(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】車両内において乗物酔いを伴わずにデジタルコンテンツを見ること
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G06F3/01 510
(21)【出願番号】P 2020519436
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2018075497
(87)【国際公開番号】W WO2019068477
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】102017217592.3
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プロフェンディナー、ダニエル
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146963(JP,A)
【文献】特開2015-204616(JP,A)
【文献】特開2017-001634(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208546(WO,A1)
【文献】特開2014-200018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内のデジタルコンテンツを車酔いを伴わずに見るためのシステムであって、
制御ユニットと、この制御ユニットに接続された複数のセンサとを備えた車両を有するとともに、デジタルコンテンツを統合する仮想3Dシーンを表示するために制御ユニットに無線で接続できるデータ眼鏡を有し、
制御ユニットは、センサから受信したセンサデータより
、車両の絶対位置と、水平線に対する車両の角度と、車両の横加速度および縦加速度とを含む制御変数を計算するとともに、その制御変数をデータ眼鏡に送信するように構成され、
データ眼鏡は、制御変数を受信するとともに、
受け取った制御変数を平滑化により後処理し、かつ受信した制御変数に応じて仮想3Dシーンを計算するように構成されていることを特徴とする車両内において乗物酔いを伴わずにデジタルコンテンツを見るためのシステム。
【請求項2】
車両とデータ眼鏡とが、
それぞれ、IRインターフェイス、ブルートゥースインターフェイス、WiFiインターフェイスおよび/またはNFCインターフェイス
などの補足的な無線通信インターフェイスを有することを特徴とする請求項1記載の車両内において乗物酔いを伴わずにデジタルコンテンツを見るためのシステム。
【請求項3】
車両および/またはデータ眼鏡に無線で接続できて、車両パラメータおよび/または走行パラメータを表示するための
、スマートウォッチなどのモバイル端末を備え、
データ眼鏡は、モバイル端末に対応する仮想端末を、計算された仮想3Dシーンに統合するように構成されるとともに、その結果としてモバイル端末によって表示される車両パラメータおよび/または走行パラメータを、仮想端末に表示させるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の車両内において乗物酔いを伴わずにデジタルコンテンツを見るためのシステム。
【請求項4】
データ眼鏡は、このデータ眼鏡の着用者にデータ眼鏡の取り外しを要求するために、
車両のドライバーなどのデータグラスの着用者に対して、比喩的指示などの視覚的指示を、計算された仮想3Dシーンに統合するように構成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の車両内において乗物酔いを伴わずにデジタルコンテンツを見るためのシステム。
【請求項5】
データ眼鏡は、このデータ眼鏡についての環境と、車両の内部環境のデジタルモデルとを検出するための、少なくとも1つの
、カメラなどの光学センサを含み、かつデータ眼鏡は、デジタルモデルを使用して、内部環境に対応する検出された環境の静的な部分と、車両の窓から見える車両の移動する外部環境に対応する検出された環境の動的な部分とを区別するように構成されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の車両内において乗物酔いを伴わずにデジタルコンテンツを見るためのシステム。
【請求項6】
車両は、データ眼鏡の使用に応じた調整範囲であって、
前部座席の位置についての調整範囲などの、車両の構成要素についての調整範囲を提供するように構成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の車両内において乗物酔いを伴わずにデジタルコンテンツを見るためのシステム。
【請求項7】
データ眼鏡は、車両についての周囲の環境の中の物体に関する情報を、
比喩的に計算された仮想3Dシーンなどの、計算された仮想3Dシーンに統合するように構成され、および/または、
データ眼鏡は、仮想スクリーン上で
映画などの二次元動画ストリームを
再生するように構成され、また二次元動画の内容に対応する計算された仮想3Dシーンで仮想スクリーンを表すように構成されていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載の車両内において乗物酔いを伴わずにデジタルコンテンツを見るためのシステム。
【請求項8】
車両と共に、請求項1から7までのいずれか1項に記載のシステムを形成するように設計および構成されたものであることを特徴とする車両用のデータ眼鏡。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のシステムによって、車両内にデジタルコンテンツを表示する方法であって、
車両に設けられた制御ユニットによって、車両に設けられた複数のセンサにて受信されたセンサデータから制御変数を計算し、
計算された制御変数を、車両から、車両にワイヤレスで接続されたデータ眼鏡に送信し、
データ眼鏡によって、受信した制御変数に応じて、デジタルコンテンツを統合する仮想3Dシーンを計算することを特徴とする車両内にデジタルコンテンツを表示する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内において乗物酔いを伴わずにデジタルコンテンツを見るためのシステムに関する。このシステムは車両を含み、この車両は、制御ユニットと、この制御ユニットに接続された複数のセンサと、デジタルコンテンツを統合する仮想3Dシーンを表示するために制御ユニットに無線で接続できるデータ眼鏡(ヘッドマウントデバイス、HMD)とを備える。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員は、走行中にさまざまな加速度にさらされる。一方で、加速度には、車両の進行方向に作用する車両の直線加速度(前後加速度)が含まれ、これは加速または制動によって引き起こされる。他方で、乗員は回転加速度(横加速度)を経験し、この回転加速度は、車両の走行方向に関連した、回転軸の空間的な方向に応じて、ピッチング(回転軸の方向は、水平で、走行方向に対して垂直)、ローリング(回転軸の方向は走行方向に平行)、ヨーイング(回転軸の方向は、鉛直で、走行方向に対して垂直)のいずれかとなる。回転加速度は、ステアリングと地盤のトポロジーとによって直接的に発生し、前述の直接的な加速度のすべてに対する弾力性のある応答として間接的に発生する。
【0003】
車両の乗員は、車両の走行中に目を介して伝えられた、位置、方向、加速度の視覚的知覚(視覚)が、前庭器官(平衡感覚)を介して伝えられた同じ大きさの知覚と一致しない場合に、めまい、頭痛、心拍数の増加、吐き気、嘔吐(乗物酔い)を経験する可能性がある。
【0004】
このような不一致は、例えば、乗員にとって、運転中に本を読んだり、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末でデジタルコンテンツを見たりしているときに、発生する可能性がある。乗員は、視線を下げている間に、できるだけ静かに保たれている本のページや、できるだけ静かに保たれているモバイルデバイスのディスプレイを凝視するが、そのときに、走行する車両の加速によって平衡感覚が継続的に刺激される。しかし、本を読んだりせず、またモバイルデバイスのディスプレイを見たりしていないが、車両の周囲についての視覚的認識が制限されているか、または損なわれている乗員も居る。たとえば、車両の後方に座っている乗員の正面側の視野は、前部車両のシートとヘッドレストとの間を部分的に通過したものである。その場合に、乗物酔いになる可能性がある。
【0005】
特許文献1は、車両の後部座席にいる乗員を乗物酔いから保護するための車両用のシステム、方法、および装置を開示している。このシステムは、車両に接続されるとともに、前方を向いた外部カメラと、車両のフロントヘッドレストの後方に取り付けられ、後部に座っている乗員の視野内に配置された表示ユニットとを備えている。表示ユニットは、外部カメラによって記録されたビデオストリームを継続的に乗員に見せるようにする。外部カメラによって記録される車両の前方の周辺領域は、常に車両の空間位置と方向に直接依存しているため、走行中に発生するすべての加速度をリアルタイムで反映する。このため、後部座席の乗員が乗物酔いになる危険性が低減または排除される。ビデオストリームは、表示ユニットによって前景中に表示される静的な情報のためのバックグランドとしても機能する。それによって、後部座席の乗員は、情報を読むことと、前庭器官による加速知覚と一致する視覚刺激を受け取ることとを同時に行うことができる。
【0006】
しかしながら、この解決策では、後部座席の乗員の視線の方向は、表示ユニットの位置によって事前に決定される。通常、本は頭を傾けて読むのに対し、表示ユニットの読み取りは頭をまっすぐにして行うため、乗員は車両または車両の周囲からの刺激によって簡単に気をまぎらすことができる。さらに、この解決策は、根本的に後部座席の乗員に適したものである。なぜなら、前部座席の乗員に応じて表示ユニットを設置することが難しいためである。ただし、この欠点は回避できる。
【0007】
例えば特許文献2は、車両の表示ユニットを操作するためのシステムを開示している。この表示ユニットはデータ眼鏡として設計され、このデータ眼鏡を着用している車両の乗員が読むために、乗員にテキストを見えるようにすることができるものである。車両は、この車両の走行情報を検出するための複数のセンサを有する。表示ユニットは、移動情報を受信し、車両の加速度と一致するところの、受信された移動情報に応じてリアルタイムで計算されるテキストにとって適切な背景を表示するように構成される。このようにして、データ眼鏡の着用者がテキストを読んでいるときにおける乗物酔いの危険性が軽減される。
【0008】
一方、特許文献3は、車両内で動画を見るときに乗物酔いを低減する方法を開示している。この方法に適したデバイスは、乗員の頭部に装着される表示ユニット(ヘッドマウントデバイス、HMD)を備え、この表示ユニットは、6つの加速度センサと、位置/方向センサ(自由度6すなわち6DOFのトラッカー)と、オプション装備のミニカメラとを備える。表示ユニットは、車両内において表示ユニットとは別に配置されたコンピュータに、無線または有線ケーブルで結合されている。コンピュータは、表示ユニットのセンサからの信号に応じて、DVD(デジタル バーサタイル ディスク)、ビデオ、VR(バーチャル リアリティ)アプリケーション、またはAR(拡張現実、オーグメンテッド リアリティ)アプリケーションからデータを再生し、この表示ユニットの装着者の視覚的知覚が前庭器官による知覚と一致するように、それら再生データを表示ユニットへ変換して出力するように構成されている。
【0009】
この方法では、コンピュータから表示ユニットへの動画ストリームの伝送に、広い帯域幅が必要である。表示ユニットをケーブルすなわち有線でコンピュータをケーブルで接続すると、十分な帯域幅を問題なく実現できる。ただし、ケーブルが原因して、この変形例では表示ユニットの取り扱いが困難である。一方、無線方式のワイヤレスカップリングでは、取り扱いが簡単でその点では問題ないのであるが、高解像度かつ高画像変化率の場合に動画ストリームを送信する際に、十分な帯域幅を常に確保できるとは限らない。この問題は、車両における数人の乗員が同時に表示ユニットを使用し、異なる動画ストリームを見る場合に、悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】アメリカ特許出願公開第2006/0015000号明細書
【文献】ドイツ特許出願公開第102014019579号明細書
【文献】ドイツ特許第10156219号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、乗員が扱いやすく、狭い帯域幅で管理できるところの、車両でデジタルコンテンツを見るときの乗物酔いを低減するための改善されたシステムを提供するという目的に基づいている。さらに、本発明は、車両においてデジタルコンテンツを表示するための改善された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、車両内において乗物酔いなしでデジタルコンテンツを閲覧するためのシステムにある。このシステムは車両を有し、この車両は、制御ユニットと、この制御ユニットに接続された複数のセンサと、デジタルコンテンツを統合する仮想3Dシーンを表示するために制御ユニットに無線で接続できるデータ眼鏡とを備える。
【0013】
本発明によれば、車両の制御ユニットは、センサから受信されたセンサデータより制御変数を計算し、その制御変数をデータ眼鏡に送信するように構成される。したがって、制御ユニットは、これらの制御変数からのデータを計算することによって、センサデータを前処理する。センサデータを受信する場合よりも少ない制御変数が必要なときには、制御ユニットによってセンサデータを前処理することにより、送信するデータ量を減らすことができる。制御変数の計算の頻度がセンサデータの受信の頻度よりも低くなるように選択されている場合は、さらなる削減が可能である。
【0014】
本発明によれば、データ眼鏡は、制御変数を受け取り、受け取った制御変数に応じて仮想3Dシーン(仮想現実、バーチャルリアリティ VR)を計算するように構成されている。仮想3Dシーンでは、通常、大量のデータを表示する必要がある。仮想3Dシーンが乗物酔いに対抗するためのものである場合は、そのデータ量は、車両の加速度に合わせてリアルタイムで計算されて、データ眼鏡に表示される必要がある。本発明は、データ眼鏡を構成しかつ制御変数に応じて仮想3Dシーンを計算することを考慮することに基づいている。このようにして、データ集約型の仮想3Dシーンをデータ眼鏡に表示するためにこのデータ眼鏡に送信する必要はない。むしろ、計算に関連するいくつかの制御変数を送信するだけで十分であり、そのために必要な帯域幅は十分に小さくなる。
【0015】
一実施形態では、車両およびデータ眼鏡はそれぞれ、補完的な無線通信インターフェイス、特に、IRインターフェイス、ブルートゥース(登録商標)インターフェイス、WiFiインターフェイスおよび/またはNFCインターフェイスを有する。ここに言及された通信インターフェイスから逸脱する既知のまたは将来の通信インターフェイスは、本発明の範囲内のものである。もちろん、車両とデータ眼鏡とは、データ眼鏡を車両に接続するために、データ眼鏡の着用者が任意のインターフェイスペアを選択できるいくつかの相補的なインターフェイスペアを持つこともできる。
【0016】
好ましい実施形態では、制御ユニットによって計算された制御変数は、絶対的な位置と、水平線に対する角度と、車両の横加速度および縦加速度とを含み、および/またはデータ眼鏡は、仮想3Dシーンを計算する前に、特に平滑化のために、受信した制御変数を後処理するように構成される。つまり、車両の加速度と一致する仮想3Dシーンを計算するには、4つの制御変数で十分である。車両の絶対位置は、仮想3Dシーン内の空間配置のために使用することができる。水平線に対する角度を使用して、仮想3Dシーンのデータ眼鏡の着用者の視点を、実際の視線方向に対応してシミュレートすることができる。縦加速度と横加速度とは、乗物酔いのリスクを減らすための最も重要な制御変数である。これらを使用して、3D仮想シーンを車両に対応させて加速し、それによって、視覚による知覚と前庭器官による知覚との不一致を低減または回避することができる。
【0017】
さらなる実施形態では、本発明のシステムは、車両パラメータおよび/または走行パラメータを表示するために、車両および/またはデータ眼鏡に無線で接続することができるモバイル端末を、特にスマートウォッチを、備える。そして、データ眼鏡は、モバイル端末に対応する仮想端末を、計算された仮想3Dシーンに統合するように構成され、その結果、モバイル端末によって表示される車両パラメータおよび/または走行パラメータを、仮想端末上で見ることができる。モバイルデバイスとその仮想対応デバイスとを同時に使用することで、データ眼鏡の着用者は、現実世界と仮想世界との境界を克服する均一な相互作用の体験を実現することができる。スマートウォッチは、これに特に適している。なぜなら、着用者が手首に継続的に装着し、その使用が非常に便利であるためである。
【0018】
一実施形態では、データ眼鏡は、このデータ眼鏡の着用者にデータ眼鏡の取り外しを要求するために、データグラスの着用者に対して、特に車両のドライバーに対して、視覚的指示を、特に比喩的指示を、計算された仮想3Dシーンに統合するように、構成される。たとえば、計算された仮想3Dシーンにポータルを含めることができる。ポータルは、着用者がデータ眼鏡を取り外すときに仮想的に通過される。このようにして、データ眼鏡の着用者は、非常に自然な双方向体験(インタラクションエクスペリエンス)を行うことができる。
【0019】
さらなる実施形態では、データ眼鏡は、データ眼鏡についての環境と、車両の内部環境のデジタルモデルとを検出するための、少なくとも1つの光学センサ、特にカメラを含む。またデータ眼鏡は、デジタルモデルを使用して、内部環境に対応する検出された環境の静的な部分と、車両の窓から見える車両の移動する外部環境に対応する検出された環境の動的な部分とを区別するように構成されている。車両の周囲に対するデータ眼鏡グラスの動きは、検出された動的コンポーネントによって決定できる。データ眼鏡と周囲の環境との間の相対的な動きをさらに考慮することで、視覚による知覚と前庭器官による知覚との不一致をさらに減らすことができる。
【0020】
一実施形態では、車両は、データ眼鏡の使用に応じた調整範囲であって、車両の構成要素についての調整範囲、特に前部座席の位置についての調整範囲を提供するように構成される。データ眼鏡を使用する場合に、例えばデータ眼鏡についての空間的な要件により、着用者の頭部に取り付けられたデータ眼鏡と車両のエアバッグとの間の距離が、着用者の頭部と車両のエアバッグとの間の距離に比べて短くなり、その結果、展開したエアバッグがデータ眼鏡に衝撃を与え、この衝撃を間接的に着用者の頭部に与える可能性がある。これにより、乗員が負傷する危険性がある。これは、データ眼鏡の着用者が、データ眼鏡を着用していない車両の乗員に比べて、車両シートをより少なくしか前方へ調整できないという事実によって、防止することができる。つまり、車両用シートに着座している乗員がデータ眼鏡グラスを着用している場合は、車両用シートの調整範囲を前部において小さくすることが可能である。
【0021】
さらなる実施形態では、データ眼鏡は、車両についての周囲の環境の中の物体に関する情報を、特に比喩的に、計算された仮想3Dシーンに統合するように構成される。例えば、景色、つまり車両の近くに存在するプロバイダからの興味深いポイント(ポイント オブ インタレスト、POI)または興味深い製品(製品の配置)を、仮想3Dシーンに統合することができる。仮想3Dシーンのテーマに一致するメタファーを使用できる。
【0022】
好ましい実施形態では、データ眼鏡は、仮想スクリーン上で二次元動画ストリームを再生するように、特に映画を再生するように構成され、また二次元動画の内容に対応する計算された仮想3Dシーンで仮想スクリーンを表すように構成される。つまり、仮想画面で再生される動画ストリームにマッチする仮想3Dシーンのテーマを選択することができる。これにより、データ眼鏡の着用者は特に均一な体験をすることができる。
【0023】
本発明の別の目的は、車両とともに本発明によるシステムを形成するように設計および構成された、車両用のデータ眼鏡である。このようなデータ眼鏡は、車両の制御ユニットに無線で接続することができ、それは、車両においてデータ眼鏡を着用した乗員が、仮想3Dシーンに埋め込まれたデジタルコンテンツを乗物酔いなしに見ることができ、また狭い帯域幅で無線接続できるようにするためである。
【0024】
本発明はまた、特に本発明によるシステムを用いて、車両にデジタルコンテンツを表示する方法に関し、車両に設けられた制御ユニットは、車両に設けられた複数のセンサによって受信されるセンサデータを使用する。制御変数が計算され、計算された制御変数が、車両から、車両に無線で接続されたデータ眼鏡に送信され、またデータ眼鏡によって、受信した制御変数に応じて、デジタルコンテンツを統合する仮想3Dシーンが計算される。本発明による方法では、仮想3Dシーンの計算は、車両側ではなく、データ眼鏡を通して行われる。その結果、大量のデータを車両からデータ眼鏡に送信する必要がなくなる。車両の加速度と一致する仮想3Dシーンの場合、センサデータから計算されたわずかな制御変数だけで十分である。そのため、連続送信には、車両とデータグラス間のワイヤレス接続に、狭い帯域幅が求められる。
【0025】
車両の乗客が乗物酔いせずにデジタルコンテンツを閲覧するための本発明によるシステムの実施形態を使用して、本発明を以下においてさらに例示および説明する。
【0026】
このシステムは、制御ユニットが設けられた車両と、車両に設けられて制御ユニットに接続された複数のセンサとを備える。このシステムには、デジタルコンテンツを統合する仮想3Dシーンを表示するためのデータ眼鏡も含まれる。車両、特にこの車両に装備されているセンサとデータ眼鏡とは、相互に補完するワイヤレスWiFi通信インターフェイスを備えており、それらを使用して相互に接続される。
【0027】
制御ユニットは、前処理の一部として、センサから受信したセンサデータからデータ眼鏡の制御変数を計算し、またWiFi通信インターフェイスを使用して制御変数をデータ眼鏡に無線送信するように構成されている。制御変数には、絶対位置と、水平線に対する角度と、車両の横加速度および縦加速度とが含まれる。
【0028】
データ眼鏡は、制御ユニットによって計算された制御変数を受け取り、それらの制御変数を再加工し、この受け取って再加工した制御変数に応じて仮想3Dシーンを計算するように構成されている。離散的な時点で受け取った制御変数の後処理は、平滑化によって制御変数の連続的なコースを補間するのに役立つ。
【0029】
このシステムには、目的地までの残りの距離や利用可能なエネルギー貯量などの、車両や走行のパラメータを表示するスマートウォッチも含まれる。スマートウォッチは、ワイヤレスWiFi通信インターフェイスを備えて、車両またはスマート眼鏡に無線で接続される。データ眼鏡は、スマートウォッチに対応する仮想スマートウォッチを計算された仮想3Dシーンに統合するように構成されているため、スマートウォッチによって表示される車両パラメータまたは走行パラメータも、仮想スマートウォッチに表示される。
【0030】
データ眼鏡は、このデータ眼鏡の着用者にデータ眼鏡の取り外しを要求するために、このデータ眼鏡の着用者のための、特に車両の運転者のための視覚的表示を、特に比喩的な表示を、計算された仮想3Dシーンに統合するように構成されている。比喩的な表示として、データ眼鏡は、このデータ眼鏡を着用している車両の運転者が事実上通過するポータルを表す。
【0031】
データ眼鏡は、このデータ眼鏡の周囲の環境と、車両の内部環境のデジタルモデルとを取り込むためのカメラを含む。これは、内部環境に関連するところの、検出された環境における静的な部材間のデジタルモデルによって構成される。そして、これは、内部環境に対応する。すなわち、車両の内装に対応する。また検出された環境における動的コンポーネントを区別することに対応する。これは、車両の窓を通して見ることができる、車両に対して相対的に移動する外部環境に対応する。
【0032】
車両は、前部座席の位置について、前部座席に座っている乗員がスマート眼鏡を着用しているかどうかにもとづいて相違する調整範囲を提供するように構成されている。
【0033】
データ眼鏡はさらに、車両の周囲環境における物体に関する情報を、計算された仮想3Dシーンに対して特に比喩的に統合するように構成される。この目的のために、例えば、車両の周囲における特定のプロバイダの位置、または特別な広告情報、または車両の周囲の光景に関する観光情報が、仮想3Dシーンの主題に一致するように表示される。
【0034】
データ眼鏡は、仮想3Dシーンに統合された仮想スクリーンで映画を再生するように構成される。計算された仮想3Dシーンに仮想画面が表示され、これは、2次元の動画のテーマに対応する。たとえば、仮想3Dシーンは、スターウォーズの長編映画から知られているデススターの飛行をシミュレートでき、その一方、スターウォーズの長編映画の1つのエピソードが仮想スクリーンで再生される。
【0035】
本発明によるシステムの動作中、制御値は、センサデータから制御ユニットによって計算されるとともに、車両に無線で接続されているデータ眼鏡に送信される。受け取った制御変数に応じて、データ眼鏡は、デジタルコンテンツを統合する仮想3Dシーンを計算する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によるシステムの利点は、データ眼鏡を着用した車両の乗員に対して、スマート眼鏡と車両との間のワイヤレス接続に利用できる広い帯域幅を必要とせずに、デジタルコンテンツに主題的に適合したデータ集約型VRアプリケーションの枠組み内で、乗物酔いの無い状態でのデジタルコンテンツの視聴が可能になることである。これにより、データ眼鏡の着用者は、簡単な取り扱いによって、デジタルコンテンツの均一かつ全体的な体験を行うことができる。この利点は、車両における複数の乗員が同時に異なるデジタルコンテンツを表示している場合に、さらに高まる。