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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】架橋セパレータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/417 20210101AFI20220113BHJP
   H01M 50/494 20210101ALI20220113BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220113BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220113BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20220113BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/494
H01M50/489
H01M50/403 B
C08J9/28 CES
C08J5/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020129638
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2021093353
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0161348
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519459713
【氏名又は名称】ダブリュー-スコープ コリア カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】パク,ピョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ギ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒ ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ビョン ヒョン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/075865(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/016219(WO,A1)
【文献】特開2020-061312(JP,A)
【文献】特開2012-072285(JP,A)
【文献】特表2020-535265(JP,A)
【文献】特開2001-176484(JP,A)
【文献】特表2019-517731(JP,A)
【文献】特表2020-511736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/417
C08J9/28
C08J5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000である第1ポリオレフィンに架橋性化合物がグラフトされた高分子の架橋体を含む第1部;及び
重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000である第2ポリオレフィンを含む第2部;を含み、
前記架橋性化合物はアルコキシ基を含むビニルシランである、セパレータ。
【請求項2】
前記第1部及び前記第2部は、それぞれ不連続相及び連続相であることを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記高分子中の前記架橋性化合物の含量は、10~50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記セパレータ中の前記第1部の含量は、5~90重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記第1ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレート及びこれらのうち2つ以上の組み合わせからなる群より選択された一つであり、
前記第2ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレート、及びこれらのうち2つ以上の組み合わせからなる群より選択された一つである、ことを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記ビニルシランは、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン及びこれらのうち2つ以上の組み合わせからなる群より選択された一つであることを特徴とする、請求項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記セパレータは、下記(i)~(vii)の条件:
(i)メルトダウン温度200~300℃;
(ii)シャットダウン温度120~140℃;
(iii)縦方向(MD)引張強度1,000~3,500kgf/cm
(iv)横方向(TD)引張強度1,000~3,500kgf/cm
(v)縦方向(MD)引張伸率50~150%;
(vi)横方向(TD)引張伸率50~150%;及び
(vii)セパレータの表面で周辺と異なっている明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数が10個/m以下
のうち一つ以上を満足することを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
請求項1~のうちいずれか一項に記載のセパレータを含むことを特徴とする、電気化学素子。
【請求項9】
(a)重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000である第1ポリオレフィン、架橋性化合物及び開始剤を反応させて前記第1ポリオレフィンに前記架橋性化合物がグラフトされた高分子を製造するステップ;
(b)前記高分子10~40重量%、重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000である第2ポリオレフィン10~40重量%及び気孔形成剤40~80重量%を含む組成物を押出機に投入してシート形態に成形及び延伸するステップ;
(c)前記延伸されたシートから気孔形成剤を抽出して多孔膜を製造するステップ;及び
(d)前記多孔膜に含まれた前記高分子を架橋させるステップ;を含み、
前記高分子中の前記架橋性化合物の含量は、10~50重量%であり、
前記架橋性化合物はアルコキシ基を含むビニルシランである、セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋セパレータ及びその製造方法に関し、より詳しくは、セパレータに含まれた低分子量のポリオレフィン、すなわち、ポリオレフィンワックスからなる架橋体を含む架橋セパレータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットパソコンなど小型化、軽量化が要求される各種電気製品の電源として広く用いられており、スマートグリッド、電気自動車用中大型バッテリーに至るまでその適用分野が拡がるに伴って、用量が大きく、寿命が長く、安全性が高いリチウム二次電池の開発が要求されている。
【0003】
前記目的を達成するための手段として、陽極と陰極を分離させて内部短絡(Internal Short)を防止して充放電過程でリチウムイオンの移動を円滑にする微細気孔が形成されたセパレータ(Separator)、その中でも熱相分離(Thermally Induced Phase Separation)による気孔形成に有利であり、経済的で且つセパレータに必要な物性を満たすことに容易であるポリエチレンなどのポリオレフィンを用いた微細多孔性セパレータに対する研究開発が活発である。
【0004】
しかし、溶融点が135℃程度に低いポリエチレンを用いたセパレータは、電池の発熱により溶融点以上の高温で収縮変形が発生し得る。このような変形により短絡が発生すると、電池の熱暴走現象を起こして発火などの安全上の問題点が発生できる。このような問題点を解決するために、ポリオレフィンセパレータを架橋させて耐熱性を向上させる方法が提示されたことがある。
【0005】
特開平11-144700号公報、特開平11-172036号公報は、シラン変性ポリオレフィンを用いて架橋セパレータを製造することで耐熱性を向上させる発明を開示している。しかし、製造されたセパレータの物性が厚さ25μm、通気度900sec/100ml、穿孔強度200gfであって、現在常用化されたセパレータの物性レベルである厚さ12μm以下、通気度150sec/100ml以下、穿孔強度250gf以上に比べて極めて劣等なので実質的な商用化が不可能である。
【0006】
特許第4583532号公報は、重量平均分子量が50万以上である超高分子量ポリエチレンをシラン変性ポリオレフィンと混合してセパレータを製造する方法を開示しているが、前記超高分子量ポリエチレンは、前記シラン変性ポリオレフィンとの分散性が不良であるという短所がある。それによって、製造されたセパレータの偏差が発生して廃棄率が高く、一部領域にシラン架橋性ポリオレフィンが偏重されて均一な物性のセパレータを収得することができない。
【0007】
韓国登録特許第1857156号公報は、ポリオレフィン、希釈剤、アルコキシ基含有ビニルシラン及び開始剤を押出機に投入して混合した後に反応押出してシラングラフトされたポリオレフィン溶液を製造した後、延伸、抽出、熱固定、架橋させてポリオレフィンセパレータを製造する方法を開示しているが、反応押出するとき、アルコキシ基含有ビニルシランが希釈剤にグラフトされて希釈剤の再生が不可能であり、抽出時に未反応アルコキシ基含有ビニルシランが溶出されて生産性及び経済性が悪くなる問題がある。
【0008】
韓国登録特許第1536062号公報は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、光開始剤0.01~1重量部及び連結剤0.001~5重量部を含む樹脂組成物からなる二次電池用微細多孔性セパレータを開示しているが、前記微細多孔性セパレータは、乾式工程により製造されるものであって、引張強度、引張伸率といった機械的物性とメルトダウン温度に代表される耐熱性が湿式工程により製造されたセパレータに比べて顕著に低い問題がある。
【0009】
韓国登録特許第1955911号公報は、多孔膜に含まれたシラン変性ポリオレフィンを架橋させるセパレータの製造方法とこれによって製造されたセパレータを開示しているが、前記製造方法による架橋は、水分の存在下で行われることであって、架橋に所要される時間が最短10分でそれ以上の生産性を具現するのに限界があり、セパレータの機械的物性と耐熱性の間に存在するトレード-オフ(trade-off)を適切に解消することができないという問題がある。また、このようなセパレータを製造するとき、シラン変性ポリオレフィンとマトリックス樹脂の間の架橋反応を含めた副反応により製品の表面品質を低下させる欠点が発生し、このような欠点が電池駆動間のイオンの移動性を阻害して電池の電気化学的特性を低下させる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-144700号公報
【文献】特開平11-172036号公報
【文献】特許第4583532号公報
【文献】韓国登録特許第1857156号公報
【文献】韓国登録特許第1536062号公報
【文献】韓国登録特許第1955911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、機械的物性、耐熱性電池の電気化学的特性を均衡的に具現しつつ、架橋に所要される時間を短縮させて生産性を大幅改善することができ、電池に対する衝撃、落下、振動のような機械的誤用条件の下で電極の露出による内部短絡(internal short)を防止することができ、それによるリチウム二次電池の耐久性、安全性を向上させることができるセパレータ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000g/molである第1ポリオレフィンに架橋性化合物がグラフトされた高分子の架橋体を含む第1部;及び重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000g/molである第2ポリオレフィンを含む第2部;を含むセパレータを提供する。
【0013】
一実施例において、前記第1及び第2部は、それぞれ不連続相及び連続相であってもよい。
【0014】
一実施例において、前記高分子中の前記架橋性化合物の含量は、10~50重量%であってもよい。
【0015】
一実施例において、前記セパレータ中の前記第1部の含量は、5~90重量%であってもよい。
【0016】
一実施例において、前記第1及び第2ポリオレフィンは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレート及びこれらのうち2つ以上の組み合わせ又は共重合物からなる群より選択された一つであってもよい。
【0017】
一実施例において、前記架橋性化合物は、アルコキシ基を含有するビニルシランであってもよい。
【0018】
一実施例において、前記ビニルシランは、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン及びこれらのうち2つ以上の組み合わせからなる群より選択された一つであってもよい。
【0019】
一実施例において、前記セパレータは、下記(i)~(vii)の条件のうち一つ以上を満足することができる。
(i)メルトダウン温度200~300℃;(ii)シャットダウン温度120~140℃;(iii)縦方向(MD)引張強度1,000~3,500kgf/cm;(iv)横方向(TD)引張強度1,000~3,500kgf/cm;(v)縦方向(MD)引張伸率50~150%;(vi)横方向(TD)引張伸率50~150%;及び(vii)セパレータの表面で周辺と異なっている明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数が10個/m以下。
【0020】
本発明の他の一側面は、前記セパレータを含む電気化学素子、好ましくは、二次電池、より好ましくは、リチウム二次電池又はリチウムイオン電池を提供する。
【0021】
本発明の他の一側面は、(a)重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000g/molである第1ポリオレフィン、架橋性化合物及び開始剤を反応させて前記第1ポリオレフィンに前記架橋性化合物がグラフトされた高分子を製造するステップ;(b)前記高分子10~40重量%、重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000g/molである第2ポリオレフィン10~40重量%及び気孔形成剤40~80重量%を含む組成物を押出機に投入してシート形態に成形及び延伸するステップ;(c)前記延伸されたシートから気孔形成剤を抽出して多孔膜を製造するステップ;及び(d)前記多孔膜に含まれた前記高分子を架橋させるステップ;を含み、前記高分子中の前記架橋性化合物の含量は、10~50重量%であるセパレータの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一側面によるセパレータは、重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000g/molである第1ポリオレフィンに架橋性化合物がグラフトされた高分子の架橋体を含む第1部、及び重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000g/molである第2ポリオレフィンを含む第2部を含むことで、セパレータの機械的物性及び耐熱性を均衡的に改善することができ、架橋性化合物の溶出及び廃棄によって製造コストが上昇する問題を解決して生産性、経済性を最大化することができる。
【0023】
また、架橋性化合物がグラフトされた高分子と第2ポリオレフィンの間の副反応により発生してセパレータの表面品質を低下させて電池駆動間のイオンの移動性を阻害する表面欠点の数を顕著に軽減させて電池の電気化学的特性を均衡的に改善することができる。
【0024】
本発明の効果は、上述した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能な全ての効果を含むものと理解しなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、種々の異なる形態で具現することができる。したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0026】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとの用語は、「直接的に連結」されている場合だけでなく、それらの間に他の部材を介在して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」との用語は、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外することではなく他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0027】
セパレータ
本発明の一側面は、重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000g/molである第1ポリオレフィンに架橋性化合物がグラフトされた高分子(以下、「変性高分子」)の架橋体を含む第1部;及び重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000g/molである第2ポリオレフィンを含む第2部;を含むセパレータを提供する。
【0028】
前記セパレータにおいて前記第1部は、前記第2部中に均一に分散され得、前記架橋体は、前記第1ポリオレフィンの主鎖中にグラフトされた架橋性化合物のうち少なくとも一部が一定条件下で相互架橋されて形成されたものであってもよい。
【0029】
前記セパレータ中の前記第1部の含量は、5~90重量%、好ましくは、5~50重量%、より好ましくは、5~30重量%であってもよい。前記第1部の含量が5重量%未満であると、必要なレベルのメルトダウン温度を具現することができず、90重量%を超過すると、セパレータの脆性(brittleness)が増加して引張強度、引張伸率が低下され得る。
【0030】
前記変性高分子中の前記架橋性化合物の含量は、10~50重量%であってもよい。前記変性高分子中の前記架橋性化合物の含量が10重量%未満であると、必要なレベルのメルトダウン温度を具現することができず、50重量%を超過すると、セパレータの脆性(brittleness)が増加して引張強度、引張伸率が低下するだけでなく、セパレータの製造時に過度なオイルミストが発生して加工性、作業性が低下され得る。
【0031】
前記第1及び第2ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、それぞれ1,000~50,000g/mol及び200,000~1,000,000g/molであってもよい。特に、前記第1ポリオレフィンの融点は、60~140℃であってもよい。
【0032】
前記第1ポリオレフィンの重量平均分子量が1,000g/mol未満であるか融点が60℃未満であると、低い分子量により前記セパレータを製造するのに用いられる前記変性高分子をペレット形態で得にくく、重量平均分子量が50,000g/molを超過するか融点が140℃超過であると、押出機に過度な負荷が印加されるなど加工性が低下されて変性高分子と第2ポリオレフィンの間の架橋反応を含めた副反応によりセパレータの表面品質を低下させる欠点が発生でき、このような欠点が電池駆動間のイオンの移動性を阻害して電池の電気化学的特性を低下させ得る。
【0033】
また、前記第2ポリオレフィンの重量平均分子量が200,000g/mol未満であると、溶融粘度が過度に低くなって気孔形成剤の分散性が極度に低下され、特に、前記第2ポリオレフィン及び前記気孔形成剤の間に相分離又は層分離が発生でき、1,000,000g/molを超過すると、溶融粘度が高くなって加工性が低下されて溶融混練するとき不均一な混練を引き起こすことができる。
【0034】
また、前記第2ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)に対する前記第1ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)の比率は、0.001~0.1、好ましくは、0.01~0.05であってもよい。前記第2ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)に対する前記第1ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)の比率が前記範囲を脱すれば、前記第1及び第2部の相溶性、分散性が低下されて前記セパレータの領域による機械的物性の偏差が大きくなって製品の信頼性、再現性が顕著に低下され得る。
【0035】
また、前記第1及び第2ポリオレフィンの分子量分布(Mw/Mn)は、それぞれ3~7であってもよい。前記第1及び第2ポリオレフィンの分子量分布が3未満であると、気孔形成剤との分散性が低下されて製造されたセパレータの均一性が低下され得、7を超過すると、最終セパレータの機械的強度が低下され得る。
【0036】
前記第1及び第2ポリオレフィンは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレート、酸変性ポリオレフィン及びこれらのうち2つ以上の組み合わせ又は共重合物からなる群より選択された一つであってもよく、好ましくは、ポリエチレンであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
前記架橋性化合物は、シラン系化合物であってもよく、好ましくは、アルコキシ基を含有するビニルシランであってもよい。例えば、前記アルコキシ基を含有するビニルシランは、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン及びこれらのうち2つ以上の組み合わせからなる群より選択された一つであってもよく、好ましくは、トリメトキシビニルシランであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
前記セパレータにおいて前記第1及び第2部は、それぞれ不連続相及び連続相であってもよい。前記セパレータにおいて前記第1部は、前記第2部からなるマトリックス中で架橋されて前記マトリックスを堅固に支持、固定させることで前記セパレータの耐熱性及び機械的物性を向上させ得る。
【0039】
本明細書に用いられた用語「マトリックス」は、2種以上の成分を含むセパレータで連続相を構成する成分を意味する。すなわち、前記セパレータにおいて第2ポリオレフィンを含む第2部が連続相で存在し、その内部で前記架橋体を含む第1部が不連続相で存在することができる。
【0040】
従来、ポリオレフィン及び架橋性化合物、例えば、シラン系化合物を含むセパレータの製造工程で、気孔形成剤の抽出以前のベースシート上にシラン系化合物を塗布した後にグラフトさせるか、ポリオレフィン及びシラン系化合物を先混合した後にグラフト及びベースシートを製造して架橋されたセパレータを製造する方法が試みされたが、この場合、常用セパレータの物性レベルは満足するが、前記シラン系化合物がポリオレフィン以外にも他の成分及び/又は組成物とグラフトされ、そのような成分及び/又は組成物を工程ごとに廃棄するようになって製造コストが急激に上昇する短所がある。
【0041】
前記変性高分子の架橋は、押出、延伸、抽出などを含む一連の工程以後に行われるので、気孔形成剤が抽出された多孔膜中に前記変性高分子の分布を均一に調節して前記架橋体が前記セパレータ中に均一に分布するように調節する必要がある。前記変性高分子の架橋反応が前記セパレータのうち一部領域に偏重されて起きる場合、必要なレベルの機械的物性を具現することができず、特に、前記セパレータの領域による機械的物性の偏差が大きくなって製品の信頼性、再現性が顕著に低下され得る。
【0042】
上記のように、第2ポリオレフィンを含む第2部のうち、第1ポリオレフィンに架橋性化合物がグラフトされた高分子の架橋体を含む第1部が分散された構造のセパレータにおいて、前記セパレータ中の前記第1部の含量、前記変性高分子中の前記架橋性化合物の含量及び/又は前記第1及び第2ポリオレフィンの重量平均分子量とその割合を一定範囲に調節することで、下記(i)~(vii)の条件のうち一つ以上を満足するセパレータを得ることができる。
【0043】
(i)メルトダウン温度200~300℃、好ましくは、230~300℃、より好ましくは、250~300℃;(ii)シャットダウン温度120~140℃;(iii)縦方向(MD)引張強度1,000~3,500kgf/cm、好ましくは、2,000~3,000kgf/cm、より好ましくは、2,000~2,500kgf/cm;(iv)横方向(TD)引張強度1,000~3,500kgf/cm、好ましくは、2,000~3,000 kgf/cm、より好ましくは、2,000~2,500 kgf/cm;(v)縦方向(MD)引張伸率50~150%、好ましくは、80~150%;(vi)横方向(TD)引張伸率50~150%、好ましくは、80~150%;及び(vii)セパレータの表面で周辺と異なっている明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点((明点(white dot)及び/又は暗点(black dot))の数が10個/m以下、好ましくは、8個/m以下、より好ましくは、5個/m以下。
【0044】
セパレータの製造方法
本発明の他の一側面は、(a)重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000g/molである第1ポリオレフィン、架橋性化合物及び開始剤を反応させて前記第1ポリオレフィンに前記架橋性化合物がグラフトされた高分子を製造するステップ;(b)前記高分子10~40重量%、重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000g/molである第2ポリオレフィン10~40重量%及び気孔形成剤40~80重量%を含む組成物を押出機に投入してシート形態に成形及び延伸するステップ;(c)前記延伸されたシートから気孔形成剤を抽出して多孔膜を製造するステップ;及び(d)前記多孔膜に含まれた前記高分子を架橋させるステップ;を含み、前記高分子中の前記架橋性化合物の含量は、10~50重量%であるセパレータの製造方法を提供する。
【0045】
前記ステップ(a)において、重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)が3~7である第1ポリオレフィン、架橋性化合物及び開始剤を反応させて前記第1ポリオレフィンの主鎖中に前記架橋性化合物がグラフトされた高分子(以下、「変性高分子」)を製造することができ、前記高分子中の前記架橋性化合物の含量が10~50重量%になるように反応物の使用量及び割合を調節することができる。
【0046】
前記ステップ(b)において、前記変性高分子の重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)が3~7である第2ポリオレフィン及び気孔形成剤を含む組成物を押出し、T-ダイを通じて吐出した後に延伸してベースシートを製造することができる。前記組成物は、前記ステップ(a)で製造された前記変性高分子10~40重量%、第2ポリオレフィン10~40重量%及び気孔形成剤40~80重量%を含むことができる。前記組成物中の前記変性高分子の含量が10重量%未満であると、架橋反応が阻害されて必要なレベルの機械的物性を具現することができず、40重量%を超過すると、常用セパレータに必要な物性の具現が難しいことがある。
【0047】
前記気孔形成剤は、パラフィンオイル、パラフィンワックス、鉱油、固体パラフィン、大豆油、菜種油、パーム油、ヤシ油、ジ-2-エチルへキシルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ビス(2-プロピルヘプチル)フタレート、ナフテンオイル及びこれらのうち2つ以上の組み合わせからなる群より選択された一つであってもよく、好ましくは、パラフィンオイルであってもよく、より好ましくは、40℃で動粘度が50~100cStであるパラフィンオイルであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記組成物は、架橋触媒をさらに含むことができる。前記組成物が架橋触媒をさらに含むと、前記ステップ(d)での架橋反応を促進させることができる。このような架橋触媒としては、一般的に、スズ、亜鉛、鉄、鉛、コバルトなどの金属のカルボン酸塩、有機塩基、無機酸及び有機酸が用いられ得る。例えば、前記架橋触媒は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、酢酸第1スズ、カプリル酸第1スズ、ナフテン酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸などの無機酸、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などの有機酸などであってもよく、好ましくは、ジブチルスズジラウレートであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記架橋触媒は、従来、シラン変性ポリオレフィンの製造時に添加するか、架橋触媒の溶液又は分散液を多孔膜に塗布するなどの方法で用いられた。ただし、このような従来の方法では、前記架橋触媒を前記シラン変性ポリオレフィンと共に均一に分散させにくい。上述したように、架橋前に前記多孔膜に含まれた前記変性高分子が均一に分散される必要があり、このとき、前記変性高分子の架橋反応に関与する架橋触媒も均一に分散される必要がある。
【0050】
これに対して、前記架橋触媒を気孔形成剤と事前に混合して前記押出機のサイドインジェクターを通じて投入することで、前記架橋触媒を前記第1及び/又は第2部と均一に分散させて架橋反応の効率を一層高めることができる。
【0051】
前記組成物中の前記架橋触媒の含量は、0.01~5重量%であってもよい。前記架橋触媒の含量が0.01重量%未満であると、架橋反応を必要なレベルで促進させることができず、5重量%を超過すると、反応速度が必要なレベルに収斂されるので、経済性、生産性の側面で不利である。
【0052】
前記ステップ(b)で、前記延伸は、一軸延伸又は二軸延伸(逐次又は同時二二軸延伸)などの公知の方法により行われ得る。逐次二二軸延伸の場合、延伸倍率は横方向(MD)及び縦方向(TD)にそれぞれ4~20倍であってもよく、それによる面倍率は、16~400倍であってもよい。
【0053】
前記ステップ(d)では、前記気孔形成剤が抽出、除去された前記多孔膜に含まれた前記変性高分子を架橋させることができる。前記架橋は、前記多孔膜を温度及び湿度が一定範囲に調節された恒温恒湿槽、例えば、温度が50~100℃、湿度が50~90%に調節された恒温恒湿槽に位置させて約20時間以内、好ましくは、約5~20時間の間行われ得る。
【0054】
一方、前記ステップ(d)は、前記ステップ(a)~ステップ(c)と相互不連続的であるか、連続的であっても温度を一定レベル以上に高めにくい水分環境で行われるので、架橋反応に過度な時間が所要され得る。これに対して、前記ステップ(d)で、前記多孔膜を90℃前後の水槽に通過させるか、好ましくは、沸点が100℃以上、好ましくは、120℃以上、より好ましくは、150℃以上である溶液が担持された架橋槽に投入して連続的に通過させることで、架橋反応に所要される時間を顕著に短縮させて生産性を向上させることができる。
【0055】
具体的に、前記溶液は、沸点が100℃以上である成分を含むので、架橋反応時の温度条件を100℃以上、好ましくは、120℃以上、より好ましくは、120~130℃に組成して架橋反応を促進させることができる。前記成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及びこれらのうち2つ以上の組み合わせからなる群より選択された一つを用いることができる。このような成分は、吸湿性があり、前記成分中に含まれた水分で架橋反応を起こすことができるが、必要に応じて、一定量の水を追加で混合して用いてもよい。
【0056】
また、前記溶液は、架橋触媒をさらに含むことができ、この場合、一定量の水を混合しなくても前記架橋反応を充分に促進させることができる。前記溶液中の架橋触媒の含量は、0.01~10重量%、好ましくは、0.1~5重量%であってもよい。前記架橋触媒の含量が0.01重量%未満であると、架橋反応を必要なレベルで促進させることができず、10重量%を超過すると、反応速度が必要なレベルに収斂されるので、経済性、生産性の側面で不利である。
【0057】
前記架橋槽に担持された溶液に含まれた架橋触媒は、前記組成物に含まれたものと本質的に類似した作用効果を有する。ただし、前記組成物に含まれた架橋触媒、すなわち、上記ステップ(b)で押出機のサイドインジェクターを通じて投入された架橋触媒は、前記ステップ(d)で前記多孔膜の中心部(中心層)に分布する変性高分子を効果的に架橋させることができる一方、表面部(スキン層)に分布する変性高分子の架橋反応には積極的に関与しにくい。前記架橋槽に担持された溶液に含まれた架橋触媒は、前記多孔膜が前記架橋槽を通過するとき前記多孔膜の表面部(スキン層)と接触するので、前記多孔膜の表面部(スキン層)に分布する変性高分子の架橋反応を一層促進させることができる。前記架橋触媒の種類と作用効果に対しては上述した通りである。
【0058】
以下、本発明の実施例に関して詳しく説明する。
【0059】
製造例1
200℃に予熱された2Lの丸底フラスコ容器に重量平均分子量(Mw)が8,000g/mol、密度が0.97g/mL、結晶化度が84%、融点が127℃である高密度ポリエチレンワックスをゆっくり投入しながら撹拌して溶融させて液体状態にした後、ビニルトリメトキシシランをゆっくり添加した。高密度ポリエチレンワックスとビニルトリメトキシシランの投入割合(重量比)は、それぞれ90:10にした。
【0060】
高密度ポリエチレンワックスとビニルトリメトキシシランが完全に溶融された溶液を製造した後、ビニルトリメトキシシランのグラフト反応のための開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサンをゆっくり投入しながら1時間の間撹拌してビニルトリメトキシシランがグラフトされた高密度ポリエチレンワックス(以下、「シラン変性PEワックス」)を製造した。このとき、前記ビニルトリメトキシシラン100重量部を基準として前記開始剤1重量部を投入した。前記シラン変性PEワックスを常温で充分に冷却させた後に破砕してシラン変性PEワックス粉末を製造した。
【0061】
製造例2
200℃に予熱された2Lの丸底フラスコ容器に重量平均分子量(Mw)が11,000g/mol、密度が0.97g/mL、結晶化度が83%、融点が128℃である高密度ポリエチレンワックスをゆっくり投入しながら撹拌して溶融させて液体状態にした後、ビニルトリメトキシシランをゆっくり添加した。高密度ポリエチレンワックスとビニルトリメトキシシランの投入割合(重量比)は、それぞれ90:10にした。
【0062】
高密度ポリエチレンワックスとビニルトリメトキシシランが完全に溶融された溶液を製造した後、ビニルトリメトキシシランのグラフト反応のための開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサンをゆっくり投入しながら1時間の間撹拌してビニルトリメトキシシランがグラフトされた高密度ポリエチレンワックス(以下、「シラン変性PEワックス」)を製造した。このとき、前記ビニルトリメトキシシラン100重量部として基準で前記開始剤1重量部を投入した。前記シラン変性PEワックスを常温で充分に冷却させた後に破砕してシラン変性PEワックス粉末を製造した。
【0063】
製造例3
200℃に予熱された2Lの丸底フラスコ容器に重量平均分子量(Mw)が4,000g/mol、密度が0.98g/mL、結晶化度が85%、融点が126℃である高密度ポリエチレンワックスをゆっくり投入しながら撹拌して溶融させて液体状態にした後、ビニルトリメトキシシランをゆっくり添加した。高密度ポリエチレンワックスとビニルトリメトキシシランの投入割合(重量比)は、それぞれ90:10にした。
【0064】
高密度ポリエチレンワックスとビニルトリメトキシシランが完全に溶融された溶液を製造した後、ビニルトリメトキシシランのグラフト反応のための開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサンをゆっくり投入しながら1時間の間撹拌してビニルトリメトキシシランがグラフトされた高密度ポリエチレンワックス(以下、「シラン変性PEワックス」)を製造した。このとき、前記ビニルトリメトキシシラン100重量部を基準として前記開始剤1重量部を投入した。前記シラン変性PEワックスを常温で充分に冷却させた後に破砕してシラン変性PEワックス粉末を製造した。
【実施例1】
【0065】
重量平均分子量(Mw)が350,000g/molであり、分子量分布度(Mw/Mn)が5である高密度ポリエチレン(HDPE)20重量部、前記製造例1から得られたシラン変性PEワックス粉末10重量部、40℃での動粘度が70cStであるパラフィンオイル70重量部を混合して二軸押出機(内径58mm、L/D=45)に投入した。スクリュー回転速度40rpm、200℃の条件で前記二軸押出機から幅が400mmであるT-ダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が40℃であるキャスティングロール(casting roll)を通過させて、厚さが1,000μmであるベースシートを製造した。
【0066】
前記ベースシートを110℃であるロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃であるテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸してフィルムを製造した。前記フィルムを25℃であるジクロロメタン浸出槽に含浸して1分の間パラフィンオイルを抽出、除去し、ジブチルスズジラウレートの濃度が1重量%に調節されたジクロロメタン溶液を担持した含浸槽に含浸した後、50℃で5分の間乾燥した。
【0067】
その後、テンター延伸機で125℃に加熱した後、横方向(TD)で1.2倍延伸した後に弛緩させて延伸前に比べて0.9倍になるように熱固定した。前記フィルムを80℃、湿度90%である恒温恒湿槽で10時間の間架橋させて多孔性セパレータを製造した。
【実施例2】
【0068】
製造例1から得られたシラン変性PEワックス粉末の代わり、製造例2から得られたシラン変性PEワックス粉末を用いたこと以外は、前記実施例1と同一の方法で多孔性セパレータを製造した。
【実施例3】
【0069】
製造例1から得られたシラン変性PEワックス粉末の代わり、製造例3から得られたシラン変性PEワックス粉末を用いたこと以外は、前記実施例1と同一の方法で多孔性セパレータを製造した。
【0070】
比較例1
溶融温度が135℃であり、重量平均分子量(Mw)が300,000である高密度ポリエチレン29重量部、40℃での動粘度が40cStであるパラフィンオイル65重量部、トリメトキシビニルシラン2重量部、ジブチルスズジラウレート2重量部及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン(2,5-dimethyl-2,5-di(tert-butylperoxy)hexane)2重量部を混合して二軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入した。200℃、スクリュー回転速度30rpmの条件で前記二軸押出機で反応押出させてシラン変性ポリオレフィン組成物を製造し、幅が300mmであるT-ダイで吐出した後、温度が40℃であるキャスティングロールを通過させて、厚さが800μmであるベースシートを製造した。
【0071】
前記ベースシートを108℃であるロール延伸機で縦方向(MD)に5.5倍延伸し、123℃であるテンター延伸機で横方向(TD)に5.5倍延伸して延伸フィルムを製造した。前記延伸フィルムを25℃であるジクロロメタン浸出槽に含浸して10分間パラフィンオイルを抽出、除去した。パラフィンオイルが除去されたフィルムを127℃に熱固定した後、80℃、湿度90%である恒温恒湿槽で24時間の間架橋させて多孔性セパレータを製造した。
【0072】
比較例2
重量平均分子量(Mw)が350,000g/mol、分子量分布度(Mw/Mn)が5である高密度ポリエチレン29.5重量部、シラン変性高密度ポリエチレン(高密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は200,000g/molである)0.5重量部及び40℃での動粘度が70cStであるパラフィンオイル70重量部を混合して二軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入した。架橋触媒であるジブチルスズジラウレートを前記パラフィンオイルのうち一部に事前分散させ、前記二軸押出機を通過する物質の総重量を基準で0.5重量%になるように前記二軸押出機のサイドインジェクターを通じて投入した。スクリュー回転速度40rpm、200℃の条件で前記二軸押出機から幅が300mmであるT-ダイで吐出させた後、温度が40℃であるキャスティングロールを通過させて、厚さが800μmであるベースシートを製造した。
【0073】
前記ベースシートを110℃であるロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃であるテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸して延伸フィルムを製造した。前記延伸フィルムを25℃であるジクロロメタン浸出槽に含浸して1分の間パラフィンオイルを抽出、除去した。パラフィンオイルが除去されたフィルムを5分間50℃の条件で乾燥した。その後、テンター延伸機で125℃に加熱した後、横方向(TD)に1.45倍延伸した後に弛緩させて延伸前に比べて1.25倍になるように熱固定させた。前記フィルムを85℃、湿度85%である恒温恒湿槽で72時間の間架橋させて多孔性セパレータを製造した。
【0074】
比較例3
重量平均分子量(Mw)が350,000、分子量分布(Mw/Mn)が5である高密度ポリエチレン(High density polyethylene、HDPE)29.5重量部、シラン変性高密度ポリエチレン(高密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は200,000g/molである)0.5重量部及び40℃での動粘度が70cStであるパラフィンオイル70重量部を混合して、二軸押出機(内径58mm、L/D=56、Twin screw extruder)に投入した。200℃、スクリュー回転速度40rpmの条件で前記二軸押出機から幅が300mmであるT-ダイ(T-die)で吐出させた後、温度が40℃であるキャスティングロール(Casting roll)を通過させて、厚さが800μmであるベースシートを製造した。
【0075】
前記ベースシートを110℃であるロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃であるテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸して延伸フィルムを製造した。前記延伸フィルムを25℃であるジクロロメタン浸出槽に含浸して1分の間パラフィンオイルを抽出、除去した。パラフィンオイルが除去されたフィルムを50℃の条件で乾燥した。その後、テンター延伸機で125℃に加熱した後、横方向(TD)に1.45倍延伸した後に弛緩させて延伸前に比べて1.25倍になるように熱固定させた。前記フィルムを85℃、湿度85%である恒温恒湿槽で72時間の間架橋させて多孔性セパレータを製造した。
【0076】
実験例
本発明で測定した物性それぞれに対する試験方法は下記の通りである。温度に対する別途の言及がない場合、常温(25℃)で測定した。
【0077】
-厚さ(μm):微細厚さ測定機を用いてセパレータ試片の厚さを測定した。
-気孔率(%):ASTM F316-03に準拠して、PMI社のCapillary Porometerを用いて半径が25mmであるセパレータ試片の気孔率を測定した。
-通気度(Gurley、sec/100ml):アサヒセイコー社のガーレー式デンソメータ(Densometer)EGO2-5モデルを用いて測定圧力0.025MPaで100mlの空気が直径29.8mmであるセパレータ試片を通過する時間を測定した。
-引張強度(kgf/cm):引張強度測定機を用いてサイズが20×200mmであるセパレータ試片に応力を加えて試片の破断が発生するまで加えられた応力を測定した。
-穿孔強度(gf):KATO TECH社の穿孔強度測定機KES-G5モデルを用いてサイズが100×50mmであるセパレータ試片に直径0.5mmのスティック(Stick)で0.05cm/secの速度で力を加えて前記試片があけられる時点で加えられた力を測定した。
-メルトダウン温度及びシャットダウン温度(℃):熱機械分析器(Thermomechanical analysis、TMA)を用いてセパレータ試片に0.01Nの力を加えた後、5℃/分の速度で昇温させて前記試片の変形程度を測定した。
-熱収縮率(%):130℃のオーブンで1時間の間サイズが200×200mmであるセパレータ試片をA4紙の間に入れて放置した後、常温冷却させて試片の横及び縦方向の収縮された長さを測定し、下記計算式を用いて熱収縮率を計算した。
熱収縮率(%)=(l-l)/l*100
(前記計算式で、lは、収縮前の試片の横又は縦方向の長さであり、lは、収縮後の試片の横又は縦方向の長さである)
-表面欠点数(ea/m):セパレータの表面で周辺明度と差が顕著であり、2mm以上のサイズを有する不均一な微細点(表面欠点)の数を肉眼で測定した。
【0078】
前記実施例及び比較例によって製造されたセパレータの物性を測定してその結果を下記表1及び表2に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
前述した本発明の説明は例示のためのものに過ぎず、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できる。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は分散して実施することもでき、同様に、分散されたものとして説明されている構成要素を結合された形態で実施することもできる。
【0082】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲により示されるが、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。