IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴィブラコースティック フォーシェダ アクチエボラグの特許一覧

特許7002787振動数調整されたダンパ及び当該ダンパの製造で使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-05
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】振動数調整されたダンパ及び当該ダンパの製造で使用する方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20220113BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20220113BHJP
   F16F 1/376 20060101ALI20220113BHJP
   F16F 1/377 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F1/36 N
F16F1/376
F16F1/377
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020512857
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018077395
(87)【国際公開番号】W WO2019072796
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-04-06
(31)【優先権主張番号】17195459.7
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520067644
【氏名又は名称】ヴィブラコースティック フォーシェダ アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Vibracoustic Forsheda AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン,ベント-ヨーラン
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-029549(JP,A)
【文献】特開2015-186982(JP,A)
【文献】特許第4721151(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00-15/36
F16F 1/00- 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動数調整ダンパであって、
振動が減衰される振動面と称される表面に結合されるように配置されたコンソールであって、取付リムによって画定される少なくとも1つの取付開口部を備えるコンソールと、
振動体と、
長手軸を有する少なくとも1つの弾性部材であって、当該弾性部材が、前記コンソールに前記弾性部材を結合するための前記リムが受容される円周方向に延びる第1の取付溝を有する基部と、前記基部から前記長手軸に沿って距離を置いて位置する上部と、を備え、前記振動体に結合された少なくとも1つの弾性部材と、
を備えており、
前記弾性部材が、前記基部と前記振動体との間に位置する円周方向に延びる外側衝撃面を提供し、
前記コンソールが、さらに、前記リムと一体に形成されて前記衝撃面から距離を置いて前記衝撃面の周りで円周方向に延びる少なくとも1つの撓み制限器を備えており、
前記撓み制限器が、前記ダンパが前記衝撃面を前記撓み制限器と接触させるのに十分な外部過渡力を受けた場合、前記長手軸に対して横方向の前記弾性部材の動きの程度を制限するよう配置されており、これによって、前記長手軸に対して横方向の前記弾性部材の過度の動きを防ぐことを特徴とするダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載のダンパにおいて、
前記少なくとも1つの取付開口部が、それぞれが関連する取付リムによって画定される複数の取付開口部を備え、
前記少なくとも1つの弾性部材が複数の弾性部材を備え、各弾性部材が関連する取付リムで前記コンソールに結合されており、
前記少なくとも1つの撓み制限器が複数の撓み制限器を備え、各撓み制限器が、前記コンソールと一体に形成され、前記弾性部材から距離を置いて関連する前記弾性部材の1つの前記衝撃面の周りで円周方向に延びていることを特徴とするダンパ。
【請求項3】
請求項2に記載のダンパにおいて、
前記複数の弾性部材が、前記振動体の両側で前記振動体に結合されて共通の長手軸に沿って整列する第1の弾性部材および第2の弾性部材を備えており、
前記複数の撓み制限器が、前記第1の弾性部材に関連する第1の撓み制限器と、前記第2の弾性部材に関連する第2の撓み制限器とを備えることを特徴とするダンパ。
【請求項4】
請求項2に記載のダンパにおいて、
前記複数の弾性部材が、前記長手軸が平行且つ非一致である2又はそれ以上の弾性部材であって、前記コンソールの共通面および前記振動体の共通側面に結合された2又はそれ以上の弾性部材を備えることを特徴とするダンパ。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載のダンパにおいて、
前記コンソールが、前記振動体が配置されて前記複数の弾性部材によって支持されるハウジングを備えており、各撓み制限器と関連する弾性部材の前記衝撃面との間の距離が、前記ダンパが前記外部過渡力を受けるときに、前記振動体が前記ハウジングに衝突するのを確実に防ぐために、十分に小さく選択されることを特徴とするダンパ。
【請求項6】
請求項3を引用する請求項5に記載のダンパにおいて、
前記ハウジングが、前記ダンパの組み立て中に前記振動体が前記ハウジングの中に挿入され得る少なくとも1つの開口側を有し、前記第1および第2の撓み制限器が、相互に距離を置いて配置され、前記振動体が前記ハウジングの前記開口側を通って前記第1および第2の撓み制限器の間の位置に挿入され得ることを特徴とするダンパ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のダンパにおいて、
前記弾性部材が、前記撓み制限器との撓み制限接触が前記衝撃面の位置で確実に発生するように、前記衝撃面で外径が増大していることを特徴とするダンパ。
【請求項8】
請求項1~7に記載のダンパにおいて、
前記少なくとも1つの撓み制限器が、前記衝撃面の周りを円周方向に360度延在することを特徴とするダンパ。
【請求項9】
請求項1~8に記載のダンパにおいて、
前記少なくとも1つの撓み制限器が、前記弾性部材から距離を置いて前記弾性部材に沿って延びる円筒壁であって、前記リムが形成されている前記コンソールの表面と一体的に形成された近位端と、前記弾性部材の前記衝撃面に位置する反対側の遠位端とを有する円筒壁を備えていることを特徴とするダンパ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のダンパにおいて、
前記少なくとも1つの弾性部材が、前記コンソールの一部を形成して前記撓み制限器及び前記リムが一体的に形成されたスリーブ部材に収容され且つ前記スリーブ部材に結合されており、
前記スリーブ部材が、前記コンソールのベース部材の開口に受容されており、前記ベース部材が、前記振動面に結合されるよう配置されることを特徴とするダンパ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のダンパにおいて、
前記弾性部材が、さらに、前記基部と前記上部との間を延在する中間壁部を備えており、
記衝撃面が、前記上部に少なくとも部分的に形成されることを特徴とするダンパ。
【請求項12】
請求項11に記載のダンパにおいて、
前記上部の衝撃面は、前記上部が前記中間壁部の肉厚よりも大きい肉厚を呈する前記長手軸に沿ったレベルに位置することを特徴とするダンパ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のダンパにおいて、
前記少なくとも1つの弾性部材の基部が前記弾性部材の広い部分を形成し、前記少なくとも1つの弾性部材の前記上部が前記弾性部材の狭い部分を形成することを特徴とするダンパ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のダンパにおいて、
前記少なくとも1つの弾性部材の前記上部が、円周方向に延びる第2の取付溝を有しており、
前記振動体が、前記振動体に前記弾性部材を結合するために前記上部の前記第2の取付溝に受容される内側に延びるフランジによって画定される取付開口部を提供し、
前記衝撃面が、前記第1の取付溝と前記第2の取付溝との間に軸方向に配置されていることを特徴とするダンパ。
【請求項15】
振動数調整ダンパの製造に使用する方法であって、
基部と前記基部から長手軸に沿って距離を置いて位置する上部とを有する弾性部材を、コンソールの取付開口部を通して、前記基部が前記コンソールに結合され、前記コンソールと一体に形成された撓み制限器が前記弾性部材の外側衝撃面の周りで前記外側衝撃面から距離を置いて円周方向に延びている、取付位置に挿入するステップであって、前記撓み制限器と前記取付位置の前記衝撃面が、共に、前記長手軸に対して横方向の前記弾性部材の過度な動きを防ぐ撓み制限機構を形成する、ステップと、
振動体に前記弾性部材の前記上部を取り付けるステップであって、前記弾性部材と前記振動体とが共に振動数調整されたバネ質量システムを形成する、ステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記取付位置に前記弾性部材を挿入すること、及び前記振動体に前記上部を取り付けることは、実質的に、前記コンソール及び前記振動体に関して前記弾性部材の単一の直線的動きによって実行されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば自動車で使用することができ、振動が減衰される振動面と称される表面に結合されるように構成された振動数調整ダンパに関する。振動数調整ダンパは、振動体として機能する質量体と、振動面に結合されるよう構成されたコンソールと、コンソールに振動体を弾性的に結合する少なくとも1つの弾性部材とを有する。弾性部材は、基部と、弾性部材の長手軸に沿って間隔を空けた位置に配置された上部とを有する。ダンパは、少なくとも1つの弾性部材の長手軸に対して横方向に向かう振動面の振動を減衰させるために、及び任意で、前記長手軸に沿って向かう振動を減衰させるために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
振動数調整振動ダンパの機能は、調整質量ダンパまたは振動吸収装置とも称され、ダンパが結合されている振動面と称される表面の振動を打ち消し、低減するバネ質量システムに基づいている。このような振動は、振動面に平行な方向および/または振動面に対して横方向である。WO01/92752A1、WO2013/167524A1、およびWO2008/127157A1は、振動数調整振動ダンパの例を開示している。
【0003】
振動数調整振動ダンパのいくつかの用途では、ダンパが結合されている振動面が時として強い外部過渡力を受けることがある。これは、例えば、このような振動数調整ダンパが取り付けられている車が道路の凹みの上を通過する場合である。この状況では、振動体の質量の慣性が、振動体を支持する1つまたは複数の弾性部材の過度な動きを引き起こす傾向がある。これは、ひいては、弾性部材を早期に摩耗するほど損傷させ、結果として振動減衰が減少し、最悪の場合、弾性部材が振動体から完全に切り離される可能性がある。このような過度の動きを防ぐための現在の解決策は不十分であり、特に追加的部品並びに追加の組み立て時間及びコストが必要となっている。
【発明の概要】
【0004】
上記に照らして、本発明の概念の目的は、振動数調整ダンパおよび振動数調整ダンパを製造するのに使用する方法を提供することであり、ダンパが強い外部過渡力を受ける場合、ダンパの過度な動きを防止することに関する効果、特に製造及び組み立てのための時間及びコストに関する効果が得られる。
【0005】
本発明の概念の第1の態様によれば、振動数調整ダンパが提供され、この振動数調整ダンパが、振動が減衰される振動面と称される表面に結合されるように配置されたコンソールであって、取付リムによって画定される少なくとも1つの取付開口部を備えるコンソールと、振動体と、長手軸を有し、前記コンソールに前記弾性部材を結合するための前記リムが受容される円周方向に延びる第1の取付溝を有する基部と、前記基部から前記長手軸に沿って距離を置いて位置する上部と、を備える少なくとも1つの弾性部材であって、前記振動体に結合される少なくとも1つの弾性部材と、を備えており、前記弾性部材が、前記基部と前記振動体との間に位置する円周方向に延びる外側衝撃面を提供し、前記コンソールが、さらに、前記リムと一体に形成されて前記衝撃面から距離を置いて前記衝撃面の周りで円周方向に延びる少なくとも1つの撓み制限器を備えており、前記撓み制限器が、前記ダンパが前記衝撃面を前記撓み制限器と接触させるのに十分な外部過渡力を受けた場合、前記長手軸に対して横方向の前記弾性部材の動きの程度を制限するよう配置されており、これによって、前記長手軸に対して横方向の前記弾性部材の過度の動きを防ぐ。
【0006】
本発明の概念の第2の態様によれば、振動数調整ダンパの製造に使用する方法が提供され、この方法が、基部と前記基部から長手軸に沿って距離を置いて配置された上部とを有する弾性部材を、コンソールの取付開口部を通して、前記基部が前記コンソールに結合され、前記コンソールと一体に形成された撓み制限器が前記弾性部材の外側衝撃面の周りで前記外側衝撃面から距離を置いて円周方向に延びている、取付位置に挿入するステップであって、前記撓み制限器と前記取付位置の前記衝撃面が、共に、前記長手軸に対して横方向の前記弾性部材の過度な動きを防ぐ撓み制限機構を形成する、ステップと、振動体に前記弾性部材の前記上部を取り付けるステップであって、前記弾性部材と前記振動体とが共に振動数調整されたバネ質量システムを形成する、ステップと、を備える。
【0007】
本発明の概念の好適な実施例が、従属請求項に記載されている。
【0008】
いくつかの従来の振動数調整ダンパでは、ダンパが相当な外力を受ける場合に振動体の過度な動きを防ぐために、振動体とコンソールの間に別個の部材が取り付けられている。質量体の移動を制限するために別個の部材を使用するには、コストと組み立て時間の双方、さらには、このような移動制限要素を正確に配置して固定する必要がある。さらに、この従来技術の手法では、満足のいく程度に動きを制御できない場合がある。
【0009】
本発明の概念は、この従来技術のタイプの振動数調整ダンパと比較して、少なくとも以下の効果を提供する:
・前記少なくとも1つの撓み制限器はリムと一体に形成されているため、ダンパの組み立てをより短時間で低コストで行うことができる。振動質量体の過度な移動を防ぐために別個の要素は必要なく、このような追加的な撓み制限部材を取り付けて正しく配置するために組み立て時間は必要ない。
・各撓み制限器は、関連する弾性部材の衝撃面と協働するよう配置されているため、撓み制限機構および機能は、弾性部材の挿入および結合の直接的な結果として確立され得る。弾性部材が取付開口部に取り付けられ、取付溝に入るリムによってコンソールに結合されると、撓み制限機構が確立され、所定の位置に配置される。撓み制限器は、取り付けられた弾性部材の衝撃面に対して自動的に正確に配置され、衝撃面から距離を置いて衝撃面の周りに延在する。
・いくつかの従来技術の振動数調整ダンパでは、コンソールが、少なくとも部分的に振動体を囲むハウジングを備え、ハウジングの壁が、振動体の動きを制限するために使用される。本発明の概念は、コンソールの設計に関してより高い自由度を可能にする。撓み制限機構にハウジングは必要ない。
・いくつかの先行技術の振動数調整ダンパの特定の欠点は、コンソールを形成するハウジングが1又はそれ以上の開いた側面を持ち、ハウジングが特定の方向の振動体の動きを制限するのを防いでしまうことである。撓み制限機構はコンソールの設計に依存せず、必要に応じて撓み制限器が上部の衝撃面の周りに360度延在するため、本発明の概念により、撓み制限機能が弾性部材のあらゆる可能な移動方向で動作できる。
・本発明の概念により得られるさらに別の利点は、コンソールの撓み制限器が、従来技術のような振動体または質量体ではなく弾性部材と協働するという事実にある。これにより、弾性部材の弾性特性には二重の機能がある。弾性特性は、振動数調整質量ばねシステムでばね効果を確立するためだけでなく、関連する撓み制限器とともに撓み制限機構を確立するためにも使用される。ダンパに過度の外部過渡力が加わった場合に、弾性特性により撓み制限器とのソフトなまたは弾力性のある係合が得られる。
【0010】
用語
本開示では、軸方向、半径方向、円周方向、横方向などの用語は、弾性部材またはダンパの長手方向または軸方向に対する方向に関係する。
【0011】
本発明の概念の実施形態
いくつかの実施形態では、コンソールの前記少なくとも1つの取付開口部は、それぞれが関連する取付リムによってそれぞれ画定される複数の取付開口部を備えており、前記少なくとも1つの弾性部材は、複数の弾性部材を備え、各弾性部材は、関連する取付リムでコンソールに結合されている。2又はそれ以上の弾性部材を含むそのような実施形態では、コンソールは、各弾性部材に対して1つの撓み制限器を備えており、各撓み制限器は、弾性部材の関連する1つの衝撃面の周囲から距離を置いて円周方向に延びる。いくつかの実施形態では、1又はそれ以上の撓み制限弾性部材と、関連付けられた撓み制限器を持たない1又はそれ以上の弾性部材との「混合」を有することも可能である。
【0012】
振動体が複数の弾性部材によって支持される実施形態では、異なる構成の部材が可能である。
・一構成では、複数の弾性部材が、振動体の両側で結合されて共通の長手軸に沿って整列する第1の弾性部材および第2の弾性部材を備える。コンソールは、第1の弾性部材に関連する第1の撓み制限器と、第2の弾性制限器に関連する第2の撓み制限器とを備える。
・第2の構成では、複数の弾性部材が、長手軸が平行かつ非一致である2又はそれ以上の弾性部材であって、コンソールの共通面および振動体の共通側面に結合された2又はそれ以上の弾性部材を備える。
・上記の第1構成と第2構成とを組み合わせることができる。例として、ダンパが、それぞれ自身の撓み制限器を備えた4つの弾性部材を含んでおり、2つの弾性部材が、振動体の第1の側に互いに隣接して配置され、および2つの弾性部材が振動体の反対の第2の側に互いに隣接して配置される。この配置により、振動体の過度のねじれ運動が、組み合わせて動作する4つの撓み制限器によって効果的に防止され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、コンソールが、振動体が配置されて前記複数の弾性要素によって支持されるハウジングを備える。そして、各撓み制限器と関連する弾性部材の衝撃面との間の距離は、好ましくは、ダンパが強い外部過渡力を受けるときに、振動体がハウジングに衝突するのを確実に防ぐために、振動体とハウジングとの間の距離に対して十分に小さく選択される。
【0014】
そのようなハウジングは、ダンパの組み立て中に振動体をハウジングの中に挿入することができる少なくとも1つの開いた側を有する。振動体が各側の1つ以上の弾性部材によって両側で支持されている場合、振動体の両側の関連する撓み制限器間の距離は、好ましくは、振動体をハウジングの開いた側から撓み制限器間の所定の位置に挿入できるように十分に大きい。振動体の長手方向の長さは、本質的に撓み制限器間の距離に等しいが、それよりも幾分小さくてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、弾性部材は、撓み制限器との撓み制限接触が衝撃面の位置で確実に発生するように、衝撃面で外径が増大している。
【0016】
好ましい実施形態では、ダンパが、さらに、基部と上部との間を延在する中間移行部または壁部を備える。ダンパの通常の減衰動作中に、中間壁部は長手軸に対して横方向に振動する。振動数の減衰は、長手方向でも達成される。ダンパの振動数調整は、壁部の肉厚、壁部の傾斜角、またはそれらの組み合わせといった、中間壁部の設計パラメータを変更することによって達成される。このような実施形態では、衝撃面が、弾性部材の上部に全体的または部分的に提供される。また、このような実施形態では、中間壁部の外径よりも大きな外径を有する弾性部材の部分に衝撃面を形成することが好ましい。これにより、撓み制限機能が、弾性部材の振動数調整機能から本質的に分離され得る。例えば、外側衝撃面を形成する弾性部材の部分は、撓み制限器に対する衝撃に抵抗し、衝撃面が撓み制限器にぶつかったときに弾性部材が予期せずに変形した結果として、弾性部材が振動体から外れるリスクを減らすために、肉厚および/または材料の量が増加している。代替的実施形態では、衝撃面は、中間壁部に部分的または全体的に形成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの撓み制限器が、関連する弾性部材の衝撃面の周りを360度円周方向に延在し、長手軸に対してすべての横方向の撓み制限機能を保証する。
【0018】
一実施形態では、このような360度の撓み制限機能は、弾性部材から弾性部材に沿ってある距離を延在し、弾性部材の取付開口部が形成されたコンソールの表面と一体に形成された第1の端部と弾性部材の衝撃面に位置する反対側の第2の端部とを有するシリンダを備える撓み制限器によって得る。したがって、ダンパの組み立て中に、弾性部材の上部が、ベース部の取付溝がリムと係合して衝撃面がシリンダの遠位端と同じレベルにある取付位置に弾性部材が配置されるまで、取付開口部とシリンダとを通して挿入される。
【0019】
本発明の概念によれば、少なくとも1つの撓み制限器が、取付開口部を画定するリムと一体的に形成され、すなわち、撓み制限器は、コンソールの一体部分である。いくつかの実施形態では、コンソール全体が、一体部品として1または複数の撓み制限器を備えた、単一の部品または部材として製造され、いくつかの実施形態では、少なくとも部分的に振動体を囲むハウジングも備え、選択的に、振動面にコンソールを結合するための取付手段も備える。
【0020】
他の実施形態では、コンソールが、振動面に結合されるように構成されたベース部材と、本明細書ではスリーブ部材と称される1または複数の別個の部材とを備える。そして、取付開口部、リム及び各弾性部材に関連する撓み制限器を、このような別個のスリーブ部材に一体的に形成する。1または複数のこのような別個のスリーブ部材を含むダンパは、様々な組み立ての代替例に従って組み立てられる。
【0021】
好ましい第1の組み立ての代替例によれば、各スリーブ部材をベース部材のその関連する開口部の中に緩く挿入し、各弾性部材をその関連するスリーブ部材の中に緩く挿入し、ベース部材に対して振動体を配置することにより、部品が最初に互いに整列する。部品が整列すると、各弾性スリーブ部材が、適切なツールによってその結合位置に押し込まれ、弾性部材がそのスリーブ部材と振動体とに係合し、同時に弾性部材がスリーブ部材をベース部材のその取付位置に押し込む。
【0022】
第2の組み立ての代替例によれば、まず、各弾性部材がそれ自体のスリーブ部材の中に挿入されて結合される。これは事前に行うことができる。その後、事前に結合された弾性部材を備えたスリーブ部材をコンソールのベース部材の開口部の中に挿入し、適切な方法でベース部材に固定しつつ、同時に弾性部材が振動体に結合される。
【0023】
第3の組み立ての代替例によれば、まず、各スリーブ部材がベース部材の中に挿入されて結合される。その後、各弾性部材が、その関連するスリーブ部材の中に挿入されて結合される。
【0024】
このような別個のスリーブ部材を含む実施形態では、本発明の概念による原理は同じままである。すなわち、弾性部材がコンソールの取付開口部の中に挿入されると、撓み制限機構が完全に確立される。
【0025】
本発明の概念の上記および他の特徴、並びにその好ましい実施形態および効果は、特許請求の範囲に記載されており、以下でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
ここで、本発明の概念、いくつかの非限定的な実施形態、および本発明の概念のさらなる効果について、図面を参照してさらに説明する。
図1】振動数調整ダンパの第1の実施形態を示す。
図2】振動数調整ダンパの第1の実施形態を示す。
図3】振動数調整ダンパの第1の実施形態を示す。
図4】振動数調整ダンパの第1の実施形態を示す。
図5図5a-5dは、弾性部材を示す。
図6図6a-6cは、図1~4に示すダンパの組み立て手順を示す。
図7図7a-7bは、図1~4に示す組み立てられたダンパの断面図である。図7c-7dは、動作中の撓み制限機構を示す。
図8図8a-8cは、振動数調整ダンパの第2の実施形態を示す。
図9図9a-9dは、振動数調整ダンパの第3の実施形態を示す。
図10図10a-10dは、振動数調整ダンパの第4の実施形態を示す。
図11図11a-11cは、振動数調整ダンパの第5の実施形態を示す。
図12】スリーブ状部材の代替的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の概念は、一般に、振動数調整ダンパに関する。このようなダンパは、自動車の部品または自動車の車体の表面などの表面の振動を減衰させるために使用される(例えば、図7cの参照番号81を参照)。ダンパは、振動体として機能する質量体と、少なくとも1つの弾性部材とを備えている。質量体と弾性部材とは共にばね質量システムを提供し、コンソールと称されることもある中間部品によって振動面に結合される。
【0028】
振動体の質量、並びに弾性部材の剛性と減衰は、表面に減衰効果を与えるように選択され、1又はそれ以上の所定の目標振動数で振動することが期待できる。表面が目標振動数で振動すると、振動体は、表面と同じ振動数で振動/共振するが、表面の振動が実質的に減衰されるように、表面と位相がずれている。振動体は、表面の振動振幅よりも実質的に大きい振幅で振動し得る。
【0029】
第1の実施例
図1図3は、本発明の概念による振動数調整ダンパの第1の実施形態を示している。図示されたダンパ10は、図7cの破線の円10によって概略的に示されるように、車両のテールゲートダンパとして使用される。ダンパ10の主要な構成要素は、コンソール20と、振動体40として作用する質量体と、2つの弾性部材60とを有する。ダンパ10は、長手方向ADに沿って延び、長手方向ADに対して横方向の振動を減衰させるために使用され得る。コンソール20は、例えば、プラスチック材料(合成樹脂)、金属、または必要な強度と剛性を備えた他の適切な材料で作られる。振動体40は、鋳鉄、棒鉄、または振動減衰機能に必要な重量を呈する何らかの適切な材料で作られる。弾性部材60は、シリコーンゴムなどの適切な弾性材料から作られる。
【0030】
図示の実施形態では、コンソール20は、方向ADに延びる細長いハウジング21と、振動が減衰される振動面と称される表面(図示せず)にダンパを結合するためのコネクタ穴23を備えたハウジング21の両端にある2つのコネクタタブ22と、を備えている。ハウジング21は、半円形の断面を有する湾曲した壁25によって互いに結合された2つの側壁24を備える。ハウジング20は湾曲した壁25の反対側に開口側26を有する。
【0031】
コンソール20は、振動体40の軸方向両側に配置された2つの撓み制限器30をさらに備える。図示の実施形態では、各撓み制限器30は、ハウジング20の内部から離れて面する近位端と、ハウジング21の内部に面する遠位端とを有する円筒の形態である。撓み制限器30の遠位端間の長手方向ADに沿った距離は、図6aの矢印A1によって示し、図7aおよび図7bの最終位置で示すように、細長い振動体40が開口側26を通してハウジング21の中に撓み制限器30間の最終位置まで挿入されて、撓み制限器30間の最終位置に達するような距離である。好ましい実施形態では、図7aおよび7bに最もよく見られるように、撓み制限器30の遠位端間の距離は、振動体40の長さに実質的に等しいが、わずかに大きくてもよい。
【0032】
コンソール20は、さらに、コンソール20の各長手方向端部に1つずつ、2つの取付開口部27を備える。各取付開口部27は、撓み制限器30の関連する1つの近位端に形成されており、円形リム28によって画定される。図示の実施形態では、各取付開口部27は円形であり、関連する円筒部30と同軸である。
【0033】
図4に最もよく示すように、ハウジング21、2つの撓み制限器30、および取付開口部27を画定する2つのリム28は、単一のコンソール部材20に一体的に形成される。具体的には、各円筒部30の外側半分は、長手方向ADにおいて湾曲壁25との連続部を形成するが、やや小さい直径である一方、各円筒部30の内側半分は、円筒部30の近位端までずっと延びる平坦な側壁24の間に位置している。
【0034】
振動体40は、両端部41を有する円筒形ロッドとして形成されている。各端部41において、振動体40は、関連する弾性部材60の一部を受容するための内部空洞42(図7b参照)を有する。各内部空洞42は、内向きのコネクタフランジ44によって画定される端部開口43を有する。振動体40の横方向または半径方向の寸法は、図7bの半径距離R1で示されるように、振動体40とハウジング21との間の直接的接触を避けるように選択される。
【0035】
次に、弾性部材60について、図5aから図5dを参照してより詳細に説明する。各弾性部材60は、組み立てられたダンパ10において、振動体40の中心軸および振動制限器30の中心軸と一致する長手軸AEを有する。図5cの断面図に示すように、長手軸AEの方向に見ると、弾性部材60は、軸レベルL1とL3の間を延びる基部61、軸レベルL3とL4の間を延びる中間移行部または壁部分62、および軸レベルL4とL7との間に延びる上部63を備える。この実施形態では、基部61および上部63は、それぞれ、弾性部材60の幅の広い部分および幅の狭い部分を形成する。
【0036】
基部61は、軸レベルL2に位置する第1の取付溝64であって、2つの対向する半径方向に延びる側面と、円周方向に延びる内側の底面とによって画定される、円周方向に延びる第1の取付溝64を備える。第1の取付溝64は、図7aおよび図7bに示すように、弾性部材60をコンソール20に結合するために、コンソール20の関連する取付開口部27のリム28を受容するように配置される。図示の実施形態では、取付溝64は円形であり、すなわち、溝64の底面は円に沿って延びている。他の実施形態では、取付溝は、上述のWO2013/167524A1に開示されているような楕円形といった他の構成を有してもよい。
【0037】
中間壁部62は、基部61と上部63との間を軸方向に延びている。図示の実施形態では、中間壁部63は、肉厚tを有する円柱の形状を有する。中間壁部62は、1又はそれ以上の特定の目標振動数への振動数調整に関して弾性部材60の本質的な部分を形成する。ダンパ10の調整は、肉厚t、壁部62の軸方向長さ、長手軸AEに対する壁部の内側および/または外側の角度、中間壁部62の断面といった、中間壁部62の設計パラメータを変えることにより行うことができる。これらの設計パラメータは、異なる軸平面間で変動し、及び/または軸AEの周りで円周方向に変動する。
【0038】
基部61および中間壁部62は、レベルL1とレベルL4との間で延びる弾性部材60の内部空洞の第1のより大きな部分65を共に画定する。図示された実施形態では、内部空洞のこのより大きな部分65は、直径D1の円形断面を有するが、他の実施形態では非円形断面を有する設計であってもよい。
【0039】
軸方向レベルL4とL7との間を延びる上部63は、2つの対向する側面と内側底面とによって画定される軸方向レベルL6で円周方向に延びる第2の取付溝66を提供する。第2の取付溝66は、図7aおよび7bに示すように、弾性部材60を振動体40に結合するために、振動体40の関連するコネクタフランジ44を受容するよう配置される。
【0040】
上部64は、さらに、軸方向レベルL5において、増大した半径方向の厚さを示す部分67を備える。部分67の半径方向外側は、弾性部材60の外周方向に延びる衝撃面68を画定する。したがって、本例では、衝撃面68は、レベルL6の溝66とレベルL4の中間壁部分62の遠位端との間のレベルL5に位置する。本実施形態では、衝撃面68は上部63の一部であることに留意されたい。代替的実施形態では、衝撃面68を示す部分67は、中間壁部62と上部63との間に位置するそれ自体の部分であり得る。一般的なガイドとして、弾性部材30の衝撃面68は、好ましくは基部61から軸方向に離れて、好ましくは中間壁部62の遠位側に配置されるべきであり、これにより、意図された撓み制限機能が中間壁部62の遠位側で動作する。レベルL5での部分67の半径方向の厚さの増大は、衝撃面68が撓み制限器30に衝突したときに弾性部材60が損傷または実質的に変形しないことを保証する。図5cに示すように、部分67も同じ理由で軸方向の高さが増加している。特に、設計は、衝撃面68が撓み制限器30に衝突したときに、上部63が振動体40から外れる危険を伴う程度の上部63の過度の変形を防ぐべきである。
【0041】
図示の実施形態では、撓み制限器30に衝突するのが弾性部材60の衝撃面68であり、弾性部材60の他の部分ではないことを確実にするために、円周方向に延びる衝撃面68の直径D3は、中間壁部62の外径よりも大きい。他の実施形態では、衝撃面68は、より小さな外径を有しており、代わりに、撓み制限器30が、衝撃面68に向かって延びてそこからある距離で終端するレベルL5の半径方向内側の延長部を有する。衝撃面68の軸方向の高さH1が、図7bに示されている。異なる軸方向レベルに配置された複数の衝撃面68を持つことも可能である。衝撃面68を、軸AEの周りに円周方向に分布する複数の個々の衝撃セグメントとして設計することも可能である。
【0042】
弾性部材60のコンソール20および振動体40への結合を容易にするために、基部61が、第1の取付溝64と中間壁部62との間に位置する円錐台部分70を有しており、上部63が、第2の取付溝66の遠位側に配置された円錐台部分71を有する。
【0043】
内部空洞の小さい部分69は、弾性部材60の上部63の内側に位置する。大きい部分65および小さい部分69の直径が、D1およびD2で示される。組み立て中に、以下に説明するように、弾性部材60をその結合された最終位置に押し込むために、適切なツールが内部空洞のより小さい部分65の中に挿入される。
【0044】
図6aから6cは、図1から4のダンパがどのように組み立てられるかを示している。最終的なダンパが、図6cおよび7aに示されており、図7bに拡大して示されている。
【0045】
図6aは、コンソール20、振動体40、および2つの弾性部材60を含むダンパ10の組み立てが開始される前の個々の主要な構成要素を示している。したがって、撓み制限機構を含む完全なダンパ10は、4つの構成要素のみで作成され得る。第1の組み立て状態では、振動体40は、図6aの小さな円錐体76として概略的に示される固定具または支持体上に配置される。次に、コンソール20は、矢印A1で示すように、その開口側26が振動体40に面した状態で下げられる。コンソール20は、図6bに概略的に示す支持体または固定具78上に配置され、振動体40がハウジング21内に正確に位置決めされて整列されるようになっている。
【0046】
図6bは、2つの弾性部材60が、その後、コンソール20の関連する取付開口部27の中に、振動体40の端部41および空洞42に向かってどのように挿入されるかを矢印A2で示している。これは、各弾性部材60の内部空洞のより小さい部分69の中に挿入されて内部空洞の閉じた上部を押すプランジャツールTによって実行される。
【0047】
図6c、7aおよび7bは、組み立てられたダンパ10を示す。各弾性部材60は、長手軸ADに沿って最終的な取付位置まで挿入されている。各弾性部材60のこの単一の軸方向への挿入移動中に、3つのことが本質的に同時に確立される。弾性部材60がコンソール20に結合され、弾性部材60が振動体40に結合され、そして、撓み制限機構が確立される。具体的には、上部63および中間壁部62はコンソール20の取付開口部27を通過するが、基部61の円錐台部分70が取付開口部27のリム28と係合し、これにより、リム28が第1の取付溝64の中にスナップ嵌めできるように、基部61をわずかに一時的に変形させる。同様に、上部63の円錐台部分71が、コネクタフランジ44が第2の取付溝66の中に確実に受容されるようにするため、振動体40のコネクタフランジ44と係合する。最後に、撓み制限機構の確立に関して、弾性部材60をその最終取付位置に挿入すると、衝撃面68が撓み制限器の遠位端にそこから半径方向距離R2で適切に配置されることが保証される(図7bを参照)。
【0048】
図7bの組み立てられた状態では、振動体40はハウジング21と直接接触していない。湾曲壁25に向かう半径方向距離がR1で示されている。距離R1およびR2は、好ましくは、撓み制限機構の動作中に振動体40とハウジング21との間の直接的接触を防ぐように選択される。
【0049】
振動数調整ダンパ10の通常動作中、ダンパ10は、ダンパ10の長手軸ADに対して横方向に向かう振動面の振動を減衰するように配置される。ダンパ10のそのような通常動作中、振動体40の質量の慣性は、中間壁部62および中間壁部63を横方向にわずかに振動させ、中間壁部62の前後のわずかな横方向の撓みを伴う。撓み機構における距離R2は、好ましくは、このような通常の減衰動作中の撓み制限を防ぐのに十分に大きく選択される。換言すれば、通常の減衰動作中に、R2はゼロよりも大きくなる。
【0050】
図7cおよび7dは、撓み制限動作を概略的に示している。図7cの上部に破線の円で概略的に示すように、ダンパ10は、自動車80のテールゲート81の内側にテールゲートダンパとして取り付けられ、車両80が道路のポットホール82を通過している。車輪がポットホール82に出入りする結果として、ダンパ10は、ダンパ10の長手方向ADに対して横方向に比較的大きな過渡的な力を受ける。振動体40の質量の慣性により、振動体40は、図7cの矢印A3で示すように最初に下方に移動し、その後、図7dの矢印A4で示すように上方に移動する。この状況で、外部過渡力が十分に強い場合、撓み制限機構が作動する。衝撃面68の下部は、図7cの矢印A5で示されるように、最初に振動数制限器30の下部にぶつかるか又は当たる。これにより、弾性部材30および振動体40のさらなる過度の横方向の動きが防止される。図7cの距離R1は距離R3まで減少し、R1>R3>0である。その後、振動体40は、図7dの矢印A4で示されるように、ハウジング21の開口側25に向かってコンソール20に対して上方に移動する傾向があるため、撓み制限機構68/30の上部は、図7dの矢印A6で示すように動作し、弾性部材30および振動体40の過度の横方向の動きを再び防止する。この位置において、振動体40は、湾曲壁25に対して半径方向距離R4を呈し、R4>R1である。
【0051】
第2の実施例
図8aから図8cは、本発明の概念による振動数調整ダンパ10aの第2の実施形態を示している。この実施形態は、すべての本質的な態様において、第1の実施形態と同様である。唯一の差異は、第2の実施形態が、第1の実施形態の振動体40よりも小さな直径を有する振動体40aに対して設計されていることである。したがって、ハウジング21はサイズが小さく、この実施形態では、ハウジング21の湾曲壁25aの縮小した外径は、シリンダ30の外径に等しく、ダンパ10aの全長に沿って連続的な湾曲した側面を形成する。
【0052】
第3の実施例
図9aから9dは、本発明の概念による振動数調整ダンパ10bの第3の実施形態を示している。この第2の実施形態は、第1および第2の実施形態とは2つの態様が異なる。
・第一に、この実施形態のコンソールは、振動体40を囲むハウジングを有さない。代わりに、コンソールは、本質的にU字形で一体に形成され本質的に板状のベース部材90を備える。ベース部材90は、長手方向に延びる側壁91、それぞれが開口部93を有する2つの横方向に延びる端壁92、およびベース部材90を振動面に結合するために配置された2つのコネクタタブ22を有する。ベース部材90は、曲げられた金属部材またはプラスチック材料といった任意の適切な材料から作製され得る。
・第二に、この実施形態のコンソールは、第1および第2の実施形態のように単一の一体的に形成された部品で作られていない。その代わりに、各弾性部材60の取付リム28および撓み制限器30は、ベース部材90とは別個の、別個のスリーブ状部材100として一体的に形成されている。本開示では、スリーブ状部材100は、コンソールの一部を形成するものとして説明されている。この実施形態のコンソールは、3つの構成要素、すなわち、U字形のベース部材90、および2つのスリーブ状部材100から構成される。
【0053】
各スリーブ状部材100は、関連する弾性部材60のための取付開口部27を画定するリム28と、リム28と一体に形成され、前述の実施形態のように円筒として形成される撓み制限器30とを有する。各スリーブ状部材100はまた、リム28に近いシリンダの外周側にロッキングノッチ31を備える。スリーブ状部材100の外径は、ベース部材90の端壁92の開口部93の直径に対応する。スリーブ状部材100が関連する開口部93に挿入されると、図9cに最もよく示すように、ロッキングノッチ31が開口部93を通過するときにその最終結合位置が得られる。
【0054】
第1の実施形態で説明したのと同じ原理に従って、本実施形態でも、弾性部材60が取付開口部27を通して、スリーブ状部材100のリム28が第1の取付溝64と係合するその結合位置まで挿入されるとき、撓み制限機構が自動的かつ正しく確立される。スリーブ形部材100は、プラスチック材料といった任意の適切な材料で作製し得る。
【0055】
図9a~9cのダンパ10bは、異なる代替例に従って組み立てることができる。
【0056】
図9cおよび9dに示す好ましい第1の組み立ての代替例によれば、各スリーブ部材60をベース部材90の関連する開口部93の中に緩く挿入し、各弾性部材60をその関連するスリーブ部材100に中に緩く挿入し、ベース部材90に対して振動体40を位置決めすることにより、構成要素が最初に並べられる(図9c)。構成要素が整列すると、各弾性部材60が、プランジャツールT(図9c)によりその結合位置(図9d)に押され、弾性部材60の取付溝64および66が、スリーブ部材100および振動体40とそれぞれ係合し、同時に弾性部材60は、スリーブ部材100をその取付位置に押し込み、そこでベース部材90に結合される。
【0057】
第2の代替的アセンブリによれば、まず、各弾性部材60がそれ自体のスリーブ部材100の中に挿入されて結合される。これは、事前に実行されてもよい。その後、事前に結合された弾性部材60を有するスリーブ部材100が、ベース部材90の開口部の中に挿入され、ベース部材90に固定される一方、同時に弾性部材60の上部63が、振動体40に結合される。この第2の代替的アセンブリは、大きな容積のための好ましい代替例であり得る。
【0058】
第3の代替的アセンブリによれば、まず各スリーブ部材100をベース部材90の中に挿入して結合する。その後、各弾性部材60を関連するスリーブ部材100の中に挿入して結合し、振動体40に結合する。
【0059】
第4の実施例
図10a~図10dは、本発明の概念による振動数調整ダンパ10cの第4の実施形態を示す。この実施形態と前述の実施形態との間の1つの主な差異は、すべての弾性部材60が振動体の片側に配置されていることである。
【0060】
図10bに示すように、ダンパ10cは、側壁121、2つの対向する端壁122、および底壁123を有するハウジング120を備える。側壁121とは反対側の上面および側面は双方とも開いている。ハウジング120は、自動ねじ切りねじ(図示せず)によって振動面に固定されてもよい。複数の撓み制限器30が、底壁123と一体に形成され、基本的に底壁123の法線方向に沿って、互いに間隔を空けて延びている。図示された実施形態10cは、長方形の構成に配置された4つの撓み制限器30を備える。先の実施形態に関連して上述したように、図10bに示すように、4つの撓み制限器30のそれぞれが、対応する弾性部材60を受容するように配置される。
【0061】
図10a~図10dのダンパは、さらに、より高い高さH2を有する主部または中央部141と4つのコーナー部142とを含む設計の振動体140を備える。各コーナー部142は、より低い高さH3<H2および貫通部143を有する。図10cおよび図10dに示す組み立てられたダンパ10cでは、各コーナー部143が関連する撓み制限器30の上方で支持され、貫通穴143が、コーナー部142に結合される関連する弾性部材60の長手軸AEと整列する。各コーナー部142は、貫通穴143の下端に位置し、上述のように弾性部材60の上部63の取付溝に結合されるコネクタフランジ44を提供する。撓み制限機構に関して、関連する距離が図10dのD8に示されている。距離D8は、好ましくは、撓み制限機構が作動しているときに振動体140とハウジング120との間の直接的接触が回避されるように選択される。したがって、図10dの距離D9は、D9>D8となるように選択する必要がある。
【0062】
第5の実施例
図11a~図11cは、本発明の概念による振動数調整ダンパ10dの第5の実施形態を示している。この実施形態は、振動体40が第1の実施形態のように両側で弾性部材60によって支持され、また、第4の実施形態のように、各側で2つ以上の弾性部材60によって支持されるという点で、図1~4の第1の実施形態と図10a~10dの第4の実施形態のある程度の組み合わせである。図11a~図11cのダンパ10dの利点は、関連する撓み制限器30を備えた複数の弾性部材60が、振動体40の過度のねじれ運動、すなわち振動体40の長手軸の周りの過度の回転も防ぐことである。
【0063】
代替的実施例
上記で説明され、図に示されている実施形態は、特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの方法で変更することができる。
【0064】
上述の実施形態では、衝撃面68は、リム28と一体に形成された関連する撓み制限器30の内面に直接ぶつかるか、当たるように配置される。撓み制限器30を形成するコンソールの部分が、例えば、プラスチック材料で作製される場合、撓み制限器30と衝撃面28または弾性部材60との間の減衰効果は十分であり得る。しかしながら、例えばコンソールまたはハウジングが金属といった硬くて非常に硬質の材料で作られている場合、図12の参照番号32で示すように、撓み制限器の内側にさらに減衰部材を挿入することが可能である。
【0065】
代替的実施形態では、撓み制限器は、弾性部材の基部までずっと閉じた円筒として設計されていない。一例として、撓み制限器30の機能部分が弾性部材60の衝撃面68と同じレベルに位置し、長手軸AEの方向に制限された延長部を有する、リング状の壁の形状を有する実施形態を検討することができる。このようなリング状の壁は、例えば、リング状の壁と取付開口部が位置するコンソールの部分との間に延びるいくつかのより開いた構造または脚部を介して、さまざまな方法でリム28と一体に形成され得る。
【0066】
撓み制限器30を、衝撃面68の周りに円周方向に分布する別個のセグメントとして設計することも可能である。いくつかの実施形態では、撓み制限器30は、上部63の周りに360度未満延在し得る。
【0067】
さらに、同じ弾性部材を含む2又はそれ以上の撓み制限機構を配置することが可能であり、異なる撓み制限機構が、必要に応じて、異なる方向で動作し得る。
【0068】
図1~3の第1の実施形態と図9a~9dの第3の実施形態とを組み合わせてもよい。ハウジング21を備える図1~3の第1の実施形態は、取付リム28および撓み制限器30が一体的に形成された別個のスリーブ形状部材100も含めることができ、図9a~図9dのコンソールは、ハウジングも備えることができる。
【0069】
弾性部材60は、様々な方法で構成される。弾性部材60の基本設計は、好ましい例として、上述のWO01/92752A1、WO2013/167524A1、およびWO2008/127157A1に開示された設計に従って選択され得る。しかしながら、このような従来技術の設計は、特に、衝撃面の設計および衝撃面を形成する弾性部材のセクションの厚さに関して修正され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、弾性部材60は、代替的技術によって振動体40に結合され得る。ある技術は、弾性部材60に振動体40を加硫することであるが、しかしながら、これはより時間と費用のかかる取付方法である。
【0071】
いくつかの実施形態では、振動体40は、図示された実施形態のように単なる死重ではない。振動体40は、エアバッグモジュール内のガス発生器といった、必要な重量を有するいくつかのコンポーネントによって、全体または少なくとも部分的に形成され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、撓み制限器30の内面は、滑らかでない表面である。例えば、衝撃面68または弾性部材60との接触面積を減らすために、内面に溝またはスプラインを設けてもよく、またはセグメントに形成してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図7a-7b】
図7c
図7d
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図10c-10d】
図11a
図11b
図11c
図12