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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】クラッチ機構付きトルクヒンジ
(51)【国際特許分類】
   F16D 43/21 20060101AFI20220113BHJP
   F16D 41/02 20060101ALI20220113BHJP
   F16D 41/20 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F16D43/21
F16D41/02 B
F16D41/20 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021092917
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2021-07-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】松岡 高広
(72)【発明者】
【氏名】平田 真之
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-173000(JP,A)
【文献】特開2003-65355(JP,A)
【文献】特開平09-166153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/14,61/38-61/64
F16H 45/02,47/06
F16D 33/12,33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の回転軸を有する内輪及び外輪、並びに前記内輪と前記外輪との間に配置されて両者を所要摩擦力によって断接可能に接続する接続部材を備え
前記外輪は筒状の支持部材の内側に挿入されてこれによって支持されると共に、前記外輪の外周面には一対のフック部を有するコイルばねが装着されており、
前記支持部材には前記コイルばねを制御する筒状の制御部材が軸方向に直列に組み合わされ、前記制御部材は前記支持部材に対し前記共通の回転軸の周りを回転可能な状態で前記コイルばねの外側に配置され、前記支持部材及び前記制御部材には夫々前記コイルばねの前記一対のフック部の各々が嵌め合わされるフック溝が形成されており、
所要操作によって前記コイルばねが前記外輪を保持又は開放し、
前記コイルばねが前記外輪を保持しているときは、前記内輪は前記所要摩擦力に抗して前記外輪に対して回転可能であるが、
前記コイルばねが前記外輪を開放しているときは、前記内輪は前記外輪と一体となって回転するトルクヒンジ。
【請求項2】
前記コイルばね及び前記制御部材は前記支持部材の軸方向の両側に夫々1つずつ配設され、前記支持部材には前記共通の回転軸に対して垂直な支持軸の周りを回転可能な傘歯車が組み合わされ、前記制御部材には周方向に延在して前記傘歯車と噛み合う円弧状のラックが設けられている、請求項1に記載のトルクヒンジ。
【請求項3】
前記支持部材の軸方向の両側に配設された前記コイルばねの各々を構成する線材の巻回方向は軸方向の一方から見て相互に逆である、請求項2に記載のトルクヒンジ。
【請求項4】
前記制御部材は前記外輪の内周面と前記内輪の外周面との間に進入する筒状の支持突部が付設され、前記接続部材は、前記支持部材の軸方向の両側に配設された前記制御部材の各々に付設された前記支持突部によって軸方向の両側から支持される、請求項2又は3に記載のトルクヒンジ。
【請求項5】
前記コイルばねが前記外輪の外周面に装着されて前記一対のフック部の各々が何らの力を受けていない状態にあっては、前記コイルばねは前記外輪を締め付けてこれを保持しており、前記制御部材が前記支持部材に対して回転することで、前記コイルばねは前記外輪を開放する、請求項1乃至4のいずれかに記載のトルクヒンジ。
【請求項6】
前記接続部材は前記外輪に対して回転不能である、請求項1乃至5のいずれかに記載のトルクヒンジ。
【請求項7】
前記接続部材は一対のリテーナによって軸方向の両側から保持され、前記一対のリテーナの各々は周方向係止手段によって前記外輪と周方向に係止する、請求項6に記載のトルクヒンジ。
【請求項8】
前記接続部材は金属製の薄板より構成されるばね部材であって、前記内輪の外周面と密接するばね部を有する、請求項6又は7に記載のトルクヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクヒンジ、殊に所要操作をすることで両側に接続された2つの部材を一体的に又は所要摩擦力に抗して相対回転させる状態と、所要摩擦力によらず相対回転させる状態とに切り換え可能なクラッチ機構を備えたトルクヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばノートブック型コンピューターの液晶表示部やコピー機の蓋を本体に対して任意の傾斜角の位置に停止させるのにトルクヒンジが広く実用に供されている。かようなトルクヒンジの一例として、下記特許文献1及び2には、共通の回転軸を有する内輪及び外輪、並びに内輪と外輪との間に配置されて両者を所要摩擦力によって断接可能に接続する接続部材を有するトルクヒンジが開示されている。下記特許文献1及び2は所謂摩擦トルクヒンジであって、接続部材としては金属製の薄板から構成されるばね部材が採用されており、かかるばね部材は内輪の外周面と密接して上記所要摩擦力を発生させるばね部を有している。内輪及び外輪はばね部材による上記所要摩擦力に抗して相対回転可能である。
【0003】
また、例えば下記特許文献3にはコイルばねを、例えば下記特許文献4には所謂輪ばねを、例えば下記特許文献5には所謂トレランスリングを夫々利用した双方向トルクリミッタが開示されている。下記特許文献3乃至5に開示された双方向トルクリミッタにあっても内輪及び外輪が所要摩擦力に抗して相対回転可能であることから、トルクヒンジと同一の作用効果を奏する。
【0004】
トルクヒンジは上述したとおり蓋を本体に対して任意の傾斜角の位置に停止させる角度保持装置として使用されることもあるが、内輪及び外輪のいずれか一方を駆動側の部材にいずれか他方を従動側の部材に夫々接続することで回転伝達装置として使用されることもある。例えば、内輪及び外輪のいずれか一方を駆動側の部材として電動モーターにいずれか他方を従動側の部材として車両等のドアに夫々接続すれば、ドアを電動モーターで開閉させることができる。そして、電動モーターの駆動トルクによってドアが開閉動作中に若しくは電動モーターのディテントトルク又は保持トルクによってドアが全開位置又は中間開位置に保持されているときに、ドアが風等によって突発的に外力を受けた場合には、内輪及び外輪が相対回転することでドアが受けた上記外力を逃がすことができ、これによりドアがバタつくことを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-12514号公報
【文献】特開2003-65355号公報
【文献】特開平9-112568号公報
【文献】特開2018-35837号公報
【文献】特開2021-14861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、上記特許文献1乃至5に開示されたトルクヒンジ(双方向トルクリミッタ)を回転伝達装置として使用した場合、内輪及び外輪のいずれか一方は電動モーターにいずれか他方はドアに常時接続されていることから、例えば電動モーターの故障等によりドアを手動で開閉させる必要が生じた場合には、使用者は接続部材が内輪と外輪とを接続する上記所要摩擦力若しくは電動モーターのディテントトルク又は保持トルクに抗してドアを開閉させなければならず、相当大きな力を要し実質上不可能である。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、所要操作をすることで両側に接続された2つの部材を一体的に又は所要摩擦力に抗して相対回転させる状態と、所要摩擦力によらず相対回転させる状態とに切り換え可能な、新規且つ改良されたトルクヒンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、外輪の外周面に一対のフック部を有するコイルばねを装着して外輪を筒状の支持部材によって支持すると共に、支持部材にはコイルばねを制御するための制御部材を軸方向に直列に組み合わせて制御部材は支持部材に対して内輪及び外輪が有する共通の回転軸の周りに回転可能とし、支持部材及び制御部材にはコイルばねの一対のフック部の各々が嵌め合わされるフック溝を設け、所要操作によりコイルばねが外輪を保持又は開放するように構成することで、上記主たる技術的課題を解決することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成するトルクヒンジとして、共通の回転軸を有する内輪及び外輪、並びに前記内輪と前記外輪との間に配置されて両者を所要摩擦力によって断接可能に接続する接続部材を備え
前記外輪は筒状の支持部材の内側に挿入されてこれによって支持されると共に、前記外輪の外周面には一対のフック部を有するコイルばねが装着されており、
前記支持部材には前記コイルばねを制御する筒状の制御部材が軸方向に直列に組み合わされ、前記制御部材は前記支持部材に対し前記共通の回転軸の周りを回転可能な状態で前記コイルばねの外側に配置され、前記支持部材及び前記制御部材には夫々前記コイルばねの前記一対のフック部の各々が嵌め合わされるフック溝が形成されており、
所要操作によって前記コイルばねが前記外輪を保持又は開放し、
前記コイルばねが前記外輪を保持しているときは、前記内輪は前記所要摩擦力に抗して前記外輪に対して回転可能であるが、
前記コイルばねが前記外輪を開放しているときは、前記内輪は前記外輪と一体となって回転するトルクヒンジが提供される。
【0010】
好ましくは、前記コイルばね及び前記制御部材は前記支持部材の軸方向の両側に夫々1つずつ配設され、前記支持部材には前記共通の回転軸に対して垂直な支持軸の周りを回転可能な傘歯車が組み合わされ、前記制御部材には周方向に延在して前記傘歯車と噛み合う円弧状のラックが設けられている。この場合には、前記支持部材の軸方向の両側に配設された前記コイルばねの各々を構成する線材の巻回方向は軸方向の一方から見て相互に逆であるのが好ましい。また、前記制御部材は前記外輪の内周面と前記内輪の外周面との間に進入する筒状の支持突部が付設され、前記接続部材は、前記支持部材の軸方向の両側に配設された前記制御部材の各々に付設された前記支持突部によって軸方向の両側から支持されるのがよい。好適には、前記コイルばねが前記外輪の外周面に装着されて前記一対のフック部の各々が何らの力を受けていない状態にあっては、前記コイルばねは前記外輪を締め付けてこれを保持しており、前記制御部材が前記支持部材に対して回転することで、前記コイルばねは前記外輪を開放する。好ましくは、前記接続部材は前記外輪に対して回転不能である。この場合には、前記接続部材は一対のリテーナによって軸方向の両側から保持され、前記一対のリテーナの各々は周方向係止手段によって前記外輪と周方向に係止するのが好適である。さらに、前記接続部材は金属製の薄板より構成されるばね部材であって、前記内輪の外周面と密接するばね部を有するのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトルクヒンジにあっては、外輪の外周面に装着されたコイルばねが有する一対のフック部の各々が、外輪を支持する支持部材及びこれと軸方向に直列に組み合わされる制御部材の各々に形成されたフック溝に嵌め合わされており、そして、制御部材は支持部材に対して内輪及び外輪が有する共通の回転軸の周りを回転可能であることから、支持部材及び制御部材を共通の回転軸の周りで相対回転させることで、コイルばねが外輪を締め付けてこれを保持した状態と、コイルばねが外輪を開放した状態とに切り換え可能となる。
【0012】
コイルばねが外輪を締め付けてこれを保持した状態にあっては、支持部材は外輪と一体であるため、内輪及び支持部材は接続部材による所要摩擦力によって一体的に又はこれに抗して相対的に回転可能となる一方、コイルばねが外輪を開放した状態にあっては、支持部材は外輪に対して回転可能であるため、内輪及び外輪が上記所要摩擦力で接続されているにも拘らず、内輪及び支持部材は充分小さな力で相対回転可能となる。つまり、本発明のトルクヒンジによれば、所要操作をすることで両側に接続された2つの部材を一体的に又は所要摩擦力に抗して相対回転させる状態と、所要摩擦力によらず相対回転させる状態とに切り換え可能となる。それ故に、例えば本発明のトルクヒンジを回転伝達装置として車両のドアに組み込んで内輪を電動モーターに支持部材をドアに夫々接続すれば、コイルばねが外輪を保持した状態にあっては、電動モーターによってドアを駆動することができる。そして、電動モーターの駆動トルクによってドアが開閉動作中に若しくは電動モーターのディテントトルク又は保持トルクによってドアが全開位置又は中間開位置に保持されているときに、ドアが風等によって突発的に外力を受けた場合には、内輪及び外輪が相対回転することでドアが受けた上記外力を逃がすことができ、これによりドアがバタつくことを防止することができる。一方、コイルばねが外輪を開放した状態にあっては、充分小さな力でドアを動かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従って構成されたトルクヒンジの全体構成を示す図。
図2図1に示すトルクヒンジにおいて制御部材を除去した状態の左側面図。
図3図1に示すトルクヒンジの、図1において切断線A-Aで示す断面図。
図4図1に示すトルクヒンジの、図2において切断線B-Bで示す断面図。
図5図1に示すトルクヒンジを構成部品毎に分解して示す斜視図。
図6図1に示すトルクヒンジの内輪を単体で示す。
図7図1に示すトルクヒンジの外輪を単体で示す。
図8図1に示すトルクヒンジの接続部材を単体で示す。
図9図1に示すトルクヒンジのリテーナを単体で示す。
図10図1に示すトルクヒンジの支持部材を単体で示す。
図11図1に示すトルクヒンジの中間部材を単体で示す。
図12図1に示すトルクヒンジの制御部材を単体で示す。
図13図1に示すトルクヒンジのコイルばねを単体で示す。
図14図1に示すトルクヒンジにおいて中間部材を他側に操作した状態を示す図。
図15図14において切断線A-Aで示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成されたトルクヒンジの好適実施形態を示す添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0015】
図1乃至図5、主に図3乃至図5を参照して説明すると、全体を番号2で示すトルクヒンジは、共通の回転軸o1を有する内輪4及び外輪6、並びに接続部材8を備えている。
【0016】
図3乃至図5と共に図6を参照して説明すると、内輪4は金属製の略円筒形状であって、軸方向中央部には、外周面の断面形状が円形であって比較的大径の作用部14が設けられている。作用部14の軸方向両側には夫々、外周面の断面形状が円形であって比較的小径の内輪軸部16が設けられている。2つの内輪軸部16の一方の軸方向自由端部には、コの字形状の切り欠き18が形成されている。かかる切り欠き18は内輪軸部16の直径方向両側に形成されており、切り欠き18を介して内輪4は、図3及び図4等において二点鎖線で示す駆動側の軸部材sに接続される。
【0017】
図3乃至図5と共に図7を参照して説明すると、外輪6は金属製の略円筒形状であって、図3及び図4を参照することによって理解されるとおり、その内径は内輪4の作用部14の外径よりも大きく、内輪4の外側つまり内輪4を内側に含んだ状態で配置される。外輪6の外周面の断面形状は円形であるが、内周面には内径を局所的に低減せしめて形成される周方向係止凸条20が周方向に等角度間隔をおいて6個設けられている。周方向係止凸条20は外輪6の軸方向全域に亘って直線状に延びており、その断面形状は略矩形である。
【0018】
図3及び図4に示すとおり、接続部材8は内輪4と外輪6との間、さらに詳しくは内輪4の外周面と外輪6の内周面との間に配置されている。図3乃至図5と共に図8を参照して説明すると、図示の実施形態においては、接続部材8は金属製であって、略円環薄板形状の接続基部22を有する。図3及び図4に示すとおり、接続基部22は内輪4の外周面を囲繞して共通の回転軸o1に対して垂直に配置される。接続基部22の外周縁には軸方向に起立した後に径方向外方に屈曲する円環形状の外周補強部24が付設されている。接続基部22の内周縁部には内径を局所的に増大せしめて形成される略矩形の係合凹部26が周方向に等角度間隔をおいて6個設けられている。そして、接続基部22において上記係合凹部26が設けられていない角度領域の内周縁部は軸方向に湾曲せしめられてばね部28をなし、このばね部28が図4に示すとおり内輪4の作用部14の外周面に弾性的に密接する。図8のB部拡大図を参照することによって理解されるとおり、上記ばね部28は軸方向において外周補強部24と同一の側に湾曲せしめられている。
【0019】
上述した接続部材8が内輪4と外輪6とを所要摩擦力によって断接可能に接続する。図示の実施形態においては、接続部材8は合成樹脂製の一対のリテーナ30及び32によって軸方向の両側から保持され、一対のリテーナ30及び32の各々が後述する周方向係止手段によって外輪6と周方向に係止している。つまり、接続部材8は外輪6に対して回転不能な状態でこれに組み合わされている。図9も参照して説明すると、一対のリテーナ30及び32は相互に対応する形状であって、共に円環板形状のリテーナ基部34を有している。図3及び図4に示すとおり、リテーナ基部34も内輪4の外周面を囲繞して共通の回転軸o1に対して垂直に配置される。リテーナ基部34の外周縁部には外径を局所的に低減せしめて形成される略矩形形状の周方向係止凹部36が周方向に等角度間隔をおいて6個設けられている。図2に示すとおり、周方向係止凹部36は外輪6に形成された周方向係止凸条20と対応し、これらが上記周方向係止手段を構成する。リテーナ基部34には、内周縁に沿って軸方向幅を低減せしめてなる円環形状の内輪軸方向受面38が形成されており、図3及び図4に示すとおり、内輪軸方向受面38が内輪4の作用部14を軸方向に支持する。そして、リテーナ30のリテーナ基部34にあっては、軸方向に直線状に延びる係合凸柱40が内輪軸方向受面38の外周縁に沿って周方向に等角度間隔をおいて6個設けられている。一方、リテーナ32のリテーナ基部34にあっては、軸方向に没入せしめられた係合没入部42が内輪軸方向受面38の外周縁に沿って周方向に等角度間隔をおいて6個設けられている。係合没入部42には外周縁に沿って周方向に連続して延びる微小段部42aも設けられている。係合凸柱40及び係合没入部42並びに(接続部材8に形成された)係合凹部26の断面形状は夫々対応する。
【0020】
図示の実施形態においては、接続部材8は軸方向に直列に複数(図示の実施形態においては3個)積層して配置され、複数の接続部材8の夫々の係合凹部26の周方向角度位置及びばね部28の周方向角度位置は夫々整合せしめられる。一対のリテーナ30及び32の各々は軸方向に直列に積層して配置された複数の接続部材8全体の軸方向両側に夫々配置され、リテーナ30の係合凸柱40の先端部が接続部材8の係合凹部26を軸方向に通過した後にリテーナ32の係合没入部42に嵌め合わされる。これにより、軸方向に直列に積層して配置された複数の接続部材8全体は、一対のリテーナ30及びリテーナ32によって軸方向両側から保持される。かようにして組み合わされた接続部材8及び一対のリテーナ30及び32は、一対のリテーナ30及び32の各々に形成された周方向係止凹部36と外輪6の内周面に形成された周方向係止凸条20とを整合せしめた後に外輪6の内側に進入させられる(図2も参照されたい)。かくして接続部材8は一対のリテーナ30及び32を介して外輪6に対して回転不能な状態でこれに装着される。所望ならば、接続部材8の外周面に周方向係止凹部を形成することで、一対のリテーナ30及び32を省略して接続部材を外輪6の内周面に直接装着することもできる。
【0021】
図3及び図4に示すとおり、外輪6は筒状の支持部材43の内側に挿入されてこれによって支持されている。主に図3乃至図5と共に図10を参照して説明すると、支持部材43は適宜の成形方法によって形成された合成樹脂製であり、円環形状の支持基部44を備えている。支持基部44は周方向所要部位を除いて一定の径方向幅を有している。支持基部44の軸方向両側面には夫々、内周縁に沿って軸方向幅をその両側から低減せしめてなる円環形状の巻回部軸方向受面46、及び巻回部軸方向受面46から径方向外方に直線状に延びるフック溝48が夫々形成されている。図2乃至図4に示すとおり、巻回部軸方向受面46及びフック溝48は夫々後述するコイルばね89の巻回部90及びフック部92を受ける。支持基部44の上記所要角度部位を除く外周面には周方向に連続して延在する略円弧形状の支持外周壁50が形成されている。支持外周壁50においてフック溝48が形成されている周方向角度位置にあっては、軸方向においてそのフック溝48が形成されている側に、径方向に貫通する間隙51が形成されている(図5を参照されたい)。支持外周壁50の外周面には、径方向外方に延出する一対の耳部52が直径方向の両側に形成されており、一対の耳部52の各々の中央には軸方向に貫通する固定用穴54が形成されている。固定用穴54にボルトの如き図示しない固定具を挿通することで、支持部材43は車両のドアの如き図示しない従動側の部材に固定される。支持外周壁50の内周面の軸方向両側端部には、周方向に延在する係止突条55が形成されている。
【0022】
支持基部44の上記所要角度部位の外周面における周方向中央位置には、径方向に延びる支持軸56が設けられている。図示の実施形態においては、支持軸56は全体的に円柱形状であるが、(支持軸56の)直径方向に貫通するスリット58が(支持軸56の)自由端から固定端部にかけて設けられており、支持軸56の自由端部は弾性変形可能となっている。支持軸56の自由端部には更に(支持軸56の)径方向外方に向かって突出する係止突部60も設けられている。図1及び図2に示すとおり、支持軸56にはこれの周りを回転可能な中間部材62が組み合わされる。
【0023】
図11も参照して説明すると、中間部材62は適宜の成形方法によって形成される合成樹脂製であって、支持軸56の周りを一体となって回転する傘歯車64及び平歯車66を備えている。傘歯車64及び平歯車66は共通の中心軸o2を有し、傘歯車64の外端は軸方向に直線状に延出して平歯車66の側面に接続されている。中間部材62の中心には共通の中心軸o2の軸方向に直線状に延びる支持軸穴68が設けられている。支持軸穴68における平歯車66側の軸方向端部には、局部的に拡径せしめてなる係止段部70が設けられている。かような中間部材62は、図3に示されるとおり、支持軸穴68の傘歯車64側から支持軸56が挿入せしめられ、支持軸56の係止突部60が中間部材62の支持軸穴68に設けられた係止段部70を通過してこれに弾性的に係止することで、支持軸56に対して回転可能に組み合わされる。図示の実施形態においては、平歯車66が図示しない操作機構に接続されており、かかる操作機構による操作によって中間部材62は支持軸56の周りを回転駆動する。
【0024】
図1を参照して説明すると、支持部材43には更に、後述するコイルばね89を制御する筒状の制御部材72が軸方向に直列に組み合わされている。図示の実施形態においては、制御部材72は支持部材43の軸方向の両側に1つずつ配設されており、2つの制御部材72の各々について言及するときは末尾にa又はbを夫々付して両者を区別する。12を参照して説明すると、制御部材72は合成樹脂製の略円筒形状であって、適宜の成形方法によって形成される。制御部材72の形状については後述する。制御部材72の内周面の軸方向片側端には共通の回転軸o1に対して垂直に配置される略円形の制御基板74が付設されており、制御基板74の中心には円形の貫通穴75が形成されている。制御基板74には貫通穴75の外周縁を囲繞して軸方向他側に延びる円筒形状の支持突部76及び支持突部76の固定端部を囲繞する円環形状の外輪受溝78が設けられている。制御部材72が後述するとおりにして支持部材43と組み合わされると、図3及び図4に示すとおり、支持突部76の自由端部が外輪6の内周面と内輪4(さらに詳しくは内輪軸部16)の外周面との間に進入し、これにより接続部材8並びにこれを保持する一対のリテーナ30及び32は、支持部材43の軸方向の両側に配設された制御部材72の各々に付設された支持突部76によって軸方向の両側から支持される。このとき更に、内輪4は支持突部76によって、外輪6の軸方向端部は外輪受溝78によって夫々回転可能に軸支される。再度図12を参照して制御部材72の形状について説明する。制御部材72の特定角度部位には径方向に貫通して軸方向に直線状に延在するフック溝82が形成されている。フック溝82は制御部材72の軸方向全体に渡って延在している。制御部材72において番号84で示す特定角度領域にあっては、外径が幾分低減せしめられており、軸方向自由端面(制御基板74が付設されていない側を制御部材72の「自由端」とする)には周方向に延在する円弧状のラック86が設けられている。かような特定角度領域84は直径方向の両側に1つずつ設けられている。図1及び図3に示すとおり、ラック86は中間部材62の傘歯車64と噛み合うことから、傘歯車64の歯が形成された円錐面と対応する所要円錐面に沿って周方向に延在するのが好ましい。制御部材72における特定角度領域84以外の角度領域の自由端部にあっても、外径は幾分低減せしめられており、ここには周方向に延在する円弧状の被係止突条88が形成されている。
【0025】
制御部材72は、図4に示すとおり、被係止突条88が支持部材43の係止突条55を弾性的に乗り越えてこれと軸方向に係止することで、支持部材43に組み合わされる。制御部材72が支持部材43に組み合わされた状態にあっては、制御部材72は支持部材43に対して共通の回転軸o1を中心に回転可能である。上記状態にあっては更に、上述したとおり、制御部材72のラック86は支持部材43の支持軸56に組み合わされた中間部材62の傘歯車64と噛み合う。図示の実施形態においては、2つの制御部材72a及び72bが支持部材43の軸方向の両側に1つずつ配設されていることから、これら2つの制御部材72a及び72bの各々に形成されたラック86は傘歯車64を介して相互に接続され、2つの制御部材72a及び72bの各々及び中間部材62は連動する。従って、図1に示す状態から、中間部材62が支持軸56の周りを同図中央の正面図において反時計方向に回転すると、図3及び図5も併せて参照することによって理解されるとおり、中間部材62の傘歯車64と2つの制御部材72a及び72bの各々のラック86との噛み合いによって、図1において左側に位置する制御部材72aは共通の回転軸o1の周りを時計方向(同図の左側から見て)に回転するが、図1において右側に位置する制御部材72bは共通の回転軸o1の周りを反時計方向(同左側から見て)に回転し、2つの制御部材72a及び72bの回転方向は相互に反転する。これについては後に更に言及する。
【0026】
図3及び図4に示すとおり、外輪6の外周面にはコイルばね89も装着されている。図示の実施形態においては、コイルばね89は支持部材43の軸方向の両側に1つずつ配設されており、2つのコイルばね89の各々について言及するときは末尾にa又はbを夫々付して両者を区別する。図3乃至図5と共に図13を参照して説明すると、コイルばね89は断面形状が矩形の金属製線材を螺旋状に巻回した巻回部90と、巻回部90の軸方向両端において線材が径方向外方に屈曲した一対のフック部92とを有している。コイルばね89が自由状態にあるときの巻回部90の内径は外輪6の外径よりも小さく、コイルばね89は巻回部90の内径を一時的に拡径した状態で外輪6の外周面に装着される。図13図2とを比較参照することによって理解されるとおり、コイルばね89が自由状態にあるときには一対のフック部92の各々は略140度の角度間隔をおいて位置するが、図1に示す状態(つまり後述するとおり図示しない操作機構によって中間部材62が操作されていない状態)にあっては、一対のフック部92の各々は略180度の角度間隔をおいて位置する。従って、コイルばね89が外輪6の外周面に装着されて一対のフック部92が何らの力を受けていない状態においては、巻回部90の内周面は外輪6の外周面と密着し、コイルばね89は外輪6の外周面を締め付けてこれを保持する。図示の実施形態においては、2つのコイルばね89a及び89bが支持部材43の軸方向の両側に1つずつ配設されており、2つのコイルばね89a及び89bは夫々、外輪6が支持部材43の内側に挿入された後であって且つ制御部材72が支持部材43と組み合される前に、軸方向の両側から夫々外輪6に装着され、一対のフック部92の各々が支持部材43及び制御部材72に形成されたフック溝48及び82に嵌め合わされる。このとき、2つのコイルばね89a及び89bの各々を構成する線材の巻回方向は軸方向の一方から見て相互に逆にするのがよい。理由については後述する。
【0027】
次に、トルクヒンジ2の作動について説明する。図1に示す状態にあっては、中間部材62の平歯車66に接続されてこれを回転駆動せしめる図示しない操作機構は作動しておらず、従って、支持部材43の軸方向の両側に配設された2つのコイルばね89a及び89bの各々は外輪6の外周面を締め付けてこれを保持している。この状態で軸部材sから内輪4に回転トルクが付与されると、内輪4及び支持部材43は、内輪4が接続部材8による所要摩擦力によって外輪6に接続されることで一体的に、又は内輪4が接続部材8による所要摩擦力に抗して外輪6に対して滑ることで相対的に回転する。
【0028】
内輪4に回転トルクが付与されると、接続部材8によって内輪4に接続されている外輪6は内輪4の回転方向と同一方向に回転しようとする。図示の実施形態においては、支持部材43の軸方向の両側に配設された2つのコイルばね89a及び89bの各々を構成する線材の巻回方向は軸方向の一方から見て相互に逆であることから、例えば内輪4が図3及び図4の左側から見て時計方向に回転した場合には、図5も併せて参照することによって理解されるとおり、外輪6に装着されたコイルばね89aが有する一対のフック部92のうち支持部材43に形成されたフック溝48に嵌め合わされた方のフック部92は、支持部材43に形成されたフック溝48において支持部材43によりばねを緩める方向に押される。一方、外輪6に装着されたコイルばね89bが有する一対のフック部92のうち支持部材43に形成されたフック溝48に嵌め合わされた方のフック部92は、支持部材43に形成されたフック溝48において支持部材43によりばねを締め付ける方向に押される。内輪4が反対方向に回転した場合はその逆となる。つまり、内輪4の回転方向によらず、常に2つのコイルばね89a及び89bのいずれか一方のフック部92はばねを締め付ける方向に押されるため、外輪6はコイルばね89によって充分確実に保持されることとなる。そのため、単一のコイルばね89を外輪6の外周面に装着する場合、又は線材の巻回方向が軸方向の一方から見て同一である2つのコイルばね89を外輪6の外周面に装着する場合には、外輪6が内輪4に付与された回転トルクによって内輪4の回転方向と同一方向に回転しようとする際に、コイルばね89が有する一対のフック部92のいずれかが支持部材43によってばねを緩める方向に押されても、コイルばね89が外輪6を保持できる範囲に入力トルクの大きさを制限する必要がある。
【0029】
図1に示す状態から中間部材62が図示しない操作機構によって支持軸56の周りを図1の中央図において反時計方向に回転駆動させられると、中間部材62の傘歯車64と噛み合うラック86を備える制御部材72は、支持部材43に対して共通の回転軸o1の周りを回転し、制御部材72のフック溝82に嵌め合わされたコイルばね89のフック部92をコイルばね89が緩む方向に押す。図示の実施形態においては、制御部材72及びコイルばね89は支持部材43の軸方向の両側に夫々1つずつ配設されており、支持部材43の軸方向の両側に配設された2つのコイルばね89a及び89bの各々を構成する線材の巻回方向は軸方向の一方から見て相互に逆であって、上述したとおり2つの制御部材72a及び72bの各々は相互に反対方向に回転することから、2つのコイルばね89a及び89bのフック部92は同時にコイルばね89が緩む方向に押される。図14には、中間部材62が操作機構によって反時計方向に所要角度だけ回転させられた後に停止した状態が図示されている。中間部材62は上記操作機構によって図14に示す角度位置で保持される。図1の左図と図14の左図とを比較参照することによって理解されるとおり、制御部材72aは同図左図において共通の回転軸o1を中心に時計方向に回転せしめられている。一方、図1の右図と図14の右図とを比較参照することによって理解されるとおり、制御部材72bも同図右図において共通の回転軸o1を中心に時計方向に回転せしめられている。紙面上での制御部材72a及び72bの回転方向は同じであるが、上述したとおり、両者の回転方向は軸方向の一方から見た場合には相互に逆となる。図14に示す状態にあっては、図15に示すとおり、コイルばね89a及び89bは外輪6を開放しており、外輪6はコイルばね89a及び89bに対して回転可能な状態である。つまり、支持部材43に共通の回転軸o1の周りに回転トルクが付与された場合には、支持部材43(及びこれと組み合わされる制御部材72a及び72b)は外輪6に対して回転可能であることから、内輪4及び支持部材43は接続部材8による所要摩擦力によらず相対的に回転可能となる。図15ではコイルばね89a及び89bの巻回部90の内周面は夫々外輪6の外周面から完全に離隔しているが、外輪6がコイルばね89a及び89bに対して回転可能であれば、コイルばね89a及び89bの巻回部90の内周面が夫々外輪6の外周面から必ずしも完全に離隔しておらず、両面が当接していてもよい。
【0030】
従って、本発明のトルクヒンジにあっては、外輪6の外周面に装着されたコイルばね89が有する一対のフック部92の各々が、外輪6を支持する支持部材43及びこれと軸方向に直列に組み合わされる制御部材72の各々に形成されたフック溝48及び82に嵌め合わされており、そして、制御部材72は支持部材43に対して内輪4及び外輪6が有する共通の回転軸o1の周りを回転可能であることから、支持部材43及び制御部材72を共通の回転軸o1の周りで相対回転させることで、コイルばね89が外輪6を締め付けてこれを保持した状態と、コイルばね89が外輪6を開放した状態とに切り換え可能となる。
【0031】
それ故に、コイルばね89が外輪6を締め付けてこれを保持した状態にあっては、支持部材43は外輪6と一体であるため、内輪4及び支持部材43は接続部材8による所要摩擦力によって一体的に又はこれに抗して相対的に回転可能となる一方、コイルばね89が外輪6を開放した状態にあっては、支持部材43は外輪6に対して回転可能であるため、内輪4及び外輪6が上記所要摩擦力で接続されているにも拘らず、内輪4及び支持部材43は充分小さな力で相対回転可能となる。つまり、本発明のトルクヒンジによれば、所要操作をすることで両側に接続された2つの部材を一体的に又は所要摩擦力に抗して相対回転させる状態と、所要摩擦力によらず相対回転させる状態とに切り換え可能となる。それ故に、例えば本発明のトルクヒンジを回転伝達装置として車両のドアに組み込んで内輪4を電動モーターに支持部材43をドアに夫々接続すれば、コイルばね89が外輪6を保持した状態にあっては、電動モーターによってドアを駆動することができる。そして、電動モーターの駆動トルクによってドアが開閉動作中に若しくは電動モーターのディテントトルク又は保持トルクによってドアが全開位置又は中間開位置に保持されているときに、ドアが風等によって突発的に外力を受けた場合には、内輪4及び外輪6が相対回転することでドアが受けた上記外力を逃がすことができ、これによりドアがバタつくことを防止することができる。一方、コイルばね89が外輪6を開放した状態にあっては、充分小さな力でドアを動かすことができる。
【0032】
以上、本発明に従って構成されたトルクヒンジについて添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。図示の実施形態においては、コイルばね89が外輪6の外周面に装着されて一対のフック部92が何らの力を受けていない状態では巻回部90の内周面は外輪6の外周面と密着していて、制御部材72が共通の回転軸o1の周りを回転することでコイルばね89が外輪6を開放するように構成されていたが、所望ならば、コイルばねが外輪6の外周面に装着されて一対のフック部が何らの力を受けていない状態では巻回部の内周面は外輪6の外周面から離隔していて、制御部材72が共通の回転軸o1の周りを回転することでコイルばねが外輪6を締め付けてこれを保持するように構成することもできる。また、図示の実施形態においては、図示しない操作機構で中間部材62を操作することで制御部材72を従動させるようにしたが、適宜の接続方法によって制御部材72を操作機構に直接接続し、制御部材72を操作機構によって直接的に操作してもよい。この場合には、上述したとおり、2つの制御部材72a及び72bが夫々のラック86及び中間部材62傘歯車64によって接続されて連動することから、2つの制御部材72a及び72bのいずれか一方を操作機構によって直接操作すれば、いずれか他方は一方に従動する。さらにまた、接続部材は内輪4と外輪6との間に配置されて両者を所要摩擦力によって断接可能に接続すればよく、従って、接続部材として上記特許文献に記載されたような、コイルばね、所謂輪ばね、又はトレランスリングを採用することもできる。
【符号の説明】
【0033】
2:トルクヒンジ
4:内輪
6:外輪
8:接続部材
30及び32:リテーナ
43:支持部材
48:(支持部材の)フック溝
56:支持軸
62:中間部材
64:傘歯車
72(72a及び72b):制御部材
82:(制御部材の)フック溝
86:ラック
89(89a及び89b):コイルばね
92:フック部
【要約】
【課題】接続部材8による所要摩擦力によって内輪4及び外輪6が接続されていても、所要操作をすることで充分小さな力で従動側の部材を駆動側の部材に対して回転させることのできる、新規のトルクヒンジを提供すること。
【解決手段】外輪6の外周面に一対のフック部92を有するコイルばね89を装着して外輪6を筒状の支持部材43によって支持すると共に、支持部材43にはコイルばね89を制御するための制御部材72を軸方向に直列に組み合わせて制御部材72は支持部材43に対して内輪4及び外輪6が有する共通の回転軸o1の周りに回転可能とし、支持部材43及び制御部材72にはコイルばね89の一対のフック部92の各々が嵌め合わされるフック溝48及び82を設け、所要操作によりコイルばね89が外輪6を保持又は開放するように構成する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図15