(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】すり身製品のゲル強度を改善するマイクロ波複合加熱方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20220113BHJP
A23L 17/10 20160101ALI20220113BHJP
A23L 17/40 20160101ALI20220113BHJP
A23L 17/50 20160101ALI20220113BHJP
【FI】
A23L17/00 101D
A23L17/10
A23L17/40 A
A23L17/00 A
A23L17/50 Z
(21)【出願番号】P 2020511849
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 CN2018077728
(87)【国際公開番号】W WO2018201783
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】201710303148.6
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519391712
【氏名又は名称】福建安井食品股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN ANJOY FOODS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Xinyang Road No. 2508, Haicang District, Xiamen, Fujian, China
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】范大明
(72)【発明者】
【氏名】黄建聯
(72)【発明者】
【氏名】▲同▼博文
(72)【発明者】
【氏名】張▲瀲▼
(72)【発明者】
【氏名】周文果
(72)【発明者】
【氏名】曹洪偉
(72)【発明者】
【氏名】焦▲熙▼棟
(72)【発明者】
【氏名】王謙
(72)【発明者】
【氏名】余騰暉
(72)【発明者】
【氏名】張文海
(72)【発明者】
【氏名】叶偉建
(72)【発明者】
【氏名】陳江平
(72)【発明者】
【氏名】趙建新
(72)【発明者】
【氏名】張清苗
(72)【発明者】
【氏名】陳衛
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00416782(EP,A1)
【文献】J.S.Shie, J.W.Park,Physical Characteristics of Surimi Seafood as Affected By Thermal Processing Conditions,Journal of food science,1999年,Vol.64, No.2,p287-290
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/00
A23L 17/10
A23L 17/40
A23L 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍すり身を解凍し、チョッピングし、すり身重量の2-4%の塩を加えてチョッピングし、調味料を加えてチョッピングし、スラリー化した後、成形および熟成させてすり身製品を得る、すり身製品のゲル強度を改善するための方法であって、
前記成形および熟成が、グラウト金型または手動押出の方式によりスラリー化後のすり身を特定の形状に形成し、マイクロ波複合加熱方式により高いゲル強度のすり身製品を得ること、
前記マイクロ波複合加熱方式が、まず40-50℃の水浴条件で20-40分間ゲル化し、その後に3±1W/gのマイクロ波出力で間欠加熱して、すり身の温度を80±2℃に昇温させ、かつ3-9分間保温すること、
前記間欠加熱が、マイクロ波を用いてまず20-30秒間加熱し、20-30秒間加熱を停止することを1サイクルとし、すり身サンプルが
80±2℃に加熱されるまでこのサイクルを繰り返
すことを特徴とする、すり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項2】
前記マイクロ波複合加熱方式が、まずすり身製品を40℃の水浴で伝導加熱の方式により30分間予備ゲル化し、その後に3±1W/gのマイクロ波出力で間欠加熱してすり身の温度を80℃に上げ、かつ7分間保温することを特徴とする、
請求項1に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項3】
前記間欠加熱が、マイクロ波を用いてまず24秒間加熱し、24秒間加熱を停止することを1サイクルとし、すり身サンプルが80±2℃に加熱されるまでこのサイクルを繰り返
すこと、
前記間欠加熱によりすり身の温度を80±2℃に昇温させ、かつ5±1分間保温することを特徴とする、
請求項
1に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項4】
すり身ブロックの表面温度が4℃以下、すり身ブロックの中心温度が-3℃以下になるように、-20℃で保存した冷凍すり身を4℃で10-14時間解凍した上で、後続の処理を行うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項5】
前記チョッピングが、解凍されたすり身を中心温度≦5℃でチョッピングマシンに入れ、チョッピングマシンのカッターシャフトの回転速度が2000-3000r/minであるという条件で2-3分間チョッピングし、すり身に「凝集」現象が現れた後に1±0.1%のリン酸塩をすり身に加えてチョッピングし続け、最終的にすり身が硬い粒のない状態になり、チョッピングされたすり身を得ることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項6】
前記塩を加えてチョッピングすることが、すり身が完全に分散し、かつスラリーが粘稠状になるまで、カッターシャフトの回転速度が2000-3000r/minであるという条件で3-8分間塩を加えてチョッピングすることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項7】
前記調味料を加えてチョッピングすることが、塩を加えてチョッピングして得られたすり身に18±1%の大豆乳化スラリーを加え、カッターシャフトの回転速度が3000-4000r/minであるという条件でチョッピングの間に調味料を加えた上で、4-10分間混ぜ合わせながらチョッピングし、手で触ると粒感を感じなくなるまでスラリーが十分に均一に混ぜ合わせられることであり、
前記大豆乳化スラリーが、大豆タンパク質:鶏の皮:氷水を1:1:5の比率でチョッピング鍋に加え、材料が繊細な乳化スラリーになるまで、5-6分間乳化処理して得られるものであり、
前記スラリー化が、調味料を加えてチョッピングした後の材料に14±1%の澱粉を加え、カッターシャフトの回転速度が2000-3000r/minであるという条件で2-4分間混ぜ合わせながらチョッピングし、澱粉をすり身生地に均一に分散し、すり身製品のスラリーを得ることを特徴とする、請求項1又は6に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項8】
前記すり身製品には、すり身を主な原料とするすり身製品が含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項9】
前記すり身の原料は白身魚の魚肉であり、白身魚にはハクレン、マダイ、タラ又はイトヨリダイが含まれる、
請求項1~8のいずれか一項に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項10】
前記すり身の原料は赤身魚の魚肉であり、赤身魚にはカツオ、サンマ、サバ又はイワシが含まれる、
請求項1~8のいずれか一項に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【請求項11】
前記すり身の原料にはイカ、エビが含まれる、
請求項1~8のいずれか一項に記載のすり身製品のゲル強度を改善するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すり身製品のゲル強度を改善するマイクロ波複合加熱方法に関し、食品加工の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、中国の漁業と加工技術の発展により、中国のすり身製品業界は大きな進歩を遂げ、過去の単一な生産から、一連の新しい高級すり身製品の機械化生産まで発展してきた。高品質の魚肉で作られたすり身製品は、タンパク質含有量が高く、脂肪やカロリーが少ないため、迅速に人々が好む健康食品になった。すり身製品のゲル特性は、ゲル強度、保水性及び白色度の組み合わせであり、そのうち最も重要なのはゲル強度であり、すり身製品の品質を判断するための重要な指標でもある。
【0003】
すり身製品の加工プロセスにおいて、熱処理は最も重要な部分であり、熱処理の温度と加熱速度は、すり身製品の品質を決定する。通常、一部の魚で作られたすり身に塩を加えてチョッピングした後、筋原線維タンパク質は塩分の作用で溶出し、緩いネットワーク構造を形成し、つまり、ゾルはゲルになり、従って40℃で半透明のゲルを形成することができる。50-70℃の時はゲルクラッキングセクションであり、ゲルによって形成されたネットワーク構造が徐々に破壊し、これは、魚肉の内因性タンパク質分解酵素がこの温度区間で最も活性が高く、筋原線維タンパク質のペプチド結合が大量に分解することを引き起こし、それによってすり身のゲル強度が下がるためである。80℃を超える温度で加熱し続けると、高弾性の不透明ゲルを形成することができる。従って従来のすり身製品の加熱プロセスでは、通常、2段式加熱モードを用い、つまり、まずは40℃の水浴で30分間伝導加熱する。その後、90℃の水浴で20分間伝導加熱する。しかし、従来のゲル方法では、細かい温度制御が必要で、時間がかかりすぎ、エネルギーの消費が大きく、ゲルが50-70℃の区間に留まる時間が長すぎ、それによりゲルの劣化程度が悪化し、かつ大量の人手を必要とするため、大量生産に適さない。
【0004】
マイクロ波加熱では、材料内の極性分子を利用し、急速に変化する電磁界内で急激な回転を生成し、隣接する分子と摩擦効果を発生させ、それにより材料の温度を昇温させる。従って、すり身製品の加工プロセスにおいて、マイクロ波加熱は非常に有望な加熱方法であると考えられている。マイクロ波加熱は、材料によって吸収された電磁波放射の量をエネルギーに変換することに基づいて加熱を行い、内部から急速且つ効果的に加熱することができる。従来の伝導加熱と比較して、それは急速な熱伝導、短い加熱時間、均一な材料の加熱、高い熱効率、低コストかつ無汚染などの利点により、食品加熱に幅広く使用されている。それは50-70℃の温度区間を急速に通過でき、それにより内因性タンパク質分解酵素が急速に不活性化され、すり身ゲルの劣化を防ぐため、マイクロ波加熱はすり身ゲルの形成プロセスに大きな利点がある。一部の研究では、すり身製品を直接マイクロ波で加熱し、より高いゲル強度のすり身製品を得ることで、マイクロ波加熱の急速昇温の特性を応用できるが、それはまた、マイクロ波のより速い加熱速度、より速い水分損失のためであり、特にすり身の内部温度が沸点に達すると、すり身の構造がさらに破壊され、このような純粋なマイクロ波の加熱方式で得られたすり身製品は、通常、より弾力性があるわけではなくより硬いものになる。CN102551110Aは、マイクロ波加熱による低塩すり身蒲鉾の調製方法を開示しており、その主な目的は、塩を含まないか又は塩分含有量が低いマイクロ波加熱による低塩すり身蒲鉾の調製方法を提供することである。閻虹ら(ハクレンのゲル特性に対する2種類のマイクロ波加熱方式の影響[J].現代食品テクノロジー、2014、30(27)196-204)は、水浴、マイクロ波2段式加熱方法を用い、一定のマイクロ波出力、異なる加熱時間(温度を制御していない)により、すり身製品のゲル強度を改善する。本発明のマイクロ波複合加熱方法は、すり身成分の電磁応答特性、及び水分の誘電強化メカニズムに基づき、且つすり身のゲルプロセスにおけるグルタミントランスアミナーゼの最適作用条件(一定の温度)と組み合わせ、すり身製品のゲル強度を標的に、効果的に改善する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、すり身製品のゲル強度を改善するマイクロ波複合加熱方法を提供することである。前記すり身製品は、ソーセージ(魚腸)、蒲鉾、魚肉ソーセージ、カニカマ、魚麺、フィッシュケーキ及び竹輪などすり身を主な原料とするすり身製品を含む。前記すり身の原料は、ハクレン、マダイ又はイトヨリダイなどの白身魚の魚肉、カツオ、サンマ、サバ又はイワシなどの赤身魚及びイカ、エビなどである。
【0006】
前記方法は、冷凍すり身を解凍し、チョッピングし、塩を加えてチョッピングし、調味料を加えてチョッピングし、スラリー化した後、成形熟成させてすり身製品を得ることである。前記成形および熟成は、グラウト金型または手動押出の方式によりスラリー化した後のすり身を特定の形状に形成され、マイクロ波複合加熱方式により高いゲル強度のすり身製品を得ることである。前記マイクロ波複合加熱方式は、まず40-50℃の水浴条件で20-40分間ゲル化し、その後に3±1W/gのマイクロ波出力で間欠加熱してすり身の温度を80±2°Cに昇温させ、かつ3-9分間保温することである。熟成したすり身製品は、氷水又は冷たい水道水に入れて冷却し、急速冷凍して包装した後に冷凍保存する。
【0007】
本発明の一実施形態では、マイクロ波複合加熱方式は、まずすり身製品を40℃の水浴で伝導加熱の方式で30分間予備ゲル化し、その後に3±1W/gのマイクロ波出力で間欠加熱してすり身の中心温度を80°Cに昇温させ、かつ7分間保温することを指す。
【0008】
本発明の一実施形態では、前記マイクロ波間欠加熱は、マイクロ波でまず20-30秒間加熱し、20-30秒間加熱を停止することを1サイクロとし、すり身サンプルが80-90℃に加熱されるまでこのサイクルを繰り返し、かつ5±1分間保温することである。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記マイクロ波間欠加熱は、マイクロ波でまず24秒間加熱し、24秒間加熱を停止することを1サイクルとし、すり身サンプルが80±2℃に加熱されるまでこのサイクルを繰り返し、かつ5±1分間保温することである。
【0010】
本発明に記載の「すり身の温度を80±2℃に昇温させ、かつ3-9分間保温する」ことにおける保温は、すり身製品の中心温度を80±2℃以内に保つことを指す。2つの加熱モードにより実現できる。その一、マイクロ波が3±1W/gの出力で設定温度に加熱されると、マイクロ波は加熱を停止し、その時、すり身製品の中心温度は、設定温度の80±2℃内で変動できる。中心温度が設定温度より低いと、元の出力で加熱し続け、加熱温度が設定温度に達すると、マイクロ波は加熱を停止し、それによって中心温度を設定温度に保つ。その二、3±1W/gの適切なマイクロ波出力で設定温度に加熱されると、マイクロ波加熱の出力は即座に変更され、元の出力の1/8-1/4で加熱し続け、それによってすり身の中心温度が設定温度の80±2℃内で変動するように保つ。
【0011】
異なるグラウト金型により、すり身製品は異なるストリップ、ブロックなどに形成され、金型の形状は生産のニーズに応じて交換できる。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記解凍は、すり身ブロックの表面温度が10℃以下、すり身ブロックの中心温度が-3℃以下になるように、-20℃で保存した冷凍すり身を4℃で10-14時間解凍することである。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記チョッピングは、解凍されたすり身を中心温度≦5℃でチョッピングマシンに入れ、チョッピングマシンのカッターシャフトの回転速度が2000-3000r/minであるという条件で2-3分間チョッピングし、すり身に「凝集」現象が現れた後に1±0.1%のリン酸塩をすり身に加えてチョッピングし続け、最終的にすり身が硬い粒のない状態になり、チョッピングされたすり身を得ることである。リン酸を加えることの役割は、すり身製品の本来の風味と栄養を保ち、すり身製品の保水力を効果的に改善し、すり身製品のグレービーをより豊かにし、味をより新鮮で柔らかくすることである。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記チョッピングは、解凍されたすり身を2-3cm3に切ってチョッピングマシンに入れ、すり身に「凝集」現象が現れるまで、温度が0-12℃で回転式チョッピングマシンのカッターシャフトの回転速度が2000-3000r/minであるという条件で2-3分間チョッピングし、期間中に1±0.1%のリン酸塩をすり身に加え、最終的にすり身が硬い粒のない状態になることである。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記塩を加えてチョッピングすることは、チョッピングして得られたすり身にすり身の重量の2-4%によって塩を加え、すり身が完全に分散し、スラリーが粘稠状になるまで、カッターシャフトの回転速度が2000-3000r/minであるという条件で3-8分間塩を加えてチョッピングすることである。塩を加える目的は、すり身の塩可溶性タンパク質の高級構造の拡張によって形成されるゾルがタンパク質構造の再架橋を促進して弾性を有するゲルネットワーク構造を形成するように、イオン濃度を高めることである。前記塩の添加量が2%未満の場合、塩可溶性タンパク質の溶解を助長せず、タンパク質の分子構造を完全に拡張することができない。塩の添加量が4%を超えると、すり身製品の味は塩味が強すぎて口当たりに影響を与え、かつ高いNaCl含有量が高いと、高血圧や心血管疾患のリスクが高まる。従って塩の添加量は2-4%であり、好ましくは2.8-3.2%である。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記調味料を加えてチョッピングすることは、塩を加えてチョッピングして得られたすり身に18±1%の大豆乳化スラリーを加え、カッターシャフトの回転速度が3000-4000r/minであるという条件で4-10分間混ぜ合わせながらチョッピングし、スラリーが十分に均一に混ぜ合わせられ、手で触ると粒感を感じないまでに、期間中に調味料を加えることである。前記大豆乳化スラリーは、大豆タンパク質:鶏の皮:氷水を1:1:5の比率でチョッピング鍋に加え、前記材料が繊細な乳化スラリーになるまで、5-6分間乳化処理することで得られる。前記調味料は、すり身製品の風味を変えることができる調味料であり、例えばコショウ、チリパウダー、カレーパウダーなどの調味料と調味料は、使用量を実際の状況に応じて調整し、通常は0.5-0.6重量部である。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記大豆タンパク質乳化スラリーは、大豆タンパク質乾燥粉末と鶏の皮を1:1の重量比で混合し、5重量部の氷水を加え、さらに5~6分間乳化処理して調製されたスラリーである。前記乳化処理は、高速乳化機を用いて3000-4000r/minの回転速度で5-6分間均質に乳化することである。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記スラリー化は、調味料を加えてチョッピングした後のすり身に14±1%の澱粉を加え、カッターシャフトの回転速度が3000-4000r/minであるという条件で4-10分間混ぜ合わせながらチョッピングし、澱粉をすり身生地に均一に分散し、すり身製品のスラリーを得ることである。前記澱粉は、市販のサクラブランド澱粉又は番号がSH-52である澱粉とMQS-99澱粉及びタピオカ澱粉である。新鮮な魚肉には72-80%の水分が含まれており、残りの固形物はほとんどタンパク質である。すり身製品が加熱されると、タンパク質は変性により水分との結合能力を失い、澱粉はこの部分の水分を吸収し、ゼラチン化し、かつ安定した構造を形成できる。従って、すり身の保水力を確保し、組織の構造を改善するには、澱粉を入れることは非常に重要である。
【0019】
チョッピングし、塩を加えてチョッピングし、調味料を加えてチョッピングし、スラリー化するプロセスでは、すり身材料の温度はいずれも5℃未満に維持し、前記チョッピングはいずれも間欠チョッピングの方式を用い、つまりチョッピングマシンで40-50秒間チョッピングし、続いてチョッピングマシンを30秒間停止し、停止期間中にチョッピングマシンの内壁に付着しているすり身原料をこすり落とし、続いてすり身原料が予想される状態になるまで上記ステップを繰り返す。このようにして、チョッピングプロセス中のモーターの発熱と摩擦熱によるすり身原料の温度上昇は食肉加工基準の関連規制に適合しないことによりゲルの強度に影響することを回避することができる。
【0020】
本発明の一実施形態では、前記マイクロ波複合加熱方法で得られたすり身製品は、そのゲル強度が800-900×cmに達することができる。
【発明の効果】
【0021】
これまで、直接なマイクロ波加熱は、50℃の前に不十分なゲル化を引き起こし、筋原線維タンパク質を完全に伸ばすことができず、架橋によって形成されたネットワーク構造の安定性が悪いため、すり身製品の品質と官能特性に影響を与えていた。本発明において、伝導を用いてまずすり身を十分にゲル化し、さらにマイクロ波加熱してすり身ゲルをゲルクラッキング区間を急速に通過させ、このようなマイクロ波複合加熱の方式は、すり身のゲル強度を改善し、それに必要な弾性を備えさせるだけではなく、多くの時間を節約し、生産効率を高めることもできる。通常のマイクロ波加熱と比べ、伝導とマイクロ波保温を用いたマイクロ波複合加熱方法は、つまり指定された温度区間でマイクロ波の出力を調整することによってすり身製品の温度を一定の時間維持する。このようなマイクロ波複合加熱方法は、すり身のゲル強度を効果的に改善することができ、それとともに現在のすり身製品の応用におけるマイクロ波加熱の新しい傾向に適合している。
【0022】
具体的には、マイクロ波複合加熱の方法(
図1)は、同時に伝導とマイクロ波加熱の優位性を発揮する。50℃の前の伝導加熱によりすり身製品を十分にゲル化し、筋原線維タンパク質分子を完全に伸ばし、かつ架橋してネットワーク構造を形成する。マイクロ波加熱で保温する後続の加熱方式は、すり身のゲルクラッキング区間を急速に通過でき、それにより内因性タンパク質分解酵素が急速に不活性化され、ゲルの劣化を防ぐ。このようなマイクロ波複合加熱の方式を用いることにより、加熱速度が速く、エネルギー利用率が高く、生産効率が高い。従来の2段式伝導加熱と比べ、ゲル強度は1.6倍以上増加し(
図6)、かつ組織の構造はより均一で緻密になり(
図8)、素地はより繊細になる。すり身の白色度にわずかな違いがある場合(表1)、保水力(表2)、及び弾力性(
図5)を改善する。かつ従来のマイクロ波加熱と比べ、前記マイクロ波複合加熱方法は、水分損失率(表2)が低いため、形態への影響がより小さいという利点がある(
図7)。本方法は、可塑剤、接着剤及び高価な酵素調製剤を一切追加せず、コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2-1】異なるマイクロ波複合加熱条件によるすり身製品の品質に対する影響、Aはマイクロ波出力3W/gでのゲル強度を表し、Bはマイクロ波出力5W/gでのゲル強度を表し、Cはマイクロ波出力7W/gでのゲル強度を表す。aはマイクロ波出力3W/gでの保水力を表し、bはマイクロ波出力5W/gでの保水力を表し、cはマイクロ波出力7W/gでの保水力を表す。
【
図2-2】異なるマイクロ波複合加熱条件によるすり身製品の品質に対する影響、Aはマイクロ波出力3W/gでのゲル強度を表し、Bはマイクロ波出力5W/gでのゲル強度を表し、Cはマイクロ波出力7W/gでのゲル強度を表す。aはマイクロ波出力3W/gでの保水力を表し、bはマイクロ波出力5W/gでの保水力を表し、cはマイクロ波出力7W/gでの保水力を表す。
【
図3】従来のマイクロ波加熱方法の最適化図、Aゲル強度、B保水力。
【
図4】異なる加熱方法により最適な条件で処理されたすり身製品の破壊力図。
【
図5】異なる加熱方法により最適な条件で処理されたすり身製品の破壊距離図。
【
図6】異なる加熱方法により最適な条件で処理されたすり身製品のゲル強度図。
【
図7】異なる加熱モードにより最適な条件で熟成した後のすり身製品のソーセージ(魚腸)の写真。
【
図8】異なる加熱方式により最適な条件でゲル熟成後のすり身製品の走査型電子顕微鏡写真(×1000)。
図4~8において、Aは本発明のマイクロ波複合加熱方法を表し、B、従来のマイクロ波加熱方法を表し、C、従来の2段式伝導加熱方法を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施例で使用されるすり身は、寧波錦海水産食品株式会社が商品名「冷凍マダイのすり身製品」で販売しているものなどの現在の市販製品である。
【0025】
以下の実施例で使用される高速乳化機は、FLUKO会社が商品名「FA25高速乳化機」で販売しているものなどの現在の市販製品である。
【0026】
以下の実施例で使用されるチョッピングマシンは、上海申発機械株式会社が商品名「申発」ブランドで販売している高速チョッピングマシン又は河北暁進機械製造株式会社が商品名「暁進」ブランドで販売している高速チョッピングマシンである。
【実施例1】
【0027】
本実施例は、マイクロ波複合加熱方法条件の最適化であり、具体的な実施例は以下のとおりである:
A、 解凍
すり身ブロックの表面温度が10℃未満、すり身ブロックの中心温度が-3℃未満になるように、-20℃で保存した寧波錦水産製品が商品名「冷凍マダイのすり身」を4℃の温度で10-14時間解凍する。
B、 大豆乳化スラリー
大豆タンパク質:鶏の皮:氷水を1:1:5の比率でチョッピング鍋に加え、前記材料が繊細な乳化スラリーになるまで、5-6分間乳化処理する。
C、 チョッピング
解凍されたすり身を中心温度≦5℃でチョッピングマシンに入れ、すり身に「凝集」現象が現れるまで、チョッピングマシンのカッターシャフトの回転速度が2000-3000r/minであるという条件で2-3分間チョッピングし、期間中に1±0.1%のリン酸塩をすり身に加え、最終的にすり身が硬い粒のない状態になり、チョッピングされたすり身を得る。
D、 塩を加えてチョッピングする
すり身の重量の2-4%によってステップCで得られたチョッピングされたすり身に塩を加え、すり身が完全に分散し、スラリーが粘稠状になるまで、カッターシャフトの回転速度が2000-3000r/minであるという条件で3-8分間塩を加えてチョッピングする。
E、 調味料を加えてチョッピングする
ステップDで得られた塩を加えてチョッピングされたすり身にステップAで得られた大豆乳化スラリーの18±1%を入れ、カッターシャフトの回転速度が3000-4000r/minであるという条件で4-10分間混ぜ合わせながらチョッピングし、スラリーが十分に均一に混ぜ合わせられ、手で触ると粒感がなくなるまで、期間中に調味料を加える。
F、 スラリー化
ステップEに14±1%の澱粉を加え、カッターシャフトの回転速度が2000-3000r/minであるという条件で2-4分間混ぜ合わせながらチョッピングする。澱粉をすり身生地に均一に分散し、すり身製品のスラリーを得る。
G、 成形及び熟成
ステップFで得られたすり身スラリーをグラウト金型又は手動押出の方式により特定の形状に形成する。成形したすり身製品をまず38-42℃(好ましくは40℃)の水浴で伝導加熱の方式により30分間ゲル化し、水浴で伝導加熱された後のすり身製品を3±1W/g、5±1W/g、7±1W/g(好ましくは3W/g)の出力で70、80、90℃に間欠加熱し、かつ3-9分間(好ましくは80℃、5分間)保温する。
前記間欠加熱は、温度が設定温度に達するまでマイクロ波で24秒間加熱して24秒間停止するように加熱を繰り返す。
【0028】
前記マイクロ波加熱の温度は、カナダのFISO会社が提供する光ファイバープローブによってオンラインで検出され、マイクロ波加熱が設定温度に達すると、マイクロ波は加熱を停止し、温度が設定温度より低いと、マイクロ波は設定温度に達するまで元の出力で加熱し続け、かつこのプロセスを繰り返して設定温度で一定の時間維持する(
図1)。マイクロ波加熱終了後に前記より高いゲル強度を有するすり身製品が得られる。ここで、マイクロ波複合加熱方法の最適条件は、3±1W/gで80±2℃に加熱し、かつ5分間保温する(
図2)ことである。保温プラセスにより、温度が設定温度で上下2℃変動できる。
【実施例2】
【0029】
実施例2と実施例1との異なる点は、マイクロ波複合加熱の方法で、マイクロ波加熱が設定温度に達すると、すり身の中心温度が設定温度の上下2℃の範囲内で変動するように維持するために、マイクロ波出力を低減し、元の出力の1/8-1/4で加熱し続け、すり身の温度が設定温度より高い場合、温度が設定温度に戻るまで、この時の出力を低減し、かつ一定の時間維持することである。
【0030】
[比較例1]
この比較例は、従来のマイクロ波加熱方法の条件の最適化である。
比較例1の具体的な操作ステップは実施例1と同じであり、異なることは、ステップGですり身を成形した後に従来のマイクロ波加熱モードにより、つまり成形した魚豆腐を3W/g、5W/g、7W/gの一定の出力で間欠加熱の方式により24秒間加熱して24秒間停止し、マイクロ波加熱時間が合計24、48、72、96、120秒間であり、加熱終了後に従来のマイクロ波で加熱されたすり身製品を得ることである。ここで、従来のマイクロ波加熱方法の最適化条件は、5w/gで72秒間加熱することである。
【0031】
[比較例2]
比較例2の具体的な操作ステップは実施例1と同じであり、異なることは、成形及び熟成段階でマイクロ波加熱の複合加熱方式を使用せず、周知の従来の2段式加熱モードを使用し、つまりまず40℃の水浴で30分間伝導加熱し、その後に即座に取り出して90℃の水浴に入れて20分間伝導加熱することである。加熱終了後に従来の伝導加熱されたすり身製品を得る。
以上の表におけるAは本発明のマイクロ波複合加熱方法を表し、Bは従来のマイクロ波加熱方法を表し、Cは従来の2段式伝導加熱方法を表す
【0032】
本発明は好適な実施形態により以上のとおり説明されたが、本発明を限定するものではなく、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者は様々な変更および修正を行うことができ、従って本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって定義されるべきである。