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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】シール構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/06 20060101AFI20220113BHJP
   F16J 15/08 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F16J15/06 F
F16J15/08 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020104981
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021196040
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】517304705
【氏名又は名称】株式会社コスにじゅういち
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 逸史
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-504269(JP,A)
【文献】米国特許第05222747(US,A)
【文献】米国特許第04303251(US,A)
【文献】米国特許第05887876(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0054574(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 25/00-33/00
F16J 15/00-15/14
F16L 23/00-25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が加圧された状態で移動する流路を互いに連結されて形成する2つの連結部材の連結面におけるシール構造であって、
リング状に形成されており、前記流路の内周面に沿って配置されるメタルシールと、
2つの前記連結面によって形成されており、前記流路の内側に向かって開口した状態において前記メタルシールを収容する凹部と、を有し、
前記凹部は、
前記凹部の開口端から前記流路の長手方向と直交する方向にそれぞれ延びており、前記流路の長手方向において前記メタルシールを挟む一対の第1平坦領域と、
前記一対の第1平坦領域のそれぞれから互いに近づく方向に突出する一対の爪部と、
前記流路の長手方向に沿って形成され、前記凹部の底面を構成する第2平坦領域と、を有し、
前記メタルシールは、前記爪部の全体が食い込み変形することにより、前記一対の第1平坦領域及び前記第2平坦領域に密接するとともに、前記メタルシールの内径面が前記流路の内壁面よりも前記流路の内側に位置していることを特徴とするシール構造。
【請求項2】
前記爪部は、前記第2平坦領域に対して傾斜する第1側面と、前記第1平坦領域と繋がり前記流路の長手方向に沿って形成された第2側面と、を有することを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
期状態における前記メタルシールの厚みTと、前記流路の長手方向における前記凹部の幅Hとが下記式(I)に示す条件、
1.0×T≦H≦1.2×T ・・・(I)
を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のシール構造。
【請求項4】
期状態における前記メタルシールの幅Bと、前記流路の長手方向と直交する方向における前記凹部の深さDとが下記式(II)に示す条件、
1.05×D≦B≦1.1×D ・・・(II)
を満たすことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のシール構造。
【請求項5】
前記凹部の内側の空間全体は、前記メタルシールによって満たされていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のシール構造。
【請求項6】
初期状態における前記メタルシールの厚みが一定であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のシール構造。
【請求項7】
前記流体が150MPa以上の圧力で移動することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流路を形成する2つの連結部材の連結面における密閉性を確保するシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空容器のフランジ部を封止するシール構造の一つとして、ナイフエッジ型メタルシールフランジが記載されている。ナイフエッジ型メタルシールフランジでは、一対のフランジのそれぞれにナイフエッジが形成されており、これらのナイフエッジによってメタルガスケットを押し潰すことにより、シール性を確保している。このシール性は、ナイフエッジの先端部がメタルガスケットに突き刺さった部分と、ナイフエッジによって押し潰されたメタルガスケットがフランジの内壁面を押し付ける部分とによって確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-082891号公報(段落0009,図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のナイフエッジ型メタルシールフランジは、加速器の導波管等のような真空容器に適用されるものである。液体などの流体を移動させる流路において、特許文献1のようなナイフエッジ型メタルシールフランジを適用する場合には、シール性が不十分になることがある。例えば、流体を加圧状態で移動させる場合には、メタルガスケットのシール部分が流体からの圧力に耐えにくくなり、シール性が不十分になることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、2つの連結部材(10A,10B)の連結面(11)におけるシール構造(1)である。2つの連結部材(10A,10B)は、互いに連結されて流路(P1,P2)を形成する。シール構造(1)は、メタルシール(20)及び凹部(30)を有する。メタルシール(20)は、リング状に形成されており、流路(P1,P2)の内周面に沿って配置される。凹部(30)は、2つの連結面(11)によって形成されており、流路(P1,P2)の内側に向かって開口した状態においてメタルシール(20)を収容する。
【0006】
凹部(30)は、一対の平坦領域(14)及び一対の爪部(13)を有する。一対の平坦領域(14)は、凹部(30)の開口端から流路(P1,P2)の長手方向と直交する方向にそれぞれ延びており、流路(P1,P2)の長手方向においてメタルシール(20)を挟む。一対の爪部(13)は、一対の平坦領域(14)のそれぞれから互いに近づく方向に突出する。メタルシール(20)は、爪部(13)の食い込みによって変形するとともに、一対の平坦領域(14)に密接する。
【0007】
凹部(30)の内側の空間全体がメタルシール(20)によって満たされるように、メタルシール(20)を変形させることができる。メタルシール(20)が凹部(30)に収容された状態において、メタルシール(20)の内径面(21)を、流路(P1,P2)の内壁面と同一面内又は、流路(P1,P2)の内壁面よりも流路(P1,P2)の内側に位置させることができる。
【0008】
初期状態におけるメタルシール(20)の厚みTと、流路(P1,P2)の長手方向における凹部(30)の幅Hとは、下記式(I)に示す条件を満たすことができる。
1.0×T≦H≦1.2×T ・・・(I)
【0009】
初期状態におけるメタルシール(20)の幅Bと、流路(P1,P2)の長手方向と直交する方向における凹部(30)の深さDとは、下記式(II)に示す条件を満たすことができる。
1.05×D≦B≦1.1×D ・・・(II)
【0010】
流路(P1,P2)では、流体を加圧した状態で移動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、爪部(13)をメタルシール(20)に食い込ませるだけでなく、凹部(30)の開口端に位置する一対の平坦領域(14)にメタルシール(20)を密接させているため、連結面(11)におけるシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シール構造の断面図である。
図2図1に示すシール構造において、メタルシールを省略した図である。
図3】メタルシールを変形させる前の状態を示す図である。
図4】メタルシールの寸法を説明する図である。
図5】メタルシールが収容される凹部の寸法を説明する図である。
図6】メタルシールの内径面が流路の内側に突出した状態を示す図である。
図7】メタルシールを第1連結部材から取り外す方法(第1の取り外し方法)において、前準備の状態を示す図である。
図8】メタルシールを第1連結部材から取り外す方法(第1の取り外し方法)において、抜き取りボルトをメタルシールのネジ溝に係合させた状態を示す図である。
図9】メタルシールを第1連結部材から取り外す方法(第2の取り外し方法)において、前準備の状態を示す図である。
図10】メタルシールを第1連結部材から取り外す方法(第2の取り外し方法)において、引き抜き工具の引掛け部をメタルシールに引っ掛けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態であるシール構造は、図1に示すように、第1連結部材10A及び第2連結部材10Bの連結面11におけるシール構造1である。第1連結部材10A及び第2連結部材10Bは、ボルトやナットなどの締結部材(不図示)を用いて互いに締結されることにより、連結面11において互いに密接する。第1連結部材10Aや第2連結部材10Bの形状は、適宜決めることができ、例えば、フランジを備えた形状とすることができる。第1連結部材10Aや第2連結部材10Bがフランジを備えている場合、締結部材を用いてフランジを締結することができる。
【0014】
第1連結部材10Aには、流体が移動する流路P1が形成されており、第2連結部材10Bには、流体が移動する流路P2が形成されている。流体としては、液体や気体が挙げられ、液体には固体物質が含まれていてもよい。第1連結部材10A及び第2連結部材10Bを連結したとき、流路P1,P2が繋がることにより、1つの流路が形成される。
【0015】
第1連結部材10Aの連結面11と、第2連結部材10Bの連結面11とは、左右対称(面対称)の形状を有している。このため、以下では、第1連結部材10Aの連結面11の構成について説明し、第2連結部材10Bの連結面11の構成については説明を省略する。なお、第2連結部材10Bの連結面11において、第1連結部材10Bの連結面11と同様の機能を有する部分については、同一の符号を用いている。
【0016】
第1連結部材10Aの連結面11は、第2連結部材10Bの連結面11(接触領域12)と接触する接触領域12を有する。また、連結面11は、爪部13、第1平坦領域14及び第2平坦領域15を有する。接触領域12は、流路P1,P2の長手方向と直交する方向(図1の上下方向)に延びている。
【0017】
第1平坦領域14は、流路P1,P2の長手方向と直交する方向(図1の上下方向)に沿って形成されており、第1平坦領域14の一端(内径側の端部)は、流路P1を形成する内壁面上に位置している。第2平坦領域15は、流路P1,P2の長手方向(図1の左右方向)に沿って形成されており、第2平坦領域15の一端は、接触領域12と繋がっている。
【0018】
爪部13は、第1平坦領域14と第2平坦領域15との間に設けられており、第1側面13a及び第2側面13bを有する。第2側面13bは、第1側面13aよりも流路P1の側に配置されている。第1側面13aは、第2平坦領域15と繋がっており、第2平坦領域15に対して傾斜している。第2側面13bは、第1平坦領域14と繋がっており、流路P1,P2の長手方向(図1の左右方向)に沿って形成されている。
【0019】
なお、本実施形態では、爪部13の第2側面13bが流路P1,P2の長手方向に沿って形成されているが、これに限るものではなく、例えば、第2側面13bを第1平坦領域14に対して傾斜させることができる。
【0020】
第1連結部材10Aの連結面11と第2連結部材10Bの連結面11との間には、金属で形成されたメタルシール20が配置されている。メタルシール20は、リング状に形成されており、流路P1,P2の内周面に沿って配置されている。図2に示すように、第1連結部材10A及び第2連結部材10Bを連結したとき、連結面11には、メタルシール20が収容される凹部30が形成される。
【0021】
凹部30は、2つの連結面11の一部によって構成されており、具体的には、第1平坦領域14、爪部13(第1側面13a及び第2側面13b)及び第2平坦領域15によって構成されている。ここで、流路P1,P2の長手方向で対向する一対の爪部13は、第1平坦領域14から凹部30の内側に向かって突出している。凹部30は、流路P1,P2の内周面に沿って形成されており、流路P1,P2の内側に向かって開口している。ここで、凹部30の開口端からは、第1平坦領域14が延びている。
【0022】
図1に示すように、第1連結部材10Aや第2連結部材10Bの爪部13は、メタルシール20に食い込むことにより、メタルシール20を変形(弾性変形)させている。メタルシール20が初期状態(凹部30に収容する前の状態)にあるとき、メタルシール20の断面は、図3に示すように矩形状に形成されている。図3に示すように、凹部30にメタルシール20を配置し、締結部材(不図示)を用いて第1連結部材10A及び第2連結部材10Bのそれぞれに締結力Fを与えると、爪部13がメタルシール20に食い込むことにより、メタルシール20が変形する。
【0023】
爪部13をメタルシール20に食い込ませるために、爪部13の材質としては、メタルシール20の材質よりも硬度が高い材質が用いられる。爪部13の材質としては、例えば、SS材やSUS材を用いることができる。また、メタルシール20の材質としては、例えば、銅やアルミニウムを用いることができる。メタルシール20については、引張強さを250~320N/mmとし、伸び率を10~15%とすることができる。
【0024】
上述したメタルシール20の変形によって、メタルシール20は、凹部30の全面に密接する。すなわち、凹部30の内側に形成される空間全体をメタルシール20によって満たすように、メタルシール20が変形している。なお、メタルシール20の変形によっては、メタルシール20が、第2平坦領域15と爪部13の第1側面13aとの繋ぎ部分から離れて隙間が形成されることもある。
【0025】
爪部13をメタルシール20に食い込ませたとき、第1側面13aがメタルシール20を押しつけることにより、メタルシール20が第1側面13aに沿って変形して第1側面13aに密接する。また、第1側面13aは第2平坦領域15に対して傾斜しているため、第1側面13aが第2平坦領域15を押圧する方向にメタルシール20を変形させることにより、メタルシール20が第2平坦領域15に密接する。さらに、一対の第1平坦領域14がメタルシール20を挟んだ状態でメタルシール20を押しつけることにより、メタルシール20が一対の第1平坦領域14に密接する。
【0026】
爪部13をメタルシール20に食い込ませてメタルシール20を変形させたとき、メタルシール20には残留応力が発生している。このため、メタルシール20が第1平坦領域14、第2平坦領域15及び爪部13(第1側面13a)を押しつける力が維持され、第1平坦領域14、第2平坦領域15及び爪部13(第1側面13a)におけるシール性を確保することができる。
【0027】
上述したようにメタルシール20を変形させるための凹部30の寸法及びメタルシール20の寸法について、以下に説明する。
【0028】
図4に示すように、メタルシール20は、厚さT及び幅(外径及び内径の差)Bを有する。また、図5に示すように、メタルシール20を凹部30に配置せずに、第1連結部材10A及び第2連結部材10Bを連結したときにおいて、凹部30は、幅Hと深さDを有する。幅Hは、流路P1,P2の長手方向(図5の左右方向)における凹部30の最大距離であり、具体的には、一対の第1平坦領域14の間の距離である。深さDは、流路P1,P2の長手方向と直交する方向(図5の上下方向)における凹部30の最大距離であり、具体的には、流路P1,P2を構成する内壁面と第2平坦領域15との間の距離である。
【0029】
メタルシール20の厚さTと、凹部30の幅Hとは、下記式(1)に示す関係を満たすことが好ましい。下記式(1)において、厚さT及び幅Hの単位は同じである。
1.0×T≦H≦1.2×T ・・・(1)
【0030】
メタルシール20の幅Bと、凹部30の深さDとは、下記式(2)に示す関係を満たすことが好ましい。下記式(2)において、幅B及び深さDの単位は同じである。
1.05×D≦B≦1.1×D ・・・(2)
【0031】
上記式(1),(2)に示す関係を満たすことにより、上述したように、メタルシール20を、第1平坦領域14、第2平坦領域15及び爪部13(第1側面13a)に密接させやすくなる。
【0032】
本実施形態では、メタルシール20を変形させたとき、図6に示すように、メタルシール20の内径面21は流路P1,P2の内側に僅かに突出する。ここで、メタルシール20の内径面21は、流路P1,P2を構成する内壁面と同一面内に位置していてもよい。本実施形態では、メタルシール20の内径面21が流路P1,P2を構成する内壁面よりも凹部30の内側に位置しないようにしている。
【0033】
メタルシール20の内径面21が凹部30の内側に位置していると、内径面21が凹部30の内側に入り込んだ分だけ窪みが形成されることになる。ここで、流路P1,P2を流れる流体に固体物質が含まれている場合、この固体物質が上述した窪みに入り込んで留まってしまうおそれがある。窪みに固体物質が留まった状態において、流路P1,P2を移動させる流体を変更した場合には、上述した窪み(凹部30の内側)に留まっていた固体物質が、変更後の流体に異物として混入してしまうおそれがある。
【0034】
上述したように、メタルシール20の内径面21を流路P1,P2の内側に僅かに突出させたり、メタルシール20の内径面21を流路P1,P2を構成する内壁面と同一面内に位置させたりすれば、上述した窪みが形成されることはなく、窪みに流体中の固体物質が留まってしまうことを防止できる。本実施形態のように、メタルシール20の内径面21が流路P1,P2の内側に突出した場合、このメタルシール20の突出部分に流体中の固体物質が引っ掛かることが考えられる。しかし、メタルシール20の突出部分には流体が突き当たるため、メタルシール20の突出部分に固体物質が引っ掛かったとしても、流体の流れによって固体物質を取り除くことができる。
【0035】
本実施形態のシール構造1は、流路P1,P2を移動する流体が外部に漏れることを防止するために用いられる。この目的を達成する上では、流路P1,P2に最も近い位置にある第1平坦領域14において、シール性を確保することが好ましい。一方、特許文献1のように、真空容器で用いられるナイフエッジ型メタルシールフランジは、真空容器の外部から真空容器の内部に空気が進入することを防止するために用いられており、本実施形態であるシール構造1とは目的が異なる。
【0036】
次に、使用済みのメタルシール20を取り外す方法について説明する。
【0037】
図1に示すように、メタルシール20は、第1連結部材10A及び第2連結部材10Bの間に配置されているため、メタルシール20を取り外すためには、締結部材(不図示)を取り外して第1連結部材10A及び第2連結部材10Bを分離させればよい。第1連結部材10A及び第2連結部材10Bを分離させたときには、メタルシール20が第1連結部材10A又は第2連結部材10Bのいずれかに付着したままとなりやすい。この理由は、上述したように爪部13がメタルシール20に食い込んでいるため、第1連結部材10A及び第2連結部材10Bを分離させたとき、第1連結部材10A及び第2連結部材10Bのうちの一方の第2平坦領域15及び爪部13(第2側面13b)がメタルシール20に食い込んだままとなるためである。
【0038】
第1連結部材10A又は第2連結部材10Bに付着したメタルシール20を取り外す方法(2つの例)について、以下に説明する。以下の説明では、メタルシール20が第1連結部材10Aに付着した場合を前提とする。
【0039】
第1の取り外し方法について、図7及び図8を用いて説明する。まず、ハンドタップなどの切削工具(不図示)を用いることにより、図7に示すように、メタルシール20の内径面21にネジ溝21aを形成する。ここで、メタルシール20の内径面21を流路P1,P2の内側に突出させることにより、内径面21にネジ溝21aを形成しやすくなる。
【0040】
次に、図8に示すように、治具(不図示)に設けられたボルト100のネジ部を、メタルシール20のネジ溝21aに係合させた後、第1連結部材10Aから離れる方向(図8の左方向)に治具(ボルト100)を移動させる。これにより、メタルシール20のネジ溝21aがボルト100に係合した状態において、メタルシール20を第1連結部材10Aから取り外すことができる。
【0041】
第1の取り外し方法は、メタルシール20の内径が小径である場合に採用することができる。具体的には、メタルシール20の内径が小径であることにより、後述する第2の取り外し方法で用いられる引き抜き工具200(引掛け部201)をメタルシール20の内径部分に挿入しにくい場合には、上述した第1の取り外し方法を採用することができる。
【0042】
第2の取り外し方法について、図9及び図10を用いて説明する。まず、引き抜き工具200の先端に設けられた一対の引掛け部201を、メタルシール20の内径面21を介して流路P1の内側に挿入する。そして、一対の引掛け部201を互いに離れる方向(図9に示す矢印Eの方向)に広げることにより、図10に示すように、一対の引掛け部201をメタルシール20に引っ掛ける。ここで、メタルシール20の内径面21を流路P1の内側に突出させることにより、このメタルシール20の突出部分に引き抜き工具200の引掛け部201を引っ掛けることができる。引掛け部201をメタルシール20に引っ掛けた状態において、第1連結部材10Aから離れる方向(図10の左方向)に引き抜き工具200を移動させることにより、メタルシール20を第1連結部材10Aから取り外すことができる。
【0043】
本実施形態であるシール構造1は、例えば、特開2019-044613号公報に記載の液体吐出装置において用いることができる。この液体吐出装置を用いれば、高圧下で原料繊維を破砕してセルロースナノファイバーを製造したり、高圧下でシリコン油を吐出させて微小粒径のシリコン油のエマルジョンを生成したり、高圧下で顔料系塗料を吐出させて顔料系塗料を媒質中で分散させやすくしたりすることができる。このような用途では、流体を高圧下(例えば、150MPa以上)で移動させることになるが、本実施形態のシール構造1は、このような高圧に耐えることができる。
【符号の説明】
【0044】
1:シール構造、10A:第1連結部材、10B:第2連結部材、11:連結面、
12:接触領域、13:爪部、13a:第1側面、13b:第2側面、
14:第1平坦領域、15:第2平坦領域、20:メタルシール、21:内径面、
30:凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10