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特許7002661エタノール分解能及びアセトアルデヒド分解能を有した微生物、それを含む組成物及びキット
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  • 特許-エタノール分解能及びアセトアルデヒド分解能を有した微生物、それを含む組成物及びキット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】エタノール分解能及びアセトアルデヒド分解能を有した微生物、それを含む組成物及びキット
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220128BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220128BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20220128BHJP
   C12R 1/24 20060101ALN20220128BHJP
   C12R 1/225 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 F
A23L33/135
A23C9/123
C12R1:24
C12R1:225
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020536122
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2018013522
(87)【国際公開番号】W WO2019132233
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0184821
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC 13412BP
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC 13413BP
(73)【特許権者】
【識別番号】513243723
【氏名又は名称】メディトックス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンイン
(72)【発明者】
【氏名】キム, タイフン
(72)【発明者】
【氏名】ドン, ヘイジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ウジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ヒョヌク
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ソンゴン
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ドンウク
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0092182(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0042860(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0065753(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0059588(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - C12N 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスブレビスLMT1-73(受託番号KCTC-13412BP)及びラクトバチルスファーメンタムLMT2-75(受託番号KCTC-13413BP)からなる群から選択されたエタノール分解能及びアセトアルデヒド分解能を有した微生物。
【請求項2】
請求項1の前記微生物のうち1以上、及び希釈剤または担体を含む,エタノール及びアセトアルデヒドのうち1以上を除去するのに使用するための組成物。
【請求項3】
食品であるものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記食品は、乳製品、アルコール性肝疾患予防用または二日酔い解消用の食品、または食品添加剤である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
液体、粉末、顆粒、錠剤またはカプセル形態である、請求項2~4のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に係わる交差参照(cross-reference)
本出願は、2017年12月29日に韓国特許庁に出願され、その開示が、全体として援用により、本明細書に統合される、韓国特許出願番号10-2017-0184812の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、エタノール分解能及びアセトアルデヒド分解能を有した微生物、それを含む組成物及びキットに関する。
【背景技術】
【0003】
ラクトバチルス(lactobacillus)は、グラム陽性、通性嫌気性(facultative anaerobic)または微好気性(microaerophilic)、桿状、非胞子形成のバクテリア属である。ラクトバチルスは、乳酸菌(LAB:lactic acid bacteria)グループの主要部分を占める。
【0004】
人体に摂取されたアルコールは、胃と小腸上部とにおいて、拡散作用によって容易に吸収される。アルコール代謝は、主に肝臓組織でなされるが. アルコールがアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH:alcohol dehydrogenase:ADH)によってアセトアルデヒドに酸化され、アセトアルデヒドは、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH:aldehyde dehydrogenase:ALDH)によって酢酸に転換される。
【0005】
アルコール酸化によって生成される代謝産物であるアセトアルデヒドは、反応性が強い毒性物質である。アセトアルデヒドは、肝臓において多様なタンパク質と共有結合し、肝臓の機能及び構造を変更させる。チューブリンとの結合を介して、微小管の重合化を低減させ、タンパク質分泌に損傷をもたらし、肝細胞(hepatocyte)が腫れ上がらせる。アセトアルデヒド付加物(adduct)形成は、一部酵素活性を損傷させる。直接、またはGSHとの結合を介して、アセトアルデヒドは、脂質過酸化(lipid peroxidation)を有利にする。アセトアルデヒドは、特に、アセトアルデヒドの毒性効果に対し、ミトコンドリアを敏感にさせる慢性エタノール消費後、多様なミトコンドリア機能を変更させる。培養された筋線維芽細胞で、アセトアルデヒドは、コラーゲン生産を刺激する。それは、慢性的なアルコール摂取者において、肝臓纎維化の原因になることに報告されている。また、慢性的なアルコール摂取は、脂肪肝、アルコール性肝炎及び肝硬変などを発生させうる。前記アセトアルデヒド・タンパク質付加物は、アセトアルデヒドエピトープに対する抗体の生産を刺激する。該免疫反応は、アルコール誘導された肝損傷の悪化または永続化に寄与する。また、アセトアルデヒドは、二日酔い(hangover)を引き起こす。
【0006】
しかし、前述の先行技術によっても、アルコール及びアセトアルデヒドの分解活性を有したラクトバチルス属バクテリアへの要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一様相は、ラクトバチルスブレビス(Lactobacillus brevis)LMT1-73(受託番号KCTC-13412BP)及びラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)LMT2-75(受託番号KCTC-13413BP)からなる群から選択されたエタノール分解能及びアセトアルデヒド分解能を有した微生物を提供する。
【0008】
他の様相は、前記微生物またはその破砕物(lysate)を含む組成物を提供する。
【0009】
前記微生物、及び希釈剤または担体を含む試料内から、エタノール及びアセトアルデヒドのうち1以上を除去するのに使用するためのキットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一様相は、ラクトバチルスブレビス(Lactobacillus brevis)LMT1-73(受託番号KCTC-13412BP)及びラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)LMT2-75(受託番号KCTC-13413BP)からなる群から選択されたエタノール分解能及びアセトアルデヒド分解能を有した微生物を提供する。
【0011】
前記微生物は、エタノール耐性、エタノール分解能及び/またはアセトアルデヒド分解能にすぐれるだけではなく、耐酸性、耐胆汁酸性及び腸内定着性にすぐれる。前記微生物は、キムチから分離された。
【0012】
他の様相は、前記微生物またはその破砕物(lysate)を含む組成物を提供する。
【0013】
前記組成物は、食品的に許容可能な希釈剤または担体を含んでもよい。前記希釈剤は、水、培地、またはPBSのようなバッファでもある。前記担体は、一般的な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、増粘剤または充填剤でもある。前記希釈剤または担体は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、シリケートカルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシメチル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油でもある。また、前記組成物は、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤を含んでもよい。
【0014】
前記組成物は、試料内から、エタノール及びアセトアルデヒドのうち1以上を除去するのに使用するためのものでもある。用語「除去」は、試料内から、エタノール及びアセトアルデヒドのうち1以上の濃度を低下させるものであり、完全に除去することを含む。前記試料は、体液でもある。前記試料は、腸内液体または血液でもある。前記腸内液体は、胃液、十二指腸液、小腸液または大腸液でもある。
【0015】
前記組成物は、経口投与剤形でもある。前記組成物は、顆粒剤、散剤、液剤、錠剤、カプセル剤または乾燥シロップ剤でもある。前記組成物は、例えば、前記微生物を培地中で培養して得られた培養物、またはその乾燥物でもある。
【0016】
前記組成物は、食品でもある。前記食品は、乳製品、アルコール性肝疾患予防用または二日酔い解消用の食品、または食品添加剤でもある。前記乳製品は、発酵乳、バター、チーズまたは粉乳でもある。前記食品は、健康機能性食品でもある。前記健康機能食品は、アルコール性肝疾患予防用または二日酔い解消用の健康機能食品でもある。前記食品は、また飲料類、菓子類、ダイエットバー、チョコレート、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類でもある。
【0017】
前記食品は、食品製造時に一般的に添加される成分を含んでもよく、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。
【0018】
食品製造に使用される炭水化物は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンのような一般的な糖、並びにキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールでもある。また、香味剤として、天然香味剤、並びにサッカリン及びアスパルテームのような合成香味剤を使用することができる。該天然香味剤は、ソーマチン、レバウジオシドA及びグリチルリチンのようなステビア抽出物でもある。
【0019】
該健康機能食品は、摂取する場合、健康上、特定の効果をもたらすものを意味する。
【0020】
前記組成物において、前記微生物は、組成物重量に対し、0.01ないし50重量%、または0.1ないし20重量%の範囲でもある。また、前記組成物は、組成物重量基準で、10ないし1x10CFU/g、または1x10ないし1x10CFU/gの細胞を含んでもよい。
【0021】
他の様相は、ラクトバチルスブレビスLMT1-73(受託番号KCTC-13412BP)及びラクトバチルスファーメンタムLMT2-75(受託番号KCTC-13413BP)からなる群から選択されたエタノール分解能及びアセトアルデヒド分解能を有した微生物を個体に投与する段階を含む、個体内から、エタノール及びアセトアルデヒドのうち1以上を除去する方法を提供する。前記方法は、エタノール及び/またはアセトアルデヒドの体内蓄積と関連する疾患を予防または治療するものでもある。前記疾患は、アルコール性肝疾患または二日酔いでもある。前記個体は、哺乳動物でもある。前記哺乳動物は、ヒト、またはヒトを除いた哺乳動物でもある。
【0022】
さらに他の様相は、前記微生物、及び希釈剤または担体を含む試料内から、エタノール及びアセトアルデヒドのうち1以上を除去するのに使用するためのキットを提供する。前記キットは、前記微生物、及び希釈剤または担体の別に提供されるものでもある。
【0023】
一様相による微生物、それを含む組成物及びキットは、試料内から、エタノール及びアセトアルデヒドのうち1以上を除去するのにも使用される。
【0024】
次に、実施例が詳細に参照され、その例が添付図面に示され、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を指す。その点において、本実施例は、異なる形態を有することができ、本明細書に記載される説明に限定されると解釈されるものではない。従って、本実施例は、本明細書の態様について説明するために、図面を参照することにより、以下で単に説明されるのみである。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連するリストされた項目の、1またはそれ以上のあらゆる組み合わせを含む。
【発明の効果】
【0025】
一様相による微生物、それを含む組成物及びキットは、試料内から、エタノール及びアセトアルデヒドのうち1以上を除去するのにも使用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下のところ、及び/または他の態様は、添付図面と共に、実施例の以下の説明から明らかになり、さらに容易に理解されるであろう:
図1】選抜された菌株が腸上皮細胞に付着する程度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について、実施例を介して、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例1:アルコール分解能及びアセトアルデヒド分解能を有した微生物の分離及び同定
本実施例においては、キムチから、アルコール分解能及びアセトアルデヒド分解能にすぐれる微生物を分離して同定した。その結果、該微生物は、血中のアルコール分解能及びアセトアルデヒド分解能にすぐれ、耐酸性、耐胆汁酸性及び腸定着性にすぐれ、腸内における安定性にすぐれる。
【0029】
1.菌株の分離及び同定
(1)菌株の分離
4℃に保管された,家庭で直接つけたキムチを、無菌状態で20g取り、0.85% NaCl溶液180ml内で希釈し、ストマッチャー(stomacher)で5分間均質化させた。均質化されたキムチを、滅菌された0.85% NaCl溶液9mlが入れられたチューブで段階的に希釈し、キムチ試料を準備した。該キムチ試料を、MRS培地(Difco,米国)アガール平板培地に塗抹し、37℃で2日ないし3日間培養し、現れたコロニーを、形態別及び色別に区別し、さらに純粋分離した。分離されたコロニーを、pH6.8のMRS液体培地で、37℃、24時間培養しながら、培養液のpHが4.5以下に低下するコロニー230種を選別した。選別された菌株に対し、アルコール耐性、アルコール分解能及びアセトアルデヒド分解能について試験紙、最終的に、アルコール分解能及びアセトアルデヒド分解能、並びに腸内安定性にすぐれる2個菌株、すなわち、ラクトバチルスブレビス(Lactobacillus brevis)LMT1-73(受託番号KCTC-13412BP)及びラクトバチルスファーメンタム(Lactobacillus fermentum)LMT2-75(受託番号KCTC-13413BP)を選抜した。
【0030】
(2)In vitroアルコール耐性の確認
(2.1)アルコールに対する耐性検査
分離された230種菌株を、異なる濃度のエタノールを含む培地で培養し、アルコールに対する耐性を確認した。
【0031】
具体的には、MRS液体培地に、エタノールが5%、10%、15%及び20%になるように添加し、最終10mlを、メンブレンフィルタ(membrane filter)で除菌し、培地として使用した。MRS液体培地に、活性化された230種菌株それぞれを、10CFU/mlの量で添加し、37℃で静置培養を行った。菌株の成長程度は、OD600nmで吸光度を測定して確認した。測定は、培養前、及び培養後4時間目に測定した。表1は、選抜された2個菌株のエタノール耐性を示す。
【表1】
表1で、+、++及び+++は、それぞれエタノールと、それと同量のD.Wとを添加して培養した対照群と比較したとき、80%以上、90%以上及び100%の細胞が成長したことを示す。
【0032】
表1に示されているように、ラクトバチルスファーメンタムLMT2-75及びラクトバチルスブレビスLMT1-73は、20%アルコールを含むMRS液体培地でも高い成長を示した。
【0033】
(2.2)アルコール耐性比較
(2.1)において、アルコール耐性が高いと確認された2個菌株のアルコール耐性を、同一種の他菌株と、アルコール耐性を比較した。比較菌株として、タイプ菌株(type strain)であるラクトバチルスブレビスKCTC3498及びラクトバチルスファーメンタムKCTC3112を使用したが、それらは、KCTCから商業的に購入することができる。
【0034】
アルコール耐性実験は、下記表2に示されているような比較菌株を使用したことを除いては、(2.1)に記載されたところと同一に行った。表2は、菌株の肝アルコール耐性実験結果を示したものである。
【表2】
表2において、+、++及び+++は、表1に示されている通りであり、-は、細胞が成長しないことを示す。表2に示されているように、選抜された2個菌株は、同種の比較菌株に比べ、アルコール耐性にすぐれる。
【0035】
(3)In vitroでのアルコール分解能及びアセトアルデヒド分解能の確認
(3.1)エタノール分解能の確認
分離された2個菌株LMT1-73,LMT2-75を、MRS液体培地で37℃で18時間培養し、細胞濃度が10CFU/3mlレベルである培養物を得て、該培養物3mlが含まれた15ml試験チューブを準備した。前記チューブに、最終濃度10(v/v)%になるようにエタノールを添加した後、空気が入らないように、チューブ蓋を閉じ、37℃で4時間静置させた。
【0036】
次に、培養物を、3,000rpmで遠心分離して細胞を除去し、上澄み液を取り、上澄み液中でのアルコール濃度を測定した。具体的には、前記上澄み液100μl及び6mM NADを、1.0M Tris/HCl(pH8.8)バッファ内で混合し、最終3mlになるようにした後、常温で5分間静置させた。OD340nmで吸光度を測定した(A)、及びアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH:alcohol dehydrogenase)(Sigma社)を添加した後、340nmで吸光度を測定した(A)、エタノールの最終濃度は、次の式によって得た(ethanol detection kit, Cat. No. 10176 290 035, r-biopharm/Roche)。 その結果を表3に示した。
吸光度の差値、△A=(A-A)試料-(A-A)ブランク
エタノールの最終濃度(g/L)=(0.7256/6.3)*△A
エタノール消費(%)=(試料中エタノール残存量/対照群中エタノール残存量)*100
【表3】
表3に示されているように、選抜された2個菌株は、約98%のエタノールを直接分解した。それは、それら菌株が、腸内または体内のアルコールを分解するのに使用されうるということを示す。それは、前記菌株が二日酔いを解消したり、アルコールから、肝臓のような器官を保護したりすることができるということを示す。
【0037】
(3.2)アセトアルデヒド分解能の確認
分離された2個菌株LMT1-73,LMT2-75を、MRS液体培地において、37℃で18時間培養し、細胞濃度が10CFU/2.7mlレベルである培養物を得て、該培養物2.7mlが含まれた15ml試験チューブを準備した。前記チューブに、最終濃度0.01Mになるように、アセトアルデヒドを添加した後、空気が入らないようにチューブ蓋を閉じ、37℃で4時間静置させた。
反応が完了した後、培養物を、0.2μmメンブレンフィルタで濾過し、細胞が除去された濾液(filtrate)試料に対し、アセトアルデヒド検出キット(acetaldehyde detection kit, r-biopharm/Roche)を製造社の指針に従って使用し、試料内残存アセトアルデヒドの量を測定した。アセトアルデヒドの最終濃度は、次の式によって得た(acetaldehyde detection kit, Cat. No. 10 668 613 035, r-biopharm/Roche)。その結果を表4に示した。
吸光度の差値、△A =(A-A)試料-(A-A)ブランク
アセトアルデヒドの最終濃度(g/L)=(0.7158/6.3)*△A
アセトアルデヒド消費(%)=(試料中アセトアルデヒド残存量/対照群中アセトアルデヒド残存量)*100
【表4】
表4に示されているように、選抜された2個菌株は、それぞれ98.2%及び95.0%のアセトアルデヒドを消費した。それは、それら菌株が、アルコール酸化によって生成された二日酔いの主要原因と知られたアセトアルデヒドの濃度を低下させることにより、アルコール摂取後、身体に起こる有害な症状を低減させることができるということを示す。
【0038】
(4)In vivoでのアルコール分解能及びアセトアルデヒド分解能の確認
ラットに、アルコールと共に、選抜された菌株を経口投与し、血中のアルコール濃度及びアセトアルデヒド濃度に及ぼす影響を確認した。ラットは、5ないし6週齢(重さ140gないし160g)の雄性SD(Sprague Dawley)系ラット((株)オリエントバイオ、城南、大韓民国)を使用した。
【0039】
前記ラットを、固形飼料と水道水とを自由摂取させ、1週間予備飼育した後、正常群、対照群及び実験群に区分した(群当たり3匹)。正常群は、ラットにPBSを投与したものであり、対照群は、40% EtOHを投与したものであり、実験群1及び実験群2は、それぞれ(ラクトバチルスブレビスLMT1-731x10CFU/ラット/日+40% EtOH)及び(ラクトバチルスファーメンタムLMT2-751x10CFU/ラット/日+40% EtOH)を投与したものである。
予備飼育後、18時間絶食させた後、実験群は、ラット当たり1x10CFU/日の細菌を、緩衝溶液(PBS:phosphate buffered saline、biosesang)に混濁させ、1回投与した。
30分後、前記対照群及び実験群に、40(v/v)%濃度のエタノール1.5mlを経口投与し、5時間後、心臓採血で、1.5mlの血液を採取した。採取した血液は、常温で、13,000rpmで10分間遠心分離を行い、血漿を分離した。血漿に対し、エタノール測定キット(Roche、米国)を利用し、エタノールの濃度を測定した。その結果を表5に示した。
【表5】
表5に示されているように、2つの実験群において、対照群と比べ、血漿においてアルコール検出量が低いということを確認した。
【0040】
また、血漿に対し、エタノール分解産物であるアセトアルデヒド測定キット(Roche、米国)を利用し、アセトアルデヒドの濃度を測定した。その結果を表6に示した。
【表6】
表6に示されているように、2つの実験群において、対照群と比べ、血漿において、アセトアルデヒドが低く検出された。従って、菌株が、実験動物モデルにおいて、アルコール及びアセトアルデヒドの濃度を低下させることにより、アルコール摂取後、身体において起こる有害な症状を低減させることができるということを示す。
【0041】
(5)選抜された菌株に対する遺伝的分析
(5.1)16S rDNA分析
配列番号3と配列番号4とのプライマーセットと、前記分離された2個菌株LMT1-73及びLMT2-75のゲノムとをテンプレートにしてPCRを行い、16S rDNA増幅産物を得た。前記増幅産物のヌクレオチド配列を、シーケンシングを介して確認した。その結果、LMT1-73及びLMT2-75の16S rDNAは、それぞれ配列番号1及び2のヌクレオチド配列を有する。
【0042】
また、前記16S rDNAのヌクレオチド配列をNCBI blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を使用して解釈した。その結果、LMT1-73及びLMT2-75の16S rDNAは、それぞれラクトバチルスブレビス種及びラクトバチルスファーメンタム種と、配列同一性が、それぞれ99.9%及び100.0%であった。また、系統樹分析結果、LMT1-73は、ラクトバチルスブレビス種と同じであり、LMT2-75は、ラクトバチルスファーメンタム種と同じであった。その結果、LMT1-73菌株及びLMT2-75菌株は、新たなラクトバチルスブレビス種及びラクトバチルスファーメンタム種に属する新たな菌株と確認された。該2菌株は、それぞれラクトバチルスブレビスLMT1-73及びラクトバチルスファーメンタムLMT2-75と命名し、それを韓国生命工学研究院所在の韓国細胞株銀行(KCTC:Korean Collection for Type Cultures)に、2017年12月5日付けで、寄託番号KCTC13412BP及びKCTC13413BPで寄託した。
【0043】
(5.2)アルコール分解及びアセトアルデヒド分解に係わる酵素遺伝子の確認
LMT1-73及びLMT2-75を、MRS液体培地で37℃で18時間培養し、菌体を回収した。菌体から、ゲノムDNAキット(genomic DNA kit)を利用し、ゲノムDNAを得た。表7に示されたプライマーセットをプライマーとして使用し、前記ゲノムDNAをテンプレートにしたPCRを行い、ADH、ALDH及び二機能的アセトアルデヒド-CoA/アルコールデヒドロゲナーゼ(bifunctional acetaldehyde-CoA/ADHE:alcohol dehydrogenase)遺伝子の存在を確認した。
その結果、LMT1-73及びLMT2-75に対し、ADH、ALDH及びADHEの遺伝子増幅産物を得た。それら産物に対してシーケンシングを行い、得られた配列を、NCBI blastを使用し、他の配列と比較した結果、LMT1-73のADH,ALDH及びADHE遺伝子は、それぞれWP_011668736、WP_011668306及びWP_024855276と一致し、LMT2-75のADH,ALDH及びADHE遺伝子は、それぞれNZ_CP019030、CP002033.1及びNC_010610.1と一致した。
【表7】
【0044】
(6)選抜された菌株に対する形態学的及び生理的特性の調査
(6.1)形態学的特性分析
選抜された2種LMT1-73とLMT2-75とを、MRSアガール平板培地に塗抹し、37℃で培養して形成されるコロニーの形態を観察した。表8は、LMT1-73とLMT2-75との形態的特性を示す。
【表8】
【0045】
(6.2)選抜された菌株の糖発酵特性
糖発酵特性は、API 50 CHLキット(Biomerieux、フランス)を利用し、供給社の実験指針に従って調査した。表9は、LMT1-73とLMT2-75との糖発酵特性を示す。
【表9】
【0046】
(7)選抜された菌株の腸内安定性
(7.1)耐酸性の調査
選抜された菌株が、腸内において、プロバイオティックスとしての効能を発揮するためには、摂取後、低いpH上を通過しなければならない。
【0047】
選抜された2つの菌株を、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、37℃で16時間培養した。次に、HClでpH2.5に調整し、滅菌したMRS液体培地に、前記選抜された菌株を1%量で接種し、37℃で2時間培養した。菌株接種直後と2時間培養後との試料を回収し、MRS液体培地で希釈し、MRS平板培地に塗抹した後、37℃で24時間培養した後、平板培地ののコロニー数を計数し、細胞数を測定した。対照群として、pHが調整されていないMRS(pH6.8)液体培地で同一に進め、細胞数を計数した。比較菌株として、タイプ菌株であるラクトバチルスブレビスKCTC3498及びラクトバチルスファーメンタムKCTC3112を使用したが、それらは、KCTCから商業的に購入することができる。表10は、耐酸性測定結果を示したものである。
【表10】
表10に示されているように、選抜された菌株は、pH2.5において、酸性に対する耐性が、比較菌株に比べてすぐれている。具体的には、選抜されたLMT1-73及びLMT2-75は、13.4%及び41.2%が生存した一方、比較菌株であるラクトバチルスブレビスKCTC3498及びラクトバチルスファーメンタムKCTC3112は、それぞれ10.6%及び0.2%だけが生存した。そのような選抜された菌株の特徴は、前述の生理的pHと近いpH3より低いpHにおいて、適正細胞数を維持したために、胃酸分泌による低いpHにおいても、安定して細菌数が維持され、摂取時、腸内到達率が非常に高いということを示す。
【0048】
(7.2)耐胆汁酸性の調査
選抜された2つの菌株を、胆汁酸を含む培地内で培養し、胆汁酸が2つの菌株の成長に及ぼす影響を確認した。
【0049】
具体的には、選抜された菌株を、滅菌されたMRS液体培地に接種した後、37℃で24時間培養し、腸管内胆汁酸塩濃度が0.1%前後であることを勘案し、、0.3%の胆汁酸塩(bile salts)(Sigma、米国)が含有されたMRS液体培地に、前記菌株を1%量で接種し、37℃で2時間それぞれ培養した。菌株接種直後と2時間培養後との試料を回収し、MRS液体培地で希釈し、MRS平板培地に塗抹した後、37℃で24時間培養した後、平板培地上のコロニー数を計数し、菌株細胞数を測定した。対照群として、0.3%の胆汁塩酸が含有されていないMRS液体培地において、同一に培養を進め、菌株細胞数を計数した。比較菌株として、タイプ菌株であるラクトバチルスブレビスKCTC3498及びラクトバチルスファーメンタムKCTC3112を使用したが、それらは、KCTCから商業的に購入することができる。表11は、耐胆汁酸塩を測定した結果である。
【表11】
表11に示されているように、選抜された菌株は、腸内実際濃度と類似した0.1%よりさらに高い0.3%においても、適正細胞数を維持した。具体的には、選抜された菌株LMT1-73,LMT2-75は、それぞれ12.9%及び1.5%生存した一方、比較菌株であるラクトバチルスブレビスKCTC3498及びラクトバチルスファーメンタムKCTC3112は、それぞれ11.7%及び1.0%生存した。従って、これは、選抜されたLMT1-73とLMT2-75は、人体や動物の腸内においても、十分に生存することができ、腸内到達率が非常に高いということを示す。
【0050】
(7.3)腸内定着性の調査
選抜された菌株を、腸上皮細胞であるCaco-2と共同培養し、前記上皮細胞に結合された選抜された菌株の細胞を計数し、選抜された菌株が腸に付着する程度を測定した。Caco-2細胞は、ヒト上皮直腸アデノ癌腫細胞(human epithelial colorectal adenocarcinoma cell)であり、韓国細胞株銀行(KCLB30037.1)から購入した。
【0051】
具体的には、細胞培養培地を利用し、Caco-2細胞を、7x10細胞/100μlになるようにし、培養96ウェルプレートのウェルに添加し、5% CO、37℃条件で培養し、細胞単一層を形成させた。使用された培養プレートと培地は、96ウェル細胞培養プレート(Corning、米国)及び10%ウシ胎児血清(FBS:fetal bovine serum)(Gibco、米国)が含まれたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)(Gibco、米国)培地であった。
【0052】
次に、MRS液体培地で培養されたLMT1-73とLMT2-75とを、リン酸緩衝塩水(PBS)で洗浄した後、抗生物質が添加されていないDMEM培地に懸濁し、前述のCaco-2細胞単一層に、菌株量が1x10CFUになるように添加し、5% CO、37℃条件で2時間培養した。Caco-2細胞に付着することができない細胞を除去するために、PBSで5回洗浄し、100μlの0.1%トリトンx-100で、付着した細胞を引き離した後、それをMRS固体培地に塗抹した後、37℃で24時間培養した後、平板培地上のコロニー数を計数し、選抜された菌株の腸内定着性を調査した。
【0053】
図1は、選抜された菌株が、腸上皮細胞に付着する程度を示した図面である。図1に示されているように、選抜されたLMT1-73及びLMT2-75は、それぞれ73.7%及び72.9%が付着した一方、比較菌株であるラクトバチルスブレビスKCTC3498及びラクトバチルスファーメンタムKCTC3112は、それぞれ68.0%及び58.3%が付着した。
【0054】
従って、選抜された菌株ラクトバチルスブレビスLMT1-73,ラクトバチルスファーメンタムLMT2-75は、比較菌株より、腸上皮細胞であるCaco-2細胞への定着力にすぐれていた。
【0055】
本明細書で説明される実施形態は、説明の目的にのみ考慮されるものであり、限定の目的で考慮されるものではないと理解されなければならない。各実施形態内の特徴または態様の説明は、一般的に、他の実施形態の同様な特徴または態様にも利用可能であると見なされなければならない。
【0056】
図面を参照し、1またはそれ以上の実施形態について説明したが、以下の特許請求の範囲によって定義されるような、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細において、さまざまな変更を加えることができるということは、当業者には理解されるであろう。
【0057】
特許出願のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約
国際的様式
様式BP/4
【0058】
特許出願のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約
国際的様式
下記国際寄託機関によって
規則7.1に基づいて発行された受託証原本

「To.(株)メディトックス
(株)メディトックス
京畿道水原市霊通区セントラルタウン路 114
16506 大韓民国」
様式BP/4
図1
【配列表】
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