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特許7002742貼付剤用支持体、貼付剤、加工ローラ及び貼付剤用支持体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】貼付剤用支持体、貼付剤、加工ローラ及び貼付剤用支持体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20220113BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61F13/02 310M
A61F13/02 370
A61F13/02 390
A61K9/70 401
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017131124
(22)【出願日】2017-07-04
(65)【公開番号】P2019013322
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592132729
【氏名又は名称】服部猛株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】青木 健人
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-231812(JP,A)
【文献】特開2007-167416(JP,A)
【文献】特開平9-220847(JP,A)
【文献】特開平2-29317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/02
A61K9/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼付剤用支持体であって、
前記貼付剤用支持体の一方の面に形成され、所定の文字を形成する凹部である文字形成凹部を備え、
前記文字形成凹部は、前記文字の筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凹部である複数の要素凹片によって構成され
前記複数の要素凹片のそれぞれは、前記貼付剤用支持体の平面視において長手方向を有する形状であり、
1つの前記文字の中で、当該文字の筆運びの方向に沿って前記複数の要素凹片の前記長手方向の向きが滑らかに変化している、貼付剤用支持体。
【請求項2】
請求項1に記載の貼付剤用支持体であって、
前記複数の要素凹片のそれぞれは、前記貼付剤用支持体の平面視において形状及び大きさが互いに同一である、貼付剤用支持体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の貼付剤用支持体であって、
前記複数の要素凹片のそれぞれは、前記筆運びの方向に沿って等間隔に離間して形成されている、貼付剤用支持体。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の貼付剤用支持体であって、
前記複数の要素凹片のそれぞれは、前記貼付剤用支持体の平面視において直線状である、貼付剤用支持体。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の貼付剤用支持体であって、
前記複数の要素凹片のそれぞれは、前記貼付剤用支持体の平面視においてドット状である、貼付剤用支持体。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の貼付剤用支持体と、
前記貼付剤用支持体における前記一方の面と反対側の面上に配置され、製剤成分を持つ粘着剤層と、
を備える貼付剤。
【請求項7】
加工対象に凹部を形成するための加工ローラであって、
円筒状のローラ本体と、
前記ローラ本体の外周面に立設するように形成され、前記加工対象に所定の文字を表す凹部を形成するための凸部である文字形成凸部と、
を備え、
前記文字形成凸部は、前記文字の筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凸部である複数の要素凸片によって構成され
前記複数の要素凸片のそれぞれは、前記加工ローラの正面視において長手方向を有する形状であり、
1つの前記文字の中で、当該文字の筆運びの方向に沿って前記複数の要素凸片の前記長手方向の向きが滑らかに変化している、加工ローラ。
【請求項8】
凹部が形成された貼付剤用支持体の製造方法であって、
前記貼付剤用支持体の一方の面に所定の文字を表す凹部を形成するための凸部である文字形成凸部がローラ本体の外周面に立設するように形成された加工ローラであって、前記文字形成凸部は、前記文字の筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凸部である複数の要素凸片によって構成され、前記複数の要素凸片のそれぞれは、前記加工ローラの正面視において長手方向を有する形状であり、1つの前記文字の中で、当該文字の筆運びの方向に沿って前記複数の要素凸片の前記長手方向の向きが滑らかに変化している前記加工ローラの前記文字形成凸部を、前記貼付剤用支持体の前記一方の面に押圧することと、
前記文字形成凸部が前記貼付剤用支持体に押圧された状態において、工具ホーンにより前記貼付剤用支持体に振動を加え、前記貼付剤用支持体における前記文字形成凸部との接触面近傍の部分に前記振動による摩擦熱を発生させ、前記文字形成凸部に対応した凹部を前記貼付剤用支持体に形成することと、
を備える支持体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、貼付剤用支持体、貼付剤、加工ローラ及び貼付剤用支持体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、消炎鎮痛薬、気管支拡張薬、心疾患治療薬、骨粗鬆症治療薬、癌疼痛治療薬、局所麻酔薬等の種々の治療分野において貼付剤が使用されている。
特許文献1には、貼付剤に適用されている薬剤等を視認できるようにするため、適用中の薬剤の名称等を表す凹部を貼付剤の支持体の表面に形成することにより該薬剤等を視認可能とした貼付剤が開示されている。この種の貼付剤は、患部に貼られるときは一般に引き延ばして貼られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-151916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の貼付剤では、貼付剤が患部に貼られるときなど貼付剤に外力が加えられたとき、支持体に形成された凹部の一部が裂ける場合がある。そして、裂けた一部を起点として凹部における該一部に連続する他の箇所も裂け、貼付剤が破断することがある。
【0005】
本開示の一局面は、外力が加わったときに破断しにくい貼付剤用支持体又はこれを用いた貼付剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、貼付剤用支持体であって、文字形成凹部を備える。文字形成凹部は、貼付剤用支持体の一方の面に形成され、所定の文字を形成する凹部である。文字形成凹部は、文字の筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凹部である複数の要素凹片によって構成されている。
【0007】
このような構成によれば、隣接する要素凹片の間に要素凹片よりも厚みが大きい部分が位置する。よって、貼付剤用支持体に外力が加わり、仮に複数の要素凹片のうちの1つが裂けたとしても、隣接する要素凹片が裂けにくい。したがって、文字の筆運びの方向に沿って凹部が断続的に形成されている場合と比較して、外力が加わったときに貼付剤用支持体又はこれを用いた貼付剤を破断しにくくすることができる。
【0008】
本開示の一態様は、複数の要素凹片のそれぞれが、貼付剤用支持体の平面視において形状及び大きさが互いに同一であってもよい。なお、ここでいう「同一」とは、厳密な意味での同一に限るものではなく、目的とする効果を奏するのであれば厳密に同一でなくてもよい。
【0009】
このような構成によれば、例えば複数の要素凹片の形状及び大きさがバラバラである場合と比較して、文字形成凹部の表す文字の識字性を向上させることができる。
本開示の一態様は、複数の要素凹片のそれぞれが、筆運びの方向に沿って等間隔に離間して形成されていてもよい。なお、ここでいう「等間隔」とは、厳密な意味での等間隔に限るものではなく、目的とする効果を奏するのであれば厳密に等間隔でなくてもよい。
【0010】
このような構成によれば、隣接する要素凹片の間隔が一定に保たれる。このため、隣接する要素凹片の間隔が一定でない(バラバラである)場合と比較して、隣接する要素凹片の端部同士が連続することを抑制できる。ひいては、1つの要素凹片が裂けたときに他の要素凹片が裂けやすくなることを抑制できる。
【0011】
本開示の一態様は、複数の要素凹片のそれぞれが、貼付剤用支持体の平面視において長手方向を有する形状であり、平面視において複数の要素凹片のそれぞれの長手方向が共通の一の方向に平行であってもよい。なお、ここでいう「平行」とは、厳密な意味での平行に限るものではなく、目的とする効果を奏するのであれば厳密に平行でなくてもよい。
【0012】
このような構成によれば、複数の要素凹片のそれぞれの長手方向が共通の一の方向に平行である構成でない(例えば長手方向の向きがバラバラである)場合と比較して、文字形成凹部の表す文字の識字性を向上させることができる。
【0013】
本開示の一態様は、上記一の方向が、複数の要素凹片のそれぞれの長手方向が筆運びの方向に対して傾くような方向であってもよい。
このような構成によれば、複数の要素凹片のそれぞれの長手方向が文字の筆運びの方向に沿っているような場合と比較して、隣接する要素凹片の端部同士が連続することを抑制できる。ひいては、1つの要素凹片が裂けたときに他の要素凹片が裂けやすくなることを抑制できる。
【0014】
本開示の一態様は、複数の要素凹片のそれぞれが、貼付剤用支持体の平面視において長手方向を有する形状であり、平面視において複数の要素凹片のそれぞれの長手方向が筆運びの方向に沿うように形成されていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、要素凹片の長手方向及び長手方向に直交する幅方向の長さを調節することにより、文字形成凹部の表す文字の識字性を向上させることができる。
本開示の一態様は、複数の要素凹片のそれぞれが、貼付剤用支持体の平面視において直線状であってもよい。また、本開示の一態様は、複数の要素凹片のそれぞれが、貼付剤用支持体の平面視においてドット状であってもよい。
【0016】
これらの構成によれば、複数の要素凹片のそれぞれが複雑な形状である場合と比較して、要素凹片の形状がシンプルであるため、文字形成凹部の表す文字の識字性を向上させることができる。
【0017】
本開示の別の態様は、貼付剤であって、上記貼付剤用支持体と、粘着剤層と、を備える。粘着剤層は、貼付剤用支持体における一方の面と反対側の面上に配置され、製剤成分を持つ。
【0018】
このような構成によれば、文字の筆運びの方向に沿って凹部が断続的に形成されている場合と比較して、外力が加わったときに貼付剤を破断しにくくすることができる。
本開示の別の態様は、加工対象に凹部を形成するための加工ローラであって、ローラ本体と、文字形成凸部と、を備える。ローラ本体は、円筒状である。文字形成凸部は、ローラ本体の外周面に立設するように形成され、加工対象に所定の文字を表す凹部を形成するための凸部である。文字形成凸部は、文字の筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凸部である複数の要素凸片によって構成されている。
【0019】
このような構成によれば、該加工ローラで加工対象に凹部を形成した際に、加工対象には、凹部により所定の文字が形成される。また、該文字は、筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凹部である複数の要素凹片によって構成される。よって、文字の筆運びの方向に沿って凸部が断続的に形成されている場合と比較して、外力が加わったときに破断しにくい貼付剤用支持体又はこれを用いた貼付剤を提供できる。
【0020】
本開示の一態様は、以下の構成であってもよい。すなわち、複数の要素凸片のそれぞれが、加工ローラの正面視において長手方向を有する形状であり、正面視において複数の要素凸片のそれぞれの長手方向が共通の一の方向に沿うように形成されており、共通の一の方向が正面視においてローラ本体の軸方向と直交する方向である。なお、ここでいう「直交」とは、厳密な意味での直交に限るものではなく、目的とする効果を奏するのであれば厳密に直交でなくてもよい。
【0021】
このような構成によれば、複数の要素凸片のそれぞれの長手方向が加工ローラの回転方向と一致する。よって、加工対象に凹部を形成する際の加工性を向上させることができる。
本開示の別の態様は、凹部が形成された貼付剤用支持体の製造方法である。当該製造方法は、加工ローラの文字形成凸部を、貼付剤用支持体の一方の面に押圧することを備える。加工ローラは、貼付剤用支持体の一方の面に所定の文字を表す凹部を形成するための凸部である文字形成凸部がローラ本体の外周面に立設するように形成された加工ローラである。文字形成凸部は、文字の筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凸部である複数の要素凸片によって構成されている。
【0022】
また、当該製造方法は、文字形成凸部が貼付剤用支持体に押圧された状態において、工具ホーンにより貼付剤用支持体に振動を加え、貼付剤用支持体における文字形成凸部との接触面近傍の部分に振動による摩擦熱を発生させ、文字形成凸部に対応した凹部を貼付剤用支持体に形成することを備える。
【0023】
このような製造方法によれば、振動による摩擦熱により貼付剤用支持体に所定の文字が形成される。また、該文字は、筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凹部である複数の要素凹片によって構成される。よって、文字の筆運びの方向に沿って凹部が断続的に形成されている場合と比較して、外力が加わったときに破断しにくい貼付剤用支持体又はこれを用いた貼付剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1Aは超音波溶着機の側面図、図1Bは超音波溶着機の正面図である。
図2】加工ローラに形成される凸部のパターンを示す図(1)である。
図3】貼付剤の側面図である。
図4】加工ローラに形成される凸部のパターンを示す図(2)である。
図5】加工ローラに形成される凸部のパターンを示す図(3)である。
図6】凹部が形成された後の貼付剤の平面図である。
図7】貼付剤に形成される凹部のパターンを示す図(1)である。
図8】貼付剤に形成される凹部のパターンを示す図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
[1.構成]
<超音波溶着機>
図1A及び図1Bに示す超音波溶着機1は、加圧部2と、超音波振動部3と、を備える。加圧部2と超音波振動部3とは、台4を挟んで対向配置されている。加圧部2が台4に対して上方、超音波振動部3が台4に対して下方に配置されている。超音波溶着機1は、台4に載置された加工対象(本実施形態では貼付剤用支持体)に対して、超音波振動による摩擦熱を発生させ、所望の凹凸模様を形成するための装置である。
【0026】
加圧部2は、加工ローラ21と、支持部22と、ローラ駆動モータ23と、を備える。
加工ローラ21は、図2A及び図2Bに示すように、ローラ本体211と、凸部212と、を有している。図2Aは加工ローラ21の正面図、図2Bは加工ローラ21の斜視図である。加工ローラ21は、金属製である。加工ローラ21に用いられる金属素材としては例えば、鋼、鋳鉄、銅、アルミ合金、ステンレススチール等が挙げられる。
【0027】
ローラ本体211は、円筒状であり、軸方向両端の面の中央部から軸部211aが突出形成されている。
凸部212は、ローラ本体211の外周面(円筒の側面)に立設するように形成されている。凸部212の形状等については後述する。
【0028】
図1A及び図1Bに示す支持部22は、台4の表面から上方に伸張してから横方向に屈曲し、横方向に所定長延在してから下方に屈曲した略U字状のアームである。支持部22は、その先端にて加工ローラ21の軸部211aを軸支する。これにより、加工ローラ21が支持部22により回動可能に支持される。なお、図1Bでは、支持部22の台4の表面から上方に伸張した部分は図示を省略している。
【0029】
また、支持部22には、ローラ昇降レバー221が設けられている。操作者はローラ昇降レバー221を操作することで、台4に対する加工ローラ21の高さ(すなわち、加工対象と加工ローラ21との距離)を調節する。
【0030】
ローラ駆動モータ23は、加工ローラ21を回転させるためのモータである。ローラ駆動モータ23は、支持部22に内蔵される。
一方、超音波振動部3は、加工対象に対して振動を加えるための装置である。超音波振動部3は、工具ホーン31と、超音波発振機32と、を備える。
【0031】
工具ホーン31は、超音波発振機32に取り付けられ、超音波発振機32により振動される。工具ホーン31は加工対象に接触し、工具ホーン31が振動することで加工対象が振動する。
【0032】
超音波発振機32は、工具ホーン駆動モータ321を備え、工具ホーン駆動モータ321により工具ホーン31を振動させる。超音波発振機32は、例えば20kHz程度の超音波振動を印加できる。
【0033】
本実施形態では、工具ホーン31と加工ローラ21の凸部212との間に加工対象が配置され、回転した加工ローラ21の凸部212が加工対象に押圧される。工具ホーン31は一定周期で振動し、該振動が加工対象に伝達されることで、加工対象が振動する。そして、加工対象に加工ローラ21の凸部212が圧接された状態において、加工対象が振動することによって、加工対象における加工ローラ21の凸部212との接触面で超音波振動に伴う摩擦熱が発生し、接触面近傍の部分が溶着される。その結果、加工対象における加工ローラ21の凸部212によって圧接される部分には凸部212に応じた凹部が形成され、圧接されない部分は元の状態に保たれる。このようにして加工ローラ21の凸部212の形状に応じた凹凸模様が加工対象に形成される。
<貼付剤の組成>
図3に示す本実施形態の貼付剤5は、厚みが300~1500μmのシートであって繊維からなるシートである支持体層51と、支持体層51の一方の面に配置され、製剤成分を持つ粘着剤層52と、を備える。後述するように、支持体層51として用いられる貼付剤用支持体に超音波溶着機1により凹部を形成し、凹部が形成された貼付剤用支持体に粘着剤層52を積層することで、貼付剤5が製造される。本実施形態では、貼付剤5はプラスター剤(テープ剤)である。
【0034】
支持体層51の材料として用いられる布は、例えば、緯メリヤス編、経メリヤス編の編布のほか、経糸と緯糸を編成した織物、不織布、レースを包含する。
編布の目付としては、60~150g/m2の範囲が好ましい。目付が60g/m2未満では、得られる貼付剤の自己支持性が不足するため貼付剤を貼付する際の操作が困難となるばかりか、粘着剤が裏じみしやすい傾向にある。また、目付が150g/m2を超えると、裏じみを防止する観点からは好ましいものの布帛の伸長性が低下する傾向にある。また、身体に貼付後、衣服との摩擦により剥がれやすくなってしまう傾向がある。
【0035】
本実施形態では、支持体層51として、厚みが約500μm、目付が約100g/m2の編布が使用される。
編布の繊維の主材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ビニロン等のポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂の1種を単独で又は2種以上を混合したものが挙げられる。このような編布の繊維の主材質としては、薬物をはじめとする粘着剤成分の保存安定性の観点からポリエステルが好ましい。また、編布には、主材質の繊維にレーヨン等のセルロース繊維や、綿等を加えることもできる。
【0036】
また、編布の編成としては特に制限されないが、例えば、ポリエステル製マルチフィラメント糸を用いて、編地の密度をコース20~50/インチ、ウェル20~50/インチとする編成が挙げられる。また、このようなゴム編は丸編であっても横編、経編であってもよい。このようなゴム編の編布は縦横斜めといった全方向の伸縮性に優れたものとなる傾向にある。
【0037】
本実施形態では、支持体層51には、糸の太さが56デシテックス(又は50デニール)のポリエチレンテレフタレートを主材質とする繊維が使用される。
なお、支持体層51の材料として織物を用いる場合、使用される織物は特に限定されず、例えば、平織り、綾織、朱子織等の基本組織が挙げられる。
【0038】
一方、粘着剤層52には、目的とする疾病治療又は予防のため、薬物を含有させることができる。このような薬物としては特に限定されないが、例えば、麻酔薬、鎮痛薬、解熱消炎鎮痛薬、ステロイドホルモン、興奮・覚醒薬、精神神経用薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自立自律神経用薬、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、血管拡張薬、カルシウム拮抗薬、抗殺菌薬、寄生性皮膚疾患用薬、皮膚軟化薬、抗生物質、解毒薬、鎮咳きょ痰薬、鎮痒薬、催眠薬、喘息薬、ホルモン分泌促進薬、抗潰瘍薬、制癌薬、ビタミン類、コリン作動薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、卵胞ホルモン、黄体ホルモン、抗真菌薬、抗パーキンソン病薬、制吐薬、向精神薬、非ステロイド消炎鎮痛薬が挙げられる。また、このような薬物の配合量は特に限定されず、治療、予防の目的に応じて適宜配合させればよい。
【0039】
粘着剤層52においては、熱可塑性ゴムを含有させる場合に、実質的に水分を含有しないこと(保管時(患部に貼付していないとき)には粘着剤層全体に対して水分の含有量が1質量%以下程度)が好ましい。実質的に水分を含有しないことによって、結晶化を十分に防止できる傾向にある。
【0040】
また、保存中の保護のために粘着剤層52に図示しない離型ライナーを被覆積層することができる。離型ライナーは、貼付剤5を使用する際には剥離される。離型ライナーは、フィルム、紙状のもの、あるいはこれらを積層したもの等、特に限定されないが、フィルムが好ましい。
<加工ローラの凸部の形状>
次に、図2A及び図2Bを用いて加工ローラ21の凸部212の形状について説明する。凸部212は、貼付剤用支持体に所定の文字を表す凹部を形成するためのものである。本実施形態では、アルファベットの文字「A」、「E」、「Q」にそれぞれ対応した3つの文字形成凸部213~215が凸部212として形成されている。なお、文字形成凸部213~215は、ローラ本体211の軸方向に沿って一列に並んで形成されている。
【0041】
文字形成凸部213~215のそれぞれは、該文字形成凸部213~215が形成する文字「A」、「E」、「Q」の筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凸部である複数の要素凸片213a~215aによって構成されている。つまり、貼付剤用支持体に形成される文字の筆運びの方向に沿って断続的に凸部が形成されているのではなく、凸部が途切れ途切れ形成されている。なお、「筆運びの方向」とは、その文字を書く際に筆先を動かす方向である。具体的には例えば、図7のパターン1(上から1番目のパターン。他のパターンも同様。)に示すように、文字「A」の筆運びの方向は、矢印L1~L3で示される方向である。文字「E」の筆運びの方向は、矢印L4~L7で示される方向である。文字「Q」の筆運びの方向は、矢印L8~L9で示される方向である。
【0042】
本実施形態では、図2A及び図2Bに示すように、複数の要素凸片213a~215aはすべてが形状及び大きさが同一である。具体的には、複数の要素凸片213a~215aはすべて略直方体状の突起である。つまり、ローラ本体211の外周面に対向してローラ本体211を見たとき(つまり、図2Aに示すローラ本体211の正面視において)、複数の要素凸片213a~215aは長手方向を有する形状、具体的には直線状である。ここで、ある要素凸片が「直線状である」とは、ローラ本体の正面視においてその要素凸片が直線又は直線に近似した線に沿って延在した形状であり、かつ、その要素凸片が延在する方向(長手方向)に直交する幅方向の長さが略一定である形状を意味する。
【0043】
また、文字形成凸部213~215のそれぞれについて、該文字形成凸部213~215を構成する複数の要素凸片213a~215aは共通の一の方向に平行である。特に、本実施形態では、文字形成凸部213~215のそれぞれの上記一の方向は、互いに同一方向である。つまり、複数の要素凸片213a~215aのそれぞれの長手方向はすべて互いに平行である。
【0044】
本実施形態では、上記一の方向は、ローラ本体211の正面視において、ローラ本体211の軸方向及び該軸方向に直交する方向のいずれの方向に対しても傾いた方向である。詳細には、上記共通の一の方向はローラ本体211の軸方向に対して45度の角度で傾いており、図2Aにおいては複数の要素凸片213a~215aは左下から右上に亘って延在している。
【0045】
また、上記一の方向は、例えば文字形成凸部213に着目すると、該文字形成凸部213を構成する複数の要素凸片213aのそれぞれの長手方向が、該文字形成凸部213が形成する文字「A」の筆運びの方向に対して傾くような方向である。ここでいう「筆運びの方向」は、その要素凸片213aが位置している箇所における該文字形成凸部213の表す文字「A」の筆運びの方向を意味する。文字形成凸部214,215についても同様である。また、複数の要素凸片213a~215aは、筆運びの方向に沿って要素凸片213a~215aが1つずつ等間隔で配置されている。
<貼付剤用支持体の製造方法>
次に、凹部が形成された貼付剤用支持体の製造方法について説明する。
【0046】
前述のとおり、加工ローラ21の凸部212と工具ホーン31の先端とが狭い隙間を有するように、加工ローラ21と工具ホーン31とを対向させて配置する。そして、ローラ駆動モータ23により加工ローラ21が回転し、工具ホーン駆動モータ321により工具ホーン31が振動している状態において、加工ローラ21と工具ホーン31との隙間に貼付剤用支持体を流し込む。本実施形態では、所定速度で所定方向(以下、流れ方向)に沿って貼付剤用支持体が流し込まれる。超音波溶着機1の平面視において、この流れ方向は、ローラ本体211の軸方向と直交する方向である。
【0047】
そして、ローラ本体211の文字形成凸部213~215が、貼付剤用支持体の一方の面に押圧される。そして、文字形成凸部213~215が貼付剤用支持体に押圧された状態において、工具ホーン31により貼付剤用支持体に振動を加える。そして、該貼付剤用支持体における文字形成凸部213~215との接触面近傍の部分に振動による摩擦熱を発生させ、接触面近傍の部分を溶着させる。その結果、文字形成凸部213~215に対応した凹部を貼付剤用支持体が形成される。なお、凹部が形成された貼付剤用支持体に粘着剤層52が積層されることで、貼付剤5が製造される。
<加工対象の凹部の形状>
次に、上記の製造方法により製造される貼付剤5の凹部の形状について図6及び図7を用いて説明する。本実施形態の凹部の形状は図7のパターン1である。図7では、支持体層51の粘着剤層52が配置されていない他方の面に対向して該他方の面を見たとき(つまり、図6に示す貼付剤5の平面視において)、凹部を含む一部分をクローズアップし、示している。なお、貼付剤5の平面視と貼付剤用支持体の平面視とは同義である。また、図7では、凹部のパターンをわかりやすくするため、凹部を簡略化して示している。
【0048】
貼付剤5の支持体層51には、所定の文字を形成する凹部である複数(この例では6つ)の文字形成凹部413~418が形成されている。文字形成凹部413,416は文字形成凸部213に対応するものであり、文字「A」を視認可能に表す。また、文字形成凹部414,417は文字形成凸部214に対応するものであり、文字「E」を視認可能に表す。また、文字形成凹部415,418は文字形成凸部215に対応するものであり、文字「Q」を視認可能に表す。なお、文字形成凹部413~415又は文字形成凹部416~418は、貼付剤5の平面視において横一列に並ぶように形成されている。
【0049】
文字形成凹部413~418のそれぞれは、該文字形成凹部413~418が形成する文字「A」、「E」、「Q」の筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凹部である複数の要素凹片413a~418aによって構成されている。つまり、貼付剤5に形成される文字の筆運びの方向に沿って断続的に凹部が形成されているのではなく、凹部が途切れ途切れ形成されている。
【0050】
本実施形態では、複数の要素凹片413a~418aのそれぞれは、貼付剤5の平面視において形状及び大きさが同一である。また、複数の要素凹片413a~418aの深さ、換言すれば、貼付剤5における要素凹片413a~418aが形成されている部分の厚みはすべて同一である。
【0051】
複数の要素凹片413a~418aは、貼付剤5の平面視においてすべて長手方向を有する形状、具体的には直線状である。ここで、ある要素凹片が「直線状である」とは、貼付剤の平面視においてその要素凹片が直線又は直線に近似した線に沿って延在した形状であり、かつ、その要素凹片が延在する方向(長手方向)に直交する幅方向の長さが略一定である形状を意味する。
【0052】
文字形成凹部413~418のそれぞれについて、該文字形成凹部413~418を構成する複数の要素凹片413a~418aは共通の一の方向に平行である。特に、本実施形態では、文字形成凹部413~418のそれぞれの上記一の方向は、互いに同一方向である。つまり、複数の要素凹片413a~418aのそれぞれの長手方向はすべて互いに平行である。
【0053】
本実施形態では、共通の一の方向は、図6に示す文字形成凹部の正面視において右下から左上に向かう方向である。ここでいう「文字形成凹部の正面視」とは、その文字形成凹部の表す文字が正しく視認できる見え方(文字が逆さまだったり傾いたりしていない見え方)を意味する。
【0054】
また、この一の方向は、例えば文字形成凹部413に着目すると、該文字形成凹部413を構成する複数の要素凹片413aのそれぞれの長手方向が、図6に示す該文字形成凹部413が形成する文字「A」の筆運びの方向L1~L3に対して傾くような方向である。また、筆運びの方向L1~L3に沿って要素凹片413aが1つずつ等間隔で配置されている。文字形成凹部414~418についても同様である。
【0055】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態では、貼付剤5の支持体層51は文字形成凹部413~418を備え、該文字形成凹部413~418は、文字の筆運びの方向に沿って互いに離間した複数の凹部である複数の要素凹片413a~418aによって構成されている。
【0056】
したがって、例えば文字形成凹部413に着目すると、該文字形成凹部413における隣接する要素凹片413aの間に要素凹片413aよりも厚みが大きい部分が位置する。よって、貼付剤5に外力が加わり、仮に複数の要素凹片413aのうちの1つが裂けたとしても、隣接する要素凹片413aが裂けにくい。したがって、文字の筆運びの方向に沿って凹部が断続的に形成されている場合と比較して、外力が加わったときに貼付剤5を破断しにくくすることができる。
【0057】
(2)本実施形態では、例えば文字形成凹部413に着目すると、該文字形成凹部413を構成する複数の要素凹片413aのそれぞれは、貼付剤5の平面視において形状及び大きさが互いに同一である。
【0058】
したがって、例えば複数の要素凹片413aの形状及び大きさがバラバラである場合と比較して、文字形成凹部413の表す文字の識字性を向上させることができる。
(3)本実施形態では、例えば文字形成凹部413に着目すると、複数の要素凹片413aのそれぞれが、筆運びの方向L1~L3に沿って等間隔に離間して形成されている。
【0059】
したがって、隣接する要素凹片413aの間隔が一定に保たれる。このため、隣接する要素凹片413aの間隔が一定でない(例えばバラバラである)場合と比較して、隣接する要素凹片413aの端部同士が連続することを抑制できる。ひいては、1つの要素凹片413aが裂けたときに他の要素凹片413aが裂けやすくなることを抑制できる。
【0060】
(4)本実施形態では、例えば文字形成凹部413に着目すると、貼付剤5の平面視において複数の要素凹片413aのそれぞれの長手方向が共通の一の方向に平行である。
したがって、複数の要素凹片413aのそれぞれの長手方向が共通の一の方向に沿わない(例えば長手方向の向きがバラバラである)場合と比較して、文字形成凹部413の表す文字の識字性を向上させることができる。
【0061】
(5)本実施形態では、上記一の方向は、例えば文字形成凹部413に着目すると、複数の要素凹片413aのそれぞれの長手方向が筆運びの方向L1~L3に対して傾くような方向である。
【0062】
したがって、複数の要素凹片413aのそれぞれの長手方向が文字の筆運びの方向L1~L3に沿っているような場合と比較して、隣接する要素凹片413aの端部同士が連続することを抑制できる。ひいては、1つの要素凹片413aが裂けたときに他の要素凹片413aが裂けやすくなることを抑制できる。
【0063】
(6)本実施形態では、複数の要素凹片413a~418aのそれぞれは、貼付剤5の平面視において直線状である。
したがって、複数の要素凹片のそれぞれが複雑な形状である場合と比較して、要素凹片413a~418aの形状がシンプルであるため、文字形成凹部413~418の表す文字の識字性を向上させることができる。
【0064】
また、貼付剤5に用いられる貼付剤用支持体に凹部を形成する加工時において、直線の長手方向に直交する幅方向の長さを変えることで溶着幅の調節が行われるため、要素凹片413a~418aの形状が直線状以外の形状である場合と比較して、溶着幅の調節を容易に行うことができる。
【0065】
[3.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0066】
(1)加工ローラの凸部は上記実施形態のものに限られない。
(1a)図2C及び図2Dに示すように、ローラ本体531の正面視において複数の要素凸片533a~535aのそれぞれの長手方向が共通の一の方向に沿うように形成されており、共通の一の方向が正面視においてローラ本体531の軸方向と直交する方向であってもよい。
【0067】
このような構成によれば、複数の要素凸片533a~535aのそれぞれの長手方向がローラ本体531の回転方向と一致する。よって、加工対象に凹部を形成する際の加工性を向上させることができる。
【0068】
(1b)図4Aに示すように、加工ローラ54のローラ本体541の正面視において、複数の文字形成凸部543~545がローラ本体541の軸方向及び軸方向に直交する方向のいずれの方向に対しても傾いた方向に一列に並んで形成されていてもよい。図4A及び図4Bに示す例では、ローラ本体541の軸方向に対して略45度の角度をなす方向に文字形成凸部543~545が並んでいる。
【0069】
このような構成によれば、複数の文字形成凸部がローラ本体の軸方向又は軸方向に直交する方向に平行な方向に一列に並んだ場合と比較して、距離を長く取れるため、沢山の文字形成凸部を形成でき、また、文字形成凸部の外形、つまり、文字形成凸部の表す文字の大きさを大きくすることができる。
【0070】
(1c)図4C及び図4Dに示すように、複数の文字形成凸部553~555がローラ本体551の軸方向に直交する方向に平行な方向に一列に並ぶように形成されてもよい。また、図4C及び図4Dに示す例では、文字形成凸部553~555の表す文字の向きがローラ本体551の軸方向を向いている。つまり、ローラ本体551の軸方向を上下方向としたときに文字が正しく視認できるように文字形成凸部553~555が形成されている。
【0071】
(1d)図5A及び図5Bに示すように、複数の要素凸片563a~565aの長手方向が文字形成凸部563~565の表す文字の筆運びの方向に沿うように該複数の要素凸片563a~565aが形成されていてもよい。
【0072】
(1e)図5C及び図5Dに示すように、複数の要素凸片573a~575aは略円筒状の突起であってもよい。
(2)貼付剤用支持体に形成される凹部も上記実施形態のものに限られない。
【0073】
(2a)図7のパターン2のように、複数の要素凹片423a~425aのそれぞれと平行な共通の一の方向が文字形成凹部423~425の正面視において右下から左上に向かう方向であってもよい。また、パターン3のように、共通の一の方向が文字形成凹部433~435の正面視において上下方向に平行であってもよい。さらに、パターン4のように、共通の一の方向が文字形成凹部443~445の正面視において左右方向に平行であってもよい。なお、パターン2に示す凹部は、図4A及び図4Bに示す加工ローラ54によって形成され得る。また、パターン3に示す凹部は、図2C及び図2Dに示す加工ローラ53によって形成され得る。また、パターン4に示す凹部は、図4C及び図4Dに示す加工ローラ55によって形成され得る。
【0074】
(2b)パターン5のように、複数の要素凹片453a~455aの長手方向が文字形成凹部453~455の表す文字の筆運びの方向に沿う(延在する)ように該複数の要素凹片453a~455aが形成されていてもよい。このパターン5では、文字形成凹部453~455の表す文字における筆運びの方向が所定角度以上変化する箇所において、複数の要素凹片453a~455aが離間している。パターン5に示す凹部は、図5A及び図5Bに示す加工ローラ53によって形成され得る。
【0075】
このような構成によれば、要素凹片453a~455aの長さや幅を調節することで、文字形成凹部453~455の表す文字「A」、「E」、「Q」の識字性を向上させることができる。
【0076】
(2c)パターン6のように、文字の筆運びの方向に沿って要素凹片463a~465aの長手方向の向きが滑らかに変化してもよい。パターン6では、要素凹片463a~465aの長手方向は、筆運びの方向に対して略直交している。
【0077】
このような構成によれば、要素凹片463a~465aの長手方向は、筆運びの方向に沿うような場合と比較して、隣接する要素凹片の端部同士が連続することを抑制できる。ひいては、1つの要素凹片が裂けたときに他の要素凹片が裂けやすくなることを抑制できる。
【0078】
(2d)パターン7やパターン8のように、複数の要素凹片473a~475a,483a~485aのそれぞれが、貼付剤の平面視において略L字状であってもよい。
(2e)パターン9やパターン10のように、複数の要素凹片493a~495a,613a~615aのそれぞれが、貼付剤の平面視においてドット状であってもよい。パターン9では、複数の要素凹片493a~495aは真円状のドットであり、パターン10では、複数の要素凹片613a~615aは楕円状のドットである。パターン9に示す凹部は、図5C及び図5Dに示す加工ローラ57によって形成され得る。
【0079】
このような構成によれば、複数の要素凹片のそれぞれが複雑な形状である場合と比較して、要素凹片493a~495a,613a~615aの形状がシンプルであるため、文字形成凹部493~495,613~615の表す文字の識字性を向上させることができる。また、ドットが楕円状よりも真円状である方が、隣接する要素凹片の端部同士が連続することを抑制できる。
【0080】
(2f)図8に示すパターン11~14のように、貼付剤の平面視において、複数の要素凹片のそれぞれが共通の多角形の輪郭に沿って該輪郭を1周するように延在して形成されていてもよい。多角形の内部(輪郭に囲まれた部分)には凹部は形成されていない。
【0081】
具体的には、パターン11では、三角形の輪郭に沿って要素凹片623a~625aが延在して形成されている。パターン12、13では、四角形の輪郭に沿って要素凹片633a~635aが延在して形成されている。パターン12では、文字形成凹部633~635の正面視において要素凹片633a~635aのなす四角形が傾いていない。一方、パターン13では、文字形成凹部643~645の正面視において要素凹片643a~645aのなす四角形が共通の方向に傾いている。パターン14では、星形の輪郭に沿って要素凹片653a~655aが形成されている。
【0082】
(2g)パターン15のように、複数の要素凹片663a~665aのそれぞれが、貼付剤の平面視において略U字状、換言すれば、円弧に沿って延在するように形成されていてもよい。
【0083】
(2h)パターン16~18のように、貼付剤の平面視において複数の要素凹片のそれぞれが複数の線分が同一点で交差する形状であってもよい。
具体的には、パターン16、17では、複数の要素凹片673a~675a,683a~685aのそれぞれは、2本の線分が直交する形状、換言すれば、X字状である。パターン12では、文字形成凹部673~675の正面視においてX字を構成する2本の線分が斜めに延在するように傾いている。一方、パターン13では、文字形成凹部683~685の正面視においてX字を構成する2本の線分が上下又は左右方向と平行に延在している。パターン18では、複数の要素凹片693a~695aのそれぞれは、3本の線分が同一点で交差する形状、換言すれば、アスタリスク状である。
【0084】
(2i)パターン19のように、貼付剤の平面視において、複数の要素凹片703a~705aのそれぞれが略S字状であってもよい。
(3)上記実施形態では、貼付剤5に形成された複数の要素凹片413a~418aは文字の筆運びの方向に沿って等間隔で配置されているが、複数の要素凹片は等間隔で配置されていなくてもよい。ローラ本体に形成された要素凸片についても同様である。
【0085】
(4)上記実施形態では、複数の要素凹片413a~418aはすべて形状及び大きさが同一であるが、複数の要素凹片の間の形状及び大きさの関係はこれに限られるものではない。例えば、複数の要素凹片の形状及び大きさの少なくとも一方が互いに相違していてもよい。ローラ本体に形成された要素凸片についても同様である。
【0086】
(5)上記実施形態では、例えば文字形成凹部413に着目すると、該文字形成凹部413を構成するすべての要素凹片413aの長手方向が共通の一の方向に平行である。しかし、複数の要素凹片の長手方向はこれに限られず、例えば、文字形成凹部を構成する大部分の要素凹片の長手方向が共通の一の方向に平行であるが、残りの要素凹片の長手方向が該一の方向と平行でなくてもよい。この場合も、文字形成凹部を構成するすべての要素凹片の長手方向が共通の一の方向に平行である場合と比較して、識字性等の観点から大差がないようであれば、本願でいう「複数の要素凹片のそれぞれの長手方向が共通の一の方向に平行である」に該当する。
【0087】
同様に、複数の要素凹片の長手方向が平行な一の方向は、文字形成凹部を構成する大部分の要素凹片の長手方向が文字の筆運びの方向に対して傾くような方向であり、残りの要素凹片の長手方向が文字の筆運びの方向に対して傾かない、つまり筆運びの方向に沿う方向であってもよい。この場合も、すべての要素凹片の長手方向が筆運びの方向に対して傾いている場合と比較して、貼付剤の破断のしにくさ等の観点から大差がないようであれば、本願でいう「一の方向は、複数の要素凹片のそれぞれの長手方向が筆運びの方向に対して傾くような方向である」に該当する。
【0088】
同様に、文字形成凹部を構成する大部分の要素凹片の長手方向が筆運びの方向に沿うように形成されているが、残りの要素凹片の長手方向が筆運びの方向に沿うように形成されていなくてもよい。この場合も、文字形成凹部を構成するすべての要素凹片の長手方向が文字の筆運びの方向に沿うように形成されている場合と比較して、識字性等の観点から大差がないようであれば、本願でいう「複数の要素凹片のそれぞれの長手方向が筆運びの方向に沿うように形成されている」に該当する。
【0089】
なお、ローラ本体に形成された要素凸片についても同様である。
(6)上記実施形態では、貼付剤5には6つの文字形成凹部413~418が形成されているが、貼付剤に形成される文字形成凹部の数はこれに限られるものではない。貼付剤5には、1つ又は6つ以外の複数の文字形成凹部が形成されていてもよい。加工ローラについても同様である。
【0090】
(7)上記実施形態では、例えば文字形成凹部413~415は、貼付剤5の平面視において横一列に並ぶように形成されているが、複数の文字形成凹部の並び方はこれに限られるものではない。複数の文字形成凹部は、例えば、貼付剤の平面視において斜めに並ぶように形成されていてもよい。
【0091】
(8)貼付剤の構成は上記実施形態のものに限られない。例えば、上記実施形態では、粘着剤層52は水分を実質的に含まないプラスター剤であるが、粘着剤層はこれに限られるものではない。粘着剤層は、例えば、水分の含有率が所定割合(例えば40%)以上であってもよい。
【0092】
(9)上記実施形態では、凹部が形成された貼付剤用支持体に粘着剤層52を積層することで貼付剤5が製造される。しかし、製造方法はこれに限られるものではない。例えば、文字形成凹部が形成されていない貼付剤用支持体と粘着剤層52とを積層して貼付剤を製造し、該貼付剤に超音波溶着機1により文字形成凹部を形成することで、凹部が形成された貼付剤5が製造されてもよい。
【0093】
(10)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0094】
1…超音波溶着機、2…加圧部、3…超音波振動部、5…貼付剤、21,53~57…加工ローラ、31…工具ホーン、32…超音波発振機、51…支持体層、52…粘着剤層、211,571…ローラ本体、213~215…文字形成凸部、213a~213c…要素凸片、413~418,423~425…703~705…文字形成凹部、413a~418a,423a~425a…703a~705a…要素凹片。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8