(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】弾性表面波デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/25 C
(21)【出願番号】P 2020158015
(22)【出願日】2020-09-21
【審査請求日】2021-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】熊谷浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村博文
(72)【発明者】
【氏名】門川裕
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/050307(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046402(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/083432(WO,A1)
【文献】特開2005-167969(JP,A)
【文献】特開2010-232725(JP,A)
【文献】特開2017-175618(JP,A)
【文献】特開2007-158989(JP,A)
【文献】特開2014-222860(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181932(WO,A1)
【文献】特開2016-010026(JP,A)
【文献】特開2016-123020(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143045(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成された弾性表面波を励振するIDT電極と、
前記圧電基板上に形成された外部接続用パッドと、
前記圧電基板上に形成された内部配線用パッドと、
前記圧電基板上であって、前記IDT電極が形成された領域以外の領域に形成された支持層と、
前記支持層上に形成され、前記IDT電極を気密封止するように形成されたカバー層と、
前記外部接続用パッドと電気的に接続され、前記支持層と前記カバー層に形成された外部接続用貫通孔内及び前記カバー層上に、前記外部接続用パッドからUBM層を介して同一金属により一体的に形成された外部接続端子と、
前記内部配線用パッドと電気的に接続され、前記支持層と前記カバー層に形成された内部配線用貫通孔内に、前記内部配線用パッドからUBM層を介して同一金属により一体的に形成された内部配線と
を有する弾性表面波デバイスであって、
前記外部接続端子は、前記内部配線よりも、前記カバー層の表面からみて高く形成されており、
前記圧電基板の上面透視において、前記内部配線の
最大の幅は、前記外部接続端子の
最大の幅よりも大き
く、
前記内部配線は、複数の内部配線用パッドと電気的に接続されており、
前記複数の内部配線用パッドの間には、前記内部配線と立体的に交差する配線パターンが前記圧電基板上に形成されている弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記内部配線は、前記カバー層の表面よりも低い位置に形成されている
請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記圧電基板は、高抵抗シリコン、ガリウム砒素、サファイア、多結晶アルミナ又はガラスからなる支持基板と接合されている
請求項1または2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記内部配線は、グランド電位である
請求項1~3に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記内部配線は、前記カバー層から露出し、かつ、カバー層の表面よりも高く形成されており、
前記内部配線のカバー層の表面からの高さは、前記外部接続端子のカバー層の表面からの高さの3分の1以下である
請求項1~4に記載の弾性表面波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 弾性表面波デバイスに関し、特に、WLP(Wafer Level Package)構造の弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波デバイスは、スマートフォンなどの移動体通信端末のフロントエンドモジュールにおける帯域通過フィルタとして用いられる。近年、携帯電話、スマートフォン等の携帯情報端末における無線部のモジュール化が進んでおり、小形化と低背化が求められている。
【0003】
そのために、弾性表面波装置のパッケージング技術も改良され、弾性表面波デバイスのチップそのものをパッケージに利用するWLPが提案されている。弾性表面波デバイスでは、圧電基板上にIDT(Inter Digital Transducer)電極を形成し、IDT電極の上方に中空空間を確保した状態でパッケージングされる。
【0004】
WLPタイプの弾性表面波デバイスでは、 圧電基板そのものが中空空間を形成するためのパッケージングに利用される。
【0005】
特許文献1には、WLPタイプの弾性表面波デバイスに関する技術の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする主たる課題について説明する。
【0008】
従来のWLPタイプの弾性表面波デバイスの構造は、特許文献1に開示されているように、圧電基板そのものをパッケージングに利用し、配線基板を利用しないことから、配線層数の制約が大きい。
【0009】
また、弾性表面波デバイスの特性を安定させるために、グランドパターンは配線が幅広かつ大面積を確保することが望ましいが、従来のWLPタイプの弾性表面波デバイスの構造では、圧電基板自体を大きくするなどしない限り、困難である。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、WLPタイプの弾性表面波デバイスであって、配線層数を従来よりも多くすることができ、配線設計の自由度が向上した、また、グランド配線の低抵抗化により、特性が安定した、WLPタイプの弾性表面波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するために、本発明にあっては、
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成された弾性表面波を励振するIDT電極と、
前記圧電基板上に形成された外部接続用パッドと、
前記圧電基板上に形成された内部配線用パッドと、
前記圧電基板上であって、前記IDT電極が形成された領域以外の領域に形成された支持層と、
前記支持層上に形成され、前記IDT電極を気密封止するように形成されたカバー層と、
前記外部接続用パッドと電気的に接続され、前記支持層と前記カバー層に形成された外部接続用貫通孔内及び前記カバー層上に、前記外部接続用パッドからUBM層を介して同一金属により一体的に形成された外部接続端子と、
前記内部配線用パッドと電気的に接続され、前記支持層と前記カバー層に形成された内部配線用貫通孔内に、前記内部配線用パッドからUBM層を介して同一金属により一体的に形成された内部配線と
を有する弾性表面波デバイスであって、
前記外部接続端子は、前記内部配線よりも、前記カバー層の表面からみて高く形成されており、
前記圧電基板の上面透視において、前記内部配線の最大の幅は、前記外部接続端子の最大の幅よりも大きく、
前記内部配線は、複数の内部配線用パッドと電気的に接続されており、
前記複数の内部配線用パッドの間には、前記内部配線と立体的に交差する配線パターンが前記圧電基板上に形成されている弾性表面波デバイス
とした。
【0013】
前記内部配線は、前記カバー層の表面よりも低い位置に形成されていることが、本発明の一形態とされる。
【0014】
前記圧電基板は、高抵抗シリコン、ガリウム砒素、サファイア、多結晶アルミナ又はガラスからなる支持基板と接合されていることが、本発明の一形態とされる。
【0015】
前記内部配線は、グランド電位であることが、本発明の一形態とされる。
【0016】
前記内部配線は、前記カバー層から露出し、かつ、カバー層の表面よりも高く形成されており、
前記内部配線のカバー層の表面からの高さは、前記外部接続端子のカバー層の表面からの高さの3分の1以下であることが、本発明の一形態とされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる弾性表面波デバイスによれば、WLPタイプの弾性表面波デバイスであって、配線層数を従来よりも多くすることができ、配線設計の自由度が向上した、また、グランド配線の低抵抗化により、特性が安定した、WLPタイプの弾性表面波デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明にかかる弾性表面波デバイス1の平面図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる弾性表面波デバイス1の断面
図1である。
【
図3】
図3は、本発明にかかる弾性表面波デバイス1の断面
図2である。
【
図4】
図4は、本発明にかかる弾性表面波デバイス1の断面
図3である。
【
図5】
図5は、本発明の弾性表面波デバイス1にかかる製造方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明にかかる弾性表面波デバイス1に採用され得る弾性表面波共振器を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明にかかる弾性表面波デバイス1に採用され得るフィルタの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施の形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0020】
図1は、本発明にかかる弾性表面波デバイス1の平面図である。
【0021】
図1は、弾性表面波デバイス1を実装面側から見た図である。
図1に示すように、本実施例に係る弾性表面波デバイス1は、実装面側に外部接続用端子15と内部配線16を備える。また、外部接続用端子15と内部配線16を除いて、カバー層13で覆われている。内部配線16は、カバー層から露出している。点線で示したエリアは、キャビティエリア10であり、弾性表面波の機能素子が機械的に動作し、励振するための密閉された空間が形成されている。
【0022】
図2は、本発明にかかる弾性表面波デバイス1の断面
図1である。
【0023】
図2は、
図1におけるA-A断面図における弾性表面波デバイス1の構成を示す。弾性表面波デバイス1は、圧電基板3、並びに、圧電基板3の一の主面たる上面に形成されたIDT電極5、配線パターン7、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bを備える。また、外部接続用パッド9a上に形成された外部接続用端子15および内部配線用パッド9b上に形成された内部配線16を備える。
【0024】
圧電基板3は、圧電材料の基板である。圧電材料としては、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、水晶(SiO2)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ランガサイト(La3Ga3SiO14)等の単結晶を用いることができる。
【0025】
また、弾性表面波デバイス1は、IDT電極5が形成された領域、外部接続用端子15及び内部配線16が形成された領域以外の領域に形成された支持層11を備える。また、支持層11とともにIDT電極5が形成されたキャビティエリア10を密閉空間となるように封止するカバー層13を備える。
【0026】
弾性表面波デバイス1は、さらに、圧電基板3の他の主面たる面に形成された支持基板17を備えてもよい。支持基板17としては、高抵抗シリコン、ガリウム砒素、サファイア、多結晶アルミナ又はガラス等を用いることができる。但し、支持基板17の材質として、これらの材質に限定するものではない。支持基板17の厚みは、例えば、200μmとすることができる。
【0027】
弾性表面波デバイス1は、フィルタ、共振子、遅延線、トラップ等のいずれであってもよい。また、IDT電極5が励振する弾性波は、レイリー波、SH波等のいずれであってもよい。さらに、弾性表面波デバイス1がフィルタである場合は、弾性波表面波デバイス1は、共振器型フィルタ、トランスバーサル型フィルタのいずれであってもよい。
【0028】
図3は、本発明の実施例1にかかる弾性表面波デバイス1の断面
図2である。
図3は、
図1のB-B断面図である。
【0029】
図3に示すように、内部配線16は、一つの内部配線用パッド9b上に形成されている。
図3に示す内部配線16は、例えば、グランド電位である。
図3に示すように、内部配線16は、通常の配線パターンに比べて、厚みが大きいため、配線抵抗が低く、損失が小さい配線である。また、圧電基板の熱を放熱することにより、弾性表面波デバイス1のIDT電極5の耐電力を高める効果がある。また、
図3に示す内部配線16は、カバー層13の表面よりも高い位置に形成されているが、カバー層13の表面よりも低く形成されてもよい。
【0030】
図4は、本発明の実施例1にかかる弾性表面波デバイス1の断面
図3である。
図4は、
図1のB-B断面図であり、
図3に示した弾性表面波デバイス1とは別の実施形態を示す図である。
【0031】
図4に示すように、内部配線16は、複数の内部配線用パッド9bと電気的に接続されている。また、内部配線16と立体的に交差する配線パターン70が圧電基板3上に形成されている。また、
図4に示す内部配線16は、カバー層13の表面と同程度の位置に形成されているが、カバー層13の表面よりも高く形成されてもよく、低く形成されてもよい。
【0032】
図5は、本発明の実施例1にかかる弾性表面波デバイス1の製造方法を説明するための図である。
【0033】
弾性表面波デバイス1の製造にあたっては、まず、
図5(a)に示すように、圧電基板3の上面に、IDT電極5、配線パターン7、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bを形成する。
【0034】
IDT電極5、配線パターン7、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bは、導電材料の膜である。導電材料としては、例えば、アルミニウム-銅(Al-Cu)合金に代表されるアルミニウム(Al)合金、アルミニウム(Al)単体金属等を用いることができる。なお、IDT電極5、配線パターン7、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bは、異種の導電材料からなる複数の層を積層した膜であってもよい。
【0035】
IDT電極5の平面形状は、後述するように、少なくとも一対の櫛歯状電極を電極指が交互に配列されるように互いに噛み合わせた平面形状となっている。IDT電極5は、一対の櫛歯状電極に印加された励振信号に応じた弾性表面波を圧電基板3の上面に励振する励振電極として機能する。
【0036】
単数個のIDT電極5で弾性表面波デバイス1を構成することは必須ではなく、複数個のIDT電極5を直列接続や並列接続等の接続方式で接続して弾性表面波デバイス1を構成してもよい。このように複数個のIDT電極5を接続すれば、ラダー型弾性表面波フィルタ、ラティス型弾性表面波フィルタ、2重モード弾性表面波フィルタ等を構成することができる。
【0037】
配線パターン7はIDT電極5と電気的に接続されている。配線パターン7は、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bと電気的に接続されている。
【0038】
IDT電極5、配線パターン7、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bは、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法により形成した膜を、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)デバイスとを用いたフォトリソグラフィ法等によりパターニングして所望の形状に加工することにより得ることができる。
【0039】
この方法によりIDT電極5、配線パターン7、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bを形成する場合、IDT電極5、配線パターン7、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bを同一材料で構成して同一工程において形成することが望ましい。
【0040】
弾性表面波を閉じ込めるために、圧電基板3の上面に反射器電極を形成してもよい。このような反射器電極は、IDT電極5から見て弾性表面波の2つの伝播方向に形成される。反射器電極を形成する場合、反射器電極及びIDT電極5を同一材料で構成して同一工程において形成することが望ましい。
【0041】
次に、
図5(b)に示すように、IDT電極5が形成された領域以外の領域に支持層11を形成する。支持層11は、少なくともIDT電極5が形成された領域以外の領域に形成すればよいが、外部接続用端子15及び内部配線16が形成される領域にあらかじめ形成しないこととしてもよい。
【0042】
支持層11は、通常の膜形成方法により圧電基板3の上に形成した膜をパターニングすることにより形成してもよいし、別途用意した膜を圧電基板3の上に貼り合わせることにより形成してもよい。
【0043】
前者の方法により支持層11を形成する場合、例えば、レジスト膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングした後に硬化させることにより支持層11を形成することができる。この場合、レジストとしては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)系樹脂、アクリル系樹脂等の感光性樹脂を用いることができる。
【0044】
レジストからなる膜の形成方法は、感光性ドライフィルムを用いる方法と、感光性液体レジストを用いる方法に代表される。感光性ドライフィルムを用いる場合、真空ラミネータ装置などを用いて、弾性表面波デバイスウエハまたは基板表面に感光性ドライフィルムを密着性良く貼付けることができる。
【0045】
感光性ドライフィルムを用いる場合、10μmを超える比較的厚めの、密着性に優れた支持層11を形成することができる。
【0046】
感光性液体レジストを用いる場合、例えば、スピンコート法、印刷法等によりレジスト液を塗布することにより形成することができる。中でも、スピンコート法によりレジストからなる膜を形成することが望ましい。
【0047】
スピンコート法によりレジストからなる膜を形成した場合、下地となる構造に多少の段差があっても、下地となる構造との間に隙間を作ることなくレジスト膜を形成することができ、密着性に優れた支持層11を形成することができるからである。
【0048】
このようにして形成されたレジスト膜は、露光工程及び現像工程を経て、IDT電極5が形成された領域以外の領域に形成された支持層11へと加工される。支持層11の厚みは、例えば、20μmとすることができる。
【0049】
次に、支持層11の上面にフィルム状のカバー層13を載置して、支持層11とカバー層13とを接合する。これにより、IDT電極5が形成された領域に密閉された振動空間(キャビティエリア10)を設けるカバー層13を形成することができる。
【0050】
支持層11の上面に載置するためには、温度管理をしながらローラーでフィルムを加圧して貼り付けることのできる貼り付け機を用いて、温度及び圧力を適宜設定し、カバー層13を支持層11の上面に貼り付ければよい。
【0051】
支持層11とカバー層13とを接合するためには、材料に応じて、支持層11及びカバー層13を加熱したり、支持層11及びカバー層13に光を照射したりすればよい。例えば、支持層11及びカバー層13の材料としてエポキシ樹脂を用いた場合であれば、支持層11及びカバー層13を100℃程度に加熱すればよい。このように形成されたカバー層13により、振動空間(キャビティエリア10)を設けることができるとともに、IDT電極5を封止することができるので、IDT電極5等の酸化等を低減することができる。カバー層13の厚みは、例えば、20μm~45μmとすることができる。
【0052】
支持層11及びカバー層13を同一材料とすれば、支持層11及びカバー層13とを接合した場合に両者を一体化することができる。両者の接合界面が同一材料同士の界面となるので、両者の密着強度やカバー層13の気密性を向上することができる。特に、両者の材料としてエポキシ系樹脂を用いて、100℃から200℃までの範囲で加熱した場合には、より重合が促進されるため、両者の密着強度やカバー層13の気密性を向上することができる。
【0053】
次に、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bを露出させる工程について説明する。
図5(c)に示すように、支持層11及びカバー層13を貫通するように、例えば、レーザー光の照射や切削加工などにより、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bを露出させる。
【0054】
次に、図示はしないが、レーザー光の照射や切削加工などによりカバー層13及び/又は支持層11を切削し、内部配線が形成される立体的空間を形成する。後述するように、内部配線と立体的に交差する配線パターン70があるときは、カバー層13及び/又は支持層11を、内部配線と立体的に交差する配線パターン70が露出しないように切削加工等する。
【0055】
また、内部配線と立体的に交差する配線パターン70がないときは、圧電基板3が露出するまで切削加工等してもよい。内部配線16と圧電基板3が接合すると、放熱性が向上し、IDT電極5の耐電力性が向上するなどの効果が得られる。また、内部配線16の断面積が大きくなり、配線抵抗による損失を小さくすることができる。
【0056】
外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bを露出させる工程では、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9b表面に物理的ダメージが残ることが多く、外部接続用端子15及び内部配線16との濡れ性、接続強度及び接続信頼性確保のため、Under Bump Metal(UBM)と呼ばれる金属層を形成することが多い。
【0057】
代表的なUBM層の形成方法としては、無電解めっき法と電解めっき法がある。無電解めっき法では、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bが露出したウエハまたは基板を温度、濃度管理された無電解めっき液槽に適切な時間浸漬し、洗浄することにより外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9b上にUBM層を形成することができる。
【0058】
電解めっき法では、次のような工程でUBMを形成する。外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bが露出したウエハまたは基板表面全面にTi(チタン)などのめっきシード層とフォトレジスト層を形成し、立体配線用パッド9とめっき通電用電極が露出するよう、露光現像工程を経てフォトレジストをパターニングする。
【0059】
フォトレジストがパターニングされたウエハまたは基板を温度、濃度管理された電解めっき液槽に浸漬し、適切な電流設定で適切な時間通電することでUBM層を形成する。
【0060】
その後、フォトレジストを除去し、UBM層形成部以外のめっきシード層をエッチング、洗浄することにより立体配線用パッド9上にUBM層を形成することができる。なお、電解めっき法でUBM層を形成する場合、外部接続用パッド9a及び内部配線用パッド9bの開口部側壁にもUBM層を形成することが可能であり、外部接続用端子15及び内部配線16との接合面積が増えることにより接続強度が増し、接続信頼性が向上する。
【0061】
UBM層に用いられる金属は、主に、無電解めっき法では、表面から金(Au)、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni) の層構成、または、金(Au)及びニッケル(Ni)の層構成である。
【0062】
電解めっき法では、主に、同じく表面から金(Au)、ニッケル(Ni)及びチタン(Ti(シード層))の層構成、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びチタン(Ti(シード層))の層構成、または、金(Au)、銅(Cu)及びチタン(Ti(シード層))の層構成である。
【0063】
次に、
図5(d)に示すように、外部接続用端子15及び内部配線16を、メタルマスクMMを用いてハンダペーストHPを充填することにより形成する。ハンダペーストに含まれる金属の組成としては、限定はなく、有鉛であってもよいし、無鉛であってもよい。
【0064】
例えば、Sn-Pb系合金、Sn-Cu系合金、Sn-Ag系合金、Sn-Bi系合金、Sn-In系合金、Sn-Sb系合金などを採用し得る。ペースト中のはんだ粉末及びフラックスの含有量は、例えば、はんだ粉末を5~95質量%、フラックスを5~95質量%とすることができる。本実施例では、ハンダ粉末を約90質量%含むハンダペーストを用いた。
【0065】
メタルマスクMMは、例えば、ステンレスなどの金属により形成された金属板である。外部接続用端子15を形成する箇所には、例えば、直径100μm~120μmの開口が形成されている。また、内部配線16を形成する箇所には、例えば、直径25μm~50μmの開口が形成されている。また、メタルマスクMMの厚みは、例えば、50μmとすることができる。
【0066】
外部接続用端子15の幅は、例えば、50μm~100μmとすることができる。また、内部配線16は、所望の配線パターンにより、適宜に設計することができる。本実施例では、内部配線16は、幅60μm、長さ200μmの内部配線を形成した。内部配線16は、2つの内部配線用パッド9bを電気的に接続している。
【0067】
次に、メタルマスクMMを除去して、リフロー及びフラックス洗浄を行い、個片化し、
図1及び
図2に示す弾性表面波デバイス1を得た。その結果、外部接続用端子15は、カバー層13の表面からの高さが、50μm~65μmであった。また、内部配線16は、カバー層13の表面からの高さが、14μmであった。
【0068】
すなわち、外部接続用端子15は、内部配線16よりも、高く形成されている。このため、内部配線16は、実装面側に露出しているものの、弾性表面波デバイス1が実装された後においても、内部配線16が実装基板上の配線に短絡することがない。よって、弾性表面波デバイス1の内部配線16は、実用的な配線として用いることができる。
【0069】
圧電基板が基板にボンディングされてパッケージングされるチップサイズパッケージに比べて、配線層数の制約が大きいWLPタイプの弾性表面波デバイスにおいては、圧電基板の大型化、パッケージングの層数の増加を伴わずに配線の選択肢が増えることは、殊更に技術的な意義が大きい。
【0070】
このように、圧電基板の大型化、パッケージング層数の増加を伴わずに配線の選択肢が増やせるのは、上述の本実施形態の弾性表面波デバイス1にかかる説明から明らかなとおり、カバー層13及び/又は支持層11の立体的領域を利用した内部配線16を形成することができるからである。さらに、本発明にかかる内部配線16は、通常の配線パターンに比べて、厚みも大きいため、低抵抗な配線として用いることができる。
【0071】
次に、弾性表面波デバイス1の機能素子部分にかかる説明をする。
図6は、弾性表面波共振器を示す平面図である。
【0072】
図6に示すように、圧電基板30上に、弾性表面波を励振するIDT50と反射器52が形成されている。IDT50は、互いに対向する一対の櫛形電極50aを有する。櫛形電極50aは、複数の電極指50bと複数の電極指50bを接続するバスバー50cを有する。反射器52は、IDT50の両側に設けられている。
【0073】
IDT50および反射器52は、その厚みが、例えば、150nmから400nmの薄膜である。IDT50および反射器52は、他の金属、例えば、チタン、パラジウム、銀などの適宜の金属もしくはこれらの合金を含んでもよく、これらの合金により形成されてもよい。また、IDT50および反射器52は、複数の金属層を積層してなる積層金属膜により形成されてもよい。
【0074】
図7は、弾性表面波デバイス1に採用され得るフィルタの構成例を示す図である。
【0075】
図7に示すように、圧電基板30上に、IDT及び反射器からなる弾性表面波共振器53および配線パターン54が形成されている。
【0076】
配線パターン54は、入力パッドIn、出力パッドOutおよびグランドパッドGNDを構成する配線を含んでいる。また、配線パターン54は、弾性表面波共振器53と電気的に接続されている。
【0077】
配線パターン54上に、絶縁体56が形成されている。絶縁体56は、例えば、ポリイミドを用いることができる。絶縁体56は、例えば、1000nmの膜厚で形成する。
【0078】
絶縁体56上に、第2配線パターン58が形成されている。第2配線パターン58は、絶縁体56を介して配線パターン54と立体的に交差するように形成されている。
【0079】
弾性表面波共振器53、配線パターン54および第2配線パターン58は、銀、アルミニウム、銅、チタン、パラジウムなどの適宜の金属もしくは合金からなる。また、これらの金属パターンは、複数の金属層を積層してなる積層金属膜により形成されてもよい。弾性表面波共振器53、配線パターン54および第2配線パターン58は、その厚みが、例えば、150nmから400nmとすることができる。
【0080】
以上説明した本発明の弾性表面波デバイスによれば、WLPタイプの弾性表面波デバイスであって、配線層が従来よりも多くすることができ、配線設計の自由度が向上した、また、グランド配線の低抵抗化により、特性が安定した、WLPタイプの弾性表面波デバイスを提供することができる。
【0081】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【0082】
また、少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面を上述したが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本発明の範囲内にあることが意図される。理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。また、ここで使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。前後左右、頂底上下、および横縦への言及はいずれも、記載の便宜を意図しており、本発明の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は例示にすぎない。
【符号の説明】
【0083】
1 弾性表面波デバイス
3 30 圧電基板
5 IDT電極
50 IDT
52 反射器
53 弾性表面波共振器
56 絶縁体
58 第2配線パターン
7 54 配線パターン
70 内部配線と立体的に交差する配線パターン
9a 外部接続用パッド
9b 内部配線用パッド
11 支持層
13 カバー層
15 外部接続用端子
16 内部配線
17 支持基板
MM メタルマスク
HP ハンダペースト
【要約】 (修正有)
【課題】配線層数を多くすることができ、配線設計の自由度が向上した、また、グランド配線の低抵抗化により、特性が安定した、WLPタイプの弾性表面波デバイスを提供する。
【解決手段】弾性表面波デバイス1の支持層11は、圧電基板3上であって、IDT電極5が形成された領域以外の領域に形成されている。カバー層13は、IDT電極を気密封止するように形成されている。外部接続端子15は、外部接続用パッド9aと電気的に接続され、支持層とカバー層に形成された外部接続用貫通孔内及びカバー層上に、内部配線よりもカバー層の表面からみて高く形成されている。内部配線16は、内部配線用パッド9bと電気的に接続され、支持層とカバー層に形成された内部配線用貫通孔内に内部配線用パッドからUBM層を介して同一金属により一体的に、外部接続端子の幅よりも大きい幅で形成されている。
【選択図】
図2