浄した後、ウェットのままで長期保存し、その分散性を保つ。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子を調製するための方法の収率は、セルロース原料全量で計算すると、80%を超え、好ましくは90%以上である。
【0054】
2.セルロースII型ナノ結晶粒子
本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子は80%を超える、好ましくは90%を超える、より好ましくは95%を超える、ひいては96%の高い結晶度を有する。本発明において、結晶度は、広角X線回折法により本分野の公知の分析方法で測定して得られたものである。
【0055】
本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子の数平均分子量が1200~2500範囲内であり、好ましくは1500~2200範囲内であり、より好ましくは1600~2000範囲内である。分子量分布が極狭く、多分散度Mw/Mn≦1.30、好ましくはMw/Mn≦1.20、より好ましくはMw/Mn≦1.10である。本発明において、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及び多分散度Mw/Mnはいずれも以下の方法より測定したものである。「筍殻によるカルボキシメチルセルロースの調製」(中国語:
)、賀楊ら、化工進展、2013年第32卷第10期に記載の方法により、本発明で得られたセルロースII型ナノ結晶粒子をカルボキシメチルセルロースナトリウムに転化し、ハイドロゲル排除クロマトグラフィーにより、デキストランを標準としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの分子量を測定し、そして慣例的な計算により得られる。
【0056】
ある実施形態において、XRD回折法測定により、本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子の格子定数は、a=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°である。
【0057】
ある実施形態において、高解像度TEM測定により、本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子は二種類の粒状形態を含み、一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、該外表面の長さと幅は該セルロースII型ナノ結晶粒子の長さLと幅Wを限定し、該外表面に垂直するサイズは該セルロースII型ナノ結晶粒子の高さHを限定し、この種類の粒子の長さLと幅Wがいずれも3nm~20nmの間であり、好ましくは3nm~15nmの間であり、より好ましくは3nm~10nmの間であり、高さHが3nm~10nmの間であり、好ましくは3nm~8nmの間であり、より好ましくは3nm~6nmの間である。もう一種類の顆粒のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(001)晶帯軸に垂直する結晶面であり、該外表面の長さと幅は該セルロースII型ナノ結晶粒子の長さLと幅Wを限定し、該外表面に垂直するサイズは該セルロースII型ナノ結晶粒子の高さHを限定し、該類顆粒の長さLが15nm~200nmの間であり、好ましくは20nm~150nmの間であり、より好ましくは30nm~100nmの間であり、幅Wが15nm~200nmの間であり、好ましくは20nm~150nmの間であり、より好ましくは30nm~100nmの間であり、高さHが2nm~10nmの間であり、好ましくは2nm~8nmの間であり、より好ましくは2nm~6nmの間である。
【0058】
さらに、ある実施形態において、本発明者は、本発明にかかるセルロースII型ナノ結晶粒子の表面上に、セルロースの側鎖に大量の活性ヒドロキシル基が存在するだけではなく、糖鎖末端から構成された(001)晶帯軸に垂直する結晶面又は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面にも大量の高活性のアルデヒド基が存在していることを驚くべき見出した。そのメカニズムは完全に解明されていないが、発明者は、このような大量の高活性アルデヒド官能基の存在は、少なくとも本発明の方法で調製されたナノ結晶表面の完全性が一部の要因であると考えている。このような活性アルデヒド基の存在は、その表面官能基の活性を大幅に向上させる。そして、このような二活性官能基(ヒドロキシル基とアルデヒド基)の新規的な構造は、セルロースナノ結晶製品の後続応用を開拓するために、より大きな空間と可能性を提供する。本発明において、活性アルデヒド基とは、銀アンミン溶液を銀原子に還元できるアルデヒド官能基である。
【0059】
3.セルロースナノ結晶の用途
本発明のセルロースナノ結晶は、高度な構造完全性と活性な表面化学性質を有するため、触媒キャリア、複合材料補強相等の分野において広い用途がある。
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、各実施例で採用される原料はいずれも市販のものである。
【実施例1】
【0061】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0062】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。セルロース原料全量で計算すると、製品の収率が90.3%であった。
【0063】
図1は、工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースのXRD回折パターンを示す。Hall法により計算すると、非結晶化再構築した後の非結晶化再構築したセルロースの結晶度が5%未満である。
【0064】
図2は、本実施例で得られたセルロースII型ナノ結晶粒子のXRD回折パターンを示す。Hall法により計算すると、該セルロースII型ナノ結晶粒子の結晶度が94%であり、全ての結晶ピークに対するフィッティングにより、該セルロースII型ナノ結晶粒子の格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であることが計算できる。
【0065】
図3~8は、該セルロースII型ナノ結晶粒子のTEM写真を示す。
図3に示されるように、該セルロースII型ナノ結晶粒子は良好な分散性を有する。
図4~6は、それぞれ
図3のTEM写真から選ばれた複数の部分拡大写真である。粒状ナノ粒子が存在していることが分かり、その長さと幅がいずれも3nm~10nmの間であり、高さが3nm~7nmの間であり、さらに分析により、そのセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面である。
【0066】
図7は、該セルロースII型ナノ結晶粒子のもう一か所のTEM写真であり、さらに別の種類のナノ粒子が存在していることが分かる。
図8の拡大図分析により、該ナノ粒子は偏平粒子状であり、結晶粒子サイズが長さと幅方向で50~100nmの間であり、厚さ方向で2~8nmの間であり、さらに分析により、セルロース糖鎖末端から構成された外表面は(001)晶帯軸に垂直する結晶面である。
図9は、GPC方法で分子量を測定する過程においてカルボキシメチル基で変性した変性粒子のGPC測定図を示す。計算すると、該セルロースII型ナノ結晶粒子の数平均分子量Mnが1843であり、重量平均分子量Mw=1974、多分散度PDI=Mw/Mn=1.07である。
【0067】
図10は、該セルロースII型ナノ結晶粒子が水中に分散している懸濁液の写真を示し、該ナノ粒子が水中で高度に分散し、且つウェットのままで長期保存可能で分散性を保つことが分かる。
【実施例2】
【0068】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、メタノールをセルロースが完全に析出するまで加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをメタノールで洗浄して乾燥させた。
【0069】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/テトラヒドロフランの混合溶液に加え、硫酸濃度が1mol/Lとなるように硫酸を溶液に加え、4h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0070】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が81.7%、結晶度が87%、数平均分子量が2133、多分散度Mw/Mnが1.18、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°である。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが3nm~8nmの間であった。
【実施例3】
【0071】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、プロパノールをセルロースが完全に析出するまで加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをプロパノールで洗浄して乾燥させた。
【0072】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/プロパノール/グリセロールの混合溶液に加え、リン酸濃度が2mol/Lとなるようにリン酸を溶液に加え、6h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0073】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が92.0%、結晶度が93%、数平均分子量が2015、多分散度Mw/Mnが1.12、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さL在20nm~80nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例4】
【0074】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、イソプロパノールをセルロースが完全に析出するまで加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをイソプロパノールで洗浄して乾燥させた。
【0075】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/イソプロパノール/プロピレングリコールの混合溶液に加え、臭化水素酸濃度が0.5mol/Lとなるように臭化水素酸を溶液に加え、7h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0076】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が87.3%、結晶度が94%、数平均分子量が1579、多分散度Mw/Mnが1.08、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが4~8nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが3nm~6nmの間であった。
【実施例5】
【0077】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、イソブタノールをセルロースが完全に析出するまで加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをイソブタノールで洗浄して乾燥させた。
【0078】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/イソブタノール/sec-ブタノールの混合溶液に加え、過塩素酸濃度が0.1mol/Lとなるように過塩素酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0079】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が92.3%、結晶度が95%、数平均分子量が1835、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~10nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが3nm~10nmの間である。
【実施例6】
【0080】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、t-ブタノールをセルロースが完全に析出するまで加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをt-ブタノールで洗浄して乾燥させた。
【0081】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/t-ブタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、5h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0082】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が91.5%、結晶度が91%、数平均分子量が1887、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例7】
【0083】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、イソプロパノールをセルロースが完全に析出するまで加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをイソプロパノールで洗浄して乾燥させた。
【0084】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/t-ブタノールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0085】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が85.9%、結晶度が89%、数平均分子量が1822、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例8】
【0086】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
竹繊維を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた精製竹セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。7wt% NaOH、12wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%竹セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0087】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/ジオキサンの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0088】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が93.6%、結晶度が95%、数平均分子量が1782、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例9】
【0089】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
わらを5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた精製わらセルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。5wt% NaOH、16wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%わらセルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0090】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0091】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が90.2%、結晶度が94%、数平均分子量が1458、多分散度Mw/Mnが1.06、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例10】
【0092】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
亜麻を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた精製亜麻セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%亜麻セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0093】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0094】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が93.4%、結晶度が94%、数平均分子量が1863、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~8nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが3nm~10nmの間であった。
【実施例11】
【0095】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
廃紙を1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で還流反応させた後に得られたパルプを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0096】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0097】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が96.6%、結晶度が93%、数平均分子量が1906、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例12】
【0098】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
綿を本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 4wt%綿セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0099】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0100】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が95.4%、結晶度が96%、数平均分子量が1833、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが3nm~5nmの間であった。
【実施例13】
【0101】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
胞子桿菌を1wt%NaOH水溶液において70℃で反応させた後に得られた細菌セルロースを本発明のセルロース含有原料とした。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%細菌セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0102】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0103】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が97.3%、結晶度が95%、数平均分子量が1315、多分散度Mw/Mnが1.04、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが3nm~5nmの間であった。
【実施例14】
【0104】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
海藻をエタノール、1wt%HClの水溶液、2wt%NaOHの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流抽出して反応させた後に得られた精製海藻セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%海藻セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、メタノールをセルロースが完全に析出するまで加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをメタノールで洗浄して乾燥させた。
【0105】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エチレングリコール/メタノールの混合溶液に加え、硫酸濃度が1mol/Lとなるように硫酸を溶液に加え、4h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
セルロース原料全量で計算すると、その収率が86.9%、結晶度が96%、数平均分子量が1861、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが3nm~5nmの間であった。
【実施例15】
【0106】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。濃度が86wt%のN-メチルモルホリン-N-酸化物の水溶液を加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0107】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0108】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が85.2%、結晶度が83%、数平均分子量が1370、多分散度Mw/Mnが1.20、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~15nmの間であり、高さが3~10nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが3nm~10nmの間であった。
【実施例16】
【0109】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。6.7wt% LiOH、10wt%尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0110】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0111】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が93.1%、結晶度が91%、数平均分子量が1877、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例17】
【0112】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。8.3wt% NaOH、10wt%チオ尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0113】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0114】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が93.2%、結晶度が92%、数平均分子量が1762、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例18】
【0115】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。7.2wt% LiOH、10wt%チオ尿素及び残量の水からなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0116】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0117】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が92.5%、結晶度が91%、数平均分子量が1836、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例19】
【0118】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。9wt% LiClを含有するN,N-ジメチルアセトアミドからなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0119】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0120】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が92.7%、結晶度が93%、数平均分子量が1745、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【実施例20】
【0121】
工程1 セルロース原料の非結晶化再構築:
穀稈を5wt%NaOHの水溶液、1wt%HClの水溶液、1wt%次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で順に連続的に還流反応させた後に得られた穀稈精製セルロースを本発明のセルロース含有原料として用いた。10wt% LiBrを含有するN,N-ジメチルホルムアミドからなる溶媒系に加えて攪拌し、50g 5wt%穀稈セルロース溶液が得られた。攪拌しながら、セルロースが完全に析出するまでエタノールを加え、析出した非結晶化再構築したセルロースをエタノールで洗浄して乾燥させた。
【0122】
工程2 非結晶化再構築したセルロースの結晶化酸分解:
工程1で得られた非結晶化再構築したセルロースを水/エタノール/エチレングリコールの混合溶液に加え、塩酸濃度が0.1mol/Lとなるように塩酸を溶液に加え、10h加熱還流して反応させ、セルロースII型ナノ結晶粒子製品が得られた。
【0123】
セルロース原料全量で計算すると、その収率が91.5%、結晶度が94%、数平均分子量が1893、多分散度Mw/Mnが1.07、格子定数がa=8.1Å、b=9.03Å、c=10.31Å、α=β=90°、γ=117.1°であった。その形態は二種類の粒状形態を含み、そのうち一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLと幅Wがいずれも3~10nmの間であり、高さが3~6nmの間であり、もう一種類の粒子のセルロース糖鎖末端から構成された外表面は(0 0 1)晶帯軸に垂直する結晶面であり、その長さLが20nm~100nmの間であり、幅Wが30nm~80nmの間であり、高さHが5nm~10nmの間であった。
【0124】
以上の実施例1~20で得られたセルロースII型ナノ結晶粒子製品を銀アンミン溶液法により測定し、結果より、本発明で得られたセルロースII型ナノ結晶粒子はいずれも活性アルデヒド基を有し、分析したところ、これらの活性アルデヒド基は、糖鎖末端から構成された(001)晶帯軸に垂直する結晶面又は(-112)晶帯軸に垂直する結晶面に位置している。
【0125】
以上の実施例結果より、本発明のセルロースII型ナノ結晶粒子は、結晶度が高い、分子量が小さい、分子量分布が狭い、サイズ分布が狭い、晶体構造が完全であり、表面構造が明確であり、表面化学修飾可能性が大きいなどのメリットを有し、触媒キャリア、複合材料補強相等の応用に適用できる。