(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ダブルステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20220113BHJP
【FI】
A61F2/07
(21)【出願番号】P 2019522452
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2017077454
(87)【国際公開番号】W WO2018078019
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】102016120445.5
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519178043
【氏名又は名称】エムオーベー.インジェニア ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MOB.Ing GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ノイス,マルテ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/125312(WO,A1)
【文献】特表平11-508152(JP,A)
【文献】特表2003-531651(JP,A)
【文献】特表2014-503276(JP,A)
【文献】特開2011-156377(JP,A)
【文献】特表平10-510196(JP,A)
【文献】特表2012-519543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に配置されたステントを有するダブルステントであって、
第1の膜(4)が、第1の内側ステント(2)と少なくとも2つの外側ステント(3)との間に配置され、
第2の膜(5)が、前記外側ステント(3)上に配置され、
前記第1の膜(4)及び第2の膜(5)の膜端部が、前記ステント(2、3)の端部で合わせられ、前記第1のステント(2)の内側の上に折り畳まれ前記第1のステント(2)の柔軟なトング(6)の下にしっかりと留められる、
ダブルステント。
【請求項2】
前記ステント(2、3)の少なくとも1つが、メッシュ構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のダブルステント。
【請求項3】
少なくとも前記ステント(2)が、並んで配置されかつ互いにウェブにより連結される曲がりくねった構造を有する、複数のリングセグメント(8)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のダブルステント。
【請求項4】
前記柔軟なトング(6)が、前記第1のステント(2)の隣接して配置されるリングセグメント(8)間の連接ウェブ(7)において提供されることを特徴とする、請求項3に記載のダブルステント。
【請求項5】
前記柔軟なトング(6)が、前記連接ウェブ(7)に切断されることを特徴とする、請求項4に記載のダブルステント。
【請求項6】
前記柔軟なトング(6)が、前記ステントの外側を向くことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のダブルステント。
【請求項7】
前記柔軟なトング(6)が、前記第1のステント(2)の周囲端領域、好ましくは前記第1のステント(2)の前記第1と第2の末端リングセグメント(8)との間の連接ウェブ(7)に配置されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のダブルステント。
【請求項8】
2つの外側ステント(3)により特徴付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載のダブルステント。
【請求項9】
前記2つの外側ステント(3)が、前記ダブルステントの端部に配置されることを特徴とする、請求項8に記載のダブルステント。
【請求項10】
前記2つの外側ステント(3)が、互いに柔軟に連結されることを特徴とする、請求項8に記載のダブルステント。
【請求項11】
前記第2のステント(3)が、前記第1のステント(2)よりも高密度の構造を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のダブルステント。
【請求項12】
前記第1のステント(2)及び第2のステント(3)のウェブが、それらの間に隙間を有して配置されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のダブルステント。
【請求項13】
前記第1及び/又は第2の膜(4、5)が、プラスチック材料から構成されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のダブルステント。
【請求項14】
前記第1及び/又は第2の膜(4、5)が、PTFEから構成されることを特徴とする、請求項10に記載のダブルステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸上に配置されたステントを含み、第1の膜が第1の内側ステントと少なくとも2つの外側ステントとの間に配置される、ダブルステントに関する。ダブルステントは、特に、動脈瘤及びシャント(shunt)のような血管奇形をブリッジする目的でステントグラフトとして用いられるが、不安定な、脆弱な又は血栓性の血管壁を補強するためにも用いられる。さらに、ステントされた血管から通じる分枝のためのブリッジ要素として適用される。
【背景技術】
【0002】
血管奇形をブリッジするためのステントグラフトは、さまざまの形状で知られている。概して、これらは、膜で完全に又は部分的に覆われたステントから構成される。膜は血管に対して血管奇形を塞ぎ、ステントは血管を開いたままにして膜が血管壁と密接することを確実にする。
【0003】
ステントグラフトを用いる場合の1つの問題は、膜がステントに固着することに関する。ダブルステントがこの目的のために開発され、膜は外側のステントと内側のステントとの間に配置される。そのようなダブルステントの拡張中、膜は、放射状の拡張に関与するが、2つのステントの間に留められたままである。
【0004】
そのようなダブルステントは、例えば、特許文献1の開示から既知である。ここに記載されるステントは、それ自体でかつ自らその価値を証明してきたが、2つの点で改良が可能である。
【0005】
一方では、膜が血管壁と密接しない及び/又はダブルステントの拡張中に損傷するので、圧迫による問題がしばしば生じる。いずれの場合にも、ダブルステントは、それに求められる必要性、すなわち、例えば血管奇形の閉塞、を満たさない。
【0006】
他方、ダブルステントの拡張により、例えば2つのステントが、例えば局所的状況によって異なる拡張挙動を示す場合に、2つのステント及び膜の合成物が密着性を失いうる。
【0007】
その上、そのようなダブルステントの操作性は低下する。上下に配置された同じ長さの2つのステントは硬化を生じ、これは、特により長いステントの場合に、屈曲したステントの通過中及びそこでの配置中に問題を生じる。
【0008】
通常のステントグラフトが使用される場合、バルーン拡張可能なタイプ又は自己拡張性タイプのいずれでも、単一ステントの半径方向力は、膜をしっかりと固定する及び/又は血管の確実かつ永続的なブリッジ又は拡張を確保にするには多くの場合不十分である。これらの場合、半径方向力が増加したダブルステントの使用が便宜であると考えられる。これは、バルーン拡張可能なステントよりも低い半径方向力を通常示す自己拡張性タイプのステントに特に当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第19720115号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、一方で圧迫性及び確実性に関する必要性を満たし、さらに、他方で必要とされる密着性を保証する、ダブルステントを提供することである。さらに、このステントは高い半径方向力及び良好な柔軟性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、最初に上記で述べた種類のダブルステントにより達成され、ここで、第2の膜が外側ステント上に配置され、第1及び第2の膜の膜端がステントの端部で合わせられ、第1のステントの内側に折り畳まれ、第1のステントの柔軟なトング(tongue)の下に留められる。
【0012】
本発明により提案されるダブルステントは、内側及び少なくとも2つの外側のステントを有するだけでなく、内側及び外側の膜をも備える。また、内側及び外側のステントは、半径方向力の点で互いを、及び圧迫性の点で2つの膜を補完する。外側の第2の膜は、内側の第1の膜のための保護及び補完として作用し、内側の膜が拡張中に損傷する、例えば破れると、外側の膜がこの不具合を補うことができ、逆もまた同様である。さらに、外側の膜は、構造物を保持し、かつ、構成要素の密着性に寄与する内側ステントの内面において、内側膜の端部と共に、外側膜の端部を固定させる。
【0013】
本発明に従って用いられるステントについて、バルーン拡張可能な及び自己拡張性のステントについてしばしば開発されるような通常のステントデザインを用いることができる。バルーン拡張可能なステントについて、この目的のために通常使用される任意の材料を用いてもよく、例えば、医療用途のために合金鋼、コバルト-クロム合金等が用いられてもよい。自己拡張性のステントに関して、ニッケル-チタン合金のような形状記憶特性を有する材料が特に適切である。これらの材料によって作製されるステントの組合せもまた使用できる。さらに、ステントまたは個々のステントはプラスチックから作製されてもよい。プラスチック及び金属ステントの組合せもまた可能であり、内側ステントは好ましくはプラスチックから成る。
【0014】
ニチノール又は別の形状記憶合金から作製される内側ステント、及び、コバルト-クロム合金から作製される1つ以上の外側ステントの組合せが、特に好ましい。この組合せは、外側ステントによって実質的に提供される半径方向力の点で、及び、内側ステントによる血管の開放の保持の点で、バルーンカテーテルを用いた配置に関して利点を供給する。
【0015】
ステントは、編組されてもよいが、通常はレーザ切断技術を用いて適切な直径の管から切断される。これらはメッシュ構造を特徴とする。
【0016】
例えば、ステントは、ウェブを交差することにより形成されるメッシュ構造を有してもよい。複数の曲がりくねった(meandering)リングセグメントから構成されるステントが好ましく、このリングセグメントは、連接ウェブによって隣接するリングセグメントに連結される。この場合もまた、メッシュが生成され、そのサイズは、2つの隣接するリングセグメントの間に存在する連接ウェブの間隔によって決定される。そのようなステント構造は、連接ウェブの配置及び形状に依存して、拡張中に生じる長さの減少を少なくとも部分的に補うのに適切である。
【0017】
内側の第1ステント上に位置する柔軟なトングは、さまざまの形状を有してもよい。特に、柔軟なトングは、ステントの外側方向に向かう、すなわち、ステントの端部を指す。そのような柔軟なトングは、特にリングセグメントの連接ウェブ上に配置され、フィルム端部は、連接ウェブと連接ウェブから始まる柔軟なトングとの間に留められ固定される。
【0018】
好ましくは、柔軟なトングは、連接ウェブに切断される、すなわち、連接ウェブに関して移動可能となる。柔軟なトングを、内側ステントの外周に位置する連接ウェブ上に配置する、例えば第1の周囲リングセグメントを第2の隣接リングセグメントに連結する、こともまた好ましい。
【0019】
内側ステントの内面上に膜端部を留めることにより、2つの膜が確実に固着及び固定され、内側ステント、内側膜、外側ステント及び外側膜を含む結合が強化される。
【0020】
この目的のために適切な任意の生物学的又は人工的材料を、膜に用いてもよい。通常、膜はプラスチック材料、好ましくはプラスチックの管から構成され、各ステントの上にかぶせられる。例えば、適切な材料は、ポリテトラフルオロエチレン、PTFE、特に拡張プロセスに必要な弾性を有するePTFEである。ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリウレタンカーボネート等のような、医療的観点から問題のない他のプラスチックもまた使用できる。
【0021】
本発明により提案されるダブルステントの内側ステント及び外側ステントは、ひとまとめにして、同じ長さを有し100%重なり合う。しかしながら、互いに-部分的に重なり合って-オフセットされてもよく、あるいは異なる長さを有してもよい。これらの変形によって、重なり合う領域が硬くなり、かつ重なり合わない領域の柔軟性が増加し、これによって良好な適合性が生じ、また安定したフィットの達成が確保される。
【0022】
2つの膜を必要とするダブルステント原理によって、構造物の壁厚が自然と比較的高くなり、これによって患者の血管系における操縦性が制限される。このことは、ステントが切断される管の低い壁厚、例えば、0.05~0.5mmの範囲、好ましくは0.10~0.20mm及び特に約0.15mm、を選択することにより防止できる。ウェブ幅もまた、例えば、0.05~0.5mmの範囲、好ましくは0.10~0.20mm及び特に約0.15mmに低減できる。2つのステントが使用される結果、高い半径方向力が達成されることが依然として確保される。
【0023】
さらに、内側ステントよりも小さいメッシュを外側ステントに提供することが好ましい。このようにして、拡張中に圧縮応力が生成され、これは構造物の半径方向力及び密着性において有利な効果を有する。これによって、構造物の高い強度及び耐久性が達成されることが確保される。
【0024】
標的血管中にダブルステントを配置するために慣例の方法、通常はダブルステントがその上にクリンプ(crimp)されるバルーンカテーテル、が用いられることが理解されるべきである。
【0025】
本発明のダブルステントは、ステントされた血管の分枝中での配置に特に適切であり、したがって、ステントされた血管と分枝との間に形成される空間のブリッジに適切である。
【0026】
本発明により提供されるダブルステント内において、それぞれ支持機能を実行する2つ以上の外側ステントが配置され得る。例えばステントの端部に配置される2つのステントの他に、第3のステントを中央に配置してもよい。これに関して重要なことは、外側ステントが、互いに対して移動可能であり、重なり合いのないまたは外側ステントが互いに隣接するこれらの領域においてダブルステントの柔軟性が増加する、ということである。屈曲した血管においても優れた操作性を達成することに加えて、これによって、支持機能を血管の各状況に適応させることも可能となる。
【0027】
外側ステントの厚さ(壁厚)は、内側ステントのものと異なってもよいことがさらに理解されるべきである。この場合、内側ステントの壁厚は通常、外側ステントのものよりも大きい。
【0028】
外側ステントはまた、柔軟性及び半径方向力に関する要求を満たすように厚さが変化してもよい。
【0029】
概して、交互に配置される外側ステントは、互いに連結されない。しかしながら、例えば、接着点又は溶接点、連接連結又はカルダン式(cardanic)連結を介して、ゆるい連結が提供されてもよい。連接要素は、ステントの接合について知られている。カルダン式連結は、例えば、互いに向かい合いかつ好ましくは湾曲したまたはS字形の構成である2つの連接ウェブを用いて2つのステントを連結することにより、生じる。
【0030】
ステントは、通例知られる材料、例えば、医療用スチール、コバルト-クロム合金及びニッケル-チタン合金あるいはそれらの随意的組合せから作製され得る。プラスチック、例えば適当なプラスチック材料もまた、当該技術から既知であるので使用してもよく、例えば金属の内側ステント及びプラスチック材料から作製される複数の外側ステントの形態で、金属ステント及びプラスチックステントから構成される組合せでもよい。
【0031】
中間膜及び内側ステントの内側に固定された被覆膜を備える内側ステント及び複数の外側ステントの組合せによって、高度の柔軟性を依然として提供しながら非常に安定した移植となる。2つの膜は、安定性に寄与し、ステントの壁を非常に薄く保つことを可能とする。それにもかかわらず、ステントは良好な半径方向力を示す。
【0032】
外側ステントは、各用途目的について必要とされるように配置され得る。端部領域において改良された支持機能を達成するためには、これらの領域を重ね合わせるだけで十分である。全長に亘って補強が必要な場合、外側ステント層は、分離される又は上述のように互いに連結される複数の個々のステントから構成され得る。
【0033】
本発明のさらなる説明が、本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を介して提供される。図面中に示される特徴は、それぞれの場合に本発明の一部として個々に考えられ、図面中に示される他の特徴との関連でのみ理解されるべきでないことは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】膜について用いられるさまざまのクランピング原理
【
図3】本発明により提案されるステントの壁を貫く断面クランピング原理の別のバリエーション
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に示されるダブルステント1は、互いに同軸上に配置される第1の内側ステント2及び第2の外側ステント3を有する。外側ステント3は、内側ステント2よりわずかに短い。ダブルステントは、非拡張状態で図示される。内側ステント2と外側ステント3との間に、第1の内側膜4が提供され、外側ステント3上に、第2の外側膜5が配置され、いずれの膜もePTFEから作製される。
【0036】
内側膜4及び外側膜5は、その端部で合わせられ、2つのステントの端部の周りで内側ステント2の空洞に向かって内側に折り畳まれる。複数の柔軟なトング6の1つが図に概略的に示され、これは内側に曲げられ、その下で膜の端部が突出する。膜の端部を固定する目的で、柔軟なトング6が外側に後ろに曲げられ、膜の端部がその下に留められることとなる。
【0037】
図2において、内側ステント2についてのステントデザインが図示され、当該デザインは、連接ウェブ7を用いて互いに連結される、2つの外周近くに隣接して配置されるリングセグメント8を提供する。ステント面に関して移動可能である柔軟なトング6は、連接ウェブ7に切断される。
【0038】
管状フィルム(図示せず)のための接触領域を増大する目的で、柔軟なトング7は、自由端領域において角度のある構成であり、これは、挿入された膜に関してクランピング効果を改良する。
【0039】
図3は、単一の内側ステント2、2つの端部に位置するステント3及び中央位置にあるステント3、並びに、いずれも内側に折り畳まれる中間膜4及び被覆膜5を含む、本発明により提案される、ダブルステントの原理を示す。
【符号の説明】
【0040】
1 ダブルステント
2 内側ステント
3 外側ステント
4 内側膜
5 外側膜
6 柔軟なトング
8 リングセグメント