(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】可撓性の調整可能屈折力の液晶セル及びレンズ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20220203BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1337
G02F1/1337 520
(21)【出願番号】P 2021515454
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(86)【国際出願番号】 GB2018053311
(87)【国際公開番号】W WO2020058656
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】リン フン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユ-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ロ ハオ-レン
(72)【発明者】
【氏名】リン イ-シン
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-060223(JP,A)
【文献】特開2004-184966(JP,A)
【文献】特開2010-032860(JP,A)
【文献】特開2018-036634(JP,A)
【文献】特開2009-139455(JP,A)
【文献】特開2006-171681(JP,A)
【文献】国際公開第2016/078238(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13,1/137-1/141
G02F 1/1337
G02F 1/1343-1/1345,1/135
G02F 1/133,1/1333,1/1334
G02F 1/1339-1/1341,1/1347
G02F 1/136-1/1368
G02C 7/02,7/04
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層及び第2配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、
前記第1配向層の上方に配置され、前記活性層の開口領域の上方に配置された第1パターン開口を有する第1電極と、
前記第2配向層の下方に配置され、前記第1電極との組合せで前記活性層内に電界を誘発するように配置された第2パターン開口を有する第2電極と、
を備え、
前記第1配向層及び前記第2配向層の少なくとも1つが、液晶部分を有するポリマー層を含み、
前記活性層内の液晶に隣接する前記
ポリマー層の
第1表面の液晶成分のディレクタは、前記活性層の主表面に対して平行であり、
前記
ポリマー層の
厚さ方向における中央領域の液晶成分のディレクタは、前記活性層の主表面に対して直交している
ことを特徴とする可撓性のある電気的に調整可能なレンズ。
【請求項2】
前記第1及び第2パターン開口は、円形を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項3】
前記第1及び第2パターン開口は、共通の半径の円形を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項4】
前記第1配向層の上方に配置され前記第1電極から誘電材料によって分離された第1抵抗層と、
前記第2配向層の下方に配置され前記第2電極から誘電材料によって分離された第2抵抗層と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項5】
前記第1配向層と前記第2配向層との間の前記活性層内の弾性ポリマーポストのアレイ
を更に備え、
当該アレイのポストは、前記第1配向層から前記第2配向層まで延びている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項6】
前記
ポリマー層の
前記第1表面に対向
する表面の液晶成分のディレクタは、前記活性層の主表面に対して平行である
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項7】
前記第1配向層及び前記第2配向層は、液晶部分を有するポリマー層を含み、
前記活性層内の液晶に隣接する前記第1配向層及び前記第2配向層の
前記ポリマー層のそれぞれの第1表面の液晶成分のディレクタは、前記活性層の
それぞれの主表面に対して平行であり、
前記第1配向層及び前記第2配向層の
前記ポリマー層のそれぞれの厚さ方向における中央領域の液晶成分のディレクタは、前記活性層の
それぞれの主表面に対して直交している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項8】
前記第1配向層及び前記第2配向層の両方の
前記ポリマー層のそれぞれの前記第1表面に対向
する表面の液晶成分のディレクタは、前記活性層の
それぞれの主表面に対して平行である
ことを特徴とする請求項7に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項9】
前記第1配向層と前記第2配向層との間の第3配向層と、
前記第3配向層と前記第2配向層との間に閉じ込められた液晶を有する第2活性層と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項10】
前記第1及び第2活性層間に配置されたパッド電極
を更に備えたことを特徴とする請求項9に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項11】
前記活性層は、10mm未満の折り畳み半径で曲げる前の平均厚さXと、当該曲げから戻った後の平均厚さYと、を有し、
Y=X±10%X
である
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項12】
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るように調整可能デューティサイクルを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバ
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項13】
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るようにパルス幅変調を用いて駆動信号を適用するように構成されたドライバ
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項14】
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るようにDCオフセットを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバ
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項15】
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るように初期のより高いフィールドパワーインターバルと後続のより低いフィールドパワーインターバルとを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバ
を更に備え、
前記より低いフィールドパワーは、前記より低いフィールドパワーインターバル中に目標のレンズ屈折力を確立するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項16】
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10
―4J/m
2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項17】
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、液晶部分を有すると共に10
―4J/m
2より大きいアンカリング強度を有するポリマー層を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項18】
可撓性のある電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層及び第2配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、
前記第1配向層の上方に配置された第1電極と、
前記第2配向層の下方に配置された第2電極と、
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るように調整可能デューティサイクルを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバと、
を備え、
前記第1配向層及び前記第2配向層の少なくとも1つが、液晶部分を有するポリマー層を含み、
前記活性層内の液晶に隣接する前記
ポリマー層の表面の液晶成分のディレクタは、前記活性層の主表面に対して平行であり、
前記
ポリマー層の
厚さ方向における中央領域の液晶成分のディレクタは、前記活性層の主表面に対して直交している
ことを特徴とする可撓性のある電気的に調整可能なレンズ。
【請求項19】
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10
―4J/m
2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項18に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項20】
可撓性のある電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層及び第2配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、
前記第1配向層の上方に配置された第1電極と、
前記第2配向層の下方に配置された第2電極と、
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るようにDCオフセットを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバと、
を備え、
前記第1配向層及び前記第2配向層の少なくとも1つが、液晶部分を有するポリマー層を含み、
前記活性層内の液晶に隣接する前記
ポリマー層の表面の液晶成分のディレクタは、前記活性層の主表面に対して平行であり、
前記
ポリマー層の
厚さ方向における中央領域の液晶成分のディレクタは、前記活性層の主表面に対して直交している
ことを特徴とする可撓性のある電気的に調整可能なレンズ。
【請求項21】
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10
―4J/m
2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項20に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【請求項22】
可撓性のある電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層及び第2配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、
前記第1配向層の上方に配置された第1電極と、
前記第2配向層の下方に配置された第2電極と、
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るように初期のより高いフィールドパワーインターバルと後続のより低いフィールドパワーインターバルとを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバと、
備え、
前記より低いフィールドパワーは、前記より低いフィールドパワーインターバル中に目標のレンズ屈折力を確立するように構成されており、
前記第1配向層及び前記第2配向層の少なくとも1つが、液晶部分を有するポリマー層を含み、
前記活性層内の液晶に隣接する前記
ポリマー層の表面の液晶成分のディレクタは、前記活性層の主表面に対して平行であり、
前記
ポリマー層の
厚さ方向における中央領域の液晶成分のディレクタは、前記活性層の主表面に対して直交している
ことを特徴とする可撓性のある電気的に調整可能なレンズ。
【請求項23】
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10
―4J/m
2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項22に記載の電気的に調整可能なレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気活性光学系、及び、そのような光学系を使用するレンズ、に関し、特に、可撓性の液晶セル及びレンズに関している。
【背景技術】
【0002】
ソフトコンタクトレンズは、コンタクトレンズ着用者によって取り扱われるため、変形に曝されている。場合によっては、2ミリメートル程度の短い折曲半径で、レンズは半分に折り畳まれ得る。このため、ソフトコンタクトレンズは、合理的な使用可能寿命に亘って、損傷無しでこのような変形に耐えるのに十分な柔軟性を備えている必要がある。また、レンズは、そのサイズ及び形状を回復でき、変形から回復した後にレンズの光学特性を保持できる、という意味で弾性的であることが望まれている。ハイドロゲルコンタクトレンズやシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを含む多くのポリマーが、柔軟性と弾性とを考慮して開発されている。
【0003】
電気活性レンズでは、液晶セルなどの電気活性部品が、可撓性で(柔軟で)弾性のあるポリマーでできたレンズ本体に埋め込まれ得る。ここで、電気活性部品は、全体として、レンズ本体の可撓性及び弾性の両方を制限してしまう可能性がある。
【0004】
可撓性と弾性の両方を有する電気活性成分をレンズに提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
電気的に調整可能なレンズであって、第1配向層及び第2配向層と、当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、を備えた電気的に調整可能なレンズが説明される。第1電極が、前記第1配向層の上方に配置され、前記活性層の開口領域の上方に配置された例えば円形孔である第1パターン開口を有する、という実施形態が説明される。また、第2電極が、前記第2配向層の下方に配置され、前記第1電極との組合せで前記活性層内に電界を誘発するように配置された第2パターン開口を有する。前記第1及び第2パターン開口は、形状において円形であり得る。幾つかの実施形態では、前記第1及び第2パターン開口は、共通の半径の円形を有する。幾つかの実施形態では、前記第1及び第2パターン開口は、異なる半径の円形を有する。
【0006】
パターン開口を有する第1及び第2電極を含む実施形態の可撓性または弾性のあるバージョンにおいて、及び、本明細書に開示される他の実施形態において、弾性ポリマーポストのアレイが、活性層内に配置され、曲げ及びその元の形状への復帰の後で当該活性層の厚さを維持するように構成されている。
【0007】
本明細書に説明される電気的に調整可能なレンズの実施形態は、前記活性層を通る電気力線の分散(ばらつき)を改善するべく、前記第1配向層の上方と、前記第2配向層の下方と、に配置された複数の抵抗層を有し得る。
【0008】
前記第1及び第2配向層の一方または両方が、液晶部分を有するポリマー層を含み得る。
【0009】
幾つかの実施形態では、第3配向層が、前記第1及び第2配向層の間に配置され、液晶を有する第2活性層が、前記第3配向層と前記第2配向層との間に閉じ込められる。パッド電極が、前記第1及び第2活性層間に配置され得る。
【0010】
パターン開口を有する第1及び第2電極を含む実施形態において、及び、本明細書に開示される他の実施形態において、ドライバが、前記第1及び第2電極に電気的に接続され得る。当該ドライバは、当該第1及び第2電極を亘るように駆動信号を適用するように構成され得る。様々な実施形態において、ドライバは、調整可能デューティサイクルを有する駆動信号を適用し得る。ドライバは、パルス幅変調を用いて駆動信号を適用し得る。ドライバは、DCオフセットを有する駆動信号を適用し得る。
【0011】
幾つかの実施形態では、ドライバは、初期のより高いフィールドパワーインターバルと後続のより低いフィールドパワーインターバルとを有する駆動信号を適用し得て、前記より低いフィールドパワーインターバルは、当該より低いフィールドパワーインターバル中に目標のレンズ屈折力を確立するように構成され得る。初期のより高いフィールドパワーインターバルと後続のより低いフィールドパワーインターバルとの組合せは、特にレンズのアパーチャ領域のエッジの近傍において、活性層内の液晶部分の回位を低減し得る。
【0012】
本明細書に説明される実施形態では、前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有する。説明される実施形態では、配向層が、液晶部分を有すると共に10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有するポリマー層を含む。このタイプのポリマー層は、可撓性を有し得て、且つ、弾性を有し得る。
【0013】
また、電気的に調整可能なレンズであって、第1配向層、第2配向層、第3配向層及び第4配向層と、前記第1及び第2配向層間に液晶を有する第1活性層と、前記第3及び第4配向層間に液晶を有する第2活性層と、を備えた電気的に調整可能なレンズが説明される。第1電極が、前記第1配向層の上方に配置され、前記第1活性層の開口と整列して配置された第1パターン開口を有する。第2電極が、前記第4配向層の下方に配置され、前記第2活性層の開口と整列して配置された第2パターン開口を有する。パッド電極が、前記第1及び第2活性層間に配置されている。ドライバが、前記第1及び第2電極に、並びに、前記パッド電極に、電気的に接続されている。前記ドライバは、前記第1電極に第1駆動信号を適用し、前記第2電極に第2駆動信号を適用するように構成されている。前記パッド電極は、例えばグランドのような基準電位に維持され得る、あるいは、前記第1及び第2駆動信号の生成に利用され得る。前記駆動信号は、前記パッド電極との組合せで、前記第1及び第2活性層内に電界を誘発するように構成され、レンズの光学的屈折力を調整する。前述の特徴の多くが、パターン開口を有する外側の複数の電極と中間のパッド電極とを伴って、当該タイプの2つの活性層を有する電気的に調整可能なレンズに適用され得る。
【0014】
また、弾性または可撓性のある電気的に調整可能な液晶レンズが説明される。液晶レンズは、セルギャップ厚さを有するセルを備えており、セルギャップ厚さは、液晶レンズが折り畳まれて元の形状に戻った後、実質的に保持される。従って、液晶レンズの形状と光学特性は、折り畳んだ後に回復可能である。
【0015】
説明される実施形態は、ポリマー配向層間のギャップ内に液晶を含む電気活性セルを含み、当該ポリマー配向層間のギャップ内にポリマーポストのアレイが配置されている。
【0016】
本明細書に記載される例では、1または複数の配向層が、埋め込まれた液晶部分を含む可撓性のポリマー材料を含む。
【0017】
本明細書で説明される電気的に調整可能なレンズの幾つかの例は、第1配向層及び第2配向層と、前記第1配向層及び前記第2配向層の間のギャップ内の弾性ポリマーポストのアレイと、前記第1配向層及び前記第2配向層の間の前記ギャップ内であって前記アレイのポストの周囲に閉じ込められた液晶と、前記液晶に電界を誘発するように配置された1または複数の電極と、を備え、前記アレイのポストは、前記第1配向層から前記第2配向層まで延びている。
【0018】
偏光に依存しない例は、第3配向層と、前記第2配向層及び前記第3配向層の間の第2ギャップ内のエラストマーポストの第2アレイと、を備え、前記第2アレイのポストは、前記第2配向層から前記第3配向層まで延びている。また、液晶が、前記第2ギャップ内であって前記第2アレイのポストの周囲に閉じ込められている。当該例の前記第2配向層は、前記ギャップに隣接する第1面の近くで光路に直交するように平行に配向されたディレクタと、前記第2ギャップに隣接する第2面の近くで前記光路に直交すると共に前記第1面の近くの前記ディレクタに直交するように配向されたディレクタと、を有する液晶部分を含み得る。
【0019】
可撓性の液晶セルを製造する方法が説明される。当該方法は、パターンに従う光重合によって液晶層内にポリマーポストを形成する工程を含む。本明細書で説明される一実施形態では、当該方法は、第1可撓性配向層と第2可撓性配向層との間にギャップを設けて両者を組み立てる工程と、前記第1可撓性配向層と前記第2可撓性配向層との間の前記ギャップを横切って延びる可撓性または弾性ポリマーポストを形成する工程と、前記ポストを囲むように前記ギャップ内に液晶材料を提供する工程と、を備える。本明細書で説明される実施形態では、当該方法は、ギャップ内に液晶材料とポリマー前駆体材料との組合せを提供する工程と、パターンに従ってポリマー前駆体及び液晶の相分離を誘発してポリマー前駆体を重合化することにより弾性ポストを形成する工程と、を備える。
【0020】
デバイス及び方法への様々な組合せ及び追加について、以下に説明される。
【0021】
本発明の他の態様及び利点が、以下の図面、詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することにより、理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本明細書に記載されたような電気活性セルを備えた可撓性レンズの折り畳みを示す簡略図である。
【0023】
【
図2】
図2は、単一の液晶層を有する可撓性の液晶電気活性セルを示している。
【0024】
【0025】
【0026】
【
図5】
図5は、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)、
図4(d)、
図4(e)及び
図4(f)のようなプロセスで使用されるリソグラフィマスクの例示的なレイアウトを示している。
【0027】
【0028】
【
図7】
図7は、湾曲した可撓性の液晶電気活性セルの一例を示している。
【0029】
【
図8】
図8は、2層の液晶を有する、湾曲した可撓性の液晶電気活性セルの一例を示している。
【0030】
【
図9】
図9は、液晶層内にハイブリッド配向を有する、2層液晶セルの一例を示している。
【0031】
【
図10】
図10は、代替的な電極位置を有し、液晶層内にハイブリッド配向を有する、2層液晶セルの一例を示している。
【0032】
【
図11】
図11は、湾曲された誘電体層を有する、2層液晶セルの一例を示している。
【0033】
【
図12】
図12は、液晶層内にハイブリッド配向を有し、湾曲された誘電体層を有する、2層液晶セルの別の一例を示している。
【0034】
【
図13】
図13は、液晶ポリマーフィルム内にレンズ度数を有する、2層液晶セルの一例を示している。
【0035】
【
図14】
図14は、
図3Dの2層液晶セルのような、但し上下の電極の両方がパターン開口を有するように変更された、2層液晶セルの一例を示している。
【0036】
【
図15】
図15は、中間パッド電極を備え、第1及び第2の外側電極がパターン開口を有する、2層液晶セルの一例を示している。
【0037】
【
図16】
図16は、
図15の2層液晶セルのような、但し平坦ではなくて湾曲された、2層液晶セルの一例を示している。
【0038】
【
図17】
図17は、活性層内にDCオフセットを誘発するように構成されたデューティサイクルを有する、液晶セル用の駆動信号を示すグラフである。
【0039】
【
図18】
図18は、駆動信号内にDCオフセットを有する、液晶セル用の駆動信号を示すグラフである。
【0040】
【
図19】
図19は、非バイアス状態での、穴パターン上部電極とパッド電極との間に配置された液晶成分を有する活性層の簡略図である。
【0041】
【
図20】
図20は、比較的高いフィールドパワーを有する初期適用駆動信号が、液晶部分の鉛直配向を誘発している状態での、
図19の構成の簡略図である。
【0042】
【
図21】
図21は、
図20よりも比較的低いフィールドパワーを有する後続適用駆動信号が、好適なレンズ屈折力を確立するように設定された状態での、
図19の構成の簡略図である。
【0043】
【
図22】
図22は、
図20及び
図21を参照して説明されたような、初期のより高いフィールドパワーインターバルと後続のより低いフィールドパワーインターバルとを有する駆動信号を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の実施形態の詳細な説明が、
図1乃至
図22を参照して提供される。
【0045】
図1は、電気活性セル11が埋め込まれたレンズ10を示している。レンズ10は、可撓性であり、例えばハイドロゲル材料またはシリコーンハイドロゲル材料を含み得る。電気活性セル11は、電気活性材料と、レンズの屈折力を変化させるために使用される少なくとも1つの電子部品と、を含む。
図1に示すように、レンズ10は、使用者によって取り扱われるため、可撓性の(柔軟な)材料で作られている場合、折り畳まれ得る。例えば、レンズ10がコンタクトレンズである場合、使用者はレンズを眼に挿入したり眼から取り外したりする時、レンズを折り畳み得る。
図1の下部に図示されるようにレンズが折り畳まれる時、特に領域12において、折り畳みの半径Rは非常に小さい場合がある。例えば、レンズは、1~9mm程度の折り曲げ半径で、折り畳まれ得る。レンズが折り畳まれる時、電気活性セル11が変形され得る。
【0046】
本明細書に記載された実施形態では、電気活性セルは、折り畳まれた後、元の形状に戻される時に、その形状及びその調整可能な光学特性を回復するという意味で、弾性的である。
【0047】
図2は、前述の意味で弾性を有する可撓性の単一層の液晶セルを示している。当該液晶セルは、上部(第1)ポリマー層24と下部(第2)ポリマー層27との間のギャップ内に配置された液晶層25(液晶を有する活性層)を含み、ポリマー層24、27は、液晶層25のための配向層として機能するように構成された液晶部分(liquid crystal moieties)と混合された可撓性ないし弾性のポリマーを含む。ポリマー層24、27は、層の中央領域に垂直ディレクタを有して表面に水平ディレクタを有する液晶部分を含む。この例の上部ポリマー層24では、(両方の)表面近くのディレクタは、光軸であり得るz軸5に直交しており、且つ、液晶層25の主表面に対して水平であって、図の紙面に対して出入りするように延びている。この例の下部ポリマー層27では、対向する(両方の)表面近くのディレクタは、液晶層25の主表面に対して水平であって、図の紙面に対して出入りするように延びている。この例のディレクタの配向は、液晶層25の上面及び下面の配向方向が互いに平行である、という状態に帰結している。
【0048】
この例では、液晶層25は、少なくとも液晶セルの有効開口に亘って、ポリマー層24、27間で均一な厚さTを有する。この説明の目的のためには、名目上均一な厚さを有するセルに期待される範囲内に光学性能がある、とセルの使用者が知覚する時、液晶層はセルの有効開口に亘って均一な厚さを有している(と言える)。範囲は、環境、製造及び材料の変動に左右される商業的製造環境で生じ得る。
【0049】
ポスト(例えばポスト26)のアレイ(配列)が、ポリマー層24、27間のギャップ内で、液晶層の内部に、配置される。アレイ状のポストは、上部ポリマー層24から下部ポリマー層27まで延び、厚さTを維持するのに役立っている。ポスト(例えばポスト26)は、ポリマーまたはポリマー材料を含むことができる。好ましくは、ポストは弾性である。また、好ましくは、ポリマー層は弾性ポリマーまたはエラストマーを含む。
【0050】
液晶材料は、ポストのアレイ内のポストの周囲の第1ポリマー層と第2ポリマー層との間のギャップ内に閉じ込められ、セルのアクティブ要素として機能し、印加される電界に応じてセルの光学特性を変化させる。
【0051】
この例では、液晶層25に電界を印加するために使用される電気コンポーネントは、誘電性ポリマー(この例では層20、22、29を含む)内に配置されている。電気コンポーネントは、抵抗層23、上部ポリマー層24の上方の円形孔パターン電極層21、及び、下部ポリマー層27の下方の透明パッド電極層28、を含んでいる。この実施形態及び本明細書に記載の他の実施形態において、パターン化された電極層は、液晶層内の電界ベクトルの形状のより複雑な制御のために、円形孔以外のパターンを有することができ、ピクセル化パターン及びリング状パターンを含むことができる。
【0052】
代表的な一実施形態では、液晶セルの基板は、それぞれ約17μmの厚さのポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む誘電体層20、22を含む。同様に、誘電体層29は、約17μm以下の厚さのPDMSを含む。パターン電極層21及びパッド電極層28は、約1μm以下の厚さの可撓性の電極材料を含み得る。液晶層25は、約30~40μmの厚さ、例えば約34μmの厚さ、であり得る。上部及び下部ポリマー層は、約6~7μmの厚さであり得る。この例では、セルは、約98μmの合計厚さを有している。
【0053】
更なる実施形態では、液晶セルの基板は、PDMSを含む誘電体層20、22を含み、各誘電体層は、15μm~20μmの厚さを有する。同様に、誘電体層29は、PDMSを含むことができ、15μm~20μmの厚さを有し得る。パターン電極層21及びパッド電極層28は、0.1μm~1μmの厚さを有する可撓性電極材料を含み得る。液晶層25は、25μm~45μmの厚さであり得る。上部及び下部ポリマー層は、各々、5μm~10μmの厚さを有し得る。
【0054】
代表的な一実施形態では、液晶層25の厚さTは、約34μmである。
【0055】
幾つかの実施形態では、厚さTは、液晶層25の光学ゾーン全体に亘って、一定の厚さであり、当該光学ゾーンとは、調整可能なレンズ効果が利用される有効開口である。
【0056】
この例のセルの均一な厚さとは、光学素子の中心から有効開口の端まで1.2ミクロン未満で変化する厚さであり得る。幾つかの実施形態では、有効開口内の厚さTの変動は、0.5ミクロン以内に維持され得る。
【0057】
本明細書に記載された液晶セルの実施形態は、小さな半径で折り畳まれ、元の形状に戻った後でも、光学特性を維持することができる。例えば、折り畳み前の液晶層が約10μmの元の平均厚さTを有するセルギャップを含む実施形態では、平均厚さTは、その元の厚さの±10%以内、すなわち、9~11μmの範囲の平均厚さ、に戻り得る。他の実施形態では、平均厚さTは、その元の厚さの±2%以内、すなわち、9.8~10.2μmの範囲の平均厚さ、に戻り得る。セルギャップまたは液晶層の平均厚さは、複数の場所で厚さを測定し、それらの測定値を加算して測定回数で除算することによって決定され得る。測定は、液晶層の単一の直径に沿って行われ得て(円形の場合)、あるいは、液晶層のランダムなポイントに沿って行われ得る。
【0058】
特定の実装の要件に依存して、液晶層の基板として機能する可撓性の誘電体層20、22、29の材料は、PDMS含有材料、PET(ポリエチレンテレフタレート)含有材料及びハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)含有材料を含む、レンズ内での使用に適した様々なポリマー、エラストマー及びそれらの組合せから選択され得る。
【0059】
特定の実装の要件に依存して、パターン電極層21及び透明パッド電極層28に使用可能な代表的な材料は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、グラフェン、銀ナノワイヤ、銅金属メッシュ、及び、これら材料の組合せ、であり得る。
【0060】
抵抗層23の機能は、レンズの有効開口の中心に電界を分布させるのを助けることである。抵抗層23は、電極と比較して、比較的高い抵抗を有しており、高抵抗層と呼ばれ得る。抵抗層23により、幾つかの例では、動作電圧が低減され得る。抵抗層のシート抵抗は、レンズ材料及び仕様に依存するが、約106~108Ω/sqであり得る。抵抗層は、PEDOT:PSS溶液とPVA(ポリビニルアルコール)溶液を混合することで作成され得る。シート抵抗は、例えば2つの溶液間の重量比によって制御され得る。
【0061】
液晶(LC)は、複屈折特性を有する光学異方性材料である。普通にLC光学系に入射する直線偏光を考える。偏光方向とLC分子の長軸とは、同じ平面内にあるとする。光は、当該光の偏光方向とLCのディレクタとの間の角度によって決定される有効屈折率を経験する。更に、LC分子の配向は、外部電界によって制御され得る。従って、均一な厚さを有するLC層上の不均一な電界は、LC分子の配向の空間分布をもたらす。LC分子の配向の空間分布は、また、有効な光路の空間分布を形成する。適切な設計により、有効な光路の空間分布が、異なるレンズ度数を伴うレンズ効果を実現し得る。
【0062】
LCは、偏光依存型であり得て、偏光子と組合せて使用される時、光効率の少なくとも50%のコストがかかり得る。偏光独立型のLC光学系を実現するためには、
図3A乃至
図3Dに示される例で実装されるように、同一厚さであって直交配向LCディレクタを備えた一対のLC層が使用され得る。直交ディレクタを備えた一対のLC層を用いると、光の2つの固有偏光が同じ位相シフトを経験し、偏光に依存しない調整可能なレンズに帰結する。
【0063】
図3A乃至
図3Dは、前述の意味で弾性を有する可撓性の2層液晶セルの代替実施形態を示している。これらの代替実施形態は、
図2に関して前述された材料を使用して作成され得る。
【0064】
図3Aでは、セルは、第1液晶層45と第2液晶層48とを含んでいる。第1液晶層45は、上部(第1)液晶ポリマー層44と中間(第2)液晶ポリマー層47との間のギャップ内に配置されている。第2液晶層48は、中間液晶ポリマー層47と下部(第3)液晶ポリマー層50との間のギャップ内に配置されている。
【0065】
上部ポリマー層44は、液晶層45に隣接する下面にディレクタを有しており、それは、液晶層45の表面に平行で、且つ、図の紙面に直交している。中間ポリマー層47は、液晶層45に隣接する上面にディレクタを有しており、それは、液晶層45の表面に平行で、且つ、図の紙面に直交している(すなわち、上部ポリマー層44の下面のディレクタに平行である)。中間ポリマー層47は、液晶層48に隣接する下面にディレクタを有しており、それは、液晶層48の表面に平行で、且つ、図の紙面に平行である(すなわち、中間ポリマー層47の上面のディレクタに直交している)。下部ポリマー層50は、液晶層48に隣接する上面にダイレクタを有しており、それは、液晶層48の表面に平行で、且つ、図の紙面に平行である(すなわち、中間ポリマー層47の下面のディレクタに平行である)。
【0066】
ポリマー層44、47、50は、液晶層の配向層として機能する。中間ポリマー層47は、その上面及び下面に直交ディレクタを有する。幾つかの実施形態では、上側及び下側ポリマー層44、50は、ブラシ付きポリイミド層などの他の配向層材料で置き換えられ得る。光学的損失や他の問題のため、中間ポリマー層にブラシ付きポリイミドを使用することは実用的ではない場合がある。従って、好ましい実施形態における液晶層間の整列技術は、その上面及び下面に直交ディレクタを備えた液晶ポリマー層の使用を伴う。
【0067】
液晶層45、48は、ギャップ内に閉じ込められた液晶材料を含み、合理的な製造公差及び光学性能公差の範囲内で、ポリマー層間の同一の厚さを有する。
【0068】
ポストのアレイ(例えばポスト46)が、上部ポリマー層44と中間ポリマー層47との間のギャップ内に配置され、液晶層45内で液晶材料に囲まれている。当該アレイのポストは、上部ポリマー層44から中間ポリマー層47まで延びており、前述のように厚さを維持するのに役立っている。
【0069】
ポストの第2アレイ(例えばポスト49)が、中間ポリマー層47と下部ポリマー層50との間のギャップ内に配置されている。ポストの第2アレイは、ギャップ内に閉じ込められた液晶層48内の液晶材料によって囲まれている。
【0070】
この例では、電気コンポーネントは、層40、43、52を含む誘電性ポリマー基板内に配置されている。電気コンポーネントは、抵抗層41、上部ポリマー層44の上方に配置されたパターン電極層42、及び、下部ポリマー層50の下方の透明パッド電極層51を含む。
【0071】
図3Aの液晶セルは、小さな半径で折り畳まれて元の形状に戻った後も、その光学特性を維持できる。
【0072】
一般に、2層液晶セルは、パターン化された電極を通して電界が印加される時、非偏光の光に対して正のレンズ屈折力(レンズ度数)を提供し得る。液晶層によって追加されるレンズの屈折力は、印加される電界の振幅、周波数、デューティサイクル、DCオフセット、または、パルス形状、の1または複数を変更することで、調整可能である。
【0073】
図3B乃至
図3Dは、
図3Aのような2層液晶セルの代替形態を示している。同じ参照符号は、同様の構成要素を指すために用いられており、幾つかの例において再度説明されない。
図3B乃至
図3Dの液晶セルも、同様に、小さな半径で折り畳まれ、元の形状に戻った後も、光学特性を維持できる。
【0074】
図3Bに示すように、代替形態では、ポリイミド層が抵抗層と共に使用され得て、その均一性を改善できる。従って、
図3Bでは、2層液晶セルは、抵抗層41と接触するポリイミド層60を追加することによって修正されている。
【0075】
図3Cでは、抵抗層41と接触するポリイミド層60を追加し、上部パターン電極層42を移動させて上部ポリマー層44の上面と接触させ、
図3A及び
図3Bに示されている誘電体基板の層43の領域を除去することによって2層液晶セルが修正された実施形態が示されている。これは、必要とされる動作電圧及び可撓性の液晶セルの合計厚さを低減する効果がある。
【0076】
図3Dでは、抵抗層41を移動させて上部ポリマー層44の上面と接触させ、誘電体基板の層43の領域の多くを除去し、
図3B及び
図3Cのポリイミド層を除去することによって、
図3Aの構造に対して2層液晶セルが修正された実施形態が示されている。これは、更に、構造の全体厚さを低減し、ポリイミド層の要件を除去する。
【0077】
図2のような可撓性の液晶セルを製造する方法の一実施形態が、
図4(a)乃至
図4(f)に図示されている。
【0078】
図4(a)は、プロセスの最初に示される段階として、空のプロセスセルを示している。空のプロセスセルは、セルの形成中にカバー層として機能する上部及び下部ガラス層80、82からなる。当該ガラス層は、基板誘電体材料70、72、79、電極材料71、78、抵抗層73、及び、この例では前述のポリマー層74、77である配向層、で被覆されている。上部電極材料71は、前述のように可変の電界を誘発して調整可能なレンズ屈折力を提供するために使用される穴を画定するようにパターン化されている。下部電極材料78は、パッド形状で配置されている。マイラーフィルムスペーサ75が、上部ポリマー層74と下部ポリマー層77との間に配置され、液晶層及びポストのアレイが形成されるギャップ76を画定している。この例では、マイラーフィルムスペーサ75は、35μmのギャップ厚を規定する。
【0079】
図4(b)に示されるように、製造の次の段階では、例えば毛細管力に依存して、液晶材料とポリマー前駆体との組合せがギャップ76内に注入される。幾つかの実施形態では、当該組合せは、液晶モノマー部分(liquid crystalline monomer moieties)100、光重合開始剤(photo-initiator)101、及び、液晶部分(liquid crystal moieties)102を含む。より具体的には、プロセスの一例では、組合せは、ネマチックLC(LCM-1656)、液晶モノマー(RM257)及び光重合開始剤(IRG184)が、99重量%:0.5重量%:0.5重量%の比率からなる。LCM-1656は、LC Matter Corp.(例えば、米国、フロリダ州オーランド、lcmatter.com)から入手でき、RM-257及びIRG-184は、MerckまたはMerck KgaA(ドイツ、ダルムシュタット、merckgroup.com)から入手できる。選択された材料は、好ましくは、厳しい変形に耐えるのに十分な剛性を有するが、曲げ後に構造内のセルギャップを回復するための良好な弾性を有する、というポリマーポストの形成をもたらす。
【0080】
図4(c)は、製造プロセスの次の段階を示している。組合せ材料がギャップ76内に注入されたセルは、穴112、113のアレイを画定するリソグラフィマスク110と位置合わせされる。次に、当該構造体が、本例では紫外線などの、化学線(化学電磁放射線)111に曝される。露光の間、相分離プロセスにおいて、液晶部分125が、穴112、113を介して紫外線に露光された領域から離れる方向にドリフトし、一方、液晶モノマー120、121は露光領域内へとドリフトする。
【0081】
図4(d)に示されるように、化学線111への露光の間、ポリマー鎖135が液晶モノマー120、121間の光重合によって形成され、ポリマー層74、77間に延びるポストのアレイが形成される。
【0082】
化学線111への露光は、100℃未満の低温で実施され得て、説明されている例では、室温付近(約20~25℃)で実施され得る。このような低温光重合は、当該光重合プロセス中にガラスカバーによって支持されている構造の層に損傷を与えることのない製造を許容する。
【0083】
次の段階では、
図4(e)に示されるように、セルがリソグラフィーシステムから取り外され、弾性のあるポリマーポストが下部ポリマー層77の上面から上部ポリマー層74の下面まで延びていて、液晶がギャップを埋めていて且つポストを囲んでいる。
【0084】
図4(f)は、次の段階を示している。そこでは、ガラス層(カバー)80、82が除去され、
図2に示すような可撓性の調整可能な液晶セルが残される。
【0085】
液晶セルは、UV硬化性ポリマーを使用して、この例ではマイラースペーサによって密閉(シール)されている。この例では、ポストは、光重合による硬化中に、液晶とモノマーとの混合物で形成される。別の実施形態では、第1工程でポストが形成され得て、その後、未硬化材料の除去によってポストのネットワークが残され、その後、当該ポストのネットワークの周囲の除去後に液晶が注入され得る。幾つかの例では、パターン化されたマスクを使用してシール領域を画定し、ポスト作成に使用されたのと同じ材料でセルを閉じることにより、硬化中に液晶セルがシールされ得る。
【0086】
この製造プロセスは、中間ポリマー層と、第2ギャップを画定する第2マイラースペーサと、を追加することにより、
図3A乃至
図3Dに示されるような2層セルに拡張可能である。その他については、同様のプロセス工程が、2層セルの場合にも適用される。
【0087】
図5は、
図4(c)及び
図4(d)を参照して説明されたプロセスの段階で使用され得るリソグラフィマスク110の代表的なレイアウトを示している。この例では、マスクのレイアウトは、水平寸法及び垂直寸法の両方において約50μmの直径及び約500μmのピッチを有する円形穴250、251のアレイを含んでいる。このレイアウトは、前述の材料を使用して、約35μmの厚さの液晶層用に選択されたものである。特定の実施形態のニーズに応じて、他のレイアウトが選択され得る。穴の密度は、ポリマー層間のギャップ内に配置されるポストの密度に変換される。当該密度は、セルの電気光学性能と有意に干渉しないように選択される必要がある一方で、セルの形状が折り畳みによって変形された後、元の形状に戻るような、前述の意味での十分な弾性を維持することも必要である。
【0088】
穴は、
図5に示すような円形である必要はなく、楕円形、長方形、または、他のより複雑な形状であってもよい。好ましい形状及び形状の密度は、経験的方法またはシミュレーションを使用して、決定され得る。
【0089】
図6(a)乃至
図6(f)は、前述の実施形態において配向層として使用されるポリマー層を製造する方法の一実施形態の段階を示している。
図6(a)は、ITOなどの導体の各層802、806でコーティングされたガラス層800、801、及び、ブラシ付きポリイミドなどの配向層803、805、からなる空のプロセスセルを含むプロセスの段階を示している。配向層803、805は、前述の例のために要求される配向に従って、ポリマー層の対向する表面上でのポリマー層内の液晶材料のディレクタを整列させるように構成されている。マイラースペーサ804が、設計に依存して調整され得る厚さで、ガラス層800、801間のギャップ810を維持する。例えば、
図2の上部及び下部ポリマー層24、27の厚さは、約7μmであり、
図3A乃至
図3Dのポリマー層47の厚さは、約35μmである。
【0090】
図6(b)に示されるように、部分852、モノマー851及び光重合開始剤850を含む液晶材料の混合物が、約90℃の温度で空のプロセスセル内に注入される。配向層803、806の結果として、液晶特性を有するメソマーであり得るモノマーと、液晶とが、当該配向層803、806によって設定された方向に従って、混合物中で配向される。この例では、当該液相内のダイレクタが、図の紙面内で整列され、配向層802、805の平面と平行である。
【0091】
図6(c)に示されるように、導電性ITO層802、806は、高AC電圧を印加する電源900に接続され、モノマー(例えば856)と液晶部分(例えば857)との両方の分子をガラスカバーの表面に直交するz軸5に平行に向け直す。もっとも、配向層によって提供される強い固定力のために、配向層表面近くの分子配向(例えば、854、855)は、ラビング方向に平行のままである。
【0092】
図6(d)に示されるように、AC電界が印加されている間に、当該構造体は、化学線UV放射910に曝される。この放射は、光重合開始剤を始動させ(トリガし)、モノマーの光重合を活性化する。モノマーが反応してポリマー鎖を形成すると、2つのガラスカバー間に液晶部分が埋め込まれたポリマーフィルムができる。重合から生じるポリマーネットワーク(例えば860)が、ポリマー層内の液晶分子を捕捉して、その配向を維持するのに役立つ。
【0093】
図6(e)に示されるように、重合が完了した後、電界とUV放射が除去され得る。
次いで、
図6(f)に示されるように、ガラスカバー802、801がITO及び配向層(802、803及び805、806)と共にポリマー層1000から剥がされる。
【0094】
結果として、この例のポリマー層は、配向層と接触する表面から離れている中央でのポリマー層の大部分における液晶部分のディレクタがz軸上にあるため、光学的に異方性であり得る。ポリマー層の表面上の液晶分子は、配向層の表面に平行に配置されたまま、ポリマーネットワークによって閉じ込められている。このように、ポリマー層の表面が、前述の構造の液晶層内の液晶分子を整列(配向)させるために利用され得る。
【0095】
このプロセスは、製造中に配向層803、805のラビング方向及び材料を変更することにより、ポリマー層の表面上の液晶分子の異なる配向を設定するために利用され得る。また、重合中に可変の電界を印加することにより、ポリマー層全体の配向方向を傾斜させることができ、パッシブレンズ効果をもたらすことができる。
【0096】
特定の一例では、ポリマー層は、反応性メソゲン(RM257)、液晶(MLC2144)及び光開始剤(IRG184)からなり、RM257:MLC2144:IRG184=79重量%:20重量%:1重量%の比率である。RM257は、1,4-ビス-[4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼン(CAS 174063-87-7)である。IRG184は、1-ハイドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(CAS 947-19-3)である。
【0097】
一実施形態では、
図4(a)乃至
図4(f)を参照して説明されたように、ポストを形成する目的で使用される反応性モノマーが、ポリマー層の形成で反応性モノマーとして使用されるものと同じ(例えばRM257)であってもよい。他の実施形態では、ポリマー前駆体は、2つの手順で異なり得る。また、幾つかの実施形態では、異なるポリマー前駆体及び液晶材料が、異なるポリマー層のために使用され得る。
【0098】
ポリマー層を製造するための材料は、RM257、IRG184及びMLC2144に限定されない。代替材料は、他の液晶モノマー及び光開始剤を含み得る。また、液晶(MLC2144)は、他のネマチック液晶によって置換され得る。
【0099】
10
―4J/m
2より大きいアンカリング強度を有するポリマー配向層を形成するために、当該ポリマー配向層の表面におけるポリマーネットワークの秩序化(ordering)は、強力であるべきである。当該強力なポリマーネットワークの秩序化を達成するための1つの技術において、
図6(a)乃至
図6(f)の処理で利用される配向層803、805が、AL22620またはポリイミドSE7492のような強力なアンカリング強度を有する配向層である。ポリマー配向層の表面において強力な秩序化を達成する他の技術も、利用され得る。
【0100】
図7は、湾曲した基板上に形成された可撓性の単一層の液晶セルを示している。この構造は、前述のプロセスを使用して、例えば、曲面を有するプロセスセルのガラスカバーで作成され得る。当該液晶セルは、ポリマー層324とポリマー層327との間のギャップ内に配置された液晶層325を含み、ポリマー層324、327は、液晶層325のための配向層として機能するように構成された液晶部分(liquid crystal moieties)と混合された可撓性または弾性のポリマーを含む。ポリマー層324、327は、層の中央領域に垂直ディレクタを有して、表面に水平ディレクタを有する、という液晶部分を含む。この例の上部ポリマー層324では、表面上のディレクタは、液晶層325の主表面に対して水平であり、図の紙面に対して平行である。この例の下部ポリマー層327では、上面上のディレクタは、液晶層325の主表面に対して水平であり、図の紙面に対して平行である。下部ポリマー層327の下面上では、ディレクタは、上面上のディレクタと平行である。この例のディレクタの配向は、液晶層325の上面及び下面の配向方向が互いに平行である、という状態に帰結している。
【0101】
ポスト(例えばポスト326)のアレイ(配列)が、液晶層325内に配置される。アレイ状のポストは、上部ポリマー層324から下部ポリマー層327まで延び、液晶層325の厚さを維持するのに役立っている。
【0102】
好ましくは、ポスト及びポリマー層は、弾性ポリマーまたはエラストマーを含む。
【0103】
液晶は、ポストのアレイ内のポストの周囲の第1ポリマー層と第2ポリマー層との間のギャップ内に閉じ込められている。
【0104】
この例では、電気コンポーネントが、誘電性ポリマー(この例では層320、322、329を含む)内に配置されている。電気コンポーネントは、抵抗層323、上部ポリマー層324の上方のパターン電極層321、及び、下部ポリマー層327の下方のパッド電極層328、を含んでいる。
【0105】
代表的な一実施形態では、液晶セルの基板は、PDMSを含む誘電体層20、22を含む。
【0106】
セルの曲率半径は、様々な実施形態において、約100mm~8mm以下の範囲内であり得る。例えば、曲率半径は、100mm~1mmの範囲内であり得る。
【0107】
図7に示された液晶セルの実施形態は、小さな半径で折り畳まれ、元の形状に戻った後でも、光学特性を維持することができる。
【0108】
図8は、湾曲した基板上に形成された可撓性の2層液晶セルを示している。
図8では、当該セルは、第1液晶層425と第2液晶層428とを含んでいる。第1液晶層425は、上部(第1)液晶ポリマー層424と中間(第2)液晶ポリマー層427との間のギャップ内に配置されている。第2液晶層428は、中間液晶ポリマー層427と下部(第3)液晶ポリマー層430との間のギャップ内に配置されている。
【0109】
上部ポリマー層424は、液晶層425に隣接する下面にディレクタを有しており、それは、セルのz軸5に直交しており、且つ、図の紙面に平行である。中間ポリマー層427は、液晶層425に隣接する上面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており、且つ、図の紙面に平行である(すなわち、上部ポリマー層424の下面のディレクタに平行である)。中間ポリマー層427は、液晶層428に隣接する下面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており、且つ、図の紙面に直交している(すなわち、中間ポリマー層427の上面のディレクタに直交している)。下部ポリマー層430は、液晶層428に隣接する上面にダイレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており、且つ、図の紙面に直交している(すなわち、中間ポリマー層427の下面のディレクタに平行である)。
【0110】
ポリマー層424、427、430は、液晶層の配向層として機能する。中間ポリマー層427は、その上面及び下面に直交ディレクタを有する。幾つかの実施形態では、上側及び下側ポリマー層424、430は、ブラシ付きポリイミド層などの他の配向層材料で置き換えられ得る。
【0111】
ポストのアレイ(例えばポスト426)が、上部ポリマー層424と中間ポリマー層427との間のギャップ内に配置され、当該ギャップ内に閉じ込められた液晶層425の液晶材料に囲まれている。当該アレイのポストは、上部ポリマー層424から中間ポリマー層427まで延びており、前述のように厚さを維持するのに役立っている。
【0112】
ポストの第2アレイ(例えばポスト429)が、中間ポリマー層427と下部ポリマー層430との間のギャップ内に配置されている。ポストの第2アレイは、ギャップ内に閉じ込められた液晶層428内の液晶材料によって囲まれている。
【0113】
この例では、電気コンポーネントは、層432、433、434を含む誘電性ポリマー基板内に配置されている。電気コンポーネントは、抵抗層423、上部ポリマー層424の上方に配置されたパターン電極421、及び、下部ポリマー層430の下方のパッド電極層431を含む。
【0114】
図7及び
図8の湾曲した実施形態は、セルの電気活性コンポーネントにパッシブな追加のレンズ屈折力(レンズ度数)を提供できる。
【0115】
図7及び
図8に示された液晶セルの実施形態は、小さな半径で折り畳まれて元の形状に戻った後も、その光学特性を維持できる。
【0116】
図9は、液晶層内の液晶分子のハイブリッド配向を利用する2層液晶セルの別の実施形態を示している。当該セルは、第1液晶層505と第2液晶層508とを含んでいる。第1液晶層505は、例えばPDMSを含み得る上部垂直配向層504と中間ポリマー層507との間のギャップ内に配置されている。第2液晶層508は、中間ポリマー層507と下部垂直配向層510との間のギャップ内に配置されている。
【0117】
中間ポリマー層507は、液晶層505に隣接する上面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており(液晶層505の表面に平行)、且つ、図の紙面に直交している。中間ポリマー層507は、液晶層508に隣接する下面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており、且つ、図の紙面に平行である(すなわち、中間ポリマー層507の上面のディレクタに直交している)。
【0118】
上部垂直配向層504及び下部垂直配向層510に隣接する液晶層505、508内のディレクタは、図の紙面内で、z軸5に平行に、垂直方向に配置されている。当該液晶層内のディレクタは、中間ポリマー層507の配向機能のために、図示のように、当該液晶層505、508の上面と下面との間で、直交面内に(直交方向に)捩れている。
【0119】
液晶層505、508は、合理的な製造公差及び光学性能公差の範囲内で、ポリマー層間の同一の厚さを有する。
【0120】
ポストのアレイ(例えばポスト506)が、上部配向層504と中間ポリマー層507との間のギャップ内に配置され、当該ギャップ内に閉じ込められた液晶層505の液晶材料に囲まれている。当該アレイのポストは、上部配向層504から中間ポリマー層507まで延びており、前述のように厚さを維持するのに役立っている。
【0121】
ポストの第2アレイ(例えばポスト509)が、中間ポリマー層507と下部配向層510との間のギャップ内に配置されている。ポストの第2アレイは、ギャップ内に閉じ込められた液晶層508内の液晶材料によって囲まれている。
【0122】
この例では、電気コンポーネントは、層512、510、500、504を含む誘電性ポリマー基板内に配置されている。電気コンポーネントは、抵抗層502、ポリイミド層501、上部配向層504の上方に配置されたパターン電極層503、及び、下部配向層510の下方のパッド電極層511を含む。この構造では、応答時間が、
図3A乃至
図3Dを参照して説明された構造の応答時間よりも速い可能性がある。もっとも、調整可能範囲は、より小さいかもしれない。
【0123】
図10は、
図9の実施形態と同様に、代替の一実施形態を示しており、同じ参照符号は同じコンポーネントを指すために使用されており、再度説明されない。この実施形態では、パターン電極523と抵抗膜521/ポリイミド膜522構造との位置が逆になっており、パターン電極523は抵抗膜521の上にある。それ以外の構造は同様であり、同様の態様で動作し得る。
【0124】
図9及び
図10の液晶セルは、小さな半径で折り畳まれ、元の形状に戻った後も、それらの光学特性を維持できる。
【0125】
別の実施形態では、パターン化された電極が利用されなくてもよい。不均一な電界が、空間的に分布された誘電率または誘電表面を有する誘電体層を構造に追加した一対の透明なパッド型電極によって、生成され得る。
【0126】
図11は、電極パターニング無しの透明電極601、610を有する構造の一実施形態を示している。
【0127】
図11に示されたセルは、第1液晶層604と第2液晶層607とを含んでいる。第1液晶層604は、上部(第1)液晶ポリマー層603と中間(第2)液晶ポリマー層606との間のギャップ内に配置されている。第2液晶層607は、中間液晶ポリマー層606と下部(第3)液晶ポリマー層609との間のギャップ内に配置されている。
【0128】
上部ポリマー層603は、液晶層604に隣接する下面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており(液晶層604の表面に平行)、且つ、図の紙面に直交している。中間ポリマー層606は、液晶層604に隣接する上面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており(液晶層604の表面に平行)、且つ、図の紙面に直交している(すなわち、上部ポリマー層603の下面のディレクタに平行である)。中間ポリマー層606は、液晶層607に隣接する下面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており(液晶層607の表面に平行)、且つ、図の紙面に平行である(すなわち、中間ポリマー層606の上面のディレクタに直交している)。下部ポリマー層609は、液晶層607に隣接する上面にダイレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており(液晶層607の表面に平行)、且つ、図の紙面に平行である(すなわち、中間ポリマー層606の下面のディレクタに平行である)。
【0129】
液晶層604、607は、合理的な製造公差及び光学性能公差の範囲内で、ポリマー層間の同一の厚さを有する。
【0130】
ポストのアレイ(例えばポスト605)が、上部ポリマー層603と中間ポリマー層606との間のギャップ内に配置され、当該ギャップ内に閉じ込められた液晶層604の液晶材料に囲まれている。当該アレイのポストは、上部ポリマー層603から中間ポリマー層606まで延びており、前述のように厚さを維持するのに役立っている。
【0131】
ポストの第2アレイ(例えばポスト608)が、中間ポリマー層606と下部ポリマー層609との間のギャップ内に配置されている。ポストの第2アレイは、ギャップ内に閉じ込められた液晶層607内の液晶材料によって囲まれている。
【0132】
この例では、電気コンポーネントは、層600、602、611を含む誘電性ポリマー基板内に配置されている。電気コンポーネントは、上部ポリマー層603の上方に配置された平坦透明電極601、及び、下部ポリマー層609の下方の平坦透明電極610を含む。
【0133】
この種類(タイプ)の構造では、抵抗層やパターン電極は必要ない。もっとも、構造の全体の厚さは、増大されてしまうかもしれない。ポリマー層603、606、609は、液晶層のための配向層として機能する。中間ポリマー層606は、その上面及び下面に直交ディレクタを有する。この例では、上部ポリマー層603の上面603Aは、層602の誘電材料の一致する曲面を伴って、湾曲されている。当該曲面は、平坦な透明電極601、610に電圧が印加される時、不均一な電界の生成に帰結し得る。
【0134】
図11の液晶セルは、小さな半径で折り畳まれ、元の形状に戻った後でも、その光学特性を維持することができる。
【0135】
図12は、パターン電極ではなく平坦な透明電極が使用される別の実施形態を示している。
図12に、液晶層内の液晶分子のハイブリッド配向を利用した2層液晶セルが示されている。
図12のセルは、第1液晶層704と第2液晶層707とを含んでいる。第1液晶層704は、例えばPDMSを含み得る上部垂直配向層703と中間ポリマー層706との間のギャップ内に配置されている。第2液晶層707は、中間ポリマー層706と下部垂直配向層709との間のギャップ内に配置されている。
【0136】
中間ポリマー層706は、液晶層704に隣接する上面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており(液晶層704の表面に平行)、且つ、図の紙面に直交している。中間ポリマー層706は、液晶層707に隣接する下面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており(液晶層707の表面に平行)、且つ、図の紙面内に存在している(すなわち、中間ポリマー層706の上面のディレクタに直交している)。湾曲されたポリマー層702が、上部配向層703の上方に接触して配置される。これが、平坦透明電極701、710間の電界の経路に湾曲面703Aを形成する。
【0137】
PDMS層が、当該構造のための垂直配向層703、709として機能する。結果として、上部垂直配向層703及び下部垂直配向層709に隣接する液晶層704、707内のディレクタは、光路に沿って、垂直方向に配置される。当該液晶層内のディレクタは、中間ポリマー層706の配向機能のために、図示のように、上面と下面との間で、直交面内に(直交方向に)捩れている。
【0138】
液晶層704、707は、合理的な製造公差及び光学性能公差の範囲内で、ポリマー層間の同一の厚さを有する。
【0139】
ポストのアレイ(例えばポスト705)が、上部配向層703と中間ポリマー層706との間のギャップ内に配置され、当該ギャップ内に閉じ込められた液晶層704の液晶材料に囲まれている。当該アレイのポストは、上部配向層703から中間ポリマー層706まで延びており、前述のように厚さを維持するのに役立っている。
【0140】
ポストの第2アレイ(例えばポスト708)が、中間ポリマー層706と下部配向層709との間のギャップ内に配置されている。ポストの第2アレイは、ギャップ内に閉じ込められた液晶層707内の液晶材料によって囲まれている。
【0141】
この例では、電気コンポーネントは、湾曲されたポリマー層702の上方に配置された平坦透明電極層701、及び、下部配向層709の下方の平坦透明電極層710を含む。誘電性基板層700、722は、セルの対向面上に配置されている。
【0142】
図12の液晶セルは、小さな半径で折り畳まれ、元の形状に戻った後も、その光学特性を維持できる。
【0143】
前述のように、液晶及びポリマーフィルム内の液晶分子の配向は、光重合中に印加される外部電界によって規定され得る。プロセス中に不均一な電界を印加することにより、結果として生じる液晶ポリマーフィルムは、固定されたレンズ屈折力を有し得る。液晶ポリマーレンズのレンズ屈折力を可撓性の電気活性コンポーネントと組合せて使用すれば、構造にレンズ屈折力を追加することができる。
【0144】
図13に、液晶ポリマー層によってレンズ屈折力が追加された2層液晶電気活性セルの例が示されている。
【0145】
図13では、セルは、第1液晶層954と第2液晶層957とを含んでいる。第1液晶層954は、上部(第1)液晶ポリマー層953と中間(第2)液晶ポリマー層956との間のギャップ内に配置されている。第2液晶層957は、中間液晶ポリマー層956と下部(第3)液晶ポリマー層959との間のギャップ内に配置されている。
【0146】
上部ポリマー層953は、その表面間にレンズ屈折力を誘発するべく分布されたディレクタを有しており、また、その上面及び下面上にディレクタを有しており、後者は、z軸5に直交しており(液晶層954の表面に平行)、且つ、図の紙面に直交している。上部ポリマー層953の表面間のディレクタは、この例ではz軸5に平行で図の紙面に直交する面内において、ある量だけ傾斜しており、当該量は、光学ゾーンの中央線に対するそれらの位置の関数である。
【0147】
中間ポリマー層956は、液晶層954に隣接する上面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており(液晶層954の表面に平行)、且つ、図の紙面に直交している(すなわち、上部ポリマー層953の下面のディレクタに平行である)。中間ポリマー層956は、液晶層957に隣接する下面にディレクタを有しており、それは、z軸5に直交しており(液晶層957の表面に平行)、且つ、図の紙面に平行である(すなわち、中間ポリマー層956の上面のディレクタに直交している)。中間ポリマー層956の表面間のディレクタは、垂直方向に配置されている。
【0148】
下部ポリマー層959は、その表面間にレンズ屈折力を誘発するべく分布されたディレクタを有しており、また、その上面及び下面上にディレクタを有しており、後者は、z軸5に直交しており(液晶層957の表面に平行)、且つ、図の紙面に平行である(すなわち、中間ポリマー層956の下面のディレクタに平行である)。下部ポリマー層959の表面間のディレクタは、この例ではz軸5に平行で図の紙面にも平行である面内において、ある量だけ傾斜しており、当該量は、光学ゾーンの中央線に対するそれらの位置の関数である。結果として、上部ポリマー層及び下部ポリマー層の表面間のディレクタの配向は、互いに直交している。
【0149】
ポリマー層953、956、959は、液晶層の配向層として機能する。
【0150】
液晶層954、957は、合理的な製造公差及び光学性能公差の範囲内で、ポリマー層間の同一の厚さを有する。
【0151】
ポストのアレイ(例えばポスト955)が、上部ポリマー層953と中間ポリマー層956との間のギャップ内に配置され、当該ギャップ内に閉じ込められた液晶層954の液晶材料に囲まれている。当該アレイのポストは、上部ポリマー層953から中間ポリマー層956まで延びており、前述のように厚さを維持するのに役立っている。
【0152】
ポストの第2アレイ(例えばポスト958)が、中間ポリマー層956と下部ポリマー層959との間のギャップ内に配置されている。ポストの第2アレイは、ギャップ内に閉じ込められた液晶層957内の液晶材料によって囲まれている。
【0153】
この例では、電気コンポーネントは、層950、961、962を含む誘電性ポリマー基板内に配置されている。電気コンポーネントは、電気コンポーネントは、接触するポリイミド層951Aを有する抵抗層951B、上部ポリマー層953の上方に配置されたパターン電極層952、及び、下部ポリマー層959の下方の透明パッド電極層960を含む。
【0154】
上部ポリマー層953及び下部ポリマー層959内に分布されたディレクタは、電気活性セルに追加のレンズ屈折力を提供する。幾つかの実施形態では、ポリマー層953、959によって提供されるパッシブレンズ屈折力が、液晶層によって提供される電気活性屈折力と組合され得て、近くの物体にも遠くの物体にも焦点合わせできるレンズ構造の利用を可能にする。
【0155】
図13の液晶セルは、小さな半径で折り畳まれ、元の形状に戻った後も、その光学特性を維持できる。
【0156】
図14は、レンズ用の調整可能な電気活性液晶セルの一実施形態を示す。当該実施形態では、第2液晶層48の下方のパッド電極層51を除去し、パターン開口(パターン化された開口)を有する第2電極42Aを提供することによって、
図3Dの構造に対して2層液晶セルが変更されている。第2電極42Aは、誘電性ポリマー40A内に配置されている。また、抵抗層41Aが、配向層50の下方に配置されている。
図3A乃至
図3Dの実施形態の要素と共通である
図14の要素には、同様の参照番号が付されており、再度の説明は省略される。
【0157】
第1電極42及び第2電極42Aのパターン開口は、円形形状を有し得る。幾つかの実施形態では、パターン開口は、共通の半径を有する円形形状を有する。他の実施形態では、パターン開口は、異なる半径を有する円形形状を有する。更に、他の実施形態では、パターン開口は、円形以外の形状を有し得る。
【0158】
図14の実施形態における円形開口は、調整可能レンズの開口(アパーチャ)と整列して配置され、電界力で電気力線を誘導するように構成されており、調整可能なレンズ屈折力(レンズ度数)を達成するべく第1及び第2活性層における液晶部分の配向(整列)を制御するのに好適である。
【0159】
代替の実施形態では、第1及び第2電極42、42Aは、複数の穴パターン開口を有しており、
図11及び
図12の場合と同様、パッド電極及び湾曲されたポリマー層を用いて置換され得る。また、代替的に、パッシブなレンズ屈折力(レンズ度数)が、前述のようなポリマー層を用いて提供され得る。
【0160】
図15は、レンズ用の調整可能な電気活性液晶セルの一実施形態を示す。当該実施形態では、液晶を含む第1及び第2活性層間にパッド電極150を挿入することによって、
図14の構造に対して2層液晶セルが変更されている(すなわち、液晶層45、48)。
図14の実施形態の要素と共通である
図15の要素には、同様の参照番号が付されており、再度の説明は省略される。
【0161】
当該実施形態では、透明な可撓性パッド電極150が、第2配向層47の下方の誘電体ポリマー155、156内に配置されている。追加の配向層47Aが、パッド電極150の下方に配置され、第2液晶層48の上面と接触している。
【0162】
第1及び第2電極42、42Aは、
図14に関連して前述されたように、パターン開口を有し得る。
【0163】
第1駆動信号源160及び第2駆動信号源161を含むドライバが、第1液晶層45に第1駆動信号を適用して第2液晶層48に第2駆動信号を適用するために、第1パターン電極42及び第2パターン電極42Aに電気的に接続されている。幾つかの実施形態では、第1及び第2駆動信号は、製造上の仕様及び性能上の仕様の範囲内で、同一であり得る。他の実施形態では、第1及び第2駆動信号は、パルス形状、デューティサイクル、DCオフセット、振幅、及び、周波数、のうちの少なくとも1つ、あるいは、幾つかの実施形態では2以上、で異なり得る。駆動信号の特性は、例えば、特定のレンズ屈折力や達成されるべき他の性能特性のために、較正によって決定され得る。
【0164】
幾つかの実施形態では、ドライバは、パッド電極150に結合され、DC基準電圧またはグランド電位を当該パッド電極に印加する。幾つかの実施形態では、互いから分離され、第1及び第2活性層(液晶層)間に配置された第1及び第2パッド電極が存在し得る。第1駆動信号は、第1電極と第1パッド電極との間で結合され得て、第2駆動信号は、第2電極と第2パッド電極との間で結合され得る。
【0165】
図16は、レンズ用の調整可能な電気活性液晶セルの一実施形態を示す。当該実施形態では、第1及び第2活性層(425、428)間にパッド電極450を挿入することによって、及び、
図14及び
図15を参照して議論された電極42Aのようなパターン開口を有する第2電極421Aで
図8のパッド電極を置換することによって、
図8の構造に対して湾曲した2層液晶セルが変更されている。
図8の構成と共通である
図16の要素には、同様の参照番号が付されており、再度の説明は省略される。
【0166】
当該実施形態では、透明な可撓性パッド電極450が、第2配向層(ポリマー層427)の下方の誘電体ポリマー455、456内に配置されている。追加の配向層(ポリマー層427A)が、パッド電極450の下方に配置され、第2液晶層428の上面と接触している。
【0167】
第2電極421Aは、誘電性ポリマー433A、434A内に配置されている。また、抵抗層423Aが、ポリマー層430の下方に配置されている。
【0168】
第1駆動信号源460及び第2駆動信号源461を含むドライバが、第1液晶層425に第1駆動信号を適用して第2液晶層428に第2駆動信号を適用するために、第1パターン電極421及び第2パターン電極421Aに電気的に接続されている。幾つかの実施形態では、第1及び第2駆動信号は、製造上の仕様及び性能上の仕様の範囲内で、同一であり得る。他の実施形態では、第1及び第2駆動信号は、パルス形状、デューティサイクル、DCオフセット、振幅、及び、周波数、のうちの少なくとも1つ、あるいは、幾つかの実施形態では2以上、で異なり得る。駆動信号の特性は、例えば、特定のレンズ屈折力や達成されるべき他の性能特性のために、較正によって決定され得る。
【0169】
幾つかの実施形態では、ドライバは、パッド電極450に結合され、DC基準電圧またはグランド電位を当該パッド電極に印加する。幾つかの実施形態では、互いから分離され、第1及び第2活性層間に配置された第1及び第2パッド電極が存在し得る。第1駆動信号は、第1電極と第1パッド電極との間で結合され得て、第2駆動信号は、第2電極と第2パッド電極との間で結合され得る。
【0170】
10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有する配向層のような、強力なアンカリング強度を有する配向層を用いることによって、回位(disclination)効果が低減され得る。十分な強度を有する配向層が、ポリマー配向層を用いて、前述のように製造され得る。
【0171】
図17は、50%に等しくないデューティサイクルを有する駆動信号を示すグラフである。この例では、駆動信号は、正と負のピークの大きさが等しいAC矩形波である。もっとも、正方向のパルスのパルス幅τは、当該信号の周期Tの50%未満である。当該駆動信号のデューティサイクルを制御することにより、活性セル内の電界にDCオフセットが誘発され得て、イオン効果またはフレキソエレクトリック効果のためにレンズ屈折力を変更し得る。他の例では、駆動信号は、正弦波、のこぎり波、または、異なるパルス形状または混合パルス形状を有する他の信号、であり得る。
【0172】
図18は、正と負のピークの大きさが等しくなくて、DCオフセットを誘発している駆動信号を示すグラフである。この例では、駆動信号のデューティサイクルは、50%である。駆動信号におけるDCオフセットを生成する正と負のピークの大きさを制御することにより、DCオフセットが活性セル内の電界に誘発され得て、イオン効果またはフレキソエレクトリック効果のためにレンズ屈折力を変更し得る。
【0173】
幾つかの実施形態では、調整可能なデューティサイクル、及び、正と負のピークの調整可能な大きさ、の組合せを有する駆動信号が、適用され得る。
【0174】
幾つかの実施形態では、駆動信号は、所望のレンズ屈折力特性を達成するために、パルス幅変調を用いて適用され得る。パルス幅変調は、環境要因のためにリアルタイムで制御するために、例えば、選択されたレンズ屈折力において、焦点の質を示すフィードバックを用いて、適用され得る。液晶レンズのレンズ屈折力は、イオン効果またはフレキソエレクトリック効果のために、正電圧または負電圧の下で異なる。パルス幅の変更が、平均電圧に正のDCオフセットまたは負のDCオフセットを提供し得て、レンズ屈折力を変更し得る。
【0175】
調整可能な駆動信号の他の特徴は、周波数と大きさとを含む。一般に、周波数と大きさとは、液晶部分のダイレクタの調整に適用される液晶層内の電界強度を決定する。
【0176】
図19は、パターン開口を有する第1電極480、電気力線の分散を補助するための抵抗層481、及び、パッド電極等の第2電極482、を有する調整可能な液晶セルの説明用の簡略図である。液晶層は、第1電極480と第2電極482との間に配置されている。液晶層は、例えばパッシブ状態での適用バイアスによってセル内の配向層(図示せず)に従って配向された部分(例えば485)を有する液晶を含む。配向層は、詳細に前述されたように、ポリマー配向層を含み得る。液晶セルは、前述のような弾性ポストを含み得る。液晶セルは、前述のような追加セルと組み合わされ得る。
【0177】
図20は、第1電極480から第2電極482まで分散パターンで延びる電気力線によって表される、比較的高電力の電界を誘発する初期駆動信号が適用された、
図19の液晶セルを示している。当該初期駆動信号に応答して、液晶層の液晶部分は、実質的に均一に鉛直に整列され得る。前記初期駆動信号が適用された後、当該実施形態では、
図21によって表されるような駆動信号が、
図21の第1電極480から第2電極482まで分散パターンで延びる電気力線によって表される、比較的低電力の電界を有するように、適用される。
図21の駆動信号は、初期駆動信号に続いて適用され、液晶部分が目標のレンズ屈折力のために所望方向に緩和することを許容する。
【0178】
図22は、
図20及び
図21を参照して説明されたような、初期のより高電力のインターバルを有し、その後により低電力のインターバルが続く、という駆動信号を示すグラフである。
図20に示すように、初期のより高電力のインターバルでは、駆動信号は、最初の周波数f1と最初の大きさV1とを有し、比較的均一な電界分布を確立する。その後のより低電力のインターバルでは、駆動信号は、
図21に示すように、レンズ屈折力を設定するために、2番目の周波数f2と2番目の大きさV2とを有する。周波数と大きさとの組合せが、活性層内の液晶部分の制御可能な配向(整列)をもたらすことができる電界パワーを確立し、レンズ電界の周囲の非傾斜(disinclination)が少ない状態でセルの液晶層のレンズ屈折力をより迅速に調整するために利用可能であり得る。初期のより高いフィールドパワーインターバルの駆動信号は、後続のより低いフィールドパワーインターバルの駆動信号の周波数f2及び大きさV2と比較して、より低い周波数f1及びより高い大きさVIを有し得る。幾つかの実施形態では、初期のより高電力のインターバルは、複数のサイクルのセットではなく、単一の高い大きさのパルスであり得る。周波数と大きさとの他の組合せ、並びに、DCオフセット、調整可能なデューティサイクル、及び、パルス幅変調、を含む駆動信号、が様々な組合せで適用され得て、特定の実装のための初期及び後続のフィールドパワーを実現し得る。一例では、f1、V1は、500Hz、500ミリ秒間の40Vrmsであり得て、一方、f2、V2は、4KHz、35Vrmsであり得る。
【0179】
説明された可撓性の液晶セルの技術は、折り畳まれた後に構造が元の形状及び元の光学特性に戻るという意味で弾性を有し得る、コンタクトレンズなどの可撓性のレンズでの使用に適している。
【0180】
可撓性の液晶セルの実施形態は、全てポリマーベースの光学系を含み得る。幾つかの実施形態では、液晶セルは、偏光子を含み得るし、あるいは、偏光子を含まなくてもよい。幾つかの実施形態では、単一の液晶層が存在する。他の実施形態では、2以上の液晶層が存在する。
【0181】
液晶層内にポストのアレイを製造するために説明された技術は、ポリマー前駆体と液晶材料とを含む混合物の低温での光重合に基づいている。光重合は、例えばリソグラフィマスクを使用して形成されるパターンに従って、前駆体の相分離及び重合を誘発することで、ポストのアレイを形成する。
【0182】
本明細書に記載された可撓性の液晶セルは、破損することなくそれ自体で折り畳まれ得て、電気活性レンズの光学特性を回復しながら元の形状に戻され得る。
【0183】
例えば、折り畳み前後の平均厚さが初期厚さの±10%以内に留まるように、液晶層の厚さは折り畳みの前後で維持され得る。また、液晶層の厚さは、折り畳みの前後で均一な厚さであり得て、例えば、光学素子の中心から光学素子の有効開口の縁まで、1.2μm未満だけ変化する。
【0184】
この技術は、液晶を使用して電気的に調整可能な光学系を実現する可撓性の光学素子を実装するために説明されている。液晶光学素子は、直交配向液晶ダイレクタを備えた一対の液晶層を含み得て、可撓性のポリマー配向層、可撓性の基板、及び、電界を制御するモジュールと共に、偏光子なしでの動作を可能にする。液晶光学素子のレンズ屈折力は、光学ゾーン全体の電界分布を制御することにより変更され得る。近視であって且つ老視である患者のために、可撓性のコンタクトレンズは、遠方の物体に焦点を合わせるための負のレンズ度数と近距離の物体に焦点を合わせるための追加のレンズ度数とが、本明細書に記載された技術を使用して実装され得る。幾つかの例では、負のレンズ屈折力は、光学層スタックのパッシブ構造によって提供され得て、液晶層の電気光学活性構造と組合され得る。これにより、可撓性コンタクトレンズは、本明細書で説明されるように、液晶を使用する可撓性の光学要素を含み得る、ということが理解され得る。
【0185】
電気的に調整可能な光学系を実現するための材料として液晶(LC)を採用した可撓性の光学素子が説明される。LC光学系は、偏光子なしでの動作のために直交配向LCディレクタを有する一対のLC層、可撓性のポリマー配向層、可撓性の基板、及び、電界を制御するためのモジュール、を含み得る。LC光学系のレンズ屈折力は、光学ゾーン全体の電界分布を制御することによって変更され得る。本明細書に記載された液晶セルは、可撓性ポリマーを含むコンタクトレンズ内に含まれ得る。
【0186】
近視であって老視、または、遠視であって老視である患者のために、遠い物体への焦点合わせを支援するための負のレンズ屈折力と、近くの物体への焦点合わせを支援するための追加の正のレンズ力と、を備えた可撓性のコンタクトレンズが説明される。LC光学系は、これらの患者のために、追加の正のレンズ屈折力を電気的に提供し得て、パッシブな初期の負のレンズ屈折力を持つ可撓性のコンタクトレンズと組合せられ得る。
【0187】
本明細書に説明された製造プロセスは、特定の順序で説明されている。しかしながら、幾つかの工程は、達成される機能に影響を与えることなく、組合され得るし、並列に実施され得るし、あるいは、異なる順序で実施され得る。幾つかの場合には、読者が理解するように、特定の他の変更が加えられた場合にのみ、工程の再編成が同じ結果を達成するであろう。他の場合には、読者が理解するように、特定の条件が満たされた場合にのみ、工程の再編成が同じ結果を達成するであろう。
【0188】
本発明は、前述の好適な実施形態及び実施例を参照して開示されているが、これらの実施例は、限定的な意味ではなく、例示的な意味である。修正及び組合せが、当業者に容易に思い浮かぶと想定される。当該修正及び組合せは、本発明の精神内、及び、以下の特許請求の範囲内である。
なお、本件の出願時の特許請求の範囲は、以下の通りである。
[請求項1]
電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層及び第2配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、
前記第1配向層の上方に配置され、前記活性層の開口領域の上方に配置された第1パターン開口を有する第1電極と、
前記第2配向層の下方に配置され、前記第1電極との組合せで前記活性層内に電界を誘発するように配置された第2パターン開口を有する第2電極と、
を備えたことを特徴とする電気的に調整可能なレンズ。
[請求項2]
前記第1及び第2パターン開口は、円形を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項3]
前記第1及び第2パターン開口は、共通の半径の円形を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項4]
前記第1配向層の上方に配置された第1抵抗層と、
前記第2配向層の下方に配置された第2抵抗層と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項5]
前記第1配向層と前記第2配向層との間の前記活性層内の弾性ポリマーポストのアレイ
を更に備え、
当該アレイのポストは、前記第1配向層から前記第2配向層まで延びている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項6]
前記第1配向層及び前記第2配向層の少なくとも1つが、液晶部分を有するポリマー層を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項7]
前記第1配向層と前記第2配向層との間の第3配向層と、
前記第3配向層と前記第2配向層との間に閉じ込められた液晶を有する第2活性層と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項8]
前記第1及び第2活性層間に配置されたパッド電極
を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項9]
前記活性層は、10mm未満の折り畳み半径で曲げる前の平均厚さXと、当該曲げから戻った後の平均厚さYと、を有し、
Y=X±10%X
である
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項10]
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るように調整可能デューティサイクルを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバ
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項11]
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るようにパルス幅変調を用いて駆動信号を適用するように構成されたドライバ
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項12]
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るようにDCオフセットを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバ
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項13]
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るように初期のより高いフィールドパワーインターバルと後続のより低いフィールドパワーインターバルとを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバ
を更に備え、
前記より低いフィールドパワーは、前記より低いフィールドパワーインターバル中に目標のレンズ屈折力を確立するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項14]
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項15]
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、液晶部分を有すると共に10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有するポリマー層を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項16]
電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層及び第2配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、
前記第1配向層の上方に配置された第1電極と、
前記第2配向層の下方に配置された第2電極と、
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るように調整可能デューティサイクルを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバと、
を備えたことを特徴とする電気的に調整可能なレンズ。
[請求項17]
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項16に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項18]
電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層及び第2配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、
前記第1配向層の上方に配置された第1電極と、
前記第2配向層の下方に配置された第2電極と、
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るようにDCオフセットを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバと、
を備えたことを特徴とする電気的に調整可能なレンズ。
[請求項19]
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項18に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項20]
電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層及び第2配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、
前記第1配向層の上方に配置された第1電極と、
前記第2配向層の下方に配置された第2電極と、
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るように初期のより高いフィールドパワーインターバルと後続のより低いフィールドパワーインターバルとを有する駆動信号を適用するように構成されたドライバと、
備え、
前記より低いフィールドパワーは、前記より低いフィールドパワーインターバル中に目標のレンズ屈折力を確立するように構成されている
ことを特徴とする電気的に調整可能なレンズ。
[請求項21]
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項20に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項22]
電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層及び第2配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する活性層と、
前記第1配向層の上方に配置された第1電極と、
前記第2配向層の下方に配置された第2電極と、
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、当該第1及び第2電極を亘るようにパルス幅変調を用いて駆動信号を適用するように構成されたドライバと、
を備えたことを特徴とする電気的に調整可能なレンズ。
[請求項23]
前記第1及び第2配向層の少なくとも1つが、10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項22に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項24]
電気的に調整可能なレンズであって、
第1配向層、第2配向層、第3配向層及び第4配向層と、
当該レンズの光路内において前記第1及び第2配向層間に閉じ込められた液晶を有する第1活性層と、
当該レンズの前記光路内において前記第3及び第4配向層間に閉じ込められた液晶を有する第2活性層と、
前記第1配向層の上方に配置され、前記第1活性層の開口領域と整列して配置された第1パターン開口を有する第1電極と、
前記第4配向層の下方に配置され、前記第2活性層の開口領域と整列して配置された第2パターン開口を有する第2電極と、
前記第1及び第2活性層間に配置されたパッド電極と、
前記第1及び第2電極に電気的に接続され、前記第1電極に第1駆動信号を適用し前記第2電極に第2駆動信号を適用するように構成され、前記パッド電極との組合せで前記第1及び第2活性層内に電界を誘発するように配置されたドライバと、
を備えたことを特徴とする電気的に調整可能なレンズ。
[請求項25]
前記第1及び第2パターン開口は、円形を有している
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項26]
前記第1及び第2パターン開口は、共通の半径の円形を有している
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項27]
前記第1配向層の上方に配置された第1抵抗層と、
前記第4配向層の下方に配置された第2抵抗層と、
を更に備えたことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項28]
前記第1配向層と前記第2配向層との間の前記第1活性層内の弾性ポリマーポストの第1アレイを更に備え、当該アレイのポストは、前記第1配向層から前記第2配向層まで延びており、
前記第3配向層と前記第4配向層との間の前記第2活性層内の弾性ポリマーポストの第2アレイを更に備え、当該アレイのポストは、前記第3配向層から前記第4配向層まで延びている
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項29]
前記第1配向層及び前記第4配向層の少なくとも1つが、液晶部分を有するポリマー層を含む
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項30]
前記第1活性層は、10mm未満の折り畳み半径で曲げる前の平均厚さXと、当該曲げから戻った後の平均厚さYと、を有し、
Y=X±10%X
である
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項31]
前記第1及び第2駆動信号は、DCオフセット、周波数、デューティサイクル及び大きさの少なくとも1つにおいて異なっている
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項32]
前記ドライバは、パルス幅変調を用いて前記第1及び第2駆動信号を提供するように構成されている
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項33]
前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号の少なくとも1つは、初期のより高いフィールドパワーインターバルと後続のより低いフィールドパワーインターバルとを含んでおり、
前記より低いフィールドパワーは、前記より低いフィールドパワーインターバル中に目標のレンズ屈折力を確立するように構成されている
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項34]
前記第1、第2、第3及び第4配向層の少なくとも1つが、10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有する
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。
[請求項35]
前記第1、第2、第3及び第4配向層の少なくとも1つが、液晶部分を有すると共に10―4J/m2より大きいアンカリング強度を有するポリマー層を含む
ことを特徴とする請求項24に記載の電気的に調整可能なレンズ。