(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】万力
(51)【国際特許分類】
B25B 1/18 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
B25B1/18 Z
(21)【出願番号】P 2017254107
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】592201092
【氏名又は名称】後藤ガット有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】梶原 篤
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌甲
(72)【発明者】
【氏名】新嶋 修
(72)【発明者】
【氏名】宮島 洋
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-109300(JP,A)
【文献】特開2013-154419(JP,A)
【文献】特開2013-173169(JP,A)
【文献】特開2011-020187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 1/00 - 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを挟み込んで固定する万力であって、
前記ワークを挟持可能な一対の挟持体
であって、前記一対の挟持体のうち一方の挟持体は可動体であり、他方の挟持体は固定体である一対の挟持体と、
前記一対の挟持体の間隔を変化させる電動駆動機構
であって、駆動力を発生するモータと、前記モータが発生した前記駆動力を前記可動体に伝達する駆動力伝達部材と、を有する電動駆動機構と、
前記モータに印加される電圧を測定する電圧計と、
前記電圧が第1閾値以上である場合には前記モータの双方向の回転を許容して前記一対の挟持体の開動作及び閉動作の両方を可能とし、前記電圧が前記第1閾値未満である場合には前記モータの一方向のみの回転を許容して前記一対の挟持体の開動作のみを可能とする第1モータ制御部と、
を備える万力。
【請求項2】
前記駆動力伝達部材は、前記モータによって回転されるリードスクリューであり、
前記可動体は、前記リードスクリューに螺合するネジ孔が形成された螺合部を有し、前記リードスクリューの回転によって前記リードスクリューの軸方向に移動可能に構成される、
請求項
1に記載の万力。
【請求項3】
前記駆動力伝達部材は、前記モータの出力軸に連結されたウォームと、前記ウォームに噛み合うウォームホイールとからなるウォームギヤであり、
前記可動体は、前記ウォームホイールに連結固定される、
請求項
1に記載の万力。
【請求項4】
前記モータに流れる電流を測定する電流計と、
前記電流が第2閾値以上である場合には前記モータの回転を禁止し、前記電流が前記第2閾値未満である場合には前記モータの回転を許容する第2モータ制御部と、
を備える、請求項
1から
3のいずれか1項に記載の万力。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを挟み込んで固定する万力に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワーク(対象物)を挟み込んで固定する万力が知られている(たとえば、特許文献1参照)。従来の万力は、対向して配置された一対の挟持体を、一方の挟持体(可動体)が他方の挟持体(固定体)に対して進退可能となるように設け、ハンドルを回転操作することによって、一方の挟持体を他方の挟持体に向けて移動させることにより、これらの挟持体の間にワークを挟み込んで固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の万力は、可動体である挟持体を移動させるためにはハンドルを回転操作しなければならないため、そのハンドルの回転操作に相当の時間と労力を要して作業が非効率であるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、無駄な労力や時間を要することなく、簡単な操作でワークを固定することができ、作業性に優れた万力を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、以下の発明を提供する。
【0007】
本発明の第1態様に係る万力は、ワークを挟み込んで固定する万力であって、ワークを挟持可能な一対の挟持体と、一対の挟持体の間隔を変化させる電動駆動機構と、を備える。
【0008】
本発明の第2態様に係る万力は、第1態様において、一対の挟持体のうち一方の挟持体は可動体であり、他方の挟持体は固定体であり、電動駆動機構は、駆動力を発生するモータと、モータが発生した駆動力を可動体に伝達する駆動力伝達部材と、を備える。
【0009】
本発明の第3態様に係る万力は、第2態様において、駆動力伝達部材は、モータによって回転されるリードスクリューであり、可動体は、リードスクリューに螺合するネジ孔が形成された螺合部を有し、リードスクリューの回転によってリードスクリューの軸方向に移動可能に構成される。
【0010】
本発明の第4態様に係る万力は、第2態様において、駆動力伝達部材は、モータの出力軸に連結されたウォームと、ウォームに噛み合うウォームホイールとからなるウォームギヤであり、可動体は、ウォームホイールに連結固定される。
【0011】
本発明の第5態様に係る万力は、第2態様から第4態様のいずれか1つの態様において、モータに印加される電圧を測定する電圧計と、電圧が第1閾値以上である場合にはモータの双方向の回転を許容し、電圧が第1閾値未満である場合にはモータの一方向のみの回転を許容する第1モータ制御部と、を備える。
【0012】
本発明の第6態様に係る万力は、第2態様から第5態様のいずれか1つの態様において、モータに流れる電流を測定する電流計と、電流が第2閾値以上である場合にはモータの回転を禁止し、電流が第2閾値未満である場合にはモータの回転を許容する第2モータ制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無駄な労力や時間を要することなく、簡単な操作でワークを固定することができ、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る万力の構成を示した概略図
【
図2】第1の実施形態に係る万力の電動駆動機構の電気的構成を示した回路図
【
図3】第1の実施形態に係る万力の構成の変形例を示した概略図
【
図4】第2の実施形態に係る万力の電動駆動機構の電気的構成を示した図
【
図5】第3の実施形態に係る万力の構成を示した概略図
【
図6】第3の実施形態に係る万力の構成の変形例を示した概略図
【
図7】万力の電動駆動機構としてピエゾアクチュエータを用いた構成例を示した概略図
【
図8】万力の電動駆動機構として人工筋肉アクチュエータを用いた構成例を示した概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る万力10の構成を示した概略図である。
図1に示すように、本実施形態の万力10は、ワーク50、52を挟持可能な一対の挟持体として、互いに対向配置された第1挟持体12及び第2挟持体14を備えている。なお、第1挟持体12及び第2挟持体14により挟持されるワークは1つでも複数でもよい。
【0017】
本実施形態の万力10はさらに、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を変化させる電動駆動機構16を備えている。この電動駆動機構16は、駆動源であるモータ18を含んでおり、モータ18が発生する駆動力を利用して、第1挟持体12を第2挟持体14に対して近接又は離間させる動作(開閉動作)を行わせることで、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を変化させる。
【0018】
モータ18は、固定側の挟持体(固定体)である第2挟持体14に固定されており、第2挟持体14に対して第1挟持体12を相対的に移動させるための駆動力を発生する。モータ18は、その出力軸(回転軸)を双方向へ回転可能な電動モータである。
【0019】
モータ18は、第2挟持体14に設けられた電池20及び操作部22に電気的に接続されている。操作部22は後述するように複数のスイッチ28A~28D(
図2参照)を備えており、これらのスイッチ28A~28Dの操作状態(オン/オフ状態)に応じて、電池20からモータ18に対して電流が供給される。これにより、モータ18は電池20から供給された電流に応じた駆動力を発生する。
【0020】
さらに電動駆動機構16は、モータ18が発生した駆動力を第1挟持体12に伝達するリードスクリュー24を有する。リードスクリュー24は、本発明の駆動力伝達部材の一例である。
【0021】
リードスクリュー24は、モータ18の出力軸と連結して、モータ18の出力軸と一体に回転する。リードスクリュー24の表面(外周面)にはネジ山(雄ネジ)が形成されている。
【0022】
第1挟持体12は、リードスクリュー24に螺合するネジ孔(雌ネジ)が形成された螺合部(ナット部)26を有し、リードスクリュー24の回転によってリードスクリュー24の軸方向に移動可能に構成される。なお、リードスクリュー24の回転を第1挟持体12の直進運動に変換させるため、万力10には、リードスクリュー24を回転させる際に第1挟持体12の回転を規制する回転規制部(不図示)が設けられている。
【0023】
かかる構成により、モータ18が発生した駆動力によってリードスクリュー24が回転すると、その回転方向に応じて、第1挟持体12は、リードスクリュー24の軸方向、すなわち、第2挟持体14に近接する方向(
図1の下方向)又は第2挟持体14から離間する方向(
図1の上方向)に移動する開閉動作を行う。
【0024】
図2は、第1の実施形態に係る万力10の電動駆動機構16の電気的構成を示した回路図である。
【0025】
図2に示すように、本実施形態に係る万力10の電動駆動機構16は、上述した操作部22(
図1参照)の構成要素として、複数のスイッチ28A~28Dを備えている。この電動駆動機構16は、複数のスイッチ28A~28Dにより一般的なHブリッジ回路として構成されており、各スイッチ28A~28Dのオン/オフの組み合わせにより、モータ18のコイルへ流す電流の増減が制御される。なお、各スイッチ28A~28Dは、機械的な接点のスイッチでもよいし、半導体スイッチでもよい。
【0026】
モータ18のコイルへ流す電流の制御には3つのモードがある。すなわち、各スイッチ28A~28Dのうち、第1スイッチ28Aと第4スイッチ28Dとをオンとすれば、モータ18が正転する正転モードとなる。また、第2スイッチ28Bと第3スイッチ28Cとをオンとすれば、モータ18が逆転する逆転モードとなる。また、第1スイッチ28Aと第2スイッチ28Bとをオン、または、第3スイッチ28Cと第4スイッチ28Dとをオンとすれば、モータ18の制動ブレーキを作動させた停止モードとなる。
【0027】
次に、本実施形態の万力10を用いてワーク50、52を固定する際の動作について説明する。
【0028】
まず、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔が狭くなっている場合には、操作部22の操作により第2スイッチ28Bと第3スイッチ28Cとをオンにして、モータ18を逆転モードで駆動して、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を広げて、第1挟持体12と第2挟持体14との間にワーク50、52を配置可能な開放状態にする。
【0029】
次に、第1挟持体12と第2挟持体14との間にワーク50、52を配置する。このとき、第1挟持体12と第2挟持体14との間にワーク50、52が適切な位置で挟み込まれるように、ワーク50、52の位置合わせを行う。
【0030】
次に、操作部22の操作により第1スイッチ28Aと第4スイッチ28Dとをオンにして、モータ18を正転モードで駆動して、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を徐々に狭くする。これにより、第1挟持体12と第2挟持体14との間にワーク50、52が挟持された状態となり、万力10に50、52が取り外し不能に固定された固定状態となる。
【0031】
このようにして、万力10にワーク50、52が固定された状態のとき(すなわち、上記固定状態のとき)、操作部22の操作により第1スイッチ28Aと第2スイッチ28Bとをオン、または、第3スイッチ28Cと第4スイッチ28Dとをオンにして、モータ18を停止モードにして、モータ18の制動ブレーキを作動させた状態で第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を保持することが好ましい。この態様によれば、万力10に固定されたワーク50、52に対して機械加工等を行う際に万力10が弛むことを防ぐことができる。
【0032】
なお、本実施形態の万力10からワーク50、52を取り外す際には、操作部22の操作により第2スイッチ28Bと第3スイッチ28Cとをオンにして、モータ18を逆転モードで駆動して、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を広げることで、万力10からワーク50、52を簡単に取り外すことが可能となる。
【0033】
以上のとおり、第1の実施形態によれば、電動駆動機構16によって第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を容易かつ簡単に調節可能であり、万力10に対してワーク50、52が固定された固定状態と、万力10に対するワーク50、52の固定が解除された開放状態との間で選択的に切り替えることが可能となる。したがって、無駄な労力や時間を要することなく、簡単な操作でワークを固定することができ、作業性に優れる。
【0034】
なお、第1の実施形態では、第1挟持体12が可動側の挟持体(可動体)であり、第2挟持体14が固定側の挟持体(固定体)である構成としたが、これらは逆に構成されていてもよい。
【0035】
また、第1の実施形態では、電動操作により万力10を開閉可能に構成したものであるが、電動操作に加え、さらに手動操作により万力10を開閉可能に構成したものであってもよい。
【0036】
図3は、第1の実施形態に係る万力10の構成の変形例を示した概略図である。
図3に示した変形例では、
図1に示した構成に加え、さらに、手動操作部材であるツマミ30を備えている。ツマミ30は、リードスクリュー24の先端に取り付けられている。ツマミ30は、リードスクリュー24に着脱自在に取り付け及び取り外しが行えるものであってもよい。これにより、電池切れの場合でも、リードスクリュー24の先端に取り付けたツマミ30を回転操作することで、リードスクリュー24を回転させることができ、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を変化させる開閉動作を行うことができる。したがって、万力10にワーク50、52を固定した状態で電池20を消耗してしまった場合でも、万力10からワーク50、52を取り外し可能となる。また、ワーク50、52に対する万力10の締め付け力が不足する場合には、ツマミ30を用いた手動操作で、万力10を締め付けることが可能となる。
【0037】
なお、ツマミ30を用いて手動操作する構成に限らず、ドライバーや六角レンチなど一般的な工具を用いて手動操作を行えるものであってもよい。また、従来の万力のように、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を変化させる手動操作部材として、例えば、ハンドルやレバーなどを備えたものであってもよい。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0039】
第2の実施形態は、万力10の電気的な構成が異なる点を除いて、第1の実施形態と同様である。
【0040】
図4は、第2の実施形態に係る万力10の電動駆動機構16の電気的構成を示した回路図である。なお、
図4中、
図2と共通又は類似する構成要素には同一の番号を付している。
【0041】
図4に示すように、第2の実施形態における電動駆動機構16は、第1の実施形態の構成に加え、さらに、電圧計32と、電流計34と、マイコン36とを備えている。
【0042】
電圧計32は、モータ18に印加される電圧(電源電圧)を測定する。電圧計32で測定された電圧はマイコン36に出力される。なお、正確には、電圧計32の出力は、A/Dコンバータ等でデジタル信号に変換されてマイコン36に出力される。
【0043】
電流計34は、モータ18に供給される電流(負荷電流)を測定する。電流計34で測定された電流はマイコン36に出力される。なお、正確には、電流計34の出力は、シャント抵抗等で電圧値に変換後にA/Dコンバータ等でデジタル変換されてマイコン36に出力される。
【0044】
マイコン36は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェース等の公知の構成を有している。マイコン36は、電圧計32、電流計34、及びモータ18と接続されており、ROMに格納されているコンピュータプログラムに従って、電圧計32で測定された電圧に応じてモータ18の動作を制御する第1モータ制御部38として機能するとともに、電流計34で測定された電流に応じてモータ18の動作を制御する第2モータ制御部40として機能する。
【0045】
第1モータ制御部38は、電圧計32で測定された電圧が予め設定した第1閾値以上であるか否かを判別する。第1閾値はRAM等の記憶手段等に保持されていればよい。第1閾値としては、電池20の最大電圧値に所定の係数(例えば0.1~0.3)を乗じた値としてもよい。
【0046】
上記判別の結果、電圧計32で測定された電圧が第1閾値以上である場合には、第1モータ制御部38は、電池20の残量に余裕があると判断し、モータ18の正転モード及び逆転モードでの両方の動作を許容する。すなわち、モータ18の双方向の回転を許容し、万力10の第1挟持体12及び第2挟持体14の開閉動作として、第1挟持体12を第2挟持体14に対して離間させる開動作と、第1挟持体12を第2挟持体14に対して近接させる閉動作との両方を可能とする。
【0047】
一方、電圧計32で測定された電圧が第1閾値未満である場合には、第1モータ制御部38は、電池20の残量が少ないと判断し、モータ18の逆転モードでの動作のみを許容する。すなわち、モータ18の一方向のみの回転を許容し、万力10の第1挟持体12及び第2挟持体14の開閉動作のうち、第1挟持体12を第2挟持体14に対して離間させる開動作のみを行えるようにし、第1挟持体12を第2挟持体14に対して近接させる閉動作については行えないようにする。
【0048】
第2モータ制御部40は、電流計34で測定された電流が予め設定した第2閾値以上であるか否かを判別する。第2閾値はRAM等の記憶手段等に保持されていればよい。第2閾値は、モータ18の最大負荷電流値に所定の係数(例えば0.8~0.9)を乗じた値としてもよい。
【0049】
上記判別の結果、電流計34で測定された電流が第2閾値未満である場合には、第2モータ制御部40は、モータ18に供給される電流が正常範囲であると判断し、モータ18の回転を許容する。一方、電流計34で測定された電流が第2閾値以上である場合には、第2モータ制御部40は、モータ18に供給される電流が正常範囲を超えて過大であると判断し、モータ18の回転を禁止して、モータ18の動作を停止するようにする。また、万力10が開放方向(第1挟持体12と第2挟持体14とが離間する方向)に動くときには、開放限界でモータ18を自動的に停止させることも可能である。
【0050】
以上のとおり、第2の実施形態によれば、電池20の残量が少ない場合には、万力10が開く方向にのみモータ18を動作させる制御が行われるので、万力10にワーク50、52を取り付けた状態で電池20を消耗することがなくなり、万力10からワーク50、52を取り外せなくなることを防ぐことができる。
【0051】
また、第2の実施形態によれば、モータ18の負荷電流が過大である場合には、モータ18の動作が停止されるので、万力10にワーク50、52を取り付ける際、第1挟持体12と第2挟持体14との間に挟持されるワーク50、52を必要以上の力で締め付けることがないので、ワーク50、52を傷つけたり、手などを挟み込んでしまうことを防止することができる。
【0052】
なお、第2の実施形態では、マイコン36を用いてモータ18の動作を制御する構成としたが、これに限らず、例えば、マイコン36に代えてコンパレータ等で構成することも可能である。
【0053】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下、上述した各実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0054】
第3の実施形態は、万力10の機械的な構成が異なる点を除いて、第1の実施形態と同様である。
【0055】
図5は、第3の実施形態に係る万力10の構成を示した概略図である。なお、
図5中、
図1と共通又は類似する構成要素には同一の番号を付している。
【0056】
図5に示すように、第3の実施形態に係る万力10は、ウォーム42及びウォームホイール44からなるウォームギヤ(減速機構)を備えている。ウォームギヤは、本発明の駆動力伝達部材の一例である。
【0057】
ウォーム42は、外周面に螺旋溝が形成されたネジ状の歯車である。ウォーム42は、モータ18の出力軸に連結され、モータ18の出力軸と一体に回転する。
【0058】
ウォームホイール44は、ウォーム42に噛み合う円弧状又は扇形状のウォームホイール(斜歯歯車)である。ウォームホイール44は、第2挟持体14にホイール軸46を回転中心にして回転自在に支持されている。また、ウォームホイール44には第1挟持体12が連結固定されている。
【0059】
かかる構成により、モータ18が発生した駆動力によってウォーム42が回転すると、その回転方向に応じて、第2挟持体14に回転自在に支持されたウォームホイール44はホイール軸46を中心に回転するので、第1挟持体12はウォームホイール44と一体となってホイール軸46を中心に回転する。これにより、第1挟持体12は、第2挟持体14に近接する方向又は第2挟持体14から離間する方向に移動する開閉動作を行う。
【0060】
したがって、第3の実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様に、電動駆動機構16によって第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を容易かつ簡単に調節可能であり、万力10に対してワーク50、52が固定された固定状態と、万力10に対するワーク50、52の固定が解除された開放状態との間で選択的に切り替えることが可能となる。
【0061】
また、第3の実施形態によれば、ウォーム42及びウォームホイール44からなるウォームギヤのセルフロック(自動締り)機能により、モータ18の制動ブレーキを用いなくても、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を保持することが可能となる。
【0062】
なお、第3の実施形態では、駆動力伝達部材として、ウォーム42及びウォームホイール44からなるウォームギヤを備えた構成を示したが、これに限らず、種々の歯車を用いて構成することも可能である。
【0063】
また、第3の実施形態では、万力10の電気的な構成としては、第1の実施形態又は第2の実施形態の同様の構成を適用可能であることはいうまでもない。
【0064】
また、第3の実施形態は、電動操作により万力10を開閉可能に構成したものであるが、第1の実施形態の変形例と同様に、電動操作に加え、さらに手動操作により万力10を開閉可能に構成したものであってもよい。
【0065】
図6は、第3の実施形態に係る万力10の構成の変形例を示した概略図である。
図6に示した変形例では、
図5に示した構成に加え、さらに、手動操作部材であるツマミ48を備えている。ツマミ48は、ウォーム42の先端に取り付けられている。ツマミ48は、ウォーム42に着脱自在に取り付け及び取り外しが行えるものであってもよい。これにより、第1の実施形態の変形例と同様に、電池切れの場合でも、ウォーム42の先端に取り付けたツマミ48を回転操作することで、ウォーム42を回転させることができ、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を変化させる開閉動作を行うことができる。したがって、万力10にワーク50、52を取り付けた状態で電池20を消耗してしまった場合でも、万力10からワーク50、52を取り外し可能となる。また、ワーク50、52に対する万力10の締め付け力が不足する場合には、ツマミ48を用いた手動操作で、万力10を締め付けることが可能となる。
【0066】
なお、上述した各実施形態では、万力10の電動駆動機構16として、モータ18を用いた構成を示したが、この構成に限らず、例えば、電圧の印加により伸縮するピエゾアクチュエータや人工筋肉アクチュエータなどを用いた構成としてもよい。
【0067】
図7は、万力10の電動駆動機構16としてピエゾアクチュエータ64を用いた構成例を示した概略図である。なお、
図7中、
図1又は
図5と共通又は類似する構成要素には同一の番号を付している。
【0068】
図7に示した構成例では、ワーク50、52を挟持可能な一対の挟持体である第1挟持体12及び第2挟持体14は、それぞれに設けられた軸孔にピン等の回転軸60を挿入することにより、相互に回転可能に連結されている。
【0069】
第1挟持体12と第2挟持体14との間には、バネ等の付勢部材62が設けられている。この付勢部材62は、その両端が第1挟持体12及び第2挟持体14にそれぞれ固定されており、第1挟持体12と第2挟持体14とを近接させる方向の付勢力を発生するものである。これにより、後述するピエゾアクチュエータ64が駆動されない場合には、付勢部材62の付勢力により、常に第1挟持体12と第2挟持体14とが互いに近接した状態(すなわち、上記固定状態に相当する状態)となる。したがって、付勢部材62の付勢力を適宜調整することで、第1挟持体12及び第2挟持体14によりワーク50、52を押さえつける力(締め付け力)を調整することができる。
【0070】
さらに
図7に示した構成例では、第1挟持体12と第2挟持体14との間、具体的には、付勢部材62よりも回転軸60に近い側の位置(好ましくは回転軸60の近傍位置)には、ピエゾアクチュエータ64が挟み込むように配置されている。このピエゾアクチュエータ64は、電圧の印加により伸張(
図7の上下方向に伸張)するアクチュエータである。したがって、図示しないアクチュエータ駆動部によりピエゾアクチュエータ64に電圧を印加すると、ピエゾアクチュエータ64は伸張し、付勢部材62の付勢力に抗して第1挟持体12と第2挟持体14とを離間させる開動作が行われる。
【0071】
図7に示した構成例によれば、第1挟持体12と第2挟持体14との間隔を変化させる開閉動作のうち、開動作時のピエゾアクチュエータ64を駆動すればよいので、電力の消費を抑えることができる。
【0072】
また、
図7に示した構成例によれば、ピエゾアクチュエータ64を付勢部材62よりも回転軸60側に配置したことにより、ピエゾアクチュエータ64の伸縮率が小さな場合であっても、梃子の原理で第1挟持体12と第2挟持体14の駆動範囲(開閉範囲)を広げることが可能となる。
【0073】
図8は、万力10の電動駆動機構16として人工筋肉アクチュエータ66を用いた構成例を示した概略図である。なお、
図8中、
図7と共通又は類似する構成要素には同一の番号を付している。
【0074】
図8に示した構成例は、基本的な構成は
図7に示した構成例と同様であるが、ピエゾアクチュエータ64(
図7参照)に代えて、人工筋肉アクチュエータ66を備えている。なお、付勢部材62は、
図7に示した構成例と同様に、第1挟持体12と第2挟持体14とを近接させる方向の付勢力を発生するものである。
【0075】
人工筋肉アクチュエータ66は、電圧の印加により収縮(
図8の上下方向に収縮)するアクチュエータである。この人工筋肉アクチュエータ66は、
図7に示したピエゾアクチュエータ64と比較して、第1挟持体12と第2挟持体14との間に配置される点は共通しているが、回転軸60に対して付勢部材62と同一側の位置ではなく、その反対側の位置に配置される点が異なっている。
【0076】
したがって、
図8に示した構成例によれば、図示しないアクチュエータ駆動部により人工筋肉アクチュエータ66に電圧を印加すると、人工筋肉アクチュエータ66は収縮し、付勢部材62の付勢力に抗して第1挟持体12と第2挟持体14とを離間させる開動作が行われる。
【0077】
また、人工筋肉アクチュエータ66と回転軸60との距離は、付勢部材62と回転軸60との距離よりも短いことが好ましい。この構成によれば、
図7に示した構成例と同様に、人工筋肉アクチュエータ66の伸縮率が小さな場合であっても、梃子の原理で第1挟持体12と第2挟持体14の駆動範囲(開閉範囲)を広げることが可能となる。
【0078】
なお、
図7及び
図8に示した各構成例において、ピエゾアクチュエータ64と人工筋肉アクチュエータ66を入れ替えるとともに、付勢部材62の付勢方向を逆方向(すなわち、第1挟持体12と第2挟持体14とを離間させる方向)にした構成でも実現可能である。但し、この構成とした場合、アクチュエータ(ピエゾアクチュエータ64又は人工筋肉アクチュエータ66)でワーク50、52を挟み込む力を与えるため電力消費の点では不利になるので、
図7や
図8に示した構成例のように、付勢部材62により第1挟持体12と第2挟持体14とを近接させる方向に付勢する構成が好ましい。
【0079】
また、
図7及び
図8に示した各構成例において、付勢部材62としてバネを用いた態様を示したが、これに限らず、例えば、ゴム等を用いてもよい。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0081】
10…万力、12…第1挟持体、14…第2挟持体、16…電動駆動機構、18…モータ、20…電池、22…操作部、24…リードスクリュー、26…螺合部、28A~28D…スイッチ、30…ツマミ、32…電圧計、34…電流計、36…マイコン、38…第1モータ制御部、40…第2モータ制御部、42…ウォーム、44…ウォームホイール、46…ホイール軸、48…ツマミ、50…ワーク、52…ワーク、60…回転軸、62…付勢部材、64…ピエゾアクチュエータ、66…人工筋肉アクチュエータ