(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】燃料
(51)【国際特許分類】
C10L 1/04 20060101AFI20220113BHJP
C10G 21/00 20060101ALI20220113BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20220113BHJP
C10G 67/04 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C10L1/04
C10G21/00
C10G45/02
C10G67/04
(21)【出願番号】P 2020065476
(22)【出願日】2020-04-01
(62)【分割の表示】P 2019519954の分割
【原出願日】2016-10-18
【審査請求日】2020-04-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518455251
【氏名又は名称】マウェタール エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ウォハイビ、ムゥハァミィドゥ
(72)【発明者】
【氏名】プルット、トム エフ.
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-282060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0308788(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0198265(US,A1)
【文献】米国特許第04006076(US,A)
【文献】英国特許出願公告第01156265(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/04
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引火点を除いて、全てのISO RMA10(ISO8217-10)仕様に適合するまたはより優れている燃料であって、
1種以上の原油単独、または1種以上の原油と高硫黄燃料油もしくは他の重質残留油の1種以上との組み合わせ、または1種以上の原油とライトタイトオイルとの組み合わせに含まれる全ての炭化水素のうち、前記燃料が
(i)ナフサの初留点から(ii)溶剤分離に好適なプロパンまたはブタンやペンタンを含むヘプタン以下の他のパラフィン系溶剤を含む液体溶剤に可溶な成分の中で一番高い沸点を有する成分の最高沸点までの範囲の、
前記1種以上の原油単
独、または1種以上の原油と高硫黄燃料油もしくは他の重質残留油の1種以上との組み合わ
せ、または1種以上の原油とライトタイトオイルとの組み合わ
せの全ての液体炭化水素
の組成物を含み
、
(a)0.50%m/m(重量%)以下の硫黄、
(b)10mg/Kg以下のナトリウム、0.2mg/Kg以下のバナジウムおよび0.2mg/Kg以下のアルミニウムとケイ素との合計、および
(c)60℃未満の引火点、を有する
ことを特徴とする燃料。
【請求項2】
(a)10cSt未満の粘度、
(b)0(零)℃以下の流動点、
(c)15℃で820~880Kg/M
3の範囲内の密度、および
(d)800未満のCCAI
の1つまたは複数を有する
請求項1に記載の燃料。
【請求項3】
200℃以上の引火点を有する選択されたパラフィン系基油を前記燃料(i)に組み合わせることによる、60℃以上の引火点を有するための引火点処理を含む
請求項1に記載の燃料。
【請求項4】
(a)C3からC20以上までまたは(b)C5からC20以上までの原油由来の炭化水素の範囲を有し、前記炭化水素が、常圧蒸留条件で前記原油の任意の留分の最低沸点である初留点を有し、溶剤分離に好適なプロパンまたはブタンやペンタ
ンを含むヘプタン以下の他のパラフィン系溶
剤を含む液体溶剤に可溶な成分の中で一番高い沸点を有する成分の最高沸点を有することを特徴とする
請求項1に記載の燃料。
【請求項5】
海上もしくは陸上用エンジン、燃焼ガスタービン、または燃焼式ヒーターにおける燃焼に使用されるものである
請求項1に記載の燃料。
【請求項6】
(a)10cSt未満の粘度および(b)0(零)℃以下の流動点を有し、加熱なしに貯蔵されるものである
請求項1に記載の燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油、精製残油および他の汚染液体供給物から硫黄含有量が非常に低い燃料を製造する方法及び装置に関する。本発明により製造される硫黄含有量が非常に低い燃料は、大型海上輸送船舶の船上に対して、および陸上の大型陸上燃焼ガスタービンに対して、特に費用対効果が高い。
【背景技術】
【0002】
本発明は、長く知られているがこれまでに未解決の大きな環境問題である、「外洋上」の船舶が安価な低等級重質バンカー油およびその他の硫黄、窒素および金属を多く含む重質残渣を燃やす場合に、硫黄、窒素および金属の酸化物が自然環境中に運ばれるということを標的としている。そのような排出は、世界的規模であり、国の地理的境界とは無関係に広がる。
【0003】
様々な第三者の報告によると、このような水上輸送のための重質燃料を海上で燃焼することによって生じる特定の地球規模の排出は、全世界の陸上でガソリンを燃焼する全車両および全ディーゼル車両を合わせたよりもさらに何倍も高い。そのような海上での燃焼は、SOx、NOx、CO2、煤煙および有害な金属を排出する。陸上車両には、自動車、トラックなどが含まれ、その多くは、現在、硫黄含有量が非常に低い、義務化された「ハイウェイ燃料」を使用している。したがって、そのような大型船による輸送が「1マイルあたりの積載量」および燃料消費基準に基づいて効率的であっても、実際には、そのような船舶は大量の排出を発生する。
【0004】
船舶に、より清浄な燃焼船舶用燃料の使用を命じる特定の重要な規制の導入は、そのような燃料が使用可能な量で十分に提供されることを条件としている。技術的にも経済的にも可能でも実用的でもないことを命じないためには、解決策がなお必要である。
【0005】
例えば、国連の一部門である、国際海事機関(IMO)は、国際海運に関する規則を発行している。IMOは、技術的な制約を認識しつつも、海洋燃料の硫黄制限をより厳しくすることによって排出量の削減を図ってきた。IMOは、2011年以降に外洋上(例えば、米国、欧州及びその他の海岸から200海里を含む排出規制海域(ECA)外での燃焼)で燃焼された船舶用燃料は、3.50%m/mを超えない硫黄量でなければならないということを燃料に要求している。2015年には、IMOは規則を改正し、ECA内の商業船舶に対して、船舶用燃料の硫黄含有量を、一般に0.1%未満に制限した。
【0006】
しかしながらIMOは、2020年以降について、外洋での硫黄制限を再び大幅に下げ、0.50%m/mとした。だがIMOは、2020年におけるこのような積極的な削減は、「2018年までに完了予定の、必要とされる燃料油の入手可能性についてのレビューの結果」次第であるとし、要求される燃料が入手できない場合、そのような削減を2025年に延期する可能性を示唆している。海洋産業における大気汚染の規制については、海洋汚染防止条約(MARPOL)、附属書VIを参照のこと。
【0007】
したがって、低硫黄船舶用燃料の供給可能性の欠如およびそのような供給を達成するための技術の欠如に関して、問題が生じる現実的かつ重大な可能性がある。例えば、2015年の業界刊行物には、「排出規制海域に求められる[2014年の]レベル未満に燃料中に許容される硫黄含有量を減らす計画が立てられている……が、これは、現在の技術では、多くの海運会社にとって費用が法外になってしまうため、長年を要する」と述べられている。そのような刊行物は、さらに、「余分なコストと機械的な問題の可能性があるため、これらの規制は継続的に再評価され、履行には段階的なアプローチが採用され」、これは、「多くの船舶用エンジンは、重質燃料油よりもはるかに希薄であり重質燃料油の潤滑特性を有していない低硫黄軽油を扱うようには設計されていないからである。各社は、燃料を冷却してその粘度を上げる、追加の潤滑剤をエンジンの特定部分に注入するなど、様々な回避策を講じ、うまくいくように努めている」と述べている(非特許文献1)。
【0008】
他の例としては、2015年に、IMO規制により、指定されたECA内の商用船舶に関して、船舶用燃料の硫黄含有量が最大0.1%硫黄に下げられたことがある。ECAに入る前に、船舶は、外洋で燃焼された、硫黄が多いが安価な高硫黄重質バンカー燃料油から、ハイウェイディーゼル燃料に似た、高価な低硫黄燃料に変更しなければならない。2015年1月1日以降、ECA内での燃料硫黄を1.00%m/m(2010年7月1日以降)から0.10%m/mに下げたことにより、市場の供給と価格設定の課題が引き起こされた。IMO関係の規制遵守のための海洋用燃料の製造と供給は、ハイウェイおよび他の陸上用ディーゼル用途のための蒸留燃料需要と競合し、利用可能な好ましい供給原料流、および既存の精製装置や供給物供給網を、ディーゼルや他の低硫黄留出物のハイウェイ利用から離れさせてしまう。また、船上では他の技術的問題も発生する。
【0009】
ECA内での硫黄含有量の2015年のIMO低減に関して、米国沿岸警備隊は、「より高い硫黄含有燃料を使用する船舶は、新しい規制を満たすために超低硫黄(ULS)燃料油に変更しなければならない」と警告を発している。船舶は、本国行きおよび外国行き航行中、ドックにおいて、およびECA内で常時、ULS燃料油を使用しなければならないため、高硫黄含有燃料油を使用する船舶では、ECAに入る前に残留燃料と蒸留燃料を切り替えるための切り替え手順を開発し実行する必要がある。沿岸警備隊はさらに、「船級協会、保険会社、エンジンメーカーおよび業界団体により作成された文書にて言及されている超低硫黄燃料油および燃料油の切り替えの使用に関連して、他の重要な技術的課題がたくさんある」こと、および「ULS燃料油の単位体積あたりのエネルギー含有量は、既存のスロットル設定が所望のプロペラシャフトRPMまたは発電機負荷を与えないなど、残留燃料と異なる可能性がある」ことを警告している(非特許文献2)。
【0010】
厳然たる現実としていえるのは、精製所は費用がかかるものであり、たとえ燃料製品や製造装置の比較的軽微に思える変更や単位操作の追加であっても、大幅な設備投資が必要になる、ということである。2003年時には、欧州における精製所の評価研究が、船舶用燃料の汚染物質を下げる必要性、ならびにそのような燃料の必要量を生産するにあたっての必要条件および能力を見据えて実施された。例えば、非特許文献3を参照されたい。
【0011】
このような報告書は、多くの国で適切な船舶用燃料の必要量を産生しようとする際にコストが上昇することや精製所利用効率が低下することに加え、場合によっては主要な港の近くにそのような船舶用燃料を現地製造および供給する地元の基本施設がないこと、ならびにそのような燃料を作るための技術と装置がないことなどといった大きな課題を提起した。
【0012】
引用された報告書は、3つの選択肢のみを見出した。「再配合オプション」(重質燃料油を低硫黄燃料に配合する)は、低硫黄バンカーを製造する最も低コストの選択肢として検討されたが、大きなコストはかからないながら最小量の材料しか処理できないため、適切ではなかった。この選択肢は、欧州の精製所で現在生産されている重質燃料の異なるカテゴリーの再配合のための物流に関して比較的低コストであったが、量の面で失敗した。
【0013】
よりコストが増加する第2の選択肢は、1.8%の硫黄を含むことが報告されているアラビアン・ライトなどの高硫黄含有原油を、低硫黄原油、例えば、0.14重量%の硫黄を含むことが報告されているボニー・ライトのようなアフリカ原油で置き換えることによる、低硫黄原油の加工である。この選択肢によって発生する海上バンカーの推定増分費用は、報告書に記載された理由により、過剰な負担とみなされた。
【0014】
この古い報告は、最後に、減圧残渣脱硫(VRDS)を用いる、低硫黄船舶等級燃料の生産のための第3の最も高価な選択肢を示している。該報告書の結論づけるところによれば、「しかし、ガソリンまたはディーゼルに必要な脱硫の程度とは対照的に、バレルの底部の水素化処理(残油脱硫)は、残油からより軽質の製品への何かしらの変換と組み合わせられているのでもない限り、その処理は精製者が現在実施しようと考えているプロセスそのものではないのだ、と気づくことが重要である。それにもかかわらず、VRDSが減圧残留物を脱硫するという唯一の目的のために追求されたならば、この選択肢のコストは」第2の選択肢の約2倍であり、従ってなおのこと受け入れられない。
【0015】
先行技術によりIMOの要求を満たすために、操船者は、海洋で使用するための高硫黄含有燃料油とECA内で使用する低硫黄含有量の両方を積み込むことができるが、この選択は、エンジンの技術、潤滑性、ならびに最適な操作および燃料切り替え機構のための異なる燃料の噴射システムについて生じ得る必要性に関して、問題に直面する可能性がある。操船者は、最高の性能レベルを維持するために、比較的大きく、高価で複雑な燃焼後排煙処理装置を追加することができる。場合によっては、液化天然ガス(LNG)を船舶用燃料として使用することが考えられる。その場合、例えば、LNGの運送業者は、燃料として「蒸発ガス」を使用することを選ぶことができるが、このLNGエンジン構想を全ての貨物船に拡大するには、非常に高価なLNG給油所が普及していることが必要であり、地方の天然ガス生産用供給施設や液化施設を持っていない地方での港湾には追加のコストが掛かることになる。しかし、全ての場合において、液体の代わりにLNGを使用すると、燃料補給もしくは不完全燃焼中の換気による漏れ、または操縦およびメンテナンス中におけるメタン放出という現実的なリスクが生じる。このようなメタン放出は、メタンは環境への温室効果ガスとして二酸化硫黄の何倍もの影響を及ぼすと一部で考えられているため、懸念材料である。同様の観点から、海洋用途における排出削減は、船舶輸送中に、またはガス供給ドッキングステーションを備えた港に寄港中に、天然ガスを燃焼することによって達成できると主張する者もいる。しかし、1つの技術的見地からすれば、天然ガスはメタン漏れ問題を抱えており、また天然ガスの燃焼はCO2排出を減らすものの、これはCO2の放出が少ないからではなく、LNGと比較した場合、天然ガスの使用はLNGを液化する工程で発生するCO2排出を回避し、寄港中の船舶に供給する発電所を点火するための石炭の回収や交換の際のCO2を削減するからである。船舶用燃料としてLNGまたは天然ガスを液体に置き換えることを推進する開発活動は考慮すべきだが、世界的なガスインフラが欠如し、新たな給油インフラを必要とされる場合には、実用的な費用対効果の高い海洋ソリューションを提供するものではない。ガス供給インフラは、現地でガスの生産供給が行われていない国の港湾では、厳しい設備および資本投資となる。
【0016】
Lengletによる特許文献8(2009)は、2つの非アスファルテン油を製造するための原油の予備生成方法及びアスファルテン油の予備蒸留、減圧蒸留、溶媒脱アスファルト化、水素化処理、水素化分解及び残留物水素化変換を有する複数の生成物の作製について記載している。非特許文献4には、水素添加により硫黄を除去し、高活性Ni/Mo触媒の使用により硫黄を8ppm未満にした製造物を製造するためのユニット設計、触媒の選択、水素消費及び他の稼働条件が記載されている。非特許文献5の6頁、高度精製技術、Catalagramの特定版発行No.113/2013もまた、高活性CoMo触媒を使用して立体障害のない硫黄を、高活性NiMo触媒により残存する立体障害硫黄を除去して10ppmまでとする水素化処理を記載している。
【0017】
しかし、効果的な燃料生産技術には、低コストで大量の超低硫黄船舶用燃料の供給不足を引き起こすという空隙が長らく存在してきた。この空隙を埋める必要性が残っている。
【0018】
国際エネルギー機関(EIA)の石油産業および市場部門は、燃料の製造に使用される工程および装置の構成を記述し、従来の精製所の構成、製品及びマージンを記述する公的文書を発行している。本明細書で使用されている用語は、別途定義または明示的に変更されていない限り、非特許文献4に指定された意味を有し、全ての目的のために本明細書に組み込まれる。EIAの諸出版物は、原油を処理し、原油供給原料の各バレルを異なる用途または下流の処理のために複数の生成物に分割するための構成を定義し、論じている。
【0019】
従来の精製所の開発や成長の遺伝学は、社会の製品需要の進化に基づいたいくぶん根源的なものであり、照明のための基本的な灯油等級の留出物から、自動車用のガソリンおよびディーゼル、次いで航空等級燃料、さらに多くの下流化学製品用途のための原料などの複数の製品へと進展した。精製所の技術開発は全て、様々な最終用途向けの複数の製品の生産を保ちながら、典型的には、特定の市場区分に対して原油の各バレルから得られる所与の分割量を最大にするか、または下流の化学製品に対する精製所の様々な流れを適応させるかのいずれかに適応するように導かれ、段階的に進化したように見える。
【0020】
このように、常圧原油および/または減圧蒸留ユニット、溶剤分離、水素化処理、ガス化および多くの他の単位操作を使用する先行技術の精製所設計では、原油供給原料の各バレルを、異なる用途または下流処理ごとにそれぞれ異なる仕様の複数の製品に分割する。
【0021】
従来の精製においては、供給原料を異なるユニット流出物に分離し、次いで、その流出物の全てを再度組み合わせるというのは、直観に反することである。例えば、上記のEIAの参照文献は、従来のまたは典型的な常圧原油蒸留、減圧蒸留、燃料溶剤脱アスファルト化、接触水素化処理および統合型ガス化複合サイクル技術を定義、説明しているが、原油供給原料の実質的に全てを単一の液体燃料を作製するために変換する工程の構成については説明していない。
【0022】
従来の精製工程の範囲内には、「アップグレーディング」、「トッピング」または「水素化スキミング」設備がある。原油のアップグレーダーについて、第一の目的は、通例、非常に重く、粘性が高いまたは固形分を混入した物質を、軽量で流動性のある物質を処理して燃料製品、化学製品原料および/または石油コークスの全ての範囲を作る既存の従来の精製所で再処理できるように、変換することである。アップグレーダーは、ただ、それぞれの下流の製品仕様を満たす目的で硫黄を処理するため個別に設計されている従来の精製所への供給のために、より重質の原油をより軽質の原油に変換するだけであり、硫黄の低減または金属の除去は、アップグレーダーの主な目的ではない。目標は、典型的なより低密度の原油原料に比較して、非常に高い密度を有する原料を改質することである。より重質の材料は供給された物質から排除または分離され、その結果生じる改質された製品材料の密度は、既存の従来の製油設備構成によって処理された原油の密度に近づく。トッピングまたは「ミニ」精製所に関しては、しばしば遠隔地または原油源の機に乗じた場所に位置する。トッピング精製所は、典型的には、いくつかの限られたケースでは、ガソリンのオクタン増強のためのナフサ改質および種々の生成物を生成するための複数の留出物の水素化処理を除いて、その後の処理を行うことなくまたは最小限の処理で、ガソリン生産ではなくナフサを標的とする原油供給原料の各バレルを複数の直留留分に分割する。典型的なトッピング精製所の目的は、ガソリン、灯油、ディーゼルおよび燃料油のような広範囲の直接使用可能な燃料を、現地市場での消費のために作ることである。一部の望ましくない形でトッピングが実施され、またそのトッピング製品が使用された場合、または残留物に適切に対処できなかった場合には、環境への有害な排出が減少するどころか増加してしまう。水素化スキミング精製所では、原油をトッピング精製所のように複数の製品に変換するが、しかし典型的には、ディーゼル製造において水素化処理装置により消費される水素をも生成する改質装置への重質ナフサの添加量を制限する。水素化スキマーは、トッピング精製所のように、たった一つの製品ではなく、典型的には、広範囲のガソリン、灯油、ディーゼルおよび燃料油を現地での消費用に作る。
【0023】
独立した直列または並列の水素化処理反応器ゾーンまたは統合した水素化処理反応器ゾーンを有することを含む、水素化処理を適合させる様々な態様は、当該技術分野において公知である。Cashらの特許文献1およびその中で引用されている参考文献には、異なる供給物の統合型水素化処理を開示しており、その際、別々の水素化処理ゾーンからの水素含有および液体含有流れは、開示されている方法により分配または組み合わされる。重質残渣流内のピッチから脱アスファルト化油を抽出し、脱アスファルト化油を水素化処理の原料として使用するための溶剤分離の使用の様々な態様は、複数の製品流れを生成するために使用される場合において、当該技術分野で公知である。例えば、Brierleyらの特許文献2は、プロパンまたはブタンやペンタンなどのヘプタン以下の他のパラフィン系溶剤などの液体溶剤への溶解性に基づく供給物の分離によるクラッキングまたは分解を伴わない、脱アスファルト化油の製造のための溶剤脱アスファルト化について記載している。残留するピッチは、金属および硫黄を高含有量で含んでいる。脱アスファルト化油は、ナフサ、灯油、ディーゼルおよび残留物質を含むいくつかの生成物の製造に関する参考文献に記載されているように、硫黄、窒素、コンカーボンおよび金属を除去するために水素化処理することができる。
【0024】
世界的な市場では、外洋上または天然ガス資源をほとんどもしくは全く持たず、発電効率の低い高硫黄燃料油もしくは未精製原油を用いている陸上の場所での地球環境問題に対処するために、硫黄および窒素量が少なく、本質的に金属汚染物質を含まない大量の燃料が利用可能である必要がある。
【0025】
燃料生産者は、複数の製品スレートを製造する従来の精製用に開発されたものとは異なる設計を必要とする。コストを低く抑えるために、設計は、資本投資を抑える方法で、費用対効果が高く、熱効率の良い方法で大量の清浄な燃料を製造するために必要な装置のみを装備するようにしなければならない。上記設計は、船舶用燃料用の原油の各バレルの比較的少量の留分を抽出してバレルの大部分を他の用途に使用するのではなく、主に船舶用燃料を製造することを目標とすべきである。
【0026】
世界が必要とするのは、海洋用途のため、経済的な方法により、(英熱量(BTU)のような短い形式で表現されたエネルギーの無駄を回避するための効率的な形で)大量の比較的清浄な液体燃料を作る方法に関する技術的問題の解決策を提供する「ゲームチェンジャー」的新規プロセスである。このようなプロセスは、LNGのための新しい基本的施設を作る代わりに世界中に広がっている既存の液状船舶用燃料給油所(例えば高硫黄燃料油(HSFO)を供給するもの)を燃料の配給に使用できるので、必要な施設とそれに伴う資本および運用コストが最小限に抑えられることとなる。このようないかなる新しいプロセスも、液体BTUを、主に自動車やトラック用に製造された超低硫黄ディーゼル(ULSD)と比べて費用対効果的に優れた形で作成することを支持する方向性とする必要がある。このような利用可能なディーゼルは広く入手可能であるが、コストの問題、およびULSDが多くの既存の船舶用ディーゼルエンジンに使用される場合に生じる潤滑性の問題ゆえに、大型の海上輸送キャリアによって海上で広く使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【文献】国際出願PCT/US1999/00478号
【文献】米国特許第7,686,941号
【文献】米国特許第8,088,184号
【文献】米国特許公開第20140221713号
【非特許文献】
【0028】
【文献】Josiah Toepfer米国沿岸警備隊船舶検査官/監査人・事故調査官、「Is it true that the 15 biggest ships in the world produce more pollution than all the cars?」Quoraによって発行されたインターネット上の記事
【文献】米国沿岸警備隊、米国国土安全保障検査局、コンプライアンス統括部、「Ultra Low Sulfur Fuel Oil & Compliance with MARPOL Requirements Before entering and while operating within Emission Control Areas」、2015年3月3日、安全勧告2-15、ワシントンDC
【文献】欧州委員会環境総局、「Advice on Marine Fuel:Potential price premium for 0.5%S marine fuel;particular issues facing fuel producers in different parts of the EU;and commentary on marine fuels market」、最終報告案、契約番号ENV.C1/SER/2001/0063、Order Slip n°C1/3/2003、2003年10月
【文献】米国エネルギー情報局、「Glossary」、2016年10月
【文献】Wrightら、Lloyd’s Register FOBAS、「Marine Distillate Oil Fuels Issues and implications associated with the harmonization of the minimum flashpoint requirement for marine distillate oil fuels with that of other users」、デンマーク船主協会のため執筆、2012年
【文献】Rallら、「Sulfur Compounds in Crude Oil」、ワシントンDC、UNT
【文献】J.P.Wauquier「Petroleum Refining:Crude Oil.Petroleum Products.Process Flowsheets」、1995年、Institut Francais du Petrole
【文献】Ackersonら、「Revamping Diesel Hydrotreaters For Ultra-Low Sulfur Using IsoTherming Technology」
【文献】Shifletら、「Optimizing Hydroprocessing Catalyst Systems for Hydrocracking and Diesel Hydrotreating Applications,Flexibility Through Catalyst」、6頁、Advanced Refining Technologies Catalagram、Special Edition Issue、No.113/2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、非常に低い硫黄、窒素および実質的に金属を含まない燃料を大量に、低コストで供給することを可能にし、効果的な燃料の製造技術における空隙を埋めるものである。該燃料は、発電用の燃焼ガスタービンなどの大規模な陸上用途はもちろん、海洋用途にも特に有用である。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「本質的に金属を含まない」または「ゼロ金属」という用語は、ゼロ(零)から100重量ppb(十億分率)未満の範囲の金属含有量または従来のオンライン計器によって確実に測定することが困難なほど低い含有量を意味する。
【0030】
従来の精製では、原油供給原料を多くの部分に取り出し、各部分は下流の別々の市場経路に送られる。これに対し、本発明者らは、変換と捕捉のためのプロセスユーティリティーと流れを提供する原油部分を除いて、汚染物質である硫黄、窒素および有害金属を捕捉しつつ、原油供給原料の各バレルの最大量を単一の超清浄な燃料に変換できることを見出した。本発明は、原油供給原料を、汚染物質の捕捉および制御に必要な最小限の数の部分のみとして取り出し、次いで、その部分を再組み立てして1つの燃料製品を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
従って、本発明は、ガソリン、ディーゼル、燃料油、または下流における化学製品製造もしくは用途のための供給原料などの複数の市場に対応するために原油供給原料の各バレルを分割する従来の精製とは異なるものであり、本発明の方法は、主たる清浄な燃料製品を製造することを目的としている。本発明は、未精製および残留油のための低コストの研磨システムを提供し、このシステムは、商用輸送船や発電所燃焼システムに使用される高硫黄バンカー燃料や他の重質残渣に取って代わる商業的規模の大量の清浄な燃料を作製するために必要である。本発明は、このような燃料ならびに該燃料を作製する方法および装置を提供し、費用効率の良い方法で硫黄を削減する。
【0032】
これらの新規プロセスは、驚くほど効果的な方法で最終製品硫黄含有量を目標硫黄レベル以下に制御しつつ、直観に反するステップを使用して、製造コストを下げる。本発明は、燃料製造中に汚染硫黄、窒素および有害金属を同時に捕捉しつつ、原油供給物の各バレルの最大量を単一の超清浄燃料に変換する新規方法を提供する。
【0033】
本発明の多くの変形例では、供給物の各バレルの本質的に全てであって、特定の変形例では90容量%以上として特徴付けられる量が、単一燃料に変換され、そのような変形例では、原油の各バレルの約10%未満である最小量のみが、汚染物質の変換および捕捉のためのプロセスユーティリティーおよび流れのために消費される。本発明のプロセスは、水素バランス、アスファルトやコークスおよび他の残留生成物の現地での需要、全体的な生産経済性、ならびに代替低コストプロセス燃料および電力の現地における入手可能性などといったその他の操作上の考慮を目的として、燃料製造に割り当てられた供給原料の割合ならびに汚染物質の変換と捕捉のためのプロセスユーティリティーおよび流れのために割り当てられた供給原料の調整を可能にする。変形例では、原油供給物の各バレルの少なくとも70容量%が液体留分に変換され、その後の処理を受けたとき、または未処理であるが配合されたときに、複数の炭化水素生成物ではなく、目標硫黄含有量を超えない硫黄含有量を有する実質的に1つの液体燃料生成物を形成し、上記原油供給物の各バレルの残りの部分は、残留物または他の蒸気または生成物中に存在する。
【0034】
原油供給物を多数の部分に分けて取り出し、別々の市場経路に送る従来の精製とは異なり、本発明は、原油供給物を汚染物質の捕捉および制御に必要な最小数の部分に分けて取り出し、次いで、取り出した部分を再組立てして硫黄および窒素量が非常に少なく、本質的に金属を含まない1つの燃料製品を形成する。本発明の方法および装置構成は、大規模な海上および陸上用タービン用途における規制遵守に必要な低硫黄燃料を大量に、低コストかつ効率的に製造することを可能にする。これらの新規な燃料配備は、代わりの従来の原油精製に比べて実質的に低い資本コストおよび稼働コストを有し、それにより極めて費用効率のよい方法で、非常に低い硫黄および窒素量を有し、本質的に金属を含まない燃料を大量生産できる。これらの新規プロセスは、油田から船舶エンジンまたは陸上の発電所へのエネルギーの供給連鎖を単純化する、非常に費用対効果の高い手段を可能にする。
【0035】
海運業界に対して、本発明の新規構成は、世界的な海洋硫黄低減目標を達成するために必要な量の低コストの低硫黄船舶用燃料を提供する。本発明の新規な燃料製造方法および装置配置は、従来の原油精製よりも実質的に低い資本コストおよび稼働コストを有し、それにより、硫黄量が非常に低く、本質的に金属を含まず、窒素量が非常に低い大量の船舶用燃料を極めて費用対効果が高い方法で作製する。
【0036】
本発明の燃料は、硫黄および金属が多い低等級の重質バンカー油に取って代わり、SOx、NOx、CO2、煤煙および有害な金属の外洋への排出を大幅に削減する。バンカー油の燃焼に際して環境に運ばれる硫黄および金属の代わりに、本発明の実施においては、硫黄、窒素および金属は、環境に優しい方法で、燃焼製造中に捕捉、除去される。いくつかの実施形態においては、本発明は、ディーゼルよりも低いコストで特定の低硫黄代替燃料を提供するが、これらの燃料は、船舶エンジンの過度の摩耗を回避するのに十分な潤滑性を有し、これらの新規な燃料は、他の代替燃料に比べて、燃料を加熱して流動性を持たせることなく既存のバンカーリング燃料インフラを使用することができるので、陸上または船上のタンク内の燃料を加熱するために消費されるエネルギーを削減することができる。
【0037】
1つの変形例では、本発明の燃料はまた、例えば電力および脱塩水を生成するもののような単一サイクルまたは複合サイクル発電所などの設備に配置された大規模な陸上用燃焼タービンにおいて、原油または重質残渣を燃焼することに対する代替物を提供する。本発明の燃料を燃焼するタービンは、NOx、SOx、CO2、煤煙、有害金属および他の燃焼副生成物のタービン排ガス排出量が著しく少なく、供給源次第では、汚染された重質原油または精製残油を燃焼するとき、高温ゾーンの腐食または灰形成条件下での汚染も少ない。
【0038】
本発明は、複合炭化水素供給材料の、船舶用エンジン、燃焼ガスタービンまたは燃焼式ヒーターなどの燃焼用途に使用するための単一燃料製品への集中した変換に関する。本発明の基本的な実施形態では、原油が前から入り、低硫黄レベルに制御され、窒素を低減され、金属を除かれた単一の超清浄な製品燃料が戻ってくる。変形例では、蒸留のための供給物は、1つもしくは複数の高硫黄燃料油または他のより重質の残油と組み合わせられた1つまたは複数の原油であって、減圧蒸留、溶剤分離、水素化処理もしくはガス化などの1つまたは複数の他の単位操作への流れ供給物の一部として、ライトタイトオイルまたは高硫黄燃料油、またはその両者をさらに付加した、原油であることができる。
【0039】
当技術分野における他の用途では、「高硫黄燃料油」または「HSFO」という用語は、様々な技術記事、特許および法令において、異なる、しばしば類似性のない、矛盾した、および混乱を呼ぶ意味が割り当てられており、その一部は時間と共に変化する。本明細書および特許請求の範囲で使用される「高硫黄燃料油」または「HSFO」は、0.50%m/m(0.5重量%)を超える硫黄含有量を有する燃料として使用される任意の物質を意味する。本明細書で使用される「重油」、「重質残渣油」、「残渣」、「残留物」または「他のより重質の油」という用語は、硫黄含有量が0.50%m/m(0.5重量%)を超える石油由来炭化水素系物質を含む。「高硫黄」という用語は、目標硫黄含有量制限または該当する場合は法定硫黄制限のいずれか低い方を上回る値を意味する。
【0040】
好ましい実施形態では、最終製品燃料の硫黄含有量は、異なる硫黄含有量を有する流れの組み合わせによって制御される。変形例では、このような組み合わされた各流れは、単位操作条件および流速を調整することによって、非常に低い硫黄量の流れの添加量もしくは除去量を削減することによって、または異なる硫黄含有量の供給物を配合することによって、暫定的な目標硫黄含有量に形成される。本発明の変形例は、必要に応じて、選択された原油に、(i)他の原油、(ii)バンカー燃料、(iii)高硫黄燃料油もしくは他の留出物、または(iv)他の供給源からの他の高硫黄もしくは金属汚染残留物、の1つまたは複数を供給することによって、製品硫黄レベルを制御することを含む。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「本質的に金属を含まない」または「ゼロ金属」という用語は、ゼロ(零)から100重量ppb(十億分率)未満の金属含有量または従来のオンライン計器によって確実に測定することが困難なほど低い含有量を意味する。
【0041】
本発明者らは、異なる原油供給原料の硫黄含有量分布に対処することにより、低硫黄燃料の製造を最適化できることを発見した。
【0042】
本発明者らは、(i)比較的少量の硫黄のみが塩基性のH2SまたはRSHチオール型の塩基性形態で特定の留分に存在する場合、および(ii)硫黄の比較的大部分がより複雑な有機的構造形態で存在する場合、に対処することができ、その時、硫黄含有量が、より低い留分レベルに比較してより急速に、場合によっては指数関数的に増加し始めるような、より上位またはより高いレベルにおける予測された区切り点留分に基づいて、プロセス流量および稼働条件を調整することができる。
【0043】
本発明者らは、特定の流れのバイパス処理を可能にしてそのバイパスを最大化し、塩基性の複雑さの低い硫黄形態を含有する流れの処理を回避または低減して、より複雑な形態を含有する流れを異なる方法で処理することができるようにするために、プロセスおよび装置構成を配置することが可能であることを見出した。これは、特定の流れを水素化脱硫から選択的に排除し、他の流れについては、異なる水素化処理装置に同じものを供給して異なる水素化処理ユニット条件を調整する、または溶剤および/もしくは反応性化学物質ベースの処理による除去の調整をすることができる。その際、1つまたは複数の除去ユニット内の複数の溶剤または他の除去剤により処理し、各ユニット内の除去剤のそれぞれの比は、複雑さが低いまたは高い硫黄含有分子を選択的に除去するために各ユニットへの硫黄分布に基づいて調整することを含み得る。
【0044】
「灯油」および「軽質留出物」という用語は、多くの場合、異なる参考文献間において、同一の、重複する、あるいは異なる意味で使用されるものの、一様に温度範囲(例えば、190℃~250℃または180℃~230℃)による常圧蒸留塔の留分境界点のみに基づいて定義されており、硫黄含有量に基づいて定義されるものではない。代わりに、便宜的な硫黄含有量測定は、従来の精製所からの各製品の仕様によって決まる留分境界点温度範囲に基づいて行われ、報告される。発明者らは、これは最善とはいえないことを見出した。
【0045】
本発明者らは、原油蒸留塔の稼働の基本的な方法を変更すれば、低硫黄燃焼製造のコスト削減を最適化できることを発見した。本発明者らは、特定の留出物取り出しを、灯油、ジェット燃料、ディーゼルなどの下流における昔からの使用のための標準製品温度範囲の仕様ではなく、蒸留塔への原油供給原料または供給混合物の硫黄含有量の分析を省みつつ、副流の硫黄含有量を踏まえて行うべきであることを見出した。
【0046】
本発明者らは、いかに「区切り点」を定義するかを発見したが、区切り点とは、取り出し製品における単位体積の変化あたりの硫黄含有量の変化(グラフの傾き)がもはや実質的に平坦ではない点に言及するものであり、代わって区切り点では、取り出し量がわずかに増加するにつれて、硫黄含有量は、単位体積あたりのグラフの傾きが大きく変化し始めるなどのように、急速にまたは指数関数的に増加し始める。また、区切り点以降では、原油供給原料の種類に応じて、典型的には、硫黄含有化合物の種類と組成、ならびに複雑さが変化する。区切り点は、脱硫を最小限化または排除し得る、脱硫を必要とする流れまたは流れの部分の分離からの指標である。
【0047】
本発明者らは、区切り点以下の硫黄含有量を有する物質の最大量を直接取り出しおよび集積し、下流での硫黄の削減又は除去のための処理のコストを回避または低減するように、区切り点以下の取り出し物の硫黄含有量を有する全液体の製造量を最大にするならば、低硫黄燃料の資本コストおよび製造コストを最小化できることを見出した。
【0048】
本発明者らは、比較的大量の区切り点以下のこのような物質は、および特定の原油においては区切り点より上の狭い特定のゾーン内の部分は、既に硫黄除去の処理がなされた他の取り出し物と組み合わされた場合、硫黄除去のための処理またはその後の重要な処理を必要としないことを発見した。本発明者らは、主に供給物または塔の温度プロファイルの上昇により常圧蒸留条件を推し進めるだけでなく、還流の削減もしくは排除、または原油供給速度の低下、または取り出し量を区切り点近辺まで最大化するように供給原油を混合もしくは希釈により原油炭化水素もしくは硫黄の組成を変更することによって、このような未処理物質の製造を最大限にし、流れ全体の脱硫または他の処理操作のコストを低減する。区切り点は、標準的な業界分類または取り出しの温度範囲を設定する規制の見地から定義されるものではない。
【0049】
本明細書及び特許請求の範囲において、本発明者らは、「区切り点」を、原油の分析または他の測定方法に関連して、x軸に原油の質量%または体積を、y軸に硫黄含有量をプロットした場合、単位体積あたりのグラフの傾きの大きな変化という意味において、硫黄含有量が水平またはそれに近い位置から急激にまたは指数関数的に増加し始める点であると定義する。x軸方向の差分は留分の単位体積の変化であり、y軸方向の差分は硫黄含有量の単位体積あたりの変化であり、勾配はグラフの傾きである。このようなグラフの傾きの勾配は、ゼロ(零)または水平に近い値から、急激に0.2を超えて動き、そして急速に1を超えて、いくぶん指数関数的な硫黄含有量の増加に向かって動くものであり、区切り点は、蒸留塔への原油または他の供給原料に基づいて変化する。したがって、「区切り点取り出し」または「硫黄区切り点取り出し」は、ナフサの範囲の終点、例えば安定化されていない自然のままの直留ナフサの範囲の終点を超えものの上記のように単位体積あたりのグラフの傾きの変化が大きく硫黄含有量が急激にまたは指数関数的に増加し始める点である区切り点以下で沸騰する炭化水素含有液体への分割を決定する手段を提供する。
【0050】
発明者は、本明細書及び特許請求の範囲において、基底「区切り点取り出し」または基底「硫黄区切り点取り出し」を、留分の硫黄含有量に関して、安定化されていない自然のままの直留ナフサの範囲の終点超かつ区切り点以下で沸騰する炭化水素含有液体を意味するものと定義するが、その際、燃料製品流れが区切り点以下の全ての未処理流れの組み合わせおよび該組み合わせに添加するために選択された区切り点取り出し超の全ての流れから形成されるように、該区切り点が選択される場合は、その組み合わせ燃料の実際の硫黄含有量は、目標硫黄含有量を超えない。変形例では、目標硫黄含有量が硫黄区切り点であるか、または硫黄区切り点より高いもしくは低い場合に従って燃料を製造することができ、燃料を生成する流れの組み合わせは、燃料の実際の硫黄含有量が硫黄目標を超えないように、区切り点を基準にして効率的に作られる。
【0051】
多くの原油に対して、常圧蒸留塔のための硫黄区切り点取り出し物は、180℃または190℃(または他の灯油範囲開始点)で沸騰を始めるものなどといった(当技術分野で様々な方法で定義されている)灯油範囲の物質の大部分を含み、簡略化のために、より低いまたはより高い温度範囲物質を含むことができる。しかし、灯油範囲の物質の温度や歴史的な定義ではなく、硫黄含有量が、硫黄区切り点範囲の終点の決定要因である。燃料は、目標硫黄含有量が硫黄区切り点である場合に従って形成することができ、燃料を形成する流れの組み合わせは、燃料の実際の硫黄含有量が硫黄目標を超えないように作られる。
【0052】
一実施形態では、原油供給原料を流れに分離し、そのような分離流れの1つまたは複数の液体の一部分を処理し、他の部分は未処理とされる。次いで、処理および未処理の液体流れの大部分が再度組み合わされて、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である液体燃料を形成する。工程ステップは、(a)原油を1つまたは複数の蒸留および溶剤分離ステップにより、軽質オーバーヘッド蒸留ガス、溶剤分離に使用した1つまたは複数の溶剤に不溶の金属リッチ残留物、硫黄を含むガス、および硫黄区切り点より高い液体留分および区切り点以下の液体留分、に分離すること、(b)硫黄区切り点以下の液体留分や不溶性の残留物ではなく、硫黄区切り点より高い液体留分を、1つまたは複数の水素化処理ステップにより処理して、他の部分は未処理のままにしつつ、硫黄含有量が低減された1つまたは複数の水素化処理流れを形成すること、ならびに(c)上記水素化処理流れ区切り点以下の液体留分と組み合わせ、硫黄区切り点以下の実際の硫黄含有量を目標硫黄含有量として有する上記の液体燃料を形成すること、を含む。
【0053】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明に従って製造された燃料を使用することにより、外洋、ECA内、または港湾での船舶によるIMO仕様を超える排出を低減する方法を提供する。該燃料は、海上、ECA内、または港湾のいずれにある場合においても、船舶による燃料の使用場所において適用され得るIMO仕様の最大量よりも低く調整された硫黄含有量を有する。このようにして、船舶はIMOの要件および一般の期待を上回ることができる。
【0054】
他の実施形態では、本発明は、例えば海洋または港湾燃料コストを相殺するために、港湾で本発明の燃料を使用して生成した電気を陸上の配電網に販売する、船舶のための方法を提供する。
【0055】
本発明者らは、適切な方法で引火点を考慮し調整しながら、硫黄および金属の制限に関するIMOの期待を大きく上回る、低コストの超清浄船舶用燃料を製造できることを見出した。
【0056】
かくして本発明者らは、(i)軽微な引火点の変更を、(ii)特に巨大貨物船による大量の燃料消費に関連した、大規模な環境的利益(莫大なSOxおよびNOxの削減および有害金属の本質的な排除)と交換する技術的方法を発見した。今までに、そのような発見は誰もなしえなかった。
【0057】
海洋における安全のための国際条約(SOLAS)は、燃料の引火点、および貨物船上で許容される使用を概説している。「多くの人々にとって、SOLAS条約で提示された一般運航における燃料の最低引火点60℃は、海洋法の根底のひとつに見えるかもしれないが、これは1981年の改正で初めて導入されたものである。最初の3つのSOLAS条約(1914年、1929年および1948年)は、石油燃料の引火点に制限を設けておらず、1960年条約でさえ、内燃機関が使用する燃料が43℃以上の引火点を有することを「新型」旅客船に要求しただけである。なおこの条項は、現在の1974年条約に、元々採用されたとおり本質上引き継がれた」、以上、非特許文献5からの引用である。
【0058】
Wrightらは、引火点は、現実の値ではなく、経験的なものであって、「引火点の値は、決して「安全」/「安全でない」の境界線ではなく、また過去においてそのような境界線であったこともない」と述べている。その結果、石油産業の当初から、貯蔵および使用に関し、より一層の管理と注意が求められる製品を識別する手段として、いくぶんの誤りを伴って、引火点が使用されてきた。実際には、海洋用途では、石油燃料の火災は、気化発火によるというよりは、漏れまたはパイプの破損により燃料が自然発火温度より高い表面に接触することによる発火により発生している。それにもかかわらず、引火点は、たとえ、時にはいくぶん恣意的に設定された制限値に対してではあるものの、あるいは経験的値であるという事実を考慮しつつ、当初から石油安全法の安全パラメーターとして使用されてきた。
【0059】
SOLASは貨物船に対する例外を作成している。SOLASは、引火点が60℃未満の油燃料を使用してはならないと規定しているが、例外として「貨物船では、[SOLAS]2.1章で明示された引火点(例えば、60℃)よりも低い引火点を有する、例えば原油などといった燃料の使用が、そのような燃料がいかなる機関室にも貯蔵されないこと、および当局の承認を条件として許容され得る」。一部の国では引火点基準がなく、また他の国では海洋用途においては比較的低い引火点を許容していることにも留意されたい。
【0060】
燃料引火点は、必要に応じて、処理を行って調整することができる。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「引火点処理」という用語は、材料と組み合わせたときに引火点を引き上げる組成物を意味する。一変形例では、引火点処理は、蒸気発火のリスクを下げるために添加された材料の蒸気圧を下げる。一変形例では、引火点調整剤は、60℃以上の引火点を有する固体または液体添加剤であり、それを低引火点燃料に添加して燃料の引火点を上昇させる。これらは、様々な種類の微粒子と油を含むことができる。例えば、炭素系燃料を処理するための高引火点添加剤が開示されている。例えば、Hughesらの特許文献3は、200℃以上の引火点を有するパラフィン系基油およびその混合物または組み合わせからなる群から選択される「高引火点希釈剤」を記載しており、具体的には、インディアナ州インディアナポリスのCalumet Lubricants社から入手可能なCalpar100(FP210℃)、Calpar325(FP240℃)およびCalparP950(FP257℃)および200℃以上の引火点を有するパラフィン系基油およびその混合物または組み合わせを例示している。
【0061】
本発明者らは、(i)軽微な引火点の変更を、(ii)特に巨大貨物船による大量の燃料消費に関連した、大規模な環境的利益(莫大なSOxおよびNOxの削減および有害金属の本質的な排除)と交換する技術的方法を発見した。今までに、そのような発見は誰もなしえなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】区切り点範囲を示す様々な実際および仮定の原油の硫黄含有量を模式的に示す説明図
【
図2】原油を処理して本発明による燃料として有用な単一の液体製品を製造するための工程配置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明の一実施形態では、炭化水素供給物の、硫黄および金属を有する原油である少なくとも一部分を、単一の液体製品に変換するための方法は、(i)該供給物を1つまたは複数の蒸留および溶剤分離ステップにより、(脱ブタン塔システムが特定の現地事情により、あるいは他の状況では排除されるべきコストにおいて好ましかろうとも、EIAの定義どおりまたはそれ以上の、常圧蒸留条件で凝縮しない蒸留ガスのみを含む)軽質オーバーヘッド蒸留ガス、溶剤分離に使用した1つまたは複数の溶剤に不溶の金属リッチ残留物、硫黄を含むガス、ならびに(蒸留範囲内にあるものとして処理されるいくつかの供給物のために灯油範囲の物質の少なくとも一部を有する)留出物および減圧軽油範囲の炭化水素を有する、硫黄を含む液体留分に分離すること、(ii)硫黄区切り点以下での取り出し液体留分ではなく(および好ましくは溶剤分離に使用された溶剤に不溶性のいかなる留分の部分でもなく)、硫黄区切り点より高い選択された取り出し液体留分(なお、好ましくは可溶解性液体留分のみが水素化処理のために選択される)を、1つまたは複数の水素化処理ステップにより水素化処理して、硫黄含有量が低減された1つまたは複数の水素化処理流れを形成すること、ならびに(iii)上記未処理留分を上記処理流れと組み合わせて、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である燃料を形成すること、を含む。本明細書で使用される場合、「ステップ」または「ゾーン」という用語は、装置構成および/もしくは単位操作またはサブゾーンの1つもしくは複数の区分を有する1つもしくは複数の処理操作を有する単位操作もしくは領域を指すことができる。装置品目は、1つ以上のタンク、容器、蒸留塔、分離器、反応器または反応器容器、ヒーター、交換器、ストリッパー、パイプ、ポンプ、コンプレッサーおよびコントローラーを有することができる。本発明の好ましい変形例では、上記供給物の実質的に全ての炭化水素組成物が留分に分離されるが、次いで、再度組み合わされて1つの液体燃料製品である燃料を形成する。該燃料は、元の供給物である液化石油ガスからの範囲の炭化水素を含む単一の液体燃料製品であり、または1つの変形例では、ナフサから水素化処理された脱アスファルト化油までを含み、複数の炭化水素製品を形成することはないが、(i)留出物の軽質オーバーヘッドガス内、(ii)上記残留物不溶物内、および(iii)硫黄または金属回収用流れ内、の炭化水素を含む炭化水素組成物は除かれる。そのような範囲は、C3またはC5からC20以上の原油由来の炭化水素の実質的に全範囲であり、上記炭化水素は、上記燃料に組み合わされた未処理流れ内の任意の留分の最低沸点である初留点を有し、上記燃料に組み合わされた処理流れの最高沸点である最高沸点を有する。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「未処理」という用語は、硫黄、窒素または金属を低減または除去するための水素化処理を受けていないことを意味する。一変形例では、このような燃料は実質的に、C3もしくはC5からC20以上の原油由来の炭化水素の範囲か、または約35℃~約315℃以上の範囲内に初留点を有する原油由来の炭化水素の範囲、好ましくは脱アスファルト化油の最後および脱アスファルト化残留物の開始の初留点までの範囲、を有するものを含むものを含んでおり、これらは溶剤分離のために選択された溶剤に溶解しない。さらにより好ましい変形例では、本発明の燃料は、常圧蒸留からの上記未処理液体留分の最低沸点部分から溶剤分離からの水素化処理可溶物の最高沸騰部分までの範囲の炭化水素の組み合わせを含む。したがって、本発明の好ましい燃料は、選択された部分範囲に分けて取り出され、そのような炭化水素の最大範囲の有意義な含有量を持たない、従来のガソリン、ディーゼル、灯油および燃料油とは正反対である。したがって、本発明の一実施形態は、原油を加工する単一の製品として得られる燃料であり、前記燃料は、0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の実際の硫黄含有量を有し、C3またはC5からC20以上の原油由来の炭化水素の実質的に全範囲を有する。上記炭化水素は、常圧蒸留条件で上記原油の任意の留分の最低沸点である初留点を有し、溶剤分離に好適な溶剤に不溶である上記原油の残留部分の終点である最高沸点を有する。変形例では、そのような燃料は、C3またはC5からC20以上の原油由来の炭化水素の実質的に全範囲を含み、上記炭化水素は、上記燃料中に組み合わされた未処理流れ内の任意の留分の最低沸点である初留点および上記燃料中に組み合わされた処理流れの最高沸点である終点を有する。1つの変形例では、原油を軽質オーバーヘッド蒸留ガス、溶剤分離に使用した1つまたは複数の溶剤に不溶の金属リッチ残留物、硫黄を含むガス(硫黄を含有するパージガスを含む)、および硫黄を含む液体留分に分離すし、該液体留分は、(i)硫黄区切り点以下の液体留分、および(ii)硫黄区切り点を超える液体留分を有し、両者は溶剤分離に使用された溶剤に可溶又は不溶であり、(b)硫黄区切り点以下の液体留分または不溶性留分ではなく、硫黄区切り点を超える可溶性液体留分を、1つまたは複数の水素化処理ステップにより水素化処理して、低減された硫黄含有量を有する1つまたは複数の処理された流れを形成し、(c)上記未処理留分を上記処理流れと組み合わせて、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である燃料を形成する。
【0064】
変形例では、そのような残留物は、電力生産、ならびに水素化処理および除去されるガス化炉固体中の金属の少なくとも一部を捕捉するための水素の少なくとも一部の生成に使用するため、1つまたは複数のガス化炉で燃焼されるか、または該残留物は、発電および水素化処理の水素を供給するための補助水素発生単位操作に使用するため、排煙ガス硫黄および金属を捕捉する1つまたは複数のボイラーで燃焼される。好ましくは、硫黄を含む全てのガスは、1つまたは複数の共通硫黄回収ユニットに送られる。
【0065】
本発明を実施することにより、上記燃料の実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限仕様を満たすように調整することができ、例えば、燃料を形成する組み合わせに対する未処理および処理流れの連続流の量を調整することにより、船舶用燃料のIMO仕様または燃焼ガスタービンの硫黄制限を満たすことができる。例えば、燃料の目標硫黄含有量を、ECA内または外での、1つまたは複数の目標IMO仕様、例えば、3.5重量%、0.5重量%、0.1重量%または他のIMO仕様から選択される仕様を満たすように調整することができる。本発明の方法に従って製造された燃料は、船舶用エンジン、燃焼ガスタービン、ボイラーなどの燃焼式ヒーター、および他の用途に有用である。
【0066】
1つの変形例では、上記水素化処理された流れの少なくとも1つは、10重量ppm以下の硫黄を有する超低硫黄流れであり、上記組み合わせに対する該流れの量を増加または低減させることにより、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である燃料の形成を調整するために用いられる。他の変形例では、上記水素化処理された流れの少なくとも1つは10重量ppm以下の硫黄を有する超低硫黄流れであり、上記未処理留分が目標硫黄含有量を超える硫黄含有量を有し、該未処理留分をトリム制御として使用され、上記組み合わせに対するそのような未処理留分の量の削減または増加により、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である燃料を形成する。さらに他の変形例では、原油供給物を、複数の炭化水素製品ではなく、実質的に1つの液体燃料製品に変換する場合、10重量ppm未満の硫黄含有量を有する低減硫黄流れである第1の水素化処理流れを作製し、硫黄含有量が0.12~0.18重量%の範囲である低減硫黄流れを有する第2の水素化処理燃料留分を作製し、未処理留分は、区切り点硫黄以下であるまたは区切り点硫黄を超える、かつ目標硫黄含有量を超える硫黄含有量を有し、上記第1水素化処理流れまたは第2水素化処理流れまたはその両者は、上記組み合わせに対するそのような流れの量の増加または低減により、トリム制御として使用され、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である燃料を形成する。
【0067】
さらにより好ましい実施形態では、1つもしくは複数の原油、残留油および他の供給物の硫黄含有量が選択されるか、または加工条件が調整されて、上記原油供給物の各バレルの少なくとも70容量%が液体留分に変換され、次いで処理されるかまたは未処理だが組み合わされる場合、複数の炭化水素製品ではなく、目標硫黄含有量以下である硫黄含有量を有する燃料を形成し、そして、上記原油供給物の各バレルの30%以下は、燃料以外のものへと向けられる。本発明の好ましい変形例では、供給物の組成、水素バランス、プロセス経済性および他の因子に加え、プロセス操作条件および流速の調整に応じて、炭化水素系供給物の各バレルのうち、少なくとも各バレル供給物の80容量%、より好ましくは約90%以上が、複数の炭化水素製品ではなく、非常に低い硫黄を有する流れを除く、1つの液体燃料製品に変換される。該非常に低い硫黄を有する流れは、トリム流を増加または低減して、最終燃料製品の硫黄含有量が目標硫黄含有量を超えないレベルに制御するためのトリムとして使用される。トリム流の過剰量は、物質バランスおよび在庫管理の目的で個別に転送することができる。本発明のそのような好ましい変形例では、上記原油供給物の各バレルの約10~30容量%以下が、溶剤抽出による常圧および減圧蒸留後の金属リッチ残留物中に捕捉される。
【0068】
他の変形例では、上記燃料を形成するために、全ての処理留分および未処理留分を組み合わせる前またはその間に、目標硫黄含有量よりも高い硫黄含有量を有する高硫黄燃料油を単独またはライトタイトオイルと共に添加する。上記高硫黄燃料油を上述の蒸留ステップ、溶剤分離ステップまたは水素化処理ステップの1つまたは複数に供給することができる。一好ましい実施形態では、超低硫黄流れは、10重量ppm以下の範囲の硫黄を有し、未処理留分は、目標硫黄含有量を超える硫黄含有量を有し、該未処理留分は、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である製品燃料を形成するため、該組み合わせに対する該未処理留分の量を増加または低減させて調整するために用いられる。
【0069】
本発明の方法の実施のための装置は、その設備面積を、典型的な下流処理ユニットを有する従来の精製所の装置設置面積の20%~30%の範囲に低減することができる。したがって、処理される供給物の1バレルあたりの資本コストが実質的に削減される。例えば、本発明の1つの特定の実施形態では、硫黄および金属を捕捉するために必要な補助装置と共に、常圧蒸留、減圧蒸留、溶剤分離、水素化処理およびガス化のうちの1つまたは複数のみを用い、硫黄および金属を捕捉するために必要な補助装置を用いるガス化を除いて、水素化処理の下流では炭化水素処理操作を有しない。
【0070】
本発明のプロセス構成の変形例は、統合された金属および硫黄捕捉手段を提供しながら、水素、蒸気および燃料ガスに加えて電力に必要な工程を供給する設備の島状構造(ユーティリティーアイランド)の効果的な統合により、高効率、低コストの稼働を提供する。ユーティリティーアイランドは、金属汚染物質を潜在的な空気排出源の構成要素として捕捉および排除するために重金属リッチ残留物を処理する、好ましくは統合された、したがってより低い資本コストでの、硫黄捕捉、処理、および除去のための、潜在的排出源としての全ての源からのサワーガスおよび酸性ガスオフガス処理を用いる、1つまたは複数のガス化システムを有する。本発明の島構成は、プロセス要求を満たすために、水素化処理ステップ用の水素、ならびに電気プロセス用および普通は廃棄流れとなる特定の流れを利用する高効率の複合サイクル発電手段を介する電気プロセス用の蒸気および燃料ガス、を作製する。
【0071】
本発明の本実施形態の一変形例は、ライトタイトオイルが、炭化水素処理および対応する水素生成のための処理バランスを提供するのに十分なより重質の炭化水素を底部留分および残渣内に含有していない場合を扱い、そのような軽質原油を水素化処理して硫黄および金属を低下させ汚染除去することを可能にする。この方法は、該軽質原油を、他の供給物と別々にまたは混合して、常圧蒸留、減圧蒸留または溶剤分離処理へと導かれる全てのより重質の供給物のいずれかまたは全てに添加するステップを有する。
【0072】
一変形例では、常圧蒸留の下流での減圧蒸留、溶剤分離、水素化処理およびガス化操作のための装置の設計は、高硫黄燃料油または前記操作のバッテリーリミット外の別の供給源からの追加の重質残渣を処理するための追加または予備の能力を有するような大きさとし、実際の硫黄含有量が目標燃料硫黄含有量制限レベル以下である燃料を形成し、追加の重質残渣からの硫黄および金属の少なくとも一部を捕捉する。
【0073】
他の実施形態では、本発明は、船舶が港内に停泊している間に本発明の燃料を使用して電力を生成し、地方での排出を低減するのに加え、陸上の配電網に販売する方法を提供する。一変形例では、本発明は、港およびその近辺での排出を低減する技術的方法を提供し、該方法は、(a)港の地点またはその近辺で配電網に通常供給される電力を生成する陸上発電設備により生じるキロワット時(KWH)あたりの硫黄または金属の排出量(例えば、港において船舶がそのような配電網に接続された場合の現地電力供給の使用に関連する排出を含む)を確認する技術的分析、および(b)(a)の地点の港にいるときに同じ船舶の船上で生成された電力により生じるKWHあたりの硫黄または金属の排出量を確認する技術的分析を含み、(a)と(b)を比較して、(b)発電のために船舶により発生した排出が、(a)の現地の発電源よりも低い場合は、船内での排出を削減し、船上での発電の全てまたは一部を配電網に提供する。本実施形態は、現地で供給される電力が特定の種類の石炭燃焼源からのものである場合、または、より低い排出の選択肢が現地の発電では利用できず、重質原油もしくは残留油を燃焼して発電に使用している場合、環境排出を低減するのに特に有用であり得る。相殺がなければ、船舶による現地の配電網へのそのような提供は、船舶発電電力のKWHコストが現地配電網電力のKWHコストを上回っている場合、または船舶による現地の配電網へのそのような提供が、低排出発電によって支払われる補助金などの排出削減控除による相殺など、他の形で船舶に利益をもたらすことがない場合には、港湾使用料の相殺がある場合を除いて、なされないであろう。
【0074】
船舶による現地配電網への提供が有益であれば、船舶は、本発明の燃料を使用して港に停泊している間に船上で発電した電力の全てまたは一部を陸上の配電網へ提供することにより生み出される収益により、海上で発生した燃料コストを相殺または削減できる。港における停泊中の配電網への提供により発生する上記収益は、港湾での停泊期間によっては、海上航行の燃料コストを、これらの新規燃料による実際の海上航行燃料コストが海上航行のための高硫黄燃料油のコストよりも低くなるような水準まで、相殺することができる。
【0075】
図1は、区切り点範囲を示す様々な実際および仮定の原油の硫黄含有量の模式的なプロットである。例示的な原油硫黄プロファイル4、5、6は、非特許文献6から抽出された実際のデータの中心点に基づいてプロットされている。仮定の原油硫黄プロファイル1、2、3は、その一部を、非特許文献7を含む種々の供給源から採られた実際のデータから得ている。
【0076】
図1は、本発明のプロセス構成のための異なる原油に対する「区切り点」の定義を示唆する方法を示す。
図1は、区切り点を例示しており、区切り点とは、取り出し製品の単位体積の変化あたりの硫黄含有量の変化(グラフの傾き)がもはや実質的に水平または平坦ではない点であって、代わって区切り点では、取り出し量がわずかに増加するにつれ、硫黄含有量が急速にまたは指数関数的に増加し始め、単位体積あたりのグラフの傾きに大きな変化をもたらす。また、区切り点以降では、原油供給原料の種類に応じて、硫黄含有化合物、種類と組成、ならびに複雑さが変化する。区切り点は、運転効率のために、費用のかかる集中的な水素化処理をどのように迂回するのが最適かを判断することを可能にし、それでいて目標硫黄含有量制限仕様に適合する燃料を作製することを可能にする。すなわち、区切り点は、硫黄含有量を減少させるためのさらに下流の処理から遠ざかるまたは低減される、例えば水素化処理から遠ざかる方向に導かれる、常圧原油塔留分の最大硫黄含有量であることができる。区切り点より上の留分は、硫黄含有量低減のための下流の処理に導かれ、一方区切り点以下の留分は処理されず、実質的な操作の節約につながる。従来の精製では、取り出しは、硫黄含有量ではなく、温度範囲によって固定されている。目標硫黄含有量は、最終用途要件の一例として、区切り点の選択を決定することができる。区切り点の設定が高すぎると、過剰なより高い硫黄量の未処理流れは、より低い硫黄量の水素化処理された流れが増えてしまうため、容易に相殺することができない。
【0077】
図2は、本発明の他の実施形態の概要を示し、燃料として使用するのに適した単一の液体製品の製造のためのプロセス構成の主要な構成要素を簡略化した形で示している。
図2は、常圧および減圧蒸留、溶剤分離、水素化処理ならびにガス化を統合して単一の低硫黄、本質的に金属を含まない燃料製品を製造する方法を示す。
【0078】
硫黄、窒素および金属を含む汚染原油の流れは、原油にとって好ましい脱塩などの前処理後、ライン2を経て、本プロセスに入る。本実施例では、原油供給原料2は、単一の原油、1つもしくは複数の原油の配合物、または原油と高硫黄燃料油などの残留油との配合物であることができる。供給原料2は、常圧蒸留塔100に導かれ、そこで供給原料は軽質オーバーヘッドガス4と複数の取り出し物とに分離される。軽質オーバーヘッドガス4は、プロセス燃料として有用な非凝縮蒸留ガス6を含むか、または他の用途のために捕捉される。1つの好ましい変形例では、このようなオーバーヘッドガス4に関する安定化システムに関連する資本の支出は回避される。しかし、現地のニーズに応じて、例えば、特別な船舶用燃料最大H
2S仕様など、安定化システムを含むことができる。
図2に示す実施形態では、複数の取り出し物には、以下の範囲内で1つまたは複数の流れ、すなわち(1)ライン4を介したライン16の安定化されていない自然のままの直留ナフサ、(2)ライン18の硫黄区切り点取り出し、(3)ライン24の軽質留出物、(4)ライン26の中間留出物、(5)ライン28の第1重質留出物、および(6)ライン30の常圧残留物、が含まれる。
【0079】
当技術分野の様々な用途では、異なる意味が、世界の異なる地域における同じまたは類似の取り出し物に割り当てられており、その意味は、異なっていたり、重複していたり、矛盾していたり、混乱を招いたりすることが多い。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、以下の意味に用いられる。すなわち、(a)「ナフサ」とは、プロパンのように最低3つの炭素C3を有するものから約175℃(約華氏350度)の初留点(IBP)を有するものまでの範囲にあり、メタン以下などといった低沸点化合物を除く、炭素含有組成物を意味する。(b)「安定化ナフサ」は、燃料ブレンド基材として使用されるナフサまたは他のナフサ範囲物質に関する限り、ブタンまたはプロパン以下の低沸点化合物がほぼ完全にナフサまたは燃料から除去されていることを意味し、例えば、従来の精製所では、ナフサ脱ブタン蒸留塔からの底流が安定化ナフサである。(c)「不安定化ナフサ」は、C4以下の軽質成分が除去されていないナフサを意味し、例えば、従来の精製所では、ナフサ脱ブタン塔への供給原料流れが不安定化ナフサである。(d)「安定化されていない自然のままの直留ナフサ」は、プロパンのように最低3つの炭素C3を有するものから約175℃(約華氏350度)の初留点(IBP)を有するものまでの範囲にあり、メタン以下などといった低沸点化合物を除き、常圧蒸留オーバーヘッド蒸留ガスが含まれてもよく、常圧蒸留から回収された炭素含有組成物を意味する。(e)「自然のままのナフサ」は、水素化処理において、蒸留塔または他の分離器から回収された水素化処理装置流出物の安定化されていない軽質留分を意味し、操作上で考えると、留出部範囲、重油範囲、またはその他の分離器への供給物のナフサ部よりも重質の物質などの分離器底部またはその近辺の1つまたは複数の重質留分を回収する水素化処理ゾーンの一部であって、安定化されていないものである。(f)「区切り点取り出し物」は、本明細書において既に定義され、その例を
図1に示している。(g)本明細書中での「区切り点取り出しより上の軽質留出物」または「軽質留出物」は、区切り点取り出し物の最大硫黄含有量より高い初期硫黄含有量を有する留分であり、それに対応して、区切り点取り出し物の最高終点よりも高い沸点(IBP)を有する。(h)「中間留出物」は、好ましい蒸留塔設計に基づく取り出し物として分離された、軽質留出物および重質留出物の間の留分を意味し、例えば、中間留出取り出し物は排除され、軽質留出物または重質留種物のいずれかと組み合わせられ得る。(i)「第1重質留出物」は、常圧蒸留ユニットの最重質留分を意味し、その硫黄含有量および沸点範囲は、蒸留ユニット供給原料の硫黄組成、原油塔稼働の過酷さおよび下流水素化処理条件などといった1つまたは複数の稼働条件により決定される。(j)「第1重質留出物」は、常圧蒸留ユニットの最重質留分を意味し、蒸留ユニット供給原料の硫黄組成および硫黄区切り点取り出しに関連し、原油塔稼働の過酷さ、下流留出物の水素化処理条件の過酷さなどといった1つまたは複数の稼働因子を参照して決定される硫黄含有量および沸点範囲を有する。(k)「第2重質留出物」は、減圧蒸留塔の最軽質留分を意味し、蒸留ユニット供給原料の硫黄組成および硫黄区切り点取り出しに関連し、原油塔稼働の過酷さ、下流留出物の水素化処理条件の過酷さなどといった1つまたは複数の稼働因子を参照して決定される硫黄含有量および沸点範囲を有する。(j)「常圧残留物」、「減圧残留物」、「軽質減圧軽油」および「重質減圧軽油」を含む「減圧軽油」、「溶剤分離」、「水素化処理」、その他の用語、およびこれら用語の変形は、原油を処理する技術の当業者に公知である。
【0080】
好ましくは、(1)ライン4を介したライン16の安定化されていない自然のままの直留ナフサ、および(2)ライン18の硫黄区切り点取り出し、の流れの組み合わせは、0.06重量%~0.08重量%未満の範囲の硫黄を含有し、ライン600の燃料の組み合わせの目標硫黄含有量が0.1重量%以下であるならば、処理流れ70の硫黄含有量は10重量ppm未満であり、その際、蒸気10および70の流速は、合わせて、燃料組み合わせ600が目標硫黄含有量を超えないように調整される。
【0081】
図2において、常圧残留物は、ライン30を介して減圧蒸留塔200に供給され、(1)ライン32の第2重質留出物、(2)ライン36の軽質減圧軽油、(3)ライン38の重質減圧軽油、および(4)ライン50の減圧残留物が作製される。減圧残留物は、ライン50を介して溶剤分離300に導かれ、(1)ライン80の脱アスファルト化油およびライン90の金属リッチ重質残渣であるピッチが作製される。
【0082】
図2は、2つの水素化処理ゾーン、すなわち留出物水素化処理ゾーン430および重油水素化処理ゾーン460、を含む統合型水素化処理システム400を示す。統合された水素処理システムは、当技術分野において公知であり、この用途に好ましい。しかし、ゾーン430とゾーン460の両方における水素化脱硫および水素化脱金属には、約117~138バール(1700~2000psi)の範囲内の比較的低圧力の穏やかな水素化処理条件で十分である。
【0083】
軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28および第2重質留出物32は、好ましくは、統合型水素化処理システム400に供給され、触媒の存在下、水素化処理条件のもと水素処理され、ライン60に留出物水素化処理ゾーン430流出物流れを形成する。このような水素化処理装置流出物60は、以下の範囲内の物質、すなわち(1)予想される沸点範囲がC5(炭素数5の組成物)より上~約175℃(約摂氏350度)である、自然のままのナフサ、および(2)好ましくは、10重量ppm未満の硫黄含有量を有し、軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28および第2重質留出物32を有する処理蒸留蒸気の組み合わせから形成される低減硫黄流れである、超低硫黄ディーゼルを含む。ゾーン430内の水素化処理の副生成物は、その少なくとも一部は、硫黄除去処理され、留出物水素化処理ゾーン430もしくは重油水素化処理ゾーン460、またはその両者に加える水素として再利用される、硫化水素、水素リッチオフガスなど硫黄を含有するガス、および典型的には少量の液化石油ガスを含んでもよいことは、水素化処理技術分野における当業者に公知である。
【0084】
軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38および脱アスファルト化油80もまた、好ましくは、統合型水素化処理システム400に供給され、触媒の存在下、水素化処理条件のもと水素処理され、重質減圧軽油水素化処理ゾーン460流出物流れ70を形成する。そのような水素化処理装置流出物は、以下、(1)予想される沸点範囲がC5(炭素数5の組成物)より上~約175℃(約摂氏350度)である、自然のままのナフサ、および(2)好ましくは、10重量ppm未満の硫黄含有量を有し、軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38および脱アスファルト化油80を有する処理蒸留蒸気の組み合わせの第1部分から形成される、重油水素化処理ゾーン第1低減硫黄流れである、超低硫黄ディーゼル、(3)好ましくは、0.12~0.18重量%の範囲の硫黄含有量を有し、軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38および脱アスファルト化油80を有する処理蒸留蒸気の組み合わせの第2部分から形成される、第2低減硫黄流れ、の範囲内の物質を有する。ゾーン460内の水素化処理の副生成物は、その少なくとも一部は、硫黄除去処理され、留出物水素化処理ゾーン430もしくは重油水素化処理ゾーン460、またはその両者に添加する水素として再利用される、硫化水素、水素リッチオフガスなど硫黄ガスを含有するガス、および典型的には少量の液化石油ガスを含んでもよいことは、水素化処理技術分野における当業者に公知である。
【0085】
ライン60およびライン70を介して未処理流れ10および1つまたは複数の水素化処理液体流れが組み合わされて、低硫黄で実質的に金属を含まない燃料製品をライン600に形成する。ここで、「組み合わせる」とは、ライン中の流れ混合、配合、または他の密接な組み合わせにより形成されることを意味する。一変形例では、ライン4および16を介する安定化されていない自然のままの直留ナフサとライン18を介する硫黄区切り点取り出しとを、100内で追加の処理なしで組み合わせ、次いで、自然のままのナフサおよび超低硫黄ディーゼルを含む、留出物水素化処理ゾーン430からの1つまたは複数の流出物、ならびに自然のままのナフサ、超低硫黄ディーゼルならびに重油水素化処理ゾーン460で形成される第2低減硫黄流れを有する、重油水素化処理ゾーン460からの1つまたは複数の流出物を組み合わせることによって600に燃料組み合わせを形成する。他の変形例では、水素化処理ゾーン400により、ゾーン430および460の流出物を組み合わせて、そのようなゾーン内でライン60とライン70とが組み合わされたかのように(図示せず)単一の流れを形成しそのような変形例は、水素化処理装置430および460の流出物を分離することが好ましくない場合に、有用である。好ましくは、減圧軽油水素化処理部分460は、オーバーヘッドシステムフローおよびボトムシステムフローを有し、そのフローの一部は、ディーゼル沸点範囲物質である。これは、ゾーン430または460によって組み合わせ600に提供される組み合わせたディーゼルと比較して相対的に少量でよく、組み合わせたディーゼル側水素化処理部分430はまた、ブロック600に導かれるかまたはトリムもしくは他の目的に使用される低硫黄ディーゼルを含むオーバーヘッドシステムフローおよびボトムシステムフロー単独として、またはその一部としての、自然のままのナフサ副流を有する。
【0086】
アスファルトおよび金属リッチ重質残渣を含む脱アスファルト器300底部重質残渣90は、蒸気および酸素、および任意の炭素含有スラリークエンチの存在下、重質残渣90の部分酸化をするための1つまたは複数のガス化炉を含む統合型ガス化複合サイクルシステム500に供給され、合成ガスをであって、少なくともその一部はライン502を介して留出物水素化処理装置430および重油水素化処理装置460を含む水素化処理システム400に送られて使用される水素に変換され、、またプロセス用途および他の用途のための504内での発電のためガス化システム500内の複合サイクル発電ユニットのガスタービンを燃焼させる合成ガスである、合成ガスを形成し、高温タービンガスと、高温ガスタービンガスから熱を回収するための熱回収発生器をさらに有し、蒸気を生成し、追加的な発電のために504を介して送られ、蒸気タービンを駆動して発電する。各ガス化炉は、金属リッチ煤煙も産生する。煤煙は粒状固体の形状であってよく、原油および/または重質供給原料由来の金属汚染物質を含み、該固体は、各ガス化炉からライン506を経て金属除去に供給される。支持システムは、1つまたは複数のガス処理ユニットを含み、全ての単位操作からの硫黄含有ガス流れの全てが、サワーガスまたは酸性ガスであるかどうかにかかわらず、508を介して硫黄除去のために上記ガス処理ユニットに供給される。好ましくは、このような硫黄除去システムは、ガス化システムがその一部であるところのユーティリティーアイランドの一部である。より好ましくは、1つまたは複数の硫黄含有ガス流れは、全体的な硫黄除去の一部として業務用硫黄酸産生に向けられる。ガス化システム500は、典型的には、ガス化システム内で生成された原料合成ガスの少なくとも一部から必要な水素を生成するために容量および構成が最適化された酸性ガス除去ユニットおよびサワーCOシフトシステムを含む。
【0087】
図2に示す統合型水素化処理システム400の変形例では、ガス化システム500からの補給用水素含有ガス502は、水素化処理に必要な量で、水素化処理ブロック400内の内部再利用水素と共に、所望レベルの脱硫および脱金属化を達成するために選択された触媒および当該技術分野で知られている他の条件に基づいて調整された、効果的な水素化処理操作温度、圧力、空間速度および圧力になるまで圧縮、加熱される。このように調製された水素502は(再利用水素と共に)最初に高圧ゾーンである重油水素化処理ゾーン460に配置される。水素化処理液体および水素含有ガスを有する重油水素化処理ゾーン460の流出物は、高圧分離器(図示せず)で分離され、その際、それらの液体は、ゾーン460内で集積され、水素を含有する液体は回収され、ライン410を通り、留出物水素化処理装置430に送られて、低圧力ゾーンでの水素化処理に使用される。水素化処理ゾーン430からのサワーおよび酸性ガスを有する水素化処理された液体およびパージガスは、ライン412を通過して、重油水素化処理ゾーン460に入り、そこで実質的に混合される。両方のゾーン430および460の水素化処理された処理液430および460は、ライン60および70を介して分離され、プロセスの硫黄および他の物質バランスの必要性に応じて、別々に組み合わせ燃料600へ投入されるか、組み合わせゾーン600の硫黄レベルを制御するためのトリムとして添加されるか、または取り出され得る(図示せず)。図示した統合型水素化処理の変形例では、両ゾーン430および460のパージガス420は、ライン420を介して、硫黄回収システムおよび任意でガス化またはボイラーを有するユーティリティーアイランド500に向けられる。
図2には示されていないが、様々な補助的な高、中および低圧力気液分離器、流れヒーター、ガス再利用およびパージライン、ガスまたは軽質分と液体を分離するための還流ドラム、コンプレッサー、冷却システム、および他の補助的なアプリケーションは、水素化処理技術分野の当業者に公知である。また、共通のユーティリティーアイランド内ではなく、水素化処理ゾーン内に位置する場合には、水素化処理ゾーン400内に、サワーガスまたは酸性ガス処理のための様々なアミンまたは他の硫黄回収剤吸収剤および剥離システムが含まれてもよい。
【0088】
水素化処理触媒の選択および水素化処理ゾーン400のプロセス条件の調整のためのパラメーターは、石油精製産業に従事する当業者の技術範囲内にあり、本発明の水素化処理区分の実施についての追加の説明を必要としない。留出物水素化処理装置430および重油水素化処理装置460の反応ゾーンでは、使用される水素化処理触媒は、水素含有量を増加させ、ならびに/または硫黄、窒素、酸素、リンおよび金属へテロ原子汚染物質を除去するための炭化水素供給物の水素添加を触媒するのに有用な、任意の触媒組成物を含む。使用される特定の触媒の種類および様々な層構成ならびに選択される水素化処理条件は、それぞれのユニットにより処理される各供給原料の炭化水素製品組成物、ならびに硫黄および金属含有量および重質炭素残留物、ならびに各ゾーンからの生成物流れ中の望ましい低減硫黄および金属含有量に依存する。そのような触媒は、炭化水素原料油の水素化処理に有用な任意の触媒から選択できるが、操作条件は、本発明の好ましい実施形態の実施においては、環飽和または水素化変換を回避または最小化するように調整される。参照により本明細書に組み込まれる、Baldassariらによる特許文献4は、様々な好適な水素化処理触媒に加え、様々な統合型水素化処理装置を含む好適な水素化処理工程を説明している。Baldassariらはさらに、蒸留および重油水素化処理のための様々な触媒組成物および条件範囲を要約し、水素化分解および残留物水素化変換のための条件を識別している。これらの全ては、水素化処理の技術分野の当業者に公知である。非特許文献8には、水素添加により硫黄を除去し、高活性Ni/Mo触媒の使用により硫黄を8ppm未満にした製品を製造するためのユニット設計、触媒の選択、水素消費および他の稼働条件が記載されている。Shifletらによる非特許文献9にもまた、立体障害のない硫黄を除去するための高活性CoMo触媒、および残存する立体障害硫黄を除去するための高活性NiMo触媒を用いて10ppm以下までとする水素化処理が記載されている。
【0089】
図2に示す他の変形例では、供給原料2の硫黄含有量は、硫黄プロファイルの指数関数的な区切り点および上昇率を示す分析により測定される。例えば、0.06~0.08重量%(または、未処理および水素化処理蒸気の相対的流速およびそれぞれの硫黄含有量を踏まえ、該量よりも高い)範囲の硫黄含有量の区切り点およびそのようなプロファイルを使用して、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16および硫黄区切り点取り出し18の利用可能な量を最大化するように常圧蒸留100の調整を制御し、その際、直留ナフサ16および硫黄区切り点取り出し18は、流動混合または配合により組み合わされて流れ、処理なしでも製品集積ゾーン600で入手可能であり、必要であれば、(1)留出物水素化処理ゾーン430への軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28もしくは第2重質留出物32の流れの量、または(2)重油水素化処理装置460への軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38もしくは脱アスファルト化油80の流れの量が測定または低減され、これらの流れは、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下である燃料製品600を形成するため、増加または低減された量で水素化処理に導かれる。さらに他の変形例では、分析は、未処理の安定化されていない自然のままの直留ナフサ16および未処理の硫黄区切り点取り出し18以外の流れの最大量を制御して、水素化処理に向かう流れの量を決定し、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下である燃料600を形成するために使用することができる。すなわち、任意の(1)留出物水素化処理ゾーン430への軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28もしくは第2重質留出物32の流れの量、または(2)重油水素化処理装置460への軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38もしくは脱アスファルト化油80の流れの量、である水素化処理400への様々な流量を、600で未処理流れ10と混合される水素化処理ゾーン400の流出物60もしくは70またはその両者の硫黄含有量を調整するように、増加または低減することができる。
【0090】
一変形例では、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下である燃料製品600を、実際の最終製品600の硫黄レベルを調整することにより形成する。調整は、組み合わせゾーン600への、(a)硫黄除去の処理がされていないため硫黄を含有していても良い、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16もしくは硫黄区切り点取り出し18、または(b)処理された軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28、第2重質留出物32などの留出物水素化処理装置430に出入りする流れ、または(c)処理された軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38、脱アスファルト化油80などの重油水素化処理装置に出入りする流れ、の1つまたは複数の量を増加または低減することにより行われる。ここで、そのような調整は、各流れ60または70の、組み合わせ600への、硫黄含有量に対する相対的な寄与度の測定に基づいている。
【0091】
一実施形態では、燃料600向けに低金属含有量および目標硫黄含有量制限レベル未満の硫黄含有量を有するライトタイトオイルもしくは凝縮物、または非随伴ガスおよびシェールガス製造用凝集物などのライトタイトオイルの組み合わせなどは、以下、すなわち(a)常圧蒸留100もしくは減圧蒸留200、溶剤分離300への供給原料、留出物水素化処理装置430への軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28もしくは第2重質留出物32のいずれかの供給原料、もしくは重油水素化処理装置460への軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38もしくは脱アスファルト化油80のいずれかの供給原料、(b)追加の処理を行うことなしに、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16および硫黄区切り点取り出し18から形成された流れ10、(c)自然のままのナフサおよび超低硫黄ディーゼルを含む留出物水素化処理装置により形成される流れ、(d)自然のままのナフサ、超低硫黄ディーゼルおよび第2低減硫黄流れを含む重油水素化処理装置により形成される流れ、(e)最終製品燃料600に導かれる、結合された水素化処理ユニット400の組み合わせ流出物70、または(f)最終製品燃料を形成するために添加される、そのような燃料を生産する設備の囲いの内部または外部で添加される別の燃料、の1つまたは複数と組み合わせる。
【0092】
図2に示す一変形例では、燃料製品600の硫黄含有量は、(a)組み合わせ600に、ライン10を介して、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16および硫黄区切り点取り出し18を、そのような流れに追加の処理を加えることなく、供給すること、次いで、(b)実際の製品の硫黄レベル600を、(1)留出物水素化処理ゾーン430への軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28もしくは第2重質留出物32の流れ、(2)重油水素化処理装置460への軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38もしくは脱アスファルト化油80の流れの1つもしくは複数の組み合わせへの量を増加もしくは低減して調整すること、(c)次いで、何らかの理由で実際の製品600の硫黄含有量を目標硫黄レベルまで上昇させる必要があるならば、組み合わせへの(1)ライン60を介する、軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28もしくは第2重質留出物32から形成された、留出物水素化処理ゾーン430からの流れ、(2)ライン70を介する、軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38および脱アスファルト化油80から形成された、重油水素化処理ゾーン460からの流れ、の1つもしくは複数の量を減らすこと、または(d)何らかの理由で実際の製品600の硫黄含有量を目標硫黄レベルまで低減させる必要があるならば、組み合わせへの(1)ライン60を介する、留出物水素化処理ゾーン430からの上記流れ、(2)ライン70を介する、重油水素化処理ゾーン460からの上記流れ、の1つもしくは複数の量を増加すること、によって目標硫黄含有量制限レベル以下に制御される。このような促進により、例えば、海上および陸上用ガスタービンのための500重量ppm未満の硫黄燃料を目標とした燃料供給や、異なる目標硫黄含有量を必要とする異なる場所での同じ用途のための様々な範囲など、複数の硫黄等級を効率的に製造することができる。
【0093】
組み合わせ600における最終燃料の目標硫黄含有量制限レベルよりも高い硫黄含有量を有する高硫黄燃料油の使用の変形例では、高硫黄燃料油は、1つまたは複数の様々な供給原料の一部として、それぞれの単位操作の1つまたは複数へ供給される。高硫黄燃料油は、(a)常圧蒸留100への供給ライン2もしくは減圧蒸留200へのライン30へ、または(b)溶剤分離300へのライン50へ、または(c)別々に、もしくは上記留出物水素化処理装置430への軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物26もしくは第2重質留出物32供給原料の1つもしくは複数と組み合わせて、留出物水素化処理装置430へのライン20へ、または(d)別々に、もしくは軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38および脱アスファルト化油80の1つもしくは複数と組み合わせて、重油水素化処理装置460へのライン40へ添加して、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下である燃料組み合わせ600を形成することができる。高硫黄燃料油の供給原料としての使用およびその供給点の選択に関するこれらの変形例の1つまたは複数の実施において、その硫黄含有量、アスファルテン含有量などといった高硫黄燃料油の供給の性質および共処理された原油または他の供給原料との適合性に関する他の因子、容器スペースおよびエネルギー消費、アスファルテン含有量、未溶解成分の含有量、ガム形成、ならびに他の効率の問題が考慮されることは、精製技術分野の当業者に公知である。
【0094】
他の変形例では、組み合わせ600ゾーンの清浄な燃料は、燃料600の実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下となるように、目標硫黄含有量制限レベルよりも高い硫黄含有量を有することができる高硫黄燃料油を、(a)高硫黄燃料油の硫黄含有量によっては追加の処理が加えられることのない、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16および硫黄区切り点取り出し18から形成される流れ10、または(b)自然のままのナフサおよび超低硫黄ディーゼル範囲物質を含む留出物水素化処理装置430により形成される流れ60、または(c)自然のままのナフサ、超低硫黄ディーゼルおよび第2低減硫黄流れを含む重油水素化処理装置460から形成される流れ70もしくは水素化処理ゾーン400からの組み合わせ流出物70、の1つまたは複数に添加することにより形成される。
【0095】
燃料組成物600の作製に高硫黄燃料油を使用する好ましい一変形例では、そのような高硫黄燃料油の硫黄含有量を測定し、次いで高硫黄燃料油を、供給原料50の一部として溶剤分離ユニットに供給し、脱アスファルト化油流れ80の一部を形成するか、または供給原料20の一部として軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物26もしくは第2重質留出物32の1つもしくは複数の蒸留流れと組み合わせられて、留出物水素化処理装置430に供給されるか、または軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38および脱アスファルト化油80の重油流れの1つもしくは複数、もしくは蒸留流れと重油流れの両者と組み合わせられて、高硫黄燃料油の硫黄含有量次第で、留出物水素化処理装置430もしくは重油水素化処理装置460、もしくは両者への供給原料の一部を形成し、ゾーン430もしくは460の水素化処理条件の調整を最適化し、または両ゾーンを調整して実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下である燃料を形成する。
【0096】
本発明の他の実施形態では、その仕様が硫黄含有量制限以下の清浄な燃料は、典型的には常圧残留物またはより重質であり、高硫黄燃料油の仕様外または標準的な規格内にある密度または硫黄または金属含有量を有してもよい高硫黄燃料油を含む、重質残渣油の使用によって形成することができる。市場における考慮事項により、このような重質残渣油は、燃料プラントのバッテリーリミット内とは異なる供給源から入手可能であることが多い。燃料600の目標硫黄含有量制限レベルよりも高い硫黄含有量を有する重質残渣は、以下、すなわち(a)減圧蒸留塔200であって、別々にもしくはライン30を介して常圧残留物と組み合わせて蒸留塔200に供給し、第2重質留出物32、軽質減圧軽油36、重質減圧軽油もしくは減圧残留物50のいずれかもしくは全ての少なくとも一部を作製する常圧蒸留塔200、または(b)溶剤分離300であって、別々にもしくはライン50を介して溶剤分離300への減圧残留物供給物と組み合わせられて、脱アスファルト化油80の少なくとも一部、もしくはガス化、硫黄回収および他の補助的な処理のためにガス化システム500へと通過する金属リッチ重質残渣を有するピッチ90を形成する溶剤分離300、の1つまたは複数に供給される。このような重質残渣油はまた、ユーティリティーアイランド500への供給物としてライン90を介してピッチと組み合わせられてもよい。変形例では、本発明の燃料600の硫黄含有量を調整するトリムのための処理をしないで、比較的高硫黄含有量(0.5重量%を超える)または高金属含有量を有する未処理の高硫黄燃料油を使用する場合、そのような使用は、組み合わせ600が目標硫黄含有量制限を超えないことを確実にするための処理をしないで使用される場合、比較的小さな調整量とする。
【0097】
様々な中間的な個々の生成物を示す
図2のフローシートは、描かれた各単位操作の流出物における主要な生成物および副生成物の説明および理解のためのものである。各単位操作による分離または処理の選択された変化は、選択された原油および供給原料、ならびに目標硫黄仕様以下の燃料を製造するために製造された中間生成物の最適化に依存する。例えば、ゾーン430内で生成された超低ディーゼルが濾過されず、全ての水素化処理された物質が
図2に示すようにライン70内で組み合わせられる場合には、共通の気液分離器(図示せず)の使用によって、水素化処理装置430および460からの流出物60および70の両方を水素化処理ゾーン400内で組み合わせることができ、ガスのみが除去される。あるいは、最終的な組み合わせゾーン600の燃料の硫黄含有量のトリム制御または他の理由のための自然のままのナフサまたは超低硫黄ディーゼルの一部の分離または削除がプロセス目的である場合、水素化処理装置430および460からの流出物60および70は、自然のままのナフサまたは超低硫黄ディーゼルの留分を除去することができるよう、別々にまたは組み合わせて、ストリッパーまたは蒸留塔に送られてもよい。
【0098】
本発明の様々な実施形態を説明したが、それらは例示に過ぎず限定的なものではないことを理解すべきである。例えば、燃料の引火点が考慮されていない場合、低い金属含有量および目標硫黄含有量未満の硫黄含有量を有する未処理のライトタイトオイルもしくは凝縮物、または未処理のライトタイトオイルもしくは凝縮物の組み合わせは、上記未処理の留分と上記処理流れとの組み合わせの一部として添加され、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である燃料を形成する。本明細書で使用される「ライトタイトオイル」または「LTO」という用語は、(i)0.1重量%~0.2重量%の範囲の硫黄含有量、および(ii)API(度)で38~57度の範囲の密度、および(iii)供給源に基づく幅広い炭化水素範囲、を有する源泉凝縮物またはシェールガス凝縮物を意味する。LTOは、典型的には、全量に対する重量%として、(a)5~20重量%の液化石油ガス範囲、(b)10~35重量%のナフサ、(c)15~30重量%の灯油、(d)15~25重量%のディーゼル、(e)減圧軽油、および(f)ゼロ(0%)~10重量%の重質残渣の、互いに重なり合う、予想される留出物取り出しの留分範囲を有する。
【0099】
一変形例では、本発明は、(i)例えば、利用可能な油が本発明の燃焼製造プラントのバッテリーリミット外の生産地をもつ場合、未処理のライトタイトオイルもしくは凝縮物の品質を有する原油、またはライトタイトオイルもしくは凝縮物の組み合わせと、(ii)1つまたは複数の他の原油供給原料との、本発明の方法による共処理を行い、低金属含有量と目標硫黄含有量未満の硫黄含有量を有する低コスト燃料を作製する。このようなライトタイト原油は、底部留分に十分な重質炭化水素を含有していない可能性が高く(例えば、0%または非常に低い重質残渣)、残渣の範囲は、脱硫または他の水素化処理のための処理バランスを提供しておらず、対応する残渣も、そのようなライトタイト原油を費用対効果のある方法で水素化し、硫黄および金属を削減して汚染除去するか、または十分な潤滑性を与え、一定の種類のエンジンでの使用を支えるための水素生成のプロセスを支えるに十分でない。
【0100】
本発明の新規燃料の実施形態は、国際標準化機構(ISO)によって発行されたISO8217規格を参照することにより、より良く理解される。ISO8217には、船上での消費のための一連の海洋残留燃料のカテゴリーと詳しい仕様が記載されている。これらの仕様は、それらの開発の基礎として、原油供給、精製方法、および他の条件が様々に変動することを認識している。このような仕様は、硫黄含有量のなどといった特性に対する様々な国際的要件が考慮されていることを示唆している。現時点で最も厳しいISO8217は、RMA10であり、明細書と請求項の解釈はこれに基づくべきである。本発明の新規燃料の模擬組成物(原油を留分に分割し、その留分の一部を水素化処理し、溶剤分離中に溶剤ではない残留物を除去し、次いで未処理および処理区分を再構成するするシミュレーションモデルにより作製される)に基づけば、これらの新規燃料は、引火点を除いて全てのISO RMA10仕様に適合および/または超えており、引火点については貨物船に対する引火点要件のSOLAS例外に該当し、該燃料は、これらの新規燃料を上記の残渣からなる船舶用燃料と区別する新規の特徴および改善を有することを、本発明者らは主張する。
【0101】
一変形例では、本発明者らは、引火点を除いて、全てのISO RMA10(ISO2817-10)仕様に適合または超えており、以下の特筆すべき特徴、すなわち(a)0.50%m/m(重量%)以下、好ましくは、0.05~0.20m/m(重量%)の範囲の硫黄、(b)5.0mg/Kg(重量ppm)以下、好ましくは、1.0mg/Kg(1.0重量ppm)以下、例えば、0.2mg/Kg(0.2重量ppm)の金属、および(c)60℃以下の引火点、および他のISO RMA10仕様より優れた特徴、のいずれかまたは全てを有する改良された燃料を提供する。変形例では、これら新規の燃料はさらに、以下のような特筆すべき特徴、すなわち(a)10cSt以下の粘度、(b)0(零)℃以下の流動点、(c)820~880Kg/M3の範囲内の密度、(d)800以下のCCAI、(e)20mg/Kg以下、好ましくは、10mg/Kg以下のナトリウム、の1つまたは複数を有する。上記の全ては、ISO2817-10により規定されている試験または計算方法により測定される。このような燃料は、ナフサの初留点およびヘプタンなどの溶剤分離に好適な溶剤に可溶な成分の中で一番高い沸点を有する成分の最高沸点を有する一連の炭化水素を含む。金属は、供給原料の組成および稼働条件の調整に依存して、100重量ppbまで低減できる。
【0102】
本発明者らは、貨物船に対する引火点要件のSOLAS例外に該当する硫黄および金属量が極めて低い燃料を低コストで生産できることを発見した。他の用途のために引火点処理が必要な場合、60℃以上の引火点を有するため、またはそのような要求のための引火点処理は、当該技術分野で公知である。
【0103】
本発明の低粘度、低流動点燃料を船舶用エンジンに使用することで、通常の残留油の加熱に関連して必要とされるエネルギー消費を回避または低減し、港内における給油所または海上での圧送および取り扱いを可能にする。重質残渣油は濃く、その比較的高い流動点と高い粘度のために、その貯蔵、圧送、および船舶用エンジンへの供給の全てにおいて、加熱し高温に保たれる必要があり、そのような加熱はエネルギーを消費する。
【0104】
以下の表1は、本発明の燃料の2つの変形例、すなわち0.1重量%の極めて低い硫黄含有量のものと、さらに低減されたレベル0.05重量%のものとを示し、ISO RMA 10と比較した硫黄を以下の表1に示す。
【0105】
【0106】
表1に示す特性を有するこのような本発明の燃料は、C3またはC5からC20以上の原油由来の炭化水素の実質的に全範囲を有する点でさらに識別され、上記炭化水素の有する初留点は、常圧蒸留条件下での上記原油の任意の留分の沸点の内、最低のものであり、最高沸点は、溶剤分離に好適な溶剤に溶解しない、上記原油の残留部分の終点である。これに対し、残渣は、減圧蒸留残渣、溶剤脱アスファルト化残留物、他のコーカーなどがそのような広範囲の炭化水素を含有しておらず、非常に重質な物質のみに限定される。
【0107】
本明細書及び特許請求の範囲の開示から、本発明は、現在の海洋レシプロエンジンとの適合性の基準を満たすか超えるだけでなく、海洋用途に使用可能な高度な燃焼ガスタービンへの適合性も有する、超清浄燃料の製造を可能にする。そのような高度タービンエンジンは、現在入手可能であるが、典型的には陸上用である。これらの高度なタービンエンジンは、一旦船上で起動させると、航海中に本発明の燃料を燃焼させることによって、腐食または灰の形成を少なくしつつ、大きな効率上の利点を有することができる。また、港で利用可能な燃料経済に応じて、船舶は、これらの新規燃料を港で燃焼させ、発電してその電力を現地の電力網に送って収益を上げることによって、効率上の利点を獲得することができる。このような港湾発電による収益は、海上燃料費を相殺し、船舶への海上燃料費の実際の合計を高硫黄燃料油未満に下げることができ、したがって、本発明の低硫黄燃料がより高価な航海燃料である場合においても、その使用費用を相殺することとなる。最大の利益は、環境に対するものであり、特定の規範事例の比較においては、SOxおよびNOxの排出量を95%以上削減することが可能であり、航海中の有害金属の排出を潜在的には99%以上(ほぼ100%)削減することができる。さらに、環境は、CO2削減から二通りの利益、すなわち(i)船上の高度ガスタービンエンジンの効率性、および(ii)港湾での発電の効率性、を得、石炭、原油、残留油またはある種の他の燃料の非効率的な燃焼が取って代わられる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
このように、本発明は、硫黄および他の汚染物質のレベルが低減された燃料の製造およびそのような燃料の使用に広く適用される。特定の特徴は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく変更され得る。したがって、本発明は、説明された特定の実施形態または実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲または特許請求の範囲と実質的に同等のものに限定される。