(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】融雪剤散布装置、及びそれを備えた除雪車
(51)【国際特許分類】
E01H 10/00 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
E01H10/00 A
(21)【出願番号】P 2018022274
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2017048930
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158127
【氏名又は名称】岩崎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【氏名又は名称】戸川 委久子
(72)【発明者】
【氏名】四本木 久一
(72)【発明者】
【氏名】清水 康史
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-318880(JP,A)
【文献】特開平09-316840(JP,A)
【文献】特開平10-245825(JP,A)
【文献】実開昭48-064222(JP,U)
【文献】特開2008-308833(JP,A)
【文献】特開平10-250305(JP,A)
【文献】特開平08-025905(JP,A)
【文献】特開平06-158622(JP,A)
【文献】特開平11-293642(JP,A)
【文献】特開平06-211002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の除雪車から路上に融雪剤(D)を散布するための融雪剤散布装置であって、
上部に前記融雪剤(D)の収容部(11)を備え、かつ、下部に融雪剤(D)の吐出部(12)を備えたホッパー(1)と;このホッパー(1)の収容部(11)と吐出部(12)の間に設けられた薬剤排出装置(2)と;下部に基端側から先端側に向けて下るスロープ面(31)を有し、かつ、このスロープ面(31)が前記ホッパー(1)の吐出部(12)の下方にくるように配置された薬剤拡散板(3)とを含んで構成され、
前記薬剤排出装置(2)によりホッパー(1)内に収容された融雪剤(D)が吐出部(12)から放出されたとき、放出された融雪剤(D)を薬剤拡散板(3)のスロープ面(31)上でスロープ面(31)の横幅方向に拡散させつつ下方に落下させること
で、融雪剤を轍部分に散布することを特徴とする融雪剤散布装置。
【請求項2】
薬剤拡散板(3)のスロープ面(31)の横幅が250mm~600mmであることを特徴とする請求項1記載の融雪剤散布装置。
【請求項3】
ホッパー(1)の吐出部(12)が鉛直方向のパイプ部(12a)を備え、かつ、このパイプ部(12a)を薬剤拡散板(3)の横幅方向に分岐させて二つの放出口(R)(R)を備えた構造となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の融雪剤散布装置。
【請求項4】
薬剤排出装置(2)に、薬剤拡散板(3)の横幅方向に溝部(G)が形成された歯車型回転体(21)をモータ(22)によって回転駆動させるローター式のものが使用されていることを特徴とする請求項3記載の融雪剤散布装置。
【請求項5】
薬剤拡散板(3)の少なくとも一方の側縁部に側壁(32)が形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の融雪剤散布装置。
【請求項6】
請求項1記載の融雪剤散布装置(A)が、薬剤拡散板(3)をタイヤ(T)の前方または後方に配置した状態で設置されていることを特徴とする融雪剤散布装置を備えた除雪車。
【請求項7】
後輪二軸車において前後の後輪タイヤ(T)(T’)間に薬剤拡散板(3)を配置した状態で融雪剤散布装置(A)が設置されていることを特徴とする請求項6記載の融雪剤散布装置を備えた除雪車。
【請求項8】
走行中の除雪車から路上に液状の融雪剤を散布するための融雪剤散布装置(A)が、融雪剤を収納するための収容タンク(4)と;この収容タンク(4)に一端が接続され、かつ、他端に放出口(51)を備え、更に中間部位に開閉弁(52)が設けられて、当該開閉弁(52)を開放したときに前記収容タンク(4)内の融雪剤が放出口(51)から排出される吐出管(5)とを含んで構成される一方、
前記融雪剤散布装置(A)が、タイヤ(T)に融雪剤が掛かるように吐出管(5)の放出口(51)をタイヤ(T)上方に配置した状態で除雪車に設置されていること
で、液状の融雪剤を轍部分に散布することを特徴とする融雪剤散布装置を備えた除雪車。
【請求項9】
吐出管(5)の放出口(51)が後輪タイヤ(T)の上方に配置されると共に、後輪タイヤ(T)の前後中心線(L)よりも前側に配置されていることを特徴とする請求項8記載の融雪剤散布装置を備えた除雪車。
【請求項10】
収容タンク(4)が除雪車の車体の左右中央に配置されると共に、吐出管(5)が前記収容タンク(4)の両側に向けて二股に分岐した形状で形成されて、それぞれの分岐管(53)(53)の放出口(51)(51)が、除雪車の左右タイヤ(T)(T)の上方に配置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の融雪剤散布装置を備えた除雪車。
【請求項11】
走行中の除雪車から路上に液状の融雪剤を散布するための融雪剤散布装置であって、
前記融雪剤を収納するための収容タンク(4)と;この収容タンク(4)に一端が接続され、かつ、他端に放出口(51)を備え、更に中間部位に開閉弁(52)が設けられて、当該開閉弁(52)を開放したときに前記収容タンク(4)内の融雪剤が放出口から排出される吐出管(5)とを含んで構成される一方、
前記吐出管(5)が収容タンク(4)の両側に向けて二股に分岐した形状で形成されて、それぞれの分岐管(53)(53)の放出口(51)(51)が、除雪車の左右タイヤの間隔に応じた間隔で配置されていること
で、液状の融雪剤を轍部分に散布することを特徴とする融雪剤散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪車の融雪剤散布装置の改良、詳しくは、圧雪された轍部分に融雪剤を効率的に散布することができ、また融雪剤の塊や雪による目詰まりの問題も生じ難く、しかも、タイヤ後方に配置した場合でも跳ね上げ水が放出口にかかり難い融雪剤散布装置、及びそれを備えた除雪車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、除雪車の中には、積雪を溶かす目的や積雪の成長を抑える目的で融雪剤の散布装置が搭載されたものも多い。しかしながら、道路全体に融雪剤を散布するとなると大量の融雪剤が必要になって除雪コストが嵩むだけでなく、装置に積載した融雪剤の散布に伴い車両総重量が大きく減少してグレーダの除雪能力が低下する問題も生じる。
【0003】
そこで、従来においては、特にスリップ事故の原因となる轍部分の圧雪に融雪剤を集中的に散布する技術も公知となっているが(特許文献1参照)、この従来の融雪剤散布装置に関しては、タイヤ幅に形成された細長い放出口から融雪剤を散布していたため、融雪剤の塊や吹雪等で入り込んだ雪によって放出口が目詰まりを起こし易かった。
【0004】
しかも、上記従来の融雪剤散布装置は、後輪タイヤ後方に設置した場合に、融雪剤が吐出される放出口と後輪タイヤとの間に障害物が何もない状態となっていたことから、除雪車の走行中に後輪タイヤが跳ね上げ水が散布装置の放出口にかかってしまい、それが融雪剤の散布ムラに繋がって効率的な除雪を妨げる要因となっていた。
【0005】
一方、従来においては、アイスバーンの滑り止めを目的として道路上の轍部分に砂等を散布する装置も公知となっており、これらを融雪剤の散布に応用することも考えられるが、これらの技術に関しても、放出口をタイヤ幅に合わせて細長く形成したもの(特許文献2参照)や。噴射ノズルを用いたもの(特許文献3参照)しかなかったため、少量の融雪剤を効果的に散布することはできなかった。
【0006】
他方、融雪剤としては液状のものも存在しており、従来、除雪車の前方または後方位置から融雪剤を散布する技術(例えば、特許文献4参照)や、グレーダブレードの後側で融雪剤を散布する技術(特許文献5参照)も公知となっているが、これらの従来技術では除雪車の幅全体にわたって融雪剤を散布していたため、大量の融雪剤を使用する必要があった。
【0007】
そのため、上記固体の融雪剤を散布するケースと同様に、装置に積載した融雪剤の散布に伴い車両総重量が大きく減少してグレーダの除雪能力が低下する問題が生じていた。また上記液状の融雪剤を散布する従来の装置は、融雪剤を路面上に直接散布していたため、融雪剤の拡散機能を広角散布が行えるノズルに依存していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-245825号公報
【文献】特開昭48-45038号公報
【文献】特開2004-168232号公報
【文献】特開平8-218339号公報
【文献】特開平6-158622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、圧雪された轍部分に融雪剤を効率的に散布することができ、また融雪剤の塊や雪による目詰まりの問題も生じ難く、しかも、タイヤ後方に配置した場合に融雪剤の放出口に跳ね上げ水がかかって散布ムラを引き起こす心配もない融雪剤散布装置、及びそれを備えた除雪車を提供することにある。また本発明の目的は、液状の融雪剤を使用する場合において、圧雪された轍部分の積雪に対し融雪剤を効率的かつ効果的に散布でき、かつ、液状の融雪剤をノズル以外の方法で拡散できる融雪剤散布装置、及びそれを備えた除雪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0011】
即ち、本発明は、走行中の除雪車から路上に融雪剤Dを散布するための融雪剤散布装置において、上部に前記融雪剤Dの収容部11を備え、かつ、下部に融雪剤Dの吐出部12を備えたホッパー1と;このホッパー1の収容部11と吐出部12の間に設けられた薬剤排出装置2と;下部に基端側から先端側に向けて下るスロープ面31を有し、かつ、このスロープ面31が前記ホッパー1の吐出部12の下方にくるように配置された薬剤拡散板3とを含んで構成し、前記薬剤排出装置2によりホッパー1内に収容された融雪剤Dが吐出部12から放出されたとき、放出された融雪剤Dが薬剤拡散板3のスロープ面31上でスロープ面31の横幅方向に拡散しつつ下方に落下する
ことで、融雪剤を轍部分に散布するようにした点に特徴がある(
図1、
図2参照)。
【0012】
また本発明では、上記薬剤拡散板3のスロープ面31の横幅を250mm~600mmとすることにより、除雪車のタイヤ幅に合わせて融雪剤Dを拡散して散布することが可能となる(
図1参照)。
【0013】
また本発明では、上記ホッパー1の吐出部12に、鉛直方向のパイプ部12aを設けると共に、このパイプ部12aを薬剤拡散板3の横幅方向に分岐させて二つの放出口R・Rを備えた構造とすることにより、ダブルタイヤ(タイヤを並列に二本並べ、一輪につき同サイズのタイヤを二本使用する形態)の各タイヤ前方に融雪剤Dをそれぞれ散布することが可能となる(
図1~
図3参照)。
【0014】
また上記構成を採用する場合には、薬剤拡散板3の横幅方向に溝部Gが形成された歯車型回転体21をモータ22で回転駆動させるローター式の薬剤排出装置2を使用することにより、吐出部12の二つの放出口R・Rに融雪剤Dを均等に供給することができる(
図2、
図3参照)。
【0015】
また本発明においては、上記薬剤拡散板3の少なくとも一方の側縁部に側壁32を形成すれば、防風対策となるためホッパー1の吐出部12から放出された融雪剤Dが風で飛び散り難くなる。また薬剤拡散板3に側壁32を設ければスロープ面31上に雨や雪も入り難くなるため、スロープ面31の濡れも抑制できる(
図4参照)。
【0016】
そして、上記融雪剤散布装置Aについては、薬剤拡散板3をタイヤTの前方または後方に配置した状態で除雪車に設置して使用することができる。また特に後輪二軸車においては、前後の後輪タイヤT・T’間に薬剤拡散板3を配置した状態で融雪剤散布装置Aを設置するのが好ましい(
図5、
図6参照)。
【0017】
また本発明においては、走行中の除雪車から路上に液状の融雪剤を散布するための融雪剤散布装置Aを、融雪剤を収納するための収容タンク4と;この収容タンク4に一端が接続され、かつ、他端に放出口51を備え、更に中間部位に開閉弁52が設けられて、当該開閉弁52を開放したときに前記収容タンク4内の融雪剤が放出口51から排出される吐出管5とを含んで構成すると共に、前記融雪剤散布装置Aを、タイヤTに融雪剤が掛かるように吐出管5の放出口51をタイヤT上方に配置した状態で除雪車に設置することで、液状の融雪剤を轍部分に散布する構成とすることもできる。
【0018】
また上記構成を採用する場合には、吐出管5の放出口51を後輪タイヤTの上方に配置すると共に、後輪タイヤTの前後中心線Lよりも前側に配置することで、放出口51から排出された融雪剤がタイヤTに確実に掛かるように構成することもできる。
【0019】
加えて、上記構成を採用する場合には、収容タンク4を除雪車の車体の左右中央に配置すると共に、吐出管5を収容タンク4の両側に向けて二股に分岐した形状に形成して、それぞれの分岐管53・53の放出口51・51を、除雪車の左右タイヤT・Tの上方に配置することによって一つの収容タンク4から車体両側に融雪剤を散布することができる。
【0020】
なお上記のように融雪剤散布装置Aの吐出管5を、収容タンク4の両側に向けて二股に分岐した形状で形成する場合には、それぞれ分岐管53・53の放出口51・51を、除雪車の左右タイヤT・Tの間隔に応じた間隔で配置する必要がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、融雪剤の放出口の下方に薬剤拡散板を配置して、放出口から吐出された融雪剤を薬剤拡散板の横幅方向に拡散して散布できるように構成しているため、放出口の形状をタイヤ幅に合わせて細長く形成する必要はなく、融雪剤の塊や雪によって目詰まりが生じ難い寸法・形状(例えば円筒状や半円筒状)で放出口を設計することができる。
【0022】
また上記融雪剤散布装置をタイヤ後方に配置した場合には、薬剤拡散板がタイヤと融雪剤の放出口の間の障害物となって泥除け機能を発揮するため、除雪車の走行中にタイヤが跳ね上げた水が融雪剤の放出口にかかって散布ムラを引き起こす心配もない。そのため、少量の融雪剤をより均等に轍部分に散布することができる。
【0023】
また上記融雪剤散布装置をタイヤ前方に配置する場合には、散布した融雪剤を後方のタイヤで踏んで圧雪表面に強く圧接することができるため、鏡面状の圧雪表面に凹凸を形成して滑り止め効果を得やすくなる(なお後輪二軸車の前後の後輪タイヤ間に散布装置を配置する場合には、タイヤでの圧接効果と上記泥除け効果が両方得られる)。
【0024】
また本発明においては、液状の融雪剤を使用する融雪剤散布装置を、融雪剤の収容タンクに吐出管を設けて、この吐出管の放出口を除雪車の左右タイヤ上方に配置して構成しているため、左右タイヤに融雪剤を掛けて、タイヤ表面に付着した液状の融雪剤をタイヤで踏み付けることで圧雪表面に融雪剤を強く圧接することが可能となる。
【0025】
また上記の構成を採用したことによって、少量の融雪剤の散布でも轍部分の積雪に対し優れた融雪効果が得られるだけでなく、放出口から排出された融雪剤を回転しているタイヤで轢いてタイヤの幅方向に拡散させることも可能となるため、広角散布用のノズルに依存せずに融雪剤の拡散散布を行うことが可能となる。
【0026】
したがって、本発明により、融雪剤の使用量を抑制して除雪コストの低減を図りながらも優れた除雪効果や圧雪の成長抑制効果を得ることができ、しかも、除雪車への搭載位置を工夫してスリップ事故の要因となる圧雪の滑り止め効果も得られる融雪剤散布装置を提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施例1における融雪剤散布装置を表わす正面図及び側面図である。
【
図2】本発明の実施例1における融雪剤散布装置の使用状態を表す状態説明図である。
【
図3】本発明の実施例1における融雪剤散布装置の構造を表す説明図である。
【
図4】本発明の実施例1における薬剤拡散板の変形例を表す全体斜視図である。
【
図5】本発明の実施例1の融雪剤散布装置を設置した除雪車を表す上面図及び側面図である。
【
図6】本発明の実施例1における融雪剤散布装置の除雪車への設置方法を表す状態説明図である。
【
図7】本発明の実施例2における融雪剤散布装置を表わす上面図である。
【
図8】本発明の実施例2における融雪剤散布装置を表わす側面図である。
【
図9】本発明の実施例2の融雪剤散布装置を設置した除雪車を表す上面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
『実施例1』
本発明の実施例1について、
図1~
図6に基いて以下に説明する。なお同図において、符号1で指示するものは、ホッパーであり、符号2で指示するものは、薬剤排出装置である。また符号3で指示するものは、薬剤拡散板であり、符号Aで指示するものは、除雪車用の融雪剤散布装置である。
【0029】
「融雪剤散布装置の構成及び設置方法」
[1]基本構成について
まず融雪剤散布装置Aの基本構成について説明する。本実施例では、
図1(a)(b)に示すように、融雪剤(粉末状や顆粒状の塩化カルシウム、または塩化ナトリウム等)を運搬・放出するためのホッパー1と、このホッパー1の収容部11と吐出部12の間に設けられた薬剤排出装置2と、ホッパー1の下側に設けられた屈曲板状の薬剤拡散板3とから融雪剤散布装置Aを構成している。また薬剤拡散板3については、下部に基端側から先端側に向けて下るスロープ面31を形成すると共に、このスロープ面31がホッパー1の吐出部12の下方にくるように配置している。
【0030】
[2]散布機能について
図2(a)(b)に示すように、上記ホッパー1の収容部11に融雪剤Dを投入した後、薬剤排出装置2を稼働すれば、収容部11内の融雪剤Dを吐出部12から外部に放出することができる。またこの際、ホッパー1の吐出部12から放出された融雪剤Dは、薬剤拡散板3のスロープ面31に当たってスロープ面31上でスロープ面31の横幅方向に拡散しつつ落下するため、融雪剤Dを単純に吐出部12から放出するよりも広い幅にわたって散布することが可能となる。なお本実施例では、除雪車のタイヤ幅に合わせて融雪剤が拡散されるように薬剤拡散板3を配置・構成している。
【0031】
[3]ホッパーについて
次に上記融雪剤散布装置Aの各構成要素について説明する。まず上記ホッパー1に関しては、本実施例では、
図1~
図3に示すように、直方体型の金属製ボックス内側に漏斗状の収容部11を備え、かつ、鉛直方向のパイプ部12aとこのパイプ部12aの放出口Rから斜め下方向に延びるガイド部12bから成る吐出部12を備えたものを使用している。またホッパー1の収容部11の上側には蓋部11a付きの投入口を設けて融雪剤Dの投入を容易に行えるようにしている。
【0032】
なお上記ホッパー1の全体形状や材質に関しては、基本的な機能が得られれば特に限定されない。具体的には、本実施例では上記吐出部12のパイプ部12aを直管状に形成しているが、屈曲管状に形成することもできる。またパイプ部12aから放出された融雪剤Dを所定位置に導くガイド部12bに関しても、パイプ部12aの放出口Rの位置を調整して省略することができる。
【0033】
また本実施例では、
図1に示すように、上記吐出部12のパイプ部12aを、薬剤拡散板3の横幅方向に分岐させて放出口R・Rを二つ備えた構造としている。具体的には、
図1及び
図3に示すように、パイプ部12aの下端部に逆V字型のガイド部材を配置してパイプ部12aの放出口R・Rを二つに分割すると共に、逆V字型のガイド部材により各放出口Rから斜め下方向に延びる一対のガイド部12b・12bを形成している。
【0034】
[4]薬剤排出装置について
一方、上記薬剤排出装置2に関しては、本実施例では、
図3に示すように、歯車型回転体21をモータ22で回転駆動させるローター式の排出装置を使用している。特に本実施例では、薬剤拡散板3の横幅方向に溝部Gが形成された歯車型回転体21を備えた薬剤排出装置2を使用することにより、分岐させた吐出部12の各放出口R・Rに薬剤排出装置2から融雪剤を均等に供給できるようにしている。
【0035】
また上記薬剤排出装置2に関しては、除雪車の走行速度に合わせて歯車型回転体31の回転速度を調整する自動制御装置をモータ22に付設することもでき、その場合には、除雪車の走行速度が速い場合には融雪剤Dの放出量を多く、走行速度が遅い場合には融雪剤Dの放出量を少なくなるように制御することができる。また自動制御でなくとも走行中に手動制御が行えるように遠隔制御装置を付設することもできる。
【0036】
また上記薬剤排出装置2の排出方式に関しては、本実施例のように融雪剤Dの排出量の調整を精確かつ容易に行えるローター式の排出装置を採用することが好ましいが、それ以外の方式の排出装置を採用することもでき、具体的には、仕切り板をスライド駆動または揺動駆動させて排出を行う仕切り開閉型の排出装置や、スクリュー部材を回転駆動させて排出を行うスクリュー型の排出装置等を採用することもできる。
【0037】
[5]薬剤拡散板について
次に上記薬剤拡散板3に関しては、本実施例では、金属製の屈曲板を使用しているが、材質は耐久性を有する材料であればゴムやプラスチック等を採用することもできる。また本実施例では、薬剤拡散板3のスロープ面31の横幅を、除雪車のタイヤ幅に合わせて250mm~600mmの寸法で設計している。なお薬剤拡散板3のスロープ面31に関しては、本実施例では平面状に形成しているが、曲面状に形成することもできる。
【0038】
また上記薬剤拡散板3のホッパー1への固定手段に関しては、本実施例では、
図1~
図3に示すように、薬剤拡散板3の上端部をホッパー1の底面に付設されたチャンネル型の固定具Bにボルト・ナットで連結できるようにして、除雪車への設置を容易に行えるようにいる(具体的な設置構造は後述する)。但し、ホッパー1と薬剤拡散板3の固定手段はこれに限定されない。
【0039】
また上記薬剤拡散板3については、
図4に示すように、少なくとも一方の側縁部に側壁32を形成することもでき、その場合には、融雪剤散布装置Aを除雪車に設置した際の防風対策とすることができるため、ホッパー1の吐出部12から放出された融雪剤Dが風で飛び散り難くなる。また薬剤拡散板3に側壁32を設けることによりスロープ面31上に雨や雪も入り難くなるため、スロープ面31が雨や雪で濡れ難くなる。
【0040】
[6]除雪車への設置方法について
次に上記融雪剤散布装置Aの設置方法について説明する。まず
図5に示すように、除雪車CのタイヤTの前方または後方に薬剤拡散板3を配置した状態で融雪剤散布装置A・Aを設置する。また本実施例では、後輪側の左右タイヤT・Tの上方に二つの融雪剤散布装置A・Aを左右対称に配置すると共に、二軸後輪の左右の後側タイヤT前方に薬剤拡散板3がくるように融雪剤散布装置Aを設置している。
【0041】
上記のように融雪剤散布装置Aを設置することにより、走行中の除雪車CからタイヤT前方の路上に融雪剤Dを散布することができるため、融雪剤DをタイヤTで踏んで圧雪の表面を溶かし、圧雪表面に凹凸を付けて轍の滑りを抑制することができる。なお二軸後輪の前側タイヤT前方に融雪剤散布装置Aを設置して融雪剤Dを散布する場合も同様の効果が得られる。
【0042】
また本実施例では、ダブルタイヤを考慮してパイプ部12を薬剤拡散板3の横幅方向に分岐させ、放出口R・Rを二つ備えた構造としているため、ダブルタイヤの各タイヤT前方に対し融雪剤Dを散布することができる。また本実施例では、薬剤拡散板3を用いて散布範囲を広げているため、吐出口12の放出口Rをタイヤ幅に合わせて細長く形成する必要はなく、放出口Rの目詰まり等が発生する心配もない。
【0043】
また本実施例では、後輪二軸車において、前後の後輪タイヤT・T’間に薬剤拡散板3を配置した状態で融雪剤散布装置Aを設置しているため、融雪剤散布装置AのフェンダーFへの取り付けが容易に行える。具体的には、
図6に示すように、ホッパー1下部の固定具Bと薬剤拡散板3の上端部の間にフェンダーFを挟み込んだ状態でボルト・ナットで締結して取り付けできる。また本実施例では、ホッパー1下部に水平方向の支持具Sを介してもう一つチャンネル型の固定具B’を設け、前後の固定具B・B’で融雪剤散布装置Aを安定した状態でフェンダーFに取り付けている。
【0044】
また本実施例のように二軸後輪の前側タイヤT’後方に融雪剤散布装置Aを設置する場合には、薬剤拡散板3が泥除けの効果を発揮するため、二軸後輪の前側タイヤT’が跳ね上げた水がホッパー1の吐出部12にかかる心配もない。なお前輪タイヤや二軸後輪の後側タイヤTの後方に融雪剤散布装置Aを設置して融雪剤Dを散布する場合にも同様の効果が得られる。
【0045】
『実施例2』
次に本発明の実施例2について、
図7~
図9に基いて以下に説明する。なお同図において、符号4で指示するものは、液状の融雪剤を収容するための収容タンクであり、符号5で指示するものは、吐出管である。
【0046】
「融雪剤散布装置の構成及び設置方法」
[1]基本構成について
まず融雪剤散布装置Aの基本構成について説明する。この実施例2では、
図7及び
図8に示すように、液状の融雪剤を収納するための収容タンク4に対し吐出管5の一端を接続して融雪剤散布装置Aを構成している。そして、吐出管5の他端側に設けられた放出口51・51から、中間部位に設けられた開閉弁52を開放したときに、収容タンク4内の融雪剤が吐出管5を通って下方に排出されるようにしている。
【0047】
[2]設置方法と散布機能について
次に上記融雪剤散布装置Aの設置方法について説明する。本実施例では、
図9(a)(b)に示すように、収容タンク4を固定具B・Bによって除雪車Cの車体上に固定すると共に、吐出管5の放出口51を左右タイヤTの上方に配置している。これにより除雪作業中において、吐出管5の放出口51から融雪剤を下方のタイヤTに掛けながら散布することができるため、タイヤTによる融雪剤の踏み付けによって優れた融雪効果が得られる。
【0048】
[3]収容タンクについて
次に上記融雪剤散布装置Aの各構成要素について説明する。まず上記収容タンク4に関しては、本実施例では、
図7及び
図8に示すように投入口41を備えた所定大きさ(容量)の容器を除雪車Cの車体の左右中央に配置している。但し、複数の収容タンク4を使用することもでき、その場合には左右タイヤT・Tの近傍にそれぞれ配置することもできる。なお収容タンク4の材質は、金属製であってもプラスチック製であってもよい。
【0049】
[4]吐出管について
〔4-1〕吐出管の形状
また上記吐出管5に関しては、本実施例では、一つの収容タンク4から車体両側に融雪剤の散布が行えるように吐出管5を収容タンク4の両側に向けて二股に分岐した形状に形成し、更に各分岐管53・53の放出口51・51を除雪車Cの左右タイヤT・Tの上方に配置している。但し分岐していない形状の吐出管5を複数本使用することもでき、その場合には収容タンク4に各吐出管5を接続して、それぞれの吐出管5の放出口51・51を左右タイヤT・Tの上方に配置することができる。
【0050】
また本実施例のように分岐した吐出管5を使用する場合には、三股以上に分岐した吐出管5を使用して3箇所以上の位置(例えば、前後輪の左右タイヤの上方位置やダブルタイヤの左右に並んだ各タイヤの上方位置、後輪二軸車の前後に並んだ各後輪タイヤの上方位置)から融雪剤を散布できるようにすることもできる。
【0051】
また本実施例では、上記分岐管53・53の放出口51・51の間隔を、除雪車Cの左右タイヤT・Tの間隔に合わせて設計することにより、収容タンク4を車体の左右中央に配置したとき、放出口51・51が左右タイヤT・Tの上方に配置されるようにしている。また複数の収容タンク4を使用する場合には、各収容タンク4にそれぞれ分岐した、或いは分岐していない形状の吐出管5を接続して構成できる。
【0052】
また上記吐出管5の接続位置については、本実施例では収容タンク4から自重で融雪剤が排出されるように収容タンク4の側面部に接続しているが、収容タンク4の下面部に接続することもでき、またポンプ等を使用する場合には、収容タンク4の上側から吐出管5をタンク内に差し込んで接続することもできる。また本実施例では、吐出管5の形状を、放出口51が下向きになる形状としているが、放出口51が横向きになる形状を採用することもできる。
【0053】
また上記吐出管5の放出口51の孔形状に関しても、本実施例では断面円形型の孔形状を採用しているが、タイヤTの幅方向に沿った細長い孔形状を採用することもでき、また放出口51に複数の孔部を形成することもできる。また拡散散布が行えるように放出口51にオリフィスを設けることもできる。また吐出管5の太さも求められる融雪剤の排出量に応じて適宜変更でき、材質も金属製やプラスチック製のものを採用できる。
【0054】
また本実施例においては、上記吐出管5の放出口51を後輪タイヤTの上方に配置すると共に、後輪タイヤTの前後中心線Lよりも前側に配置することで、放出口51から排出された融雪剤がタイヤTに確実に掛かるようにしている。なお放出口51をタイヤTから離れた位置に配置すると排出された融雪剤が風等で後方に流されてタイヤTに掛かり難くなるため、放出口51はできるだけタイヤTに近い位置に配置するのが好ましい。
【0055】
〔4-2〕開閉弁
また上記吐出管5に設ける開閉弁52に関しては、本実施例では遠隔制御が可能な電磁バルブを採用して、除雪作業中に運転席から融雪剤散布の開始と停止を遠隔操作できるようにしているが、収容タンク4が運転席に近い位置に配置される場合には、手動バルブを採用することもできる。また開閉弁52の配置については、本実施例では、吐出管5の分岐前の部分に配置しているが、各分岐管53・53にそれぞれ開閉弁52を設けることもできる。
【0056】
〔4-3〕流量調節弁
また本実施例では、
図7及び
図8に示すように、上記吐出管5の中間部分に流量調節弁54・54を設けて融雪剤の排出量を適宜調整できるようにしている。なお本実施例では、流量調節弁54・54に手動バルブを採用して除雪作業前に予め任意の流量に調整できるようにしているが、遠隔制御が可能な電磁バルブを用いて除雪作業中に運転席から流量調節を行えるようにすることもできる。また流量調節弁54の配置については、本実施例では各分岐管53・53にそれぞれ配置しているが、分岐前の部分に配置することもできる。
【0057】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、融雪剤散布装置Aの設置対象には、シングルタイヤの除雪車や一軸後輪の除雪車も含まれ、設置位置に関しても前輪側や最後尾に設置することもでき、何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0058】
1 ホッパー
11 投入口
11a 蓋部
12 吐出部
12a パイプ部
12b ガイド部
2 薬剤排出装置
21 歯車型回転体
22 モータ
3 薬剤拡散板
31 スロープ面
32 側壁
4 収容タンク
41 投入口
5 吐出管
51 放出口
52 開閉弁
53 分岐管
54 流量調節弁
A 融雪剤散布装置
D 融雪剤
R 放出口
G 溝部
B 固定具
C 除雪車
T タイヤ
F フェンダー
L 前後中心線