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特許7002723コンクリート打継面の処理方法及び処理部材
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  • 特許-コンクリート打継面の処理方法及び処理部材 図1
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  • 特許-コンクリート打継面の処理方法及び処理部材 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】コンクリート打継面の処理方法及び処理部材
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
E04G21/02 103A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017209504
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019082038
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】501061319
【氏名又は名称】学校法人 東洋大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福手 勤
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】竹中 寛
(72)【発明者】
【氏名】末岡 英二
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-336165(JP,A)
【文献】特開2000-336931(JP,A)
【文献】実開昭60-112543(JP,U)
【文献】特開平01-183478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設されたコンクリートの打継面を処理するコンクリート打継面の処理方法であって、
コンクリートの打継面に、その表面に凹凸部を有する面ファスナを敷設して、該面ファスナの凹凸部にレイタンス層を捕捉させた後、前記面ファスナを前記打継面から取り除くことを特徴とするコンクリート打継面の処理方法。
【請求項2】
打設直後のコンクリートの打継面に前記面ファスナを敷設することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打継面の処理方法。
【請求項3】
前記打継面に前記面ファスナを敷設して、該打継面が硬化後に前記面ファスナを前記打継面から取り除くことを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート打継面の処理方法。
【請求項4】
打設されたコンクリートの打継面を処理するためのコンクリート打継面の処理部材であって、
該処理部材は、コンクリートの打継面に敷設して、レイタンス層を捕捉する、表面に凹凸部を有する面ファスナであることを特徴とするコンクリート打継面の処理部材。
【請求項5】
前記面ファスナの、前記凹凸部側の面と反対側の面に保水性を有する保水シート部を一体的に設けることを特徴とする請求項に記載のコンクリート打継面の処理部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打継面の処理方法及び処理部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート構造物を構築する際、打設作業を複数工程に分けて行うことから、工程間に打継部分が生じるが、この場合、打継部分が構造上の欠陥にならないように、新コンクリートを打設する前に、打設済コンクリートの打継面に現出される、厚み200~500μmの脆弱層、いわゆるレイタンス層を予め除去して、健全なコンクリートを露出させた後、新コンクリートを打設する必要がある。
【0003】
そして、コンクリートの打継面に現出されたレイタンス層を除去するための従来技術として、特許文献1には、打設されたコンクリートの打継面に凝結遅延剤を散布する遅延剤散布工程と、凝結遅延剤の散布により打継面に形成されたレイタンス層に対して粒状のドライアイスを吹き付けてレイタンス層を除去し、打継面からコンクリートの粗骨材を露出させる除去工程と、を含むコンクリート打継面の処理方法や、粒状のドライアイスをレイタンス層に向けて噴射するノズルと、該ノズルにドライアイスを供給するドライアイス供給部と、打継面及びノズルの噴射口を覆うカバーと、打継面から剥離されたレイタンス層の塵芥をカバー内で吸引し、該カバーの外部に排出する排出部と、を備えるコンクリート打継面処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-172954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に係るコンクリート打継面の処理方法では、遅延剤散布工程及び除去工程を少なくとも含むために、その作業工程が多く、煩雑であり、その結果、作業時間が長くなり、コスト高になる虞がある。また、上述した特許文献1に係るコンクリート打継面処理装置においても、装置自体の構成が複雑であり、これもコスト高になる虞があり、改善する必要があった。
【0006】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、効率良く、打継面のレイタンス層を除去することのできるコンクリート打継面の処理方法及び処理部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した、コンクリート打継面の処理方法に係る発明は、打設されたコンクリートの打継面を処理するコンクリート打継面の処理方法であって、コンクリートの打継面に、その表面に凹凸部を有する面ファスナを敷設して、該面ファスナの凹凸部にレイタンス層を捕捉させた後、前記面ファスナを前記打継面から取り除くことを特徴とするものである。
請求項1の発明では、面ファスナの凹凸部側を打継面に敷設することで、面ファスナの凹凸部に打継面のレイタンス層を容易に捕捉させることができる。これにより、面ファスナを打継面に敷設した後、該面ファスナを打継面から取り除けば、コンクリートの打継面のレイタンス層を除去することができる。しかも、コンクリートの打継面に面ファスナを敷設するので、コンクリートの打設初期の急激な乾燥を抑制して保水性を確保することもでき、コンクリートの品質を向上させることできる。なお、面ファスナの凹凸部は、いわゆる面ファスナの係合素子であり、当該係合素子により容易にレイタンス層を捕捉することができる。
【0008】
請求項2に記載した、コンクリート打継面の処理方法に係る発明は、請求項1に記載した発明において、打設直後のコンクリートの打継面に前記面ファスナを敷設することを特徴とするものである。
請求項2の発明では、打設直後のコンクリートの打継面であれば、コンクリート打設時の流動性が維持されていることから、面ファスナの凹凸部を、打継面のレイタンス層内にスムーズに浸漬させることができ、その結果、レイタンス層の除去率を向上させることができる。
【0009】
請求項3に記載した、コンクリート打継面の処理方法に係る発明は、請求項1または2に記載した発明において、前記打継面に前記面ファスナを敷設して、該打継面が硬化後に前記面ファスナを前記打継面から取り除くことを特徴とするものである。
請求項3の発明では、打継面が硬化して、レイタンス層と面ファスナとが結合した後に、該面ファスナを打継面から剥がすので、面ファスナからレイタンス層が脱落するのを抑制することができる。これにより、打継面のレイタンス層の除去率をさらに向上させることができる。
【0012】
請求項記載した、コンクリート打継面の処理部材に係る発明は、打設されたコンクリートの打継面を処理するためのコンクリート打継面の処理部材であって、該処理部材は、コンクリートの打継面に敷設して、レイタンス層を捕捉する、表面に凹凸部を有する面ファスナであることを特徴とするものである。
請求項発明では、面ファスナの凹凸部側(係合素子側)を打継面に敷設して密着させた際、面ファスナの凹凸部により、打継面のレイタンス層を容易に捕捉することができる。
【0015】
請求項に記載した、コンクリート打継面の処理部材に係る発明は、請求項に記載した発明において、前記面ファスナの、前記凹凸部側の面と反対側の面に保水性を有する保水シート部を一体的に設けることを特徴とするものである。
請求項の発明では、保水シート部により容易に吸水及び保水できるので、コンクリートの保水性をさらに確保することができ、コンクリートの品質をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンクリートの打継面に面ファスナを敷設して、該面ファスナの凹凸部にレイタンス層を捕捉させた後、面ファスナを打継面から取り除くので、大掛かりな処理装置必要なく、処理作業も容易であり、効率良く、打継面のレイタンス層を除去することができる。その結果、コンクリート構造物を構築する際のコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート打継面の処理部材であるシート部材の側面図である。
図2図2は、図1の部分拡大図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るコンクリート打継面の処理方法を段階的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図1図3に基づいて詳細に説明する。
コンクリート4の打継面5のレイタンス層6を除去するには、本発明の実施形態に係る処理部材が採用される。該処理部材には、図1に示すように、コンクリート4の打継面5に密着するように敷設して、打継面5に現出されたレイタンス層6を除去できるシート部材1が採用される。要するに、シート部材1は、コンクリート4の打継面5に密着して、コンクリート4の打継面5に現出されたレイタンス層6を付着できる性質、すなわち面構成を有するものである。
【0019】
本実施形態では、図1及び図2に示すように、シート部材1には、基布11の表面にループ状係合素子12を備えた、いわゆる面ファスナ10が採用される。該面ファスナ10の基布11を構成する地経糸および地緯糸は、ポリエステル系ポリマーからなる繊維、好ましくはポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルからなる繊維にて構成される。ループ状係合素子12を構成する糸は、ポリエステル系ポリマーからなる繊維、好ましくはポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルからなる繊維にて構成される。ループ状係合素子12を構成する糸はマルチフィラメント糸である。ループ状係合素子12の密度としては、マルチフィラメント単位で25~60個/cmの範囲が好ましい。要するに、ループ状係合素子12の密度が60個/cmを超える場合には、ループ状係合素子12、12間の間隔が狭すぎて、レイタンス層6を捕捉する空間が少なく好ましくない。一方、ループ状係合素子12の密度が25個/cmを未満の場合には、ループ状係合素子12、12間の間隔が広すぎて、レイタンス層6を十分に捕捉できず好ましくない。また、ループ状係合素子12の基布11からの高さ(H)は、1.5~3.0mmの範囲で設定される。ループ状係合素子12の基布11からの高さ(H)は、少なくとも、コンクリート4の打継面5に現出されるレイタンス層6の厚み(T)200~500μmよりも大きく設定すればよい。
【0020】
なお、本実施形態では、シート部材1に、基布11の表面にループ状係合素子12を備えた面ファスナ10が採用されているが、シート部材1として、基布11の表面にフック状係合素子を備えた面ファスナを採用してもよい。また、シート部材1として、その材質が親水性に優れた合成樹脂、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)等を採用したものでもよい。さらに、シート部材1として、単に、繊維(糸)を織成または編成して得られた基布(フェルトや不織布を含む)であって、吸水性に優れたものを採用してもよい。さらにまた、シート部材1として、繊維(糸)を織成または編成して得られた基布であって、その表面が起毛処理されて、その表面に不規則な凹凸部が形成されたものを採用してもよい。さらにまた、シート部材1として、ポリウレタン等の合成樹脂を発泡成形した、内部に細かな孔が無数にあいた多孔質の柔らかいスポンジ状であって、吸水性に優れたものを採用してもよい。
【0021】
そして、上述したシート部材1、すなわち基布11の表面にループ状係合素子12を備えた面ファスナ10を用いて、コンクリート4の打継面5のレイタンス層6を除去する方法を図3に基づいて説明する。
まず、図3(a)に示すように、コンクリート4の打継面5の全域に敷設可能な面積を有する面ファスナ10を用意する。なお、コンクリート4の打継面5の全域に敷設できるように、複数枚の面ファスナ10を用意するようにしてもよい。
次に、図3(b)に示すように、コンクリート4の打設直後に、その打継面5に面ファスナ10のループ状係合素子12側を敷設する。このとき、面ファスナ10のループ状係合素子12が、打継面5のレイタンス層6に密着または浸漬するように、面ファスナ10を打継面5に向かって若干押圧しながら敷設する。なお、コンクリート4の打設直後としては、約30分以内、好ましくは約10分以内に、その打継面5に面ファスナ10を敷設したほうがよい。これにより、面ファスナ10のループ状係合素子12を、打継面5のレイタンス層6内にスムーズに浸漬させることができ、その結果、レイタンス層6の除去率を向上させることができる。
【0022】
次に、図3(c)に示すように、コンクリート4の打継面5に面ファスナ10を密着するように敷設して、打継面5が硬化した後に、面ファスナ10を打継面5から剥がすように取り除く。
その結果、図3(d)に示すように、面ファスナ10のループ状係合素子12に、打継面5のレイタンス層6が絡まるように捕捉されて、コンクリート4の打継面5からレイタンス層6が取り除かれる。このように、打継面5が硬化した後に、面ファスナ10を打継面5から剥がすので、ループ状係合素子12へのレイタンス層6の捕捉性を向上させることができる。すなわち、打継面5が硬化する前段階に、面ファスナ10を打継面5から剥がしてしまうと、剥がす際に、面ファスナ10のループ状係合素子12に絡んだレイタンス層6が抜け落ちる可能性があり、レイタンス層6の除去率が低下する虞がある。
【0023】
なお、図示は省略するが、本実施形態に係るシート部材1において、面ファスナ10の基布11のループ状係合素子12が設けられる面と反対側の面に保水性を有する保水シート部を一体的に設けるようにしてもよい。保水シート部には、吸水性に優れた材質を採用してもよく、吸水性に優れたスポンジ状に形成してもよい。そこで、シート部材1として、面ファスナ10を採用せず、その材質が吸水性に優れた合成樹脂等が採用されている場合には、必ずしも保水シート部を設ける必要はない。
【0024】
以上説明したように、本発明の実施形態では、コンクリート4の打継面5に、面ファスナ10のループ状係合素子12側(凹凸部側)が密着するように敷設して、該ループ状係合素子12にレイタンス層6を絡めるように捕捉させた後、面ファスナ10を打継面5から取り除くので、大掛かりな処理装置も必要なく、また処理作業も簡単で、その処理作業に時間を要することなく、コンクリート4の打継面5のレイタンス層6を取り除くことができる。これにより、コンクリート構造物を構築する際のコストを抑制することができる。
【0025】
また、本発明の実施形態では、打設直後のコンクリート4の打継面5に面ファスナ10を敷設しつつ、面ファスナ10を打継面5に向かって押圧して、面ファスナ10のループ状係合素子12を、打継面5のレイタンス層6に浸漬させるように作業するので、面ファスナ10のループ状係合素子12に略全てのレイタンス層6を絡めるように捕捉することができる。これにより、打継面5におけるレイタンス層6の除去率を向上させることができる。また、コンクリート4の打設直後の打継面5に面ファスナ10を敷設するので、コンクリート4の打設初期の急激な乾燥を抑制して保水性を確保することができ、コンクリート4の品質を向上させることができる。なお、シート部材1として、面ファスナ10のループ状係合素子12側と反対側の面に保水性に優れた保水シート部を一体的に設ける構成を採用すれば、さらに、コンクリート4の保水性を確保することができ、コンクリート4の品質を向上させることができる。
【0026】
さらに、本発明の実施形態では、打継面5に面ファスナ10を敷設して、該打継面5が硬化後に面ファスナ10を打継面5から取り除くので、ループ状係合素子12に絡んだレイタンス層6の捕捉性を向上させることができ、ひいては、打継面5におけるレイタンス層6の除去率をさらに向上させることができる。
【0027】
本発明の実施形態では、シート部材1には、繊維(糸)を織成または編成して得られた基布11であって、その表面が起毛処理されて、その表面に不規則な凹凸部が形成されたもの、具体的には、表面にループ状係合素子12(凹凸部)が形成された面ファスナ10が採用される。これにより、当該面ファスナ10を打継面5に敷設した際、そのループ状係合素子12(凹凸部)により、打継面5のレイタンス層6を容易に捕捉することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 シート部材,4 コンクリート,5 打継面,6 レイタンス層,10 面ファスナ,11 基布,12 ループ状係合素子(凹凸部)
図1
図2
図3