IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベイラー カレッジ オブ メディスンの特許一覧

特許7002769ウイルス特異的T細胞の活性化および拡大のためのプラットフォーム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ウイルス特異的T細胞の活性化および拡大のためのプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220128BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220128BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/62 20170101ALN20220128BHJP
   A61K 47/68 20170101ALN20220128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20220128BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/17 Z
A61P31/12
A61P31/18
A61P31/20
A61P31/22
C12N5/10
A61K47/62
A61K47/68
A61K48/00
C12N15/85 Z
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2019515306
(86)(22)【出願日】2017-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2017051284
(87)【国際公開番号】W WO2018052947
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】62/395,438
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルーニー、クリオナ、エム.
(72)【発明者】
【氏名】ラプチェヴァ ドイル、ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、サンディヤー
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー、ディミトリオス
【審査官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/044853(WO,A1)
【文献】特表2009-504151(JP,A)
【文献】特表2015-501651(JP,A)
【文献】Lam S. et al.,'Developing multi-HIV antigen specific T cells as a component of a cure strategy.' ,JPT Peptide Technologies,2015年11月,P.1-2,https://www.jpt.com/fileadmin/user_upload/AppNote_Immunology_HIV_ULTRA_Peptide_Pool.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/0783
C12N 5/10
A61P 31/12
A61K 35/17
A61P 31/22
A61P 31/20
A61P 31/18
C12N 15/85
A61K 48/00
A61K 47/68
A61K 47/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-7およびIL-15の存在下で、末梢血T細胞集団を抗原提示細胞で刺激するステップを含み、抗原提示細胞がペプチドのライブラリーに曝露されているか、予め曝露されており、前記ペプチドがHPVではない1種以上のウイルスの1種以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含み、
(aIL-4の非存在下で行われ;
(b)任意選択で、IL-15の濃度は≧100ng/mLであり;かつ
(c)前記末梢血T細胞からのCD45RA陽性細胞の枯渇を含む、
ウイルス抗原特異的T細胞を産生する方法。
【請求項2】
前記刺激が、IL-6、IL-12、IL-2、IL-21、またはそれらの組み合わせの非存在下で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記末梢血T細胞集団が、正常なレベルと比較して、以下のうちの1つ以上の低下したレベルを有する、請求項1または2に記載の方法:1)NK細胞;2)バイスタンダー細胞として増殖することができるナイーブ細胞;および/または3)制御性T細胞。
【請求項4】
末梢血単核細胞(PBMC)またはそれから得られる末梢血T細胞が、以下のうちの1つ以上のレベルを低下させるステップに供される、請求項3に記載の方法:1)NK細胞;2)バイスタンダー細胞として増殖することができるナイーブ細胞;3)制御性T細胞および/または4)抑制性骨髄系細胞。
【請求項5】
前記ウイルスがヘルペスウイルス科(Herpesviridae)由来であるか、またはポックスウイルス、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、レンチウイルス、ラブドウイルスもしくは他の腫瘍溶解性ウイルスである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスが、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/または水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、HIV、インフルエンザ、マラバウイルス、水疱性口内炎ウイルス、および腫瘍溶解性ウイルスからなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記末梢血T細胞が、PBMCの集団中に存在するか、PBMCの集団から得られるか、またはPBMCの集団から単離される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記PBMCまたはアフェレシス(apheresis)産物から、以下のうちの1つ以上が枯渇している、請求項4または7に記載の方法:1)NK細胞;2)バイスタンダー細胞として増殖することができるナイーブ細胞;および/または3)制御性T細胞。
【請求項9】
前記集団中のPBMCが非接着性PBMCである、請求項4または7~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞またはPBMCである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記刺激ステップが、共刺激細胞の存在下で起こる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記共刺激細胞がCD80+、CD86+、CD83+、4-1BBL+、またはそれらの組み合わせである、または、前記共刺激細胞がHLA陰性リンパ芽球様細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記刺激が、活性化T細胞、樹状細胞、PBMC、またはHLA陰性共刺激細胞の存在下で起こる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記刺激が活性化T細胞、樹状細胞、PBMC、またはHLA陰性共刺激細胞の存在下で起こる場合、前記刺激ステップは最初の刺激ステップではない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記活性化T細胞が個体に対して自己のものである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記刺激が、ペプミックス、ペプミックスパルスで自己活性化したT細胞の存在下、HLA陰性共刺激細胞の存在下、またはその両方で起こる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記刺激が、ペプミックスパルスで自己活性化したT細胞の存在下、HLA陰性共刺激細胞の存在下、またはその両方で起こる場合、前記刺激ステップは最初の刺激ステップではない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドライブラリーが、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30もしくはそれ以上のアミノ酸長を含む、またはこれらのアミノ酸長以下のペプチドを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドライブラリーが、15アミノ酸長のペプチドを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ライブラリー中のペプチドが、他のペプチドと配列において11アミノ酸だけ重複する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記最初の刺激ステップによって産生されるT細胞が、1つ以上の後続の刺激ステップに供される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記後続の刺激ステップがIL-7およびIL-15の存在下で起こる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記後続の刺激ステップが、活性化T細胞、共刺激細胞、IL-7およびIL-15の存在下で起こる、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、前記方法によって産生されたT細胞を、ペプチドのライブラリーに予め曝露された活性化B細胞に曝露することなしに行われる、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法によって産生されるT細胞が、発現ベクターから遺伝子産物を発現するように改変される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法によって産生されるT細胞が、キメラ抗原受容体、αβT細胞受容体、またはそれらの組合せを発現するように改変される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法によって産生されるT細胞が、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZVに曝露されたか、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZVに対して血清陽性であるか、
またはEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZVに関連する疾患を有する個体の治療用である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記個体が、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZVに関連する医学的状態を有すると判定された個体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法の1つ以上のステップが、外来的に添加されたIL-4、IL2、または両方の存在を欠く、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
HPV以外のウイルスに特異的なT細胞を刺激する方法であって、IL-7およびIL-15の存在下、IL-4の非存在下、ならびに共刺激細胞の存在下で、前記ウイルスに特異的なT細胞を抗原提示細胞で刺激することを含み、前記抗原提示細胞は1種以上のペプチドに予め曝露され、前記ペプチドはHPV以外のウイルスの1種以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含み、前記抗原提示細胞はCD45RA陽性細胞が枯渇している、方法。
【請求項31】
ウイルス関連疾患または非ウイルス関連疾患の治療用T細胞を産生する方法であって、IL-7およびIL-15の1つ以上の存在下、IL-4の非存在下ならびに共刺激細胞の存在下で、HPV以外のウイルスに特異的なT細胞を抗原提示細胞と共に刺激するステップを含み、前記抗原提示細胞が1つ以上のペプチドに予め曝露されており、前記ペプチドがHPV以外のウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含み、前記刺激が前記ウイルス関連疾患の治療用T細胞を産生し、前記抗原提示細胞はCD45RA陽性細胞が枯渇している、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2016年9月16日に出願された米国仮特許出願第62/395,438号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(研究または開発を主宰する連邦政府の声明)
本発明は、National Institutes of Health/National Cancer Instituteにより授与された3300028311および3300028312に基づく政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【0003】
本開示は、少なくとも免疫学、細胞生物学、分子生物学、および癌医学を含む医学の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
抗原特異的T細胞の活性化と増殖には3つのシグナルが必要である。シグナル1は、T細胞レセプター(TCR)がその同族ペプチド-MHC複合体に結合することを必要とする。シグナル2はT細胞表面の共刺激受容体の刺激を必要とし、シグナル3はサイトカインに由来する。シグナルは抗原特異的T細胞の増殖をインビトロで維持するために、約7~14日毎に1回必要である。これらのシグナルのいずれか1つが存在しない場合、T細胞は増殖できず、そしてアネルギーになるか、または死滅し得る。これらの要件は特に腫瘍抗原特異的T細胞が通常はアネルギー性(活性化に反応しない)であるか、そうでなければ機能不全である、癌患者由来の腫瘍抗原特異的T細胞を活性化する場合に、いくつかの課題をもたらす。
【0005】
対処されてきた抗原特異的T細胞の活性化および増殖に関する主要な課題には、以下が含まれる:
【0006】
1.腫瘍誘発性T細胞アネルギー。循環T細胞は腫瘍によってアネルギー化され、癌患者の血液から増殖させることは困難である。
【0007】
2.抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞のみを増殖させるには、HLAクラスIおよびクラスII分子の両方に腫瘍抗原を発現する自己抗原提示細胞、ならびに共刺激分子による抗原特異的T細胞の反復刺激が必要である。刺激が強すぎる場合、抗原特異的T細胞を希釈しながら非特異的バイスタンダー細胞を増殖させる。
【0008】
自己樹状細胞(DC)は強力な抗原提示細胞であるが、その数は限定されている;それらは分裂せず、それらの単球前駆体は血液単核細胞(PBMC)の10%未満である。T細胞増殖に十分なDCを得るには、大量の血液が必要であろう(300ml~1リットルの血液)。
【0009】
自己EBV形質転換Bリンパ芽球様細胞系(LCL)も優れた抗原提示細胞であるが、患者からLCLを確立するのに少なくとも6週間かかり、LCLは弱いEBVおよび非EBV抗原と競合する高免疫原性EBV抗原を発現する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は抗原特異的T細胞の活性化および増殖に関連する種々の問題に対処し、有効な免疫療法でウイルス関連疾患および悪性腫瘍を処置するための当該分野における長年の必要性に対する解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、特定の標的を免疫原的に認識する免疫系細胞に関する方法および組成物に関する。いくつかの実施形態では、本発明が個体において免疫応答を誘発する生物学的部分を標的とする、ウイルス特異的T細胞(VST)(ウイルス抗原特異的T細胞または抗原特異的T細胞とも呼ばれ得る)の開発に関する。特定の実施形態では、本開示がウイルス疾患関連抗原を含むウイルス抗原を標的とするVSTの開発に関する。本開示の実施形態は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、および殺傷しないが1つ以上のサイトカインを産生する細胞、の産生を含む。いくつかの場合において、細胞傷害性T細胞の混合物が産生され、混合物は場合によっては、複数のウイルス由来の抗原を含む、複数のウイルス抗原を標的とする。特定の実施形態では、ウイルスはヒトパピローマウイルス(HPV)ではない。本開示の実施形態は、非HPV特異的T細胞の生成および/または拡大に関する。
【0012】
本開示の実施形態は、非HPVウイルスに感染した個体、または特定のウイルスに関連する癌を含む、HPVに関連しないウイルス関連疾患および悪性腫瘍を有する個体に治療を提供するための方法および組成物に関する。特定の実施形態において、本開示は、ウイルス関連の医学的状態を標的とし得、そのために治療的である養子細胞免疫療法のための方法および組成物に関する。
【0013】
特定の局面において、本開示は例えば、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZV由来の抗原を標的とする複数のT細胞の開発に関する。本開示は例えば、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZV由来の抗原(ここで、ウイルスはHPVではない)に対して特異性を有する、T細胞株を生成するための方法について、有意かつ非自明な改善を提供する。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態において、個体は、本発明の方法および/または組成物を必要としている。特定の実施形態では、個体が、例えばEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZV(これらの存在は個体にとって知られていても、知られていなくてもよい)に既に曝露されているか、または個体が、例えば、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVに曝露されたか曝露されるリスクがあると疑われる。特定の実施形態では、個体が例えば、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZVに関連する疾患を有するか、有することが疑われるか、または有する危険性があるか、またはEBV、CMV、アデノウイルス、VZV、もしくはワクシニアウイルスでワクチン接種されている。
【0015】
方法の少なくとも一部の特定の実施形態において、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZVに関連する特定の抗原は、特定の抗原のいくつかまたは全てにわたる1つ以上のペプチドの形態でAPCに提示される。抗原性ペプチドは、ペプチド混合物のライブラリー中のAPCに提供され得、これはペプミックスと呼ばれ得る。本開示の特定の局面において、APCへの曝露のための種々のペプミックスのプール化が存在する。MHC分子上に抗原を提示するAPCは、特定の条件下で末梢血T細胞に曝露されて、特定のウイルス抗原に特異的なT細胞の刺激を生じ得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、末梢血T細胞などの末梢血細胞を刺激する方法であって、インターロイキン(IL)-7およびIL-15の存在下で、ならびに少なくともいくつかの場合において、IL-6および/またはIL-12などの1つまたは複数の他のサイトカインの非存在下で、末梢血T細胞を抗原提示細胞で刺激することを含み、抗原提示細胞がHPVではないウイルスの1つまたは複数のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む、1つまたは複数のペプチドに予め曝露された、方法が存在する。
【0017】
非HPVウイルスまたは非HPVウイルス由来の抗原に特異的なT細胞を刺激する方法はIL-7およびIL-15の存在下、および場合によっては共助刺激細胞の存在下で、ウイルスまたは抗原に特異的なT細胞を抗原提示細胞で刺激することを含み、ここで、抗原提示細胞は、ウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む1つ以上のペプチドに予め曝露されている。
【0018】
場合によっては非HPVウイルス関連疾患のための治療用T細胞を産生する方法があり、この方法はインターロイキンIL-7およびIL-15の1つ以上の存在下、ならびに少なくともいくつかの場合において、場合によっては1つ以上の他のサイトカイン(例えば、IL-6および/またはIL-12)の非存在下で、末梢血T細胞を抗原提示細胞で刺激するステップを包含し、ここで、抗原提示細胞は1つ以上のペプチドに予め曝露され、ここで、ペプチドはHPVでないウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を包含し、刺激するステップはウイルス関連疾患およびHPV関連疾患ではない悪性腫瘍のための治療用T細胞を産生する。
【0019】
特定の実施形態では、ウイルス関連疾患およびHPV関連疾患以外の悪性腫瘍のための治療用T細胞を産生する方法であって、ウイルスまたはウイルス抗原に特異的なT細胞を、インターロイキンIL-7およびIL-15の1つ以上の存在下、および場合によっては共刺激細胞の存在下で抗原提示細胞で刺激するステップを含み、抗原提示細胞がHPVではないウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含むペプチドによって刺激され、刺激することによって1つ以上のウイルス関連疾患および悪性腫瘍のための治療用T細胞を産生する、方法がある。
【0020】
場合によっては刺激される末梢血T細胞がIL-7およびIL-15の存在下で、および少なくともいくつかの場合にはIL-6および/またはIL-12などの1つまたは複数の他のサイトカインの存在下で、末梢血細胞を抗原提示細胞で刺激することなどの末梢血細胞の事前の刺激から得られる。ここで、抗原提示細胞はHPVではないウイルスの1つまたは複数のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む、1つまたは複数のペプチドに事前に曝露されている。このように、末梢血T細胞を刺激する前に、本方法はさらに、IL-7およびIL-15の存在下、および少なくともいくつかの場合にはIL-6および/またはIL-12の存在下で、末梢血細胞を抗原提示細胞で刺激することを含み得、ここで、抗原提示細胞は、1つ以上のペプチドに予め曝露される。ここで、ペプチドは末梢血T細胞を産生するために、HPVではないウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、1つ以上のペプチドは、HPVではないウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のペプチドはペプチドのライブラリーであり得、これはペプチドのコレクションとも呼ばれ得る。特定の実施形態では、方法がEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZV、またはEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZV由来の抗原に特異的なT細胞を産生し得る。いくつかの実施形態において、方法は、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZV、またはEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZV由来の抗原に特異的な、末梢血T細胞に存在するT細胞の集団を拡大し得る。
【0022】
本開示の1つ以上の方法において使用されるAPCは例えば、単球、樹状細胞(DC)、B芽細胞(BB)、および/またはPBMCを含む。特定の実施形態では、抗原提示細胞は活性化T細胞である。
【0023】
いくつかの実施形態では、HPV以外のウイルスまたはHPV由来の抗原以外の抗原に特異的なT細胞の刺激が第1の刺激ステップではない。刺激された細胞であるT細胞は、以前の刺激の産物であり得る。特定の実施形態では、HPV以外のウイルスまたはHPV以外の抗原に特異的なT細胞の刺激がインターロイキン(IL)-7、IL-15の存在下、および1つ以上のタイプの共刺激細胞の存在下で、ウイルスまたはウイルス抗原に特異的なT細胞を抗原提示細胞で刺激することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、方法は、非HPVウイルスまたはHPV抗原ではない抗原に特異的なT細胞を産生し得る。いくつかの実施形態において、方法は、ウイルスまたはHPV以外の抗原に特異的なT細胞の集団を拡大し得る。
【0025】
特定の実施形態では、IL-7およびIL-15の存在下での末梢血T細胞の刺激が、場合によってIL-2の非存在下で起こる。いくつかの実施形態において、IL-7およびIL-15の存在下での末梢血T細胞の刺激は場合により、少なくともIL-4の非存在下で起こる。ただし場合によっては、例えば、CD4+T細胞を増加させるためにIL-4が添加される。いくつかの実施形態では、IL-7およびIL-15の存在下での末梢血T細胞の刺激が場合によってはIL-6の非存在下で起こる。いくつかの実施形態において、IL-7およびIL-15の存在下での末梢血T細胞の刺激が、代わりに、IL-7および/またはIL-15の非存在下で起こり得る。いくつかの実施形態において、IL-7およびIL-15の存在下での末梢血T細胞の刺激が、場合により、IL-12の非存在下で起こる。いくつかの実施形態において、IL-7およびIL-15の存在下での末梢血T細胞の刺激が、場合により、IL-21の非存在下で起こる。
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示の方法において利用される末梢血T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)の集団中に存在し得るか、またはそこから得られるかまたは単離される。集団中のPBMCは非接着性PBMCであってもよく、またはCD45RA枯渇PBMC(例えば、Tregs、NK細胞およびナイーブT細胞の組み合わせを排除するために)であってもよい。抗原提示細胞は例えば、樹状細胞、B芽細胞、またはPBMCであり得る。
【0027】
本開示の方法は、HPVではないウイルス関連疾患および悪性腫瘍のための治療用T細胞を産生する方法を含む。細胞の刺激は、ウイルス関連疾患およびHPV関連疾患ではない悪性腫瘍に対して治療的であるT細胞を産生し得る。いくつかの実施形態において、HPV関連疾患のための治療用T細胞を産生する方法が提供される:
【0028】
(i)末梢血細胞を刺激することであって、本方法がインターロイキン(IL)-7およびIL-15の存在下、および場合によりIL-6および/またはIL-12の非存在下で、末梢血T細胞を抗原提示細胞で刺激するステップを含み、ここで、抗原提示細胞は、非HPVウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む1つ以上のペプチドに予め曝露されている;または、
【0029】
(ii)(i)から得られるT細胞を、インターロイキン(IL)-7およびIL-15の存在下、および場合によってはIL-6および/またはIL-12の非存在下で、抗原提示細胞で刺激することであって、抗原提示細胞は1つ以上のペプチドに予め曝露され、ここで、ペプチドはウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含み、(ii)は場合によっては1回以上繰り返される;
【0030】
(iii)(ii)から得られるT細胞を、IL-7およびIL-15の存在下、および場合により共刺激細胞の存在下で、抗原提示細胞で刺激することであって、抗原提示細胞は1以上のペプチドに予め曝露され、ここで、ペプチドはウイルスの1以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含み、ここで(iii)は場合により1回以上繰り返される。
【0031】
いくつかの実施形態では、(i)および(ii)で使用される抗原提示細胞が単球、樹状細胞(DC)、B芽細胞(BB)またはPBMCである。いくつかの実施形態では、(iii)で使用される抗原提示細胞が活性化T細胞、樹状細胞(DC)、B-ブラスト(BB)またはPBMCである。いくつかの実施形態では、(iii)で使用される抗原提示細胞が(i)および/または(ii)で使用される抗原提示細胞とは異なる。好ましい実施形態において、(iii)で使用される抗原提示細胞は、活性化T細胞である。
【0032】
特定の実施形態では、刺激が共刺激細胞の存在下で起こる。いくつかの実施形態において、共刺激細胞は、CD80+細胞、CD86+細胞、CD83+細胞、4-1BBL+細胞、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の細胞型である。共刺激細胞は、CD80+/CD86+/CD83+/4-1BBL+細胞であり得る。共刺激細胞は、HLA陰性リンパ芽球様細胞であり得る。
【0033】
いくつかの特定の実施形態では、本開示の方法がEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZVに特異的なT細胞を産生するためのものである。いくつかの特定の実施形態において、本開示の方法は、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZVに関連する疾患および悪性腫瘍に特異的なT細胞を産生するためのものである。
【0034】
いくつかの実施形態では、末梢血T細胞は、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZVに感染していることが知られているか、または感染していることが疑われる個体から得ることができる。抗原提示細胞は、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVに感染していることが知られているか、または感染しているかまたはワクチン接種されていることが疑われる個体から得ることができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、本方法は、本方法によって産生されたT細胞を、ペプチドのライブラリーに予め曝露された活性化B細胞に曝露することなく、起こり得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、抗原提示細胞は、得られる治療用T細胞で処置されることが意図される個体に対して自己由来または同種異系であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、1つ以上のペプチドがEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVの1つ以上のタンパク質の配列に少なくとも部分的に対応する配列を含む。ペプチドは、ウイルスタンパク質内に存在する連続したアミノ酸配列に対応し得る。ペプチドは、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸長、または15アミノ酸長以下、の長さを有し得る。ペプチドのコレクションは、ライブラリーを形成し得、そしてライブラリー中のペプチドは例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14アミノ酸を含む任意の適切な量で、他のペプチドと配列において重複し得る。ペプチドは、ウイルスタンパク質に対応する配列を含んでもよい。
【0038】
本開示の方法によって産生されるT細胞は単離および/または精製(例えば、他の細胞からの単離/精製)され得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、本開示の方法によって産生されるT細胞の治療有効量は、HPVではないウイルスに曝露された個体、またはHPVに由来しないウイルス関連疾患を有する個体に提供される。関連する局面において、本開示の方法によって産生されるT細胞は、HPVに由来しないウイルス関連疾患の処置における使用のために提供される。別の関連する局面において、本開示の方法によって産生されるT細胞の使用は、HPVではないウイルス関連疾患の処置における使用するための医薬の製造における使用のために提供される。
【0040】
特定の実施形態において、本開示の方法は1つ以上の操作されたレセプター(例えば、キメラ抗原レセプター(CAR))で改変されたVSTの拡大を促進するためのウイルスの使用を包含する。例えば、ウイルスがVZVであり、VSTがVZV特異的(VZVST)である場合、VZVワクチン(例えば、ZOSTAVAXまたはVARIVAX)を使用して、注入後のCAR修飾VZVSTの増殖を刺激し得る。VSTがアデノウイルス、マラバウイルスまたはワクシニアまたはVSVなどの腫瘍溶解性ウイルスに特異的である場合、腫瘍溶解性ウイルス(OV)は腫瘍細胞を殺傷できるだけでなく、その腫瘍溶解性ウイルスに特異的なCAR修飾T細胞を刺激することもできる。CAR修飾OV特異的T細胞(CAR-OVST)は、CARを介して非感染または転移性腫瘍細胞を死滅させることができた。
【0041】
処置される個体はヒトであり得る。個体は患者であり得る。個体は、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVに曝露されているか、またはEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVに関連する疾患を有し得る。この疾患は新生物(例えば、任意の種類の癌)であり得る。
【0042】
個体は、必要に応じて、手術、放射線、ホルモン療法、化学療法、免疫療法、またはそれらの組み合わせなどの追加の癌療法を含む、疾患の追加の療法を受けていてもよく、受けていてもよく、または受けるのであろう。
【0043】
個体は、HPVに由来しないウイルス関連癌を有すると決定され得る。
【0044】
細胞刺激のステップを含む本開示による方法は、インビトロ(in vitro)またはエクスビボ(ex vivo)で行うことができる。用語「インビトロ」は、実験室条件または培養における材料、生物学的物質、細胞および/または組織を用いた研究を包含することが意図される。「エクスビボ」は生物の外側、例えば、ヒトまたは動物の体外に存在し、または起こっているものを指し、組織(例えば、器官全体)または生物から採取された細胞上にあってもよい。
【0045】
一実施形態では、末梢血細胞を刺激する方法であって、インターロイキン(IL)-7およびIL-15の存在下で、末梢血T細胞を抗原提示細胞で刺激することを含み、抗原提示細胞が、HPVではない1つ以上のウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む、1つ以上のペプチドに予め曝露されている、方法を提供する。
【0046】
特定の実施形態ではウイルス抗原特異的T細胞を産生する方法であって、IL-7およびIL-15(例えば、≧100ng/mL)の存在下で、末梢血T細胞の集団を抗原提示細胞で刺激するステップを包含し、ここで、抗原提示細胞はペプチドのライブラリーに予め曝露され、ペプチドはHPVではない1つ以上のウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を包含する、方法が存在する。
【0047】
本方法の特定の実施形態では、末梢血T細胞の集団が正常レベルと比較して、以下のうちの1つ以上のレベルが低下している:1)NK細胞;2)バイスタンダー細胞として増殖することができるナイーブ細胞;および/または3)例えば、CD45RA+細胞が出発PBMCまたはアフェレシス産物から枯渇した場合、制御性T細胞。特定の場合において、PBMCまたはそれから得られる末梢血T細胞は、以下のうちの1つ以上のレベルを低下させるステップを受ける:1)NK細胞;2)バイスタンダー細胞として増殖することができるナイーブ細胞;および/または3)制御性T細胞。末梢血T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)の集団中に存在してもよく、またはそこから得られるか、もしくは単離される。PBMCまたはアフェレシス産物は、以下のうちの1つ以上が枯渇され得る:1) NK細胞;2)バイスタンダー細胞として増殖することができるナイーブ細胞;および/または3)制御性T細胞。PBMCは、CD45RA枯渇PBMCであってもよい。集団中のPBMCは、非接着性PBMCであり得る。特定の実施形態では、PBMCが例えば接着または他の枯渇法によって、抑制性骨髄細胞である骨髄細胞を枯渇してもよい。
【0048】
本開示によって包含されるウイルスは、ヘルペスウイルス科由来のものを含むか、またはポックスウイルス、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、レンチウイルス、ラブドウイルスもしくは他の腫瘍溶解性ウイルスである。特定の実施形態では、ウイルスがエプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/または水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、HIV、インフルエンザ、マラバウイルス水疱性口内炎ウイルス、または任意の他の腫瘍溶解ウイルスからなる群より選択される。
【0049】
本開示の方法において利用される抗原提示細胞は、特定の実施形態において、樹状細胞またはPBMCであり得る。
【0050】
本開示によって包含される方法において、刺激ステップは、IL-6、IL-12、IL-2、IL-4、IL-21、またはそれらの組み合わせの非存在下で起こる。特定の実施形態では、刺激ステップがCD80+、CD86+、CD83+、4-1BBL+、またはそれらの組み合わせである共刺激細胞などの共刺激細胞の存在下で起こるか、または共刺激細胞がHLV陰性リンパ芽球様細胞である。刺激は、活性化T細胞、樹状細胞、PBMC、またはHLA陰性共刺激細胞の存在下で起こり得る。刺激は、活性化T細胞、樹状細胞、PBMC、またはHLA陰性共刺激細胞の存在下で起こり得、刺激ステップは第1の刺激ステップではない。活性化されたT細胞は、個体に対して自己であり得る。刺激は、ペプミックス、ペプミックスパルスで自己活性化されたT細胞の存在下、HLA陰性共刺激細胞の存在下、またはその両方で起こりうる。特定の場合において、刺激がペプミックスパルスで自己活性化されたT細胞の存在下、HLA陰性共刺激細胞の存在下、またはその両方で起こる場合、刺激ステップは、第1の刺激ステップではない。このような場合、2つの刺激が行われ、第2の刺激は、共刺激細胞およびペプミックスパルス(自己活性化T細胞(aATC))の存在下で起こる。
【0051】
本開示の方法において利用されるペプチドライブラリーは、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上のアミノ酸長以下のペプチドを含み得る。特定の場合において、ペプチドライブラリーは、長さが15アミノ酸のペプチド、および/またはライブラリー中のペプチドが他のペプチドと配列が11アミノ酸重複しているペプチドを含む。
【0052】
特定の実施形態では、第1の刺激ステップによって産生されたT細胞がIL-7およびIL-15の存在下で起こる後続の刺激ステップなどの、1つまたは複数の後続の刺激ステップを受ける。その後の刺激ステップは、活性化T細胞、共刺激細胞、IL-7、および/またはIL-15の存在下で起こり得る。特定の場合、この方法は、本方法により産生されたT細胞を、ペプチドのライブラリーに予め曝露された活性化B細胞に曝露することなく、起こる。
【0053】
いくつかの場合において、本方法によって産生された細胞は、キメラ抗原レセプター、αβT細胞レセプター、またはそれらの組み合わせを発現するように改変されるなどの、発現ベクターからの遺伝子産物を発現するように改変される。
【0054】
特定の場合において、この方法によって産生されたT細胞の治療有効量は、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZVに曝露された個体、あるいは、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZVに対して血清陽性である個体、あるいはEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZVに関連する疾患を有する個体、に提供される。特定の局面において、個体は、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZVに関連する医学的状態を有すると決定される。特定の実施形態では、癌は非ウイルス性癌である。
【0055】
特定の場合において、本方法の1つ以上のステップは、外因的に添加されたIL-4、IL-2、または両方の存在を欠く。
【0056】
一実施形態では、HPV以外のウイルスに特異的なT細胞を刺激する方法であって、IL-7およびIL-15の存在下、ならびに共刺激細胞の存在下で、ウイルスに特異的なT細胞を抗原提示細胞で刺激することを含み、抗原提示細胞がHPV以外のウイルスの1つまたは複数のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む1つまたは複数のペプチドに予め曝露されている、方法がある。
【0057】
別の実施形態ではウイルス関連疾患または非ウイルス関連疾患のために治療的T細胞を産生する方法であって、IL-7およびIL-15の1つまたは複数の存在下、ならびに共刺激細胞の存在下で、HPV以外のウイルスに特異的なT細胞を抗原提示細胞で刺激するステップを含み、ここで抗原提示細胞は1つまたは複数のペプチドに事前に曝露され、ここで、ペプチドはHPV以外のウイルスの1つまたは複数のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含み、刺激はウイルス関連疾患または悪性のために治療的なT細胞を産生する、方法がある。
本開示は、少なくとも以下のものを包含する:
1.末梢血細胞を刺激する方法であって、インターロイキン(IL)-7およびIL-15の存在下で、末梢血T細胞を抗原提示細胞で刺激することを含み、前記抗原提示細胞は1つ以上のペプチドに予め曝露され、前記ペプチドはヒトパピローマウイルス(HPV)ではない1つ以上のウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む、方法。
2.ウイルス抗原特異的T細胞を産生する方法であって、IL-7およびIL-15の存在下で、末梢血T細胞の集団を抗原提示細胞で刺激するステップを含み、前記抗原提示細胞はペプチドのライブラリーに曝露されるか予め曝露されており、前記ペプチドはHPVではない1つ以上のウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む、方法。
3.IL-15の濃度が1mL当たり100ng以上である、項1または2に記載の方法。
4.前記刺激が、IL-6、IL-12、IL-2、IL-4、IL-7、IL-21、またはそれらの組み合わせの非存在下で起こる、項1、2、または3の方法。
5.前記末梢血T細胞の集団が、正常レベルと比較して、以下のうちの1つ以上の低下したレベルを有する、項1~4のいずれか一項に記載の方法:1)NK細胞;2)バイスタンダー細胞として増殖することができるナイーブ細胞;および/または3)制御性T細胞。
6.そこから得られたPBMCまたは末梢血T細胞が、以下の1つまたは複数のレベルを低下させるステップを受ける、項5に記載の方法:1)NK細胞;2)バイスタンダー細胞として増殖することができるナイーブ細胞;および/または3)制御性T細胞。
7.ウイルスがヘルペスウイルス科由来であるか、またはポックスウイルス、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、レンチウイルス、ラブドウイルスまたは他の腫瘍溶解性ウイルスで項1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.ウイルスが、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス、ワクシニア、および/または水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、HIV、インフルエンザ、マラバウイルス水疱性口内炎ウイルス、および腫瘍溶解ウイルスからなる群より選択される、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.末梢血T細胞が末梢血単核細胞(PBMC)の集団中に存在するか、PBMCの集団から得られるか、またはPBMCの集団から単離される、項1~8のいずれか1項に記載の方法。
10.PBMCまたはアフェレシス産物から、以下のうちの1つ以上が枯渇している、項6または9に記載の方法:1)NK細胞;2)バイスタンダー細胞として増殖することができるナイーブ細胞;および/または3)制御性T細胞。
11.PBMCがCD45RA枯渇PBMCおよび/またはCD45RO枯渇PBMCである、項10に記載の方法。
12.前記集団中のPBMCが非接着性PBMCである、項6または9~11のいずれか一項に記載の方法。
13.前記抗原提示細胞が、樹状細胞またはPBMCである、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
14.前記刺激ステップが、共刺激細胞の存在下で起こる、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
15.前記共刺激細胞がCD80+、CD86+、CD83+、4-1BBL+、またはそれらの組み合わせである、または共刺激細胞がHLV陰性リンパ芽球様細胞である、項14に記載の方法。
16.前記刺激が、活性化T細胞、樹状細胞、PBMC、またはHLA陰性共刺激細胞の存在下で起こる、項1~15のいずれか一項に記載の方法。
17.前記刺激が活性化T細胞、樹状細胞、PBMC、またはHLA陰性共刺激細胞の存在下で起こる場合、前記刺激ステップは第1の刺激ステップではない、項16記載の方法。
18.前記活性化T細胞が個体に対して自己のものである、項16または17に記載の方法。
19.前記刺激が、ペプミックス、ペプミックスパルスで自己活性化したT細胞の存在下、HLA陰性共刺激細胞の存在下、またはその両方で起こる、項1~18のいずれか一項に記載の方法。
20.前記刺激が、ペプミックスパルス自己活性化T細胞の存在下、HLA陰性共刺激細胞の存在下、またはその両方で起こる場合、前記刺激ステップは第1の刺激ステップではない、項19に記載の方法。
21.前記ペプチドライブラリーが、長さが少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、もしくはそれ以上のアミノ酸を含む、またはこれらの長さ以下のペプチドを含む、項1~20のいずれか一項に記載の方法。
22.ペプチドライブラリーが、長さが15アミノ酸のペプチドを含む、項1~21のいずれか一項に記載の方法。
23.前記ライブラリー中のペプチドが11アミノ酸だけ他のペプチドと配列が重複している、項1~22のいずれか一項に記載の方法。
24.前記第1の刺激ステップによって産生されるT細胞が、1つ以上の後続の刺激ステップに供される、項1~23のいずれか一項に記載の方法。
25.前記後続の刺激ステップが、IL-7およびIL-15の存在下で起こる、項24に記載の方法。
26.前記後続の刺激ステップが、活性化T細胞、共刺激細胞、IL-7、およびIL-15の存在下で起こる、項24または25に記載の方法。
27.方法が、前記方法によって産生されたT細胞を、ペプチドのライブラリーに予め曝露された活性化B細胞に曝露することなしに起こる、項1~26のいずれか一項に記載の方法。
28.細胞が発現ベクターから遺伝子産物を発現するように改変される、項1~27のいずれか一項に記載の方法。
29.前記細胞が、キメラ抗原受容体、γδT細胞受容体、またはそれらの組合せを発現するように改変される、項29に記載の方法。
30.前記方法によって産生される治療有効量のT細胞が、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、HIV、および/またはVZVに曝露された個体、あるいはEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、HIV、および/またはVZVに対して血清陽性である個体、あるいはEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、HIV、および/またはVZVに関連する疾患を有する個体、に提供される、項1~29のいずれか一項に記載の方法。
31. 前記個体が、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、HIV、および/またはVZVに関連する医学的状態を有すると決定されることを含む、項1~30のいずれか一項に記載の方法。
32.前記方法の1つ以上のステップが、外来的に添加されたIL-4、IL-2、または両方の存在を欠く、項1~31のいずれか1つに記載の方法。
33.HPV以外のウイルスに特異的なT細胞を刺激する方法であって、IL-7およびIL-15の存在下、ならびに共刺激細胞の存在下で、ウイルスに特異的なT細胞を抗原提示細胞で刺激することを含み、前記抗原提示細胞は1以上のペプチドに予め曝露され、前記ペプチドはHPV以外のウイルスの1以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含む、方法。
34.ウイルス関連疾患または非ウイルス関連疾患の治療用T細胞を産生する方法であって、IL-7およびIL-15の1つ以上の存在下、および共刺激細胞の存在下で、HPV以外のウイルスに特異的なT細胞を抗原提示細胞と共に刺激するステップを含み、前記抗原提示細胞が1つ以上のペプチドに予め曝露されており、前記ペプチドがHPV以外のウイルスの1つ以上のタンパク質の配列の少なくとも一部に対応する配列を含み、前記刺激が、前記ウイルス関連疾患の治療用T細胞を産生する、方法。
【0058】
上記は以下の本発明の詳細な説明がよりよく理解され得るように、本発明の特徴および技術的利点をかなり広く概説した。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明の追加の特徴および利点を以下に説明する。開示される概念および特定の実施形態は本発明の同じ目的を実行するための他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。当業者なら、添付の特許請求で説明したような本発明の精神および範囲から、このような等価な構成が、逸脱しないことも認識すべきである。本発明の特徴であると考えられる新規な特徴はその構成および動作方法の両方に関して、更なる目的および利点と共に、添付の図面と関連して考慮されるとき、以下の説明からより良く理解されるのであろう。しかしながら、図面の各々は、例示および説明の目的のみのために提供され、本発明の限定の定義として意図されないことが明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本発明をより完全に理解するために、添付の図面と共に以下の説明を参照する。
【0060】
図1】本開示のウイルス特異的T細胞(virus-specific T-cell)(VST)生成方法の一般的な実施形態を図示する。
【0061】
図2】IL-4およびIL-7を使用する既知の方法と比較して、IL-7およびIL-15を使用する本開示の方法の改善された特異性を実証する。
【0062】
図3】IL-7およびIL-15の存在下で増殖したリンパ腫患者のEBVSTの改善された特異性を示す。
【0063】
図4】高用量のIL-15がVSTの特異性を高めることを実証する。
【0064】
図5】高用量のIL-15がセントラルメモリーEBVSTを増加させることを示す。
【0065】
図6】一部の患者からのEBVSTにおける過剰なNK細胞成長を示す。
【0066】
図7】CD45RA枯渇PBMCからのペプミックス活性化EBVSTの生成を示す。
【0067】
図8】CD45RA枯渇が健康なドナーから拡大したEBVSTにおけるCD3-CD56+NK細胞の頻度を減少させることを実証する。
【0068】
図9】CD45RA+細胞の除去がEBVSTの増殖を増加させることを示す。
【0069】
図10】CD45RA枯渇がEBVSTの倍率拡大を増強したことを示す。
【0070】
図11】CD45RAの枯渇が第2の刺激の終わり(16日目)にEBVSTの抗原特異性を増強することを示す。
【0071】
図12】CD45RA枯渇がEBVSTの抗原特異性を高めることを実証する。
【0072】
図13】第3の刺激後に持続したCD45RA欠乏EBVSTの抗原特異性の増加を示す。
【0073】
図14】CD45RA枯渇がリンパ腫患者のEBVSTにおけるNK細胞集団成長を減少させることを実証する。
【0074】
図15】CD45RA枯渇がリンパ腫患者のEBVSTにおける抗原特異的T細胞の頻度を増加させたことを示す。
【0075】
図16】CD45RA枯渇がリンパ腫患者由来のEBVSTにおける抗原特異性を高めたことを示す。
【0076】
図17】リンパ腫患者のEBVSTの増殖に対するCD45RA枯渇の効果を示す。
【0077】
図18】CD45RA枯渇がぺプミックスパルスで自己活性化されたT細胞(aATC)に対する細胞溶解活性を増強したことを示す。
【0078】
図19】EBV、CMV、アデノウイルス、BKウイルス、およびHHV6に特異的なT細胞(マルチウイルス特異的T細胞)の生成の実施形態を示す。
【0079】
図20】マルチウイルス特異的T細胞の拡大を示す。
【0080】
図21】マルチウイルス特異的T細胞の抗原特異性を示す。
【0081】
図22】第1の刺激後のVZV特異的VSTの増殖を示す。
【0082】
図23】第2の刺激後のVZVSTの拡大を示す。
【0083】
図24】最初の刺激後(8日目)のVZVSTの特異性を実証したものである。
【0084】
図25】2回目の刺激後(16日目)のVZVSTの特異性を実証したものである。
【0085】
図26】HIV血清陽性ドナーからのHIV特異的T細胞の製造を例示する。
【0086】
図27】第2の刺激におけるK562細胞による最適な拡大を示す。
【0087】
図28】K562の存在下で、HIV抗原特異的T細胞(HIVST)がわずか2回の刺激後に臨床的に関連のある数に拡大したことを示す。
【0088】
図29】HIVSTが複数のHIV抗原に特異的であることを示す。
【0089】
図30】HIVSTが混合CD4+およびCD8+T細胞を含むことを実証したものである。
【0090】
図31】HIVSTが抗原パルス標的およびHIV感染標的を溶解し得ることを実証したものである。
【発明を実施するための形態】
【0091】
本出願の範囲は、明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図していない。
【0092】
長年にわたる特許法の慣例に従い、「a」および「an」という用語は、特許請求の範囲を含む単語「comprising」と一緒に本明細書で使用される場合、「1つまたは複数」を意味する 本発明のいくつかの実施形態は、本発明の1つまたは複数の要素、方法ステップ、および/または方法からなるか、または本質的にそれらからなることができる。本明細書中に記載されるいずれの方法または組成物も、本明細書中に記載される任意の他の方法または組成物に関して使用され得ることが意図される。
【0093】
本開示はEBV特異的、CMV特異的、アデノウイルス特異的、ワクシニアウイルス特異的、および/またはVZV特異的T細胞を必要とする個体のための治療用T細胞の産生および使用に関し、個体におけるこれらのウイルスの1つ以上に関連する医学的状態を処置することを含む。いくつかの実施形態において、本開示は、非ウイルス性癌のための治療用T細胞の産生および使用に関する;このような場合、1つ以上のCARがVSTにおいて発現され、そしてワクチン接種または腫瘍溶解性ウイルスがそれらのT細胞受容体を介してCAR-VSTを刺激するために使用される。特定の実施形態では治療用T細胞がIL-7およびIL-15の存在下でのAPCの刺激によって生成され、ここで、APCは1つ以上のウイルス抗原に向けられたペプチドライブラリーに予め曝露されている。
【0094】
特定の態様において、本開示は、養子T細胞移入に関連する課題に対処する。例えば、腫瘍誘発性T細胞アネルギーに対処するために、本発明者らはサイトカインの種々の組み合わせを評価し、そして少なくともいくつかの場合において、IL-7と組み合わせた高用量のIL-15が、アネルギー性抗原特異的T細胞の拡大を促進することを決定した(図2)。したがって、第1の刺激では、IL7(10ng/mL)およびIL15(100ng/mL)の存在下で、重複ペプチドライブラリー(例えば、11アミノ酸が重複し、目的のタンパク質に及ぶ15マーアミノ酸を含むペプミックス)でPBMCをパルスすることによって、抗原特異的T細胞を活性化する。ここで、本発明者らは、いくつかの異なるウイルス由来の抗原を評価して、ウイルス特異的T細胞(virus-specific T-cell)(VST)を作製した。
【0095】
抗原提示細胞の1つの問題に対処するために、本発明者らはペプチドでパルスされた自己活性化T細胞がシグナル1(T細胞受容体(TCR)のその対応するペプチド-MHC複合体への結合)を提供し、HLA陰性LCLが共刺激(シグナル2)を提供する抗原提示細胞複合体を評価した。代替の人工共刺激細胞系は例えば、CD80、CD86、CD83および4-1BBリガンドを発現するように遺伝的に改変されたHLA陰性K562細胞系である。この場合、共刺激は、異なる細胞型に対してトランスで提供される。このような場合、HLA抗原は強力な抗原であり、同種特異性T細胞を活性化することができ、EV-LCLは自然に一連の共刺激分子を発現するので、HLA抗原は存在しないはずである。
【0096】
このストラテジーは、刺激抗原に対して特異性でVSTの対数倍の拡大を誘導することができる。いくつかのドナーにおいて、このストラテジーはNK細胞を強力に拡大するので、本発明者らはまた、枯渇ステップを導入した。例えば、PBMCからCD45RA+T細胞を枯渇させることができる。これは、NK細胞のみならず、ナイーブT細胞および天然制御性T細胞も枯渇させる。CD45RA欠乏PBMCから増殖したVSTはより高い抗原特異性を有し、より大きな倍率拡大を示し、そして最小のNK細胞を有する。さらに、いくつかの個体から、本発明者らはそれらが最初にPBMCからRA+T細胞を枯渇させた場合にのみ、VSTを増殖させることができた。
【0097】
(I.ウイルス抗原およびペプミックスの生成)
本開示の方法は、ペプチドの混合物をT細胞に提示する抗原提示細胞を利用する。そのような「負荷された」APCは刺激のために末梢血T細胞に曝露する前に生成され、負荷されたAPCの生成は末梢血T細胞に対して刺激ステップを実行する個体または実体によって実行されてもされなくてもよい。従って、いくつかの実施形態において、有効量のペプチドライブラリーは、治療的ウイルス特異的T細胞(VST)または抗原特異的T細胞を最終的に生成する方法の一部としてAPCに提供される。本開示の方法では、刺激ステップの前に、APCを十分な量のペプチドライブラリーに曝露する。ライブラリーは、特定の場合、同じ抗原の一部または全部にわたるペプチドの混合物(「ペプミックス」)を含む。特定の実施形態では、APCのペプチドは非天然である。
【0098】
1つ以上の抗原由来のペプチドの混合物のライブラリーを利用する場合、種々のペプチドは所与のタンパク質の任意の部分由来であり得るが、特定の場合において、ペプチドはタンパク質の大部分または全ての長さにわたり、ここで、ペプチドの配列は特定の抗原の所望の領域全体の容易にカバーするために、少なくとも部分的に重複する。場合によっては、ペプチドは、ペプチドが対応するそれぞれの抗原の長さ、または1つ以上の既知のエピトープもしくはドメインに及ぶ。特定の領域は例えば、N末端ドメイン、C末端ドメイン、細胞外ドメイン、または細胞内ドメインなどの領域を含む、領域の長さにわたるペプチドによって覆われてもよい。
【0099】
ペプチドが由来する抗原は任意の種類であり得るEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVに対する抗原であるが、特定の実施形態では抗原がそれぞれ、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZV感染に関連する医学的状態に対して細胞傷害性T細胞を標的化することを可能にするようなものである。特定の実施形態では、ペプチドが少なくとも1つのタイプのEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、またはVZVの1つ以上の抗原に由来するか、またはその少なくとも一部に対応する配列を有する。場合によってはぺプミックスライブラリーが単一のウイルス由来の1つ以上の抗原に対応するペプチドを含み、これらのペプチドは問題の抗原全体にわたって配列カバレッジを提供してもしなくてもよい。他の場合にはペプミックスライブラリーが複数のウイルス由来の1つ以上の抗原に対応するペプチドを含み、これらのペプチドは問題の抗原全体にわたって配列カバレッジを提供しても、提供しなくてもよい。ペプミックスは、1つ以上の特定の抗原の1つ以上の特定の領域に対応するペプチド、または1つ以上の特定の抗原の全体に対応するペプチド、に対して濃縮されてもされなくてもよい。
【0100】
本開示において利用されるペプミックスは、市販のペプチドライブラリー由来であり得、および/または合成的に生成され得る。利用可能なライブラリーの例としては、JPT Technologies(Springfield、VA)またはMiltenyi Biotec(Auburn、CA)からのライブラリーが挙げられる。ウイルス抗原の公知の配列に基づく当業者は、例えばそれらの例示的なそれぞれの配列に対応するペプチドを生成することができるのに十分な情報を有するのであろう。当業者はこれらの周知のウイルス由来の抗原の公知の配列に基づいて、例えば、それらの例示的なそれぞれの配列に対応するペプチドを生成できるのに十分な情報を有するのであろう。
【0101】
特定の実施形態において、ライブラリーはそれらのそれぞれの抗原に対応する特定の長さのペプチドから構成されるが、いくつかの場合において、ライブラリーは2つ以上の異なる長さを有するペプチドの混合物から構成される。ペプチドは一定の長さであってもよく、ある量の配列において重複していてもよいが、いくつかのライブラリーにおいては重複の長さにばらつきがあってもよい。特定の実施形態では、ペプチドが例えば、長さが少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35またはそれ以上のアミノ酸である。特定の実施形態では、例えば、長さが少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、または34アミノ酸のペプチドの間に重複が存在する。特定の実施形態では、ペプチドが15アミノ酸長であり、11アミノ酸だけ互いに重複する。異なるペプチドの混合物は任意の比の異なるペプチドを含み得るが、いくつかの実施形態において、各特定のペプチドは別の特定のペプチドと実質的に同じ量で混合物中に存在する。ペプチドの配列における抗原のカバレッジはランダムであってもよく、抗原の所与の領域にわたって実質的に均一であってもよいが、いくつかの実施形態ではライブラリーが例えば、エピトープまたはその一部をコードすることが知られている1つ以上のペプチドなどの、1つ以上の特定のペプチドについて富化されてもよい。
【0102】
特定の実施形態では、特定の抗原タンパク質のペプミックスが例えば、8~10アミノ酸長である全ての可能なHLAクラスIエピトープを含む。特定の実施形態では、より長いペプチドを利用して、特定のペプチドについてのすべてのクラスIIエピトープをカバーする。場合によっては、エピトープの長さの範囲は12~25アミノ酸である。
【0103】
(治療用VSTの製造および使用方法)
(治療用VSTの製造)
特定の局面において、本開示は、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVのうちの少なくとも1つ由来の1つ以上の抗原を標的とするVSTの開発に関する。
【0104】
T細胞を産生する方法において、末梢血T細胞は、最初、少なくとも1つのウイルス抗原のいくつかまたは全てにわたる1つ以上のペプチドに曝露されたAPCで刺激される。抗原性ペプチドはペプチド混合物のライブラリーとしてAPCに提供されてもよく、ペプミックスの複数のライブラリーはAPCの同じコレクションに提供されてもよい。いくつかの実施形態において、このコレクションは、免疫優性抗原および亜優性抗原の両方を含む。
【0105】
本開示の実施形態において、治療用T細胞が生成され、ウイルス感染を有するか、またはウイルス感染から間接的もしくは直接的に生じるウイルス関連医学的状態を有する危険性がある個体に提供され得るか、または非ウイルス感染腫瘍を有する個体に提供される。治療用T細胞を産生する方法では、特定の条件下で、末梢血T細胞を、1つ以上のウイルス由来の1つ以上のウイルス抗原の一部または全部にわたるペプチドのライブラリーをロードしたAPCと混合する。特定の実施形態では刺激ステップのために、T細胞はPBMCの集団内に存在する。
【0106】
したがって、末梢血T細胞の供給源は任意の種類であり得るが、特定の実施形態では供給源はPBMCであり、いくつかの場合において、複数のPBMCが本方法において利用され、複数のPBMCは末梢血T細胞を含む。末梢血T細胞は、PBMCから少なくとも部分的に単離または精製され得る。場合によってはPBMCは非接着性であり、場合によってはPBMCはCD45RA枯渇である(ここで、枯渇はAPCへのPBMCの暴露の前に生じる)。特定の実施形態では、末梢血T細胞が正常標準と比較して、減少した数のCD45RA陽性細胞を有する。末梢血T細胞またはPBMCは例えば、磁気標識および分離(例えば、Miltenyi(登録商標)BiotecカラムまたはStemSep(TM)磁気ビーズを使用する)を含む当該分野における通常の手段を使用することによって、特定の細胞について枯渇され得る。本明細書で使用する「枯渇した」という用語は、CD45RA陽性細胞を実質的に含まない末梢血T細胞またはPBMCを指す。場合によっては、「枯渇した」とは末梢血T細胞またはPBMCの最初のコレクション中のこれらの細胞の数と比較して、CD45RA陽性細胞の特定の割合の減少が存在することをいう。CD45RA陽性細胞の数は、末梢血T細胞またはPBMCの最初のコレクションから減少する。なぜなら、それらは、CD45RA陽性細胞を除去するために特異的に操作されるからである。場合によっては、CD45RA陽性細胞を除去するための最初のコレクションの操作の後に、末梢血T細胞またはPBMCの最初のコレクションからのCD45RA陽性および/またはCD45RO陽性細胞の減少は、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。いくつかの実施形態において、骨髄性細胞は、磁気ビーズまたはプラスチック接着を用いて除去され得る。
【0107】
いくつかの実施形態ではEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZV由来の少なくとも1つの抗原を標的とするT細胞を生成する方法があり、これは一般に、複数のPBMCを、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニア、および/またはVZV由来の1つまたは複数の特定のウイルス抗原に対応するペプチドのライブラリー由来のペプチドのためにロードされた複数のAPCと接触させることによって行われる。特定の実施形態では、2つの細胞集団の曝露がT細胞の拡大を可能にする。特定の実施形態では、刺激ステップが1つ以上の特定のサイトカインの存在下で起こる。特定の実施形態では1つ以上のサイトカインはIL-7および/またはIL-15であるが、代替の実施形態ではサイトカインがIL-2、IL-15、IL-7、IL-21、IL-12、IL-6、IL-4、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では本方法の1つ以上のステップがIL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-12、および/またはIL-21の存在下では起こらないが、代わりに、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-12、および/またはIL-21を利用してもよい。サイトカインの存在への言及は外因的に添加されたサイトカインの存在、すなわち、細胞の培養物内に存在するかまたは細胞培養物によって分泌されるサイトカインを排除することである。いくつかの実施形態では、ペプチドがHPV抗原ではないウイルス抗原の一部または全部にわたって配列が重複するペプチドとしてさらに定義される。例えば、特定の局面において、ペプチドは少なくとも10アミノ酸、特に11アミノ酸だけ重複し、そしていくつかの実施形態において、ペプチドは、少なくとも12以上のアミノ酸長、特に15アミノ酸長である。
【0108】
細胞培養物に含めるための所与のサイトカインの適切な量または濃度の選択は、当業者または当業者の能力の範囲内である。例として、以下は、特定のインターロイキンおよび使用され得る適切な濃度の例のリストである:
【0109】
インターロイキン6(IL-6):50~150ng/ml、約50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/ml、110ng/ml、120ng/ml、130ng/ml、140ng/mlまたは150ng/mlのうちのいずれか;
【0110】
インターロイキン7(IL-7):5~15ng/ml、約5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、11ng/ml、12ng/ml、13ng/ml、14ng/mlまたは15ng/mlのうちのいずれか;
【0111】
インターロイキン12(IL-12): 5~15ng/ml、約5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、11ng/ml、12ng/ml、13ng/ml、14ng/mlまたは15ng/mlのうちの1つ;
【0112】
インターロイキン15(IL-15): 5~15ng/ml、約5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、11ng/ml、12ng/ml、13ng/ml、14ng/mlまたは15ng/mlのうちの1つ。
【0113】
以下の表1は、本開示の方法の特定の実施形態の例を提供する。
【0114】
【表1】
【0115】
したがって、特定の実施形態では、T細胞集団(集団がいくつか、大部分、または実質的にすべてのT細胞を含み得る、またはT細胞集団がPBMC内などの細胞の別の集団内にある)をAPC集団に曝露して、少なくとも以下のいずれかを含む特定の特徴を有するT細胞株を生成する:a)ウイルス抗原の標的化における有効性;b)多クローン性;c)TH1バイアス;d)最小限の分化した記憶型;またはe)それらの組み合わせ。特定の実施形態では細胞は最小限に分化してもよいが、場合によってはすべてが分化していなくてもよく、あるいは大部分がいくぶん分化してもよい。
【0116】
いくつかの場合において、T細胞は2回以上刺激され、そして異なる刺激ステップは細胞の集団を同じ条件に曝露してもしなくてもよい。特定の実施形態では、第1の刺激が第2の刺激および/または第3の刺激を含む、後続の刺激とは異なる条件を有する。特定の実施形態では、本方法の第1の刺激ステップは、ペプミックス負荷DCまたはペプミックス負荷PBMCであるAPCを利用し、IL-7およびIL-15を利用するが、代替の実施形態ではステップがIL15、IL-7、IL21、IL12、IL-6および/またはIL-4から選択される1つ以上のサイトカインを利用する。この刺激ステップは、場合によっては1回以上繰り返すことができる。
【0117】
本方法の特定の実施形態では末梢血T細胞(またはPBMC)のペプミックスまたはAPCへの最初の曝露後8日目から10日目の間に、8日目、9日目、または10日目にPBMCの再刺激があり得るが、その後であることはめったにないが、その後の再刺激は15日目、16日目、または17日目に生じ得る(1つの具体的な実施形態の一例として図7を参照のこと)。
【0118】
場合によっては、第1の刺激ステップに続く刺激ステップ(第1の刺激ステップの任意の反復を含む)、第1の刺激後に得られる(細胞の不均一な集団に存在し得る)T細胞が、ぺプミックス負荷DCまたはぺプミックス負荷PBMCおよび/またはぺプミックスパルスで自己活性化したT細胞および/またはHLA陰性共刺激細胞に曝露され得る。一般に、HLA-ve共刺激細胞と組み合わせたぺプミックスパルスしたAATCを用いて、8~10日目の2回目の刺激後に、十分な細胞が産生される。場合によっては、同じ抗原提示複合体を用いて第3の刺激が必要となることがある。任意の刺激段階において利用され得る共刺激細胞は、少なくとも、CD86、4-1BBおよび/またはCD83を発現する細胞、および/またはHLA陰性リンパ芽球様細胞である細胞、を含む。特定の場合において、共刺激細胞は、遺伝子改変K562細胞であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、本方法のステップの間に、培養物中の細胞が改変される。特定の実施形態において、細胞は特定の目的または機能(例えば、特定の標的を標的化するために有効またはより効果的、および/またはT細胞媒介性細胞傷害性のための機能が増強される)のために細胞を有効またはより効果的にする遺伝子産物を発現するポリヌクレオチドを有するように改変される。特定の実施形態において、細胞は、T細胞が特定の抗原を発現する細胞のような所望の標的細胞を効果的に、またはより効果的に標的化することを可能にする特定の非天然受容体を発現するように改変される。特定の実施形態において、細胞は、キメラ抗原レセプター(chimeric antigen receptor)(CAR)などを発現するように改変される。細胞は発現ベクター(ウイルス(レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等を含み得る)または非ウイルス(例えば、piggyBacのようなトランスポゾン)であり得る)を発現するように、例えば、ベクターが長期再増殖ポテンシャルを有するT細胞中で発現されるように、培養の2日目から5日目の間に導入されるベクターのような特定の時点で、改変されてもよい。特定の実施形態では細胞が各刺激後約3日以内に発現ベクターに曝露されるが、このような場合、修飾はより長期の可能性の少ない場合(例えば、導入遺伝子が潜在的毒性を有する場合のように、遺伝子修飾細胞の長期発現が望ましくない場合など、特定の状況が望ましい場合)、より分化したT細胞において起こる。
【0120】
具体的な実施形態では、細胞がEphA2、HER2、GD2、Glypican-3、5T4、8H9、αβインテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD19、CD20、CD22、カッパ軽鎖、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRvIII、EGP2,EGP40、EPCAM、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、FAP、FAR、FBP、胎児AchR、葉酸受容体α、GD2、GD3、HLA-AI MAGE A1、HLA-A2、IL11Ra、IL13Ra2、KDR、Lambda、Lewis-Y、MCSP、Mesothelin、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2リガンド,NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSC1、PSMA、ROR1、Sp17、サバイビン、TAG72、TEM1、TEM8、VEGRR2、癌胎児性抗原、HMW-MAA、VEGF受容体、および/またはフィブロネクチン、テネイシンのような、腫瘍の細胞外マトリックスに存在する他の模範的な抗原、または、腫瘍の壊死領域およびその他の腫瘍関連抗原、または腫瘍のゲノム解析または差次的発現研究によって同定された対処可能な変異、などが挙げられる。
【0121】
(B.治療用VSTの使用)
特定の実施形態では、本開示の方法によって産生される細胞は、医学的状態の処置を必要としている個体に、または医学的状態の症状が検出可能または発現していないウイルス感染またはウイルス関連癌もしくは非ウイルス関連癌を標的にするために提供される。本明細書中で使用される場合、「処置」または「処置すること」は疾患もしくは病理学的状態の症状または病理学に対する任意の有益な効果もしくは望ましい効果を含み、そして処置される疾患または状態の1つ以上の測定可能なマーカーにおける最小の減少さえ含み得る。処置は場合により、疾患または状態の症状の軽減または改善、または疾患または状態の進行の遅延のいずれかを含み得る。「処置」は、必ずしも、疾患もしくは状態、またはその関連症状の完全な根絶または治癒を示すものではない。
【0122】
本開示によって包含される方法において、治療用T細胞は単一の非HPVウイルスによって直接または間接的に引き起こされるウイルス関連疾患を処置するために利用されるか、またはそうでなければ、単一の非HPVウイルスに対して血清陽性である個体に提供される。他の場合において、治療用T細胞は2つ以上のウイルスによって直接的または間接的に引き起こされる疾患を処置するために利用される。治療用T細胞のコレクションにおいて、各T細胞およびその子孫は1つのウイルス由来の1つの抗原における1つのペプチドのみに対して特異性を有し、そして治療用T細胞のコレクションの産生の際に、例えば、各ウイルス抗原における複数のエピトープなどに対して一緒に多重特異性を有するT細胞クローンの集団を拡大する。
【0123】
本開示の少なくともいくつかの方法において、それにより生成されるVSTの治療有効量は個体、例えば、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVに関連する疾患を有するか、またはEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVに関連する疾患に罹患しやすいことが知られている個体に投与される。特定の実施形態では、細胞が例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、腹腔内などの注射によって投与される。いくつかの実施形態において、VSTは、ポリクローナルCD4+およびCD8+ VSTであり得る。PBMCは、個体に対して同種異系または個体に対して自己であってもよい。
【0124】
特定の場合において、新生物は本開示の細胞で処置され、そして新生物は良性、悪性、または癌をもたらし得る前癌病変であり得る。従って、個体は前癌病変段階で、および/または病変が悪性になった後に、本開示の方法によって産生された細胞で処置され得る。個体は初期または後期の癌を有し得、そして当業者は細胞を産生する方法が例えば、初期および後期の癌に関連する抗原に由来するAPCのためのペプチドを利用することによって、癌のこのような異なる段階のために調整され得ることを認識する。特定の実施形態において、癌は、原発性、転移性、再発性、難治性などであり得る。
【0125】
場合によっては細胞の投与前に医学的状態に関連するウイルス(単数または複数)を決定することができるが、場合によってはウイルスタイプ(単数または複数)は決定されない。特定の実施形態ではEBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVに特異的な細胞はそれぞれ、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVに対して陽性である個体に対して活性を有する。いくつかの場合において、本明細書中に包含されるウイルスの1つに特異的な細胞は、非ウイルス性腫瘍に対する受容体で遺伝子改変され、次いで、その非ウイルス性腫瘍を処置するために注入され、その結果、ウイルスまたはウイルス性抗原は、例えば、ワクチン接種によって、または腫瘍溶解性ウイルスもしくは内因性ウイルスを使用することによって、インビボでT細胞の拡大を刺激するために使用され得る。
【0126】
本方法の刺激ステップのAPCが異なるウイルス抗原のペプミックスを一緒にロードされる場合、このようなAPCを通じて拡大されたT細胞の投与の結果は、個体がウイルスに曝露されたかどうかによって決定される。例えば、特定の態様において、個体があるウイルスに感染した場合、そのウイルスに特異的なT細胞のみが応答し、これは、感染が最初にそのウイルスに対するT細胞応答を刺激したためである。これらのT細胞は個体内で増殖し、次いで、記憶T細胞になり、活性化されていない別のウイルスに特異的なT細胞よりも高い数となるだろう。
【0127】
治療される個体は、ウイルス関連疾患を有すること、ウイルス関連疾患を有することが疑われること、またはウイルス関連疾患のリスクがあることが知られていてもよい。処置される個体はウイルスの存在を有し得るが、ウイルス関連の医学的状態のいかなる有害な症状もまだ存在しない。個体は、それらを非HPVウイルスに曝露する環境または事象を与えられた場合、非HPVウイルス関連疾患のリスクがあり得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、本開示の方法によって産生される細胞の1回以上の投与は、それを必要とする個体に提供される。複数回の投与の間の期間の長さは、その後の投与が癌に対して有効である限り、任意の適切な期間であり得、数日、数週間、数ヶ月、または数年のオーダーを含む。細胞の2回以上の投与が個体に提供される場合、細胞が標的とされる抗原は、先の投与(単数または複数)において利用される細胞と同じ抗原であってもなくてもよい。例えば、細胞の最初の投与において、それらは1つのウイルス抗原を標的とし得るが、細胞の別の投与において、細胞は少なくともいくつかの場合において、異なるウイルス由来を含む異なる抗原を標的とする。
【0129】
場合によっては、個体が当該分野における任意の好適な手段によって、ウイルス感染を有することが任意に決定される。PCR、サザンブロットハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーションを利用するDNA試験などの感染診断方法を用いることができ、これらの方法は例えば、他の方法と併用してもしなくてもよい。
【0130】
特定の実施形態では、個体は免疫無防備状態にある(例えば、感染性疾患または癌と免疫系で戦う能力が損なわれているか、または全く無い個体と定義することができる)。特定の実施形態では、免疫無防備状態の個体が例えば、幹細胞移植(造血幹細胞移植を含む)を受けており、臓器移植を受けており、および/または化学療法もしくは放射線を含む1つ以上の癌処置を受けており、またはHIVに感染している。場合によっては、個体が後天性または遺伝性の免疫不全障害を有する。いくつかの実施形態において、それらの疾患および/またはその処置によって免疫不全であるものは、本開示の方法および/または組成物が提供される。
【0131】
(A.エプスタイン-バーウイルス)
ヒトヘルペスウイルス4(HHV-4)とも呼ばれるエプスタイン-バーウイルス(EBV)は、ヒトヘルペスウイルス科で知られている8種類のウイルスの1つである。EBVは、伝染性単核球症、いくつかの形態の癌(ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、胃癌、上咽頭癌、NK/Tリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および平滑筋肉腫を少なくとも含む)、ならびに有毛白板症および中枢神経系リンパ腫を含むヒト免疫不全ウイルス(HIV)に関連する特定の状態を引き起こす。本開示の方法において、EBV感染または1つ以上のEBV関連の医学的状態は、細胞を使用して処置される。
【0132】
EBVは約90のタンパク質をコードするが、これらの限られた画分はEBV関連悪性腫瘍において発現される。約80個の遺伝子がウイルス溶解サイクルに関与し、約9個の遺伝子がウイルス潜伏に関連する。いくつかの腫瘍では4つのEBV遺伝子のみが発現され、他の腫瘍では2つのEBV遺伝子のみが発現される。最近、いくつかの腫瘍は不完全ウイルス複製を受け、初期ウイルスタンパク質を発現することが示されており、それらはまた、溶解サイクルからの予期しない転写物を発現することも示されている。これらの全ての提供された転写物は、VSTの潜在的な標的抗原をコードし得る。一般に、EBV2型潜伏抗原と考えられるLMP1、LMP2、BARF1およびEBNA1を標的とすることができる。しかし、場合によっては、初期ウイルスタンパク質、例えば、BZLF1、BRLF1、BMLF1によってコードされるもの、またはBXLF1/2などの予期せぬ転写産物を標的とすることもできる。
【0133】
(B.サイトメガロウイルス)
ヒトヘルペスウイルス-5としても知られるサイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルス科のウイルスである。CMV感染は感染個体が乳児または免疫不全(例えば、臓器または組織または細胞移植レシピエント(同種骨髄移植後を含む))でない限り、通常は疾患をもたらさない。CMVの任意の抗原は本開示の方法によって産生される細胞で標的化され得るが、特定の実施形態では抗原が即時初期抗原IE1、およびテグメントタンパク質pp65である。
【0134】
(C.アデノウイルス)
アデノウイルスは、感冒、のどの痛み(咽頭炎)、気管支炎、肺炎、下痢、ピンクアイ(結膜炎)、発熱、膀胱炎、胃腸炎、および神経疾患を引き起こしうる。健康な個体は、アデノウイルス関連の重篤な疾患または死に罹患しにくい。しかし、乳児や免疫機能が低下している人、あるいは呼吸器疾患や心臓疾患が存在している人は、アデノウイルス感染によって重篤な疾患を発症するリスクが高くなる。
【0135】
本開示の細胞は任意のアデノウイルス抗原を標的とすることができるが、特定の実施形態では抗原はヘキソンおよび/またはペントンである。
【0136】
(D.ワクシニアウイルス)
ワクシニアウイルス(VACVまたはVVとも呼ばれる)は牛の牛痘を引き起こすポックスウイルスであるが、天然痘に対する有効なワクチンを提供しており、本開示の方法によって産生された細胞で治療することができる。ワクシニアウイルスの任意の抗原は本開示の方法によって産生される細胞で標的化され得るが、特定の場合において、抗原はE3L、A10L/121L、H3L/093L、G5R/074R、C7L/018R、B22R/189R、D8L、E5R、E4L、f17R、A17L、および/またはL4Rである。
【0137】
(E.水痘帯状疱疹ウイルス)
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は、ヒトおよび脊椎動物に感染することが知られている8種類のヘルペスウイルスの1つである。VZVは小児、10代および若年成人に水痘を引き起こし、成人および一部の小児に帯状疱疹(帯状疱疹)を引き起こす。VZVは、水痘ウイルス、水痘ウイルス、帯状疱疹ウイルス、およびヒトヘルペスウイルス3型(HHV-3)を含む多くの名前で知られている。
【0138】
ペプチド(またはその配列)の供給源として利用され得るVZV抗原は、キャプシド、エンベロープ、または可溶性抗原のいずれかを含む。具体的な例としては、V抗原、S抗原、IE61、IE62、IE63、gEおよびORF10が挙げられる。
【0139】
VZVのワクチン(VARIVAX(登録商標)およびZOSTAVAX(登録商標))は、ヒトにおいて限定された感染を引き起こす生弱毒化ウイルスを含む。
【0140】
(III.医薬組成物)
本開示によれば、用語「医薬組成物」は、個体に投与するための組成物に関する。好ましい実施形態において、医薬組成物は、非経口、経皮、管腔内、動脈内、髄腔内または静脈内投与のための、または癌への直接注射のための治療用免疫細胞を含む組成物を含む。医薬組成物は、注入または注射によって個体に投与されることが特に想定される。適切な組成物の投与は異なる方法によって、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、局所または皮内投与によって行うことができる。
【0141】
本開示の医薬組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み得る。適切な医薬担体の例は当技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水を含み、細胞は、注入用のヒト血清アルブミンなどのタンパク質を注入するのに適した滅菌緩衝液中にあってもよい。
【0142】
投与用量レジメンは、適切な地方および連邦の規制当局によって承認された臨床プロトコルによって決定される。医療分野で周知のように、任意の1人の患者に対する投薬量は例えば、患者のサイズおよび体表面積を含む多くの因子に依存する。特定の投与量は、5×10/m~5×10/mであり得る。過程は、定期的な評価によってモニターすることができる。
【0143】
ウイルス抗原に対して生成されるVSTに関する本開示の特定の実施形態において、臨床的側面のための本開示の方法は、ウイルスが関連する1つ以上の医学的状態の処置において有効な他の薬剤と組み合わされる。
【0144】
(IV.開示のキット)
本明細書に記載の組成物のいずれも、キットに含めることができる。非限定的な例では、ペプミックスのライブラリーをキットに含めることができ、任意のタイプの細胞をキットに提供することができ、および/またはペプミックスの操作のための試薬および/または細胞をキットに提供することができる。サイトカインまたはサイトカインを産生する手段(それらをコードするベクターなど)をキットに含めることができる。細胞培養試薬および/または装置が含まれてもよい。構成要素は、適切な容器手段で提供される。
【0145】
キットは、本開示の適切に分注された組成物を含み得る。キットの構成要素は、水性媒質中または凍結乾燥形態にある状態でパッケージ化することができる。キットの容器手段は一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器を含み、その中に構成要素を配置し、好ましくは適切に等分することができる。キット中に2つ以上の成分がある場合、キットは一般に、第2、第3、または他の追加の容器も含み、その中に追加の成分を別々に配置することができる。しかし、成分のさまざまな組み合わせが1つのバイアル中に含まれてもよい。また、本発明のキットは、典型的には商業的販売のために成分を密閉して収容するための手段を含む。このような容器は、所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形プラスチック容器を含み得る。
【0146】
しかし、キットの構成要素は、乾燥粉末として提供され得る。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供される場合には、粉末を適した溶媒の添加によって再構成することができる。溶媒が別の容器手段の中に同じく提供されることが想定されている。
【0147】
いくつかの場合において、ウイルス感染を検出するための試薬および/またはデバイスが、キットに含まれ得る。例としては、スワブ、スパチュラ、サイトブラシ、スライド、カバーガラス、細胞学試料収集容器などが挙げられる。ウイルス感染症のためのさらなる薬物が、キットに含まれ得る。
【実施例
【0148】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより完全に説明するために提示される。しかしながら、それらは、本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0149】
[治療用T細胞の産生]
本開示のいくつかの実施形態において、ポリクローナル(例えば、CD4+およびCD8+)VSTを含む、T細胞の単一の調製物を迅速に生成し得る機構が存在し、これは、致命的であることが証明され得る1つ以上のヒトウイルスに由来する種々の抗原に対して一貫して特異的である。本開示は臨床実施に容易に適合可能であり、EBV、CMV、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、および/またはVZVを含む「既製の」抗ウイルス剤として使用することができる。本方法および組成物は臨床実施に容易に適合可能であり、個体にとって安全かつ有効な抗ウイルス剤として有用である。
【0150】
特定の実施形態では、末梢血T細胞が特異的なアクセサリーサイトカインの存在下または非存在下で、抗原タンパク質にまたがるペプミックス(11個のアミノ酸(aa)が重複する15量体のペプチドライブラリー)を負荷した単球由来樹状細胞で刺激される。得られたT細胞株は、ペプミックス負荷活性化細胞でさらに増殖させることができる。
【0151】
サイトカインIL-7およびIL-15の存在は、本方法の特定の実施形態において有用である。これらのT細胞株は多クローン性、複数のT細胞サブセット表現(記憶コンパートメントを含む)およびTH1バイアスの望ましい特性を有し、ウイルス標的を排除する。本開示は、ウイルス関連癌を有する患者からウイルス指向性T細胞株をロバストに産生することが可能であることを提供する。この技術は拡張性があり、良好な製造手順に準拠しているので、これらの系は、ウイルス関連の医学的状態を有する患者の養子細胞免疫療法に有用である。
【0152】
方法の詳細を見ると、特定の場合において、DCは、ウイルス抗原ぺプミックスライブラリーをロードされる。このような場合、細胞株は、1つ以上のウイルス抗原を認識し得る。少なくとも特定の場合において、T細胞の拡大はIL-7およびIL-15の存在下で起こるが、IL-2の存在下では起こらない。本方法の条件におけるIL-7およびIL-15の存在は、刺激および拡張の各ステップにあってもなくてもよい。いくつかの態様において、DCによる最初の生成/増殖後のウイルス特異的T細胞の増殖は、共刺激細胞(CD80/CD86/CD83/4-1BBLまたはその他)、およびIL-7およびIL-15の存在下で、ペプミックスを負荷した自己ポリクローナル活性化T細胞を利用する。これらの条件を用いると、T細胞増殖は、このような条件がない場合よりも速い速度で起こり、特異性を失うことなく起こる。
【実施例2】
【0153】
[非HPV抗原特異的T細胞の産生]
本開示の特定の実施形態に目を向けると、HPV以外のウイルスに特異的である抗原特異的免疫細胞(例えば、T細胞)を生成するための方法が、本明細書中に記載される。特定の実施形態ではこの方法が少なくともEBV、CMV、アデノウイルス、VZV、ワクシニアウイルス、HIV、BKおよびHHV6に有効であるが、この方法は他のウイルスに有効であり得る。当技術分野で公知の方法と比較したこれらの方法の改変は、例えばいくつかのウイルス特異的抗原特異的T細胞株における低頻度のウイルス特異的抗原特異的T細胞および/または高頻度のNK細胞などの欠損に対処する。
【0154】
第1の刺激では、特定の実施形態では当該技術分野における他の方法と同様に、DCは存在しない。本方法のステップにおいてT細胞の供給源として利用されるPBMCは特定の細胞(例えば、CD45RA+細胞の枯渇)について枯渇され得る。
【0155】
本方法の任意のステップにおける細胞の培養は、特定のサイトカインまたはそれらの組み合わせの存在下で起こり得、そしてこれらのサイトカイン(単数または複数)の特定のレベルが達成される必要があり得る。特定の実施形態では、本方法の1つ以上のステップが高用量(100ng~1000ng/mL)のIL15およびIL-7において生じる。特定の場合において、本方法の1つ以上のステップにおいて、共刺激細胞が利用される。種々の共刺激細胞が有用であり得るが、特定の実施形態では細胞はHLA陰性LCLである。
【0156】
図1は、ウイルス特異的T細胞を生成するための本開示の方法のステップを記載する。そこに例示されるように、0日目に、PBMC(CD45RA+T細胞などの特定の細胞については枯渇していてもいなくてもよい)をウイルスペプチドでパルスする。EBVの例として、LMP1、LMP2、EBNA1、および/またはBARF1の一部または全部を包含するペプチドを利用する。任意の種類のPBMCがペプチドでパルスされるこの第1のステップにおいて、サイトカインの特定の組み合わせを含む、特定の1つ以上のサイトカインを含むサイトカインが存在し得る。一例として、元のパルスステップでは、ヒトIL15(IL15H)を含むIL7および/またはIL15が用いられる。この第1のステップでは、照射されたHLA-ve LCLを含む共刺激細胞があってもなくてもよい。第2の刺激において、細胞は、ペプチドパルス照射自己抗原T細胞に曝露され、そして少なくともいくつかの場合において、HLA-ve LCLなどの共刺激性細胞にも曝露される。このステップは、IL7および/またはIL15(IL15Hを含む)などの特定の組み合わせを含む、1つ以上のサイトカインの存在下で起こっても、起こらなくてもよい。適切な期間(例えば、日数)培養を続けた後、細胞を使用してもよく、または凍結保存してもよい。
【0157】
上述のように、本開示の実施形態は、当技術分野で利用される特定の方法に対する改善を提供する。図2は、IL-4およびIL-7の代わりにIL-7およびIL-15の存在下で開発されたEBウイルス特異的T細胞(EBVST)の改善された特異性の結果を示す。
【0158】
単なる一例として、本開示の方法は、そのT細胞がその腫瘍細胞において発現されるウイルス抗原に対してアネルギー性であるリンパ腫患者に対して開発される。本開示の方法の特定の実施形態はリンパ腫患者EBVSTの抗原特異性を改善し、1つ以上のステップにおいて少なくともIL-15を利用することによってアネルギーが克服されることを可能にする(図3)。従って、IL-4の代わりにIL-15を使用すると、患者EBVSTにおける抗原特異的T細胞の頻度を増加させる。しかし、少なくともいくつかの場合において、IL-15が培養において利用された患者におけるEBVSTは特異性を欠いたため、用量またはIL-15が最適化された。例えば、IL-15用量が高すぎて、非特異的T細胞の増殖を誘導するかどうかが疑問視された。実際、最適化研究(図4)は、より高用量のIL-15が特異性を増加させるためにより優れていることを明らかにした(5ng/mLの標準用量と比較して、100ng/mL)。図5は、高用量のIL-15がセントラルメモリーEBVSTを増加させることを実証する。
【0159】
一部の患者および健康なドナー由来のEBVSTにおける過剰なNK細胞増殖に対処した。NK細胞の優先的成長が存在する場合、特定の場合において、それは、IL-15(NK細胞集団がIL-15およびIL-7において成長した系統において悪化するように思われる)の存在に起因し得るか、および/またはK562cs(CD80、CD83、CD86および4-1BBLを発現するように遺伝的に改変された照射HLA陰性K562細胞)(図6)の使用、またはIL15およびK562細胞の組み合わせに起因し得る。これに対処するために、過剰なNK細胞の成長を避けるための条件を開発した。特定の実施形態では、T細胞活性化の前に、PBMCからのCD45RA+細胞の枯渇を利用した。CD45RAは天然の制御性T細胞およびNK細胞上でも発現されるナイーブなT細胞マーカーであり、したがって、このような枯渇は、NK細胞を除去することはずである。他の実施形態において、CD45RO陽性細胞は、CD45RAを発現する細胞の枯渇を介して富化される。さらに、このステップは特に癌患者において、抗原特異的T細胞の増殖を阻害し得る制御性T細胞を除去するはずであり、そしてまた、バイスタンダー細胞として増殖し得、そして抗原特異的T細胞を希釈し得るナイーブな細胞を除去するはずである。枯渇は任意の適切な方法によって生じ得るが、特定の実施形態では枯渇が磁気標識および分離(例えば、Miltenyi Biotecカラムを使用する)を使用して生じる。磁気ビーズまたはナノバブルを用いて細胞を枯渇させるための抗体の使用も起こり得る。
【0160】
CD45RA枯渇PBMCからのペプミックス活性化EBVSTの生成を図7に示す。そこに示されるように、全PBMCからCD45RAが枯渇し、開始0日目または1日目に第1の刺激(S1)のEBVpepmixを、IL-7およびIL-15の存在下で枯渇した細胞に添加して、EBVSTを産生する。S1の最後および第2の刺激S2の開始時(例えば、8日目と10日目の間)に、EBVSTを、IL-7およびIL-15の存在下、しかしIL-2の非存在下で、十分な量のEBV-ぺプミックスパルスATCおよび十分な量の共刺激細胞(K562cs細胞など)に曝露して、所望のぺプミックス活性化EBVSTを産生する。図8は、CD45RA枯渇(健康なドナー由来のCD45RA+PBMCがMiltenyiカラムおよびGMPグレードCD45RA結合ビーズを使用して枯渇した)がEBVSTにおけるCD3-CD56+ NK細胞の頻度を減少させる結果を実証する。これに続いて、EBVSTの増殖が増加する(図9)。図10は、第2の刺激ステップの終わりにおける健康なドナーからのCD45RA枯渇後のEBVSTの増強された倍数拡大を示す。さらに、CD45RA枯渇は第2の刺激の終わり(例えば、16日目)にEBVSTの抗原特異性を増強する(両方とも健康なドナーについてのデータを示す、図11および12)。CD45RA枯渇EBVSTの増加した抗原特異性は、第3の刺激後に維持される(図13)。
【0161】
CD45RA枯渇の効果は、枯渇なしに増殖したEBVSTが高頻度のNK細胞を示したため、またはEBVSTが増殖または抗原特異性を示さなかったために選択された、リンパ腫患者において特徴づけられた。図14は5人のリンパ腫患者における第2の刺激ステップの終わりにおける全NK細胞集団を示し、CD45RA枯渇がリンパ腫患者EBVSTにおけるNK細胞集団成長を減少させ、この枯渇が抗原特異的T細胞の頻度を増加させたことを示す(第2の刺激の終わりにおけるIFN-γ放出ELIspotアッセイによって例示される)(図15)。この実験は、最初の刺激については樹状細胞の非存在下で行った。健康なドナーにおける結果と同様に、CD45RA枯渇は、リンパ腫患者由来のEBVSTにおける抗原特異性を増加させた(図16)。リンパ腫患者のEBVSTの増殖を図17に示す。さらに、CD45RA枯渇は、ぺプミックスパルス自己活性化T細胞(aATC)に対する細胞溶解活性を増強した。溶解パーセンテージは、20:1のエフェクター対標的比で観察された(図18)。
【0162】
図19は、EBV、CMV、アデノウイルス、BKGウイルス、およびHHV6に特異的なマルチウイルス特異的T細胞の生成を例示する。単なる例として、ペプミックスには、EBVについてはEBNA1、LMP2、およびBZLF1からのペプチド;CMVについてはIEおよびpp65;アデノウイルスについてはヘキソンおよびペントン、BKについてはLTおよびVP1、ならびにHHV6についてはU11、U14、およびU90が含まれる。そこに例示されるように、これらのウイルス抗原の各々の一部または全部にわたるペプチドを含むペプミックスを、IL7および高用量IL15の存在下で0日目にPBMCに曝露する。9日目に始まる2回目の刺激時に、ペプミックス活性化ATCおよび共刺激細胞(K562cs細胞など)を、IL7および高用量IL15の存在下で細胞に曝露する。第3刺激ステップ(例えば、16日目に始まる)において、別のラウンドのぺプミックス活性化ATCおよび共刺激細胞(例えば、K562cs細胞)を、IL7およびIL15Hの存在下で細胞に曝露し、最終的にマルチウイルス(m)VST(D23)細胞を産生する。
【0163】
図20は、本方法の実施形態の後続の刺激ステップにおける、および後続の刺激ステップの後の総拡張倍率を示す。マルチウイルス特異的T細胞の抗原特異性を調べ、5つ全てのウイルスに対する特異性を有するT細胞が増殖した(図21)。
【0164】
特定の実施形態において、CAR修飾T細胞は、本開示の方法を用いて生成され得る。図22は第1の刺激後のVZV特異的VSTの増殖を示し、再び、本開示の方法を樹状細胞を使用する方法と比較している。DC開始VSTとPBMC開始VSTとの間の増殖、または第2の刺激後のVZVSTの拡大において有意な差異はなかった(図23)。図24および25は、8日目の第1の刺激後(図24)および16日目の第2の刺激後(図25)のVZV特異的VSTの特異性を示す。特定の場合において、理論に束縛されるものではないが、そのような結果は、抗原が腫瘍細胞において発現されない場合、それらはアネルギー性ではないからである。
【0165】
要約すると、本実施例における特定の実証では、IL4/7において樹状細胞を用いて増殖させたEBVSTと、本明細書に包含される方法との比較が本明細書において提供される。実証されるように、高用量のIL-15およびIL-7は、最初の刺激における樹状細胞の必要性を排除することに加えて、健康なドナーおよび患者におけるEBVSTの増加倍数を増大させ、ならびに健康なドナーおよび患者におけるEBV抗原特異的T細胞の頻度を増加させた。この戦略は複数のウイルス(EBV、CMV、アデノウイルス、BKウイルス、HHV6およびVZV)に対して有効であり、レトロウイルスで形質導入されたウイルス特異的T細胞に対して有効であった。最後に、CD45RAの枯渇が、例えばEBVSTにおいてより広範かつより高い抗原特異性および減少したNK細胞集団をもたらすことを示すためのデータが、本明細書中で実証される。
【実施例3】
【0166】
[HIV抗原特異的T細胞の産生]
1つの実施形態において、HIV抗原に特異的なT細胞は、本開示の方法を用いて産生される。図26は、HIV血清陽性ドナーからのHIV特異的T細胞の製造の一実施形態を図示する。図27は、第2の刺激におけるK562細胞による細胞の最適な拡大を示す。その中で、結果は、DCについて2回の刺激(15~16日)+1週間後のみを示す。K562の存在下での拡張は、第2の刺激の間、K562を用いない場合よりも高い。図28は、K562の存在下で、HIV抗原特異的T細胞(HIVST)がわずか2回の刺激後に臨床的に関連のある数に拡大したことを示す。
【0167】
図29は、HIVSTが複数のHIV抗原に特異的であることを示す。HIVSTの特異性は、ELIspotアッセイにおける各HIV抗原の個々のペプミックスに応答したインターフェロン(IFN)-γ分泌によって評価した。HIVSTの特異性は、ELIspotアッセイにおける各HIV抗原に対する個々のペプミックスに応答したインターフェロン(IFN)-γ分泌によって評価した。全ての系統は、3つの全ての抗原に対して多重特異性であった。最初の検証において、同等の抗原特異性が最初の刺激後に観察された。特異性は、第2の刺激の間にK562を添加することによって失われなかった。2回目の刺激の終了までに、高用量IL-15が有利であった。2回目の検証では、最初の刺激後に高いバックグラウンドがあった。ARM2(高IL-15)では、ARM1(低IL-15)よりもGAG、POLおよびNEFに対して高い特異性が観察された。陰性対照は、1e5個のHIVST当たり10個未満のスポットを含んだ。
【0168】
図30は、HIVSTが混合CD4+およびCD8+T細胞の混合物を含むことを示す。系統は主にCD3+CD8+T細胞であったが、CD4+T細胞の割合があった。T細胞株は、CD3-CD56+ NK細胞の亜集団を含んでいた。最初の検証では、ARM1において、より多くのCD3-CD56+CD16+ NK細胞およびより少ないCD3+T細胞を有する類似の表現型が存在した。2回目の検証では、ARM2(高IL-15)ではCD4+細胞とCD8+細胞の比率が高かった(よりバランスがとれており、NK細胞が少ない)。CD4 T細胞は、記憶、持続、およびエフェクター機能を補助し、CD8 T細胞を補助することが知られているので、HIVのための任意のT細胞免疫療法アプローチがCD4 T細胞を利用していることは重要である。少量のCD4T細胞の注入は直観に反するように思われるが、非CD4枯渇T細胞は過去に注入されており、ウイルス量の有意な増加は観察されなかった。
【0169】
図31は、HIVSTが抗原パルス標的およびHIV感染標的を溶解することを実証する。HIVSTの細胞溶解特異性を評価するために、本発明者らは、51クロム(51Cr)標識自己由来ペプミックス-ATC標的細胞の一群と共にHIVSTをインキュベートした。重要なことに、活性化された自己標的細胞のみの溶解は観察されなかったため、HIVSTは特異的であった。HIVSTの抗原発現標的を溶解する能力を、4時間の51クロム放出アッセイを用いて測定した。標的細胞は、培地またはGag、Pol、またはNef PepMixsのいずれかでパルスした自己由来PHA芽細胞からなり、クロムを負荷した。HIVSTを、IFN-γ ELIspotアッセイによって予め決定された、特異的な抗原のみでパルスされた標的細胞と共に培養した。
【0170】
本発明およびその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、および変更を本明細書で行うことができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図していない。当業者は本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか、または後に開発されるプロセス、機械、製造、物質、手段、方法、またはステップが、本発明に従って利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップをそれらの範囲内に含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31